JP2017090102A - 浸潤性乳癌の判定法 - Google Patents

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Abstract

【課題】浸潤性乳癌の検出に有用な、新規な浸潤性乳癌マーカー、及び該浸潤性乳癌マーカーを検出することによる、確度の高い、新規な浸潤性乳癌の判定法を提供すること。【解決手段】ペルオキシレドキシン6、血清アミロイドP成分、ペプチジルプロリルシストランスイソメラーゼA、及びスーパーオキシドジスムターゼ[Cu-Zn] (超酸化物不均化酵素[Cu-Zn])からなる群から選択される浸潤性乳癌マーカー、試料中の該浸潤性乳癌マーカーを検出する、浸潤性乳癌の判定を行うためのデータを得る方法、並びに試料中の該浸潤性乳癌マーカーを検出し、その結果に基づいて判定する浸潤性乳癌の判定法、の発明である。【選択図】 なし

Description

本発明は、乳癌が浸潤性乳癌か否かを判定する新規な浸潤性乳癌マーカー、及びそれを検出し、その結果に基づいて浸潤性乳癌を判定(診断・検査)する方法に関する。
現在、乳癌の診断方法として、マンモグラフィーによる診断、又は体液,血液等の試料中の乳癌マーカーを検出することによる診断が行われている。
乳癌は、患者数は多いものの早期に発見すればほぼ治る癌であるにも関わらず、乳癌の早期発見は実現されていない。その理由としては、乳癌検診の受診率が低いこと、乳腺が発達している場合、マンモグラフィー検査では腫瘤の検出が難しいこと、現状の血液検査では乳癌特異的な早期診断マーカーはないことなどが挙げられる。
例えば、マンモグラフィーを用いる乳癌の診断方法は、検査の受診者(被検者)の精神的及び肉体的苦痛が少なくない。また、乳腺密度が高い若年層の撮像は困難なため、やはり確度の高い乳癌診断技術とはなっていない。
乳癌マーカーを検出することにより乳癌を診断する方法としては、例えば癌胎児性抗原(Carcinoembryonic antigen、CEA)をマーカーとして、試料中の該マーカーの量を診断キット等を用いて測定し、その結果に基づいて乳癌を診断する方法がある。しかし、この方法は乳癌の診断確度が低いため、実用的な乳癌確定診断方法とはなっていない。
また、特開2002−131322号公報(特許文献1)には、被検者の乳管液を試料として用い、乳管液中の成分を検出することにより乳癌又は乳房前癌を有する患者を同定する方法が開示されている。しかしながら、該文献は細胞外マトリックスタンパク質やアポリポタンパク質を含む多数のマーカー候補を記載しているものの、単にマーカー候補を羅列しているのみで、乳癌患者乳管液中の成分分析を行っていない。そのため、該文献の開示内容からは、列挙された多数のマーカーが乳癌マーカーとして本当に有用であるか否かは不明である。
また、特表2008−502891号公報(特許文献2)には、乳癌患者の組織片をLC−ESI−MS/MS(液体クロマトグラフィー−エレクトロスプレーイオン化−タンデム質量分析)で分析し、PDX1(ペルオキシレドキシン1)を乳癌マーカー候補として選択したこと、及び乳癌患者の血清中のPDX1を検出したことを記載している。また該公報には、PDX1と他のマーカーとの併用により乳癌を診断することを示唆する記載がある。しかしながら、該公報は、これらのマーカーが乳癌に特異的であることを示す証拠、例えば非乳癌者由来試料中のこれらのマーカーの測定結果等を開示していない。そのため、該公報では、PDX1が乳癌マーカーとして有用であるか否か、及び他のマーカーとの組み合わせが乳癌の診断に用いることができるか否かについては確認できていない。
そのほか、近年バイオマーカー(タンパク質・ペプチド、脂質、糖鎖等)の探索に関する研究が盛んに行われるようになり、特に疾患と関連して各種体液を用いたプロテオミクス等の網羅的解析研究が盛んに行われている。これらの解析により、生体から得られる微量試料の高感度且つ正確な分析を行うことができる。そこで、プロテオミクスを用いた乳癌マーカーの研究も行われていることが、F. Mannello et al. Expert Rev. Proteomics 6, 43−60 (2009)(非特許文献1)に紹介されている。
本発明者等は、集団検診においてマンモグラフィーで発見されるよりも早期の段階で乳癌を発見することを目指して、乳頭分泌液中の癌マーカーを探索する途上、乳癌診断確度の高い新たな乳癌マーカーとして、カルボキシペプチダーゼNサブユニット2、細胞外マトリックスタンパク質1、血清アミロイドP成分、ネブリン、補体成分C8α鎖、アポリポタンパク質L1、フラビンレダクターゼ、カタラーゼ、炭酸脱水酵素2(カルボニックアンヒドラーゼ2)、アポリポタンパク質C-I、核膜孔糖タンパク質210、スーパーオキシドジスムターゼ[Cu-Zn](超酸化物不均化酵素[Cu-Zn])、ビスホスホグリセリン酸ムターゼ、炭酸脱水酵素1(カルボニックアンヒドラーゼ1)、及びペルオキシレドキシン2からなる群から選択される乳癌マーカーを見出し、先に特許出願している(特許文献3)。
また、本発明者等は、別の乳癌診断確度の高い新たな乳癌マーカーとして、フコシル化ホルネリン、フコシル化Zn−α-2-グリコタンパク質、フコシル化Ig γ-1鎖C領域、及びフコシル化デスモプラキンからなる群から選択される乳癌マーカーを見出し、先に特許出願している(特許文献4)。
ところで、浸潤性乳癌とは、癌細胞が乳管や小葉の中に留まらず、基底膜を破り近傍の組織に浸潤した状態の癌で、血管・リンパ管から全身に移行し転移などを起こす可能性のある、悪性の癌である。
また、非浸潤性乳癌とは、癌が発生した乳管や小葉の上皮内に留まっており、基底膜を破壊せず近傍組織に浸潤していない癌で、完全に切除すれば完治する癌である。例えば非浸潤性乳管癌(DCIS)等がある。
すなわち、患者が罹患した乳癌が浸潤性乳癌か否かによって、乳癌患者の治療方法等が異なる。そのため、単に乳癌か否かを判定するのみならず、その乳癌が浸潤性乳癌か否かを判定できれば、その判定結果は治療指針を設定する上で大変有益な情報となる。
しかし、浸潤性乳癌か否かを判定(鑑別)することは難しい。従来から乳癌マーカーを検出した結果に基づいて癌か非癌かを判定することは行われていたが、浸潤性乳癌か否かを判定できる乳癌マーカーは見出されていない。そのため、現状では乳癌マーカーを検出することにより乳癌が浸潤性乳癌か否かの判定を行うことはできなかった。
特開2002−131322号公報 特表2008−502891号公報 WO2014−038524号パンフレット WO2014−132869号パンフレット
F. Mannello et al. Expert Rev. Proteomics 6, 43−60 (2009)
従来の乳癌診断方法には以上のような問題があるため、乳癌検診率が向上せず、早期乳癌及び乳癌の診断が遅れ、その結果、乳癌罹患率及び乳癌死亡率の低減を阻む結果を生じており、大きな社会問題となっている。これらの問題を解消するため、より低侵襲で且つ確度の高い乳癌マーカーを乳癌診断の指標とする新しい乳癌診断技術の開発が待たれている。
さらに、乳癌が浸潤性乳癌か否かの判定を行うことは、治療方針を設定する上で、不可欠である。
本発明の課題は、浸潤性乳癌の検出に有用な新規な浸潤性乳癌マーカー、及び該浸潤性乳癌マーカーを検出することによる、確度の高い、新規な浸潤性乳癌の判定法を提供することにある。
本発明は、上記した如き課題を解決する目的でなされたものであり、以下の構成よりなる。
(1)ペルオキシレドキシン6、血清アミロイドP成分、ペプチジルプロリルシストランスイソメラーゼA、及びスーパーオキシドジスムターゼ[Cu-Zn] (超酸化物不均化酵素[Cu-Zn])からなる群から選択される浸潤性乳癌マーカー。
(2)試料中のペルオキシレドキシン6、血清アミロイドP成分、ペプチジルプロリルシストランスイソメラーゼA、及びスーパーオキシドジスムターゼ[Cu-Zn] (超酸化物不均化酵素[Cu-Zn])からなる群から選択される一種以上の浸潤性乳癌マーカーを検出する、浸潤性乳癌の判定を行うためのデータを得る方法。
(3)試料中のペルオキシレドキシン6、血清アミロイドP成分、ペプチジルプロリルシストランスイソメラーゼA、及びスーパーオキシドジスムターゼ[Cu-Zn] (超酸化物不均化酵素[Cu-Zn])からなる群から選択される一種以上の浸潤性乳癌マーカーを検出し、その結果に基づいて判定する、浸潤性乳癌の判定法。
すなわち本発明者らは、浸潤性乳癌か否かを判別でき、且つ診断の確度の高い浸潤性乳癌マーカー及びそれを用いた浸潤性乳癌の判定法を確立すべく鋭意研究の途上、乳癌発症部位である乳管内の情報を直接得ることができる乳頭分泌液(Nipple discharge, ND)を試料とし、最新の二次元液体クロマトグラフィー(LC)/質量分析(MS)システムであるナノLC−ESI−MS/MSによるプロテオミクスを応用することにより、多数の成分を含む乳頭分泌液中の成分を分析した。そして、浸潤性乳癌患者由来乳頭分泌液、非浸潤性乳癌患者由来乳頭分泌液及び非乳癌者由来乳頭分泌液を試料として用い、ナノLC−ESI−MS/MSを行った結果を比較することにより、浸潤性乳癌マーカーとして有望と推測される新たなマーカーを選別した。そして、これらのマーカーを指標として用いれば、浸潤性乳癌か否かを確度よく判定することができることを見出し、本発明を完成した。
本発明の浸潤性乳癌マーカーを利用した判定法はより確度の高い浸潤性乳癌の判定(診断、検査)を可能とする。また、本発明の浸潤性乳癌マーカーは、例えば乳頭分泌液中に見出されるため、非侵襲的且つ簡便に浸潤性乳癌を判定(診断、検査)することが可能である。
更に、浸潤性乳癌か否かを判定することにより得られた判定結果は、その後の治療方針を設定する上で重要な指針となる。
実施例1において得られた、浸潤性乳癌患者由来試料中のタンパク質成分を検出した結果(Invasive)、非浸潤性乳癌患者由来試料中及び非乳癌者由来試料中の各タンパク質成分を検出した結果(Non-Invasive)、及びそれらをもとに得られた統計結果を示し、(1)はペルオキシレドキシン6、(2)は血清アミロイドP成分、(3)はペプチジルプロリルシストランスイソメラーゼA、(4)はスーパーオキシドジスムターゼ[Cu−Zn]を測定した結果をそれぞれ示す。
本発明の浸潤性乳癌マーカーは、ペルオキシレドキシン6、血清アミロイドP成分、ペプチジルプロリルシストランスイソメラーゼA、及びスーパーオキシドジスムターゼ[Cu-Zn] (超酸化物不均化酵素[Cu-Zn])である(以下、これらをまとめて「本発明の浸潤性乳癌マーカー」と記載する場合がある。)。
これらマーカーの成分自体は既に公知のものであるが、該成分が、乳癌が浸潤性乳癌か否かを判定する指標(浸潤性乳癌マーカー)として有用であることは、本発明者らによって初めて明らかになった。
ここで、浸潤性乳癌とは、癌細胞が乳管や小葉の中に留まらず、基底膜を破り近傍の組織に浸潤した状態の癌で、血管・リンパ管から全身に移行し転移などを起こす可能性のある、悪性の癌である。
また、非浸潤性乳癌とは、癌が発生した乳管や小葉の上皮内に留まっており、基底膜を破壊せず近傍組織に浸潤していない癌で、完全に切除すれば完治する癌である。例えば非浸潤性乳管癌(DCIS)等がある。
本発明の浸潤性乳癌の判定を行うためのデータを得る方法とは、「試料中のペルオキシレドキシン6、血清アミロイドP成分、ペプチジルプロリルシストランスイソメラーゼA、及びスーパーオキシドジスムターゼ[Cu-Zn] (超酸化物不均化酵素[Cu-Zn])からなる群から選択される一種以上の浸潤性乳癌マーカーを検出する、浸潤性乳癌の判定を行うためのデータを得る方法。」である。
そのために行う本発明の浸潤性乳癌マーカーを検出する方法としては、本発明の浸潤性乳癌マーカーを検出・測定し得る常法が挙げられる。それに用いられる本発明の浸潤性乳癌マーカーを検出・測定する試薬としては、当該浸潤性乳癌マーカーの各成分を検出・測定し得る常法に用いられる試薬であればよい。
本発明の浸潤性乳癌マーカーを検出する方法の例としては、例えば本発明の浸潤性乳癌マーカーの各成分に対する親和性を有する物質(例えば、抗体、レクチン、多糖類、DNA、酵素基質、タンパク質、各種受容体、各種リガンド等)を用いた、いわゆる酵素免疫測定法(EIA)、放射免疫測定法(RIA)、酵素結合免疫吸着測定法(ELISA)、蛍光免疫測定法(FIA)、簡易イムノクロマトグラフィーによる測定法、等の自体公知の免疫学的測定法に準じた方法の他、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)、電気泳動法、キャピラリー電気泳動法、キャピラリーチップ電気泳動法、質量分析法等が挙げられる。その測定原理としては、例えばサンドイッチ法、競合法、二抗体法等が挙げられるが、これに限定されない。
また、例えば、免疫比ろう法、免疫比濁法等の免疫凝集法に準じた測定法で、本発明の浸潤性乳癌マーカーを検出してもよい。これらの検出方法も、自体公知の方法に準じて行えばよい。
更に、本発明の浸潤性乳癌マーカーに対する抗体の標識物を用いた通常のイムノブロット法で、該マーカーを検出する方法も挙げられる。
本発明の浸潤性乳癌マーカーを検出するために用いられる浸潤性乳癌マーカーに対する抗体は、本発明の浸潤性乳癌マーカーやその部分ペプチド、又はそれらの塩を認識し得る抗体であればよく、特に限定されない。例えばポリクローナル抗体、モノクローナル抗体の何れであってもよく、これらを単独であるいはこれらを適宜組み合わせて用いる等は任意である。また、これら抗体は、要すればペプシン,パパイン等の酵素を用いて消化してF(ab')2、Fab'、或はFabとして使用してもよい。更に、本発明の浸潤性乳癌マーカーに対する、市販の抗体を用いることもできる。
上記した本発明の浸潤性乳癌マーカーを検出するために用いられる、試薬及びその検出時の濃度、検出を実施するに際しての測定条件等(反応温度、反応時間、反応時のpH,測定波長、測定装置等)は、すべて自体公知の上記した如き免疫学的測定法等の測定操作に準じて設定すれば良く、使用する自動分析装置、分光光度系等も通常この分野で使用されているものは何れも例外なく使用し得る。
上記した本発明の浸潤性乳癌マーカーの検出に用いられるこれら試薬中には、通常この分野で用いられる試薬類、例えば緩衝剤、反応促進剤、糖類、タンパク質、塩類、界面活性剤等の安定化剤、防腐剤等であって、共存する試薬等の安定性を阻害したりせず、本発明の浸潤性乳癌マーカーと本発明の浸潤性乳癌マーカーに対する抗体等との反応を阻害しないものが含まれていてもよい。また、その濃度も、通常この分野で通常用いられる濃度範囲から適宜選択すればよい。
検出対象の浸潤性乳癌マーカーが酵素である場合の浸潤性乳癌マーカーを検出する方法としては、これを発色試薬と反応させて発色反応に導き、その結果生成する色素量を分光光度計等により測定する方法等の自体公知の方法も挙げられる。このような目的で用いられる発色試薬等としては、通常この分野で用いられる発色試薬等が挙げられ、測定対象の酵素毎に適宜選択される。また、これらの使用濃度も、通常この分野で用いられる濃度範囲から適宜設定すればよい。
また、本発明の浸潤性乳癌マーカーを二種以上選択して検出してもよい。その組み合わせは、本発明の浸潤性乳癌マーカーから任意に二種以上選択すればよく、特に限定されない。
更に、本発明の浸潤性乳癌マーカー一種以上と、本発明の浸潤性乳癌マーカー以外の乳癌マーカー一種以上の検出を行ってもよい。検出する本発明の浸潤性乳癌マーカーと本発明の浸潤性乳癌マーカー以外の乳癌マーカーの組合せは、任意の組合せでよい。
例えば、本発明の浸潤性乳癌マーカー一種以上と、特許文献3及び4に記載された乳癌マーカーであるカルボキシペプチダーゼNサブユニット2、細胞外マトリックスタンパク質1、ネブリン、補体成分C8α鎖、アポリポタンパク質L1、フラビンレダクターゼ、カタラーゼ、炭酸脱水酵素2(カルボニックアンヒドラーゼ2)、アポリポタンパク質C-I、核膜孔糖タンパク質210、ビスホスホグリセリン酸ムターゼ、炭酸脱水酵素1(カルボニックアンヒドラーゼ1)、ペルオキシレドキシン2、フコシル化ホルネリン、フコシル化Zn−α-2-グリコタンパク質、フコシル化Ig γ-1鎖C領域、フコシル化デスモプラキン一種以上とを、それぞれ任意に選択して検出を行ってもよい。
尚、本発明の浸潤性乳癌マーカーの検出は、用手法に限らず、自動分析装置を用いた測定系で行ってもよい。用手法又は自動分析装置を用いて測定を行う場合の試薬類等の組み合わせ等については、特に制約はなく、適用する自動分析装置の環境、機種に合わせて、或いは、他の要因を考慮にいれて最も良いと思われる試薬類等の組み合わせを適宜選択して用いれば良い。
更に、本発明の浸潤性乳癌マーカーは、いわゆるナノLC−ESI−MS/MSによるタンパク質網羅解析を行って、検出してもよい。ナノLC−ESI−MS/MSは、分離手段としてナノ液体クロマトグラフを用い、数百nL/minという低流速で送液し、多数の成分からなる試料について液体クロマトグラフで試料中の成分を分離した後、オンラインでエレクトロスプレーイオン化法による質量分析を行い、それにより特定された質量成分について、更にもう一度衝突誘起解離を用いて質量分析を行う方法である。この分析方法は、一度質量分析を行った後、特定質量成分だけを再度質量分析に付し、更に得られたフラグメントパターンを解析するので、より詳細な解析が行える。
本発明の浸潤性乳癌マーカーをナノLC−ESI−MS/MSで検出する場合、例えば上記ナノLC−ESI−MS/MSのLC部分をpHの異なる二つの分離システムを用いて、二次元ナノLC−ESI−MS/MSによるタンパク質網羅解析を行って検出してもよい。
二次元ナノLC−ESI−MS/MSにより本発明の浸潤性乳癌マーカーを検出する方法の具体的な例は、以下の通りである。
一次元目の液体クロマトグラフとして例えば逆相カラムを用い、移動相は例えば約20mMのギ酸アンモニウム水溶液や約70mMのトリエチルアミン水溶液等の塩基性溶液(pH9〜10)と、アセトニトリルとし、数μL/min(好ましくは5〜500μL/min)という低流速で送液し、試料中の成分を分離し、例えば1〜10分間間隔程度の一定時間間隔で、数十画分を分取する。次いで、分取した各画分中の溶媒を蒸発させた後、各画分に0.1%トリフルオロ酢酸水溶液を加え、分離した成分を溶解させる。
次に、得られた各画分溶液の各全量をそれぞれ二次元目の液体クロマトグラフに付し、以下の方法で分離する。すなわち、上記の各画分の溶液の各全量を、それぞれ逆相クロマトグラフカラムにアプライし、移動相は例えば0.1%ギ酸水溶液等の酸性溶液(pH2〜3)と、アセトニトリル/0.1%ギ酸とし、数十〜百nL/min(好ましくは50〜500nL/min)という低流速で送液し、各画分中の多数の成分を分離し、オンラインでESI−MS/MSを行う。
二次元ナノLC−ESI−MS/MSを用いて行った解析は、単次元のナノLC−ESI−MS/MSよりもより分離能が向上するため、更に網羅的なタンパク質解析が可能となる。内部標準物質等を用いて測定することによって、定量解析も可能である。
本発明の浸潤性乳癌の判定法は、「試料中のペルオキシレドキシン6、血清アミロイドP成分、ペプチジルプロリルシストランスイソメラーゼA、及びスーパーオキシドジスムターゼ[Cu-Zn] (超酸化物不均化酵素[Cu-Zn])からなる群から選択される一種以上の浸潤性乳癌マーカーを検出し、その結果に基づいて判定する、浸潤性乳癌の判定法。」である。
すなわち、以上の方法により本発明の浸潤性乳癌マーカーを検出し、その結果を基に、本発明の浸潤性乳癌マーカーを指標として浸潤性乳癌を判定するための、本発明の浸潤性乳癌マーカーに関するデータ(例えば本発明の浸潤性乳癌マーカーの存在の有無、濃度、量の増加の程度等の情報)を得る。得られたデータを用いて、例えば下記の方法で、浸潤性乳癌の判定(診断・検査)を行う。
すなわち、例えば、被験者由来試料中の本発明の浸潤性乳癌マーカーを検出し、当該浸潤性乳癌マーカーが検出されたとの検査結果が得られた場合には、被験者は浸潤性乳癌である、浸潤性乳癌のおそれがある、又は浸潤性乳癌のおそれが高い等の判定が可能である。又は当該浸潤性乳癌マーカーが検出されなかった場合には、被験者は浸潤性乳癌ではない、被験者に浸潤性乳癌のおそれがない、又は浸潤性乳癌のおそれが低い等の判定が可能である。
また、乳癌に罹患していると診断された乳癌患者について、その乳癌患者由来試料中の本発明の浸潤性乳癌マーカーを検出し、当該浸潤性乳癌マーカーが検出されたとの検査結果が得られた場合には、被験者である乳癌患者は浸潤性乳癌である、浸潤性乳癌のおそれがある、又は浸潤性乳癌のおそれが高い等の判定が可能である。又は当該浸潤性乳癌マーカーが検出されなかった場合には、被験者である乳癌患者は浸潤性乳癌のおそれがない、又は浸潤性乳癌のおそれが低い等の判定が可能である。
また、予め基準値を設定しておき、本発明の浸潤性乳癌マーカーの量がその浸潤性乳癌マーカーの基準値より多いという検査結果が得られた場合には、被験者に浸潤性乳癌のおそれがある又は被験者に浸潤性乳癌のおそれが高い等の判定が可能である。また、当該浸潤性乳癌マーカーの量又はその量的範囲に対応させて複数の判定区分を設定し[例えば(1)浸潤性乳癌のおそれはない、(2)浸潤性乳癌のおそれは低い、(3)浸潤性乳癌の兆候がある、(4)浸潤性乳癌のおそれが高い、等]、検査結果がどの判定区分に入るかを判定することも可能である。
また、乳癌に罹患していると診断された乳癌患者について、本発明の浸潤性乳癌マーカーの量がその浸潤性マーカーの基準値より多いという検査結果が得られた場合には、被験者である乳癌患者は浸潤性乳癌のおそれがある、又は浸潤性乳癌のおそれが高い等の判定が可能である。また、当該浸潤性乳癌マーカーの量又はその量的範囲に対応させて複数の判定区分を設定し[例えば(1)浸潤性乳癌のおそれはない、(2)浸潤性乳癌のおそれは低い、(3)浸潤性乳癌の兆候がある、(4)浸潤性乳癌のおそれが高い、等]、検査結果がどの判定区分に入るかを判定することも可能である。
更にまた、同一被験者において、ある時点で測定された被験者由来試料中の本発明の浸潤性乳癌マーカーの量と、異なる時点での当該浸潤性乳癌マーカーの量とを比較し、当該浸潤性乳癌マーカーの量の増減の有無及び/又は増減の程度を評価することによって、乳癌の進行度や悪性度の診断、あるいは術後の予後診断が可能である。すなわち、当該浸潤性乳癌マーカーの量の増加が認められたという検査結果が得られた場合には、浸潤性乳癌へ病態が進行した(あるいは乳癌の悪性度が増した)、又は浸潤性乳癌への病態の進行の兆候が認められる(あるいは乳癌の悪性度が増す兆候が認められる)との判定が行える。また、当該浸潤性乳癌マーカーの量の変動が認められないという検査結果が得られた場合には、病態に変化はないとの判定が可能である。
更に、本発明の浸潤性乳癌マーカーを二種以上検出・測定し、その結果を基に浸潤性乳癌の判定を行う方法も挙げられる。例えば、本発明の浸潤性乳癌マーカー二種以上を検出することで、浸潤性乳癌患者に特徴的な本発明の浸潤性乳癌マーカーの存在パターンが得られる。そこで、被験者の乳頭分泌液等の試料から本発明の浸潤性乳癌マーカーを検出・同定し、これら複数の本発明の浸潤性乳癌マーカーの存在パターン解析をすることにより、被験者が浸潤性乳癌を発症しているか否かの推定が可能となる。
二種以上の本発明の浸潤性乳癌マーカーを検出する場合の該マーカーの組み合わせは、本発明の浸潤性乳癌マーカーからなる群から任意に選択すればよい。
また、本発明の浸潤性乳癌マーカー一種以上と本発明の浸潤性乳癌マーカー以外の乳癌マーカー一種以上の検出を行ってもよい。この場合は、夫々の乳癌マーカーを検出・測定し、上記と同様の方法で浸潤性乳癌の判定を行えばよい。検出する本発明の浸潤性乳癌マーカーと本発明の浸潤性乳癌マーカー以外の乳癌マーカーの組合せは、任意の組合せでよい。また、本発明の浸潤性乳癌マーカー以外の乳癌マーカーの検出は、それぞれの乳癌マーカーに応じた自体公知の方法で行えばよい。
上記の本発明の浸潤性マーカー以外の乳癌マーカーとしては、特許文献3及び4に記載された乳癌マーカーであるカルボキシペプチダーゼNサブユニット2、細胞外マトリックスタンパク質1、ネブリン、補体成分C8α鎖、アポリポタンパク質L1、フラビンレダクターゼ、カタラーゼ、炭酸脱水酵素2(カルボニックアンヒドラーゼ2)、アポリポタンパク質C-I、核膜孔糖タンパク質210、ビスホスホグリセリン酸ムターゼ、炭酸脱水酵素1(カルボニックアンヒドラーゼ1)、ペルオキシレドキシン2、フコシル化ホルネリン、フコシル化Zn−α-2-グリコタンパク質、フコシル化Ig γ-1鎖C領域、フコシル化デスモプラキン等が挙げられる。
本発明の浸潤性乳癌マーカーを検出するために用いられる試料としては、被検者の乳頭分泌液、又は血液(全血)、血清、血漿、尿、リンパ等の生体由来試料等が挙げられるがこれらに限定されない。
乳頭分泌液としては、被験者の片側あるいは両側の乳房から、自然に分泌される乳頭分泌液、乳房のマッサージによって滲出する分泌液、乳頭吸引液等が挙げられるが、これらに限定されない。
試料として乳頭分泌液を使用すれば、被験者に対して非侵襲的に試料を採取することができるので、患者の負担が遙かに少ない点で、優れている。
本発明に係る「浸潤性乳癌の判定を行うために浸潤性乳癌マーカーを検出するためのキット」は、本発明の浸潤性乳癌マーカーを検出する試薬を構成要件として含むものである。
「本発明の浸潤性乳癌マーカーを検出する試薬」及びその構成要件の好ましい態様と具体例は、上記の本発明の浸潤性乳癌の判定を行うためのデータを得る方法に関する説明において記載した通りである。また、これら試薬の濃度等の好ましい態様も、通常この分野で通常用いられる濃度範囲から適宜選択すればよい。
例えば、本発明の浸潤性乳癌マーカーを検出する試薬の例として、該浸潤性乳癌マーカーに親和性を有する物質を含むものが挙げられる。また、本発明の浸潤性乳癌マーカーに親和性を有する物質の例としては、例えば抗体やレクチン等が挙げられ、その具体例は、上記の浸潤性乳癌の判定を行うためのデータを得る方法に関する説明において記載した通りである。
該キットは、「一種類の本発明の浸潤性乳癌マーカーを検出する試薬又はキット」を構成要件とするものであっても、「複数の本発明の浸潤性乳癌マーカーを検出する、複数の試薬又はキットの組み合わせ」を構成要件とするものであってもよい。
また、該キットの組合せとして、「一種類又は複数の本発明の浸潤性乳癌マーカーを検出する、一種又は複数の試薬又はキットと、一種類又は複数の本発明の浸潤性乳癌マーカー以外の乳癌マーカーを検出する、一種又は複数の試薬又はキットの組合せ」、等も挙げられる。
また、これらキットに含まれる試薬中には、通常この分野で用いられる試薬類、例えば緩衝剤、反応促進剤、糖類、タンパク質、塩類、界面活性剤等の安定化剤、防腐剤等であって、共存する試薬等の安定性を阻害したりせず、本発明の浸潤性乳癌マーカーと抗体(又はレクチン等)との反応を阻害しないものが含まれていてもよい。またその濃度も、通常この分野で通常用いられる濃度範囲から適宜選択すればよい。
さらに、当該浸潤性乳癌マーカーを検出する際に用いられる、検量線作成用の浸潤性乳癌マーカーの標準を組み合わせたキットとしてもよい。該標準は、市販の標準品を用いても、公知の方法に従って、製造されたものを用いても構わない。
さらにまた本発明のキットには、本発明の浸潤性乳癌の判定を行うためのデータを得る方法、又は浸潤性乳癌の判定法での使用のための説明書等を含ませておいても良い。当該「説明書」とは、当該方法における特徴・原理・操作手順、判定手順等が文章又は図表等により実質的に記載されている当該キットの取扱説明書、添付文書、あるいはパンフレット(リーフレット)等を意味する。
以下、実施例に基づいて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれら実施例によって何ら限定されるものではない。
実施例1 浸潤性乳癌のマーカーの選別
(1)試料の前処理
浸潤性乳癌と診断された患者(浸潤性乳癌患者、検体数:11名)、非浸潤性乳管癌(DCIS)と診断された患者(非浸潤性乳癌患者、検体数:11名)から採取したそれぞれの乳頭分泌液(数μL)を、100μL のサンプル保存液(50 mM 炭酸水素アンモニウムと0.02% アジ化ナトリウムを含有する水溶液)に加え、4℃、5分間 18,000 x g で遠心した。上澄みを分取後、280 nm の波長の紫外線を用いた紫外吸収法によりタンパク質濃度を求め、50 mM 炭酸水素アンモニウム水溶液を用いてタンパク質濃度が 0.5 mg/mL となるように調製した。この調製液に、45 mM ジチオトレイトール水溶液を 1.41μL 加えて還元し、タンパク質を変性させるためトリフルオロエタノールを 50% になるよう加え、60 ℃、1時間加熱した。加熱後室温に戻し、更に100 mM のヨードアセトアミド水溶液を 1.41μL 加えて室温暗環境下において1時間アルキル化を行った。次いで、アルキル化産物から10μLを分取し、90μLの50 mM 炭酸水素アンモニウム水溶液を加えて、トリフルオロエタノールの割合が 5%以下になるように調製した。更に、100 ng/μLのトリプシン(マススペクトロメトリーグレード、Promega Corporation, Madison, WI, USA)の溶液 1.2μL(タンパク質重量の 1/20 量のトリプシン含有)を加え 37 ℃ で一晩インキュベートした。得られたトリプシン消化産物はタンパク質(BSA)換算で約 350 fmol/μLであった。
次いで、得られたトリプシン消化産物について、以下の方法で二次元ナノLC−ESI−MS/MS測定を行った。
別に、乳頭から分泌液が分泌されることを不定愁訴として訴える受診者(被験者)であって乳癌ではないと診断された非乳癌者(検体数:12名)から採取した乳頭分泌液を、上記と同様に処理した。
(2)二次元ナノLC−ESI−MS/MS測定
上記(1)で得られたトリプシン消化産物のうち40μLを、二次元 Nano HPLC system (UltiMate 3000; Thermo Fisher Scientific Inc. (Dionex), Waltham, MA, USA) に装着した Acclaim PA2, 300μm i.d. x 15 cm 逆相カラム (Thermo Fisher Scientific Inc. (Dionex), Waltham, MA, USA) にインジェクションし A 溶媒 20 mM ギ酸アンモニウム水溶液, pH 10.0、B 溶媒 アセトニトリルを用い、75分のグラジエント(12〜95% の B 溶媒)で分離し 26 個の画分を得た。それらの画分を 70 ℃ で4時間加熱して溶媒を蒸発させた。次いで各々の画分に 0.1% トリフルオロ酢酸水溶液を 30μL 加えて、分離した成分を溶解させた。次いで、得られた各画分溶液の各全量を、それぞれ L−column Micro L2−C18, 75μm i.d. x 15 cm 逆相カラム((財)化学物質評価研究機構製)を用いて A 溶媒 0.1% ギ酸水溶液、B 溶媒 アセトニトリル/0.1% ギ酸を用い、45分のグラジエント(2〜95% の B 溶媒)で分離し、連続的にナノESIイオン源を装着したESI−イオントラップ型質量分析計 (HCTultra; Bruker Daltonik GmbH, Bremen, Germany)でデータ依存的スキャンを用いてオンライン分析した。各試料について、2回のランを行った。
二次元ナノLC−ESI−MS/MS分析の各条件は以下の通りである。
i)LC 条件
(一次元目)
HPLCカラム:Acclaim PA2, 300μm i.d. x 15 cm 逆相カラム (Thermo Fisher Scientific Inc. (Dionex) 製)
流速:6.0μL/分
A 溶媒:20 mM ギ酸アンモニウム水溶液, pH 10.0
B 溶媒:アセトニトリル
溶出: 0分→19 分:12% から 20% B 溶媒までリニアグラジエント、
19 分→29 分:48% B 溶媒までリニアグラジエント、
29 分→34 分:95% B 溶媒で洗浄、
34 分→75 分:2% B 溶媒で平衡化。
(なお、溶出開始後すぐにB溶媒の濃度を上げたので、溶出開始後ほとんど0分で、溶出液のB溶媒の濃度は12%になっている。)
カラム温度:35 ℃
注入量:40μL
分画数:26
(二次元目)
HPLCカラム:L−column Micro L2−C18, 75μm i.d. x 15 cm 逆相カラム((財)化学物質評価研究機構製)
流速:300 nL/分
A 溶媒:0.1% ギ酸水溶液, pH 2.0
B 溶媒:アセトニトリル/0.1% ギ酸
溶出: 0分→1 分:8% B 溶媒までリニアグラジエント、
1 分→20 分:20% B 溶媒までリニアグラジエント、
20 分→25 分:35% B 溶媒までリニアグラジエント、
25 分→30 分:95% B 溶媒で洗浄、
30 分→45 分:2% B 溶媒で平衡化。
カラム温度:室温
注入量:30μL
ii)ESI−MS/MS 条件
イオン化法:エレクトロスプレーイオン化法 (electrospray ionization 法、ESI 法)
測定イオン:正イオン
スプレー電圧:1200V
ドライガス:窒素(4 L/min)
イオン源温度:160 ℃
走査範囲:m/z 300 〜 1,500(MS/MS 測定時:m/z 50 〜 2,200)
プリカーサーイオン選択数:4 イオン/マススペクトル
最小限のプリカーサーイオン強度:50,000 カウント
プリカーサーイオン選択排除時間:30 s
プリカーサーイオン排除価数:1
iii)タンパク質同定解析条件
タンパク質サーチエンジン:Mascot (Matrix Science Ltd., London,UK)
タンパク質サーチ手法:MS/MS Ion Search
タンパク質データベース:Swiss−Prot
タンパク質サーチ時動物種分類:Homo sapiens (human)
タンパク質サーチ時翻訳後修飾設定:Carbamidomethyl (システイン残基修飾)
トリプシン未切断部位許容回数:1
プリカーサーイオン質量許容値:±0.5 Da
プロダクトイオン質量許容値:±1 Da
同定タンパク質解析ソフトウェア:Scaffold(Proteome Software,Inc., Portland, OR, USA)
(3)二次元ナノLC−ESI−MS/MS測定の結果
二次元ナノLC−ESI−MS/MS測定によって、浸潤性乳癌患者由来試料、非浸潤性乳癌患者由来試料、及び非乳癌者由来試料から、総計503種のタンパク質成分が検出された。
(4)浸潤性乳癌マーカー候補の選別
次いで、以下の方法で、浸潤性乳癌患者試料から特異的に検出されたタンパク質成分を、本発明の浸潤性乳癌マーカーとして選別した。
まず、下記の式を用いて、上記(3)で検出されたタンパク質成分を浸潤性乳癌マーカーと仮定して浸潤性乳癌を判定したときの正診率を求めた。
浸潤性乳癌の正診率=
[該当タンパク質成分が検出された浸潤性乳癌患者検体数+(浸潤性乳癌患者以外の検体数−該当タンパク質成分が検出された浸潤性乳癌患者以外の検体数)]/総検体数
正診率が高かった上位7種のマーカーを下記表1に示す。
表1において、「該当タンパク質成分が検出された浸潤性乳癌患者以外の検体数」とは、「該当タンパク質成分が検出された非浸潤性乳癌患者及び該当タンパク質成分が検出された非乳癌者の検体数」を意味する。
Figure 2017090102
例えばペルオキシレドキシン6の正診率は以下のようにして求めた。
浸潤性乳癌患者でペルオキシレドキシン6が検出された検体数は4検体で、浸潤性乳癌患者以外でペルオキシレドキシン6が検出された検体数は1検体であった。浸潤性乳癌患者以外の検体数は23検体(非浸潤性乳癌患者11名+非乳癌者12名)で、総検体数は34検体である。よって、ペルオキシレドキシン6の正診率は、
[4+(23-1)] / 34≒0.765
である。
更に、表1に記載のタンパク質成分について、上記(2)の二次元ナノLC−ESI−MS/MS測定で得られた浸潤性乳癌患者のスペクトラムカウント値と、非浸潤性乳癌患者及び非乳癌者のスペクトラムカウント値間でマン・ホイットニーのU検定を行った。
該統計結果(p値)を表1に示す。
そして、表1に記載のタンパク質成分のうち統計的に有意な差(p<0.05)が認められるタンパク質成分、すなわちペルオキシレドキシン6、血清アミロイドP成分、ペプチジルプロリルシストランスイソメラーゼA、及びスーパーオキシドジスムターゼ[Cu-Zn]を、最終的に本発明の浸潤性乳癌マーカーとして選別した。
本発明の各浸潤性乳癌マーカーの統計結果を、図1に示す。
図1において、「Invasive」は浸潤性乳癌患者由来試料を用いた結果を、「Non-Invasive」は非浸潤性乳癌患者由来試料及び非乳癌者由来試料を用いた結果を夫々示す。
尚、二次元ナノLC−ESI−MS/MS測定で得られたスペクトルカウント値は、MS/MS測定に使用されたマススペクトルの数を表しており、当該値はタンパク質成分の存在量と比例関係にある。
表1及び図1の結果から明らかな通り、これらの浸潤性乳癌マーカーは、非浸潤性乳癌患者の乳頭分泌液中濃度及び非乳癌者の乳頭分泌液中濃度に比較して浸潤性乳癌患者の乳頭分泌液中に、有意に高濃度に存在していた。また、これらのタンパク質成分は浸潤性乳癌マーカーとして使用されたという実績はないことから、新規な浸潤性乳癌マーカーとして極めて有望である。
また、これらの浸潤性乳癌マーカーを単独或いは二種以上組み合わせて検出することにより浸潤性乳癌及びその進行度の判定が行えることが期待される。例えば、これらの浸潤性乳癌マーカーを単独或いは二種以上組み合わせて検出することで、浸潤性乳癌患者に特徴的な本発明の浸潤性乳癌マーカーの存在パターンが得られる。そこで、被験者の乳頭分泌液等の試料から本発明の浸潤性乳癌マーカーを検出・同定し、これら複数の浸潤性乳癌マーカーの存在パターン解析をすることにより、被験者が浸潤性乳癌を発症しているか否か、又は発症している乳癌が浸潤性か否かの推定が可能となることが期待される。
本発明の浸潤性乳癌マーカーを利用した判定法はより確度の高い浸潤性乳癌の判定(診断、検査)を可能とする。
また、本発明の浸潤性乳癌マーカーは、例えば乳頭分泌液中に見出されるため、非侵襲的且つ簡便に浸潤性乳癌を判定(診断、検査)することが可能である。その結果、精神的及び肉体的苦痛が少ない本発明による浸潤性乳癌診断は、若い世代や授乳中・後の若年経産婦人が自主的に乳癌検診を行うことを促進し、世界に比べて低い我が国の乳癌検診率の向上と、乳癌死亡率の低減による経済的効果が期待される。
また、本発明の判定法によれば、患者が浸潤性乳癌を発症しているか否かを簡便且つ迅速な方法で判定することができるので、以後の治療方針を設定する一助となる。

Claims (7)

  1. ペルオキシレドキシン6、血清アミロイドP成分、ペプチジルプロリルシストランスイソメラーゼA、及びスーパーオキシドジスムターゼ[Cu-Zn] (超酸化物不均化酵素[Cu-Zn])からなる群から選択される浸潤性乳癌マーカー。
  2. 試料中のペルオキシレドキシン6、血清アミロイドP成分、ペプチジルプロリルシストランスイソメラーゼA、及びスーパーオキシドジスムターゼ[Cu-Zn] (超酸化物不均化酵素[Cu-Zn])からなる群から選択される一種以上の浸潤性乳癌マーカーを検出する、浸潤性乳癌の判定を行うためのデータを得る方法。
  3. 試料が乳頭分泌液である、請求項2に記載の方法。
  4. 試料が血清、血漿、又は全血である、請求項2に記載の方法。
  5. 試料中のペルオキシレドキシン6、血清アミロイドP成分、ペプチジルプロリルシストランスイソメラーゼA、及びスーパーオキシドジスムターゼ[Cu-Zn] (超酸化物不均化酵素[Cu-Zn])からなる群から選択される一種以上の浸潤性乳癌マーカーを検出し、その結果に基づいて判定する、浸潤性乳癌の判定法。
  6. 試料が乳頭分泌液である、請求項5に記載の判定法。
  7. 試料が血清、血漿、又は全血である、請求項5に記載の判定法。
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