本発明の各実施形態について、添付の図面を参照して説明する。なお、本発明の各実施形態において、各装置(システム)の各構成要素は、機能単位のブロックを示している。各装置(システム)の各構成要素の一部又は全部は、例えば図12に示すような情報処理装置1000とプログラム(ソフトウェア/コンピュータ・プログラム)との任意の組み合わせにより実現される。情報処理装置1000は、一例として、以下のような構成を含む。
・CPU(Central Processing Unit)1001
・ROM(Read Only Memory)1002
・RAM(Ramdom Access Memory)1003
・RAM1003にロードされるプログラム1004
・プログラム1004を格納する記憶装置1005
・記録媒体1006の読み書きを行うドライブ装置1007
・通信ネットワーク1009と接続する通信インターフェース1008
・データの入出力を行う入出力インターフェース1010
・各構成要素を接続するバス1011
各実施形態における各装置の各構成要素は、これらの機能を実現するプログラム1004をCPU1001が取得して実行することで実現される。各装置の各構成要素の機能を実現するプログラム1004は、例えば、予め記憶装置1005やRAM1003に格納されており、必要に応じてCPU1001が読み出す。なお、プログラム1004は、通信ネットワーク1009を介してCPU1001に供給されてもよいし、予め記録媒体1006に格納されており、ドライブ装置1007が当該プログラムを読み出してCPU1001に供給してもよい。通信ネットワーク1009は、有線であってもよいし、無線であってもよい。
各装置の実現方法には、様々な変形例がある。例えば、各装置は、複数の情報処理装置1000とプログラムとの任意の組み合わせにより実現されてもよい。また、各装置は、構成要素毎にそれぞれ別個の情報処理装置1000とプログラムとの任意の組み合わせにより実現されてもよい。各装置が備える複数の構成要素が、一つの情報処理装置1000とプログラムとの任意の組み合わせにより実現されてもよい。
また、各装置の各構成要素の一部又は全部は、汎用または専用の回路(circuitry)、プロセッサ等やこれらの組み合わせによって実現される。これらは、単一のチップによって構成されてもよいし、バスを介して接続される複数のチップによって構成されてもよい。各装置の各構成要素の一部又は全部は、上述した回路等とプログラムとの組み合わせによって実現されてもよい。
各装置の各構成要素の一部又は全部が複数の情報処理装置や回路等により実現される場合には、複数の情報処理装置や回路等は、集中配置されてもよいし、分散配置されてもよい。例えば、情報処理装置や回路等は、クライアントアンドサーバシステム、クラウドコンピューティングシステム等、各々が通信ネットワークを介して接続される形態として実現されてもよい。
最初に、本発明の各実施形態において想定される配水網の例を説明する。本発明の各実施形態においては、各システムは、図1に示す上水道の配水網50において用いられることを想定する。配水網50において、取水場52−1又は52−2にて河川51から取り入れられた水は、管路500を介して浄水場53−1又は53−2へそれぞれ送られる。浄水場53−1又は53−2にて浄化された水は、管路500を介して需要点55−1から55−4へ送られる。需要点55−1から55−4の各々は、配水網50を介して送られる水を利用する施設等である。需要点55−1から55−4の各々には、例えば、一般の家庭、企業等の事務所、商店、工場等が含まれる。すなわち、需要点55は、配水網50を介して配水される水を利用する利用者(需要家とも称する)の集合である。
配水網50には、水の利用者へ水を供給するために、様々な設備(送配水プラントとも称する)が設けられる。浄水場53−1又は53−2から需要点55−1から55−4の間には、需要点55−1から55−4の各々における需要に応じて水を供給できるように、配水場が設けられる。図1に示す配水網50の例では、配水場54−1から54−4の4つの配水場が設けられる。そして、浄水場53−1又は53−2、及び配水場54−1から54−4の各々には、配水される水を一時的に保持する貯水池が設けられる。図1に示す例では、浄水場53−1又は53−2には、貯水池510−1又は510−2がそれぞれ設けられる。また、配水場54−1から54−4の各々には、貯水池510−3又は510−6がそれぞれ設けられる。なお、以下の説明においては、配水網50に配水される水を一時的に保持する施設を貯水池と総称する。
配水網50において、各施設は管路500を介して接続される。管路500には、浄水場53−1又は53−2から需要点55−1から55−4までの経路に応じて、適宜図示しない分岐点や合流点が設けられる。また、管路500には、水を送るための図示しないポンプや、流量を調整するバルブ511等が設けられる。図1に示す例では、管路500に、バルブ511−1から511−13がそれぞれ備えられている。
配水網50の各施設は、一般に、予め定められた制約の下で運用される。一例として、貯水池510−1又は510−6の各々は、制約として、上限水位及び下限水位がそれぞれに定められる。すなわち、貯水池510−1から510−6においては、各々の水位が、上限水位及び下限水位にて定められる水位の範囲を逸脱しない運用が求められる。
なお、以下の各実施形態における装置やシステムは、上述した上水道の配水網に限られず、下水道網、農業用水の配水網、工業用水の配水網等、管路を用いて流体を送る施設等において用いられる。
(第1の実施形態)
続いて、本発明の第1の実施形態について説明する。図2は、本発明の第1の実施形態における水運用計画装置の構成を示す図である。図3は、本発明の第1の実施形態における水運用計画システムの構成を示す図である。図4は、本発明の第1の実施形態における水運用計画装置の他の構成を示す図である。図5は、本発明の第1の実施形態における水運用計画システムの他の構成を示す図である。図6は、本発明の第1の実施形態における水運用計画装置及び水運用計画システムの動作を示すフローチャートである。図7は、本発明の第1の実施形態における水運用計画システムの一運用例を示す図である。図8は、本発明の第1の実施形態における水運用計画システムの他の運用例を示す図である。
図2に示すとおり、本発明の第1の実施形態における水運用計画装置100は、判定部110と、需要予測修正部120と、運用計画修正部130とを備える。判定部110は、配水網における需要の予測と計測結果とに基づいて、需要の予測を修正すべきかを判定する。需要予測修正部120は、判定部110による判定結果に応じて、計測結果に基づき需要の予測を修正する。運用計画修正部130は、修正された需要の予測に基づいて、配水網に設けられた設備の運用計画を修正する。
また、図3に示すように、本実施形態における水運用計画装置100を備える水運用計画システム10が構成される。水運用計画システム10は、配水網50に設けられた設備の運用の計画及び修正を行う。水運用計画システム10は、需要予測部11と、運用計画作成部12と、水運用計画装置100とを有する。需要予測部11は、配水網における需要を予測する。運用計画作成部12は、需要の予測に基づいて、配水網の運用計画を決定する。
なお、本実施形態において、水運用計画システム10は、水運用計画装置100を含む各構成要素が一つのシステムとして構築されてもよい。また、水運用計画システム10は、予め別個に構築された需要予測部11、運用計画作成部12及び水運用計画装置100を組み合わせて構築されてもよい。例えば、水運用計画システム10は、既存の需要予測部11及び運用計画部12に対して、更に水運用計画装置100を組み合わせる態様で構築されてもよい。
また、水運用計画システム10は、配水網50毎に用意されてもよい。又は、本実施形態における水運用計画システム10を用いたサービスがSaaS(Software as a Service)形式にて提供されてもよい。
水運用計画システム10は、配水網50に設けられた設備の各々と通信可能に接続される。本実施形態においては、配水網50には、一例として、少なくとも貯水池510と、貯水池への流入水量を調節するバルブ511が設けられていることを想定する。また、バルブ511を制御する制御部520が設けられていることを想定する。更に、配水網50の状態を計測する計測部530が設けられていることを想定する。図3に示す例では、計測部530として、貯水池510の水位を計測する水位計である計測部530−1と、貯水池510からの流出水量を計測する流量計である計測部530−2とが設けられている例を想定する。
そして、図3に示す例では、水運用計画装置100及び水運用計画システム10は、少なくとも配水網50におけるバルブ511の運用計画を決定する。
なお、水運用計画装置100は、図4に示すように、入力部150、出力部160、記憶部170を備えてもよい。また、図5に示すように、水運用計画システム10がこれらの要素を備えてもよい。入力部150は、水運用計画装置100によって修正された需要予測や修正された運用計画の採択の可否、水運用計画装置100の利用者による需要予測や運用計画の修正等を含む指示を受付ける。また、入力部150は、需要の予測、運用計画の決定やこれらの修正等に際して必要となる情報を受付けてもよい。入力部150は、例えば一般的なキーボードやタッチパネル、スイッチ等である。出力部160は、水運用計画装置100等の動作の状態、需要の予測結果や運用計画、これらの修正結果などを出力する。出力部160は、例えば一般的なディスプレイや表示灯、配水網50に設けられた設備の状態を表示する機器等である。記憶部170は、水運用計画システム10の各構成要素の動作に際して必要となる情報を記憶する。また、記憶部170は、水運用計画装置100等の動作の結果や、配水網50から取得した情報を記憶してもよい。記憶部170は、一般的な不揮発性のストレージで実現される。
入力部150、出力部160、記憶部170の各々は、水運用計画装置100又は水運用計画システム10と直接に接続されてもよいし、図示しない通信ネットワークを介して接続されてもよい。
次に、本発明の第1の実施形態における水運用計画装置100及び水運用計画システム10の各構成要素について説明する。
需要予測部11は、例えば一日毎等の予め定めた期間について、配水網50における水の需要を予測する。需要予測部11は、一例として、一日毎に、5分単位の需要等、配水網50の状況や制約等の条件に応じて予め定められた間隔の需要を予測する。予測された需要は、例えば配水網50において何らかの施設が配置された地点毎に、時系列の形で表される。
需要予測部11において、需要は、予測対象となる時点の季節、月日、曜日、予想される天気や気温、配水網50によって水が供給される地域におけるイベント等の有無等に基づいて予測される。需要予測部11は、予め記憶部170に記憶された上述の情報を用いて需要の予測を行ってもよい。又は、需要予測部11は、予測に際して、上述の情報を入力部150や図示しない通信ネットワーク等を介して取得してもよい。
需要予測部11は、既知の種々の手法を用いて需要を予測する。一例として、需要予測部11が予測に際して用いる手法には、過去の水の需要に関するデータベースからの類似日の検索、過去の需要に関するデータを学習した算術式を用いた予測、ニューラルネットワークを用いた予測等が含まれる。
なお、需要予測部11は、個々の需要点に関する需要を予測してもよいし、配水網50を介して水が供給される地点の全てに関する需要を予測してもよい。
運用計画作成部12は、需要予測部11にて予測された配水網50における水の需要に基づいて、配水網50の運用計画を決定する。すなわち、運用計画作成部12は、予め定めた時間毎等に、配水網50が備える設備の各々における状態や動作等を定める。例えば、運用計画作成部12は、配水網50が備えるバルブの開度、ポンプの起動又は停止、ポンプの速度等を定める。
運用計画作成部12は、配水網50における設備の各々を運用計画の作成の対象とする。図3に示す例では、運用計画作成部12において、運用計画の作成対象となる設備は、バルブ511となる。運用計画作成部12において運用計画の作成対象となる設備には、管路網50の任意の箇所に設けられたポンプ等が含まれる。
運用計画作成部12は、配水網50における制約の下で、需要予測部11にて予測された配水網50における水の需要に基づいて、配水網50の運用計画を決定する。配水網50における制約としては、例えば、貯水池における水位があるが、これに限られない。運用計画作成部12における運用計画の決定に際しては、既知の手法が用いられる。
運用計画作成部12で決定された運用計画は、通信ネットワーク等を介して配水網50に設けられた制御部520の各々へ送られる。制御部520は、決定された運用計画に従って、バルブ511等の配水網50に設けられた設備を制御する。また、決定された運用計画に従った制御部520からの指示に基づいて、操作員が配水網50に設けられた設備を制御してもよい。決定された運用計画は、出力部160から出力されてもよい。
また、運用計画作成部12は、運用計画の決定と併せて、その運用計画に基づいて配水網50が備える設備が運用された場合に、配水網50の予め定めた地点において計測されることが見込まれる予測値を求める。
図3に示す例では、運用計画作成部12は、貯水池510の水位を計測する水位計530−1において計測されることが見込まれる水位の予測値を求める。水位の予測値を求める際には、貯水池510の水位を計算する水位計算モデルが用いられる。水位計算モデルは、貯水池510の形状、流入量、流出量等に応じた貯水池510の水位を表すモデルである。
また、運用計画作成部12は、配水網50の需要点にて配管を流れる水の流量(すなわち、需要点での水の需要を示す)を計測する計測部530−2において計測されることが見込まれる流量の予測値を求める。
次に、水運用計画装置100の判定部110は、上述のように、配水網50における需要の予測と計測結果とに基づいて、需要の予測を修正すべきかを判定する。一例として、判定部110は、上述のように、配水網50における需要の予測と計測結果との差異に基づいて、需要の予測を修正すべきかを判定する。
図3に示す例では、判定部110は、計測部530によって計測される値を運用計画作成部12にて予測した予測値と、実際に計測された計測値とを比較する。例えば、判定部110は、配水網50における需要を計測する計測部530−2を対象として、予測値と計測値とを比較して差異を求める。
そして、判定部110は、予測値と計測値との差異に基づいて、需要の予測を修正すべきかを判定する。例えば、判定部110は、予測値と計測値との差異が予め定めた条件を満たす場合に、需要の予測を修正すべきであると判定する。具体的には、判定部110は、予測値と計測値との差異が予め定めた基準を超えて大きくなった場合に、需要の予測を修正すべきであると判定する。
なお、判定部110において用いられる条件は上述した予測値と計測値との差異に限られず、配水網50や計測部530の各々の状況に応じて適した条件が用いられる。例えば、判定部110は、予測値と計測値との差異の変化率を用いて判定してもよい。
また、配水網50では、計測部530が複数である場合や、一つの計測部530で複数の種類の計測値が計測される場合等、判定部110によって判定の対象となる予測値及び計測値の組が複数である場合が想定される。すなわち、判定部110によって判定の対象となる項目が複数である場合が想定される。
この場合には、判定部110は、少なくとも一つの項目に基づいて、需要の予測を修正すべきと判定してもよい。つまり、判定部110は、少なくとも一つの計測部530において予測値と計測値との差異が予め定めた基準を超えて大きくなった場合に、需要の予測を修正すべきであると判定してもよい。又は、判定部110は、複数の項目の全てにおいて予測値と計測値との差異が予め定めた条件を満たす場合に、需要の予測を修正すべきであると判定してもよい。また、判定部110は、上述した方法と異なる方法で需要の予測を修正すべきかを判定してもよい。判定部110が需要の予測を修正すべきと判定する基準は、配水網50の状況や計測部530で計測される計測値の種類等に応じて適宜定められる。
更に、配水網50に複数の計測部530が設けられている場合には、上述の基準は、計測部530毎に異なってもよい。
図3に示す例では、上述のように、判定部110は、計測部530−2による予測値と計測値との差異に基づいて需要の予測を修正すべきかを判断することが好ましい。これは、計測部530−2による計測値は、需要を直接的に表す値であることが想定され、かつ、水位計530−1に関する予測値を求める場合に用いられる貯水池510の水位計算モデルには、誤差が存在する可能性があるためである。
ただし、貯水池510に関する水位計算モデルの誤差が、需要の予測に影響を及ぼさない程度に小さい場合が想定される。この場合には、判定部110は、計測部530−1に関する予測値と計測値との差異に基づいて需要の予測を修正すべきかを判断してもよい。
水運用計画装置100の需要予測修正部120は、判定部110の判定結果に応じて、計測部530における計測結果に基づき需要の予測を修正する。すなわち、需要予測修正部120は、判定部110が需要の予測を修正すべきであると判定した場合に需要の予測を修正する。需要予測修正部120は、修正に際して、計測部530における計測の結果を用いて修正を行う。
需要予測修正部120は、一例として、需要予測部11において需要を予測する際に用いられる手法と同様の手法で需要の予測を修正する。例えば、需要予測修正部120は、予測対象となる日の季節、月日、曜日、予想される天気や気温、配水網50によって水が供給される地域におけるイベント等の有無等に基づいて、需要の予測を修正する。
また、需要予測修正部120は、予測された需要と実際の需要との差異を求めることで需要の予測を修正してもよい。この場合に、需要予測修正部120は、予測された需要に対する修正量を予測する需要予測修正式を用いてもよい。実際の需要は、計測部530による計測値に基づいて求められる。
需要予測修正式は、需要の予測値に対する変化分を変数として、需要の予測を行う式である。需要予測修正部120は、需要予測修正式を用いて需要の予測を修正する場合には、配水網50に関する当初の制約の下で、当該変化分の最大値を求める。
需要予測修正式は、例えば、過去に収集され、季節、月日、曜日、天気、イベントの有無等に基づいて分類された過去の需要に関するデータに基づいて作成される。また、需要予測修正式は、過去に収集された予測値と計測値との差異を示すデータを用いた学習によって作成されてもよい。需要予測修正部120は、需要の予測を修正する場合に、予測の修正と併せて、予測値と計測値との差異を学習させる等の手法に用いて需要予測修正式を更新してもよい。
需要予測修正部120は、需要予測修正式を用いて需要予測の修正量を求めることで、需要予測部11における需要の予測と同様の手法で需要の予測を修正する場合と比較して、少ない計算量で需要の予測を修正することが可能となる。
なお、需要予測修正部120にて修正された需要の予測は、例えば出力部160等から適宜出力される。
水運用計画装置100の運用計画修正部130は、需要予測修正部120によって修正された需要の予測に基づいて、配水網50に設けられた設備の運用計画を修正する。
すなわち、運用計画修正部130は、配水網50における制約の下で、需要予測修正部120にて修正された配水網50における需要の予測に基づいて、修正された新たな運用計画を求める。また、運用計画修正部130は、運用計画の修正と併せて、修正された運用計画に基づいて配水網50が備える設備が運用された場合に、配水網50の予め定めた地点において計測されることが見込まれる予測値を求める。
運用計画修正部130は、運用計画の修正に先立ち、修正された配水網50における需要の予測と当初の運用計画とに基づいて、配水網50の制約を満たすか否かを求めてもよい。そして、運用計画修正部130は、当初の運用計画に従って配水網50が運用されると配水網50の制約が満たされなくなる場合に、運用計画を修正してもよい。
例えば、運用計画修正部130は、修正された需要の予測と当初の運用計画とに基づいて貯水池510の水位等を予測する。そして、運用計画修正部130は、当該水位等が予め定められた上限又は下限を逸脱する場合に、当該貯水池510に関連するバルブ511に関する新たな運用計画を求める。
運用計画修正部130は、運用計画の修正として、ポンプやバルブ等を含む配水網50に設けられた設備を対象として、新たな運用計画を求める。すなわち、運用計画修正部130は、稼働するポンプの台数、ポンプの運転速度、バルブの開度等に関する新たな運用計画を求める。
運用計画修正部130は、需要予測修正部120によって修正された運用計画に基づいて、修正された新たな運用計画を、運用計画作成部12における配水網50の運用計画を決定手法と同様の手法で求める。
又は、運用計画修正部130は、運用計画作成部12で決定された当初の運用計画と、需要予測修正部120によって修正された需要の予測に応じて定められる新たな運用計画との差異を求めて、修正された運用計画としてもよい。すなわち、運用計画修正部130は、当初の運用計画との差異を表す運用計画の修正内容を求めることで運用計画を修正する。
運用計画修正部130が配水網50の運用計画を修正する場合には、修正が少なくなることが好ましい。例えば、運用計画修正部130は、修正対象となるポンプやバルブ等の配水網50に設けられた設備の数、又は、各々の設備に対して修正される操作量の少なくとも一方を小さく(最小化)するように運用計画を修正することが好ましい。
すなわち、運用計画修正部130は、修正対象となる設備の数を小さくする場合には、運用計画の修正対象となるポンプの台数やバルブの数を小さくするように運用計画を修正する。又は、運用計画修正部130は、修正される操作量を小さくする場合には、稼働するポンプの台数の変更量、ポンプの運転速度の変更量、バルブの開度の変更量等を小さくするように、運用計画を修正する。
このように運転計画を修正することで、配水網50に設けられた設備が操作員等の人手によって操作される場合に、運用計画の修正に伴う操作員等への負担を軽減することが可能となる。また、運用計画の修正に伴って配水網50に設けられた設備に対して生じる負担を軽減することが可能となる。
なお、運用計画修正部130によって修正された運用計画は、通信ネットワーク等を介して配水網50に設けられた制御部520の各々へ送られる。制御部520は、修正された運用計画に従って、バルブ511等の配水網50に設けられた設備を制御する。また、制御部520からの指示に基づいて、操作員が配水網50に設けられた設備を修正された運用計画に従って制御してもよい。又は、運用計画修正部130によって修正された運用計画は、出力部160から出力されてもよい。
なお、このような運用計画の修正は、最適化問題として定式化できる。そして、定式化された最適化問題は、既存の手法を用いて解くことができる。運用計画修正部130は、貯水池の水位や水量、操作対象となる配水網50の設備の数等を含む配水網50の運用に関する制約に基づいて定式化された最適化問題を解くことで、運用計画の修正を行う。すなわち、運用計画修正部130は、最適化問題の解を用いて、修正された新たな運用計画を定める。
運用計画修正部130は、一例として以下のように運転計画を修正することで、運転計画の修正量を小さくする。
運用計画作成部12において運用計画を決定する場合には、配水網50が備える設備の各々に対する操作の具体的な内容が制御入力として定められる。制御入力には、例えば、ポンプの回転数や、バルブの開度などが含まれる。この例では、制御入力を、x1、x2、・・・、xnと表す。また、運用計画作成部12において、具体的な制御入力が、x1=a1、x2=a2、・・・、xn=anのように決定されたと想定する。
そして、運用計画修正部130においては、修正された運用計画における制御入力をx1=a1+dx1、x2=a2+dx2、・・・、xn=an+dxnとする。すなわち、dx1、dx2、・・・、dnは、運用計画の修正量を表す。
また、上述の制御入力は、配水網50に設けられた貯水池の各々に対する容量や水位の上限や下限、フロー保存則等の制約を満たすことを想定する。フロー保存則は、例えば貯水池に対する流入水量と流出水量との差分が、当該貯水池における貯水量の増加分と等しいとする法則である。更に、運用計画の修正量に対して修正量の範囲が制約として与えられてもよい。
そして、運用計画修正部130は、下記の(1)式及び上述した制約に基づいて、運転計画の修正量を求める。
すなわち、この例においては、運用計画修正部130は、上述した制約の下で運用計画の修正量が最小化する最適化問題を解くことによって、運転計画の修正量を求める。このように運用計画の修正量を求めることで、運用計画修正部130は、修正を少なくすることが可能となる。
なお、(1)式に示す関数fの右辺は一例である。上述の手順にて運転計画の修正量が求められる場合には、関数fの右辺は、配水網50に設けられた設備の状況や需要予測の修正の程度等を含む種々の条件に応じて適宜定められる。
次に、図6に示すフローチャートを用いて、本発明の第1の実施形態における水運用計画装置100及び水運用計画システム10の動作について説明する。なお、図6に示すフローチャートにおいて、ステップS130からステップS150の処理は、水運用計画装置100の各構成要素によって実行される。
最初に、需要予測部11は、配水網50における需要を予測する(ステップS110)。次に、運用計画作成部12は、ステップS110にて予測された水の需要に基づいて、配水網50の各設備に対する運用計画を決定する(ステップS120)。ステップS120において、運用計画作成部12は、決定された運用計画に従って配水網が運用された場合に、配水網50に設けられた計測部530の各々にて計測されうる値の予測値を求める。
運用計画が決定されると、決定された運用計画は、制御部520等を含む配水網50に備えられた設備や、当該設備の運用者に伝達される。そして、配水網50が運用計画に従って運用される。
続いて、水運用計画装置100の処理が実行される。判定部110は、ステップS120にて求めた予測値と、図3に示す計測部530の各々にて計測された計測値とに基づいて、需要の予測を修正すべきかを判定する(ステップS130)。判定部110が需要の予測を修正する必要はないと判定した場合には(ステップS130:No)、判定部110は、ステップS130の動作に戻る。すなわち、判定部110は、再び上述した判定を行う。
判定部110が需要の予測を修正すべきであると判定した場合には(ステップS130:Yes)、需要予測修正部120は、配水網50における需要の予測を修正する(ステップS140)。需要予測修正部120は、このステップを実行する際に配水網50の計測部530によって計測された計測値に基づいて需要の予測を修正する。
運用計画修正部130は、続いて、ステップS140にて修正された需要の予測に基づいて、配水網50における運用計画を修正する(ステップS150)。修正された運用計画は、適宜配水網50に備えられた設備やその運用者に伝達される。そして、修正された運用計画に従って配水網50が運用される。
また、ステップS150において運用計画が修正されると、水運用計画装置100は、再度ステップS130の処理に戻る。水運用計画装置100は、判定部110による判定結果に応じて、ステップS130からステップS150までの処理を繰り返して実行する。この動作は、例えば水運用計画システム10が新たにステップS110からの動作を開始するまで繰り返し行われる。
なお、水運用計画システム10の一つの運用例では、上述のように、一日毎に需要の予測や運用計画の作成が行われる。この例では、水運用計画システム10の需要予測部11や運用計画作成部12によって、夜間に次の日の需要の予測や運用計画の作成が行われる。すなわち、ステップS110及びS120における需要の予測や運用計画の作成は、上述のように、例えば一日毎等の単位で行われる。言い換えると、水運用計画システム10の運用例では、一日毎に図6に示すフローチャートの動作が開始される。
また、水運用計画装置100の判定部110における判定は、需要予測部11や運用計画作成部12による需要の予測や運用計画の作成と比較して短い間隔で行われる。すなわち、水運用計画システム10では、需要予測部11や運用計画作成部12は、例えば一日毎に、その日の需要及び運用計画を作成する。そして、判定部110は、上述の運用計画に従って配水網が運用されている間に、例えば定期的に需要の予測と計測結果との差異を求めて当初の需要の予測や運用計画を修正すべきかを判定する。
水運用計画システム10の一つの運用例では、判定部110は、上述のように例えば5分毎等の単位で判定を行う。すなわち、ステップS130が繰り返して行われる場合には、5分毎等の間隔で実行される。
以上のとおり、本発明の第1の実施形態における水運用計画装置100は、需要の予測を修正すべきと判定した場合に、需要の予測を修正し、かつ、修正された需要予測に基づいて配水網50の運用計画を修正する。需要予測の修正は、当該予測を修正すべきと判定された時点の配水網50にて計測された計測値に基づいて行われる。したがって、水運用計画装置100においては、精度の高い需要予測の修正が可能となる。
すなわち、本実施形態における水運用計画装置100は、需要の予測と実績との間の差異に応じて配水網50に設けられた設備の運用計画の修正を可能とする。そして、本実施形態における水運用計画システム10は、水運用計画装置100と同様の効果を奏する。
水運用計画装置100は、需要の予測値と計測値との差異が予め定められた大きさよりも大きいと判定された場合には、直ちに、需要予測の修正や、当該修正された需要予測の結果を用いた運用計画の修正が行うことが可能である。したがって、水運用計画装置100及び水運用計画装置100を備える水運用計画システム10は、迅速な運用計画の修正を可能とする。そして、水運用計画装置100及び水運用計画装置100を備える水運用計画システム10は、配水網50について定められた制約を逸脱しない配水網50の運用を可能とする。
また、水運用計画装置100では、需要予測修正部120は、需要予測修正式等を用いて予測された需要に対する修正量を予測してもよい。この例においては、例えば水運用計画システム10の需要予測部11に相当する機構が既に存在する場合に、当該機構の改修等を行うことなく需要予測の修正が可能となる。
更に、水運用計画装置100では、運用計画修正部130は、修正量を小さくするように運用計画を修正してもよい。このようにすることで、修正された運用計画として、修正量が少ない計画が得られる。この結果として、配水網50に備えられた機器や、当該機器を運用する運用者への負担の軽減が可能となる。
(運用例1)
続いて、本実施形態における水運用計画システム10の運用例を説明する。この例では、図7を用いて水運用計画システム10の運用例を説明する。図7の左側は、水運用計画システム10が運用の対象とする配水網50の一部の例を示す。
図7に示す配水網50の例は、図3にて水運用計画システム10と接続される配水網50の例と同様の構成である。すなわち、この例では、貯水池510が設けられている。貯水池510に管路500を介して流入する水の流入量は、バルブ511によって調節される。バルブ511は、制御器520にて制御される。また、貯水池510から流出する水は、管路500を介して図示しない需要点へ供給される。また、貯水池の水位を計測する計測部530−1と、需要点へ流出する水量を計測する計測部530−2が設けられる。
この例では、配水網50は、貯水池510の水位が予め定められた上限と下限との間にあるように運用される。貯水池510へ流入する水量は、バルブ511の開度を変更することで調整される。すなわち、水運用計画システム10は、貯水池510の水位が上述の上限及び下限を超えないとの制約の下で配水網50を運用する。具体的には、水運用計画システム10は、貯水池510の水位が上述の上限及び下限を超えないようにバルブ511の開度を調節する。
この例において、需要予測部11は、運用する時点の季節、月日、曜日、天候等の情報に基づいて、需要を予測する。予測された需要量は、例えば図7の(c)に示すグラフの点線のようになる。すなわち、需要量は、時間の経過に伴って徐々に減少し、その後増加すると予測されている。
運用計画作成部12は、需要予測部11にて予測された水の需要に基づいて、配水網50の制約を満たす運用計画を作成する。図7に示す例において、運用計画作成部12は、バルブ511の運用計画を作成する。作成された運用計画は、例えば図7の(a)に示すグラフの点線のようになる。本運用例では、運用計画が作成された期間を通して貯水池510への水の流入量が概ね一定となるように運用計画が定められる。すなわち、バルブ511は、運用計画が作成された期間を通して概ね一定の開度となるように制御される。作成された運用計画は、適宜制御部520へ伝達される。そして、制御部520は、運用計画に従ってバルブ511の開度を変更する。又は、制御部520へ伝達された運用計画に従って、操作員が人手でバルブ511の開度を操作してもよい。
また、運用計画作成部12は、貯水池510の貯水量を予測する。図7に示す例では、運用計画作成部12は、貯水量として、貯水池510の水位を予測する。予測された水位は、例えば図7の(b)に示すグラフの点線のようになる。貯水池510の水位は、制約である上限と下限との間に保たれる。すなわち、貯水池510の水位は、時間の経過に伴って徐々に上昇し、その後低下することが予測される。言い換えると、貯水池510の水位は、需要量の減少に伴って増加し、その後の需要量の増加に伴って低下する。
上述のように決定された運用計画に従って、時刻T0から配水網50が運用される。そして、判定部110は、予め定められた時点毎に、需要の予測を修正すべきであると判定する。図7に示す例では、判定部110は、予測値と計測値との差異が予め定めた差異基準を超えて大きくなる場合に、需要の予測を修正すべきと判定する。
予測値は、上述のように図7の(c)に示すグラフの点線で表される。また、計測値は、計測部530−2にて計測された需要量が用いられる。計測値は、図7の(c)に示すグラフの実線である。また、上述した差異基準は、図7の(c)に示すグラフの縦方向を向いた矢印にて示される。
図7の例では、判定部110は、時刻T1及びT2の各々で需要の予測を修正すべきか判定する。時刻T1においては、需要量の計測値は予測値を下回っている。しかし、予測値と計測値との差異は、差異基準よりも小さい。判定部110は、したがって、時刻T1では需要の予測は修正する必要がないと判定する。
しかしながら、時刻T2においては、予測値と計測値との差異は、差異基準よりも小さい。すなわち、需要量の計測値は、差異基準を超えて予測値よりも少なくなっている。したがって、判定部110は、需要の予測は修正すべきと判定する。
この場合に、需要予測修正部120は、計測部530−2にて計測された需要量の計測値を用いて、時刻T2以降の需要の予測を修正する。修正された需要の予測値は、図7の(c)に示すグラフの実線とつながった破線で表される。すなわち、需要量は、当初の予測値と類似した傾向であるものの、当初の予測値と比較して小さい状態が続くと予測される。
そして、運用計画修正部130は、上述のように修正された需要量の予測に基づいて、運用計画を修正する。この例では、運用計画修正部130は、最初に、当初の運用計画と上述の修正された需要の予測に基づいて、時刻T2以降における貯水池510の水位を計算する。計算された貯水池510の水位は、図7の(b)のグラフに示す破線で表される。この水位は、当初の予測と比較して需要が減少したことに起因して、予め定められた貯水池510の上限水位を超えることとなる。したがって、運用計画修正部130は、バルブ511の運用計画を修正する。
この場合には、運用計画修正部130は、貯水池510の水位に関する制約が満たされるように、配水網50の運用計画を修正する。すなわち、運用計画修正部130は、貯水池510に流入する水の流入量を減らすように、バルブ511の運用計画を修正する。修正された運用計画は、例えば図7の(a)に示すグラフの一点鎖線のようになる。すなわち、貯水池510へバルブ511を経由して流入する水量は、当初の運用計画と比較して少なくなる。
そして、運用計画修正部130は、修正された運用計画と修正された需要の予測に基づいて、時刻T2以降における貯水池510の水位を計算する。
計算された貯水池510の水位は、図7の(b)のグラフに示す一点鎖線で表される。この水位は、予め定められた貯水池510の上限水位を超えないこととなる。すなわち、上述の修正された運用計画は、配水網50の制約を満たすことが分かる。
修正された運用計画は、適宜制御部520へ伝達される。そして、バルブ511の開度は、修正された運用計画に従って変更される。このように運用計画が修正されることで、配水網50の制約を満たすように配水網50が運用される。
また、この運用例では、運用計画の修正は、時刻T2で修正すべきと判断された時点で行われる。図7(b)のグラフにて実線で示されるように、時刻T2においては、貯水池510の水位は、予め定められた上限を超えていない。そして、時刻T2において、運用計画修正部130は、貯水池510の水位に関する制約が満たされるように、配水網50の運用計画を修正する。したがって、水運用計画システム10が時刻T2において運用計画の修正を行うことで、配水網50に対する制約からの逸脱が防止される。
(運用例2)
続いて、本実施形態における水運用計画システム10の別の運用例を説明する。本運用例では、図1に示す配水網の例を用いて水運用計画システム10の運用例を説明する。より詳しくは、水運用計画システム10は、図1に示す配水網50のうち、配水場54−2に設けられた貯水池510−4に関わる運用の計画例及び当該計画の修正例について説明する。
なお、図1に示す例では、貯水池510の各々に対して、水位の上限及び下限が制約として定められていることを想定する。また、バルブ511−2及び511−4の開度を変更することで、貯水池510−4の制約が満たされるような運用例を想定する。すなわち、本運用例では、バルブ511−2及び511−4の2つのバルブが運用計画の作成や修正の対象となる点が、先の運用例と異なる。
運用例2において、需要予測部11は、先の運用例と同様に需要を予測する。本運用例では、需要予測部11において予測される需要は、配水場54−2から水が配水される地点での需要の総量である。すなわち、需要予測部11は、需要点55−2、配水場54−3及び配水場54−4の需要を予測する。予測された需要量は、運用例1の場合と類似して、例えば図8の(c)に示すグラフの点線のようになる。すなわち、需要量は、時間の経過に伴って徐々に減少し、その後増加すると予測されている。
運用計画作成部12は、需要予測部11にて予測された水の需要に基づいて、配水網50の制約を満たす運用計画を作成する。本運用例において、運用計画が作成された期間を通して貯水池510への水の流入量が概ね一定となるように運用計画が定められる。そして、この運用計画に従って、バルブ511−2及び511−4の開度が定められる。運用計画は、バルブ511−2及び511−4へ各々の制御部(不図示)等を介して入力される。
また、運用計画作成部12は、貯水池510−4の水位を予測する。予測された水位は、例えば図8の(b)に示すグラフの点線のようになる。すなわち、貯水池510−4の水位は、時間の経過に伴って徐々に上昇し、その後低下することが予測されている。そして、貯水池510−4の水位は、制約である上限と下限との間に保たれる。
更に、運用計画作成部12は、バルブ511−2及び511−4や管路500を介してそれぞれ接続された貯水池510−1及び510−2の水位を予測する。予測された水位は、例えば図8の(d)又は(e)に示すグラフの点線のようになる。貯水池510−1及び510−2の水位は、制約である上限と下限との間に保たれる。
上述のように決定された運用計画に従って、時刻T0から配水網50が運用される。そして、判定部110は、予め定められた時点毎に、需要の予測を修正すべきであると判定する。
本運用例では、判定部110は、時刻T1で需要の予測を修正すべきか判定する。時刻T1では、需要量の計測値は、図8(c)のグラフに示す予め定められた差異基準を超えて予測値よりも少なくなっている。すなわち、時刻T1では、需要量の予測値と計測値との差異は、差異基準よりも大きくなっている。したがって、判定部110は、需要の予測は修正すべきと判定する。
この場合に、需要予測修正部120は、貯水池510−4からの流出した水量である需要量の計測値を用いて、時刻T1以降の需要の予測を修正する。修正された需要の予測値は、図8の(c)に示すグラフの破線で表される。すなわち、需要量は、当初の予測値と類似した傾向であるものの、当初の予測値と比較して小さい状態が続くと予測される。
そして、運用計画修正部130は、上述のように修正された需要量の予測に基づいて、運用計画を修正する。この例では、運用計画修正部130は、最初に、当初の運用計画と上述の修正された需要の予測に基づいて、時刻T1以降における貯水池510−4の水位を計算する。計算された貯水池510−4の水位は図8の(b)のグラフに示す破線で表される。
この場合には、貯水池510−4の水位は、当初の予測と比較して需要が減少したことに起因して、予め定められた貯水池510−4の上限水位を超えることとなる。すなわち、当初の運用例では配水網50の制約が満たされない。したがって、運用計画修正部130は、貯水池510−4への流入量を減らすように、バルブ511−2及び511−4の運用計画を修正する。
この場合に、運用計画修正部130は、運用計画の修正量を少なくするように運用計画を修正する。本運用例では、運用計画修正部130は、バルブ511−2及び511−4のうち、いずれか一方の開度を変更するように運用計画を修正する。すなわち、運用計画修正部130は、運用計画が修正されるバルブの数が1つとの制約の下で運用計画を修正する。
この場合において、バルブ511−4の開度を変更する場合を想定する。すなわち、バルブ511−4が開度を小さくなるように変更され、貯水池510−2からの流出量を減らすことで、貯水池510−4への流入量を減らすように修正することを想定する。しかしながら、貯水池510−2の水位が高いことから、バルブ511−4の開度を変更することで、図8(d)に示す二点鎖線のように、貯水池510−2の水位が運用の際の上限水位を超えることとなる。すなわち、この場合には、配水網50の制約が満たされない。
そこで、バルブ511−2の開度を変更する場合を想定する。すなわち、バルブ511−2が開度を小さくなるように変更され、貯水池510−1からの流出量を減らすことで、貯水池510−4への流入量を減らすように修正することを想定する。この場合には、バルブ511−2の開度を変更しても、図8(e)に示す二点鎖線のように、貯水池510−1の水位が運用の際の上限水位と下限水位の間に保たれることとなる。
したがって、運用計画修正部130は、バルブ511−2の開度を変更するように運用計画を修正する。運用計画修正部130は、バルブ511−4の運用計画は当初の計画通りとする。そして、運用計画修正部130は、修正された運用計画と修正された需要の予測に基づいて、時刻T1以降における貯水池510−4等の水位を計算する。計算された貯水池510−4の水位は、図8の(b)のグラフに示す一点鎖線で表される。この水位は、貯水池510−4の予め定められた上限水位を超えない。また、貯水池510−1及び510−2についても、各々の水位は、予め定められた上限水位よりも低い。
上述のように、このような運用計画の修正は、最適化問題として定式化できる。本運用例では、操作対象となるバルブの数が一つであるとの制約を含む配水網50の運用に関する制約の下で最適化問題が定式化される。運用計画修正部130は、定式化された最適化問題の解を既存の手法を用いて求めることで、バルブ511−2の開度を変更するとの新たな運用計画を得る。
修正された運用計画は、バルブ511−2等へ伝達される。そして、バルブ511−2の開度は、修正された運用計画に従って変更される。このように運用計画が修正されることで、配水網50の制約を満たすように配水網50及びその設備が運用される。
(第2の実施形態)
続いて、本発明の第2の実施形態について説明する。図9は、本発明の第2の実施形態における水運用計画装置を示す図である。図10は、本発明の第2の実施形態における水運用計画システムを示す図である。図11は、本発明の第2の実施形態における水運用計画装置及び水運用計画システムの動作を示すフローチャートである。
図9に示すように、本発明の第2の実施形態における水運用計画装置200は、判定部210と、需要予測修正部120と、水位計算モデル修正部240と、運用計画修正部230とを備える。判定部210は、第1の実施形態における水運用計画装置100と同様に、配水網における需要の予測と計測結果とに基づいて、需要の予測を修正すべきかを判定する。また、本実施形態においては、判定部210は、配水網に設けられた貯水池の各々に関する水位の予測と計測結果とに基づいて、貯水池の各々に関する水位計算モデルを修正すべきかを判定する。需要予測修正部120は、水運用計画装置100における需要予測修正部120と同様の構成要素である。水位計算モデル修正部240は、配水網に設けられる貯水池の各々に関する水位計算モデルを修正する。運用計画修正部230は、修正された需要予測及び貯水池の各々に関する修正された水位計算モデルに基づいて、配水網における設備の運用計画を修正する。すなわち、運用計画修正部230は、貯水池の各々に関する修正された水位計算モデルを用いて運用計画を修正する点が、水運用計画装置100における運用計画修正部130と異なる。
また、図10に示すように、本実施形態における水運用計画装置200を備える水運用計画システム20が構成される。水運用計画システム20において、需要予測部11及び運用計画作成部12は、水運用計画システム10が備える需要予測部11及び運用計画作成部12とそれぞれ同様の構成要素である。
なお、本実施形態における水運用計画システム20及び水運用計画装置200は、第1の実施形態の例と同様に、入力部150、出力部160及び記憶部170を備えてもよい。
配水網50における需要の予測や運用計画の決定に際しては、配水網50に設けられた貯水池510の各々に関して、運用時の上限水位及び下限水位が制約としてそれぞれに定められる場合がある。したがって、貯水池510の各々に関して、水位の予測が行われる。水位の予測は、貯水池510の各々に対して定められた水位計算モデルを用いて行われる。しかしながら、水位計算モデルは、何らかの事情に起因して、現実の貯水池510の挙動を正しく表していない場合がある。この場合には、貯水池510の水位の予測に誤差が生じ、結果として需要の予測や運用計画の決定に影響が生じる可能性がある。
本実施形態における水運用計画装置200は、水位計算モデルを修正する水位計算モデル修正部240を備える。水位計算モデル修正部240が水位計算モデルを修正することで、貯水池510の各々について、修正前と比較してより正確に水位を求めることが可能となる。この結果として、精度の高い需要予測の修正等が可能となる。
次に、本発明の第2の実施形態における水運用計画装置200及び水運用計画システム20の各構成要素について説明する。なお、本実施形態において特段の説明がない場合、水運用計画装置200及び水運用計画システム20のそれぞれは、第1の実施形態における水運用計画装置及び水運用計画システム10とそれぞれ同様の構成を備える。
水運用計画装置200の判定部210は、上述のように、配水網50における需要の予測と計測結果とに基づいて、需要の予測を修正すべきかを判定する。この判定は、第1の実施形態における判定部110と同様に行われる。
また、判定部210は、配水網50に設けられた貯水池510の各々に関する水位の予測と計測結果とに基づいて、貯水池510の各々に関する水位計算モデルを修正すべきかを判定する。この場合には、判定部210は、例えば貯水池510の各々に関する水位の予測と計測結果との差異に基づいて、水位計算モデルを修正すべきかを判定する。すなわち、貯水池510の各々に関する水位の予測と計測結果との差異が予め定められた基準と比較して大きくなった場合に、判定部210は、水位計算モデルを修正すべきと判断する。
需要予測修正部120は、水運用計画装置100の需要予測修正部120と同様の構成要素である。
水位計算モデル修正部240は、判定部210にて貯水池510の各々に関する水位計算モデルを修正すべきと判定された場合に、水位計算モデルを修正する。水位計算モデル240は、水位計算モデルを修正する場合には、配水網50の計測部530によって計測された計測値を取得して水位計算モデルを修正する。水位計算モデルの修正対象は、判定部210によって水位計算モデルを修正すべきと判定された貯水池510のみであってもよいし、配水網50に設けられた貯水池510の全てでもよい。
水位計算モデル修正部240は、一例として、新たな水位計算モデルを求める。この場合には、水位計算モデル修正部240は、得られた水位計算モデルを修正された水位計算モデルとして置換する。この場合に、水位計算モデル修正部240は、水位計算モデルの修正対象である貯水池510への水の流入量を時系列で表したデータや、貯水池510からの水の流出量を時系列で表したデータ等を学習して新たな水位計算モデルを求める。
また、水位計算モデル修正部240は、水位の予測値と計測値との差を表す水位差異モデルを求めてもよい。そして、水位計算モデル修正部240は、水位の計算に際して得られた水位差異モデルと当初の水位計算モデルと併せて用いることで、水位計算モデルを修正する。このようにすることで、水位計算モデル修正部240は、当初の水位計算モデルを変更することなく、水位計算モデルの修正が可能となる。この場合には、水位計算モデル修正部240は、水位計算モデルの修正対象である貯水池510への水の流入量を時系列で表したデータや、貯水池510からの水の流出量を時系列で表したデータ等を学習して水位差異モデルを求める。
なお、水位計算モデルは、それぞれ以下のように求められる。まず、貯水池への単位時間当たりの水の流入量及び流出量を、それぞれQin及びQoutとする。また、水位の計算が行われる間隔をdtとする。この時間の間隔は、例えば判定部210が判定を行う間隔に応じて定められる。また、基準となる貯水量をVとする。そして、貯水池の形状は断面積が一定の柱状であると仮定し、底面積をAとする。この場合に、上述したフロー保存則に基づくと、貯水池の水位Lは以下の(2)式のように求められる。
すなわち、貯水池の水位Lは、基準となる貯水量に貯水量の変化分を加えた貯水量に基づいて求められる。
また、水位計算モデル修正部240にて、水位計算モデルは、例えば下記の(3)式から(5)式に基づいて修正される。例えば、当初の水位計算モデルでは貯水池の底面積が異なっており、実際の底面積はdAだけ広い場合には、貯水池の水位L1は次の(3)式のように求められる。すなわち、水位L1は、当初の面積との差異に応じて、予め予測した水位Lから低くなるように求められる。
また、例えば貯水池に流入する配管からの漏れがあり、実際に貯水池に流入する水量が単位時間当たりでdQinだけ少ない(すなわち、配管から単位時間当たりでdQinだけ流出する)場合が想定される。この場合には、貯水池の水位L2は次の(4)式のように求められる。すなわち、水位L2は、配管から漏れた水量に応じて、予め予測した水位Lから低くなるように求められる。
また、例えば貯水池からの漏れがあり、貯水池に貯水された水が単位時間当たりでdVだけ流出する場合には、貯水池の水位L3は次の(5)式のように求められる。すなわち、水位L2は、貯水池から漏れた水量に応じて、予め予測した水位Lから低くなるように求められる。
運用計画修正部230は、水運用計画装置100の運用計画修正部130と同様に、配水網に設けられた設備の運用計画を修正する。
本実施形態においては、運用計画修正部230は、需要予測修正部120によって修正された需要の予測に基づいて、水位計算モデル修正部240にて修正された水位計算モデルを用いて運用計画を修正する。
次に、図11に示すフローチャートを用いて、本発明の第2の実施形態における水運用計画装置200及び水運用計画システム20の動作について説明する。
最初に、需要予測部11は、配水網50における需要を予測する(ステップS210)。次に、運用計画作成部12は、ステップS110にて予測された水の需要に基づいて、配水網50の各設備に対する運用計画を決定する(ステップS220)。ステップS220において、運用計画作成部12は、配水網50に設けられた計測部530の各々にて計測されうる値の予測値を求める。ステップS210及びS220における需要予測部11及び運用計画作成部12の動作は、第1の実施形態のステップS110及びS120における需要予測部11及び運用計画作成部12の動作とそれぞれ同様である。
続いて、水運用計画装置200の判定部210は、ステップS220にて求めた予測値と計測値とに基づいて、需要の予測を修正すべきかを判定する(ステップS230)。ステップS230における判定部210の動作は、ステップS130における判定部110の動作と同様である。
判定部210が需要の予測を修正すべきと判断した場合(ステップS230:Yes)には、需要予測修正部120は、需要の予測を修正する(ステップS240)。ステップS240における需要予測修正部120の動作は、第1の実施形態のステップS140における動作と同様である。
また、判定部210が需要の予測を修正する必要はないと判定した場合には(ステップS230:No)、判定部210は、更に貯水池510の各々に関する水位計算モデルを修正すべきであるかを判定する(ステップS231)。
ステップS240での需要の予測に続いて、又はステップS231にて水位計算モデルの修正が必要と判断された場合(ステップS231:Yes)に、水位計算モデル修正部240は水位計算モデルを修正する(ステップS241)。
運用計画修正部230は、運用計画を修正する(ステップS250)。修正された運用計画は、適宜配水網50に備えられた設備やその運用者に伝達される。そして、修正された運用計画に従って配水網50が運用される。
ステップS250において運用計画が修正されると、水運用計画装置200は、再度ステップS130の処理に戻る。水運用計画装置200は、第1の実施形態における水運用計画装置100と同様に、判定部210による判定結果に応じて、ステップS230からステップS250までの処理を繰り返して実行する。この動作は、例えば水運用計画システム20が新たにステップS210からの動作を開始するまで繰り返し行われる。
また、判定部210が水位計算モデルの修正を不要と判断した場合(ステップS231:No)にも、水運用計画装置200は、再度ステップS130の処理に戻る。この場合にも、水運用計画装置200は、ステップS230からステップS250までの処理を繰り返して実行する。
以上のように、本発明の第2の実施形態における水運用計画装置200は、水位計算モデル修正部240を更に備える。水位計算モデル修正部240は、配水網50における貯水池510の各々の水位計算モデルを修正する。そのため、運用計画修正部230にて運用計画の修正が行われる場合には、未修正の場合と比較してより正確に貯水池510の水位が求められる。したがって、本実施形態における水運用計画装置200は、第1の実施形態における水運用計画装置100と比較して、精度の高い需要予測の修正が可能となる。水運用計画システム20は、水運用計画装置200と同様の効果を奏する。
また、水位計算モデル修正部240は、水位計算モデルの修正に際して水位差異モデルを用いる。このようにすることで、水位計算モデルの修正を容易に行うことが可能となる。
以上、実施形態を参照して本発明を説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではない。本発明の構成や詳細には、本発明のスコープ内で当業者が理解し得る様々な変更をすることができる。また、各実施形態における構成は、本発明のスコープを逸脱しない限りにおいて、互いに組み合わせることが可能である。