JP2017094850A - 車両の衝撃吸収部材構造 - Google Patents
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Description
これら1対のクラッシュカンは、通常、金属材料によって成形され、車両衝突時には、軸方向に圧縮破壊されることにより車室に伝達される衝撃エネルギを吸収している。
強化材として使われる強化繊維は、ガラス繊維、炭素繊維、金属繊維等があり、母材(マトリックス)と組み合わせることによって繊維強化樹脂が形成されている。
このような繊維強化樹脂では、強化繊維が強度等の力学的特性を分担し、母材樹脂が繊維間の応力伝達機能と繊維の保護機能を分担している。
特に、炭素繊維樹脂(Carbon-Fiber-Reinforced-Plastic: CFRP)は、高比強度(強度/比重)と高比剛性(剛性/比重)、所謂軽さと強度・剛性とを併せ持つ特性であるため、航空機や車両等の構造材料として広く使用に供されている。
この衝撃吸収部材の構造では、筒形状、円柱形状、閉断面状角柱形状等が開示されている。
本出願人は、既に、車両衝突時に逐次破壊可能な炭素繊維樹脂構造体を提案している。
特許文献2の炭素繊維樹脂構造体は、圧縮荷重入力方向に炭素繊維が延びるように配列された複数の第1炭素繊維層と、これら第1炭素繊維層の炭素繊維に交差して炭素繊維が延びるように配列された複数の第2炭素繊維層とを備え、圧縮荷重が入力されたとき、繊維強化樹脂板材の厚さ方向両端部分を圧縮荷重入力方向に交差する方向に炭素繊維が延びる第2炭素繊維層を介して夫々剥離させるように、繊維強化樹脂板材の厚さ方向一端側近傍部分と他端側近傍部分とに1以上の第2炭素繊維層を夫々配設している。
これにより、第2炭素繊維層を境界部分として、第2炭素繊維層よりも板厚方向内側の第1炭素繊維層によって柱状のピラー部を形成することができ、第2炭素繊維層よりも板厚方向外側の第1炭素繊維層によって枝状のフロンズ部を形成することができる。
しかし、繊維強化樹脂による逐次破壊がEA量に有効に寄与できない虞がある。
一般に、クラッシュカンの基端部は、サイドフレームの先端部にセットプレート等を介してボルト締結されていることから、繊維強化樹脂を用いてクラッシュカンを形成した場合、クラッシュカンの基端側部分にボルト穴の形成に伴う繊維切断部分が形成される。
この基端側部分の破壊が早く開始されるという破壊現象は、ボルト穴によって繊維切断部分が形成されていない場合であっても、構造的要因からも発生する可能性がある。
クラッシュカンの基端側部分の破壊が早く開始された場合、基端側部分の破壊が集中的に進行し、クラッシュカンの軸心方向と圧縮荷重入力方向とがずれてしまい、結果的に、衝突時の圧縮荷重によってクラッシュカンを潰し切ることができない虞がある。
即ち、逐次破壊を用いて衝撃エネルギ吸収を図るクラッシュカンにおいて、安定したEA性能を確保するには構造上改善の余地がある。
衝撃吸収部材が、前後方向に延びる側壁部と、側壁部に連なり且つバンパレインフォースメントを取り付けるための取付部が形成された先端壁部とを備え、側壁部と先端壁部との交差角度が鈍角になるように形成されているため、車両衝突時、入力された荷重を側壁部と先端壁部との境界部分に集中的に作用させて破壊起点を生成することができる。
この構成によれば、側壁部と先端壁部との境界部分全域に亙って入力された荷重を作用させることができる。
この構成によれば、車両衝突時、逐次破壊された繊維強化樹脂を衝撃吸収部材内部に蓄積することなく、外部に排出することができ、衝撃吸収部材を潰し切ることができる。
この構成によれば、バンパレインフォースメントを直接先端壁部に取り付けることができるため、取付ブラケットを廃止でき、バンパレインフォースメントに入力された荷重を直接的に先端壁部に伝達することができる。
以下の説明は、本発明を車両の車体後部における衝撃吸収部材構造に適用したものを例示したものであり、本発明、その適用物、或いは、その用途を制限するものではない。
尚、図において、矢印Fは前方を示し、矢印Lは左方を示し、矢印Uは上方を示すものとして説明する。
図1〜図3に示すように、車両Vは、左右1対のリヤサイドフレーム1と、これら1対のリヤサイドフレーム1の間を掛け渡すように設けられたフロアパネル2と、バンパフェイシャ(図示略)に後側外周部分を覆われ且つ左右に延びるバンパレインフォースメント(以下、バンパレインと省略する)3と、1対のリヤサイドフレーム1とバンパレイン3との間に配設された左右1対のクラッシュカン10(衝撃吸収部材)と、これら1対のクラッシュカン10を1対のリヤサイドフレーム1に夫々取り付けるための左右1対の外側ブラケット20及び左右1対の内側ブラケット30等を備えている。
尚、上記左右1対の部材は、何れも左右対称構造であるため、以下、主に左側の部材について説明する。
リヤサイドフレーム1は、断面略台形状に形成され、左右方向に直交する外壁部1aと、この外壁部1aの右側位置において平行状に配置され且つ外壁部1aよりも上下幅が大きい内壁部1bと、外壁部1aと内壁部1bの上端部同士を連結する上壁部1cと、外壁部1aと内壁部1bの下端部同士を連結する下壁部1dを備えている。
上壁部1cは左側程下方に移行するように傾斜状に形成され、下壁部1dは左側程上方に移行するように傾斜状に形成されている。
上下1対のボルト取付部材40は、水平面に対して面対称構造であるため、主に上側のボルト取付部材40について説明する。
ボルト取付部材40は、本体部41と、この本体部41の後端側部分に固定され且つ本体部41の後端部から後方に延びる2本のボルト部42等を備えている。
図10に示すように、本体部41の後端部は、上壁部1cの後端部よりも後側に突出するように配置されている。本体部41の前端部分には、前側壁部41a(基端側壁部)が形成されている。この前側壁部41aは、前側程上壁部1cに近接するように傾斜状に構成されている。それ故、本体部41の天井部分の前後長は底部分の前後長よりも短く形成され、上壁部1cの後端部よりも後側に位置する底部分の前後長は上壁部1cの後端部よりも前側に位置する底部分の前後長よりも短く形成されている。
これらのボルト部42の前端側部分は、前端部が上壁部1cの後端部に対応する位置に配置されるように本体部41の内部に夫々固着されている。
これにより、ボルト部42の支持強度と本体部41の接合強度とを確保しながら、ボルト取付部材40の小型軽量化を図っている。
下側のボルト取付部材40は、上側のボルト取付部材40と水平面に対して面対称構造であるため、詳細な説明を省略する。
図1に示すように、フロアパネル2は、前端側部分にリヤシート(図示略)が搭載され、後端側部分にスペアタイヤ(図示略)を格納可能なスペアタイヤパン2aが形成されている。このフロアパネル2の左右両端部分は、1対のリヤサイドフレーム1の夫々の内壁部1bに溶接にて接合されている。スペアタイヤパン2aは、フロアパネル2の荷室に対応する部位において下方に凹入するように形成されている。
図1〜図5に示すように、バンパレイン3は、アルミ合金材料を押出成形にて一体部品として成形されている。
このバンパレイン3は、略水平状に左右に延びる閉断面を構成し、平面視にて中央部分が後方に突出した緩湾曲状に形成されている。
図12に示すように、バンパレイン3の前側壁部の左右両端側部分には上下1対のボルト穴3aが夫々形成され、後側壁部の左右両端側部分には締結作業用の上下1対の作業穴3bが夫々形成されている。
クラッシュカン10は、長繊維である炭素繊維を強化材とした炭素繊維樹脂(CFRP)成形体を成形することにより(例えばRTM法)、右側(車幅方向内側)部分が開放された開断面部材として一体形成されている。
RTM法とは、炭素繊維のプリフォームを上下分離可能な成形型のキャビティ内にセットし、このキャビティ内に溶融させた合成樹脂を射出する成形方法である。
側壁部11は、略部分円錐状に構成され、前後方向に直交する縦断面にて中段部分が左方に膨出することにより右方に開口するように形成されている。
これにより、車両衝突時、逐次破壊された炭素繊維樹脂をクラッシュカン10の外部に排出することができ、クラッシュカン10を潰し切ることができる。
上側湾曲部11a及び下側湾曲部11cは、前後方向に直交する縦断面が部分円弧形状に形成され、その直径は後側程小さくなるように形成されている。
上下2つの中間湾曲部11bは、前後方向に直交する縦断面が部分円弧形状に夫々形成され、それらの直径は前後に亙って略一定に夫々形成されている。
それ故、側壁部11は、側面視にて、前側程上下幅が大きくなるように形成されている。
上側湾曲部11aの下端部と下側中間湾曲部11bの上端部とが湾曲状に連なっているため、側壁部11の中段部分には右方に凹入した前後に延びる凹部が形成されている。
図9に示すように、炭素繊維樹脂に含まれる炭素繊維の大部分に相当する第1炭素繊維51は、炭素繊維樹脂成形体の前端から後端に亙って連続して一様に延びる単繊維(フィラメント)が所定数(例えば12k)束ねられた繊維束(トウ)で構成され、炭素繊維樹脂に含まれる炭素繊維の一部に相当する第2炭素繊維52は、炭素繊維樹脂成形体の上端から下端に亙って連続して一様に延びる単繊維が所定数束ねられた繊維束で構成されている。炭素繊維の単繊維の直径は、例えば7〜10μmである。炭素繊維樹脂成形体の母材53には、熱硬化性エポキシ系合成樹脂が使用されている。
それ故、側壁部11に前後方向の圧縮荷重が作用した場合、フロンズ部に相当する第1炭素繊維51部分がピラー部に相当する第1炭素繊維51部分に先行して剥離破壊し、その後、ピラー部に相当する第1炭素繊維51部分が圧縮破壊される。この剥離破壊と圧縮破壊とが、後端部(圧縮荷重入力側端部)から逐次前方に進行する逐次破壊が行われる。
これにより、左右幅の大きなピラー部を安定的に形成し、大きなEA量を確保している。
しかも、フロンズ部に相当する第1炭素繊維51部分が剥離破壊するとき、第2炭素繊維52が複数の第1炭素繊維51の間にファイバーブリッジを形成するため、引張荷重によって切断される第2炭素繊維52の切断エネルギをエネルギ吸収に利用している。
これにより、バンパレイン3を介して入力された圧縮荷重は、先端壁部12によって側壁部11の後端部全域に一様に分散伝達される。
図12に示すように、先端壁部12は、バンパレイン3の前側壁部に沿うように側壁部11の後端部から折り曲げられ、側壁部11と先端壁部12との交差角度θが鈍角、具体的には90°〜120°の範囲に設定されている。この交差角度θは、好ましくは、95°〜115°の範囲であり、本実施例では、約100°に設定されている。
これにより、バンパレイン3から先端壁部12に前後方向の圧縮荷重が入力したとき、側壁部11と先端壁部12との境界部分(角部分)に入力した荷重を集中的に作用させて破壊起点を生成している。
図4,図12,図15に示すように、先端壁部12には、バンパレイン3を装着するために上下1対の取付部12a(開口部)が形成されている。
それ故、上下1対の取付部12aの周辺では、第1炭素繊維51が切断された繊維切断部分が形成されており、バンパレイン3の支持強度が低下している。
そこで、取付部12aには、ボルト15と螺合可能なナット部材14を内嵌している。
これにより、バンパレイン3の上下1対のボルト穴3aに挿通された1対のボルト15を先端壁部12に内嵌されたナット部材14に締結することにより、バンパレイン3をクラッシュカン10の後端部に取り付けている。
図5,図10,図11,図15に示すように、外側ブラケット20及び内側ブラケット30は、クラッシュカン10の前端側部分(側壁部11の前端側部分の一部及びフランジ部13)をクラッシュカン10の厚さ方向から挟み込んでリヤサイドフレーム1に支持されたボルト取付部40に固定するように構成されている。
これにより、クラッシュカン10の前端側部分に繊維切断部分を形成することなく、リヤサイドフレーム1にクラッシュカン10を取り付けることができる。
取付部23は、本体部21の放射方向外側に設けられている。この取付部23は、本体部21の上側位置及び下側位置に左右1対のボルト穴23aを夫々有している。
これらのボルト穴23aは、クラッシュカン10をリヤサイドフレーム1に取り付けるとき、ボルト取付部材40のボルト部42が夫々挿通可能な位置に形成されている。
外側ブラケット20及び内側ブラケット30によってクラッシュカン10を挟持するとき、各ボルト穴32bに挿通されたボルト33が締結穴22bに締結されている。
これにより、傾斜部22と傾斜部32が重畳されると共に、本体部21と本体部31が、側壁部11の前端側部分の一部及びフランジ部13に圧着され、クラッシュカン10と外側ブラケット20と内側ブラケット30が一体的にユニット化される。
車体側において、準備工程として、リヤサイドフレーム1の上壁部1c及び下壁部1dにボルト取付部材40を夫々接合する。
クラッシュカン10の前端側部分の外周側に外側ブラケット20を重ね合わせ、前端側部分の内周側に内側ブラケット30を重ね合わせた後、ボルト33をボルト穴32bに挿通させて締結穴22bに締結することにより、クラッシュカン10はブラケット20,30と一体化されたクラッシュカンユニットを形成する。
このとき、ボルト取付部材40の本体部41の底部がリヤサイドフレーム1の後端部よりも後方に突出しているため、外側ブラケット20の本体部21の外周部が本体部41の底部に沿って前方に誘導され、ボルト部42がボルト穴23aに挿通される。
ボルト穴23aに挿通されたボルト部42にナット43を締結してクラッシュカンユニットをリヤサイドフレーム1に連結固定する。
尚、バンパレイン3は、クラッシュカンユニットをリヤサイドフレーム1に締結固定する前に、予めクラッシュカン10に連結しても良く、また、クラッシュカンユニットをリヤサイドフレーム1に締結固定した後にクラッシュカン10に連結しても良い。
この衝撃吸収部材構造によれば、前後方向に連続して延びるように配列された複数の第1炭素繊維51を含む左右1対のCFRP製クラッシュカン10を有するため、車両衝突時、クラッシュカン10の逐次破壊を用いて衝撃エネルギを吸収することができる。
クラッシュカン10が、前後に延びる側壁部11と、側壁部11に連なり且つバンパレイン3を取り付けるための取付部12aが形成された先端壁部12とを備え、側壁部11と先端壁部12との交差角度θが鈍角になるように形成されているため、車両衝突時、入力された荷重を側壁部11と先端壁部12との境界部分に集中的に作用させて破壊起点を生成することができる。
1〕前記実施形態においては、リヤサイドフレームに取り付けられるリヤ側のクラッシュカンに適用した例を説明したが、フロントサイドフレームに取り付けられるフロント側のクラッシュカンに適用しても良い。
また、車幅方向内側が開放された部分筒状の開断面部材に構成されたクラッシュカンに適用した例を説明したが、車幅方向外側が開放された開断面部材に構成しても良く、前後方向に直交する縦断面が矩形状、所謂側壁部が板状であっても良い。
また、母材樹脂についても、クラッシュカンの仕様に応じて任意に選択することができる。
10 クラッシュカン
11 側壁部
12 先端壁部
12a 取付部
51 第1炭素繊維
52 第2炭素繊維
V 車両
θ 交差角度
Claims (4)
- 車体前後方向先端側部分に配設され且つ前後方向に連続して延びるように配列された複数の強化繊維を含む左右1対の繊維強化樹脂製衝撃吸収部材と、前記1対の衝撃吸収部材の先端部に取り付けられた車幅方向に延びるバンパレインフォースメントとを備えた車両の衝撃吸収部材構造において、
前記衝撃吸収部材が、前後方向に延びる側壁部と、前記側壁部に連なり且つ前記バンパレインフォースメントを取り付けるための取付部が形成された先端壁部とを備え、
前記側壁部と先端壁部との交差角度が鈍角になるように形成されていることを特徴とする車両の衝撃吸収部材構造。 - 前記側壁部の上端部から下端部に亙って前記交差角度が鈍角になるように形成されていることを特徴とする請求項1に記載の車両の衝撃吸収部材構造。
- 前記衝撃吸収部材が、前記側壁部の先端部に形成された先端壁部を備えた開断面部材に形成されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の車両の衝撃吸収部材構造。
- 前記バンパレインフォースメントは、平面視にて中央部分が先端側に突出した緩湾曲状に形成されていることを特徴とする請求項1〜3の何れか1項に記載の車両の衝撃吸収部材構造。
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