本発明の実施形態は、動翼、軸流タービンに関する。
軸流タービンは、ケーシングの内部において作動流体がロータの軸に沿って流れることによって、ロータが回転する。
図7は、関連技術に係る軸流タービンを模式的に示す図である。図7では、水平面(xy面)に対して垂直な鉛直面(zx面)の子午断面について示している。ここでは、軸流タービンとして、蒸気タービン10(特に、低圧タービン)を例示している。
図8は、関連技術に係る軸流タービンにおいて、最終段のタービン段落、および、最終段よりも一段前に設けられたタービン段落を示す図である。図8では、図7と同様に、水平面(xy面)に対して垂直な鉛直面(zx面)の子午断面について示している。また、図8では、図7中の部分Aについて拡大して示している。図8においては、最終段よりも一段前に設けられたタービン段落を構成する部分の符号に関して「a」を付しており、最終段のタービン段落を構成する部分の符号に関して「b」を付している。
蒸気タービン10は、図7,図8に示すように、ケーシング20とタービンロータ21とを有し、ケーシング20の内部に蒸気が作動流体として供給されることによって、タービンロータ21が回転するように構成されている。蒸気タービン10は、多段式であって、複数のタービン段落がタービンロータ21の回転軸Cに沿った方向に並ぶように構成されている。
具体的には、蒸気タービン10において、ケーシング20は、内部にタービンロータ21を収容している。
蒸気タービン10において、タービンロータ21は、たとえば、回転軸Cが水平方向(x)に沿うように軸受(図示省略)によって回転可能に支持されており、回転軸Cを中心にして回転する。タービンロータ21は、たとえば、一端が発電機(図示省略)に連結されており、タービンロータ21の回転によって、発電機(図示省略)が駆動して発電が行なわれる。
タービンロータ21は、ロータディスク22(22a,22b)が外周面に複数が設けられている。タービンロータ21において、複数のロータディスク22(22a,22b)は、タービンロータ21の外周面を円形に囲っており、タービンロータ21の回転軸Cに沿って間を隔てて並ぶように設けられている。
タービンロータ21に設けられたロータディスク22(22a,22b)の外周面には、動翼23が設けられている。動翼23(23a,23b)は、タービンロータ21の外周面を囲うように、複数がタービンロータ21の回転方向(周方向)において間を隔てて配置されており、動翼翼列を構成している。動翼翼列は、複数であって、複数の動翼翼列のそれぞれは、タービンロータ21の回転軸Cに沿って並んでいる。
ここでは、図8に示すように、動翼23a,23bは、翼根部231a,231b、および、翼有効部232a,232bを有する。動翼23a,23bにおいて、翼根部231a,231bは、ロータディスク22a,22bに植え込まれている。翼有効部232a,232bは、ロータディスク22a,22bからタービンロータ21の径方向に延在している。そして、翼有効部232a,232bにおいて、翼根部231a,231bが設けられた側とは反対に位置する先端には、カバー233a,233bが設けられている。拡大図については図示を省略しているが、最終段のタービン段落、および、最終段よりも一段前に設けられたタービン段落以外のタービン段落においても、動翼23が上記と同様に構成されている。
図7,図8に示すように、ケーシング20の内部には、ダイアフラム外輪24(24a,24b)とダイアフラム内輪25(25a,25b)と静翼26(26a,26b)とが設けられている。ダイアフラム外輪24(24a,24b)は、ケーシング20の内周面に設置されている。ダイアフラム内輪25(25a,25b)は、ダイアフラム外輪24(24a,24b)の内側に間を隔てて設置されている。静翼26(26a,26b)は、ダイアフラム外輪24(24a,24b)とダイアフラム内輪25(25a,25b)との間に複数が設置されており、ノズルダイアフラムを構成している。ここでは、複数の静翼26(26a,26b)は、タービンロータ21の外周面を囲うように、タービンロータ21の回転方向において間を隔てて配置されており、静翼翼列を構成している。静翼翼列は、動翼翼列と同様に、複数であって、複数の静翼翼列がタービンロータ21の回転軸Cに沿って並ぶように設けられている。静翼翼列と動翼翼列とは、タービンロータ21の回転軸Cに沿った方向において交互に配置されており、静翼翼列と動翼翼列との組がタービン段落を構成している。
蒸気タービン10においては、タービンロータ21とケーシング20との間に、グランドシール部27が設けられている。グランドシール部27は、タービンロータ21とケーシング20との間を密封することによって、タービンロータ21とケーシング20との間を介して蒸気が外部へ漏洩することを抑制している。
また、蒸気タービン10においては、タービンロータ21とダイアフラム内輪25(25a,25b)との間に、シール部28が設けられている。シール部28は、タービンロータ21とダイアフラム内輪25(25a,25b)との間を密封することによって、タービンロータ21とダイアフラム内輪25(25a,25b)との間を介して蒸気が上流側Usから下流側Dsへ漏洩することを抑制している。
蒸気タービン10においては、蒸気入口管(図示省略)がケーシング20の入口を貫通しており、クロスオーバ管29から供給された蒸気が、その蒸気入口管(図示省略)を介して、ケーシング20の内部に作動流体として導入される。そして、その作動流体として導入された蒸気は、ケーシング20の内部において、複数のタービン段落を順次流れる。つまり、作動流体は、初段のタービン段落から最終段のタービン段落を順次流れ、それぞれのタービン段落において膨張して仕事を行う。これにより、ケーシング20の内部においては、タービンロータ21が回転軸Cを中心にして回転する。そして、作動流体は、最終段のタービン段落を流れた後に、ケーシング20の出口から排出される。
ケーシング20の内部において最終段のタービン段落よりも下流側Dsに位置する部分には、排気室(図示省略)が設けられており、この排気室を介して蒸気が外部へ排出される。排気室は、復水器(図示省略)に連通されており、外部へ排出された蒸気は、復水器(図示省略)において凝縮される。
上記のように、最終段のタービン段落において動翼23b(図8参照)を通過した蒸気は、蒸気タービン10(低圧タービン)で利用されずに、排気されるため、損失とみなされる。この損失は、排気損失Kと称される。排気損失Kは、最終段の動翼23bを通過した蒸気の排気速度Vに関して、下記の関係式(A)を満たす。
排気速度は、動翼翼列の出口に形成される環状流路の面積が大きくなるに伴って、低下する。このため、環状流路の面積を大きくすることによって、排気損失を低下させることができる。
動翼翼列の出口に形成される環状流路の面積を大きくするために、最終段のタービン段落を構成する動翼翼列の外周径を大きくすることが好ましい。このため、最終段のタービン段落において、たとえば、動翼23bの翼有効部232bを高くすることが行われている。
しかしながら、動翼23bの翼有効部232bが高くなるに伴って、翼有効部232bにおいて径方向の先端に位置する先端部分では、周速度が上昇し、その周速度が音速を超える場合がある。周速度が音速を超える場合には、翼有効部232bの先端部分に流入する蒸気の相対的な速度である先端相対流入速度が、音速を超える場合がある。これと共に、翼有効部232bの先端部分から流出する蒸気の相対的な速度である先端相対流出速度が、音速を超える。先端相対流入速度が音速を超える場合には、隣接する一対の動翼23bの間に形成される翼間流路の入口において、衝撃波が発生する。また、先端相対流出速度が音速を超える場合には、翼間流路の出口に衝撃波が発生する。その結果、効率が低下する場合がある。
図9は、衝撃波が発生する様子を模式的に示す図である。
図9に示すように、衝撃波SHは、超音速流(M1>1)が、流れを遮る方向へ向きを変えられるときに生ずる。衝撃波SHは、超音速流(M1>1)が流れを変える偏向角Δθと、超音速流の上流マッハ数M1とに応じて発生する。
図10は、偏向角Δθと、全圧比(P02/P01)との関係を示す図である。
全圧比(P02/P01)は、動翼の入口における全圧P01で、動翼の出口における全圧P02を割った値である。全圧比(P02/P01)は、図10に示すように、偏向角Δθが大きくなるに伴って減少し、圧力損失が大きくなる。
衝撃波の発生を抑制する超音速翼型として、たとえば、ダイバージェント翼型が採用されている。
図11は、関連技術に係る軸流タービンにおいて、ダイバージェント翼型の動翼を示す図である。図11において、横方向は、回転軸Cに沿った方向(x)であって、左側が上流側Usであり、右側が下流側Dsである。また、図11において、縦方向は、タービンロータ21(図8参照)が回転軸Cを中心にして回転する回転方向(Rd)である。図11では、図8中のB−B部分の翼断面について示している。すなわち、図11では、最終段のタービン段落において回転方向(Rd)で隣り合う一対の動翼23bのうち、翼有効部232b(図8参照)の先端部分に関して、回転方向(Rd)に沿った面の翼断面を示している。
図11においては、最終段のタービン段落において作動流体として流れる蒸気の流れF1,F2を太い矢印で示している。
これと共に、図11では、衝撃波SH1,SH2,SH3の波面に関して、太い破線を用いて併せて示している。
図11に示すように、タービンロータ21の回転方向(Rd)においては、複数の動翼23bが並んでいる。動翼23bは、回転方向(Rd)の前方(図11では上方)に前縁237bが位置し、回転方向(Rd)の後方(図11では下方)に後縁238bが位置している。動翼23bは、上流側Usが圧力面239b(正圧面)であり、下流側Dsが負圧面240bである。
動翼23bの翼有効部232bにおいては、流入相対マッハ数(M1)が1を超える流れF1(超音速流)によって、前縁237bに衝撃波SH1が生じる。
また、流出相対マッハ数(M2)が1を超える流れF2(超音速流)によって、後縁238bにおいては、圧力面239b側に衝撃波SH2が生じると共に、負圧面240b側に衝撃波SH3が生じる。たとえば、負圧面240bに沿った流れが、圧力面239bに沿った流れによって偏向されることにより、衝撃波SH3が生じる。
図11に示すように、回転方向(Rd)で隣り合って並ぶ一対の動翼23bにおいて、翼有効部232bの間には、翼間流路が形成されている。ここでは、翼間流路は、拡大流路であって、作動流体の流れに沿って幅が広がっている。このため、超音速流である作動媒体は、拡大流路において膨張すると共に加速する。具体的には、拡大流路は、入口の幅S1よりも出口の幅S2が広くなるように形成されている(S1<S2)。このため、拡大流路の出口よりも下流側Dsに位置する空間の静圧(P2)は、拡大流路の入口よりも上流側Usに位置する空間の静圧(P1)よりも低くなる(P1>P2)。
翼有効部232bは、拡大流路の長さLが長い方が、より好ましい。拡大流路の長さLが長くなるに伴って、超音速流は、更に膨張され、圧力が低下する。このため、超音速流が拡大流路において後縁238bに達するときに、翼有効部232bよりも下流側Dsに位置する空間の圧力(P2)になるように、拡大流路を長くすることによって、後縁238bにおいて衝撃波SH2,SH3が生じることを抑制可能である。
しかしながら、拡大流路を長くするに伴って、翼有効部232bの先端部分は、質量が増加する。このため、翼有効部232bの根元部分においては、遠心力によって大きな力が加わり、損傷が生ずる場合があるので、拡大流路を十分に長くすることが困難になる場合がある。
このように、上記の動翼においては、損傷の発生と衝撃波の発生との両者を、十分に抑制することが容易でないので、十分に効率を向上させることは困難である。
したがって、本発明が解決しようとする課題は、損傷の発生と衝撃波の発生との両者を十分に抑制可能であって、効率を向上させることができる、動翼、および、軸流タービンを提供することである。
実施形態の動翼は、軸流タービンに設けられるタービンロータの回転方向に複数が設置される動翼である。動翼は、タービンロータに形成されたロータディスクに植え込まれる翼根部と、ロータディスクからタービンロータの径方向に延在する翼有効部とを有する。複数の動翼は、回転方向で隣り合う一対の動翼の間において、作動流体が加速して相対マッハ数が1を超える条件で流出するように構成されている。翼有効部の負圧面は、翼有効部の翼断面において前縁と後縁との間を結ぶコード線に垂直であってコード線の中点に交わる垂線が交差する交点を有する。翼有効部の負圧面において、その交点は、コード線よりも上流側に位置する。
図1は、実施形態に係る軸流タービンにおいて、動翼の要部を示す図である。
図2は、実施形態に係る動翼において、負圧面240bの位置Xと、負圧面240bの幾何偏向角δとの関係を示す図である。
図3は、実施形態に係る動翼において、負圧面240bの位置Xを示す図である。
図4は、実施形態に係る動翼において、負圧面240bの位置Xを示す図である。
図5は、実施形態に係る動翼において、衝撃波が発生する様子を模式的に示す図である。
図6は、実施形態に係る動翼において、負圧面240bで後縁238b側に位置する部分の幾何偏向角δ(=δte)と、翼効率との関係を示す図である。
図7は、関連技術に係る軸流タービンを模式的に示す図である。
図8は、関連技術に係る軸流タービンにおいて、最終段のタービン段落、および、最終段よりも一段前に設けられたタービン段落を示す図である。
図9は、衝撃波が発生する様子を模式的に示す図である。
図10は、偏向角Δθと、全圧比(P02/P01)との関係を示す図である。
図11は、関連技術に係る軸流タービンにおいて、ダイバージェント翼型の動翼を示す図である。
実施形態について、図面を参照して説明する。
図1は、実施形態に係る軸流タービンにおいて、動翼の要部を示す図である。図1において、横方向は、回転軸Cに沿った方向(x)であって、左側が上流側Usであり、右側が下流側Dsである。また、図1において、縦方向は、タービンロータ21(図8参照)が回転軸Cを中心にして回転する回転方向(Rd)である。図1では、図11と同様に、図8中のB−B部分の翼断面について示している。すなわち、図1では、最終段のタービン段落において回転方向(Rd)で隣り合う一対の動翼23bのうち、翼有効部232b(図8参照)の先端部分に関して、回転方向(Rd)に沿った面の翼断面を示している。また、図1では、図11と同様に、最終段のタービン段落において作動流体として流れる蒸気の流れF1,F2を太い矢印で併記している。
本実施形態では、図1に示すように、上述した関連技術(図8参照)の場合と同様に、複数の動翼23bがタービンロータ21の回転方向(Rd)に間を隔てて配置されている。ここでは、回転方向(Rd)で隣り合って並ぶ一対の動翼23bにおいて、両者の翼有効部232bの間には、翼間流路が形成されている。翼間流路に流入する作動流体は、相対マッハ数が1を超える条件になる。そして、翼間流路を流出する作動流体は、相対マッハ数が1を超える条件になる。すなわち、超音速流が翼間流路に流入し、超音速流が翼間流路を流出する。翼間流路は、上述した関連技術(図8参照)の場合と同様に、拡大流路であって、作動流体の流れに沿って幅が広がっている。つまり、動翼23bの翼有効部232bは、回転方向(Rd)において隣り合う一対の動翼23bの間において作動流体が加速して流れるように構成されている。
しかし、本実施形態では、動翼23bの翼有効部232bの形状が、上述した関連技術(図8参照)の場合と異なる。本実施形態は、上記の点、及び、関連する点を除き、上記の関連技術の場合と同様である。このため、本実施形態において関連技術の場合と重複する個所については、適宜、記載を省略する。
図1に示すように、動翼23bの翼有効部232bにおいて、上流側Usに位置する圧力面239b(正圧面)は、円弧状の曲面を含む。同様に、翼有効部232bにおいて、下流側Dsに位置する負圧面240bは、円弧状の曲面を含む。
翼有効部232bの負圧面240bは、翼有効部232bの翼断面において前縁237bと後縁238bとの間を結ぶコード線241bに垂直であって、そのコード線241bの中点Mpに交わる垂線243bが交差する交点244bを有する。本実施形態では、関連技術(図8参照)の場合と異なり、翼有効部232bの負圧面240bは、上記の交点244bがコード線241bよりも上流側Usに位置するように形成されている。
ここでは、翼有効部232bの負圧面240bは、図1に示すように、幾何偏向角δが後縁238b側において最大の角度になるように形成することが好ましい。幾何偏向角δは、翼有効部232bにおいてコード線241bと負圧面240bの接線242bとが交差して形成される角のうち、鋭角になる角である。幾何偏向角δは、負圧面240bの接線242bがコード線241bを基準にして反時計回りに回転した角度が正の値になる。
図2は、実施形態に係る動翼において、負圧面240bの位置Xと、負圧面240bの幾何偏向角δとの関係を示す図である。図2において、横軸は、負圧面240bの位置Xを示し、縦軸は、負圧面240bの幾何偏向角δを示している。
図3,図4は、実施形態に係る動翼において、負圧面240bの位置Xを示す図である。図3,図4において、横方向は、回転軸Cに沿った方向(x)であって、左側が上流側Usであり、右側が下流側Dsである。また、図3,図4において、縦方向は、タービンロータ21(図8参照)が回転軸Cを中心にして回転する回転方向(Rd)である。図3,図4では、図1と同様に、図8中のB−B部分の翼断面について一部を拡大して示している。図3では、翼有効部232bにおいて、回転方向(Rd)の前方に位置する一端部(図1では上方の端部)を拡大して示している。図4では、翼有効部232bにおいて、回転方向(Rd)の後方に位置する他端部分(図1では下方の端部)を拡大して示している。
図3に示すように、翼有効部232bにおいて、回転方向(Rd)の前方に位置する一端部(図1では上方の端部)は、円弧状の曲面を含む弓形形状であって、前縁237bは、その円弧状の曲面に位置している。また、図4に示すように、翼有効部232bにおいて、回転方向(Rd)の後方に位置する他端部分(図1では下方の端部)は、円弧状の曲面を含む弓形形状であって、後縁238bは、その円弧状の曲面に位置している。翼有効部232bにおいて、回転方向(Rd)の前方に位置する一端部と後方に位置する他端部分との間においては、図1,図3,図4に示すように、圧力面239bおよび負圧面240bのそれぞれは、円弧状の曲面であって、その円弧の頂点が円弧の弦よりも上流側Usに位置するように形成されている。
図2において、第1の位置X1は、負圧面240bにおいて前縁237bが設けられた部分(図1,図3参照)の位置であって、基準位置である。第2の位置X2は、回転方向(Rd)の前方に位置する一端部に形成された円弧状の曲面において、円弧の弦を構成する線分の2点LE1,LE2のうち、負圧面240bに位置する点LE2(図3参照)の位置である。第3の位置X3は、負圧面240bの交点244b(図1参照)の位置である。第4の位置X4は、回転方向(Rd)の後方に位置する他端部に形成された円弧状の曲面において、円弧の弦を構成する線分の2点TE1,TE2のうち、負圧面240bに位置する点TE2(図4参照)の位置である。第5の位置X5は、負圧面240bにおいて後縁238bが設けられた部分(図1,図3参照)の位置である。
図2に示すように、負圧面240bは、第1の位置X1から第2の位置X2へ向かうに伴って、幾何偏向角δが正の所定値から負の所定値へ減少するように形成されている。そして、負圧面240bは、第2の位置X2から第3の位置X3を介して第4の位置X4へ向かうに伴って、幾何偏向角δが負の所定値から正の所定値へ一定の割合で増加するように形成されている。ここでは、第2の位置X2から第3の位置X3へ向かうに伴って、幾何偏向角δが負の所定値からゼロの値になると共に、第3の位置X3から第4の位置X4へ向かうに伴って、幾何偏向角δがゼロの値から正の所定値になっている。そして、負圧面240bは、第4の位置X4から第5の位置X5へ向かうに伴って、幾何偏向角δが正の所定値から負の所定値へ減少するように形成されている。
これから判るように、本実施形態では、負圧面240bは、回転方向(Rd)の前方に位置する一端部と後方に位置する他端部との間(点LE2(図3参照)と点TE3(図4参照)との間)においては、幾何偏向角δが前縁237b側から後縁238b側へ向かうに伴って一定の割合で増加している。つまり、負圧面240bにおいて回転方向(Rd)の後方に位置する部分では、幾何偏向角δは、第4の位置X4(点TE2)において正の値であると共に最大値である。
圧力面239bについては、位置Xと幾何偏向角δとの関係に関して図示を省略しているが、圧力面239bは、回転方向(Rd)の前方に位置する一端部と後方に位置する他端部との間(点LE1(図3参照)と点TE1(図4参照)との間)においては、負圧面240bの場合と同様に、幾何偏向角δが前縁237b側から後縁238b側へ向かうに伴って一定の割合で増加するように形成されている。
以下より、上記した動翼の作用および効果について説明する。
図5は、実施形態に係る動翼において、衝撃波が発生する様子を模式的に示す図である。図5では、図10の場合と同様に、関連技術の場合について実線で示しており、これに対して、本実施形態の場合については、破線で示している。
上記したように、本実施形態では、翼有効部232bの負圧面240bにおいて、コード線241bの中点Mpに交わる垂線243bが交差する交点244bは、コード線241bよりも上流側Usに位置している。そして、負圧面240bにおいて、点TE2(第4の位置X4)の幾何偏向角δ(δ=δte)は、正の値である(δte>0)。
このため、本実施形態において、負圧面240bに沿って流れる流れは、図5に示すように、関連技術(図11参照)の場合に対して、点TE2の幾何偏向角δ(=δte)分、傾斜した方向に沿って流れる。その結果、本実施形態において、負圧面240bに沿った流れが、圧力面239b側からの流れに対して偏向する偏向角Δθ1は、関連技術の場合(δte=0°)の偏向角Δθに対して、点TE2の幾何偏向角δ(=δte)分、小さくなる(Δθ1=Δθ−δte)。
したがって、本実施形態では、拡大流路を長くしなくても、衝撃波SH3を抑制することができる。つまり、本実施形態は、損傷の発生と衝撃波の発生との両者を十分に抑制可能である。また、本実施形態では、偏向角Δθが小さいので、効率の向上を容易に実現することができる(図10参照)。
図6は、実施形態に係る動翼において、負圧面240bで後縁238b側に位置する部分の幾何偏向角δ(δ=δte)と、翼効率との関係を示す図である。図6において、横軸は、負圧面240bにおいて後縁238b側に位置する点TE2(第4の位置X4)の幾何偏向角δ(δ=δte)を示している。図6において、縦軸は、実施形態に係る動翼の翼効率ηを、関連技術(δte=0°)に係る翼効率η0で割ることで求めた無次元の翼効率(η/η0)を示している。そして、図6では、第1条件の結果を線L1で示し、第2条件の結果を線L2で示している。なお、第2条件は、拡大流路の長さLが第1条件よりも小さい場合、または、先端部分の相対流出マッハ数M2が第1条件よりも大きい場合である。
図6に示すように、翼効率(η/η0)が最大値になる幾何偏向角δteは、第1条件の結果(線L1)よりも、第2条件の結果(線L2)の方が大きい。すなわち、拡大流路の長さLが小さくなるに伴って、または、先端部分の相対流出マッハ数M2が大きくなるに伴って、最適な幾何偏向角δteは、大きくなる。
なお、図1に記載の動翼の形状は、例示したものである。このため、翼有効部232bの負圧面240bにおいて上記の交点244bがコード線241bよりも上流側Usに位置する形状であれば、他の形状であっても上記と同様な効果を奏することができる。たとえば、上記の実施形態では、負圧面240bにおいて点LE2と点TE2との間を結ぶ曲線は、曲率が一定である場合について説明したが、これに限らない。負圧面240bは、点LE2と点TE2との間において、曲率が一定でなく、変化してもよい。
また、上記の実施形態では、翼間流路に流入する作動流体の相対マッハ数が1を超えると共に、翼間流路を流出する作動流体の相対マッハ数が1を超える場合について説明したが、これに限らない。翼間流路に流入する作動流体の相対マッハ数が1を超えないばあいにおいても、上記のように、動翼を構成してもよい。
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
10…蒸気タービン、20…ケーシング、21…タービンロータ、22,22a,22b…ロータディスク、23,23a,23b…動翼、24,24a,24b…ダイアフラム外輪、25,25a,25b…ダイアフラム内輪、26…静翼、27…グランドシール部、28…シール部、29…クロスオーバ管、231a,231b…翼根部、232a,232b…翼有効部、233a,233b…カバー、237b…前縁、238b…後縁、239b…圧力面、240b…負圧面、241b…コード線、242b…接線、243b…垂線、244b…交点、Mp…中点