JP2017081791A - 脱水素システム及び脱水素システムの運転停止方法 - Google Patents

脱水素システム及び脱水素システムの運転停止方法 Download PDF

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庄一 塚越
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貴章 谷口
遼 岸田
Ryo Kishida
遼 岸田
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康 水野
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Masato Takebayashi
正人 竹林
健人 長川
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健人 長川
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【課題】触媒の劣化を抑制して稼働することが可能な脱水素システム及び脱水素システムの運転停止方法を提供する。【解決手段】脱水素システム1は、有機ハイドライドを貯留する貯留部10と、蒸発部20と、脱水素触媒を保持する反応部30と、分離部40と、主流路110と、主流路110を開閉自在に仕切る第1開閉弁V1と、主流路110に不活性ガスを圧送する不活性ガス圧送手段70と、主流路110から分岐して貯留部10に接続する排出流路120とを備えている。脱水素システムの運転停止方法は、システム停止時に、蒸発部10への有機ハイドライドの供給を停止すると共に、蒸発部10と反応部30との間の主流路110を閉鎖することで、主流路110の上流側に滞留している有機ハイドライドを蒸発部20における加熱によって加圧して、主流路110に残留している有機ハイドライドを貯留部10に排出させるものである。【選択図】図1

Description

本発明は、有機ハイドライドを脱水素して水素を取り出す脱水素システム及び脱水素システムの運転停止方法に関する。
近年、エネルギ源として有用な水素を、有機ハイドライドをキャリアとして貯蔵・輸送する技術の開発が進められている。シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン等の有機ハイドライドは、水素の貯蔵密度が高く、液体としての取り扱いも容易であることから、水素を低コストで大量に貯蔵・輸送することが可能なキャリアとして有望視されている。
水素が利用される消費地には、有機ハイドライドに水添されている水素を脱水素反応によって取り出すための脱水素システムが設置される。脱水素システムとしては、貯蔵や輸送に適した液体の有機ハイドライドを気化させた後に反応器に導入し、反応器に保持されている脱水素触媒によって脱水素化を行う形態のシステムが開発されている。
この種の脱水素システムは、一般に、有機ハイドライドを加熱して気化させる蒸発器と、脱水素反応を行う反応器と、脱水素反応によって生成した水素を気液分離する気液分離器とを備えている。液体の有機ハイドライドを気化し、脱水素触媒の存在下に脱水素反応させることによって、水素ガスと有機ハイドライドの脱水素化物とが生成される。
有機ハイドライドの脱水素反応は、吸熱反応である。そのため、脱水素システムに備えられる反応器は、250℃〜400℃程度の高温に加熱されて運転されることが多い。このようにして反応器が高温になると、有機ハイドライドや水添反応において副生成して混入している不純物等に由来して触媒の被毒(コーキング)を生じることが知られている。そこで、被毒の原因物質を除去することによって脱水素触媒の劣化を抑制する技術が提案されている。
例えば、特許文献1には、水素化芳香族化合物を生成する水素化反応装置と、水素化反応装置の生成物を水素化芳香族化合物の沸点以上に維持した状態で気液分離する第1分離装置と、第1分離装置によって分離された気体に含まれる水素化芳香族化合物を分離する第2分離装置とを備えた水素化システムと、第2分離装置によって分離された水素化芳香族化合物から水素を生成する脱水素反応装置とを備える水素貯蔵・輸送システムについて開示されている。
特開2015−145347号公報
脱水素システムの運転を停止する際には、原料としての有機ハイドライドの供給を停止する操作と、蒸発器や反応器における加熱を中止する操作とを、併せて行うのが一般的である。高温に加熱されていた蒸発器や反応器は、このような操作が実行された後、自然放冷されて平温に戻り、次回の再起動に向けて待機する状態となる。
ところが、このような操作を経て脱水素システムの運転を停止する場合、有機ハイドライドの供給を停止したとしても、既に投入した有機ハイドライドの一部については、反応器に到達すること無く、未反応のままライン内に残留することになる。また、蒸発器や反応器は、加熱を停止したとしても直ちには除熱されず、暫くの間は余熱を保った状態であり続ける。
そのため、システム停止時の脱水素システムのラインは、蒸発器の加熱が停止される前に既に気化し、排出されずに残っていた高温の有機ハイドライドや、蒸発器の加熱が停止された後に余熱によって新たに気化した高温の有機ハイドライド等が少なからず残存した状態となる。
そして、こうした高温の有機ハイドライドは、熱分解によってコークを生じたり、反応器に流入して意図しない触媒反応を生じたりして、脱水素触媒のコーキングを進行させる。すなわち、システム停止時にライン内に残存している有機ハイドライド等によって、脱水素触媒の耐用寿命や反応効率が損なわれるという課題がある。
特許文献1に記載されているような水素貯蔵・輸送システムによると、脱水素触媒の被毒物質が水素化システムから混入して脱水素システム内で濃縮するのを防止することが可能である。しかしながら、脱水素システムは、一般に、起動と停止とを断続的に繰り返して、長期にわたって継続的に稼働される。そのため、システム停止の都度に進行するコーキングは、水素化システムから混入する不純物等に起因する劣化と比較しても影響が大きいものである。
また、脱水素システムのシステム停止時にライン内に供給済みの有機ハイドライドが残存していると、脱水素システムを再起動して新たに有機ハイドライドを供給するときに、ライン内に残存していた有機ハイドライドも反応器に投入されてしまう。このようにして有機ハイドライドの現実の投入量が、予定していた設計量よりも過剰になると、触媒の劣化が不用意に進んでしまうという課題もある。
そこで、本発明は、触媒の劣化を抑制して稼働することが可能な脱水素システム及び脱水素システムの運転停止方法を提供することを目的とする。
前記課題を解決するために本発明に係る脱水素システムは、有機ハイドライドを貯留する貯留部と、前記貯留部から供給される有機ハイドライドを気化させる蒸発部と、前記有機ハイドライドの脱水素反応を触媒する脱水素触媒を保持する反応部と、前記脱水素反応によって生成した水素と前記有機ハイドライドの脱水素化物とを分離する分離部と、前記貯留部、前記蒸発部、前記反応部及び前記分離部をこの順に接続している主流路と、前記蒸発部と前記反応部との間の前記主流路を開閉自在に仕切る第1開閉弁と、前記第1開閉弁よりも上流側の前記主流路から分岐して前記貯留部に接続する排出流路とを備えることを特徴とする。
この脱水素システムは、第1開閉弁を備えているため、脱水素反応を休止しているときに反応部を供給済みの有機ハイドライドから隔離することができる。そのため、脱水素システムの運転を休止しているときに、主流路に残存している有機ハイドライドが反応器に流入するのを防止することができる。また、排出流路を備えているため、第1開閉弁よりも上流側の主流路に残存している有機ハイドライドを、蒸発部における加熱によって加圧された有機ハイドライドに同伴させて排出することができる。そのため、脱水素システムの運転を再起動したときに、主流路に残存していた有機ハイドライドが反応部に流入するのを防止することができる。よって、この脱水素システムによると、コーキングによる触媒の劣化を抑制して、長期にわたって良好な反応効率を保って稼働を続けることが可能となる。また、貯留部に排出した有機ハイドライドを原料として再利用することができるため、有機ハイドライドの使用効率が優れている。
また、本発明に係る脱水素システムの運転停止方法は、有機ハイドライドを貯留する貯留部と、前記貯留部から供給される有機ハイドライドを気化させる蒸発部と、前記有機ハイドライドの脱水素反応を触媒する脱水素触媒を保持する反応部と、前記脱水素反応によって生成した水素と前記有機ハイドライドの脱水素化物とを分離する分離部と、前記貯留部、前記蒸発部、前記反応部及び前記分離部をこの順に接続している主流路とを備える脱水素システムの運転停止方法であって、システム停止時に、前記蒸発部への前記有機ハイドライドの供給を停止すると共に、前記蒸発部と前記反応部との間の前記主流路を閉鎖することで、閉鎖されている前記主流路の上流側に滞留している前記有機ハイドライドを前記蒸発部における加熱によって加圧して、前記主流路に残留している前記有機ハイドライドを加圧された前記有機ハイドライドと共に前記貯留部に排出させることを特徴とする。
この脱水素システムの運転停止方法によると、脱水素システムのシステム停止時に、有機ハイドライドの供給が停止された後に主流路が閉鎖される。そのため、脱水素システムの運転を休止しているときに、主流路に残存している有機ハイドライドが反応器に流入するのを防止することができる。そして、有機ハイドライドの供給が停止された後に主流路の上流側に残存している供給済みの有機ハイドライドは、蒸発部における加熱によって加圧された有機ハイドライドに同伴して主流路から排除される。これにより、脱水素システムの運転を再起動したときに、主流路に残存していた有機ハイドライドが反応器に流入するのを防止することができる。よって、この脱水素システムの運転停止方法によると、コーキングによる触媒の劣化を抑制して、長期にわたって良好な反応効率を保って脱水素システムを稼働させることが可能である。また、主流路に残存していた有機ハイドライドは貯留部に排出されるため、原料として再利用することができる。
本発明によれば、触媒の劣化を抑制して稼働することが可能な脱水素システム及び脱水素システムの運転停止方法を提供することができる。
本発明の一実施形態に係る脱水素システムの概略構成を示す図である。 本発明の一実施形態に係る脱水素システムの運転の流れを示すフローチャートである。
以下に、本発明の一実施形態に係る脱水素システム及び脱水素システムの停止方法について説明する。なお、以下の図において共通する構成については同一の符号を付し、重複した説明を省略する。
図1は、本発明の一実施形態に係る脱水素システムの概略構成を示す図である。
図1に示すように、本実施形態に係る脱水素システム1は、原料タンク(貯留部)10と、蒸発器(蒸発部)20と、反応器(反応部)30と、気液分離器(分離部)40と、水素タンク50と、液体タンク60と、凝縮器(凝縮手段)80と、制御装置(制御部)100と、主流路110と、排出流路120と、供給ポンプp1と、ブロワp2と、主流路開閉弁(第1開閉弁)V1と、排出流路開閉弁(第2開閉弁)V2と、を備えている。
脱水素システム1は、液体の有機ハイドライドを気化し、気化させた有機ハイドライドを脱水素触媒によって脱水素反応させて水素を生成し、脱水素反応によって生成した水素と有機ハイドライドの脱水素化物とを気液分離して水素を回収する装置である。有機ハイドライドから取り出された水素は、各種の用途に利用される一方で、気液分離された有機ハイドライドの脱水素化物は、水素を貯蔵するキャリアとして再利用される。
有機ハイドライドとしては、具体的には、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、ジメチルシクロヘキサン、エチルシクロヘキサン、デカリン、1−メチルデカリン、2−メチルデカリン、2−エチルデカリン等の芳香族炭化水素の水素化物が好適に用いられる。
有機ハイドライドは、水素吸蔵合金をキャリアとする場合や、水素単体を貯蔵・輸送する場合と比較して、重量当たり及び体積当たりの水素貯蔵密度を高密度にすることが可能なキャリアである。そのため、有機ハイドライドは、貯蔵・輸送を行う設備機器等について小型化により低コスト性や省スペース性を確保しつつ、高い貯蔵量や搬送量をも両立させることができる点で、有利なキャリアとなっている。
有機ハイドライドの一種であるメチルシクロヘキサン(MCH)は、常圧における沸点が約101℃である。MCHは、脱水素反応することによって、水素と常圧における沸点が約110℃であるトルエンとを生成する。キャリアとしてのMCHは、毒性が比較的低く、常圧付近における広い温度域で液体として取り扱いが可能であるという利点を有している。そこで、以下においては、有機ハイドライドとしてMCHを用いる場合を例にとって説明を行う。
脱水素システム1は、図1に示すように、原料タンク10、蒸発器20、反応器30及び気液分離器40をこの順に直列状に接続している主流路110を有している。主流路110は、水素生成の原料として供給される液体のMCHや、気化したMCHや、MCHに由来する水素等の生成物をはじめとして、気体及び液体のうち少なくとも一方が通流可能な流路となっている。主流路110は、配管等によって形成されており、原料タンク10から、蒸発器20や反応器30を貫通して気液分離器40に達している。
原料タンク10は、水素生成の原料となるMCHを貯留するための容器である。原料タンク10には、例えば、生産地等から搬送されてきたMCHが投入され、液体の状態で貯留されるようになっている。原料タンク10の出口は、主流路110を介して蒸発器20の入口と接続されている。
供給ポンプp1は、原料タンク10と蒸発器20との間の主流路110に設置されている。原料タンク10に貯留されている液体のMCHは、供給ポンプp1によって引き抜かれて昇圧され、主流路110を通じて蒸発器20に供給されるようになっている。
供給ポンプp1は、制御部100と不図示の信号線を介して接続されている。供給ポンプp1は、例えば、インバータ駆動によってポンプの駆動回転数を制御可能に設けられる。供給ポンプp1の作動及び停止や、供給ポンプp1によるMCHの移送量は、制御部100によって制御される。
蒸発器20は、液体のMCHを気化させるために備えられている。蒸発器20としては、シェルアンドチューブ型等の熱交換型の加熱装置が好適に用いられる。シェルアンドチューブ型の加熱装置は、シェル側が熱媒流通可能となっており、多管のMCH配管(チューブ)がシェルを貫通した構造を有している。チューブには、原料タンク10から液体のMCHが導入され、シェル内には、熱媒配管から熱媒が供給される。そして、チューブ内(受熱空間)にあるMCHは、熱媒との熱交換によって加熱されて蒸発する。
図1に示すように、蒸発器20の上流側には、蒸発器20に導入されるMCHの入口温度を計測する蒸発器入口温度センサ(入口温度計測手段)T1、蒸発器20の蒸気出口の下流側には、蒸発器20から排出されるMCHの出口温度を計測する蒸発器出口温度センサ(出口温度計測手段)T2をそれぞれ設置することができる。
また、図1に示すように、蒸発器20に備えられる熱交換器の熱媒の供給側には、蒸発器20に流入する熱媒温度を把握できる熱媒上流側温度センサ(熱媒上流側温度計測手段)T3、熱媒の排出側には、蒸発器20から流出する熱媒温度を把握できる熱媒下流側温度センサ(熱媒下流側温度計測手段)T4をそれぞれ設置することができる。
また、図1に示すように、蒸発器20の受熱空間には、加熱されているMCHの液量を検出する液面計L1を設置することができる。これらの各計測器は、制御部100との間で計測値や指示を伝送可能に設けられる。
蒸発器20においては、液体のMCHに蒸発潜熱が与えられ、沸点近傍の温度に達して蒸発するまでの加熱が少なくとも行われる。蒸発器20の蒸気出口は、主流路110を介して反応器30の入口と接続されており、蒸発器20において気化したMCHは、主流路110を通じて反応器30に導入されるようになっている。
蒸発器20における加熱の目標温度は、MCHの沸点近傍に設定される一方で、脱水素反応の至適温度は、通常、250℃〜400℃程度である。そのため、蒸発器20において蒸発潜熱が与えられたMCHは、脱水素反応に供される以前に必要に応じて過熱されて顕熱が与えられる。
反応器30は、MCHの脱水素反応を触媒する脱水素触媒を保持している。反応器30としては、多管式等の固定床熱交換型の反応器が好適に用いられる。MCHの脱水素反応は、反応生成物の総モル数の増加を伴う吸熱反応である。そのため、反応器30における反応雰囲気は、ゲージ圧で1.0MPaG以下程度の常圧付近の低圧力の下で、不図示の燃焼バーナで温められたガス、熱媒等の加熱手段によって高温に加熱される。
脱水素触媒としては、例えば、白金、パラジウム、ニッケル、スズ、レニウム、ロジウム、イリジウム等の適宜の活性金属を用いることができる。また、活性金属を担持する触媒担体としては、アルミナ、シリカ、チタニア、ジルコニア、マグネシア、酸化スズ、ゼオライト等の適宜の担体を用いることが可能である。触媒担体については、粒状、モノリス状、ペレット状、プレート状、ハニカム状等の適宜の形態としてよい。
反応器30においては、脱水素触媒の存在下、低圧且つ高温条件の下でMCHが効率的に脱水素反応し、水素と、水素が脱離した脱水素化物、すなわちトルエンが生成する。反応器30の出口は、主流路110を介して気液分離器40の入口と接続されており、反応器30において生成した水素とトルエンとは、主流路110を通じて気液分離器40に導入されるようになっている。
気液分離器40は、脱水素反応によって生成した水素と、MCHの脱水素化物であるトルエン及び未反応のMCHを気液分離するために備えられている。気液分離器40では、例えば、反応器30において生成した高温の生成物を、トルエンの沸点未満の温度、好ましくはMCHの沸点未満の温度に冷却し、トルエン、未反応のMCH、副生成物等を液化させて水素ガスと気液分離させる。気液分離器40の気体出口は、水素タンク50と接続されている一方で、凝縮液を排出する液出口は、液体タンク60と接続されている。
ブロワp2は、気液分離器40の排気口と水素タンク50との間の気体の流路に設置されている。気液分離器40において分離された水素は、ブロワp2によって吸引され、水素タンク50に回収されるようになっている。
水素タンク50は、脱水素反応によって生成した水素を回収するための容器である。MCHに結合した状態で貯蔵・輸送された後、脱水素反応によってMCHから取り出された水素は、水素タンク50に回収される。そして、回収された水素は、一般燃料、発電用燃料、燃料電池用燃料等の各種の用途に利用される。
液体タンク60は、水素から気液分離された脱水素化物等の液体を回収するための容器である。液体タンク60に回収されたトルエンは、精製された後、水素を貯蔵するためのキャリアとして再利用される。例えば、水素の生産地に向けて液体の状態で輸送され、生産地において水添反応を受けて再びMCHに変換される。そして、生産地と消費地との間を結ぶ水素の貯蔵・輸送サイクルにおいて、水素のキャリアとして繰り返し利用される。
主流路開閉弁V1は、蒸発器20の出口と反応器30の入口との間の主流路110に設けられている。主流路開閉弁V1は、蒸発器20と反応器30との間の主流路110を開閉自在に仕切っている。主流路開閉弁V1は、開いた状態では、蒸発器20から反応器30への気体や液体の通流を可能にする。その一方で、全閉の状態では、蒸発器20が位置する主流路110の上流側と反応器30が位置する主流路110の下流側との間について気体や液体の通流を遮断する。
主流路開閉弁V1は、図1に示すように、制御部100と信号線を介して接続されており、主流路開閉弁V1の開閉は、制御部100によって制御されるようになっている。主流路開閉弁V1は、脱水素システム1のシステム停止時に閉鎖され、主流路110に供給済みのMCHが反応器30に流入するのを防止する。
排出流路120は、主流路開閉弁V1及び蒸発器20よりも上流側の主流路110から分岐して原料タンク10に接続している。排出流路120は、液体のMCHや、気化したMCHをはじめとして、気体及び液体の両方が通流可能な流路である。排出流路120は、配管等によって形成されており、凝縮器80や液体検知器E1を貫通して原料タンク10の上部に接続されている。
排出流路開閉弁V2は、排出流路120に設けられている。詳細には、排出流路開閉弁V2は、主流路110と排出流路120との接続位置の近傍に設置されている。排出流路開閉弁V2は、主流路110との接続位置の近傍において排出流路120を開閉自在に仕切っている。排出流路開閉弁V2は、全閉の状態では、主流路110と排出流路120との間について気体や液体の通流を遮断する。その一方で、開いた状態では、主流路110と原料タンク10との間を連通し、排出流路120を介した主流路110から原料タンク10への気体や液体の通流を可能にする。
排出流路開閉弁V2は、図1に示すように、制御部100と信号線を介して接続されており、排出流路開閉弁V2の開閉は、制御部100によって制御されるようになっている。排出流路120は、脱水素システム1のシステム停止時に開放される。システム停止時に蒸発器20における加熱が継続されると、蒸発器20の受熱空間に残存しているMCHが加圧される。そして、主流路110に残存している液体のMCHや気化したMCH等は、加圧されたMCHに同伴して排出流路120に排出され、排出流路120を通って原料タンク10に返送される。
凝縮器80は、主流路110から排出流路120に排出された有機ハイドライドを凝縮させる機能を有している。凝縮器80では、主流路110から排出流路120に排出された気体をMCHの沸点未満の温度にまで冷却し、主流路110に気体の状態で残存していたMCHを凝縮させる。凝縮したMCHは、その後、原料タンク10に返送され、水素生成の原料として再び蒸発器20に供給される。
図1に示すように、凝縮器80の下流側には、排出流路120における液体の通流を検知する液体検知手段E1を設置することができる。凝縮器80の下流側で液体の通流を検知することにより、主流路110にMCHが残存しているか否かを間接的に把握することが可能である。液体検知手段E1は、制御部100との間で計測値や指示を伝送可能に設けられる。
液体検知手段E1としては、具体的には、屈折計、密度計、流量計、分光光度計等を利用することができる。インライン型等の屈折計によって、排出流路120を通流する流体の屈折率を計測し、気体と液体の屈折率差に基いて液体の有無を検知することが可能である。また、インライン型の振動式、放射線式等の密度計によって、排出流路120を通流する物質の密度を計測することで液体の有無を検知することが可能である。
また、コリオリ式、サーマル式等の質量流量計によって、気体と液体の密度差や熱容量変化を計測したり、タービン式、電磁式、超音波式等の流量計によって、排出流路120を通流する液体の流量を計測したりして、液体の有無を検知することが可能である。或いは、赤外分光光度計等によって、MCHに固有な吸収波長の吸収強度を計測し、液体のMCHの有無を直接的に検知してもよい。
制御部100は、開閉弁やポンプ等の各種機器を制御する運転制御部、各種計測器からの出力を参照して各種機器の制御量等を演算する演算部、制御プログラムや各種の変数を記憶する記憶部等を備える構成とされる。制御部100は、例えば、制御プログラムを実行するCPU、各種変数等を記憶するメモリ、ROM、RAM等によって実現される。また、制御部100は、操作者による指示を受け付けるキーボードやマウス等の入力手段や、システムの状態、各種演算結果、各種計測結果等を表示するディスプレイ等の不図示の表示手段や、各種機器を制御するコントローラ等と接続される。
制御部100は、供給ポンプp1、主流路開閉弁V1、排出流路開閉弁V2、蒸発器20、反応器30等の動作を制御する機能を有している。具体的には、供給ポンプp1についての起動、停止、駆動回転数や、主流路開閉弁V1の開閉や、排出流路開閉弁V2の開閉や、蒸発器20及び反応器30についての加熱の起動、停止、加熱熱量等が、操作者からの指示や制御プログラムに基いて制御される。
ここで、本発明の一実施形態に係る脱水素システムの運転停止方法について説明する。
図2は、本発明の一実施形態に係る脱水素システムの運転の流れを示すフローチャートである。
脱水素システム1の運転は、水素生成の原料としてのMCHが原料タンク10に投入されている状態で開始される。このとき、主流路開閉弁V1は開いた状態であり、排出流路開閉弁V2は全閉の状態である。
脱水素システム1の制御部100は、操作者によるシステム起動の指示を受け付けると、蒸発器20の加熱と、反応器30の加熱とを開始する(ステップS10)。蒸発器20の加熱の目標温度については、例えば、100℃以上400℃以下の範囲であり、好ましくは反応器30と同等ないし同じ温度、反応器30の加熱の目標温度については、例えば、300℃以上400℃以下の範囲で設定される。すなわち、このような目標温度に向けて蒸発器20及び反応器30の予熱を開始する。
続いて、制御部100は、供給ポンプp1を起動する(ステップS11)。反応器30に液体のMCHが導入されると、所定温度以下では反応開始効率が低下してしまうため、供給ポンプp1を起動は、蒸発器20及び反応器30のそれぞれの内部温度が所定温度に昇温した段階で行うことが好ましい。供給ポンプp1が稼働すると、原料タンク10に貯留されている液体のMCHは、蒸発器20に供給されて気化し、気化したMCHは、高温に予熱されている反応器30に導入されて脱水素反応する。
脱水素反応によって生成した水素とトルエンとは、気液分離器40に導入されて気液分離された後、水素タンク50及び液体タンク60のそれぞれに回収される。脱水素システム1では、このような脱水素反応を半連続的に行い、原料タンク10に貯留されているMCHから水素を取り出す定常運転を行う。
脱水素システム1は、その後、定常運転の停止を指示するシステム停止指示が有るとシステム停止の処理を開始する。脱水素システム1のシステム停止時には、蒸発器20内の受熱空間や、蒸発器20よりも上流側の主流路110に、供給ポンプp1によって既に投入された液体のMCHが残留している。このような液体のMCHは、蒸発器20の余熱によって気化する可能性がある。また、蒸発器20の下流側にかけては、蒸発器20の受熱空間において既に気化した高温のMCHが、未だ脱水素反応すること無く残存している。
脱水素システム1のシステム停止時にこのような高温のMCHが残存していると、熱分解によってコークを生じたり、余熱を持っている反応器30に流入して望まれない触媒反応を生じたりする虞がある。そして、脱水素システム1の稼働を停止し、水素の回収を中断しているにも関わらず、脱水素触媒の表面にコーク等の堆積を生じ、脱水素触媒のコーキングが進行してしまう。
また、脱水素システム1のシステム停止時に主流路110にMCHが残存していると、脱水素システム1を再起動したときに、供給ポンプp1によって新たに供給されるMCHと共に、残存していたMCHも反応器30に投入されることになる。このようにしてMCHの投入量が過剰になると、転化率が低下すると共に副反応が増加し、脱水素触媒のコーキングによる劣化がさらに進行してしまう。
そこで、脱水素システム1の制御部100は、システム停止時に、主流路110に残存しているMCHを排除する処理を実行する。詳細には、反応器30に導入されること無く主流路110に残存しているMCHを主流路110から原料タンク10に排出し、排出したMCHについては原料としての再利用を図る処理である。
脱水素システム1の制御部100は、反応器30の運転中において、システム停止指示が有るか否かを判定する(ステップS12)。システム停止指示は、例えば、操作者により入力手段を介して制御部100に入力される。或いは、原料タンク10における液量、主流路110を通流したMCHの総流量、供給ポンプp1の稼働時間等が、あらかじめ設定されている所定値に達したときに動作信号として制御部100に入力される。
脱水素システム1の制御部100は、システム停止指示を受け付けていないと(ステップS12;NO)、供給ポンプp1や反応器30の加熱の稼働を続ける。そして、制御部100は、システム停止指示が有るか否かの判定を継続する(ステップS12)。
その一方で、制御部100は、システム停止指示を受け付けると(ステップS12;YES)、反応器30の加熱を停止する(ステップS13)。反応器30の加熱が停止されると、反応器30の温度は、脱水素反応による吸熱と自然放冷とによって次第に低下していく。
続いて、制御部100は、供給ポンプp1の稼働を停止する(ステップS14)。供給ポンプp1の稼働を停止すると、蒸発器20へのMCHの供給が停止する。主流路110に既に供給済みのMCHの一部は、蒸発器20において気化し、残部は、液体のまま主流路110に残留することになる。
続いて、制御部100は、主流路開閉弁V1を閉じる共に排出流路開閉弁V2を開く(ステップS15)。主流路開閉弁V1が閉じられ、蒸発器20と反応器30との間の主流路110が全閉の状態とされると、反応器30に保持されている脱水素触媒は、主流路110に既に供給済みのMCH等から隔離される。すなわち、脱水素触媒のコーキングの進行が阻止される。一方、排出流路開閉弁V2が開かれると、主流路110の上流側は、排出流路120を介して原料タンク10と連通する。
蒸発器20に既に供給済みのMCH等は、供給ポンプp1の稼働が停止され、且つ、主流路開閉弁V1が閉じられた後においても、蒸発器20による加熱が継続されることで加熱され続ける。そして、蒸発器20の受熱空間に残存していたMCHは、蒸発器20における加熱によって加圧されて、蒸発器20の受熱空間の内圧を上昇させる。
その結果、主流路110の上流側に残存しているMCH等は、蒸発器20の受熱空間で加圧された高圧のMCHに同伴して、圧力が低い原料タンク10に向けて排出流路120を流れる。そして、排出流路120に備えられる凝縮器80に導入されて凝縮した後、原料タンク10に排出される。
脱水素システム1の制御部100は、蒸発器20における加熱が続けられている間に、蒸発器20における加熱の停止を指示する加熱停止指示が有るか否かを判定する(ステップS16)。加熱停止指示は、例えば、操作者により入力手段を介して制御部100に入力される。或いは、蒸発器20における加熱が十分に行われたことが各種の計測器によって間接的に検知されたときに動作信号として制御部100に入力される。
図2に示すように、脱水素システム1の制御部100は、蒸発器20における加熱が十分に行われたか否かを判定するにあたって、液体のMCHの残存状態を間接的に示す変数を参照することができる。
詳細には、脱水素システム1の制御部100は、主流路110における液体のMCHの残存状態を間接的に示す変数を各種計測器を介して取得する。そして、その変数を参照することによって、主流路110に液体のMCHが残存しているか否かを推定し、蒸発器20の稼働を制御する。このような処理によって、蒸発器20における加熱の終了時期が適切な時期に制御される。
脱水素システム1の制御部100は、具体的には、図2に示すように、蒸発器20が稼働している間に、所定の変数が、あらかじめ設定されている閾値以上になったか否か、又は、閾値以下になったか否かを判定する(ステップS16)。図2における各変数は、並列の関係にあり、閾値との判定にはいずれか一つが使用される。
参照することができる変数としては、例えば、蒸発器出口温度の上昇の時間変化率(蒸発器出口温度変化率)、蒸発器20に流入する熱媒温度と蒸発器20から流出する熱媒温度との温度差(熱媒入出温度差)、蒸発器入口温度、蒸発器20の受熱空間におけるMCHの液量(蒸発器内液量)等が挙げられる。
変数として蒸発器出口温度変化率を用いる場合、制御部100は、蒸発器出口温度の上昇の時間変化率(蒸発器出口温度変化率)があらかじめ設定されている閾値以上になったか否かを判定する(ステップS17)。
蒸発器出口温度は、供給ポンプp1と蒸発器20とが稼働している間には、通常、設計に基く所定範囲内の値を示す。例えば、MCHの流量や蒸発器20への伝熱量が一定に制御されている定常運転時であれば、蒸発器出口温度は略一定し、温度上昇を示すことは殆ど無い。つまり、蒸発器出口温度の時間変化は略無い。これに対して、蒸発器20へのMCHの供給を停止し、供給済みの液体のMCHの全てが気化すると、蒸発による吸熱が無くなる。その結果、蒸発器20への伝熱量が一定に制御されていたとしても、蒸発器出口温度が上昇に向かう。つまり、残存していたMCHの蒸発が終了することにより、蒸発器出口温度の上昇の時間変化率は、増大する側に変位を生じることになる。
そのため、制御部100に、蒸発器出口温度の時間変化率の有意な増大を検知するための所定閾値をあらかじめ設定しておき、蒸発器出口温度センサT2の出力に基いて蒸発器出口温度変化率を演算し、判定を行うことによって、蒸発器20における加熱の終了時期を適切な時期に制御することができる。蒸発器出口温度変化率に基くと、主流路110に残存しているMCHの略全部が蒸発した時期を比較的精密に推定できる点で有利である。
制御部100は、蒸発器出口温度の上昇の時間変化率が閾値以上になっていないと(ステップS16;NO)、蒸発器20における加熱を続ける。そして、制御部100は、加熱停止指示が有るか否かの判定を継続する(ステップS16)。
その一方で、制御部100は、蒸発器出口温度の上昇の時間変化率が閾値以上になっていると(ステップS16;YES)、残存しているMCHの加熱が十分に行われたとして、蒸発器20における加熱を停止する(ステップS17)。
或いは、変数として熱媒入出温度差を用いる場合、制御部100は、蒸発器20に流入する熱媒温度と蒸発器20から流出する熱媒温度との温度差(熱媒入出温度差)があらかじめ設定されている閾値以下になったか否かを判定する(ステップS16)。
熱媒入出温度差は、供給ポンプp1と蒸発器20とが稼働している間には、通常、設計に基く所定範囲内の値を示す。例えば、MCHの流量や熱媒の流量が一定に制御されている定常時であれば、熱媒からMCHへの伝熱量は運転中で最大となるため、蒸発器20に流入する熱媒温度と蒸発器20から流出する熱媒温度との温度差は大きな値をとる。これに対して、蒸発器20へのMCHの供給を停止し、供給済みの液体のMCHの全てが気化すると、蒸発による熱媒からの吸熱が無くなる。その結果、熱媒は十分に冷却されないまま蒸発器20から流出するようになり、熱媒入出温度差は、気体のMCHと熱媒との熱交換による最小値に達する。
そのため、制御部100に、蒸発器20に流入する熱媒温度と蒸発器20から流出する熱媒温度との温度差の運転中の最小値に相当する所定閾値をあらかじめ設定しておき、熱媒上流側温度センサT3及び熱媒下流側温度センサT4の出力に基いて熱媒入出温度差を演算し、判定を行うことによって、蒸発器20における加熱の終了時期を適切な時期に制御することができる。具体的には、蒸発器20に流入する熱媒温度と蒸発器20から流出する熱媒温度との温度差が5℃以下になったとき、MCHの全てが蒸発したものと判定することができる。熱媒入出温度差に基くと、MCHの蒸発が完了する時期に合わせて蒸発器20の運転を停止することができるため、蒸発器20の稼働コストを削減し得る点で有利である。
制御部100は、蒸発器20に流入する熱媒温度と蒸発器20から流出する熱媒温度との温度差が閾値以下になっていないと(ステップS16;NO)、蒸発器20における加熱を続ける。そして、制御部100は、加熱停止指示が有るか否かの判定を継続する(ステップS16)。
その一方で、制御部100は、蒸発器20に流入する熱媒温度と蒸発器20から流出する熱媒温度との温度差が閾値以下になっていると(ステップS16;YES)、残存しているMCHの加熱が十分に行われたとして、蒸発器20における加熱を停止する(ステップS17)。
或いは、変数として蒸発器入口温度を用いる場合、制御部100は、蒸発器入口温度があらかじめ設定されている閾値以上になったか否かを判定する(ステップS16)。
蒸発器入口温度は、供給ポンプp1と蒸発器20とが稼働している間には、通常、原料タンク10に貯留されているMCHの液温と略同値を示す。その後、供給ポンプp1を停止すると、蒸発器入口温度は、蒸発器20の受熱空間からの伝熱によって上昇し、MCHの沸点以上になることがある。蒸発器入口温度がMCHの沸点以上であるとき、蒸発器20の受熱空間に残存している液体のMCHについては、略蒸発が完了している状態であり、蒸発器20の上流側に残存している液体のMCHについては、沸騰して速やかに蒸発している状態にある。つまり、主流路110の上流側に残存していた液体のMCHの大半について、蒸発が完了したものと判定することができる。
そのため、制御部100に、MCHの沸点に相当する所定閾値をあらかじめ設定しておき、蒸発器入口温度センサT1の出力による蒸発器入口温度を参照して判定を行うことによって、蒸発器20における加熱の終了時期を適切な時期に制御することができる。蒸発器入口温度に基くと、蒸発器20に残存しているMCHの略全部が蒸発した時期を比較的精密に推定できる点で有利である。
制御部100は、蒸発器入口温度が閾値以上になっていないと(ステップS16;NO)、蒸発器20における加熱を続ける。そして、制御部100は、加熱停止指示が有るか否かの判定を継続する(ステップS16)。
その一方で、制御部100は、蒸発器入口温度が閾値以上になっていると(ステップS16;YES)、残存しているMCHの加熱が十分に行われたとして、蒸発器20における加熱を停止する(ステップS17)。
或いは、変数として蒸発器内液量を用いる場合、制御部100は、蒸発器20の受熱空間におけるMCHの液量(蒸発器内液量)があらかじめ設定されている閾値以下になったか否かを判定する(ステップS16)。
蒸発器内液量は、供給ポンプp1が稼働している間には、通常、所定値以上に保たれている。蒸発器20は、主流路110のうち、液体のMCHが多量に残存し易い領域である。その後、供給ポンプp1を停止すると、蒸発器20に供給済みの液体のMCHは、蒸発器20によって加熱されて気化し、受熱空間における液量は次第に減少していくことになる。
そのため、制御部100に、蒸発器20の受熱空間に液体が存在していないことを示すための液位に相当する所定閾値をあらかじめ設定しておき、液面計L1の出力に基いて判定を行うことによって、蒸発器20における加熱の終了時期を適切な時期に制御することができる。蒸発器内液量に基くと、蒸発器20に残存しているMCHの略全部が蒸発した時期を精密に推定できる点で有利である。
制御部100は、蒸発器20の受熱空間におけるMCHの液量が閾値以下になっていないと(ステップS16;NO)、蒸発器20における加熱を続ける。そして、制御部100は、加熱停止指示が有るか否かの判定を継続する(ステップS16)。
その一方で、制御部100は、蒸発器20の受熱空間におけるMCHの液量が閾値以下になっていると(ステップS16;YES)、残存しているMCHの加熱が十分に行われたとして、蒸発器20における加熱を停止する(ステップS17)。
そして、脱水素システム1の制御部100は、供給ポンプp1、蒸発器20、反応器30と共に、ブロワp2も停止した状態として、脱水素システム1の運転停止の処理を終了する。蒸発器20、反応器30、主流路110等は、自然放冷により平温に戻り、脱水素システム1は、運転を休止した状態となる。
以上の実施形態に係る脱水素システム及び脱水素システムの運転停止方法によると、システム停止時に、主流路開閉弁V1によって主流路110を閉鎖することができ、脱水素システムの運転を休止しているときに、反応器30を供給済みの有機ハイドライドから隔離することができる。そして、蒸発器20の稼働を続けて蒸発器20の受熱空間に残存している有機ハイドライドを高温且つ高圧にすることで、蒸発器20の内圧が高められ、主流路110に残存している有機ハイドライドを、排出流路120を通じて排除することができる。そのため、システム停止してから再起動を行うまでの運転を休止している間に、主流路110に残存している有機ハイドライドが反応器30に流入するのを防止することができる。
その結果、有機ハイドライドに起因するコーキングによる触媒の劣化が抑制され、触媒の耐用寿命や反応効率等が長期にわたって維持される。すなわち、脱水素システムを、触媒の劣化を抑制して長期にわたって稼働させることが可能となる。この脱水素システム及び脱水素システムの運転停止方法は、脱水素反応の温度が300℃以上400℃以下の高温域に設定され、触媒のコーキングが進行し易い場合に特に有効である。
また、前記の実施形態に係る脱水素システム及び脱水素システムの運転停止方法によると、脱水素システムを再起動するときに、主流路110に残存していた有機ハイドライドが、供給ポンプp1によって新たに供給した有機ハイドライドに同伴して反応器30に導入されることが無くなる。そのため、設計上の供給量を超える過剰な有機ハイドライドが反応器30に供給されるのを防止することができる。すなわち、システムの停止と再起動を断続的に繰り返したとしても、有機ハイドライドに起因するコーキングによる触媒の劣化が最小限に抑制される。
さらに、前記の実施形態に係る脱水素システム及び脱水素システムの運転停止方法によると、主流路110に残存している有機ハイドライドは、蒸発器20の内圧が高められることによって原料タンク10に排出される。そのため、主流路110に残存している有機ハイドライドを回収して原料として再利用することが可能であり、投入量に対するキャリアの使用効率を向上させることができる。
また、前記の脱水素システムは、排出流路120が、供給ポンプp1と蒸発器20の入口との間の主流路110から分岐している。そのため、特に、液体の有機ハイドライドの残存量が多くなる傾向がある蒸発器20よりも上流側にかけて、残存している有機ハイドライドの効果的な排出を行うことが可能となっている。つまり、供給ポンプp1によって主流路110に供給された後、反応器30に到達すること無く主流路110に残留しているMCH等を、遺漏少なく主流路110から排除することができる。
また、前記の脱水素システムにおいては、種々の計測器に基いて蒸発器20における加熱の終了時期を制御することができる。そのため、蒸発器の加熱熱量を削減することが可能であるし、システムの停止の処理時間を最小限に短縮することができる。
[変形例]
なお、本発明に係る脱水素システム及び脱水素システムの運転停止方法には、前記の実施形態のほか種々の変形例が含まれる。具体的には、前記の実施形態に係る脱水素システム及び脱水素システムの運転停止方法の一部の構成に、その他の構成を追加、置換等したり、一部の構成を削除したりすることが可能である。
例えば、前記の実施形態に係る脱水素システムにおいては、排出流路120が、供給ポンプp1と蒸発器20の入口との間の主流路110から分岐している。しかしながら、排出流路120は、主流路110に連通した適宜の位置に配置してよい。例えば、排出流路120を、蒸発器20の出口と主流路開閉弁V1との間の主流路110から分岐させてもよい。
また、前記の実施形態に係る脱水素システムにおいては、反応器30と気液分離器40とが別体に設けられている。しかしながら、反応器と気液分離器とを一体に設けることもできる。具体的には、内部空間が水素分離膜によって隔てられた反応器において、脱水素反応と生成した水素の気液分離とを連続的に行うことが可能である。
また、前記の実施形態に係る脱水素システムにおいては、反応器30の前段に蒸発器20のみが備えられている。しかしながら、蒸発器20と反応器30との間には、過熱器(スーパーヒータ)を備えることもできる。蒸発器20で気化した有機ハイドライドを過熱器によって再加熱することで、転化率や反応速度を向上させたり、気化後に凝結した微量の有機ハイドライドを再蒸発させたりすることが可能である。過熱器が備えられる場合、主流路開閉弁V1は、蒸発器20と過熱器との間に設置してもよいし、過熱器と反応器30との間に設置してもよい。蒸発器20と過熱器との間であれば、蒸発器20の受熱空間に残存しているMCHを加熱した場合に、加圧された圧力を維持させ易い。一方、過熱器と反応器30との間であれば、主流路110に残留しているMCH等を遺漏少なく排除することができる。
また、前記の実施形態に係る脱水素システムにおいては、気液分離器40において脱水素反応の生成物の冷却が行われるものとされている。しかしながら、脱水素反応の生成物の冷却は、反応器30と気液分離器40との間の区間に設置される熱交換器において行ってもよい。この熱交換器においては、脱水素反応の生成物による放熱を、原料の有機ハイドライドの蒸発や過熱に用いることも可能である。気液分離器40は、単段及び多段のいずれの構成としてもよい。
また、前記の実施形態に係る脱水素システムにおいては、気液分離器40の後段に水素タンク50が備えられている。しかしながら、気液分離器40と水素タンク50との間には、単一器又は複数器の水素精製装置を備えることもできる。
また、前記の実施形態に係る脱水素システムにおいては、排出流路開閉弁V2よりも原料タンク10の側の排出流路120に凝縮器80が備えられている。しかしながら、凝縮器は、排出流路開閉弁V2よりも主流路110側に配置してもよい。また、凝縮器80に代えて、放熱フィンを備えることもできる。放熱フィンは、例えば、排出流路120を通流する有機ハイドライド等が常温に冷却されるように排出流路120を形成する配管等に設ければよい。
また、前記の実施形態に係る脱水素システムにおいては、各種の計測器を所定位置に設置することができるとされている。しかしながら、各計測器の配置や計測対象は、同等の位置における同一の物理量を演算やモデル式等に基いて把握し得る限り、適宜の配置や適宜の計測対象で代替してもよい。例えば、熱媒上流側温度センサT3や熱媒下流側温度センサT4により計測される熱媒温度については、計測器の厳密な位置に依らず、距離や熱媒流量から推定可能である。また、過去の実績や、モデル試験に基いて把握することも可能である。
また、前記の実施形態に係る脱水素システムの運転停止方法においては、制御部100が、供給ポンプp1の稼働を停止した後に(ステップS14)、主流路開閉弁V1を閉じる共に排出流路開閉弁V2を開くものとされている(ステップS15)。しかしながら、これらの処理は併せて実行されてもよい。
また、前記の実施形態に係る脱水素システムの運転停止方法においては、制御部100が、加熱停止指示が有るか否かを判定するにあたって、蒸発器出口温度変化率、熱媒入出温度差、蒸発器入口温度、又は、蒸発器内液量を変数として参照するものとされている(ステップS16)。しかしながら、精密な判定を行う観点から、これらの変数のうちの複数を参照し、複数条件が満たされたときに加熱停止指示が有ったと判定するように構成してもよい。
1 脱水素システム
10 原料タンク(貯留部)
20 蒸発器(蒸発部)
30 反応器(反応部)
40 気液分離器(分離部)
50 水素タンク
60 液体タンク
80 凝縮器(凝縮手段)
100 制御装置(制御部)
110 主流路
120 排出流路
E1 液体検知器(液体検知手段)
L1 液面計
p1 供給ポンプ
p2 ブロワ
T1 蒸発器入口温度センサ(入口温度計測手段)
T2 蒸発器出口温度センサ(出口温度計測手段)
T3 熱媒上流側温度センサ(熱媒上流側温度計測手段)
T4 熱媒下流側温度センサ(熱媒下流側温度計測手段)
V1 主流路開閉弁(第1開閉弁)
V2 排出流路開閉弁(第2開閉弁)

Claims (9)

  1. 有機ハイドライドを貯留する貯留部と、
    前記貯留部から供給される有機ハイドライドを気化させる蒸発部と、
    前記有機ハイドライドの脱水素反応を触媒する脱水素触媒を保持する反応部と、
    前記脱水素反応によって生成した水素と前記有機ハイドライドの脱水素化物とを分離する分離部と、
    前記貯留部、前記蒸発部、前記反応部及び前記分離部をこの順に接続している主流路と、
    前記蒸発部と前記反応部との間の前記主流路を開閉自在に仕切る第1開閉弁と、
    前記第1開閉弁よりも上流側の前記主流路から分岐して前記貯留部に接続する排出流路とを備えることを特徴とする脱水素システム。
  2. 前記貯留部と前記蒸発部との間の前記主流路に設置され、前記有機ハイドライドを前記蒸発部に供給する供給ポンプをさらに備え、
    前記排出流路が、前記供給ポンプと前記蒸発部の入口との間の前記主流路から分岐していることを特徴とする請求項1に記載の脱水素システム。
  3. 前記排出流路を開閉自在に仕切る第2開閉弁と、
    前記蒸発部及び前記供給ポンプの稼働と前記第1開閉弁及び前記第2開閉弁の開閉とを制御する制御部とをさらに備え、
    前記制御部は、システム停止時に、前記供給ポンプの稼働を停止し、前記第1開閉弁を閉じると共に前記第2開閉弁を開いた後に前記蒸発部における加熱を継続して、前記第1開閉弁よりも上流側の前記主流路に滞留している前記有機ハイドライドを加圧し、前記主流路に残留している前記有機ハイドライドを加圧された前記有機ハイドライドと共に前記貯留部に排出させることを特徴とする請求項2に記載の脱水素システム。
  4. 前記蒸発部における前記有機ハイドライドの出口温度を計測する出口温度計測手段をさらに備え、
    前記制御部は、前記蒸発部における加熱を開始した後、前記出口温度の上昇の時間変化率があらかじめ設定されている閾値以上になったときに前記蒸発部における加熱を停止させることを特徴とする請求項3に記載の脱水素システム。
  5. 前記蒸発部は、熱交換型の加熱装置であって、前記蒸発部に流入する熱媒温度を把握できる熱媒上流側温度計測手段と、前記蒸発部から流出する熱媒温度を把握できる熱媒下流側温度計測手段と、をさらに備え、
    前記制御部は、前記蒸発部における加熱を開始した後、前記熱媒上流側温度と前記熱媒下流側温度との温度差があらかじめ設定されている閾値以下になったときに前記蒸発部における加熱を停止させることを特徴とする請求項3に記載の脱水素システム。
  6. 前記蒸発部における前記有機ハイドライドの入口温度を計測する入口温度計測手段をさらに備え、
    前記制御部は、前記蒸発部における加熱を開始した後、前記入口温度が前記有機ハイドライドの沸点以上になったときに前記蒸発部における加熱を停止させることを特徴とする請求項3に記載の脱水素システム。
  7. 前記蒸発部における前記有機ハイドライドの液量を検出する液面計をさらに備え、
    前記制御部は、前記蒸発部における加熱を開始した後、前記液面計により計測される液位があらかじめ設定されている閾値以下になったときに前記蒸発部における加熱を停止させることを特徴とする請求項3に記載の脱水素システム。
  8. 前記排出流路に排出された前記有機ハイドライドを凝縮させる凝縮手段をさらに備えることを特徴とする請求項1から請求項7のいずれか一項に記載の脱水素システム。
  9. 有機ハイドライドを貯留する貯留部と、
    前記貯留部から供給される有機ハイドライドを気化させる蒸発部と、
    前記有機ハイドライドの脱水素反応を触媒する脱水素触媒を保持する反応部と、
    前記脱水素反応によって生成した水素と前記有機ハイドライドの脱水素化物とを分離する分離部と、
    前記貯留部、前記蒸発部、前記反応部及び前記分離部をこの順に接続している主流路とを備える脱水素システムの運転停止方法であって、
    システム停止時に、
    前記蒸発部への前記有機ハイドライドの供給を停止すると共に、
    前記蒸発部と前記反応部との間の前記主流路を閉鎖することで、
    閉鎖されている前記主流路の上流側に滞留している前記有機ハイドライドを前記蒸発部における加熱によって加圧して、前記主流路に残留している前記有機ハイドライドを加圧された前記有機ハイドライドと共に前記貯留部に排出させることを特徴とする脱水素システムの運転停止方法。
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