本発明の第1実施形態を図1乃至図4に基づき説明する。尚、以下の実施形態は、本発明をヒンジキャップについて適用した例であるが、本発明は、注出筒を備えるキャップであればスクリューキャップ等の他の種類のキャップについても適用可能である。
キャップ1は、容器(図示せず)の口部に打栓や螺合等の手段によって取付けられた状態で使用され、本体2と本体2にヒンジ部3を介して連結された蓋部4を備えている。本実施形態において、その大きさ(高さ)が一般的なヒンジキャップと比較して小さく(低く)成形されている。例えば、キャップ1は、蓋部4を閉めた状態で、その高さが25 mm以下若しくは20 mm以下となる様な大きさに成形される。
蓋部4は、天壁5と天壁5の周縁と連続するスカート壁6とを有している。天壁5の内面には、内栓7が遊嵌合されたインナーリング8及びインナーリング8のよりも外周に設けられたアウターリング9が垂設されている。インナーリング8は、本体2の注出筒12の位置に合わせて形成され、内栓7は、本体2の注出筒12の先端部に嵌着可能に設けられている。尚、本実施形態においては、インナーリング8の内方の天壁5には、数本のリブ10が平行に並列するように形成されている。
本体2は、頂壁11、頂壁11に立設された注出筒12、容器口部が嵌着される嵌合溝13を形成する外筒14及び内筒15並びに外筒14の天面に立設され、蓋部4を閉じた際にスカート壁6の内面と係合可能に設けられた係合筒16を有している。
頂壁11は、その底面(入口17a側の面)が平滑面となっており、本実施形態において、頂壁11は、よりキャップ1の高さ(大きさ)を小さくするために内筒15の下端部と連続するように設けられている。尚、頂壁11は、内筒15の下端部以外の位置、即ち、上端部や中間部と連続するように設けることも可能である。
注出筒12は、容器の内外を連通するための孔部17が貫設されている。本実施形態において、注出筒12は、頂壁11のヒンジ部3とは反対側に偏心した位置に設けられている。
孔部17は、流路偏向板18、底板19、偏向路20及び注出路21を有しており、出口17bが略ラッパ状に拡がるように形成されている。本実施形態においては、キャップ1の大きさに合わせて、注出筒12の高さも一般的なヒンジキャップよりも短く成形されており、その孔部長L0が、例えば、15 mm以下になるように形成されている。
流路偏向板18は、孔部長L0の半分よりも入口17a側に形成され、開口23が形成されるように孔部17の内方に向かって突出しており、内容物が注出筒12より吹き出すことを防止できるように、平面視において後述の開口22を塞ぐ様に設けられる。又、流路偏向板18は、好ましくは、孔部17のキャップ1の注出方向D1(図4における水平方向)とは反対方向、即ち、本実施形態においては、ヒンジ部3側の面より孔部17内方に向けて突出するように形成される。
本実施形態において、流路偏向板18は、注出方向D1に延在する様に設けられており、出口17b側の面が略傾斜状に、入口17a側の面が平面状に形成されている。又、流路偏向板18は、平面視略半月状に形成されると共に平面視において底板19と重なり合わない様に形成されている。
尚、流路偏向板18を孔部長L0の半分よりも入口17a側に形成することの副次的な効果として、孔部17の出口17b側が肉厚とならないため成形時のヒケの発生を防止できることが挙げられる。
底板19は、流路偏向板18よりも入口17a側に形成され、流路偏向板18とは逆側より開口22が形成されるように孔部17内方に向かって突出しており、入口17aから孔部17外に突出しない様に孔部17内に形成される。底板19は、好ましくは、少なくとも出口17b側の面が、略円弧面又は略曲面状に形成される。本実施形態においては、入口17a側及び出口17b側の面が共に略円弧面又は略曲面状に形成されていると共に流路偏向板18と同様に平面視略半月状に形成されている。
偏向路20は、流路偏向板18及び底板19によって形成され、流路偏向板18によって、出口方向D2とは異なる方向、本実施形態においては、注出方向D1に延在しており、入口17a側が開口22を介して孔部17の入口17aと連通すると共に出口17b側が開口23を介して注出路21と連続している。
注出路21は、孔部17の偏向路20よりも出口17b側に形成され、出口方向D2(図4における軸(高さ)方向)に延在するように設けられている。又、注出路21は、入口17a側が、偏向路20と開口23を介して連続していると共に出口17b側が孔部17の出口17bと連通している。注出路長L2は、孔部長L0に対して、L2>L0/2となるように設けられている。そのため、流路偏向板18は、孔部長L0の半分よりも入口17a側に形成される。
キャップ1において、容器内の内容物は、孔部17内の少なくとも偏向路20及び注出路21を通って、容器外へと注出されるようになっている。即ち、孔部17内には、少なくとも偏向路20及び注出路21を通る、直線的でない蛇行様の前記容器の内容物を注出するため流路Fが形成されることとなる。
即ち、キャップ1において、流路Fは、その長さ(流路長)が、流路偏向板18や底板19が設けられておらず、入口17aから出口17bまで直線的に結ばれた通常の流路の長さである孔部長L0よりも長くなっていることとなる。
つまり、先ず、容器内の内容物は、入口17a及び開口22を経て、偏向路20へと入る。この際、略出口方向D2に向かっていた流路Fは、流路偏向板18によって、その流速が緩和・調整されながら注出方向D1へと偏向される。その後、流路Fは、再度、出口方向D2へと偏向され、内容物は、開口23を経て注出路21へと入っていく。この間、内容物の流れは、整流されていく。そして、内容物は、孔部17の出口17bから容器外部に注出される。
この際、偏向路長L1が、流路偏向板18や底板19が設けられていない場合の流路長である孔部長L0に対して、少なくともL1/L0>0.5であれば、内容物の整流に寄与することが可能である。換言すれば、L1/L0≦0.5である場合、流路長の増加への寄与も小さくなるため、偏向路20が内容物の整流に寄与することができなくなる可能性がある。尚、本実施形態においては、L1/L0=約0.57である。
又、偏向路幅W1が、あまりにも狭い場合、流路Fの流れが阻害され、内容物を安定に注出できなくなる可能性がある。流路偏向板18や底板19が設けられていない場合の流路幅である孔部幅W0に対して、少なくともW1/W0>0.4であれば、内容物を安定に注出することが可能である。換言すれば、W1/W0≦0.4である場合、偏向路20によって内容物を安定に注出できなくなる可能性がでてくる。尚、本実施形態においては、W1/W0=約0.48である。
そして、この際、注出路21が、L2>L0/2であることが重要となる。流路Fが蛇行しているとその偏向部分(偏向路20の入口17a側部分や出口17b側部分)で僅かな乱流が発生し、このままでは、液汚れ等が起こる可能性がある。注出路21が、L2>L0/2であることで、当該乱流についても整流することが可能となり、このような問題が生じることを回避することができる(逆にいえば、注出路長L2≦L0/2である場合は、当該乱流が整流できずに液汚れ等がでる可能性がでてくる)。本実施形態においては、底板19の出口17b側の面を略円弧面又は略曲面状に形成することで更に当該乱流の発生をより小さいものとしている。
従って、キャップ1は、流路偏向板18によって、内容物の注出筒12より吹き出すことを防止することができる。又、キャップ1は、流路偏向板18によって、内容物の流速を緩和・調整することができ、そして、流路Fが比較的に長く形成されているため、内容物がより整流された状態で内容物を注出することができる。更に、流路偏向板18や底板19は、孔部17内にあるため、内容物の残液量が少なくなったとしても、その注出の障害となることが防止される。
このため、注出筒1は、内容物の注出時等における注出筒からの液切れや液汚れを改善できると共に、内容物の残液量や注出操作の方法にかかわらず、内容液を安定的に注出可能である。
尚、本実施形態のキャップ1のような、通常のキャップよりも小さく孔部長L0が短いキャップは、流路が短くなり、内容物の流れを整流することが困難となると共に内容物が注出筒より吹き出し易いため、注出筒における液切れや液汚れ等が起こり易くなるのが通例であるが、キャップ1においては、流路Fを蛇行様にしたことで、孔部長L0を通常よりも短くしたとしても、比較的に長い流路Fを確保することが可能であるため、注出筒12における液切れや液汚れ等を改善することができ、内容物を安定して注出することができる。
以上、本発明を上記実施形態により説明したが、本発明は、上記実施形態に限定されるものではなく、発明の要旨を変更しない範囲で適宜変更可能である。例えば、本発明の第2実施形態(図5を参照)の様に、流路偏向板18の入口17a側の面を略円弧面又は略曲面状に形成することもできる。この様にすることで、乱流をより小さいものとすることができる。又、本発明の第3実施形態(図6を参照)の様に、流路偏向板18の出口17b側の面を略円弧面又は略曲面状に形成することもできる。