JP2017086767A - 生体情報処理装置、生体情報処理方法及び生体情報処理システム - Google Patents

生体情報処理装置、生体情報処理方法及び生体情報処理システム Download PDF

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Abstract

【課題】睡眠時無呼吸症候群の症状緩和が期待できる寝姿勢を患者に提示すること。
【解決手段】実施形態によれば、生体情報処理装置は、人体に装着可能であり、装着者の加速度を計測可能なセンサ装置と通信可能である。生体情報処理装置は、第1の取得手段、推定手段、第1の算出手段及び表示手段を備えている。第1の取得手段は、所定の時刻毎に計測された装着者の加速度を示す加速度情報を取得する。推定手段は、取得された加速度情報に基づいて、所定の時刻毎の装着者の姿勢を推定する。第1の算出手段は、取得された加速度情報に基づいて、推定された姿勢の種類毎に、呼吸状態の程度を示す第1の指標を算出する。表示手段は、推定された姿勢の種類毎に、算出された第1の指標をディスプレイ上に表示させる。
【選択図】図6

Description

本発明の実施形態は、生体情報処理装置、生体情報処理方法及び生体情報処理システムに関する。
睡眠時無呼吸症候群は、睡眠中に呼吸停止を繰り返す疾患であり、日中の疲労感増加や集中力低下の原因となり得るだけでなく、脳卒中や心筋梗塞といった種々様々な疾患の主要なリスクファクターとなり得る疾患である。このため、睡眠時無呼吸症候群の早期発見及び早期治療が望まれている。
一般的に、睡眠時無呼吸症候群の治療には、CPAP(Continuous Positive Airway Pressure)と呼ばれる装置や、マウスピース等が用いられる。しかしながら、これら装置を用いた治療の場合、患者にかかる負担が大きいという不都合があり、継続して治療を受診している患者は少ないという現状がある。このため、患者にかかる負担の少ない治療法の確立が望まれている。
特許第5350735号公報
ところで、睡眠時無呼吸症候群の症状は、患者の寝姿勢と大きな関連があることが知られている。例えば、寝姿勢が仰向け(仰臥位)であった場合、気道の閉塞による呼吸停止状態(無呼吸状態)が生じやすく、寝姿勢が横向き(側臥位)やうつ伏せ(腹臥位)であった場合、無呼吸状態が生じにくい。つまり、睡眠時無呼吸症候群の症状は、寝姿勢を改善することによって大きく改善する場合もある。
しかしながら、どのように寝姿勢を改善すればよいかは、患者の体格や候群の重症度によって大きく異なるため、症状緩和を期待することができる寝姿勢を患者に分かりやすく提示する必要がある。
本発明が解決しようとする課題は、睡眠時無呼吸症候群の症状緩和が期待できる寝姿勢を患者に提示可能な生体情報処理装置、生体情報処理方法及び生体情報処理システムを提供することにある。
実施形態によれば、生体情報処理装置は、人体に装着可能であり、装着者の加速度を計測可能なセンサ装置と通信可能である。前記生体情報処理装置は、第1の取得手段、推定手段、第1の算出手段及び表示手段を備えている。前記第1の取得手段は、所定の時刻毎に計測された装着者の加速度を示す加速度情報を取得する。前記推定手段は、前記取得された加速度情報に基づいて、前記所定の時刻毎の装着者の姿勢を推定する。前記第1の算出手段は、前記取得された加速度情報に基づいて、前記推定された姿勢の種類毎に、呼吸状態の程度を示す第1の指標を算出する。前記表示手段は、前記推定された姿勢の種類毎に、前記算出された第1の指標をディスプレイ上に表示させる。
各実施形態に共通して係る生体情報処理システムの概略構成例を示す図。 第1の実施形態に係る生体センサ装置のシステム構成例を示す図。 同実施形態に係る生体センサ装置に内蔵される3軸加速度センサについて説明するための図。 同実施形態に係る生体センサ装置の動作の一例を示すフローチャート。 同実施形態に係るタブレットコンピュータのシステム構成を示す図。 同実施形態に係る生体情報処理アプリケーションの機能構成例を示す図。 同実施形態に係る生体情報処理アプリケーションがCPUによって実行された場合の処理手順の一例を示すフローチャート。 図7に示すフローチャートの手順をより詳細に説明するためのフローチャート。 合成加速度の時間的な変化波形を示す図。 図9に示す合成加速度の時間的な変化波形から抽出される高周波成分に関する図。 図9に示す合成加速度の時間的な変化波形から抽出される低周波成分に関する図。 同実施形態に係るタブレットコンピュータのディスプレイモニタに表示される画面の一例を示す図。 同実施形態の変形例に係る生体情報処理アプリケーションがCPUによって実行された場合の処理手順の一例を示すフローチャート。 同実施形態の変形例に係るタブレットコンピュータのディスプレイモニタに表示される画面の一例を示す図。 第2の実施形態に係る生体情報処理アプリケーションの機能構成例を示す図。 同実施形態に係る生体情報処理アプリケーションがCPUによって実行された場合の処理手順の一例を示すフローチャート。 状態遷移モデルの一例を示す図。 図16に示すフローチャートの手順をより詳細に説明するためのフローチャート。 同実施形態に係るタブレットコンピュータのディスプレイモニタに表示される画面の一例を示す図。 第3の実施形態に係る生体センサ装置のシステム構成例を示す図。 同実施形態に係る生体情報処理アプリケーションの機能構成例を示す図。 同実施形態に係る生体情報処理アプリケーションがCPUによって実行された場合の処理手順の一例を示すフローチャート。 図22に示すフローチャートの手順をより詳細に説明するためのフローチャート。 心電図波形の一例を示す図。 同実施形態に係るタブレットコンピュータのディスプレイモニタに表示される画面の一例を示す図。 各実施形態に共通して係る生体情報処理システムの別の概略構成例を示す図。
以下、実施の形態について図面を参照して説明する。
<第1の実施形態>
図1は、各実施形態に共通して係る生体情報処理システムの概略構成例を示す。この生体情報処理システムは、図1に示すように、生体センサ装置10及び電子機器20を含み、当該生体センサ装置10と当該電子機器20とは通信可能に接続されている。生体センサ装置10は、生体情報を常時計測可能とするために、例えば、接着テープ(粘着部材)等により着脱可能に人体(の胸部)に貼り付けられる。人体への装着法は貼り付けによる装着以外にも、バンドによる装着やベルトによる装着、服による埋め込み等であってもよい。生体センサ装置10は、装着者の加速度を少なくとも計測し、当該計測した加速度を示す加速度情報を電子機器20に送信可能な機能を有する。また、生体センサ装置10は、電子機器20からの制御信号等を無線で受信する機能も有する。電子機器20は、例えばスマートフォンやタブレットコンピュータ、時計やイヤホン等のウェアラブル端末等である。本実施形態では、電子機器20がタブレットコンピュータである場合を想定して説明する。
図2は、第1の実施形態に係る生体センサ装置10のシステム構成例を示す。生体センサ装置10は、図2に示すように、MPU(Micro Processing Unit)11、操作部12、加速度センサ13、通信部14、格納部15、エンベデッドコントローラ(EC)16及びバッテリ17等を備えている。MPU11は、生体センサ装置10の各モジュール、各コンポーネントの動作を制御するプロセッサである。操作部12は、装着者によって操作されるインタフェースであり、例えば、押下式のボタンや、タップ等のジェスチャに応答可能なタッチパネル等がこれに該当する。操作部12は、例えば、加速度センサ13による加速度の計測を開始する際に、あるいは計測を終了する際に装着者によって操作される。本実施形態では、操作部12が押下式のボタンである場合を想定して説明する。加速度センサ13は、人体の動きを測定するセンサである。なお、本実施形態では、加速度センサ13が、サンプリング周波数が1kHzの3軸加速度センサである場合を想定して説明する。通信部14は、電子機器20や図示しない外部装置との通信を行うモジュールであり、例えば、Bluetooth(登録商標)モジュール等がこれに該当する。格納部15は、加速度センサ13による加速度の計測結果や、各種アプリケーションプログラム等を格納する記憶装置であり、例えば、不揮発性メモリ(フラッシュメモリ)等がこれに該当する。EC16は、生体センサ装置10の電力管理を実行するための電力管理コントローラである。バッテリ17は、生体センサ装置10の各モジュール、各コンポーネントに電力の供給を行う。
図3は、生体センサ装置10に内蔵される3軸加速度センサ13について説明するための図である。3軸加速度センサ13は、図3に示すように、X軸方向、Y軸方向、Z軸方向の加速度をそれぞれ計測する機能を有している。X軸方向とは、装着者の胸部表面に対して水平であり、かつ体軸と垂直である軸成分を示す。Y軸方向とは、装着者の胸部表面に対して水平であり、かつ体軸と水平である軸成分を示す。Z軸方向とは、装着者の胸部表面に対して垂直な軸成分を示す。3軸加速度センサ13により計測された各軸成分の加速度を示す加速度情報は、MPU11によって格納部15に記録される。
ここで、図4のフローチャートを参照して、生体センサ装置10の動作の一例について説明する。なお、ここでは、生体センサ装置10は、図3に示したように、人体の胸部表面に貼り付けられているものとする。また、生体センサ装置10内の加速度センサ13は、上述したように、装着者の操作に応じて動作するものとする。具体的には、加速度センサ13は、就寝時に装着者によって操作部12が一度押下されることで加速度の計測を開始し、起床時に装着者によって操作部12が再度押下されることで加速度の計測を終了するものとする。
まず、生体センサ装置10内のMPU11は、装着者によって操作部12が押下(操作)されたかどうかを判定する。具体的には、MPU11は、装着者によって操作部12が押下されることで当該操作部12から出力される信号の入力の有無に基づいて、装着者によって操作部12が押下されたかどうかを判定する(ステップS101)。なお、装着者によって操作部12が押下されていないと判定された場合、つまり、装着者によって操作部12が押下された旨の信号の入力が無かった場合(ステップS101のNO)、MPU11は、上記ステップS101の処理を再度実行する。
一方、装着者によって操作部12が押下されたと判定された場合、つまり、装着者によって操作部12が押下された旨の信号の入力が有った場合(ステップS101のYES)、MPU11は、加速度センサ13によって計測されたX軸方向、Y軸方向、Z軸方向の各加速度を示す3次元の加速度情報を、当該加速度センサ13から取得する(ステップS102)。取得された加速度情報は、MPU11によって格納部15に記録される(書き込まれる)(ステップS103)。
その後、MPU11は、装着者によって操作部12が再度押下されたかどうかを判定する(ステップS104)。なお、装着者によって操作部12が再度押下されたと判定された場合(ステップS104のYES)、加速度センサ13による加速度の計測が終了したとして、ここでの一連の処理は終了する。一方、装着者によって操作部12が再度押下されていないと判定された場合(ステップS104のNO)、加速度センサ13による加速度の計測は続いているものとして、上記ステップS102の処理に戻る。つまり、MPU11は、加速度情報を加速度センサ13から取得し、これを格納部15に記録する処理を繰り返し実行する。
なお、本実施形態では、加速度センサ13は、装着者によって就寝時に操作部12が押下されてから起床時に操作部12が再度押下されるまでの間、1秒間に1000回(1kHz)で装着者の加速度を計測しているものとする。但し、加速度センサ13による加速度の計測間隔はこれに限られず、装着者の寝返りによる姿勢変化およびイビキに伴う振動を検出可能な程度の時間であれば、任意の時間であって構わない。
また、本実施形態では、加速度センサ13は、装着者による操作部12の操作に応じて動作するものとしたが、例えば、生体センサ装置10に、装着者の姿勢変化から就寝時刻と起床時刻とを推定可能な機能をさらに付することで、加速度センサ13は、装着者による操作部12の操作がなくても、就寝時刻に加速度の計測を開始し、起床時刻に加速度の計測を終了させることができるようになる。これによれば、生体センサ装置10の装着者が操作部12を押下することを忘れたとしても、適切に加速度センサ13を動作させることができる。
次に、図5を参照して、タブレットコンピュータ20のシステム構成について説明する。
図5は、各実施形態に共通して係るタブレットコンピュータ20のシステム構成例を示す。タブレットコンピュータ20は、CPU21、システムコントローラ22、主メモリ23、グラフィクスコントローラ24、ディスプレイモニタ25、BIOS−ROM26、不揮発性メモリ27、通信部28及びEC29等を備えている。
CPU21は、タブレットコンピュータ20内の各種モジュールの動作を制御するプロセッサである。CPU21は、ストレージデバイスである不揮発性メモリ27から主メモリ23にロードされる各種ソフトウェアを実行する。これらソフトウェアには、オペレーティングシステム(OS)や各種アプリケーションプログラムが含まれている。各種アプリケーションプログラムには、生体情報処理アプリケーションプログラム(以下では、単に、生体情報処理アプリケーションと表記)30が含まれている。生体情報処理アプリケーション30は、生体センサ装置10の装着者の寝姿勢を推定する機能、当該装着者の呼吸状態がどの程度正常であるかを示す指標、例えば、睡眠時無呼吸症候群の重症度を示す睡眠時無呼吸低呼吸指数(AHI:Apnea Hypopnea Index)の推定値を算出する機能等を有している。
CPU21は、BIOS−ROM26に格納された基本入出力システム(BIOS)も実行する。BIOSは、ハードウェア制御のためのプログラムである。
システムコントローラ22は、CPU21のローカルバスと各種コンポーネント、各種モジュールとの間を接続するデバイスである。システムコントローラ22には、主メモリ23をアクセス制御するメモリコントローラも内蔵されている。システムコントローラ22は、PCI EXPRESS規格のシリアルバス等を介してグラフィクスコントローラ24との通信を実行する機能も有している。
グラフィクスコントローラ24は、タブレットコンピュータ20のディスプレイモニタ25として使用される例えばLCD(Liquid Crystal Display)を制御する表示コントローラである。
通信部28は、生体センサ装置10や図示しない外部装置との通信を行うモジュールであり、例えば、Bluetoothモジュール等がこれに該当する。EC29は、タブレットコンピュータ20の電力管理を実行するための電力管理コントローラである。EC29は、ユーザの操作に応じて、本タブレットコンピュータ20を電源オンまたは電源オフする機能を有している。
続いて、図6を参照して、生体情報処理アプリケーション30の機能構成について説明する。図6は、生体情報処理アプリケーション30の機能構成例を示す。生体情報処理アプリケーション30は、図6に示すように、加速度情報取得部31、呼吸状態算出部32及び呼吸状態表示部33等を含む。なお、生体情報処理アプリケーション30に含まれる各機能部が有する各種機能の一部または全ては、生体センサ装置10が有する(生体センサ装置10に実装する)としてもよい。
加速度情報取得部31は、生体センサ装置10内の格納部15に記録された加速度情報を取得する。取得された加速度情報は、呼吸状態算出部32に送出される。
呼吸状態算出部32は、加速度情報取得部31から送出された加速度情報の入力を受けると、当該入力された加速度情報に基づいて、生体センサ装置10の装着者の寝姿勢を推定する処理を実行する。具体的には、呼吸状態算出部32は、入力された加速度情報に基づいて、装着者の寝姿勢が仰臥位、腹臥位、左側臥位及び右側臥位のうちのいずれであるかを推定(分類)する。なお、本実施形態では、呼吸状態算出部32は、装着者の寝姿勢が上述した4種類の寝姿勢のうちのいずれであるかを推定するとしたが、これに限らず、より多くの種類の寝姿勢のうちのいずれであるかを推定するとしてもよいし、例えば左側臥位と右側臥位とをまとめて側臥位とした上で、3種類の寝姿勢のうちのいずれであるかを推定するとしてもよい。
また、呼吸状態算出部32は、寝姿勢(仰臥位、腹臥位、左側臥位及び右側臥位)毎に、睡眠時無呼吸低呼吸指数(AHI)の推定値を算出する機能も有している。以下では、説明の便宜上、AHIの推定値をAHIと表記して説明する。なお、AHIの詳しい算出方法については、図8のフローチャート共に後述するため、ここではその詳しい説明は省略する。
呼吸状態表示部33は、呼吸状態算出部32によって寝姿勢毎に算出されたAHIの各値をタブレットコンピュータ20のディスプレイモニタ25に表示させる。
ここで、生体情報処理アプリケーション30がCPU21によって実行された場合の処理手順の一例を、図7のフローチャートを参照しながら説明する。
まず、加速度情報取得部31は、生体センサ装置10内の格納部15に記録された加速度情報を取得する(ステップS201)。なお、取得された加速度情報は、呼吸状態算出部32に送出されると共に、不揮発性メモリ27に記録される(書き込まれる)。
続いて、呼吸状態算出部32は、加速度情報取得部31から送出された加速度情報の入力を受けると、当該入力された加速度情報に基づいて、加速度が計測された時刻における生体センサ装置10の装着者の寝姿勢が、仰臥位、腹臥位、左側臥位及び右側臥位のうちのいずれであるかを推定する(ステップS202)。なお、本実施形態では、加速度が計測された時刻を時刻tと表記する。また、上記ステップS202の処理による推定結果は、Pos(t)として不揮発性メモリ27に記録される。Pos(t)は、時刻tにおける装着者の寝姿勢を示す値であり、1〜4のいずれかであるものとする。具体的には、Pos(t)が1を示す場合、装着者の寝姿勢は仰臥位であり、Pos(t)が2を示す場合、装着者の寝姿勢は腹臥位であり、Pos(t)が3を示す場合、装着者の寝姿勢は左側臥位であり、Pos(t)が4を示す場合、装着者の寝姿勢は右側臥位であるものとする。
次に、呼吸状態算出部32は、入力された加速度情報に基づいて、寝姿勢毎にAHIを算出する(ステップS203)。
ここで、図8のフローチャートを参照して、上記ステップS203の処理の詳細について説明する。なお、以下では、AHIを算出するために、鼾の振動と、呼吸に伴う胸部の動きとが利用される場合を例示する。これは、一般的に、睡眠時無呼吸症候群の重症度と、鼾の振動及び呼吸に伴う胸部の動きとには大きな相関関係があるとされているためである。
まず、呼吸状態算出部32は、後述する(1)式を利用して、時刻tの加速度情報により示されるX軸方向の加速度X(t)と、Y軸方向の加速度Y(t)と、Z軸方向の加速度Z(t)との合成加速度A(t)を算出する(ステップS301)。なお、入力された全ての加速度情報について、上記ステップS301の処理が実行されることにより、図9に示すような合成加速度の時間的な変化を示す波形A(t)が算出される。
Figure 2017086767
なお、本実施形態においては合成加速度A(t)に対して以降の処理を行うものとして説明するが、ある1軸の加速度の値(たとえばZ(t))やこれらの微分値をA(t)の代わりに用いることも可能である。
続いて、呼吸状態算出部32は、算出された合成加速度の時間的な変化を示す波形A(t)に対してハイパスフィルタを適用し、鼾に対応する高周波成分AHF(t)を抽出する(ステップS302)。なお、ハイパスフィルタのカットオフ周波数(低域遮断周波数)としては、例えば50Hzが適用される。
また、呼吸状態算出部32は、算出された合成加速度の時間的な変化を示す波形A(t)に対してローパスフィルタを適用し、呼吸に伴う胸部(胸郭)の動きに対応する低周波成分ALF(t)を抽出する(ステップS303)。なお、ローパスフィルタのカットオフ周波数(高域遮断周波数)としては、例えば0.5Hzが適用される。
なお、ハイパスフィルタやローパスフィルタのカットオフ周波数は、上述した各値に限らず、任意の値であって構わない。
次に、呼吸状態算出部32は、抽出された高周波成分AHF(t)から特徴量を算出する。具体的には、呼吸状態算出部32は、後述する(2)式を利用して、抽出された高周波成分AHF(t)の時刻tにおける実効値(パワー)RMSHF(t)を算出する(ステップS304)。なお、図10(a)に示す高周波成分AHF(t)の全ての時刻tについて、上記ステップS304の処理が実行されることにより、図10(b)に示すような実効値の時間的な変化を示す波形RMSHF(t)が算出される。
Figure 2017086767
上記(2)式のWは、実効値を算出する区間の長さを示し、例えば0.1秒に設定される。なお、Wの値は0.1秒に限られず、鼾を1回発するのにかかるとされる時間より短い時間であれば、任意の時間であって構わない。
続いて、呼吸状態算出部32は、抽出された低周波成分ALF(t)から特徴量を算出する。具体的には、まず呼吸状態算出部32は、抽出された低周波成分ALF(t)から極大値(図11中の○印)及び極小値(図11中の△印)を全て抽出し、i番目の極大値とi番目の極小値との差分から振幅ΔALF(i)を算出する。なお、以下では、算出された振幅ΔALF(i)に対応する時刻を時刻tと定義する。振幅ΔALF(i)を算出すると、呼吸状態算出部32は、後述する(3)式を利用して、時刻tにおける振幅ΔALF(i)の変動量SDALF(t)を算出する(ステップS305)。
Figure 2017086767
上記(3)式の演算子sd[x1,・・・,xn]は、x1〜xnの標準偏差を計算する演算子である。また、上記(3)式のNは、呼吸何回分の標準偏差を算出するかを定める値であり、例えば5回に設定される。これは、一般的に、無呼吸状態から呼吸を再開し、正常な呼吸状態に復帰するまでに行われる呼吸の回数が5回前後であるためである。但し、Nの値は5回に限られず、任意の回数であって構わない。また、以下では、変数iの最大値をIと定義する。
なお、本実施形態では、変動量SDALF(t)を算出するために、標準偏差が利用される場合を例示しているが、これに限られず、例えば、標準偏差の代わりに、分散値や振幅の平均値等が利用されてもよい。
続いて、呼吸状態算出部32は、上記ステップS304にて算出された実効値RMSHF(t)に基づいて、AHIを算出するための第1の予測変数X1Posを、姿勢毎に算出する。具体的には、呼吸状態算出部32は、後述する(4)式を利用して、第1の予測変数X1Posを算出する(ステップS306)。
Figure 2017086767
上記(4)式のTは、加速度情報のデータ長を示す。より詳しくは、加速度センサ13による計測の回数を示す。例えば、加速度センサ13による加速度の計測間隔がΔt秒であって、装着者の睡眠時間がH時間であった場合、Tには、3600H/Δtが代入される。具体的には、計測間隔が1秒、睡眠時間が6時間であった場合、21600になる。また、上記(4)式のUの添え字Posには、上述したように、仰臥位に関する第1の予測変数を求める場合には1が代入され、腹臥位に関する第1の予測変数を求める場合には2が代入され、左側臥位に関する第1の予測変数を求める場合には3が代入され、右側臥位に関する第1の予測変数を求める場合には4が代入される。
次に、呼吸状態算出部32は、上記ステップS305にて算出された変動量SDALF(t)に基づいて、AHIを算出するための第2の予測変数X2Posを、姿勢毎に算出する。具体的には、呼吸状態算出部32は、後述する(5)式を利用して、第2の予測変数X2Posを算出する(ステップS307)。
Figure 2017086767
上記(5)式のIは、上述したように変数iの最大値を示す。より詳しくは、装着者が睡眠中に(一晩に)呼吸した回数を示す。また、上記(5)式のUの添え字Posには、上記(4)式のときと同様に、仰臥位に関する第2の予測変数を求める場合には1が代入され、腹臥位に関する第2の予測変数を求める場合には2が代入され、左側臥位に関する第2の予測変数を求める場合には3が代入され、右側臥位に関する第2の予測変数を求める場合には4が代入される。
なお、上記(4)式及び上記(5)式において用いられる関数UPos(x)は、後述する(6)式のように定義される関数である。
Figure 2017086767
しかる後、呼吸状態算出部32は、後述する(7)式を利用して、AHIを姿勢毎に算出する(ステップS308)。なお、算出された姿勢毎のAHIを示す第1の結果情報は、呼吸状態表示部33に送出される。
Figure 2017086767
上記(7)式のα、α、βは、AHIの実測値と予測変数の関係から重回帰分析等により予め定められた値である。なお、定数α、α、βは、生体センサ装置10の装着者の年齢や性別に応じて、複数用意されるとしてもよい。これによれば、生体センサ装置10の装着者の年齢や性別が多岐にわたったとしても、姿勢毎のAHIを精度良く算出することができる。
なお、本実施形態では、姿勢毎のAHIを算出するために、第1の予測変数X1Posと第2の予測変数X2Posという2つの予測変数を利用するとしたが、これに限られず、さらに別の予測変数を利用することも可能である。例えば、各姿勢における鼾の振動のピーク周波数や、このピーク周波数のばらつき、鼾発生の周期性等も、AHIとよく相関するので、これらに対応する項を上記(7)式に追加するとしてもよい。
また、本実施形態では、重回帰分析(線形の重回帰式)を利用して、姿勢毎のAHIを算出する場合を例示したが、これに限られず、例えばサポートベクトルマシンや回帰木等、任意の予測技術を代わりに利用して、姿勢毎のAHIを算出するとしてもよい。
再度、図7の説明に戻る。上記ステップS203の処理が実行された後に、呼吸状態表示部33は、呼吸状態算出部32から送出された第1の結果情報の入力を受けると、当該入力された結果情報に含まれる姿勢毎のAHIの値をディスプレイモニタ25上に表示させ(ステップS204)、ここでの一連の処理は終了する。
ここで、図12を参照して、タブレットコンピュータ20のディスプレイモニタ25に表示される画面の一例について説明する。図12は、タブレットコンピュータ20のディスプレイモニタ25に表示される画面の一例を示す。図12の画面では、寝姿勢を示す人型のアイコンと、当該寝姿勢のときのAHIの値とが対応づけて表示されている。これによれば、ユーザ(生体センサ装置10の装着者)は、右側臥位や腹臥位の姿勢で寝ているときはAHIの値が低く、仰臥位や左側臥位の姿勢で寝ているときはAHIの値が高くなることを把握することができる。また、図12に示すように、「あなたは、右向きやうつ伏せで寝ると無呼吸になりにくいようです。」といった、AHIの値が所定値以下(または所定値未満)の姿勢で寝ると無呼吸になりにくいという旨のメッセージをさらに表示させるとしてもよい。これによれば、ユーザは、どの姿勢で寝れば無呼吸状態になりにくいかを、より容易に把握することができる。
また、図12に示したように、寝姿勢とAHIの値とを対応づけて表示する際には、例えば、AHIの値が低い寝姿勢のアイコンを青色(安全色)で表示し、AHIの値が高い寝姿勢のアイコンを赤色(危険色)で表示する等してもよい。
さらに、本実施形態では、呼吸状態がどの程度正常であるかを示す指標としてAHIを算出するとしたが、これに限られず、例えば、鼾の回数等がAHIの代わりの指標として算出されるとしてもよい。
以上説明した第1の実施形態によれば、生体情報処理アプリケーション30は、加速度情報に基づいて生体センサ装置10を装着した装着者の寝姿勢を推定し、当該推定された寝姿勢毎のAHI(の推定値)を算出する呼吸状態算出部32と、当該算出された寝姿勢毎のAHIの値をディスプレイモニタ25に表示させる呼吸状態表示部33とを備えている。これによれば、睡眠時無呼吸症候群の症状緩和が期待できる寝姿勢、つまり、AHIの値が低い寝姿勢を患者(装着者)に提示することができる。
以下に、第1の実施形態の変形例について説明する。この変形例では、所定の寝姿勢であった時間が短い、つまり、所定の寝姿勢時のAHIを正当に評価するには当該寝姿勢時の加速度情報が不十分である場合を考慮した処理について説明する。
(変形例)
図13は、第1の実施形態の変形例に係る生体情報処理アプリケーション30の処理手順の一例を示すフローチャートである。なお、ステップS401〜S403の処理については、既に説明した図7に示すステップS201〜S203と同様であるため、ここではその詳しい説明は省略する。
ステップS401〜S403の処理が実行された後に、呼吸状態表示部33は、呼吸状態算出部32から送出された第1の結果情報の入力を受けると、後述する(8)式を利用して、寝姿勢毎に、睡眠中(就寝中)にその寝姿勢であったとされる時間の合計値TPosを算出する(ステップS404)。つまり、就寝してから起床するまでの間に仰臥位であった時間の合計値Tと、就寝してから起床するまでの間に腹臥位であった時間の合計値Tと、就寝してから起床するまでの間に左側臥位であった時間の合計値Tと、就寝してから起床するまでの間に右側臥位であった時間の合計値Tとが算出される。
Figure 2017086767
続いて、呼吸状態表示部33は、上記ステップS404の処理により算出された合計値TPos(T〜T)が予め設定された閾値以上であるかどうかをそれぞれ判定する(ステップS405)。なお、全ての合計値T〜Tが予め設定された閾値以上であると判定された場合(ステップS405のYES)、呼吸状態表示部33は、既に説明した図7に示すステップS204と同様の処理を実行し(ステップS406)、ここでの一連の処理は終了する。
一方、上述した合計値T〜Tのうち、少なくとも1つの合計値が予め設定された閾値未満であると判定された場合(ステップS405のNO)、呼吸状態表示部33は、予め設定された閾値以上であると判定された合計値の寝姿勢については、入力された結果情報に含まれるAHIの値をディスプレイモニタ25に表示させ、予め設定された閾値未満であると判定された合計値の寝姿勢については、入力された結果情報に含まれるAHIの値をディスプレイモニタ25に表示させない代わりに、当該寝姿勢で就寝することを推奨する旨のメッセージをディスプレイモニタ25に表示させ(ステップS407)、ここでの一連の処理は終了する。
図14は、タブレットコンピュータ20のディスプレイモニタ25に表示される画面の一例を示す。図14の画面によれば、ユーザは、仰臥位の姿勢で寝ると、無呼吸状態になりやすく、腹臥位及び右側臥位のどちらかの姿勢で寝ると、無呼吸状態になりにくく、左側臥位の姿勢については、当該左側臥位を示す加速度情報が不十分であり、AHIを正当に評価することができなかったことを把握することができる。また、図14に示すように、「左向きでの呼吸状態の評価が不十分です。左向きで寝てみてください。」といった、AHIを正当に評価することができなかった左側臥位で寝ることを推奨する旨のメッセージが表示されることにより、ユーザは、どの寝姿勢で寝始めれば、全ての寝姿勢についてAHIを正当に評価することができる可能性が高いかを把握することができる。
なお、生体情報処理アプリケーション30によるAHIを算出する処理が既に複数日にわたって実行されていた場合、呼吸状態表示部33は、正当に評価されたときのAHIの平均値を寝姿勢毎に算出し、これをディスプレイモニタ25上に表示させるとしてもよい。
以上説明した第1の実施形態の変形例によれば、全ての寝姿勢について、正当に呼吸状態の評価を行うことができる。
<第2の実施形態>
次に、第2の実施形態について説明する。本実施形態においては、生体情報処理アプリケーション30が、図15に示すように、上述した加速度情報取得部31、呼吸状態算出部32及び呼吸状態表示部33に加えて、姿勢遷移評価部34をさらに備えている場合について説明する。なお、本実施形態においては、既に説明した第1の実施形態と同様な機能を有する各部について同一の符号を付し、その詳しい説明を省略するものとする。
姿勢遷移評価部34は、呼吸状態算出部32によって推定された時刻毎の寝姿勢Pos(t)に基づいて、所定の寝姿勢からどんな寝姿勢に変化(遷移)しやすいかを評価する機能を有している。
呼吸状態表示部33は、既に説明した機能に加えて、姿勢遷移評価部34による評価の結果に基づき、寝姿勢の遷移も考慮した上で、好ましい寝姿勢を推奨する旨のメッセージをディスプレイモニタ25に表示させる機能も有する。
ここで、図16のフローチャートを参照して、第2の実施形態に係る生体情報処理アプリケーション30がCPU21によって実行された場合の処理手順の一例について説明する。なお、ステップS501〜S503の処理については、既に説明した図7に示すステップS201〜S203の処理と同様であるため、ここではその詳しい説明は省略する。
ステップS501〜S503の処理が実行されると、姿勢遷移評価部34は、呼吸状態算出部32によって推定された時刻毎の寝姿勢Pos(t)に基づいて、生体センサ装置10の装着者がどんな寝姿勢からどんな寝姿勢に変化(遷移)しやすいかを示す状態遷移モデルを生成する(ステップS504)。
具体的には、姿勢遷移評価部34は、図17に示すような状態遷移モデルを生成する。図17のpabは、所定の時刻tにおいて寝姿勢がaであった場合、その次の時刻t+1において寝姿勢がbとなる確率を示している。例えば、p11は、所定の時刻tにおいて寝姿勢が仰臥位(Pos(t)=1)であった場合、その次の時刻t+1において寝姿勢が仰臥位(Pos(t+1)=1)のままである確率を示している。また、p12は、所定の時刻tにおいて寝姿勢が仰臥位であった場合、その次の時刻t+1において寝姿勢が腹臥位(Pos(t+1)=2)に遷移する確率を示している。p13は、所定の時刻tにおいて寝姿勢が仰臥位であった場合、その次の時刻t+1において寝姿勢が左側臥位(Pos(t+1)=3)に遷移する確率を示している。さらに、p14は、所定の時刻tにおいて寝姿勢が仰臥位であった場合、その次の時刻t+1において寝姿勢が右側臥位(Pos(t+1)=4)に遷移する確率を示している。ここでは、所定の時刻tにおいて寝姿勢が仰臥位であった場合を例にとって説明したが、所定の時刻tにおいて寝姿勢がその他の寝姿勢であった場合についても同様であるため、ここではその詳しい説明は省略する。
姿勢遷移評価部34は、呼吸状態算出部32によって推定された時刻毎の寝姿勢Pos(t)の値の変化(遷移)を数え上げることで、上述したpabの値をそれぞれ算出し、図17に示す状態遷移モデルを生成する。
ステップS504の処理の後、姿勢遷移評価部34は、呼吸状態算出部32によって算出された寝姿勢毎のAHIの値と、生成した状態遷移モデルとに基づいて、所定の寝姿勢で就寝し始めたと仮定した場合におけるAHIの期待値を寝姿勢毎に算出する(ステップS505)。
ここで、図18のフローチャートを参照して、上記ステップS505の処理の詳細について説明する。
まず、姿勢遷移評価部34は、所定の時刻tにおける姿勢の状態を示す変数Q(t)に、就寝開始時にとると仮定された寝姿勢を設定する(ステップS601)。なお、このとき、時刻tは就寝開始時であるため、0であるものとする。
続いて、姿勢遷移評価部34は、変数Q(t)の値を元に、生成した状態遷移モデルにより示されるpabに比例する確率で乱数を発生させ、次の時刻t+1における変数Q(t+1)の値を決定する(ステップS602)。
次に、姿勢遷移評価部34は、時刻tの値が予め定められた閾値(例えば、加速度情報のデータ長を示すT)以上であるかどうかを判定する(ステップS603)。なお、時刻tの値が予め定められた閾値未満であると判定された場合(ステップS603のNO)、上記ステップS602に戻り、次の時刻における変数の値を決定する処理を実行する(例えば、変数Q(t+1)の値を元に、pabに比例する確率で乱数を発生させ、次の時刻t+2における変数Q(t+2)の値を決定する)。
一方、時刻tの値が予め設定された閾値以上であると判定された場合(ステップS603のYES)、姿勢遷移評価部34は、後述する(9)式を利用して、上記ステップS601の処理により就寝開始時にとると仮定された寝姿勢で寝始めた場合のAHIの期待値E[AHI]を算出する(ステップS604)。
Figure 2017086767
続いて、姿勢遷移評価部34は、上記ステップS601〜S604の処理が予め設定された回数試行されたかどうかを判定する(ステップS605)。なお、予め設定された回数試行されていないと判定された場合(ステップS605のNO)、上記ステップS601に戻り、当該寝姿勢について、再度ステップS601〜S604の処理を実行する。
一方、予め設定された回数試行されたと判定された場合(ステップS605のYES)、姿勢遷移評価部34は、各試行において算出されたAHIの期待値E[AHI]の平均値を算出し、これを上記ステップS601の処理により就寝開始時にとると仮定された寝姿勢で寝始めた場合のAHIの正式な期待値とする(ステップS606)。
次に、姿勢遷移評価部34は、就寝開始時にとると仮定される寝姿勢に、全ての寝姿勢(この場合、仰臥位、腹臥位、左側臥位、右側臥位)が設定されたかどうかを判定する(ステップS607)。なお、就寝開始時にとると仮定される寝姿勢に、全ての寝姿勢が設定されていないと判定された場合(ステップS607のNO)、上記ステップS601の処理に戻り、就寝開始時にとると仮定される寝姿勢にまだ設定されていない寝姿勢について、上記ステップS601〜S606の処理を実行する。
一方、就寝開始時にとると仮定される寝姿勢に、全ての寝姿勢が設定された、つまり、全ての寝姿勢について、上述したAHIの期待値が算出された場合(ステップS607のYES)、姿勢遷移評価部34は、算出された寝姿勢毎のAHIの期待値を示す第2の結果情報を呼吸状態表示部33に送出し(ステップS608)、ここでの一連の処理は終了する。
再度、図17の説明に戻る。上記ステップS505の処理が実行された後に、呼吸状態表示部33は、姿勢遷移評価部34から送出された第2の結果情報の入力を受けると、当該入力された第2の結果情報に含まれる姿勢毎のAHIの期待値をディスプレイモニタ25上に表示させ(ステップS506)、ここでの一連の処理は終了する。
ここで、図19を参照して、タブレットコンピュータ20のディスプレイモニタ25に表示される画面の一例について説明する。図19は、タブレットコンピュータ20のディスプレイモニタ25に表示される画面の一例を示す。図19の画面では、寝姿勢を示す人型のアイコンと、当該寝姿勢をとって寝始めたときのAHIの期待値とが対応づけて表示されている。これによれば、ユーザは、左側臥位の姿勢で寝始めるとAHIの値は低くなり、仰臥位や腹臥位、右側臥位の姿勢で寝始めるとAHIの値は高くなることを把握することができる。また、図19に示すように、「あなたは、左向きで寝始めると無呼吸になりにくいようです。」といった、AHIの期待値が所定値以下(または所定値未満)の姿勢で寝始めると無呼吸になりにくいという旨のメッセージをさらに表示させるとしてもよい。
以上説明した第2の実施形態によれば、生体情報処理アプリケーション30は、就寝中の姿勢変化も考慮した上で、どのような寝姿勢で寝始めれば無呼吸状態になりにくいかを示すAHIの期待値を算出可能な姿勢遷移評価部34をさらに備えている。これによれば、例えば、仰臥位や腹臥位の姿勢のときにAHIの値が高くなり、左側臥位や右側臥位の姿勢のときにAHIの値が低くなる場合であっても、左側臥位からは仰臥位や腹臥位への姿勢変化が起こりにくく、右側臥位からは仰臥位や腹臥位への姿勢変化が起こりやすい場合、上述した処理により算出されるAHIの期待値は、左側臥位に関する値だけが低くなる。したがって、ユーザ(装着者)は、自身の睡眠中の姿勢変化も考慮した上で、左側臥位で寝始めることが無呼吸状態になりにくいということを容易に把握することができる。
<第3の実施形態>
続いて、第3の実施形態について説明する。本実施形態では、生体センサ装置10が、図20に示すように、上述した各部11〜17に加えて、心電図センサ18をさらに備え、生体情報処理アプリケーション30が、図21に示すように、上述した加速度情報取得部31、呼吸状態算出部32及び呼吸状態表示部33に加えて、非呼吸生理状態算出部35をさらに備えている場合について説明する。なお、説明の便宜上、図21では、生体情報処理アプリケーション30が上述した姿勢遷移評価部34を備えていない場合を例示しているが、本実施形態に係る生体情報処理アプリケーション30は、姿勢遷移評価部34をさらに備えていてもよい。また、本実施形態においては、既に説明した第1及び第2の実施形態と同様な機能を有する各部について同一の符号を付し、その詳しい説明を省略するものとする。
心電図センサ18は、図示しない心電図電極(R)と心電図電極(L)とを含み、これら心電図電極(R)、心電図電極(L)間の電位差をサンプリングした時系列信号を解析することにより心電図波形ECG(t)を得る。得られた心電図波形ECG(t)を示す心電図情報は、MPU11によって格納部15に記録される。
なお、本実施形態では、生体センサ装置10が心電図センサ18をさらに備えている場合を例にとって説明するが、心電図センサ18は、寝姿勢や呼吸以外の生理状態を算出するための情報(信号)を計測可能なセンサであれば、例えば光電脈波センサ等他のセンサに置き換えられても構わない。
非呼吸生理状態算出部35は、生体センサ装置10内の格納部15に記録された心電図情報を当該生体センサ装置10から取得する。また、非呼吸生理状態算出部35は、取得した心電図情報と、呼吸状態算出部32によって推定された時刻毎の寝姿勢Pos(t)とに基づいて、生体センサ装置10の装着者の生理状態がどの程度正常であるかを示す指標、例えば、循環器系の負担を表す自律神経活動指標(LF/HF)を寝姿勢毎に算出する。
呼吸状態表示部33は、既に説明した機能に加えて、非呼吸生理状態算出部35により算出された寝姿勢毎の自律神経活動指標LF/HFをディスプレイモニタ25にさらに表示させる機能も有する。
ここで、図22のフローチャートを参照して、第3の実施形態に係る生体情報処理アプリケーション30がCPU21によって実行された場合の処理手順の一例について説明する。なお、ステップS701〜S703の処理については、既に説明した図7に示すステップS201〜S203の処理と同様であるため、ここではその詳しい説明は省略する。
ステップS701〜S703の処理が実行されると、非呼吸生理状態算出部35は、生体センサ装置10内の格納部15に記録された心電図情報を取得する(ステップS704)。取得された心電図情報は、不揮発性メモリ27に記録される(書き込まれる)。
続いて、非呼吸生理状態算出部35は、取得された心電図情報に基づいて、寝姿勢毎に自律神経活動指標LF/HFを算出する(ステップS705)。
ここで、図23のフローチャートを参照して、上記ステップS705の処理の詳細について説明する。
まず、非呼吸生理状態算出部35は、図24に示すように、取得した心電図情報により示される心電図波形ECG(t)から心拍に対応するピーク(R波)を全て検出する(ステップS801)。なお、R波の検出には、例えばPan&Tompkins法等、任意の公知の手法を用いればよい。以下では、検出されたR波のうち、k番目のR波が検出された時刻(位置)を時刻tと表記する。
続いて、非呼吸生理状態算出部35は、図24に示すように、連続する2つの心拍それぞれに対応する2つのR波間の間隔であるR−R間隔(RRI:R−R Interval)を算出する(ステップS802)。
次に、非呼吸生理状態算出部35は、算出されたRRIの時系列を一定区間(Tw)毎に分割(但し、n番目の区間は、時刻t−Tw/2からt+Tw/2である)し、それぞれの区間のRRIの時系列に対して、周波数解析を行う。また、非呼吸生理状態算出部35は、この周波数解析で得られるn番目の区間の周波数fのパワー値をPn(f)と定義し、その区間における低周波(例えば、0.05Hz〜0.15Hz)と高周波(例えば、0.15Hz〜0.40Hz)のパワー値の比率LF/HFを、後述する(10)式を利用して算出する(ステップS803)。
Figure 2017086767
続いて、非呼吸生理状態算出部35は、後述する(11)式を利用して、自律神経活動指標LF/HFを寝姿勢毎に算出し、算出された寝姿勢毎の自律神経活動指標LF/HFを示す第3の結果情報を呼吸状態表示部33に送出して(ステップS804)、ここでの一連の処理は終了する。
Figure 2017086767
再び、図22の説明に戻る。ステップS705の処理が実行された後に、呼吸状態表示部33は、非呼吸生理状態算出部35から送出された第3の結果情報の入力を受けると、当該入力された第3の結果情報に含まれる寝姿勢毎の自律神経活動指標LF/HFを第1の結果情報に含まれる寝姿勢毎のAHIの値と共に、ディスプレイモニタ25に表示して(ステップS706)、ここでの一連の処理は終了する。
ここで、図25を参照して、タブレットコンピュータ20のディスプレイモニタ25に表示される画面の一例について説明する。図25は、タブレットコンピュータ20のディスプレイモニタ25に表示される画面の一例を示す。図25の画面では、寝姿勢を示す人型のアイコンと、当該寝姿勢のときのAHIの値と、当該寝姿勢のときの自律神経活動指標LF/HFの値とが対応づけて表示されている。これによれば、ユーザは、右側臥位や腹臥位で寝ているときはAHIの値及び自律神経活動指標LF/HFの値が共に低くなり、仰臥位や左側臥位で寝ているときはAHIの値及び自律神経活動指標の値が共に高くなることを把握することができる。また、図25に示すように、「あなたは、右向きやうつ伏せで寝ると無呼吸になりにくいようです。」といった、AHIの値が所定値以下(または所定値未満)であり、かつ自律神経活動指標LF/HFの値が所定値以下(または所定値未満)である姿勢で寝ると無呼吸になりにくいという旨のメッセージをさらに表示させるとしてもよい。
なお、本実施形態では、循環器系への負担の指標として、心拍間隔変動の低周波成分と高周波成分の比率(LF/HF)を算出するとしたが、これに限られず、例えばLF/HFの代わりに、LF/(LF+HF)の値が循環器系への負担の指標として算出されてもよい。また、CSI(Cardiac Sympathetic Index)やCVI(Cardiac Vagal Index)等が、循環器系への負担の指標として算出されてもよい。
以上説明した第3の実施形態によれば、生体情報処理アプリケーション30は、AHIとは別に、睡眠時無呼吸症候群に関連性のある自律神経活動指標LF/HFを寝姿勢毎に算出可能な非呼吸生理状態算出部35をさらに備えている。これによれば、ユーザ(装着者)は、呼吸状態だけでなく、呼吸状態以外の生理状態(例えば、心臓血管系への負担の指標等)についても寝姿勢毎に容易に把握することができる。
なお、上記した第1〜第3の実施形態においては、生体情報システムが、生体センサ装置10と電子機器20とを含む構成を例にとって説明したが、例えば図26に示すように、生体情報処理システムは、1以上のサーバ装置を含むクラウドサービス40をさらに含んでいてもよい。つまり、生体情報処理システムは、クラウドコンピューティングを利用したシステムとして実装されてもよい。この場合、呼吸解析アプリケーション30の各種機能の一部または全てをクラウドサービス40内のサーバ装置に持たせることが可能である。例えば、クラウドサービス40内のサーバ装置は、電子機器20からのリクエストに応じて、生体センサ装置10によって計測された加速度信号を取得し、上記した第1〜第3の実施形態に示した各種処理を実行することができる。これによれば、生体センサ装置10において実行されるとした各種処理をクラウドサービス40内のサーバ装置において実行することができるので、処理負荷の分散化を実現させることができる。
以上説明した少なくとも1つの実施形態によれば、睡眠時無呼吸症候群の症状緩和が期待できる寝姿勢を患者(ユーザ)に提示することができる。
なお、本実施形態の処理は、コンピュータプログラムによって実現することができるので、このコンピュータプログラムを格納したコンピュータ読み取り可能な記憶媒体を通じてこのコンピュータプログラムをコンピュータにインストールして実行するだけで、本実施形態と同様の効果を容易に実現することができる。
なお、本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
10…生体センサ装置、11…MPU、12…操作部、13…加速度センサ、14…通信部、15…格納部、16…EC、17…バッテリ、18…心電図センサ、20…電子機器、21…CPU、22…システムコントローラ、23…主メモリ、24…グラフィクスコントローラ、25…ディスプレイモニタ、26…BIOS−ROM、27…不揮発性メモリ、28…通信部、29…EC、30…生体情報処理アプリケーション、31…加速度情報取得部、32…呼吸状態算出部、33…呼吸状態表示部、34…姿勢遷移評価部、35…非呼吸状態算出部、40…クラウドサービス。

Claims (10)

  1. 人体に装着可能であり、装着者の加速度を計測可能なセンサ装置と通信可能な生体情報処理装置であって、
    所定の時刻毎に計測された装着者の加速度を示す加速度情報を取得する第1の取得手段と、
    前記取得された加速度情報に基づいて、前記所定の時刻毎の装着者の姿勢を推定する推定手段と、
    前記取得された加速度情報に基づいて、前記推定された姿勢の種類毎に、呼吸状態の程度を示す第1の指標を算出する第1の算出手段と、
    前記推定された姿勢の種類毎に、前記算出された第1の指標をディスプレイ上に表示させる表示手段と
    を具備する生体情報処理装置。
  2. 前記第1の算出手段は、
    加速度の時間的な変化波形から抽出される高周波成分の特徴量に基づいて、前記推定された姿勢の種類毎に、前記第1の指標を算出するための第1の予測変数を算出する手段と、
    前記加速度の時間的な変化波形から抽出される低周波成分の特徴量に基づいて、前記推定された姿勢の種類毎に、前記第1の指標を算出するための第2の予測変数を算出する手段と、
    前記算出された姿勢の種類毎の第1及び第2の予測変数に基づいて、前記推定された姿勢の種類毎に、前記第1の指標を算出する手段と
    を具備する、請求項1に記載の生体情報処理装置。
  3. 前記第1の指標は、睡眠時無呼吸低呼吸指数である、請求項1に記載の生体情報処理装置。
  4. 前記推定された姿勢の種類毎に、就寝中にその姿勢であった時間の合計値を算出する第2の算出手段と、
    前記算出された各合計値が所定の閾値以上であるかどうかをそれぞれ判定する判定手段と
    をさらに具備し、
    前記表示手段は、
    前記算出された各合計値のうちの少なくとも1つの合計値が前記閾値未満であると判定された場合、当該閾値未満と判定された合計値の姿勢で就寝することを推奨する旨のメッセージを当該ディスプレイ上に表示させる、請求項1に記載の生体情報処理装置。
  5. 前記取得された加速度情報に基づいて、前記装着者が就寝中にどのような姿勢を取りやすいかを評価する評価手段と、
    前記算出された姿勢の種類毎の第1の指標と、前記評価手段による評価結果とに基づいて、所定の姿勢で就寝し始めた場合の前記第1の指標の期待値を算出する第3の算出手段と
    をさらに具備し、
    前記表示手段は、
    前記就寝し始めたときの姿勢と、当該姿勢時の前記第1の指標の期待値とを対応づけて前記ディスプレイ上に表示させる、請求項1に記載の生体情報処理装置。
  6. 前記センサ装置によってさらに計測された前記装着者の心拍数に関する情報を取得する第2の取得手段と、
    前記取得された心拍数に関する情報に基づいて、前記推定された姿勢の種類毎に、呼吸状態以外の生理状態の程度を示す第2の指標を算出する第4の算出手段と
    をさらに具備し、
    前記表示手段は、
    前記推定された姿勢の種類毎に、前記算出された第1の指標と前記算出された第2の指標とを対応づけて前記ディスプレイ上に表示させる、請求項1に記載の生体情報処理装置。
  7. 前記第2の指標は、心臓循環器系への負担を表す指標である、請求項6に記載の生体情報処理装置。
  8. 前記表示手段は、
    前記算出された第1の指標が、所定値以下であった場合、当該第1の指標に対応づけられた姿勢の種類に関する第1のアイコンを無呼吸状態になりにくい旨を示す安全色で表示させ、
    前記所定値より大きい場合、前記第1のアイコンを無呼吸状態になりやすい旨を示す危険色で表示させる、請求項1に記載の生体情報処理装置。
  9. 人体に装着可能であり、装着者の加速度を計測可能なセンサ装置と通信可能な生体情報処理装置に適用される生体情報処理方法であって、
    所定の時刻毎に計測された装着者の加速度を示す加速度情報を取得することと、
    前記取得された加速度情報に基づいて、前記所定の時刻毎の装着者の姿勢を推定することと、
    前記取得された加速度情報に基づいて、前記推定された姿勢の種類毎に、呼吸状態の程度を示す第1の指標を算出することと、
    前記推定された姿勢の種類毎に、前記算出された第1の指標をディスプレイ上に表示させることと
    を具備する生体情報処理方法。
  10. センサ装置と生体情報処理装置とが通信可能に接続された生体情報処理システムであって、
    前記センサ装置は、
    人体に装着可能であり、装着者の加速度を計測する計測手段を具備し、
    前記生体情報処理装置は、
    所定の時刻毎に計測された装着者の加速度を示す加速度情報を前記センサ装置から取得する第1の取得手段と、
    前記取得された加速度情報に基づいて、前記所定の時刻毎の装着者の姿勢を推定する推定手段と、
    前記取得された加速度情報に基づいて、前記推定された姿勢の種類毎に、呼吸状態の程度を示す第1の指標を算出する第1の算出手段と、
    前記推定された姿勢の種類毎に、前記算出された第1の指標をディスプレイ上に表示させる表示手段と
    を具備する、生体情報処理システム。
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