以下、図面を参照して本発明の一実施の形態について説明する。なお、本件明細書に添付する図面においては、図示と理解のしやすさの便宜上、適宜縮尺および縦横の寸法比等を、実物のそれらから変更し誇張してある。
また、本明細書において用いる、形状や幾何学的条件並びにそれらの程度を特定する、例えば、「平行」、「直交」、「同一」等の用語や長さや角度の値等については、厳密な意味に縛られることなく、同様の機能を期待し得る程度の範囲を含めて解釈することとする。
図1は、照明装置10の全体構成を模式的に示す斜視図である。照明装置10は、コヒーレント光を用いて被照明領域Zを照明する。照明装置10は、コヒーレント光源として機能するレーザ光源15を有する。レーザ光源15は、コヒーレント光の一例としてレーザ光を発振する。照明装置10は、レーザ光源15から射出した光に作用する整形光学系20、レンズアレイ25、アフォーカル光学系30、走査装置40、集光素子50及び光拡散素子60を有している。図1に示された例において、整形光学系20、レンズアレイ25、アフォーカル光学系30、走査装置40、集光素子50及び光拡散素子60は、レーザ光源15からのレーザ光の光路に沿ってこの順で配置され、この順でレーザ光に対して作用する。
ここで説明する照明装置10は、以下に詳述するように、レンズアレイ25及び集光素子50での光学作用によって、光拡散素子上でのスポット領域内の照度バラツキを低減することができ、これにより、コヒーレント光源の性能を十分に活用して所望の配光パターンで被照明領域Zを高光量で照明すること並びにスペックルを目立たなくさせることが可能となる。加えて、アフォーカル光学系30での光学作用により、光拡散素子60による光路制御機能が効果的に発揮され、配光パターンを高精度に制御しながら、被照明領域Zをパターン照明することができる。以下、各構成要素について、順に説明していく。
図1に示された例において、レーザ光源15は、レーザ光を発光する複数の光源部17を有する。複数の光源部17は、独立して設けられていてもよいし、共通の基板上に複数の光源部17を並べて配置した光源モジュールであってもよい。複数の光源部17は、一例として、赤色の発光波長域の光を発振する第1光源部17aと、緑色の発光波長域の光を発振する第2光源部17bと、青色の発光波長域の光を発振する第3光源部17cと、を有している。この例によれば、複数の光源部17a,17b,17cが発光した三つのレーザ光を重ね合わせることで、白色の照明光を含む種々の色の照明光を生成することができる。
なお、以下において、レーザ光源15が、発光波長域が互いに異なる三つの光源部17a,17b,17cを有する例について説明するが、この例に限られない。レーザ光源15は、発光波長域が互いに相違する二つの光源部17又は四つ以上の光源部17を有するようにしてもよい。また、発光強度を高めるために、発光波長域ごとに、複数個ずつの光源部17が設けられていてもよい。
ところで、図1に示すように、照明装置10は、レーザ光源15と接続された発光制御部12を有している。発光制御部12は、レーザ光源15によるレーザ光の発光タイミングを制御する。とりわけ、発光制御部12は、各光源部17a,17b,17cからのレーザ光の射出およびレーザ光の射出停止を、他の光源部から独立して、切り替えることができる。発光制御部12によるレーザ光の射出の有無の制御は、走査装置40による複数のレーザ光の走査タイミングに基づいて、言い換えると、光拡散素子60上におけるレーザ光の入射位置に基づいて、実施される。上述したように、レーザ光源15が赤青緑の三つのレーザ光を発光可能である場合、各レーザ光の発光タイミングを制御することで、赤青緑のうち任意の二色以上の色を混ぜ合わせた色の照明光を生成することが可能となる。
発光制御部12は、各光源部17からレーザ光を発光させるか否か、すなわち発光のオン/オフを制御してもよいし、各光源部17から射出した後のレーザ光の光路を遮断するか否かを切り替えてもよい。後者の場合、各光源部17と整形光学系20との間に不図示の光シャッタ部を設けて、この光シャッタ部でレーザ光の通過及び遮断を切り替えればよい。
次に、整形光学系20について説明する。整形光学系20は、レーザ光源15から射出したレーザ光を整形する。言い換えると、整形光学系20は、レーザ光の光軸に直交する断面での形状や、レーザ光の光束の立体的な形状を整形する。図示された例において、整形光学系20は、レーザ光源15から射出したレーザ光を拡幅した平行光束に整形する。
図2及び図3は、照明装置10を示す平面図である。図2に示すように、整形光学系20は、レーザ光の光路に沿った順で、レンズ21及びコリメートレンズ22を有している。レンズ21は、レーザ光源15から射出したレーザ光を発散光束に整形する。コリメートレンズ22は、ビームエクスパンダ21で生成された発散光束を、平行光束lf1に整形し直す。
次に、レンズアレイ25について説明する。整形光学系20で整形されたレーザ光の平行光束lf1は、レンズアレイ25に入射する。レンズアレイ25は、コリメートレンズ22に対面する位置に配置された複数の要素レンズ26を含んでいる。図3に示すように、各要素レンズ26は、その光軸d26が、コリメートレンズ22の光軸d22と平行となるようにして、配置されている。また、複数の要素レンズ26は、コリメートレンズ22の光軸d22に直交する仮想面vl上に配列されている。各要素レンズ26は、コリメートレンズ22で整形された後に入射してくる平行光束lf1を収束光束lf2に整形する。
図2に示された例において、レンズアレイ25は、レーザ光源15から射出したレーザ光を複数の光束lf2に分割する。すなわち、整形光学系20で整形された平行光束lf1は、レンズアレイ25の平行光束lf1が入射する領域内に位置する要素レンズ26の数と同数の光束lf2に分割する。図示された例において、各要素レンズ26は、整形光学系20のコリメートレンズ22で整形された後に入射してくる平行光束lf1を収束光束lf2に整形する。すなわち、整形光学系20で分割された各光束lf2は、収束光束となっている。また、図示された例において、複数の要素レンズ26は、互いに同一に構成されている。したがって、複数の要素レンズ26から出射した複数の光束lf2は、互いに同一の配光となっている。例えば、複数の光束lf2は、同一の収束角度や収束位置Plf2を有し、複数の光束lf2の光軸dlf2は、互いに平行となる。
なお、整形光学系20及びレンズアレイ25は、レーザ光源15に含まれる各光源部17に対応して、複数設けられるようにしてもよい。また、複数の光源部17a,17b,17cからのレーザ光の光路を調整し得る単一の整形光学系20及びレンズアレイ25が設けられるようにしてもよい。図2に示された例では、図2の紙面の奥行き方向に複数の光源部17a,17b,17cが配列され、レンズ21が、図2の紙面の面内でのみレーザ光を発散させ、整形光学系20のコリメートレンズ22及びレンズアレイ25の要素レンズ26が、それぞれ、図2の紙面の奥行き方向に一定の断面形状で延びるシリンドリカルレンズとして構成されていてもよい。この例によれば、コリメートレンズ22及びレンズアレイ25を、複数の光源部17の間で共用することができる。
次に、アフォーカル光学系30について説明する。アフォーカル光学系30は、レンズアレイ25から集光素子50までのレーザ光の光路中に設けられている。図示された例において、レンズアレイ25で整形されたレーザ光は、その後、アフォーカル光学系30に入射する。
アフォーカル光学系30は、入射する平行光束を平行光束として射出し得る光学系である。とりわけ本実施の形態で用いられるアフォーカル光学系30は、図4に示すように、レーザ光の光路における上流側より下流側で光束を縮小させる光学系である。図4に示された一具体例において、アフォーカル光学系30は、レーザ光の光路における上流側に配置された第1レンズ31と、レーザ光の光路における下流側に配置された第2レンズ32と、を有している。第2レンズ32の焦点距離f32は、第1レンズ31の焦点距離f31よりも短くなっている。
図4に示すように、第1レンズ31及び第2レンズ32は、それぞれの光軸d31,d32が平行となるように配置されている。とりわけ図示された例において、第1レンズ31及び第2レンズ32は、それぞれの光軸d31,d32が同一直線上に位置するよう、配置されている。また、第1レンズ31及び第2レンズ32は、第1レンズ31の焦点距離f31と第2レンズ32の焦点距離f32とを足し合わせた距離だけ、互いから離間している。図示されたアフォーカル光学系30によれば、第1レンズ31に入射する平行光束は、平行光束として第2レンズ32から射出する。
また、図4に示された例において、第1レンズ31の光軸d31に沿って第1レンズ31の焦点距離f31だけ第1レンズ31から上流側にずれて位置する第1レンズ31の光軸d31に直交する面pluと、第2レンズ32の光軸d32に沿って第2レンズ32の焦点距離f32だけ第2レンズ32から下流側にずれて位置する第2レンズ32の光軸d32に直交する面pllは、共役な関係となっている。このとき、面plu上に位置する物体像oiは、下流側の面pllに結像される。ただし、結像される像voiは、物体像oiに対して、第2レンズ32の焦点距離f32の第1レンズ32の焦点距離f31に対する比の値(f32/f31)だけ拡大または縮小される。
図示された例において、第2レンズ32の焦点距離f32は、第1レンズ32の焦点距離f31よりも短い。したがって、図4に示すように、アフォーカル光学系30の下流側に結像される像voiは、アフォーカル光学系30の上流側に位置する物体像oiと比較して、第2レンズ32の焦点距離f32の第1レンズ32の焦点距離f31に対する比の値(f32/f31)だけ縮小される。同様に、第1レンズ31の光軸d31に沿って進む平行光束も、アフォーカル光学系30を通過することにより、第2レンズ32の焦点距離f32の第1レンズ32の焦点距離f31に対する比の値(f32/f31)だけ縮小される。
図3に示しょうに、第1レンズ31及び第2レンズ32は、その光軸d31,d32が、レンズアレイ25に含まれる要素レンズ26の光軸d26と平行になるように配置されている。したがって、アフォーカル光学系30に入射する複数の光束lf2の光軸dlf2は、第1レンズ31の光軸d31及び第2レンズ32の光軸d32と平行になっている。
また、図示された例において、レンズアレイ25で整形された各収束光束lf2の収束点Plf2は、第1レンズ31の光軸d31に沿って第1レンズ31の焦点距離f31だけ第1レンズ31から上流側にずれた位置に基づく位置に、位置している。ここで、「焦点距離f31だけ上流側にずれた位置に基づく位置」とは、典型的には、「焦点距離f31だけ上流側にずれた位置」のことであるが、厳密にこの位置に限られることはなく、「焦点距離f31だけ上流側にずれた位置の近傍」も含む意味である。少なくとも「焦点距離f31だけ上流側にずれた位置」に収束光束lf2の収束点Plf2が位置する場合と同程度に知覚される作用効果を期待することができれば、「焦点距離f31だけ上流側にずれた位置に基づく位置」に収束光束lf2の収束点Plf2が位置していると考える。
したがって、図2及び図3に示すように、アフォーカル光学系30の第1レンズ31には、複数の発散光束lf3が入射する。発散光束lf3の数は、上述した収束光束lf2の数と同様に、レンズアレイ25の平行光束lf1が入射した領域内に位置する要素レンズ26の数と同数になる。また、図3に示すように、複数の発散光束lf3の光軸dlf3は、第1レンズ31及び第2レンズ32の光軸d31,d32と平行となる。図3に示すように、複数の発散光束lf3は、第1レンズ31に入射して平行光束lf4となる。また、平行光束lf4は、第2レンズ32で収束光束lf5となる。
図3に示すように、アフォーカル光学系30の第2レンズ32から出射する各収束光束lf5の光軸dlf5は、第1レンズ31及び第2レンズ32の光軸d31,d32と平行になる。また、各収束光束lf5の収束点Plf5は、第2レンズ32の光軸d32に沿って第2レンズ32の焦点距離f32だけ第2レンズ32から下流側にずれた位置に基づく位置に、位置している。ここで、「焦点距離f32だけ下流側にずれた位置に基づく位置」との表現の意味は、上述の「焦点距離f31だけ上流側にずれた位置に基づく位置」と同様に取り扱う。つまり、「焦点距離f32だけ下流側にずれた位置に基づく位置」とは、典型的には、「焦点距離f32だけ下流側にずれた位置」のことであるが、厳密にこの位置に限られることはなく、「焦点距離f32だけ下流側にずれた位置の近傍」も含む。
なお、アフォーカル光学系30は、レーザ光源15に含まれる各光源部17に対応して、複数設けられるようにしてもよいし、或いは、複数の光源部17a,17b,17cからのレーザ光の光路を調整し得る単一のアフォーカル光学系30が設けられるようにしてもよい。
次に、走査装置40について説明する。走査装置40は、レーザ光源15から射出したレーザ光の進行方向を調整する。走査装置40は、レーザ光の進行方向を経時的に変化させる。走査装置40での光路調整により、レーザ光源15から射出したレーザ光は、光拡散素子60上を走査する。
図1及び図2に示された例において、走査装置40は、六つの反射面を有したポリゴンミラー41として形成されている。ポリゴンミラー41からなる走査装置40は、アフォーカル光学系30から集光素子50までの光路中に配置されている。したがって、図示された例では、アフォーカル光学系30から出射する複数の収束光束lf5が、走査装置40に入射する。ポリゴンミラー41は、その中心軸線を回転軸線raとして回転することにより、一定方向から入射する光の反射方向を周期的に変化させることができる。ポリゴンミラー41の六つの反射面の各々は、平坦面として形成されている。したがって、図5に示すように、アフォーカル光学系30から射出する複数の光束lf5は、ポリゴンミラー41での反射によって進路を変更された後においても、その光軸dlf5を平行に維持している。ここで図5は、走査装置40から光拡散素子60までの光路を示す部分拡大平面図である。
なお、図示された例において、ポリゴンミラー41の回転軸線raと平行な方向に、複数の光源部17a,17b,17cが配列されている(図1参照)。ポリゴンミラー41の反射面は、その回転軸線raに沿って、第1反射部41a、第2反射部41b及び第3反射部41cを含んでいる。第1反射部41aは、第1光源部17aから射出したレーザ光を反射し、回転軸線raに直交する面内において、当該レーザ光の進行方向を周期的に変化させる。また、第2反射部41bは、第2光源部17bから射出したレーザ光を反射し、第3反射部41cは、第3光源部17cから射出したレーザ光を反射する。
なお、走査装置40は、図示されたポリゴンミラー41に限られない。走査装置40として、一定方向から入射する光の進行方向を二軸方向で立体的に変化させる装置を用いることもできる。一例として、デジタルミラーデバイス(DMD:digital micromirror device)等のMEMS(micro electro mechanical systems)を、走査装置40として用いることができる。
次に、集光素子50について説明する。集光素子50は、アフォーカル光学系30から光拡散素子60までのレーザ光の光路中に配置される。集光素子50は、レンズアレイ25で分割されたレーザ光からなる光束の光路を重ね合わせあわせるようにして、レーザ光を光拡散素子60に導く。また、集光素子50は、レーザ光を集光して、光拡散素子60上でのスポット領域S、すなわち、ある瞬間に光拡散素子60上でレーザ光を照射されている領域を小面積化する。
図示された例において、集光素子50は、焦点Pf50を有した集光レンズ51によって形成されている。集光レンズ51は、走査装置40から光拡散素子60へ向かうレーザ光の光路中に配置されている。上述したように、レンズアレイ25は、レーザ光を複数の光束lf2に分割する。そして、図5に示すように、分割された複数の光束lf5の光軸dlf5は、互いに平行となっている。したがって、図5に示すように、集光レンズ51でのレンズ作用によって、複数の光束lf6の光軸dlf6は、集光レンズ51の光軸d50に沿って集光レンズ51の焦点距離f50だけ集光レンズ51から離間した仮想面vlf上の位置Plf6において、交わる。
図示された例において、集光レンズ51の光軸d50に沿って集光レンズ51の焦点距離f50だけ集光レンズ51から下流側にずれた位置に基づく位置に、光拡散素子60が配置されている。とりわけ、光拡散素子60は、集光レンズ51の光軸d50に沿って集光レンズ51の焦点距離f50だけ集光レンズ51から離間した仮想面vlf上に配置されている。このため、レンズアレイ25で整形された複数の光束lf6は、集光素子50での集光作用により、少なくとも部分的に光拡散素子60上において重なり合う。
ここで、「焦点距離f50だけ集光レンズ51から下流側にずれた位置に基づく位置」との表現の意味は、既に説明した類似した表現、例えば「焦点距離f31だけ上流側にずれた位置に基づく位置」と同様に取り扱う。つまり、「焦点距離f50だけ下流側にずれた位置に基づく位置」とは、典型的には、「焦点距離f50だけ下流側にずれた位置」のことであるが、厳密にこの位置に限られることはなく、「焦点距離f50だけ下流側にずれた位置の近傍」も含む。以降において用いる「特定の位置や面に基づく位置」との表現の意味は、これまでと同様に、特定の位置や面だけでなく、少なくとも実質的に同程度に知覚される作用効果を期待し得る程度であれば、特定の位置や面の近傍も含むものとして取り扱う。
さらに、とりわけ図示された例では、図3に示すように、集光素子50は、アフォーカル光学系30の第2レンズ32の光軸d32と平行な方向に第2レンズ32から出射したレーザ光の光路に沿って、第2レンズ32の焦点距離f32だけ第2レンズ32から下流側に離間した位置に基づく位置に、配置されている。すなわち、図3及び図5に示すように、集光素子50は、アフォーカル光学系30から出射して走査装置40で光路を変更された複数の収束光束lf5の収束点Plf5に基づく位置に、配置されている。したがって、集光素子50から出射する複数の光束lf6は、発散光束となる。また、複数の光束lf6は、仮想面vlfに基づく位置に配置された光拡散素子60上の同一領域Sに照射される。つまり、複数の光束lf6は、光拡散素子60上で高精度に重ね合わせられる。そして、走査装置40がレーザ光の進行方向を経時的に変化させることで、複数の光束lf6が集光素子50に集光されてなるスポット領域Sは、光拡散素子60上で経時的に位置を変化させるようになる。
さらに図示された例では、図5に示すように、ポリゴンミラー41の反射面は、集光レンズ51の光軸d50に沿って集光レンズ51の焦点距離f50だけ集光レンズ51から下流側にずれた位置に基づく位置に、位置している。したがって、集光素子50に入射する光束lf5は、集光素子50で光路を変更され、主として、集光素子50の光軸と平行に進むようになる。すなわち、各瞬間に集光素子から出射する光束lf6の主光軸が、一定の方向、とりわけ集光素子50の光軸と平行な方向に揃う。つまり、各瞬間に光拡散素子60に向かう主光軸が、一定の方向、とりわけ集光素子50の光軸と平行な方向に揃う。この結果、後に詳述する光拡散素子60の設計を容易化することができる。
なお、集光素子50は、レーザ光源15に含まれる各光源部17a,17b,17cに対応して、複数設けられるようにしてもよい。また、複数の光源部17a,17b,17cからのレーザ光の光路を調整し得る単一の集光素子50が設けられるようにしてもよい。例えば、レーザ光が、図5の紙面と平行な面内においてのみ、レーザ光が発散又は収束する場合、集光素子50をなす集光レンズ51は、図2の紙面の奥行き方向に一定の断面形状で延びるシリンドリカルレンズとして構成されてもよい。この例によれば、集光レンズ51を、複数の光源部17a,17b,17cで発光されたレーザ光の間で共通して利用することが可能となる。
次に、光拡散素子60について説明する。光拡散素子60は、レーザ光を拡散させて、所定範囲を照明する。より具体的には、光拡散素子60で拡散されたレーザ光は、被照明領域Zを通過した後、実際の照明範囲である所定範囲を照明する。
ここで、被照明領域Z及びその一部をなす要素被照明領域Zpは光拡散素子60内の各要素拡散素子65によって重ねて照明されるニアフィールドの被照明領域と考えることができる。ファーフィールドの照明範囲は、実際の被照明領域の寸法よりも、角度空間における拡散角度分布として表現されることが多い。本明細書における「被照明領域」及び「要素被照明領域」という用語は、実際の被照射面積(照明範囲)に加え角度空間における拡散角度範囲も包含するものとする。したがって、図1及び図6の照明装置10によって照明される所定範囲は、図1及び図6に示すニアフィールドの被照明領域Zよりもはるかに広い領域となりうる。
図6は、光拡散素子60を、当該光拡散素子60によって光が向けられるようになる被照明領域Zともに、示す平面図である。図示された例において、光拡散素子60は、レーザ光源15が複数の第1〜第3光源部17a,17b,17cを有することに対応して、第1光拡散素子60a、第2光拡散素子60b及び第3光拡散素子60cを有している。第1光源部17aからのレーザ光は、第1光拡散素子60aに入射し、第2光源部17bからのレーザ光は、第2光拡散素子60bに入射し、第3光源部17cからのレーザ光は、第3光拡散素子60cに入射する。各光拡散素子60a,60b,60cにそれぞれ入射して拡散したレーザ光を用いて、互いに同一の被照明領域Zの全域を照明することができる。したがって、第1光拡散素子60aが第1光源部17aからの赤色光を被照明領域Zに向け、第2光拡散素子60bが第1光源部17bからの緑色光を被照明領域Zに向け、第3光拡散素子60cが第3光源部17cからの青色光で被照明領域Zを向けることで、被照明領域Zを白色に照明することができる。図1に示すように、各光拡散素子60a,60b,60cは、それぞれ、走査装置40をなすポリゴンミラー41の回転軸線raに直交する方向に細長く形成されている。そして、複数の光拡散素子60a,60b,60cは、その長手方向と直交する方向に並べられている。
図6に点線で示すように、各光拡散素子60a,60b,60cは、複数の要素拡散素子65を有している。各要素拡散素子65は、その入射面内における各領域への入射光を当該領域の位置に応じた特定の方向に向ける光路制御機能を有している。ここで説明する要素拡散素子65は、その任意の領域への入射光の進行方向を補正して所定の領域に向ける。すなわち、要素拡散素子65の入射面を平面分割してなる各領域に照射されたレーザ光は、要素拡散素子65を経由した後に、少なくとも一部分において重なり合う領域を照明するようになる。
図示された例では、走査装置40を経て要素拡散素子65内の微小領域に入射した光は、要素拡散素子65で拡散して、一定の要素被照明領域Zpの全域を照明する。つまり、図示された例では、一つの要素拡散素子65内の各領域に入射したレーザ光は、それぞれ、同一の要素被照明領域Zpを照明するようになる。要素被照明領域Zpは、被照明領域Zの一部分をなしている。一つの要素拡散素子65に対応する要素被照明領域Zpは、少なくとも部分的に、他の要素拡散素子65に対応する要素被照明領域Zpと重なっていない。すなわち、複数の要素拡散素子65に対応した要素被照明領域Zpの集合が、照明装置10によって照明可能な被照明領域Zとなる。
図6に示された例では、九つの要素拡散素子65が、各光拡散素子60a,60b,60cの長手方向に沿って一直線上に並べられている。被照明領域Zは、格子状に九つの要素被照明領域Zpに平面分割されている。すなわち、図示された例において、一つの要素被照明領域Zpは、他の要素被照明領域Zpと重なっていない。各光拡散素子60a,60b,60cの第1の要素拡散素子65aは、第1の要素被照明領域Zp1を照明する。同様に、各光拡散素子60a,60b,60cの第2〜第8の要素拡散素子65b〜65iは、それぞれ、第2〜第9の要素被照明領域Zp2〜ZP9を照明する。
走査装置40がレーザ光の進行方向を経時的に変化させることによって、図6に示すように、各光拡散素子60a,60b,60cの長手方向に沿って、レーザ光が光拡散素子60a,60b,60c上を走査する。図6に示すように、或る瞬間にレーザ光を照射されている光拡散素子60上の領域、すなわちスポット領域Sは、要素拡散素子65よりも小さい面積となっている。スポット領域Sは、第1〜第9の要素拡散素子65a〜65iを順に走査する。
光拡散素子60は、例えばホログラム記録媒体62を用いて形成される。図1及び図6に示された例において、各光拡散素子60a,60b,60cにそれぞれ対応して、三つのホログラム記録媒体62a,62b,62cが、設けられている。各ホログラム記録媒体62a,62b,62cは、波長域が異なる複数のレーザ光のそれぞれに対応して設けられている。各ホログラム記録媒体62a,62b,62cの第1〜第9の要素拡散素子65a〜65iに入射して拡散された複数波長域のレーザ光を用いることで、互いに同一の被照明領域Zの全域を照明することが可能となっている。
各ホログラム記録媒体62a,62b,62cは、複数の要素拡散素子65に区分けされている。各要素拡散素子65は、互いに異なる干渉縞パターンを記録された要素ホログラム67から構成されている。各要素ホログラム67に入射したレーザ光は、干渉縞パターンによって回折されて、被照明領域Z上の対応する要素被照明領域Zpを照明する。干渉縞パターンを種々に調整することで、各要素ホログラム67で回折されるレーザ光の進行方向、言い換えると、各要素ホログラム67で拡散されるレーザ光の進行方向を、制御することができる。
要素ホログラム67は、例えば実物の散乱板からの散乱光を物体光として用いて作製することができる。より具体的には、要素ホログラム67の母体であるホログラム感光材料に、互いに干渉性を有するコヒーレント光からなる参照光と物体光とを照射すると、これらの光の干渉による干渉縞がホログラム感光材料に形成されて、要素ホログラム67が作製される。参照光としては、コヒーレント光であるレーザ光が用いられ、物体光としては、例えば安価に入手可能な等方散乱板の散乱光が用いられる。
要素ホログラム67を作製する際に用いた参照光の光路を逆向きに進むよう要素拡散素子65に向けてレーザ光を照射することで、要素ホログラム67を作製する際に用いた物体光の元となる散乱板の配置位置に、散乱板の再生像が生成される。要素ホログラム67を作製する際に用いた物体光の元となる散乱板が均一的な面散乱をしていれば、要素ホログラム67により得られる散乱板の再生像も、均一な面照明となり、この散乱板の再生像が生成される領域が要素被照明領域Zpとなる。
各要素ホログラム67に形成される複雑な干渉縞のパターンは、現実の物体光と参照光を用いて形成する代わりに、予定した再生照明光の波長や入射方向、並びに、再生されるべき像の形状や位置等に基づき計算機を用いて設計することが可能である。このようにして得られた要素ホログラム67は、計算機合成ホログラム(CGH:Computer Generated Hologram)とも呼ばれる。また、各要素ホログラム67上の各点における拡散角度特性が同じであるフーリエ変換ホログラムを計算機合成により形成してもよい。さらに、要素被照明領域Zpの光軸後方側にレンズなどの光学部材を設けて、実際の照明範囲のサイズおよび位置を設定してもよい。
要素拡散素子65として要素ホログラム67を設けることによる利点の一つは、レーザ光の光エネルギー密度を拡散により低下できることであり、また、その他の利点の一つは、要素ホログラム67が指向性の面光源として利用可能になるため、従来のランプ光源(点光源)と比較して、同じ照度分布を達成するための光源面上の輝度を低下できることである。これにより、レーザ光の安全性向上に寄与でき、要素被照明領域Zpを通過したレーザ光を人間の目で直視しても、単一点光源を直視する場合に比べ、人間の目に悪影響を与えるおそれが少なくなる。
要素拡散素子65の具体的な形態としては、フォトポリマーを用いた体積型ホログラム記録媒体でもよいし、銀塩材料を含む感光媒体を利用して記録するタイプの体積型ホログラム記録媒体でもよいし、レリーフ型(エンボス型)のホログラム記録媒体でもよい。
次に、以上のような構成からなる照明装置10の作用について説明する。
まず、図1に示すように、発光制御部12からの制御信号に基づき、各光源部17a,17b,17cが各波長域のレーザ光を発振する。レーザ光源15から射出したレーザ光は、まず、整形光学系20に進む。図2及び図3に示された例において、各波長域のレーザ光は、整形光学系20のレンズ21及びコリメートレンズ22によって、平行光束lf1に整形される。その後、各波長域の平行光束lf1は、それぞれ、レンズアレイ25の要素レンズ26によって、複数の収束光束lf2に分割される。各波長域のレーザ光について、複数の収束光束lf2は、同様に整形され、且つ、収束光束lf2の光軸dlf2は互いに平行となる。
図3に示すように、整形光学系20及びレンズアレイ25で整形されたレーザ光、すなわち、複数の収束光束lf2は、次に、アフォーカル光学系30に向かう。図示された例において、アフォーカル光学系30は、第1レンズ31及び第2レンズ32を有している。第1レンズ31及び第2レンズ32は、それぞれの光軸d31,d32を平行となるようにして配置されている。そして、第1レンズ31に入射する複数の光束lf3の光軸dlf3は、互いに平行であり、且つ、第1レンズ31及び第2レンズ32の光軸d31,d32とも平行になっている。
図3に示すように、レンズアレイ25から出射した複数の収束光束lf2は、収束点Plf2で収束し、当該収束点Plf2を発散点とする複数の発散光束lf3として、第1レンズ31へ入射する。上述したように、収束点Plf2は、第1レンズ31の光軸d31に沿って第1レンズ31の焦点距離f31だけ上流側にずれた位置に基づく位置に、位置している。したがって、第1レンズ31でのレンズ機能により、各発散光束lf3は、第1レンズ31を透過した後に平行光束lf4となる。この平行光束lf4は、第1レンズ31の光軸d31に沿って第1レンズ31の焦点距離f31だけ第1レンズ31からずれた下流側の位置Plf4において、交わる。
その後、平行光束lf4は、第2レンズ32に入射する。第2レンズ32でのレンズ機能により、各平行光束lf4は、第2レンズ32を透過した後に収束光束lf5となる。図3に示すように、各収束光束lf5は、第2レンズ32の光軸d32に沿って第2レンズ32の焦点距離f32だけ第2レンズ32からずれた下流側の位置Plf5において収束する。また、上述した複数の平行光束lf4の光軸dlf4が交わる位置Plf4は、第2レンズ32の光軸d32に沿って第2レンズ32の焦点距離f32だけ第2レンズ32から上流側にずれた位置である。したがって、図3に示すように、複数の収束光束lf5の光軸dlf5は、互い平行となる。とりわけ図示された例において、複数の収束光束lf5の光軸dlf5は、第2レンズ32の光軸d32と平行になっている。
以上のようにして、アフォーカル光学系30から互いに同一に整形された複数の収束光束lf5が射出する。なお、アフォーカル光学系30は、レーザ光の光路における上流側より下流側で光束を縮小させる。具体的な構成として、第1レンズ31の焦点距離f31が、第2レンズ32の焦点距離f32よりも、長くなっている。このアフォーカル光学系30は、第1レンズ31の焦点距離f31に対する第2レンズ32の焦点距離f32の比の値(f32/f31)の比率で、光束を縮小する。すなわち、図2に示すように、アフォーカル光学系30から出射した後における複数の光束lf5の最大光軸間幅wlflは、アフォーカル光学系30に入射する前における複数の光束lf3の最大光軸間幅wlfuよりも、焦点距離f31に対する焦点距離f32の比の値(f32/f31)の比率で、狭くなっている。
アフォーカル光学系30から出射した複数の収束光束lf5は、その後、走査装置40
をなすポリゴンミラー41に向かう。ポリゴンミラー41は、回転軸線raを中心として連続的に回転している。したがって、ポリゴンミラー41の反射面は、所定の角度域内で周期的に傾斜角度を変化させている。加えて、ポリゴンミラー41の六つの反射面の各々は、複数の収束光束lf5のすべてを反射するのに十分な広さを有している。この結果、ポリゴンミラー41による、レーザ光の反射方向は、周期的に変化する。ポリゴンミラー41の六つの反射面の各々は、平坦面となっている。したがって、各光束lf5は、収束光束の形状を維持し、且つ、複数の収束光束lf5の光軸dlf5は、平行に保たれる。
なお、上述したように、アフォーカル光学系30は、複数の光束の最大光軸間幅を縮小する。したがって、レーザ光の光路に沿ってアフォーカル光学系30よりもポリゴンミラー41を下流側の配置することで、ポリゴンミラー41の反射面を小型化することができる。これにより、走査装置40および照明装置10の小型化を図ることができる。
また、ポリゴンミラー41は、その回転軸線raに沿って、第1反射部41a、第2反射部41b及び第3反射部41cを有している。そして、これらの反射部41a,41b,41cは、同期して動作することから、第1光源部17aからのレーザ光、第2光源部17bからのレーザ光、及び、第3光源部17cからのレーザ光は、同期して、進行方向を変化させる。
図5に示すように、走査装置40で光路を調整された複数の収束光束lf5は、集光素子50へ向かう。複数の収束光束lf5の光軸dlf5は、互いに平行に維持されている。したがって、複数の収束光束lf5の光軸dlf5は、集光素子50から進み出た後、集光素子50の光軸d50に沿って集光素子50の焦点距離f50だけ集光素子50からずれた下流側の位置Plf6で、交わる。そして、この位置Plfに基づく位置に、光拡散素子60が配置されている。したがって、集光素子50から進み出た複数の光束lf6は、光拡散素子60へ入射する際に少なくとも部分的に重なり合う。言い換えると、集光素子50から進み出た複数の光束lf6は、それぞれ、光拡散素子60上の少なくとも部分的に重複する領域に照射される。
また、図示された例では、図3に示すように、集光素子50は、アフォーカル光学系30の第2レンズ32の光軸d32と平行な方向に第2レンズ32から出射したレーザ光の光路に沿って、第2レンズ32の焦点距離f32だけ第2レンズ32から下流側にずれた位置に基づく位置に、配置されている。すなわち、図3及び図5に示すように、集光素子50は、アフォーカル光学系30から出射して走査装置40で光路を変更された複数の収束光束lf5の収束点Plf5に基づく位置に、配置されている。したがって、集光素子50から出射する複数の光束lf6は、発散光束となる。また、複数の光束lf6は光拡散素子60上の同一領域Sに照射される。つまり、複数の光束lf6は、光拡散素子60上で高精度に重ね合わせられる。
複数の発散光束lf6が光拡散素子60上で互いに重ね合わせられる領域、すなわちスポット領域Sは、走査装置40の動作にともなって、細長状の光拡散素子60の長手方向に沿って光拡散素子60上を走査する。この結果、図6に示すように、複数の要素拡散素子65にレーザ光を順に照明していくことになる。各要素拡散素子65に照射されたレーザ光は、当該要素拡散素子65で拡散され、当該要素拡散素子65に対応した要素被照明領域Zpの全域を照明する。
発光制御部12は、光拡散素子60上におけるレーザ光の照射位置に応じて、光源部17からのレーザ光の発光を制御する。したがって、被照明領域Zの内の所望の要素被照明領域Zpのみを選択して照明することができる。また、発光制御部12は、複数の光源部17a,17b,17cについて、独立して発光を制御することができる。したがって、特定の要素被照明領域Zpを、第1光源部17a、第2光源部17b及び第3光源部17cのうちから選択された一以上で発光された光で照明することも可能となる。すなわち、被照明領域Zに含まれる第1〜第9の要素被照明領域Zp1〜Zp9の各々を、他の要素被照明領域から独立して、照明の有無、明るさの程度および照明光の色を調整することができる。
なお、コヒーレント光を用いた場合、WO2012/034174に開示されているように、スペックルの発生という問題が生じる。スペックルは、斑点模様として認識され、生理的な不快感を与え得る。
図示された照明装置10では、図6に示すように、任意の瞬間に光拡散素子60上においてレーザ光が照射されている領域、すなわち、複数の発散光束lf6が重ねて照射されている光拡散素子60上のスポット領域Sは、要素拡散素子65よりも小さくなっている。そして、スポット領域Sは、走査装置40の動作にともなって、要素拡散素子65内を移動する。要素拡散素子65は、例えばホログラム記録媒体62としての要素ホログラム67からなり、その任意の一部分に特定の方向またはその近傍の方向から入射する特定波長域の光を拡散して、当該要素拡散素子65に対応した要素被照明領域Zpの全域を照明する。したがって、スポット領域Sが、一つの要素拡散素子65内を移動する間、要素被照明領域Zpの各位置に入射する照明光の入射方向は経時的に変化する。この入射方向の変化は、人間の目で分解不可能な速さであり、結果として、人間の目には、相関の無いコヒーレント光の散乱パターンが多重化されて観察される。したがって、各散乱パターンに対応して生成されたスペックルが重なり合って平均化し、観察者に観察されることになる。これにより、各要素被照明領域Zpにおいて、スペックルを目立ちにくくすることができる。
ところで、走査装置40の制御を単純化するため、走査装置40は、レーザ光が光拡散素子60上の全域を周期的に走査し得るように動作することが好ましい。図6に示された例においては、各光拡散素子60a,60b,60cの長手方向に沿って当該光拡散素子60a,60b,60cの全長に亘りレーザ光が走査するよう、走査装置40が動作することが好ましい。そして、特定の要素被照明領域Zpのみを照明したい場合には、走査装置40の動作に応じて、言い換えると、レーザ光が照射されるべき光拡散素子60上の位置に応じて、発光制御部12が、レーザ光源15によるレーザ光の発停を制御すればよい。
その一方で、レーザ光源等のコヒーレント光源から射出したコヒーレント光は、通常、そのスポット領域内において照度の不均一性をともなっている。一般的には、図8に示すように、スポット領域Spの中心において最も明るく、スポット領域Spの周縁に向けてしだいに暗くなっていく。典型的には、スポット領域Spの中心から周縁に向けて、照度分布はガウシアン分布となる。すなわち、スポット領域Spは、照度が低い広い裾野部分を有している。
したがって、図8に示すように、このスポット領域Spの全体が、特定の要素被照明領域Zpに対応した一つの要素拡散素子65の内側に位置するようになる有効走査区間scp1は、比較的に短くなる。
その一方で、図8に示すように、このスポット領域Spの一部分のみが、当該一つの要素拡散素子65内に位置するようになる非有効走査区間scp2、図8に示された例では、スポット領域Spが、走査方向sdに隣り合う二つの要素拡散素子65に跨がって位置するようになる非有効走査区間scp2は、比較的に長くなってしまう。図8に示された例において、有効走査区間scp1が、非有効走査区間scp2よりも大幅に短くなっている。
スポット領域Spの中心が非有効走査区間scp2内に位置するようになる状態にて光源でレーザ光を発光すると、スポット領域Spが跨がる二つの要素被照明領域Zpが照明されることになる。この場合、配光パターンを高精度で行うことができず、意図しない要素被照明領域Zpが照明されることにもなる。また、スポット領域Spの中心が、有効走査区間scp1だけでなく非有効走査区間scp2内に位置する状態において、光源でレーザ光を発光すると、フリッカーと呼ばれる現象、すなわち、意図しない要素被照明領域Zpが断続的に照明される現象を引き起こすことにもなる。
したがって、図8に示された例において、不具合を回避して特定の要素被照明領域Zpのみを照明する場合には、発光制御部12は、スポット領域Spの中心が有効走査区間scp1内に位置するようになる状態でレーザ光を発光し、スポット領域Spの中心が非有効走査区間scp2内に位置するようになる状態でレーザ光の発光を停止することになる。走査装置40が一定速度で動作する場合、図8に示された例では、レーザ光の発光を停止している時間が極めて長くなる。このことは、レーザ光源15を効率的に利用していることにならない。さらに、短期間の発光で要素被照明領域Zpを十分に明るく照明するには、高出力のレーザ光源を用意する必要が生じる。
この点、本実施の形態における照明装置10では、レンズアレイ25及び集光素子50が設けられている。レンズアレイ25は、レーザ光源15から射出したコヒーレント光の光路を調整して、複数の光束に分割する。集光素子50は、レンズアレイ25から光拡散素子60までのコヒーレント光の光路に設けられ、光拡散素子60上でのスポット領域Sにおいて、複数の光束を重ね合わせる。また、集光素子50は、光拡散素子60上でのスポット領域Sが要素拡散素子65よりも小さくなるように、コヒーレント光を集光する。このレンズアレイ25及び集光素子50により、光拡散素子60上でのスポット領域Sの形状及び大きさを整えることができるだけでなく、スポット領域Sの照度分布を均一化することも可能となる。
したがって、図7に示すように、このスポット領域Sの全体が、特定の要素被照明領域Zpに対応した一つの要素拡散素子65内のみに位置するようになる有効走査区間sc1を、比較的長くすることができる。その一方で、図7に示すように、このスポット領域Sの一部分のみが、当該一つの要素拡散素子65内に位置するようになる非有効走査区間sc2、言い換えると、スポット領域Spが、走査方向sdに隣り合う二つの要素拡散素子65に跨がって位置するようになる非有効走査区間sc2を、比較的短くすることができる。図7に示された例において、有効走査区間sc1が、非有効走査区間sc2よりも大幅に長くなっている。したがって、特定の要素被照明領域Zpのみを照明する場合においても、レーザ光が発光している時間を長くすることができる。この点から、高出力のレーザ光源15を用いることなく、レーザ光源15の効率的な利用を図ることで要素拡散素子65を十分に明るく照明することが可能となる。したがって、レーザ光源15の性能を十分に活用して、所望の配光パターンで被照明領域Zを十分に明るい光量で照明することができる。
とりわけ、図6及び図7に示された例において、スポット領域Sの走査方向sdに平行な方向に沿ったスポット領域Sの寸法wsxは、スポット領域Sの走査方向sdに直交する方向に沿った寸法wsyよりも大幅に小さい、とりわけ寸法wsyの半分よりも小さくなっている。そして、スポット領域Sの走査方向sdに平行な方向において、スポット領域Sの寸法wsxは、要素拡散素子65の寸法wpxよりも大幅に小さく、とりわけ寸法wpxの半分よりも小さくなっている。したがって、このスポット領域Sの一部分のみが、当該一つの要素拡散素子65内に位置している非有効走査区間sc2を非常に短くすることができる。このため図6及び図7に示された例によれば、レーザ光源15がレーザ光の発光を停止している時間を大幅に短くすることができる。すなわち、レーザ光源15をより効率的に活用することができる。
また、図7に示すように、スポット領域Sの走査方向sdに直交する方向において、スポット領域Sの寸法wsyは、要素拡散素子65の寸法wpyとほぼ同一または若干小さくなっている。したがって、走査装置40の動作にともなって、光拡散素子60の大部分にコヒーレント光を照射することができる。すなわち、光拡散素子60の全面を有効に利用して、照明装置10の大型化を抑制することもできる。
さらに、整形光学系20及び集光素子50を用いて、スポット領域Sの形状およびスポット領域S内の照度分布を調整することは、スペックルを目立たなくさせる観点からも都合が良い。
まず、図7に示すように、スポット領域Sの走査方向sdに平行な方向に沿ったスポット領域Sの寸法wsxを小さくすることで、要素拡散素子65の各位置がコヒーレント光を照射され続けている期間を、比較的短くなる。すなわち、要素被照明領域Zpの各位置に向けた照明光の要素拡散素子65からの出射位置が、短時間で切り替わっていく。さらに言い換えると、要素被照明領域Zpの各位置に向けた照明光の入射方向が高速で変化していく。この結果、経時的なスペックルパターンの重ね合わせにより、スペックルを効果的に目立たなくさせることができる。
また、図7に示すように、スポット領域S内の照度分布を均一化することで、各瞬間でのスペックルを効果的に目立たなくさせることができる。図8に示すように、スポット領域Sp内における照度分布の均一性が低い場合、任意の瞬間に、スポット領域Sp内の各位置から要素被照明領域Zp内の一つの位置Psに向かう位相強度が不均一となる。したがって、各瞬間におけるスペックルパターンの重ね合わせが不十分となり、スペックル低減効果を十分有効に発揮することができない。その一方で、図7に示すように、スポット領域Sp内での照度分布が均一化されていると、スポット領域S内の各位置から要素被照明領域Zp内の一つの位置Psに向かう位相強度も均一化される。このため、各瞬間において、スペックルパターンの重ね合わせが有効に実現され、スペックル低減効果を効果的に発揮することができる。
とりわけ図7に示された例では、スポット領域Sの走査方向sdに直交する方向におけるスポット領域Sの寸法wsyを大きく確保している。したがって、スポット領域Sの走査方向sdに平行な方向におけるスポット領域Sの寸法wsxを小さくしながら、スポット領域Sの広がりを有効に確保することができる。この結果、各瞬間において、スペックルパターンの重ね合わせをより効果的に実現することができる。
ところで、光拡散素子60は、入射光の入射角度に依存して、拡散光の出射方向が変化する。例えば、典型的な例として、光拡散素子60がホログラム記録媒体62からなる場合、ホログラム記録媒体に入射するレーザ光(コヒーレント光)の波長を「λ」で表し、レーザ光のホログラム記録媒体に対する入射角を「x」で表し、レーザ光のホログラム記録媒体からの出射角(回折角)を「y」で表し、ホログラム記録媒体の微細構造ピッチ(回折ピッチ)を「p」で表した場合、「sin(x)±sin(y)=λ/p」の関係式が成立する。したがって、光拡散素子50がホログラム記録媒体を有する場合に、ホログラム記録媒体の微細構造ピッチpが一定であり、レーザ光の波長λが一定であれば、上記関係式の「λ/p」が定数となるため、レーザ光の入射角xに応じて出射角yが変わることが上記関係式からも分かる。
一方、本実施の形態では、スポット領域S内での照度バラツキにともなった不具合を解消するため、レーザ光源15で発振されたレーザ光を、レンズアレイ25を用いて、複数の光束lf2に分割し、その後、集光素子50を用いて、光拡散素子60の入射面上で複数の光束lf6を重ね合わせている。したがって、図5に示すように、光拡散素子60に入射する際の入射角度は、複数の光束lf6の間で異なることになる。これにともない、厳密には、各光束lf6は、光拡散素子60で異なる方向へ向けて光路を調整されることになる。各光束lf6の出射方向が大きく異なれば、配光パターンを高精度に制御することができない。
このような不具合を解消するため、本実施の形態では、アフォーカル光学系30が設けられている。上述したように、アフォーカル光学系30は、レンズアレイ25から光拡散素子60までのレーザ光の光路に設けられている。アフォーカル光学系30は、レーザ光の光路における上流側より下流側で光束を縮小させる。すなわち、図3に示すように、アフォーカル光学系30から出射した後における複数の光束lf5の最大光軸間幅wlflは、アフォーカル光学系30に入射する前における複数の光束lf3の最大光軸間幅wlfuよりも、狭くなっている。図5に示すように、ある瞬間に、光拡散素子60へ入射する複数の光束lf6の入射角度バラツキは、複数の光束lf6の光軸dlf6の最大角度バラツキθΔに大きく依存する。そして、集光素子50で光路を調整される前における最大光軸間幅wΔを狭くすることによって、この最大角度バラツキθΔを低減することができる。すなわち、本実施の形態によれば、アフォーカル光学系30によって、光拡散素子60へ入射する複数の光束lf6の入射角度バラツキを抑制して、配光パターンの精度を改善することができる。
以上に説明したように、本実施の形態において、照明装置10は、コヒーレント光源15と、複数の要素レンズ26を有してコヒーレント光の光路を調整するレンズアレイ25と、レンズアレイ25から光拡散素子60までのコヒーレント光の光路に設けられ上流側より下流側で光束を縮小させるアフォーカル光学系30と、アフォーカル光学系30から光拡散素子60までのコヒーレント光の光路に設けられた集光素子50と、コヒーレント光を拡散する複数の要素拡散素子65を有した光拡散素子60と、コヒーレント光の進行方向を調整して当該コヒーレント光の光拡散素子上での入射位置を変動させる走査装置40と、を備えている。各要素拡散素子65は、入射したコヒーレント光を拡散して、当該要素拡散素子65に対応した要素被照明領域Zpを照明する。このような本実施の形態によれば、レンズアレイ25及び集光素子50により、スポット領域Sの形状およびスポット領域Sの照度分布を調整することができる。この結果、コヒーレント光源15の性能を十分に活用して、所望の配光パターンで被照明領域Zを十分に明るい光量で照明することができ、さらに、スペックルを効果的に目立たなくさせることもできる。加えて、本実施の形態によれば、アフォーカル光学系30により、各瞬間に光拡散素子60へ入射するコヒーレント光の入射角度の分布範囲を効果的に低減することができる。この結果、光拡散素子60の光路制御機能を有効に活用して、所望の配光パターンを高精度に実現することができる。
また、本実施の形態において、レンズアレイ25は、コヒーレント光源15から射出したコヒーレント光を複数の光束lf2に分割する。そして、集光素子50は、複数の光束lf6が光拡散素子60上で少なくとも部分的に重なるよう、複数の光束lf6の光路を調整する。したがって、コヒーレント光源15からの射出時におけるコヒーレント光の照度分布が不均一であったとしても、当該照度分布を分割して重ね合わせることで、照度分布を効果的に均一化することができる。とりわけ、コヒーレント光源15からの射出時におけるコヒーレント光の照度分布が、典型的なガウシアン分布となっている場合には、当該照度分布を平面分割して重ね合わせることで、極めて効果的に照度分布を均一化することができる。これにより、所望の配光パターンで被照明領域Zをより明るく照明することができ、且つ、スペックルを効果的に目立たなくさせることができる。
さらに、本実施の形態において、光拡散素子60は、集光素子50の光軸に沿って集光素子50の焦点距離f50だけ集光素子50から離間した位置に基づく位置に、配置されている。このような本実施の形態によれば、単純な構成を採用しながら、集光素子50に任意の瞬間に入射する光を、集光素子50上のスポット領域Sに高効率で集光し、スポット領域Sの照度分布を効果的に均一化することができる。
さらに、本実施の形態において、レンズアレイ25は、複数の要素レンズ26を含んでいる。そして、複数の要素レンズ26から出射した光束lf2は、互いに同一の配光とすることができる。この場合、集光レンズ51を用いた集光素子50によって、レンズアレイ25によって整形された複数の光束lf2を光拡散素子60上で高精度に互いに重ね合わせることが可能となる。したがって、スポット領域Sの形状をより高精度に調整することができ、且つ、スポット領域Sの照度分布をより効果的に均一化することができる。
さらに、本実施の形態において、アフォーカル光学系30は、レンズアレイ25から光拡散素子60までのコヒーレント光の光路における上流側に配置された第1レンズ31と、レンズアレイ25から光拡散素子60までのコヒーレント光の光路における下流側に配置され且つ第1レンズ31の焦点距離f31よりも短い焦点距離f32を有する第2レンズ32と、を含んでいる。すなわち、本実施の形態によれば、簡易且つ安価なアフォーカル光学系30を用いることで、光拡散素子60の光路制御機能を有効化することができる。
なお、上述した一実施の形態に対して様々な変更を加えることが可能である。以下、変形の一例について説明する。以下の説明では、上述した実施の形態と同様に構成され得る部分について、上述の実施の形態における対応する部分に対して用いた符号と同一の符号を用いるとともに、重複する説明を省略する。
上述した一実施の形態において、光拡散素子60が、ホログラム記録媒体62によって構成されている例を示したが、この例に限られない。例えば、各要素拡散素子65をそれぞれ一つのレンズアレイとするレンズアレイ群を用いて光拡散素子60を構成してもよい。この場合、要素拡散素子65ごとにレンズアレイ68が設けられ、各レンズアレイ68が被照明領域Z内の要素被照明領域Zpを照明するように各レンズアレイ68の形状が設計される。
また、上述した一実施の形態において、走査装置40が、アフォーカル光学系30と集光素子50との間に配置されている例を示したこの例に限られない。例えば、走査装置40は、レンズアレイ25とアフォーカル光学系30との間に配置されていてもよいし、アフォーカル光学系30の途中、すなわち、第1レンズ31及び第2レンズ32の間に配置されていてもよい。
さらに、上述した一実施の形態では、コヒーレント光源としてのレーザ光源15が、複数の波長域のレーザ光を発光する例を示したが、この例に限られない。コヒーレント光源は、単一の波長域のコヒーレント光を発光する光源として構成されていてもよい。
さらに、上述した照明装置10は、乗物に搭載されてもよいし、或いは、特定の場所に設置されるようにしてもよい。また、乗物に搭載する場合、乗物は、自動車等の車両、航空機等の飛行体、列車、船舶、潜水物などの各種の移動体にも適用することができる。
なお、以上において上述した実施の形態に対するいくつかの変形例を説明してきたが、当然に、複数の変形例を適宜組み合わせて適用することも可能である。