JP2017094565A - 粒状ポリグリコール酸系樹脂組成物の製造方法 - Google Patents

粒状ポリグリコール酸系樹脂組成物の製造方法 Download PDF

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文夫 阿久津
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Abstract

【課題】定形の粒状ポリグリコール酸系樹脂組成物を効率的に製造する方法を提供すること。
【解決手段】ポリグリコール酸系樹脂の重量平均分子量Mwとポリグリコール酸系樹脂組成物中のグリコリド含有量WGL(単位:質量%)とが下記式(1):
GL≦(Mw−4.2×10)/9.8×10 (1)
で表される条件を満たす溶融状態のポリグリコール酸系樹脂組成物を水性冷却媒体中に押出すと同時に粒状化することを特徴とする粒状ポリグリコール酸系樹脂組成物の製造方法。
【選択図】なし

Description

本発明は、粒状ポリグリコール酸系樹脂組成物の製造方法に関する。
ポリグリコール酸系樹脂は微生物分解性や加水分解性に優れているため、環境に対する負荷が小さい生分解性高分子材料として注目されている。このようなポリグリコール酸系樹脂を含有する樹脂組成物を、通常、ペレット等の粒状物に成形して、押出成形や射出成形等の各種成形加工に使用している。
粒状のポリグリコール酸系樹脂組成物は、従来、溶融押出等により溶融状態のポリグリコール酸系樹脂組成物のストランドを作製した後、これを冷却固化させ、固化したストランドを切断することによって製造されていた(特開2005−161673号公報(特許文献1))。
特開2005−161673号公報
しかしながら、従来の粒状ポリグリコール酸系樹脂組成物の製造方法においては、固化したストランドを切断するため、粒状ポリグリコール酸系樹脂組成物は不定形になりやすいという問題があった。
本発明は、上記従来技術の有する課題に鑑みてなされたものであり、定形の粒状ポリグリコール酸系樹脂組成物を効率的に製造する方法を提供することを目的とする。
本発明者らは、上記目的を達成すべく鋭意研究を重ねた結果、ポリグリコール酸系樹脂の重量平均分子量とポリグリコール酸系樹脂組成物中のグリコリド含有量とが特定の条件を満たすポリグリコール酸系樹脂組成物の溶融押出と粒状化を同時に行うことによって、定形の粒状ポリグリコール酸系樹脂組成物を効率的に製造できることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明の粒状ポリグリコール酸系樹脂組成物の製造方法は、ポリグリコール酸系樹脂の重量平均分子量Mwとポリグリコール酸系樹脂組成物中のグリコリド含有量WGL(単位:質量%)とが下記式(1):
GL≦(Mw−4.2×10)/9.8×10 (1)
で表される条件を満たす溶融状態のポリグリコール酸系樹脂組成物を水性冷却媒体中に押出すと同時に粒状化することを特徴とするものである。
本発明の粒状ポリグリコール酸系樹脂組成物の製造方法においては、前記溶融状態のポリグリコール酸系樹脂組成物の温度が230℃以上310℃以下であることが好ましい。また、前記水性冷却媒体を分離除去した直後の粒状ポリグリコール酸系樹脂組成物の温度が30℃以上180℃以下となるように、粒状化したポリグリコール酸系樹脂組成物を前記水性冷却媒体に1秒以上30秒以下の範囲内で接触させた後、粒状ポリグリコール酸系樹脂組成物から前記水性冷却媒体を分離除去することが好ましい。さらに、前記ポリグリコール酸系樹脂の重量平均分子量Mwとしては、5万〜30万が好ましい。
また、本発明の粒状ポリグリコール酸系樹脂組成物の製造方法において、前記水性冷却媒体を分離除去した直後の前記粒状ポリグリコール酸系樹脂組成物の温度が30℃以上110℃以下となるように、前記粒状化したポリグリコール酸系樹脂組成物を前記水性冷却媒体に接触させると、ポリグリコール酸系樹脂組成物の非晶粒状物を得ることができる。前記水性冷却媒体を分離除去した直後の温度が30℃以上110℃以下の前記粒状ポリグリコール酸系樹脂組成物を得るためには、前記粒状化したポリグリコール酸系樹脂組成物を前記水性冷却媒体に5秒超過30秒以下の範囲内で接触させることが好ましい。
一方、本発明の粒状ポリグリコール酸系樹脂組成物の製造方法において、前記水性冷却媒体を分離除去した直後の前記粒状ポリグリコール酸系樹脂組成物の温度が110℃超過180℃以下となるように、前記粒状化したポリグリコール酸系樹脂組成物を前記水性冷却媒体に接触させ、前記粒状ポリグリコール酸系樹脂組成物から前記水性冷却媒体を分離除去した後、徐冷すると、ポリグリコール酸系樹脂組成物の結晶粒状物を得ることができる。前記水性冷却媒体を分離除去した直後の温度が110℃超過180℃以下の前記粒状ポリグリコール酸系樹脂組成物を得るためには、前記粒状化したポリグリコール酸系樹脂組成物を25℃以上80℃以下の前記水性冷却媒体に1秒以上5秒以下の範囲内で接触させることが好ましい。
なお、本発明において、ポリグリコール酸系樹脂組成物中のグリコリド含有量WGLは以下の方法により測定されるものである。すなわち、ポリグリコール酸系樹脂組成物に、内部標準物質4−クロロベンゾフェノンを含有するジメチルスルホキシド2gを添加し、150℃で約5分間加熱してポリグリコール酸系樹脂組成物を溶解させ、得られた溶液を室温まで冷却した後、ろ過し、ろ液を下記条件でガスクロマトグラフィ(GC)分析して、ポリグリコール酸系樹脂組成物中のグリコリド含有量WGLを算出する。
<GC分析条件>
カラム温度:150℃で5分間保持後、20℃/分で270℃まで昇温して、270℃で3分間保持
気化室温度:180℃
検出器:FID(水素炎イオン化検出器)、温度:300℃。
また、本発明において、「溶融状態のポリグリコール酸系樹脂組成物を押出すと同時に粒状化する」とは、溶融状態のポリグリコール酸系樹脂組成物を押出してから粒状化するまでの時間が0.5秒以内の場合を意味する。
さらに、本発明において、「定形の粒状物」とは、短辺と長辺との比が下記式(i):
0.6≦短辺/長辺≦1 (i)
で表される条件を満たす粒状物の個数の割合が全粒状物の75%以上である粒状物群を意味し、「不定形の粒状物」とは、短辺と長辺との比が前記式(i)で表される条件を満たす粒状物の個数の割合が全粒状物の25%未満である粒状物群を意味する。
本発明によれば、定形の粒状ポリグリコール酸系樹脂組成物を効率的に製造することが可能となる。
合成例において、ポリグリコール酸系樹脂の合成の際に使用した装置を示す概略図である。 実施例7で得られた粒状ポリグリコール酸系樹脂組成物の示差走査熱量測定結果を示すグラフである。 実施例10で得られた粒状ポリグリコール酸系樹脂組成物の示差走査熱量測定結果を示すグラフである。
以下、本発明をその好適な実施形態に即して詳細に説明する。
先ず、本発明に用いられるポリグリコール酸系樹脂組成物について説明する。本発明に用いられるポリグリコール酸系樹脂組成物(以下、「PGA系樹脂組成物」という)はポリグリコール酸系樹脂(以下、「PGA系樹脂」という)を含有するものであり、必要に応じて、熱安定剤、末端封止剤、可塑剤、熱線吸収剤、紫外線吸収剤、顔料等の公知の各種添加剤を含んでいてもよい。
<PGA系樹脂>
本発明に用いられるPGA系樹脂は、下記式(2):
−[O−CH−C(=O)]− (2)
で表されるグリコール酸繰り返し単位のみからなるグリコール酸の単独重合体(以下、「PGA単独重合体」という。グリコール酸の2分子間環状エステルであるグリコリドの開環重合体を含む。)、前記グリコール酸繰り返し単位を70質量%以上(好ましくは80質量%以上、より好ましくは90質量%以上)含むポリグリコール酸共重合体(以下、「PGA共重合体」という。)等が挙げられる。このようなPGA系樹脂は、1種を単独で使用しても2種以上を併用してもよい。
前記PGA共重合体を製造する際に、グリコール酸モノマーとともに使用されるコモノマーとしては、シュウ酸エチレン(すなわち、1,4−ジオキサン−2,3−ジオン)、ラクチド類、ラクトン類(例えば、β−プロピオラクトン、β−ブチロラクトン、β−ピバロラクトン、γ−ブチロラクトン、δ−バレロラクトン、β−メチル−δ−バレロラクトン、ε−カプロラクトン等)、カーボネート類(例えば、トリメチレンカーボネート等)、エーテル類(例えば、1,3−ジオキサン等)、エーテルエステル類(例えば、ジオキサノン等)、アミド類(ε−カプロラクタム等)等の環状モノマー;乳酸、3−ヒドロキシプロパン酸、3−ヒドロキシブタン酸、4−ヒドロキシブタン酸、6−ヒドロキシカプロン酸等のヒドロキシカルボン酸又はそのアルキルエステル;エチレングリコール、1,4−ブタンジオール等の脂肪族ジオール類と、こはく酸、アジピン酸等の脂肪族ジカルボン酸類又はそのアルキルエステル類との実質的に等モルの混合物を挙げることができる。これらのコモノマーは1種を単独で使用しても2種以上を併用してもよい。このようなコモノマーのうち、耐熱性の観点からヒドロキシカルボン酸が好ましい。
また、前記PGA系樹脂をグリコリドの開環重合によって製造する場合に使用する触媒としては、二塩化スズ等のハロゲン化スズ、有機カルボン酸スズ等のスズ系化合物;アルコキシチタネート等のチタン系化合物;アルコキシアルミニウム等のアルミニウム系化合物;ジルコニウムアセチルアセトン等のジルコニウム系化合物;ハロゲン化アンチモン、酸化アンチモン等のアンチモン系化合物といった公知の開環重合触媒が挙げられる。
前記PGA系樹脂は従来公知の重合方法により製造することができるが、その重合温度としては、120〜300℃が好ましく、130〜250℃がより好ましく、140〜220℃が特に好ましく、150〜200℃が最も好ましい。重合温度が前記下限未満になると重合が十分に進行しない傾向にあり、他方、前記上限を超えると生成した樹脂が熱分解する傾向にある。また、重合時間としては、2分間〜50時間が好ましく、3分間〜30時間がより好ましく、5分間〜18時間が特に好ましい。重合時間が前記下限未満になると重合が十分に進行しない傾向にあり、他方、前記上限を超えると生成した樹脂が着色する傾向にある。
前記PGA系樹脂の重量平均分子量Mwとしては、5万〜30万が好ましく、7万〜20万がより好ましい。PGA系樹脂の重量平均分子量Mwが前記下限未満になると、粒状PGA系樹脂組成物の強度が低下する傾向にあり、他方、前記上限を超えると、PGA系樹脂組成物の溶融押出や成形加工が困難となる傾向にある。なお、前記重量平均分子量Mwはゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)により測定したポリメタクリル酸メチル換算値である。
また、前記PGA系樹脂の溶融粘度(温度:240℃、剪断速度:100sec−1)としては、100〜10000Pa・sが好ましく、300〜8000Pa・sがより好ましく、400〜5000Pa・sが特に好ましい。溶融粘度が前記下限未満になると、粒状PGA系樹脂組成物の強度が低下する傾向にあり、他方、前記上限を超えると、PGA系樹脂組成物の溶融押出や成形加工が困難となる傾向にある。
<熱安定剤>
前記熱安定剤としては、リン酸エステル化合物が挙げられ、ペンタエリスリトール骨格構造(又はサイクリックネオペンタンテトライル構造)を有するリン酸エステル、少なくとも1つの水酸基と少なくとも1つのアルキルエステル基を有するリン酸アルキルエステル、具体的には国際公開第2004/087813号に記載のリン化合物が好ましい。このようなリン酸エステル化合物は1種を単独で使用しても2種以上を併用してもよい。前記熱安定剤の添加量としては、PGA系樹脂100質量部に対して0.003〜3質量部(PGA系樹脂に対して30〜30000ppm)が好ましく、0.005〜1質量部(PGA系樹脂に対して50〜10000ppm)がより好ましく、0.01〜0.5質量部(PGA系樹脂に対して100〜5000ppm)が特に好ましい。熱安定剤の添加量が前記下限未満になると、PGA系樹脂組成物が熱により着色する傾向にあり、他方、前記上限を超えると、その添加効果が飽和する傾向にある。
<末端封止剤>
前記末端封止剤としてはカルボキシル基封止剤が挙げられる。このカルボキシル基封止剤としては、カルボキシル基を封止する作用を有し、ポリ乳酸等の脂肪族ポリエステルの耐水性向上剤として知られているもの(例えば、特開2001−261797号公報に記載のもの)を一般に用いることができ、例えば、N,N−2,6−ジイソプロピルフェニルカルボジイミド等のモノカルボジイミド及びポリカルボジイミドを含むカルボジイミド化合物、2,2’−m−フェニレンビス(2−オキサゾリン)、2,2’−p−フェニレンビス(2−オキサゾリン)、2−フェニル−2−オキサゾリン、スチレン・イソプロぺニル−2−オキサゾリン等のオキサゾリン化合物、2−メトキシ−5,6−ジヒドロ−4H−1,3−オキサジン等のオキサジン化合物、N−グリシジルフタルイミド、シクロヘキセンオキシド、トリグリシジルイソシアヌレート等のエポキシ化合物等が挙げられる。これらのカルボキシル基封止剤は1種を単独で使用しても2種以上を併用してもよい。このようなカルボキシル基封止剤のうち、カルボジイミド化合物及びエポキシ化合物が好ましい。前記末端封止剤の添加量としては、PGA系樹脂100質量部に対して0.01〜20質量部が好ましく、0.1〜10質量部がより好ましく、0.5〜5質量部が特に好ましい。末端封止剤の添加量が前記下限未満になると、PGA系樹脂組成物の耐水性が低下する傾向にあり、他方、前記上限を超えると、その添加効果が飽和し、またPGA系樹脂組成物が着色する傾向にある。
(PGA系樹脂組成物)
本発明に用いられるPGA系樹脂組成物は、PGA系樹脂を含有し、PGA系樹脂の重量平均分子量MwとPGA系樹脂組成物中のグリコリド含有量WGL(単位:質量%)とが下記式(1):
GL≦(Mw−4.2×10)/9.8×10 (1)
で表される条件を満たすものである。PGA系樹脂組成物中のグリコリド含有量WGLが前記式(1)の右辺から求められる値より大きくなると、PGA系樹脂組成物の見掛け溶融粘度が低くなり、定形の粒状PGA系樹脂組成物を得ることが困難となる。なお、グリコリド含有量WGLの下限は、通常、WGL≧0質量%である。
PGA系樹脂組成物中のグリコリドの由来は、特に制限されないが、一般には、PGA系樹脂を製造する際に原料として用いたグリコリドが残存したものである。したがって、定形の粒状PGA系樹脂組成物を得るためには、PGA系樹脂中のグリコリド含有量を低減することが好ましい。PGA系樹脂中のグリコリド含有量を低減する方法としては、グリコリドを開環重合してPGA系樹脂を製造する際に、少なくとも重合後期を固相重合反応として進行させ、反応率を高め、生成したPGA系樹脂から残留グリコリドを気相へ脱離除去する方法が挙げられる。なお、PGA系樹脂組成物中のグリコリド含有量の上限については、前記式(1)で表される条件を満たす限り、特に制限はないが、製造上、5質量%以下(WGL≦5質量%)が好ましい。また、本発明においては、PGA系樹脂組成物中のグリコリドは完全に除去(WGL=0質量%)する必要はなく、前記式(1)で表される条件を満たす限り、PGA系樹脂組成物中にグリコリドが含まれていてもよい(WGL>0質量%)。
(粒状PGA系樹脂組成物の製造方法)
本発明の粒状PGA系樹脂組成物の製造方法は、PGA系樹脂の重量平均分子量MwとPGA系樹脂組成物中のグリコリド含有量WGL(単位:質量%)とが前記式(1)で表される条件を満たす溶融状態のポリグリコール酸系樹脂組成物を水性冷却媒体中に押出すと同時に粒状化することによって、粒状PGA系樹脂組成物を得る方法である。
本発明に用いられる溶融状態のPGA系樹脂組成物は、前記PGA系樹脂に、必要に応じて熱安定剤や末端封止剤等の各種添加剤を添加し、これを溶融混練することによって調製することができる。添加剤の添加方法としては特に制限はなく、公知の方法を採用することができる。また、溶融混練方法としては特に制限はなく、例えば、攪拌機や連続式混練機、押出機を用いる方法等が挙げられ、中でも、短時間処理が可能であり、その後の冷却工程へ円滑な移行が可能であるという観点から押出機(特に、二軸混練押出機)を用いる方法が好ましい。
溶融混練時の加熱温度(溶融状態のPGA系樹脂組成物の温度)としては230℃以上310℃以下が好ましい。溶融状態のPGA系樹脂組成物の温度が前記下限未満になると、熱安定剤や末端封止剤等の各種添加剤の添加効果が十分に発揮されない傾向にあり、他方、前記上限を超えると、PGA系樹脂組成物が着色する傾向にある。
また、着色の少ないPGA系樹脂組成物が効率的に得られるという点で、国際公開第2007/086563号に記載の方法、すなわち、グリコリドを開環重合して部分重合体を合成し、この部分重合体の溶融物を二軸撹拌装置中に連続的に導入して固体粉砕状態の部分重合体を得た後、この部分重合体の固体粉砕物を固相重合させ、生成した重合体に必要に応じて添加剤を添加した後、溶融混練する方法により溶融状態のPGA系樹脂組成物を製造することが好ましい。
さらに、PGA系樹脂に熱安定剤とカルボキシル基封止剤を添加する場合には、着色の少ないPGA系樹脂組成物を得るために、PGA系樹脂に熱安定剤を添加して溶融混合した後、この溶融混合物にカルボキシル基封止剤を添加して溶融混合することが好ましい。
本発明に用いられる水性冷却媒体としては、水単独(水道水、イオン交換水)、水と相溶性の溶媒(アルコール類、エステル類)と水との混合溶媒が挙げられる。このような水性冷却媒体のうち、環境衛生、経済性、熱効率等の観点から、水単独が好ましいが、粒状物の滑り性をよくするために、石鹸等の界面活性剤を、本発明の効果を阻害しない範囲で添加してもよい。
水性冷却媒体の温度としては、製造コストの観点から、5℃以上が好ましく、10℃以上がより好ましく、15℃以上が特に好ましい。また、水性冷却媒体の温度の上限としては80℃以下が好ましい。水性冷却媒体の温度が前記上限を超えると、PGA粒状物の冷却が不十分のため、得られた粒状物の高温での取扱い性が劣る傾向にある。また、PGA系樹脂が加水分解しやすくなり、この時生成する酸により循環冷却水が酸性となるため、排水処理や配管のメンテナンス等に多くの注意を払う必要がある。
溶融状態のPGA系樹脂組成物を水性冷却媒体中に押出すと同時に粒状化する方法としては、直径数ミリメートルの穴を多数開けたダイプレートを通し水性冷却媒体中に連続的に押出された直径数ミリメートルの溶融状態のPGA系樹脂組成物を切断装置を用いてカッティングする方法が挙げられる。前記切断装置としては、水性冷却媒体中でPGA系樹脂組成物を切断できるものであれば特に制限はなく、例えば、カッターが挙げられる。
本発明の粒状PGA系樹脂組成物の製造方法においては、このようにして粒状化されたPGA系樹脂組成物を、引き続き、水性冷却媒体中で冷却することによって固化させ、その後、前記水性冷却媒体を分離除去することによって、粒状PGA系樹脂組成物を得ることができる。このとき、前記水性冷却媒体を分離除去した直後の粒状PGA系樹脂組成物の温度が30℃以上180℃以下となるように、前記粒状化されたPGA系樹脂組成物を前記水性冷却媒体に接触させて冷却した後、前記粒状PGA系樹脂組成物から前記水性冷却媒体を分離除去することが好ましい。前記水性冷却媒体を分離除去した直後の粒状PGA系樹脂組成物の温度が前記範囲内にあると、前記水性冷却媒体の含有率が低い(好ましくは1500ppm以下、より好ましくは900ppm以下、更に好ましくは600ppm以下、特に好ましくは500ppm以下、最も好ましくは450ppm以下)粒状PGA系樹脂組成物を得ることができ、乾燥処理が不要になるか、極めて容易になる。
粒状PGA系樹脂組成物の冷却時間(水性冷却媒体中に押出してからの時間(水性冷却媒体との接触時間))としては、特に制限はないが、1秒以上30秒以下が好ましく、1秒以上15秒以下がより好ましく、2秒以上10秒以下が更に好ましい。冷却時間を前記範囲内とすることによって、前記水性冷却媒体の含有率が低い(好ましくは1500ppm以下、より好ましくは1200ppm以下、更に好ましくは900ppm以下、特に好ましくは500ppm以下、最も好ましくは200ppm以下)粒状PGA系樹脂組成物を得ることができる。一方、冷却時間が前記下限未満になると、PGA系樹脂組成物が十分に冷却されず、粒状物同志で合一しやすく、定形の粒状物が得られにくい傾向にあり、他方、前記上限を超えると、得られる粒状PGA系樹脂組成物の含水率が高くなる傾向にある。
前記粒状PGA系樹脂組成物から前記水性冷却媒体を分離除去する方法としては旋廻遠心脱水機を用いた連続遠心分離が好ましい。なお、分離除去時の温度雰囲気は、前記水性冷却媒体を分離除去した直後の粒状PGA系樹脂組成物の温度が前記範囲内であれば、加熱等により強制的に保持する必要はない。旋廻遠心脱水時間は正確に調整できないが、数秒間から数十秒間である。
本発明の粒状PGA系樹脂組成物の製造方法において、前記水性冷却媒体を分離除去した直後の粒状PGA系樹脂組成物の温度が30℃以上110℃以下となるように、前記粒状化したPGA系樹脂組成物を前記水性冷却媒体に接触させると、主成分として非晶粒状物を含有する粒状PGA系樹脂組成物を得ることができる。なお、本発明において、「主成分」とは50質量%以上(好ましくは75質量%以上)含有される成分を意味する(以下、同様)。前記水性冷却媒体を分離除去した直後の温度が30℃以上110℃以下の粒状PGA系樹脂組成物を得るためには、前記粒状化したPGA系樹脂組成物を前記水性冷却媒体に5秒超過30秒以下(より好ましくは5秒超過15秒以下、特に好ましくは5秒超過10秒以下)の範囲内で接触させることが好ましい。この場合、前記水性冷却媒体の温度としては5℃以上80℃以下(より好ましくは10℃以上80℃以下、特に好ましくは15℃以上80℃以下)が好ましい。また、前記水性冷却媒体の温度が5℃以上25℃未満の場合には、前記粒状化したPGA系樹脂組成物と前記水性冷却媒体との接触時間(前記粒状化したPGA系樹脂組成物の冷却時間)が5秒以下であっても、前記水性冷却媒体を分離除去した直後の温度が30℃以上110℃以下の前記粒状PGA系樹脂組成物を得ることができる。
また、本発明の粒状PGA系樹脂組成物の製造方法においては、前記水性冷却媒体を分離除去した直後の粒状PGA系樹脂組成物の温度が110℃超過180℃以下となるように、前記粒状化したPGA系樹脂組成物を前記水性冷却媒体に接触させ、次いで、前記粒状PGA系樹脂組成物から前記水性冷却媒体を分離除去した後、前記粒状PGA系樹脂組成物をその結晶化温度以下まで直ちに急冷(好ましくは2分以内)した場合にも、主成分として非晶粒状物を含有する粒状PGA系樹脂組成物を得ることができる。前記水性冷却媒体を分離除去した直後の温度が110℃超過180℃以下の粒状PGA系樹脂組成物を得るためには、前記粒状化したPGA系樹脂組成物を25℃以上80℃以下の前記水性冷却媒体に1秒以上5秒以下(より好ましくは2秒以上5秒以下、特に好ましくは2秒以上3秒以下)の範囲内で接触させることが好ましい。
一方、本発明の粒状PGA系樹脂組成物の製造方法において、前記水性冷却媒体を分離除去した直後の粒状PGA系樹脂組成物の温度が110℃超過180℃以下となるように、前記粒状化したPGA系樹脂組成物を前記水性冷却媒体に接触させ、次いで、前記粒状PGA系樹脂組成物から前記水性冷却媒体を分離除去した後、直ちに徐冷すると、主成分として結晶粒状物を含有する粒状PGA系樹脂組成物を得ることができる。前記水性冷却媒体を分離除去した直後の温度が110℃超過180℃以下の粒状PGA系樹脂組成物を得るためには、前記粒状化したPGA系樹脂組成物を25℃以上80℃以下の前記水性冷却媒体に1秒以上5秒以下(より好ましくは2秒以上5秒以下、特に好ましくは2秒以上3秒以下)の範囲内で接触させることが好ましい。この場合、前記溶融状態のPGA系樹脂組成物の温度としては260℃以上280℃以下が好ましい。前記粒状PGA系樹脂組成物の徐冷方法としては特に制限はないは、例えば、振動式コンベヤー上で徐冷する方法が挙げられる。徐冷時間としては2分間以上が好ましく、5分間以上がより好ましい。徐冷時間が前記下限未満になると、結晶化温度まで十分に徐冷されず、その後、急冷されると結晶粒状物が得られない場合がある。
また、本発明の粒状PGA系樹脂組成物の製造方法においては、前記粒状化したPGA系樹脂組成物を結晶化するまで前記水性冷却媒体中で徐冷した場合にも、主成分として結晶粒状物を含有する粒状PGA系樹脂組成物を得ることができる。この場合、前記水性冷却媒体の温度としてはPGA系樹脂組成物の結晶化温度Tcよりも5℃低い温度(Tc−5℃)が好ましい。また、前記粒状化したPGA系樹脂組成物と前記水性冷却媒体との接触時間(前記粒状化したPGA系樹脂組成物の冷却時間)としては5秒超過30秒以下が好ましい。なお、この方法では、前記水性冷却媒体の含有量が多い結晶粒状物が得られる傾向にある。
このようにして得られる粒状PGA系樹脂組成物は、「定形」であり、その平均粒径(短辺/長辺<1の場合には、その体積に基づく真球相当平均直径)は通常1〜4mmであり、粒状物100個当たりの質量が0.1〜4.0g(好ましくは1.0〜3.0g)であり、各種成形材料の原料として適したものである。
また、結晶粒状物は、溶融温度以下であれば、粒状物同士の合一が生じないため、必要に応じた乾燥や保管条件の制限を受けないという点において有利であり、一方、非晶粒状物は、成形加工に使用した場合、溶融しやすく、結晶粒状物を用いた場合に比べて、押出成形時の機械的負荷を軽減でき、装置を小型化できるという点において有利である。
以下、実施例及び比較例に基づいて本発明をより具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。なお、PGA系樹脂の分子量、PGA系樹脂組成物中のグリコリド含有量及び含水率の測定、並びに粒状PGA系樹脂組成物の結晶性及び定形性の評価は以下の方法により実施した。
(分子量測定)
約5gのPGA系樹脂をアルミニウム板に挟み、260℃のヒートプレス機に載せて3分間加熱した後、5MPaで約5分間加圧保持した。その後、シート状のPGA系樹脂を直ちに循環水冷プレス機に移し、5MPaに加圧した状態で約5分間保持して透明な非晶質シートを作製した。得られた非晶質シートの一部(約10mg)をサンプルとして切り出し、このサンプルを5mMのトリフルオロ酢酸ナトリウムを溶解させたヘキサフルオロイソプロパノール(HFIP)溶液10mlに溶解させた。このサンプル溶液をポリテトラフルオロエチレン製メンブレンフィルター(孔径:0.1μm)で濾過した後、20μlをゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)装置に注入して下記条件で分子量を測定した。なお、サンプル溶液は、サンプル溶解後30分以内にGPC装置に注入した。
<GPC測定条件>
装置:昭和電工(株)製「Shodex−104」
カラム:HFIP−806Mを2本、プレカラムとしてHFIP−Gを1本直列に接続した。
カラム温度:40℃
溶離液:5mMのトリフルオロ酢酸ナトリウムを溶解させたHFIP溶液
流速:0.6ml/分
検出器:RI(示差屈折率)検出器
分子量校正:分子量の異なる標準ポリメタクリル酸メチル5種を用いた。
(グリコリド含有量測定)
約100mgのPGA系樹脂組成物(又はPGA系樹脂)に内部標準物質4−クロロベンゾフェノンを0.2g/lの濃度で含有するジメチルスルホキシド2gを添加し、150℃で約5分間加熱して前記PGA樹脂組成物(又は前記PGA系樹脂)を溶解させた。この溶液を室温まで冷却した後、ろ過し、ろ液を1μl採取し、ガスクロマトグラフィ(GC)装置に注入し、下記条件でGC分析を行なった。得られた測定結果から、PGA系樹脂組成物中(又はPGA系樹脂中)のグリコリド含有量(単位:質量%)を算出した。
<GC分析条件>
装置:島津製作所製「GC−2010」
カラム:「TC−17」(0.25mmΦ×30m)
カラム温度:150℃で5分間保持後、20℃/分で270℃まで昇温して、270℃で3分間保持
気化室温度:180℃
検出器:FID(水素炎イオン化検出器)、温度:300℃
なお、いくつかの実施例において、加熱溶融後、冷却前のPGA系樹脂組成物(溶融状態のPGA系樹脂組成物)中のグリコリド含有量と、冷却後の粒状PGA系樹脂組成物中のグリコリド含有量との間に、実質的な変化が見られないことが確認されたため、以下の実施例及び比較例では、冷却後の粒状PGA系樹脂組成物中のグリコリド含有量を溶融状態のPGA系樹脂組成物中のグリコリド含有量とみなした。
(含水率測定)
露点−40℃以下のドライルーム内で、粒状PGA系樹脂組成物(約5g)を小数点以下第4位までを正確に秤量し、微量水分測定装置(三菱化学(株)製「CA−100型」)を用いて、下記条件でPGA系樹脂組成物中の含水率を測定した。
<水分測定条件>
キャリアーガス:窒素250ml/h
遅延時間:1分間
測定液:三菱化学(株)製の一般用陽極液アクアミクロンAX(メタノール:50〜80%、プロピレンカーボネート:10〜20%、2,2’−イミノジエタノール:5〜15%、ヨウ素:1〜5%)。
(結晶性評価)
粒状PGA系樹脂組成物の色調を目視により観察し、白色の粒状物を「結晶粒状物」と判定し、半透明の粒状物を「非晶粒状物」と判定した。
(定形性評価)
粒状物の短辺及び長辺の長さを、ノギスを用いて直接測定したり、顕微鏡写真上で定規を用いて測定した。測定した100個の粒状物のうち、短辺と長辺の長さの比が下記式(i):
0.6≦短辺/長辺≦1 (i)
で表される条件を満たす粒状物の個数の割合が、75%以上である粒状PGA系樹脂組成物を「定形」と判定し、25%未満である粒状PGA系樹脂組成物を「不定形」と判定した。
(合成例1)
概要を図1に示す装置系を用い、グリコリドの開環重合によりポリグリコール酸(PGA)の製造を行った。すなわち、適宜ガス配管GL1を通して供給される乾燥空気(酸素濃度:約21vol%、露点:約−40℃)雰囲気に保持されたモノマータンク1中には粒径(長径基準)約2mmの粒状グリコリドを収容した。この粒状グリコリドを、ガス配管GL2を通して適宜供給される乾燥空気雰囲気に保持された内容積50Lのモノマー溶解槽2に移送配管L12を通して適時に適当量供給して100℃で加熱して融解した。
モノマー溶解槽2で融解したグリコリドから一部サンプリングし、グリコリド中の遊離カルボン酸を定量した。グリコリド中の遊離カルボン酸量は2.5eq/tであった。遊離カルボン酸量からグリコリド中のプロトン濃度を算出した。グリコリド中のプロトン濃度は0.03mol%であった。グリコリド中のプロトン濃度は遊離酸からグリコール酸2量体として算出した。
モノマー溶解槽2中の融解グリコリドを移送配管L23を通して、二軸の多段パドル翼による撹拌下で内温約170℃に設定された内容積1.8Lの縦型円筒状満液型の第1反応装置3の底部に33kg/hで連続的に供給した。同時に、移送配管L23の途中には、グリコリドのプロトン濃度0.03mol%と合わせて重合系内のプロトン濃度が0.40mol%となるように1−ドデカノールを加えた。
また、二塩化スズ(触媒)の酢酸エチル溶液(濃度:0.015g/mL)をグリコリドに対して30ppm(二塩化スズ質量基準)となるように、装置3の底部に連続的に供給した。第1反応装置3の上部から排出される内容物は、連続的に移送配管L34を通じて長手方向に4分割され、独立に200℃、200℃、200℃、200℃に温度設定されたジャケットを有する同方向・回転2軸横型の第2反応装置4((株)栗本鉄工所製「KRCニーダーS5型」)の装置連結部(ホッパー)41に供給された。この装置連結部41内は、ガス配管GL3から供給される乾燥窒素雰囲気に保持された。ガス配管GL3に供給される乾燥窒素(露点:約−40℃)は、同装置4の上部に生ずる空間も乾燥窒素雰囲気に保持するように設計されている。
撹拌下で排出された反応物は、連結部51を経て、温度約80℃に設定されたジャケットを有する同方向軸2軸横型の固化・粉砕装置5((株)栗本鉄工所製「KRCニーダーS4型」)に導入された。連結部51は、装置5のホッパーを覆う気密構造とされ、ガス配管GL4より導入された乾燥窒素は、連結部51を乾燥窒素雰囲気に保持するとともに装置5の内部空間も乾燥窒素雰囲気とするように設計されている。装置5内の平均滞留時間は約2分であり、その排出部からは平均粒径(長径基準)が約5mmの粒状反応物が約33kg/hrで排出された。定常状態に到達した後、これら3つの工程から成る重合反応の連続運転を5時間続けた。
固化・粉砕装置5から排出された粒状反応物は移送配管L56を経て、遊星型スクリュー撹拌機61を備え且つ内温制御可能な内容量約1mの逆円錐形状の混合装置((株)神鋼環境ソリューション製「SVミキサー」)からなる固相重合装置6に送られ、ここで約480kgまで粒状反応物を蓄積してから、内温170℃で2時間の固相重合を行った。その結果、重合反応率は99%超(グリコリド含有量WGL:0.2質量%)に達し、PGA樹脂の重量平均分子量Mwは10万であった。得られたPGA樹脂はフレーク状であった。
(合成例2)
合成例1と同様にして定量した融解グリコリド中の遊離カルボン酸量が4.5eq/tであり、この遊離カルボン酸量から算出した融解グリコリド中のプロトン濃度が0.05mol%である粒状グリコリドを原料とし、移送配管L23の途中で、重合系内のプロトン濃度が0.40mol%となるようにグリコリドのプロトン濃度0.05mol%に加えて1−ドデカノールを0.35mol%となるように加え、装置3の底部に供給する二塩化スズの酢酸エチル溶液(0.015g/mL)をグリコリドに対して60ppm(二塩化スズ質量基準)となるように変更し、固相重合装置6による固相重合を行わなかったこと以外は合成例1と同様の重合条件で、グリコリド含有量WGLが4.9質量%で、重量平均分子量Mwが10万のPGA樹脂を合成した。得られたPGA樹脂はフレーク状であった。
(合成例3)
合成例2と同様にして定量した融解グリコリド中の遊離カルボン酸量が2.0eq/tであり、この遊離カルボン酸量から算出した融解グリコリド中のプロトン濃度が0.02mol%である粒状グリコリドを原料とし、移送配管L23の途中で、重合系内のプロトン濃度が0.40mol%となるようにグリコリドのプロトン濃度0.02mol%に加えて1−ドデカノールを0.38mol%となるように加えたこと以外は合成例2と同様の重合条件で、グリコリド含有量WGLが1.9質量%で、重量平均分子量Mwが10万であるPGA樹脂を合成した。得られたPGA樹脂はフレーク状であった。
(合成例4)
合成例2と同様にして定量した融解グリコリド中の遊離カルボン酸量が1.0eq/tであり、この遊離カルボン酸量から算出した融解グリコリド中のプロトン濃度が0.01mol%である粒状グリコリドを原料とし、移送配管L23の途中で、重合系内のプロトン濃度が0.40mol%となるようにグリコリドのプロトン濃度0.01mol%に加えて1−ドデカノールを0.39mol%となるように加え、装置3の底部に供給する二塩化スズの酢酸エチル溶液(0.015g/mL)をグリコリドに対して30ppm(二塩化スズ質量基準)となるように変更した以外は合成例2と同様の重合条件で、グリコリド含有量WGLが7.3質量%で、重量平均分子量Mwが10万であるPGA樹脂を合成した。得られたPGA樹脂はフレーク状であった。
(合成例5)
合成例2と同様にして定量した融解グリコリド中の遊離カルボン酸量が6.0eq/tであり、この遊離カルボン酸量から算出した融解グリコリド中のプロトン濃度が0.07mol%である粒状グリコリドを原料とし、移送配管L23の途中で、重合系内のプロトン濃度が1.20mol%となるようにグリコリドのプロトン濃度0.07mol%に加えて1−ドデカノールを1.13mol%となるように加え、装置3の底部に供給する二塩化スズの酢酸エチル溶液(0.015g/mL)をグリコリドに対して30ppm(二塩化スズ質量基準)となるように変更した以外は合成例2と同様の重合条件で、グリコリド含有量WGLが4.7質量%で、重量平均分子量Mwが5万であるPGA樹脂を合成した。得られたPGA樹脂はフレーク状であった。
(合成例6)
移送配管L23の途中で、重合系内のプロトン濃度が0.28mol%となるようにグリコリドのプロトン濃度0.03mol%に加えて1−ドデカノールを0.25mol%となるように加えたこと以外は合成例1と同様の重合条件で、グリコリド含有量WGLが0.2質量%で、重量平均分子量Mwが18万であるPGA樹脂を合成した。得られたPGA樹脂はフレーク状であった。
(合成例7)
合成例2と同様にして定量した融解グリコリド中の遊離カルボン酸量が2.6eq/tであり、この遊離カルボン酸量から算出した融解グリコリド中のプロトン濃度が0.03mol%である粒状グリコリドを原料とし、移送配管L23の途中で、重合系内のプロトン濃度が0.20mol%となるようにグリコリドのプロトン濃度0.03mol%に加えて1−ドデカノールを0.17mol%となるように加え、装置3の底部に供給する二塩化スズの酢酸エチル溶液(0.015g/mL)をグリコリドに対して30ppm(二塩化スズ質量基準)となるように変更した以外は合成例2と同様の重合条件で、グリコリド含有量WGLが15.7質量%で、重量平均分子量Mwが18万のPGA樹脂を合成した。得られたPGA樹脂はフレーク状であった。
(実施例1)
原料供給部から排出部までの間にそれぞれ独立して温度制御可能な8個の区間C1〜C8を備える二軸押出機(KraussMaffei社製「ZE60AUTUTSX40,00D」)にギヤポンプ(クエンボルグ社製「GPX90」)、スクリーンチェンジャー(クエンボルグ社製「K−SWE−180」)、ポリマーダイバーター(クエンボルグ社製「AF2000/35」)、ダイス(2.8mm径/穴、5穴)を順に装着し、その先端にカッティング部を循環水で満たすためのチャンバーを取り付け、ダイ部にストランドカット用の18枚の斜め刃を装着したカッティング装置をダイ部と刃が接触するようにセットされた押出成形装置において、二軸押出機の区間C1〜C8の温度をC1:18℃、C2:100℃、C3:100℃、C4:50℃、C5:240℃、C6:250℃、C7:250℃、C8:240℃に、ギヤポンプの温度を240℃に、スクリーンチェンジャーの温度(3点)を240℃、240℃、220℃に、ダイスの温度を290℃に設定し、合成例1で得られたPGA樹脂(Mw:10万、WGL:0.2質量%)を二軸押出機の原料供給部から連続添加して溶融混練を行い、溶融状態のPGA樹脂(温度:259℃)を、60℃の冷却水が15m/時間の流量で流通しているチャンバーにダイスから150kg/時間の押出量で押出すと同時に、前記斜め刃を3000rpmで回転させることによってPGA樹脂をカッティングして粒状PGA樹脂を作製した。
この粒状PGA樹脂を冷却水とともに冷却ライン中を約10秒間(冷却時間)移動させて旋廻遠心脱水機(クエンボルグ社製、モーター容量:4kW、モーター電圧:440V、排気ブロアーモーター容量:0.55kW、処理能力:2,000kg/h、滞留時間:数秒)に連続投入し、遠心脱水を行なって粒状PGA樹脂を回収し、室温で放冷した。遠心脱水直後の粒状PGA樹脂の温度、放冷後の粒状PGA樹脂の質量、グリコリド含有量及び含水率を測定した。また、放冷後の粒状PGA樹脂の結晶性及び定形性を評価した。これらの結果を表1に示す。
(実施例2)
合成例2で得られたPGA樹脂(Mw:10万、WGL:4.9質量%)を原料とし、前記二軸押出機のダイスの温度を280℃に変更した以外は実施例1と同条件で溶融混練、押出し、カッティング、冷却及び遠心脱水を行い、粒状PGA樹脂を回収して室温で放冷した。なお、溶融状態のPGA樹脂の温度は240℃であった。遠心脱水直後の粒状PGA樹脂の温度、放冷後の粒状PGA樹脂の質量、グリコリド含有量及び含水率を測定した。また、放冷後の粒状PGA樹脂の結晶性及び定形性を評価した。これらの結果を表1に示す。
(実施例3)
合成例3で得られたPGA樹脂(Mw:10万、WGL:1.9質量%)を原料とし、前記ダイス(2.8mm径/穴、5穴)の代わりにダイス(3.2mm径/穴、5穴)を装着し、前記二軸押出機の区間C1〜C8の温度をいずれも250℃に、前記ギヤポンプの温度を260℃に、前記スクリーンチェンジャーの温度(3点)をいずれも260℃に、前記ダイスの温度を260℃に変更し、溶融状態のPGA樹脂の押出量を200kg/時間に変更し、前記斜め刃の回転数を2000rpmに変更し、冷却時間を6秒間に変更した以外は実施例1と同条件で溶融混練、押出し、カッティング、冷却及び遠心脱水を行い、粒状PGA樹脂を回収して室温で放冷した。なお、溶融状態のPGA樹脂の温度は260℃であった。遠心脱水直後の粒状PGA樹脂の温度、放冷後の粒状PGA樹脂の質量、グリコリド含有量及び含水率を測定した。また、放冷後の粒状PGA樹脂の結晶性及び定形性を評価した。これらの結果を表1に示す。
(実施例4)
合成例3で得られたPGA樹脂(Mw:10万、WGL:1.9質量%)と熱安定剤であるモノ及びジステアリルアシッドフォスフェートのほぼ等モル混合物((株)ADEKA製「アデカスタブAX−71」)を、熱安定剤の割合がPGA樹脂に対して500ppmになるように、前記二軸押出機の原料供給部へそれぞれ別のノズルから連続添加した以外は実施例3と同条件で溶融混練、押出し、カッティング、冷却及び遠心脱水を行い、粒状PGA樹脂組成物を回収して室温で放冷した。なお、溶融状態のPGA樹脂組成物の温度は259℃であった。遠心脱水直後の粒状PGA樹脂組成物の温度、放冷後の粒状PGA樹脂組成物の質量、グリコリド含有量及び含水率を測定した。また、放冷後の粒状PGA樹脂組成物の結晶性及び定形性を評価した。これらの結果を表1に示す。
(実施例5)
合成例3で得られたPGA樹脂(Mw:10万、WGL:1.9質量%)と熱安定剤であるモノ及びジステアリルアシッドフォスフェートのほぼ等モル混合物((株)ADEKA製「アデカスタブAX−71」)と末端封止剤であるN,N−2,6−ジイソプロピルフェニルカルボジイミド(CDI)(川口化学工業(株)製「DIPC」)を、熱安定剤の割合がPGA樹脂に対して900ppmになるように、また、末端封止剤の量がPGA樹脂100質量部に対して5質量部になるように、前記二軸押出機の原料供給部へそれぞれ別のノズルから連続添加し、前記スクリーンチェンジャーの温度(3点)をいずれも245℃に、前記ダイスの温度を330℃に変更し、冷却時間を6秒間に変更した以外は実施例1と同条件で溶融混練、押出し、カッティング、冷却及び遠心脱水を行い、粒状PGA樹脂組成物を回収して室温で放冷した。なお、溶融状態のPGA樹脂組成物の温度は286℃であった。遠心脱水直後の粒状PGA樹脂組成物の温度、放冷後の粒状PGA樹脂組成物の質量、グリコリド含有量及び含水率を測定した。また、放冷後の粒状PGA樹脂組成物の結晶性及び定形性を評価した。これらの結果を表1に示す。
(比較例1)
合成例4で得られたPGA樹脂(Mw:10万、WGL:7.3質量%)を原料とし、前記二軸押出機の区間C1〜C8の温度をC1:13℃、C2:95℃、C3:95℃、C4:45℃、C5:235℃、C6:245℃、C7:245℃、C8:235℃に、前記ダイスの温度を285℃に変更した以外は実施例2と同条件で溶融混練、押出し、カッティング、冷却及び遠心脱水を行い、粒状PGA樹脂を回収して室温で放冷した。なお、溶融状態のPGA樹脂の温度は235℃であった。放冷後の粒状PGA樹脂の結晶性及び定形性を評価した。これらの結果を表1に示す。
(比較例2)
合成例5で得られたPGA樹脂(Mw:5万、WGL:4.7質量%)を原料とし、前記ダイス(2.8mm径/穴、5穴)の代わりにダイス(0.8mm径/穴、25穴)を装着した以外は比較例1と同条件で粒状PGA樹脂の製造を行なったところ、前記チャンバー内では不定形の粒状PGA樹脂が得られたが、遠心脱水時に粉砕され、粒状物として回収することが困難であった。これは、粒状PGA樹脂の強度が弱いためと推察される。なお、溶融状態のPGA樹脂の温度は233℃であった。回収したPGA樹脂の結晶性を評価した。その結果を表1に示す。
表1に示した結果から明らかなように、PGA樹脂の重量平均分子量Mwとグリコリド含有量WGLとが前記式(1)で表される条件を満たすPGA樹脂(又はPGA樹脂組成物)の溶融押出と粒状化を同時に行うことによって、定形の粒状PGA樹脂(又は粒状PGA樹脂組成物)を効率的に製造できることが確認された(実施例1〜5)。一方、PGA樹脂の重量平均分子量Mwとグリコリド含有量WGLとが前記式(1)で表される条件を満たさない場合、すなわち、PGA樹脂のグリコリド含有量WGLが多い場合には、粒状PGA樹脂が不定形となった(比較例1〜2)。これは、グリコリド含有量が多くなることによってPGA樹脂の見掛け溶融粘度が低くなり、押出し時の樹脂圧が不安定になったためと推察される。
また、冷却時間を短くすることによって、含水率の低い粒状PGA樹脂(又は粒状PGA樹脂組成物)が得られ、特に、遠心脱水時の粒状PGA樹脂(又は粒状PGA樹脂組成物)の温度を100℃以上に保持することによって、含水率が600ppm以下の、乾燥処理が不要か、極めて容易な粒状PGA樹脂(又は粒状PGA樹脂組成物)が得られることがわかった(実施例5)。
(実施例6)
合成例1で得られたPGA樹脂(Mw:10万、WGL:0.2質量%)と熱安定剤であるモノ及びジステアリルアシッドフォスフェートのほぼ等モル混合物((株)ADEKA製「アデカスタブAX−71」)を、熱安定剤の割合がPGA樹脂に対して200ppmになるように、前記二軸押出機の原料供給部へそれぞれ別のノズルから連続添加し、前記二軸押出機の区間C1〜C8の温度をC1:20℃、C2:250℃、C3:255℃、C4〜C8:250℃に、前記ギヤポンプの温度を250℃に、前記スクリーンチェンジャーの温度(3点)をいずれも250℃に、前記ダイスの温度を320℃に変更し、冷却時間を2秒間に変更した以外は実施例1と同条件で溶融混練、押出し、カッティング、冷却及び遠心脱水を行い、粒状PGA樹脂組成物を回収して室温で放冷した。なお、溶融状態のPGA樹脂組成物の温度は267℃であった。遠心脱水直後の粒状PGA樹脂組成物の温度、放冷後の粒状PGA樹脂組成物の質量、グリコリド含有量及び含水率を測定した。また、放冷後の粒状PGA樹脂組成物の結晶性及び定形性を評価した。これらの結果を表2に示す。
(実施例7)
合成例3で得られたPGA樹脂(Mw:10万、WGL:1.9質量%)を原料とした以外は実施例6と同条件でPGA樹脂と熱安定剤の連続添加、溶融混練、押出し、カッティング、冷却及び遠心脱水を行い、粒状PGA樹脂組成物を回収して室温で放冷した。なお、溶融状態のPGA樹脂組成物の温度は266℃であった。遠心脱水直後の粒状PGA樹脂組成物の温度、放冷後の粒状PGA樹脂組成物の質量、グリコリド含有量及び含水率を測定した。また、放冷後の粒状PGA樹脂組成物の結晶性及び定形性を評価した。これらの結果を表2に示す。
(実施例8)
前記二軸押出機の区間C1〜C8の温度をC1:20℃、C2:255℃、C3:265℃、C4〜C8:250℃に、前記ダイスの温度を330℃に変更し、ストランドカット用の斜め刃の刃数を18枚から12枚に変更した以外は実施例6と同条件でPGA樹脂と熱安定剤の連続添加、溶融混練、押出し、カッティング、冷却及び遠心脱水を行い、粒状PGA樹脂組成物を回収して室温で放冷した。なお、溶融状態のPGA樹脂組成物の温度は272℃であった。遠心脱水直後の粒状PGA樹脂組成物の温度、放冷後の粒状PGA樹脂組成物の質量、グリコリド含有量及び含水率を測定した。また、放冷後の粒状PGA樹脂組成物の結晶性及び定形性を評価した。これらの結果を表2に示す。
(実施例9)
合成例1で得られたPGA樹脂(Mw:10万、WGL:0.2質量%)と熱安定剤であるモノ及びジステアリルアシッドフォスフェートのほぼ等モル混合物((株)ADEKA製「アデカスタブAX−71」)と末端封止剤であるN,N−2,6−ジイソプロピルフェニルカルボジイミド(CDI)(川口化学工業(株)製「DIPC」)を、熱安定剤の割合がPGA樹脂に対して200ppmになるように、また、末端封止剤の量がPGA樹脂100質量部に対して1質量部になるように、前記二軸押出機の原料供給部へそれぞれ別のノズルから連続添加し、冷却水の温度を80℃に変更し、冷却時間を5秒間に変更した以外は実施例8と同条件で溶融混練、押出し、カッティング、冷却及び遠心脱水を行い、粒状PGA樹脂組成物を回収して室温で放冷した。なお、溶融状態のPGA樹脂組成物の温度は273℃であった。遠心脱水直後の粒状PGA樹脂組成物の温度、放冷後の粒状PGA樹脂組成物の質量、グリコリド含有量及び含水率を測定した。また、放冷後の粒状PGA樹脂組成物の結晶性及び定形性を評価した。これらの結果を表2に示す。
表2に示した結果から明らかなように、PGA樹脂の重量平均分子量Mwとグリコリド含有量WGLとが前記式(1)で表される条件を満たし、尚且つ、冷却水温度及び冷却時間を制御して遠心脱水直後のPGA樹脂(又はPGA樹脂組成物)の温度を110℃以上とし、さらに遠心脱水後のPGA樹脂(又はPGA樹脂組成物)を室温で放冷(徐冷)することによって、定形で結晶化した含水率600ppm以下の粒状物が得られることが分かった(実施例6〜9)。また、やや大粒にした粒状物は、脱水後の粒状物温度が高く、含水率が低くなる傾向になることがわかった(実施例6〜8)。これは、やや大粒にした粒状物は、表面積が小さくなり、同一冷却時間でも冷却しにくくなるためと推察される。
(実施例10)
合成例6で得られたPGA樹脂(Mw:18万、WGL:0.2質量%)と熱安定剤であるモノ及びジステアリルアシッドフォスフェートのほぼ等モル混合物((株)ADEKA製「アデカスタブAX−71」)を、熱安定剤の割合がPGA樹脂に対して200ppmになるように、前記二軸押出機の原料供給部へそれぞれ別のノズルから連続添加し、前記二軸押出機の区間C1〜C8の温度をC1:20℃、C2:250℃、C3:265℃、C4:260℃、C5:250℃、C6〜C8:245℃に、前記ギヤポンプの温度を245℃に、前記スクリーンチェンジャーの温度(3点)をいずれも245℃に、前記ダイスの温度を360℃に、冷却水の温度を40℃に変更した以外は実施例1と同条件で溶融混練、押出し、カッティング、冷却及び遠心脱水を行い、粒状PGA樹脂組成物を回収して室温で放冷した。なお、溶融状態のPGA樹脂組成物の温度は255℃であった。遠心脱水直後の粒状PGA樹脂組成物の温度、放冷後の粒状PGA樹脂組成物の質量、グリコリド含有量及び含水率を測定した。また、放冷後の粒状PGA樹脂組成物の結晶性及び定形性を評価した。これらの結果を表3に示す。
(実施例11)
前記二軸押出機の区間C1〜C8の温度をC1:21℃、C2:250℃、C3:265℃、C4:260℃、C5〜C8:250℃に、前記ギヤポンプの温度を250℃に、前記スクリーンチェンジャーの温度(3点)をいずれも250℃に、前記ダイスの温度を380℃に、冷却水の温度を45℃に変更した以外は、実施例10と同条件でPGA樹脂と熱安定剤の連続添加、溶融混練、押出し、カッティング、冷却及び遠心脱水を行い、粒状PGA樹脂組成物を回収して室温で放冷した。なお、溶融状態のPGA樹脂組成物の温度は295℃であった。遠心脱水直後の粒状PGA樹脂組成物の温度、放冷後の粒状PGA樹脂組成物の質量、グリコリド含有量及び含水率を測定した。また、放冷後の粒状PGA樹脂組成物の結晶性及び定形性を評価した。これらの結果を表3に示す。
(実施例12)
前記二軸押出機の区間C1〜C8の温度をC1:20℃、C2:250℃、C3:265℃、C4〜C8:250℃に、前記ダイスの温度を320℃に、冷却水の温度を60℃に変更し、冷却時間を2秒間に変更した以外は実施例11と同条件でPGA樹脂と熱安定剤の連続添加、溶融混練、押出し、カッティング、冷却及び遠心脱水を行い、粒状PGA樹脂組成物を回収して室温で放冷した。なお、溶融状態のPGA樹脂組成物の温度は268℃であった。遠心脱水直後の粒状PGA樹脂組成物の温度、放冷後の粒状PGA樹脂組成物の質量、グリコリド含有量及び含水率を測定した。また、放冷後の粒状PGA樹脂組成物の結晶性及び定形性を評価した。これらの結果を表3に示す。
(実施例13)
冷却水の温度を75℃に変更した以外は実施例12と同条件でPGA樹脂と熱安定剤の連続添加、溶融混練、押出し、カッティング、冷却及び遠心脱水を行い、粒状PGA樹脂組成物を回収して室温で放冷した。なお、溶融状態のPGA樹脂組成物の温度は269℃であった。遠心脱水直後の粒状PGA樹脂組成物の温度、放冷後の粒状PGA樹脂組成物の質量、グリコリド含有量及び含水率を測定した。また、放冷後の粒状PGA樹脂組成物の結晶性及び定形性を評価した。これらの結果を表3に示す。
(実施例14)
前記二軸押出機の区間C1〜C8の温度をC1:20℃、C2:250℃、C3:265℃、C4:260℃、C5〜C8:250℃に、前記ダイスの温度を385℃に、冷却水の温度を30℃に変更した以外は実施例11と同条件でPGA樹脂と熱安定剤の連続添加、溶融混練、押出し、カッティング、冷却及び遠心脱水を行い、粒状PGA樹脂組成物を回収して室温で放冷した。なお、溶融状態のPGA樹脂組成物の温度は305℃であった。また、回収した粒状PGA樹脂組成物は黄色に着色し、重量平均分子量が僅かに低下していた。これは、PGA樹脂が溶融混練時に熱分解したためと推察される。遠心脱水直後の粒状PGA樹脂組成物の温度、放冷後の粒状PGA樹脂組成物の質量、グリコリド含有量及び含水率を測定した。また、放冷後の粒状PGA樹脂組成物の結晶性及び定形性を評価した。これらの結果を表3に示す。
(実施例15)
前記ダイス(2.8mm径/穴、5穴)の代わりにダイス(3.2mm径/穴、3穴)を装着し、前記18枚の斜め刃の代わりに18枚の垂直刃を装着し、前記二軸押出機の区間C1〜C8の温度をC1:20℃、C2:100℃、C3:100℃、C4:50℃、C5:240℃、C6:250℃、C7:250℃、C8:240℃に、前記ギヤポンプの温度を240℃に、前記スクリーンチェンジャーの温度(3点)をいずれも240℃に、前記ダイスの温度を320℃に、冷却水の温度を40℃に変更し、前記垂直刃の回転数を2500rpmに設定し、実施例11と同条件でPGA樹脂と熱安定剤の連続添加、溶融混練、押出し、カッティング、冷却及び遠心脱水を行い、粒状PGA樹脂組成物を回収して室温で放冷した。なお、溶融状態のPGA樹脂組成物の温度は241℃であった。遠心脱水直後の粒状PGA樹脂組成物の温度、放冷後の粒状PGA樹脂組成物の質量、グリコリド含有量及び含水率を測定した。また、放冷後の粒状PGA樹脂組成物の結晶性及び定形性を評価した。これらの結果を表3に示す。
(実施例16)
前記ダイス(2.8mm径/穴、5穴)の代わりにダイス(3.2mm径/穴、5穴)を装着し、前記二軸押出機の区間C1〜C8の温度をC1:20℃、C2:260℃、C3:275℃、C4:260℃、C5〜C8:250℃に、前記ダイスの温度を320℃、冷却水の温度を40℃にに変更し、溶融状態のPGA樹脂組成物の押出量を200kg/時間に変更し、前記斜め刃の回転数を2000rpmに変更し、冷却時間を2秒間に変更した以外は実施例11と同条件でPGA樹脂と熱安定剤の連続添加、溶融混練、押出し、カッティング、冷却及び遠心脱水を行い、粒状PGA樹脂組成物を回収して室温で放冷した。なお、溶融状態のPGA樹脂組成物の温度は277℃であった。遠心脱水直後の粒状PGA樹脂組成物の温度、放冷後の粒状PGA樹脂組成物の質量、グリコリド含有量及び含水率を測定した。また、放冷後の粒状PGA樹脂組成物の結晶性及び定形性を評価した。これらの結果を表3に示す。
(実施例17)
前記ダイス(3.2mm径/穴、3穴)の代わりにダイス(0.8mm径/穴、28穴)を装着し、前記18枚の垂直刃の代わりに22枚の垂直刃を装着し、溶融状態のPGA樹脂の押出量を160kg/時間に変更し、前記垂直刃の回転数を3500rpmに変更し、冷却時間を25秒間に変更した以外は実施例15と同条件でPGA樹脂と熱安定剤の連続添加、溶融混練、押出し、カッティング、冷却及び遠心脱水を行い、粒状PGA樹脂組成物を回収して室温で放冷した。なお、溶融状態のPGA樹脂組成物の温度は242℃であった。遠心脱水直後の粒状PGA樹脂組成物の温度、放冷後の粒状PGA樹脂組成物の質量、グリコリド含有量及び含水率を測定した。また、放冷後の粒状PGA樹脂組成物の結晶性及び定形性を評価した。これらの結果を表3に示す。
(比較例3)
合成例7で得られたPGA樹脂(Mw:18万、WGL:15.7質量%)を原料としたこと以外は実施例12と同条件でPGA樹脂と熱安定剤の連続添加、溶融混練、押出し、カッティング、冷却及び遠心脱水を行い、粒状PGA樹脂組成物を回収して室温で放冷した。なお、溶融状態のPGA樹脂組成物の温度は263℃であった。
遠心脱水直後の粒状PGA樹脂組成物の温度、放冷後の粒状PGA樹脂組成物の質量、グリコリド含有量及び含水率を測定した。また、放冷後の粒状PGA樹脂組成物の結晶性及び定形性を評価した。これらの結果を表3に示す。
表3に示した結果から明らかなように、PGA樹脂の重量平均分子量Mwとグリコリド含有量WGLとが前記式(1)で表される条件を満たすPGA樹脂組成物の溶融押出と粒状化を同時に行うことによって、定形の粒状PGA樹脂組成物を効率的に製造できることが確認された(実施例10〜17)。また、冷却水温度及び冷却時間を制御して遠心脱水直後のPGA樹脂(又はPGA樹脂組成物)の温度を110℃以上とし、さらに遠心脱水後のPGA樹脂(又はPGA樹脂組成物)を室温で放冷(徐冷)することによって、結晶粒状物(実施例12、13、16)と非晶粒状物(実施例10、11、14、15,17)との作り分けが可能であることがわかった。さらに、冷却時間を短くすることによって、含水率の低い粒状PGA樹脂組成物(又は粒状PGA樹脂)が得られ、特に、遠心脱水時の粒状PGA樹脂組成物(又は粒状PGA樹脂)の温度を120℃以上に保持することによって、含水率が200ppm以下の、乾燥処理が不要か、極めて容易な粒状PGA樹脂組成物(又は粒状PGA樹脂)が得られることがわかった(実施例12、13、16)。一方、PGA樹脂の重量平均分子量Mwとグリコリド含有量WGLとが前記式(1)で表される条件を満たさない場合、すなわち、グリコリド含有量の多い(15.7質量%)PGA樹脂を用いて粒状化したものは、カット時に一部変形物があり、定形の粒状物が得られなかった。
(実施例18)
実施例1で使用した押出成形装置において、前記ダイス(2.8mm径/穴、5穴)の代わりにダイス(3.2mm径/穴、5穴)を装着し、前記二軸押出機の区間C1〜C8の温度をC1:OFF、C2:260℃、C3:275℃、C4:260℃、C5〜C8:250℃に、前記ギヤポンプの温度を250℃に、前記スクリーンチェンジャーの温度(3点)を250℃、250℃、220℃に、前記ダイスの温度を320℃に設定し、合成例6で得られたPGA樹脂(Mw:18万、WGL:0.2質量%)を前記二軸押出機の原料供給部から200kg/時間で連続添加し、また、熱安定剤であるモノ及びジステアリルアシッドフォスフェートのほぼ等モル混合物((株)ADEKA製「アデカスタブAX−71」)を前記二軸押出機の区間C2から熱安定剤の割合がPGA樹脂に対して200ppmになるように連続添加して溶融混練を行い、溶融状態のPGA樹脂組成物(温度:277℃)を、60℃の冷却水が15m/時間の流量で流通している前記チャンバーにダイスから200kg/時間の押出量で押出すと同時に、前記斜め刃を3500rpmで回転させることによってPGA樹脂組成物をカッティングして粒状PGA樹脂組成物を作製した。
この粒状PGA樹脂組成物を前記冷却水とともに冷却ライン中を約2秒間(冷却時間)移動させて旋廻脱水装置(クエンボルグ社製、モーター容量:4kW、モーター電圧:440V、排気ブロアーモーター容量:0.55kW、処理能力:2,000kg/h、滞留時間:数秒)に連続投入し、遠心脱水を行なって粒状PGA樹脂組成物を回収した。遠心脱水直後の粒状PGA樹脂組成物の温度及び質量を測定した。また、遠心脱水直後の粒状PGA樹脂組成物の結晶性及び定形性を評価した。これらの結果を表4に示す。
次に、遠心脱水直後の粒状PGA樹脂組成物を5段に区切られた振動式コンベヤー上に取出し、室温で徐冷した。振動式コンベヤーの1段目〜5段目の出口において、それぞれ粒状PGA樹脂組成物を採取し、結晶性を評価した。その結果を表4に示す。
(実施例19)
前記二軸押出機の区間C1〜C8の温度をC1:OFF、C2〜C6:250℃、C7:240℃、C8:240℃に、前記ギヤポンプの温度を240℃に変更し、PGA樹脂の供給量及び溶融状態のPGA樹脂組成物の押出量を150kg/時間に変更し、スクリューの回転速度を100rpmに変更した以外は実施例18と同条件でPGA樹脂と熱安定剤の連続添加、溶融混練、押出し、カッティング、冷却及び遠心脱水を行なって粒状PGA樹脂組成物を作製し、さらに徐冷処理を施した。なお、溶融状態のPGA樹脂の温度は260℃であった。
遠心脱水直後の粒状PGA樹脂組成物の温度及び質量を測定した。また、遠心脱水直後の粒状PGA樹脂組成物の結晶性及び定形性を評価した。さらに、振動式コンベヤーの1段目〜5段目の出口において採取した粒状PGA樹脂組成物の結晶性を評価した。これらの結果を表4に示す。
表4に示した結果から明らかなように、遠心脱水直後は非晶粒状物であった粒状PGA樹脂組成物も徐冷処理を施すことによって結晶化することが確認された。なお、徐冷開始後、結晶化するまでの時間は、実施例18では4分間で、実施例19では約2分間であった。
<示差走査熱量測定>
実施例7及び10で得られた粒状PGA樹脂組成物について昇温速度10℃/分で室温〜300℃の範囲で示差走査熱量測定(DSC)を行なった。その結果を図2〜3に示す。図2に示した結果から明らかなように、実施例7で得られた粒状PGA樹脂組成物では結晶化ピークが見られず、既に結晶化している(結晶粒状物であった)ことが確認された。一方、図3に示した結果から明らかなように、実施例10で得られた粒状PGA樹脂組成物では98℃付近に結晶化ピークが見られ、非晶粒状物であったことが確認された。これらの結果は、粒状PGA系樹脂組成物を目視により観察し、色調から結晶性を判断した結果と一致する。
以上説明したように、本発明によれば、定形の粒状ポリグリコール酸系樹脂組成物を効率的に製造することが可能となる。
したがって、本発明により製造された粒状ポリグリコール酸系樹脂組成物は、短辺と長辺との比が下記式(i):
0.6≦短辺/長辺≦1 (i)
で表される条件を満たす粒状物が75%以上(個数基準)含有する定形の粒状物であり、各種成形材料の原料等として有用である。
1:モノマータンク
2:モノマー溶解槽
3:第1反応装置
4:第2反応装置
41:装置連結部(ホッパー)
5:固化・粉砕装置
51:連結部
6:固相重合装置
61遊星型スクリュー撹拌機
GL1、GL2、GL3、GL4:ガス配管
L12、L23、L34、L56:移送配管
M:モーター

Claims (8)

  1. ポリグリコール酸系樹脂の重量平均分子量Mwとポリグリコール酸系樹脂組成物中のグリコリド含有量WGL(単位:質量%)とが下記式(1):
    GL≦(Mw−4.2×10)/9.8×10 (1)
    で表される条件を満たす溶融状態のポリグリコール酸系樹脂組成物を水性冷却媒体中に押出すと同時に粒状化することを特徴とする粒状ポリグリコール酸系樹脂組成物の製造方法。
  2. 前記溶融状態のポリグリコール酸系樹脂組成物の温度が230℃以上310℃以下であることを特徴とする請求項1に記載の粒状ポリグリコール酸系樹脂組成物の製造方法。
  3. 前記水性冷却媒体を分離除去した直後の粒状ポリグリコール酸系樹脂組成物の温度が30℃以上180℃以下となるように、粒状化したポリグリコール酸系樹脂組成物を前記水性冷却媒体に1秒以上30秒以下の範囲内で接触させた後、粒状ポリグリコール酸系樹脂組成物から前記水性冷却媒体を分離除去することを特徴とする請求項1又は2に記載の粒状ポリグリコール酸系樹脂組成物の製造方法。
  4. 前記ポリグリコール酸系樹脂の重量平均分子量Mwが5万〜30万であることを特徴とする請求項1〜3のうちのいずれか一項に記載の粒状ポリグリコール酸系樹脂組成物の製造方法。
  5. 前記水性冷却媒体を分離除去した直後の前記粒状ポリグリコール酸系樹脂組成物の温度が30℃以上110℃以下となるように、前記粒状化したポリグリコール酸系樹脂組成物を前記水性冷却媒体に接触させることによって、非晶粒状物を得ることを特徴とする請求項3又は4に記載の粒状ポリグリコール酸系樹脂組成物の製造方法。
  6. 前記粒状化したポリグリコール酸系樹脂組成物を前記水性冷却媒体に5秒超過30秒以下の範囲内で接触させることによって、前記水性冷却媒体を分離除去した直後の温度が30℃以上110℃以下の前記粒状ポリグリコール酸系樹脂組成物を得ることを特徴とする請求項5に記載の粒状ポリグリコール酸系樹脂組成物の製造方法。
  7. 前記水性冷却媒体を分離除去した直後の前記粒状ポリグリコール酸系樹脂組成物の温度が110℃超過180℃以下となるように、前記粒状化したポリグリコール酸系樹脂組成物を前記水性冷却媒体に接触させ、前記粒状ポリグリコール酸系樹脂組成物から前記水性冷却媒体を分離除去した後、徐冷することによって、結晶粒状物を得ることを特徴とする請求項3又は4に記載の粒状ポリグリコール酸系樹脂組成物の製造方法。
  8. 前記粒状化したポリグリコール酸系樹脂組成物を25℃以上80℃以下の前記水性冷却媒体に1秒以上5秒以下の範囲内で接触させることによって、前記水性冷却媒体を分離除去した直後の温度が110℃超過180℃以下の前記粒状ポリグリコール酸系樹脂組成物を得ることを特徴とする請求項7に記載の粒状ポリグリコール酸系樹脂組成物の製造方法。
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