JP2017094349A - ガス圧接用カバーと該カバーを用いたガス圧接方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】 鉄筋又はレール2のガス圧接時における、鉄筋又はレール2の熱影響部位置、又は、圧接部位置に、鉄筋又はレール2の表面との間に空間を設けつつ、鉄筋又はレール2を包囲するように装着されるガス圧接用カバー1であって、かつ、少なくともその内側部分が耐熱性を有し、赤外線を反射する素材11から形成されている、ことを特徴とする、ガス圧接用カバーと、これを用いた鉄筋又はレールのガス圧接方法とに関するものである。
【選択図】 図3
Description
例えば、高層建築、橋脚などにおいて、特に高層建築などにおいては、高強度の鉄筋を採用するケースが増えている。
ところが、このような高強度の鉄筋は、成分に炭素(C)が多く含有されていることから、ガス圧接のように加熱を伴う施工方法であると、圧接部が脆化し、圧接終了後に自然放冷された鉄筋のガス圧接継手は、引張試験、特に曲げ試験にて、熱影響部破断(HAZ破断)する事例が多く見られる。このため、その改善が要望されていた。
(1):鉄筋又はレールのガス圧接時における、前記鉄筋又はレールの熱影響部位置、又は、前記鉄筋又はレールの圧接部位置に、
前記鉄筋又はレールの表面との間に空間を設けつつ、前記鉄筋又はレールを包囲するように装着されるガス圧接用カバーであって、
かつ、少なくともその内側部分が耐熱性を有し、赤外線を反射する素材から形成されている、ことを特徴とする、ガス圧接用カバーに関する。
(2):前記耐熱性を有し、赤外線を反射する素材が、セラミックファイバーである、前記(1)に記載のガス圧接用カバーに関する。
(3):前記ガス圧接用カバーが、開閉自在とされた環状形構造体からなる、前記(1)又は(2)に記載のガス圧接用カバーに関する。
(4):鉄筋又はレールのガス圧接方法において、
鉄筋又はレールのガス圧接直後に、
前記鉄筋又はレールの熱影響部位置、又は、前記鉄筋又はレールの圧接部位置に、
少なくともその内側部分が耐熱性を有し、赤外線を反射する素材から形成されているガス圧接用カバーを、
前記鉄筋又はレールの表面との間に空間を設けつつ、
前記鉄筋又はレールを包囲するように装着する、
ことを特徴とする、鉄筋又はレールのガス圧接方法に関する。
(5):前記耐熱性を有し、赤外線を反射する素材が、セラミックファイバーである、前記(4)に記載の方法に関する。
(6):前記ガス圧接用カバーが、開閉自在とされた環状形構造体からなる、前記(4)又は(5)に記載の方法に関する。
本発明のガス圧接用カバーと鉄筋又はレールのガス圧接方法とによれば、多大なエネルギーを必要とすることなく、鉄筋又はレールのガス圧接時の熱影響部(HAZ)における破断(HAZ破断)、特に高強度の鉄筋又はレールのガス圧接時の熱影響部(HAZ)における破断(HAZ破断)、を有効に抑止することができる。
前記鉄筋又はレールの表面との間に空間を設けつつ、前記鉄筋又はレールを包囲するように装着されるガス圧接用カバーであって、
かつ、少なくともその内側部分が耐熱性を有し、赤外線を反射する素材から形成されている、ことを特徴とするものである。
図1は、本発明のガス圧接用カバー1の一態様を示す斜視図であって、これを開いた状態を示すものである。図中、符号11は耐熱性を有し、赤外線を反射する素材であり、符号12は金属板である。
また、図2は、図1に示す本発明のガス圧接用カバー1を、鉄筋2を包囲するように装着している様子を示す説明図である。図中、符号21は、圧接箇所の端面を表わす線である。
図3は、図1に示す本発明のガス圧接用カバー1を、鉄筋又はレール2を包囲するように装着している様子を示す説明図であって、縦方向に垂直に切断した断面の模様を示す説明図である。
図4は、図3における赤外線の反射状況と温度の測定ポイントを示す説明図である。図4中、ガス圧接用カバーの内部に表わされている太い矢印で示す折れ線が、赤外線の反射状況を示している。
また、図4中、符号Aで示した箇所が、温度の測定ポイントA〔圧接接合部(中心)〕であり、符号Bで示した箇所が、温度の測定ポイントB〔圧接接合部(中心)より30mm離れた地点〕であり、符号Cで示した箇所が、温度の測定ポイントC〔圧接接合部(中心)より60mm離れた地点〕である。
また、図4中、網掛けした箇所が、圧接時の赤熱部である。
図5は、実施例1における鉄筋表面温度の経時変化を示すグラフであって、符号Aで示したグラフが測定ポイントA〔圧接接合部(中心)〕における経時変化を示すグラフであり、符号Bで示したグラフが測定ポイントB〔圧接接合部(中心)より30mm離れた地点〕における経時変化を示すグラフであり、符号Cで示したグラフが、温度の測定ポイントC〔圧接接合部(中心)より60mm離れた地点〕における経時変化を示すグラフである。
図6は、比較例1における鉄筋表面温度の経時変化を示すグラフであり、図中の符号は、図5と同様である。
但し、本発明においては、このセラミックファイバーを断熱材として用いているものではなく、あくまで均熱化のための赤外線の反射材料として、用いているものである。
本発明においては、このセラミックファイバーをそのまま赤外線を反射する素材11の材料として用いてもよいが、必要に応じて、このセラミックファイバーを積層したものや、板状(ボード状)に成形したものなど、その加工品を用いることもできる。
外側部分の金属板12の材質は、通常、鉄、鋼、アルミなどが用いられ、また、これらに限定されるものではないが、耐熱性を有するものが好ましい。
なお、図1、2では、ガス圧接用カバー1の内側部分にある赤外線を反射する素材11が、綺麗な面状となっているが、あくまで作図上からそのように綺麗な面状となっているものであって、例えば、綿状のセラミックファイバーなどのようになっているものの場合もある。
ここで、鉄筋又はレール2の表面との間に空間(間隔)を設けずに、密着したものであると、赤外線の反射による、鉄筋又はレール2の表面付近温度の均熱化効果を得ることができない。
従って、本発明の第1のガス圧接用カバーの詳しい使用方法については、以下の本発明の第2のガス圧接方法に関する説明中において述べることとする。
鉄筋又はレールのガス圧接方法において、
鉄筋又はレールのガス圧接直後に、
前記鉄筋又はレールの熱影響部位置、又は、前記鉄筋又はレールの圧接部位置に、
少なくともその内側部分が耐熱性を有し、赤外線を反射する素材から形成されているガス圧接用カバーを、
前記鉄筋又はレールの表面との間に空間を設けつつ、
前記鉄筋又はレールを包囲するように装着する、
ことを特徴とするものである。
本発明の第1のガス圧接用カバーは、このような鉄筋又はレールについてガス圧接を行った直後において、前記鉄筋又はレールの熱影響部位置、又は、前記鉄筋又はレールの圧接部位置に、前記鉄筋又はレールの表面との間に空間(間隔)を設けつつ、前記鉄筋又はレールを包囲するように装着されるガス圧接用カバーである。
ガス圧接継手は、所定の長さに切断した状態で現場に搬入された鉄筋を繋ぎ合わせるために用いられる鉄筋継手方法の一つであって、鉄筋の端面同士を突き合わせ、突き合わせられた周辺を、酸素・アセチレン炎を用いて加熱すると共に鉄筋の軸方向に圧縮力を加えて加圧することで得られ、接合面を跨いで両端面の原子が移動拡散し、金属結合して一体となる継手である。
鉄筋としては、通常の丸鋼を用いた鉄筋の他、高層建築、橋脚などにおいては、横節又はねじ節鉄筋が用いられている。本発明においては、これらのいずれをも用いることができるが、特に成分に炭素(C)を多く含む、高強度の横節又はねじ節鉄筋が好ましく用いられる。
ここで鉄筋のサイズとしては、一般にD19サイズからD51サイズ程度のものが用いられるが、必ずしもこれに限定されるものではない。
即ち、従来一般的に行われているガス圧接技術は、二本の鉄筋の端面をそれぞれ平坦にした後、端面同士を突き合わせ、圧接器などを用いて鉄筋の軸方向に圧縮力を加えて加圧し、圧接した端面同士が密着するまで、突き合わせられた周辺を、酸素・アセチレン炎を用いて、1200〜1300℃程度に加熱し、溶かすことなく赤熱状態で接合する技術である。
ガス圧接継手の製造に際しては、加熱・加圧によって、突き合わせられた周辺がふくらみ、直径が鉄筋径の1.4倍以上、特に1.6倍程度のこぶ状のふくらみ部分(圧接部)が形成される。
このような鉄筋のガス圧接継手には、横節鉄筋のガス圧接継手と、ねじ節鉄筋のガス圧接継手と、がある。
ここで横節(竹節)鉄筋とは、ねじを切ってない節状の鉄筋を指し、ねじ節鉄筋とは、ねじを切ってある節状の鉄筋を指す。
即ち、高強度の鉄筋は、成分に炭素(C)が多く含有されていることから、ガス圧接のように加熱を伴う施工方法であると、圧接終了後に自然放冷された横節又はねじ節鉄筋のガス圧接継手は、引張試験、特に曲げ試験にてHAZ破断(熱影響部破断)する現象が多く見られた。
このため、本発明では、鉄筋又はレール2(通常は、鉄筋同士又はレール同士)のガス圧接直後に、鉄筋又はレール2の熱影響部位置、又は、鉄筋又はレール2の圧接部位置に、ガス圧接用カバー1を、鉄筋又はレール2の表面との間に空間を設けつつ、鉄筋又はレール2を包囲するように装着させるのである。
勿論、これ以下の降伏強度を有する鉄筋(SD390やSD345など)について本発明の方法を適用することができるが、SD490に比べて、SD390やSD345などは、こぶ状のふくらみ部分(圧接部)や、このこぶ状のふくらみ部分(圧接部)のすぐ外側のガス圧接継手の「熱影響部(HAZ)」において破断する現象の発生率は一般に低い。
この他、降伏強度が590MPa以上という、USD590や、降伏強度が685MPa以上という、USD685の如き超高強度の鉄筋に対しても、本発明の方法を適用することが可能である。
また、鉄筋又はレールの「圧接部」とは、圧接によって得られた熱影響部を含む接合部(継手部)全体を指している。
従って、少なくとも鉄筋又はレール2の「熱影響部(HAZ)」を上記のようにして均熱化させれば十分であり、この鉄筋又はレール2の熱影響部を含む「圧接部」全体を上記のようにして均熱化させてもよいが、特に鉄筋又はレール2の「熱影響部(HAZ)」を上記のようにして均熱化させることが、経済的な観点からも好ましい。
この理由は必ずしも定かではないが、鉄筋を例にとり説明すると、何も装着しない場合には、こぶ状のふくらみ部分(圧接部)の先端部分などに比べると、それ以外の鉄筋母材はゆっくり冷えると考えられる(即ち、こぶ状のふくらみ部分(圧接部)の先端部分などは早く冷えると考えられる)ことから、本発明のガス圧接用カバーを熱影響部(HAZ)位置に、又は圧接部位置に装着し、赤外線(熱)を反射させることにより一定の熱を付与し、こぶ状のふくらみ部分(圧接部)の先端部分などを、それ以外の鉄筋母材と同様の速度で冷ますようにすることで、均熱化させ、その結果、組織などの均一化が図られ、残留応力が抑えられ、熱影響部(HAZ)における破断を有効に抑止することができるものと考えられる。
従って、本発明によれば、単にガス圧接用カバーを装着するだけでよく、安価に、しかも現場で容易に行えることができるという利点がある。
D51サイズの高強度の異形棒鋼(ねじ節鉄筋;SD490規格)を使用し、2本の異形棒鋼同士を突き合わせ、公益社団法人日本鉄筋継手協会が定める「鉄筋継手工事標準仕様書 高分子天然ガス圧接継手工事(案)」に従って、ガス圧接を行った。
ガス圧接用カバー1としては、内側に、耐熱性を有し、赤外線を反射する素材としてのセラミックファイバー(厚さ6mm)を備え、外側に金属板(厚さ2mm;SUS製)を備えたもの(外径120mm、長さ150mm)のものを使用した。
なお、本実施例では、D51サイズ(公称直径50.8mm)の鉄筋を使用しており、圧接接合部(中心)より30mm離れた地点が熱影響部に相当することから、この圧接接合部(中心)より30mm離れた地点と、同じく60mm離れた地点を、それぞれ測定ポイント(測定ポイントBと測定ポイントC)としている。
しかし、これら測定ポイントは、D51サイズの鉄筋における測定ポイントを示したものであって、鉄筋サイズにより、測定ポイントは変わる。
図5において、符号Aで示したグラフが測定ポイントA〔圧接接合部(中心)〕における経時変化を示すグラフであり、符号Bで示したグラフが測定ポイントB〔圧接接合部(中心)より30mm離れた地点〕における経時変化を示すグラフであり、符号Cで示したグラフが、温度の測定ポイントC〔圧接接合部(中心)より60mm離れた地点〕における経時変化を示すグラフである。
実施例1において、ガス圧接用カバー1を装着しなかった(即ち、大気放冷した)こと以外は、実施例1と同様にして、所定時間毎に、温度の測定ポイントA〔圧接接合部(中心)〕における鉄筋の表面温度、温度の測定ポイントB〔圧接接合部(中心)より30mm離れた地点;熱影響部に相当〕における鉄筋の表面温度、及び、温度の測定ポイントC〔圧接接合部(中心)より60mm離れた地点〕における鉄筋の表面温度をそれぞれ測定した。結果を図6に示す。
特に、図5(実施例)から明らかなように、本発明によれば、温度の測定ポイントA〔圧接接合部(中心)〕における鉄筋の表面温度と、温度の測定ポイントB〔圧接接合部(中心)より30mm離れた地点;熱影響部に相当〕における鉄筋の表面温度との温度差が極めて小さく均熱化されており、このことから、本発明によれば、鉄筋又はレールのガス圧接の際において、その熱影響部(HAZ)における破断を有効に抑止することができるものと理解される。
2 鉄筋又はレール
11 耐熱性を有し、赤外線を反射する素材
12 金属板
21 圧接箇所の端面を表わす線
A 温度の測定ポイントA〔圧接接合部(中心)〕
B 温度の測定ポイントB〔圧接接合部(中心)より30mm離れた地点〕
C 温度の測定ポイントC〔圧接接合部(中心)より60mm離れた地点〕
Claims (6)
- 鉄筋又はレールのガス圧接時における、前記鉄筋又はレールの熱影響部位置、又は、前記鉄筋又はレールの圧接部位置に、
前記鉄筋又はレールの表面との間に空間を設けつつ、前記鉄筋又はレールを包囲するように装着されるガス圧接用カバーであって、
かつ、少なくともその内側部分が耐熱性を有し、赤外線を反射する素材から形成されている、ことを特徴とする、ガス圧接用カバー。
- 前記耐熱性を有し、赤外線を反射する素材が、セラミックファイバーである、請求項1に記載のガス圧接用カバー。
- 前記ガス圧接用カバーが、開閉自在とされた環状形構造体からなる、請求項1又は2に記載のガス圧接用カバー。
- 鉄筋又はレールのガス圧接方法において、
鉄筋又はレールのガス圧接直後に、
前記鉄筋又はレールの熱影響部位置、又は、前記鉄筋又はレールの圧接部位置に、
少なくともその内側部分が耐熱性を有し、赤外線を反射する素材から形成されているガス圧接用カバーを、
前記鉄筋又はレールの表面との間に空間を設けつつ、
前記鉄筋又はレールを包囲するように装着する、
ことを特徴とする、鉄筋又はレールのガス圧接方法。
- 前記耐熱性を有し、赤外線を反射する素材が、セラミックファイバーである、請求項4に記載の方法。
- 前記ガス圧接用カバーが、開閉自在とされた環状形構造体からなる、請求項4又は5に記載の方法。
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