以下に、本発明における不凍結形空気弁の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。
図1においては、本発明の不凍結形空気弁の実施形態を示す縦断面図、図2は不凍結形空気弁の分離斜視図を示している。
本発明の不凍結形空気弁(以下、空気弁本体1という)は、主に水道配管からなる外部配管2にフランジ部材3を介して、ガスケット4によりシール状態で接続され、特に、寒冷地における添架、地下埋設、水管橋などの凍結の可能性がある水道配管2での使用に適している。空気弁本体1は、弁箱部10、スリーブ部11、カバー部12を有しており、弁箱部10内には、遊動弁体13とフロート弁体14とが収容されたスリーブ部11が上下動可能に装着され、これらの動作によって水道本管2との流路が遮断可能に設けられている。スリーブ部11には、後述するふた15が設けられる。
弁箱部10は、少なくとも円筒状の弁箱20、環状のフランジ21で構成される。このうち、弁箱20は、例えばステンレス等の適宜の鋼管で所定長さに形成され、上部の外周側がフランジ21の内周側にネジ込まれて一体に固定される。弁箱20のネジ込み部位の下部外周には、突起状の環状係止部22が形成され、この環状係止部22に後述する被覆板23が係止されながら取付けられる。
環状係止部22の下方には、長穴状の弁箱側連通部24が複数形成され、本実施形態では、図3(a)に示すように4つの弁箱側連通部24が設けられる。図3(b)に示すように、スリーブ部11に対して弁箱部10の取付け状態が異なる場合であっても、各連通部24に対して後述するスリーブ部11に形成された丸穴状のスリーブ側連通部25が複数対向するように同じ高さに設けられ、弁箱20の外側とスリーブ部11の内側とが確実に連通するようになっている。弁箱側連通部24は、水道本管2と弁箱20との間に浸入する空気を滞留なく排出可能にするために、フランジ21の直下に配置されていることが望ましい。
図3(c)に示すように、弁箱側連通部24の周囲には、幅広の凹部26が、テーパ面により例えば0.5mm程度の深さで環状に形成されている。弁箱側連通部24がこのような断面形状に設けられていることにより、後述するスリーブ部11のスリーブ30の外周に装着されたOリング31、32のうち、Oリング31が弁箱20内周に摺接したときの損傷が防止される。
図1において、弁箱20の下端部内径には、内周よりもやや拡径した拡径シール溝33が設けられ、この拡径シール溝33の内周側が、スリーブ部11の下部付近外周に装着された後述するOリング61とのシール面になる。
弁箱部10のフランジ21は、例えばダクタイル鋳鉄により環状に形成され、その外面全体にエポキシ樹脂等による粉体塗装が施されている。フランジ21の内径側は肉厚に形成され、この内径部分には底面側から六角穴付き全ねじボルトであるボルト部材35がネジ込みにより対角の位置に取付けられ、このボルト部材35の先端側が弁箱部10の上部に立設される。
フランジ21の底面側には、螺着部分から拡径した凹状収容部36が形成され、この凹状収容部36にボルト部材35の頭部35aが収容される。このように、ボルト頭部35aが凹状収容部36に係止されていることでボルト部材35のフランジ21に対する上方への移動が阻止され、その先端側が所定高さに設定される。図示しないが、ボルト部材は、緩み止めが設けられた植え込みボルトであってもよい。
フランジ21の内径部分の上面は、後述するスリーブ部11に設けられるフランジ部40の底面が当接可能にフラット状に設けられる。さらに、フランジ21の内径部分の下面もフラット状に設けられ、このフランジ部下面側に、例えば、ステンレス材からなる被覆板23が設けられる。フランジ21下面側の内径縁部には、環状テーパ溝41が形成され、フランジ21の外径側には、ボルト挿通穴42が形成されている。
被覆板23は、フランジ21の内径側下面を被覆し、ガスケット4によるフランジ部材3とのシール領域を防食可能に設けられる。被覆板23を設けた場合、フランジ21全体をダクタイル等による鋳鉄で製作でき、このときにはフランジ全体をステンレス製とする場合に比較して、コストを抑えつつ、被覆板23により防食性も確保できる。
被覆板23の外径寸法は、水道本管2側のフランジ部材3がGF形である場合、そのガスケット座の外径と略同径に設定される。この場合、GF形のガスケットは、RF形フランジのガスケット座の外径と同寸法であるためにRF形にも対応可能となる。被覆板23は、前述したように環状係止部22に内径側が係止されて弁箱20外周に固定される。
被覆板23と前記フランジ21の環状テーパ溝41との間にはOリング43が装着され、このOリング43により弁箱20、フランジ21、被覆板23がシールされる。Oリング43は、被覆板23で下方から保持されることで、環状テーパ溝41からの脱落が防がれる。
上記被覆板23のフランジ21への装着により、この被覆板23でボルト頭部35aも被覆される。これによって、後述するナット部材50の回動に伴ってボルト部材が供回りしたとしてもその脱落が防止される。
図1、図2において、スリーブ部11は、少なくとも、スリーブ30、フランジ部40、ナット部材50、底ふた51、ふた15により構成され、このスリーブ部11に、遊動弁体13、フロート弁体14が内蔵される。
スリーブ30は、ステンレス等の一般的な鋼管等により略円筒状に形成され、上部外周に環状の鍔部52、上部内周にはめねじ部53が形成され、鍔部52の下方には、丸穴状のスリーブ側連通部25が形成され、このスリーブ側連通部25が、空気弁本体1の作動時に前述した弁箱側連通部24と連通可能になっている。
図3(c)に示すように、スリーブ側連通部25の少なくとも外周側の周囲には、弁箱側連通部24の凹部26と同様に、幅広の凹状部56が、テーパ面により例えば0.5mm程度の深さで環状に形成されている。これら凹状部56、凹部26によって弁箱20内周との間に所定の隙間Sが設けられ、この隙間Sによりスリーブ30外周と弁箱20内周とが接触することなくこれらの間の流路面積が確保される。これによって、スリーブ側連通部25と弁箱側連通部24とを対向させることなく通気状態を確保できる。凹状部56は、スリーブ30の外周に設けていることで、切削加工等で容易に形成できる。
この場合、前記長穴状の弁箱側連通部24は、丸穴状のスリーブ側連通部25が複数個対向する長さに設けられているため、図3(a)、図3(b)に示すように、仮に、スリーブ側連通部25と弁箱側連通部24との位置関係が変わった場合にも、これら連通部25、24同士の連通状態を維持して高い通気量を確保して何れの場合にも高効率で通気可能となる。このため、これら連通部24、25同士を対向させるために、スリーブ30をフランジ21に対して所定の向きに回転調整しながら溶接等で固定する必要もない。例えば、弁箱20とスリーブ30との間隙が0.2mmである場合、凹部26、凹状部56を設けた隙間Sの間隔を約1.2mm程度まで拡げることができる。
スリーブ30のスリーブ側連通部25の上方外周には、弁箱20の内周に密着シールするOリング57が装着され、このOリング57により弁箱側連通部24から流入する流体が、通常時、すなわち空気弁本体1の作動時に弁箱20とスリーブ30との間から弁箱20の上部側に浸水することが防止される。スリーブ30の外周には、Oリング57を含めた適宜数のOリングが装着される。
一方、連通部の下方側には、前記Oリング31、32が装着され、これらOリング31、32は、図7において、スリーブ30が弁箱20に対して上昇したときに、弁箱側連通部24を挟むようにその上部、下部位置に配設される。これによって、この連通部24から流入する流体が、それぞれのシール位置における弁箱20とスリーブ30との間への浸入が防止される。
図6、図7に示すように、スリーブ下部の円周方向には、例えば穴径φ6mm程度の小径の連通孔60が、充水用として少なくとも一箇所に形成され、この連通孔により充水されたときに、フロート弁体14が浮き上がるようになっている。連通孔60の下部にはOリング61、バックアップリング62が装着され、図7における連通孔60の閉塞等には、Oリング61が拡径シール溝33にシールし、連通孔60が外部から塞がれた状態となる。
スリーブ30の下端側には底ふた51が螺合により固定され、この底ふた51によりスリーブ30の下端側が塞がれる。底ふた51は、スリーブ30の外径と略同程度の外径に設けられ、その上端側が薄肉状に形成されている。底ふた51をスリーブ30に一体化したときには、このスリーブ30との間に装着溝63が設けられ、この装着溝63に、Oリング61、バックアップリング62が装着される。バックアップリング62は、Oリング61の手前に設けられることで、底ふた51のネジ込み時にOリング61が保護され、このOリング61の損傷やねじれ等が防がれる。
底ふた51の上部外径側の拡径部分は、前記弁箱20下端との当接面となり、これらの当接により、スリーブ部11の上昇位置が規制され、すなわち、リフトストッパ機能が発揮される。この場合、これら当接面部位の面粗度を細かく設定してメタルシール面とし、図7のスリーブの上昇時に、Oリング61とによる二重シール機能を発揮させるようにしてもよい。
図2、図6において、スリーブ部11のフランジ部40は、下フランジ部40aと上フランジ部40bとにより構成されてスリーブ30の上端側に設けられる。
下フランジ部40aは、その中央にスリーブ装着用の挿入孔70が設けられ、この挿入孔70の上面縁部には、スリーブ30の鍔部52が係合可能な係合段部71が形成され、これらの係合により下フランジ部40aが上昇すると共に、スリーブ30も上昇可能となる。下フランジ部40aは、略正方形の外形からなり、その対角位置には挿入孔70を挟むように2つの貫通穴部72、72が形成され、この貫通穴部72に挿入されるボルト部材35を介してナット部材50が配設可能に設けられる。下フランジ部40aはスリーブ30と別体に設けられているが、これらは一体に形成されていてもよい。
一方、上フランジ部40bは、中央部にふた15装着用の挿入孔部73が設けられ、この挿入孔部73の下部には、スリーブ30の鍔部52上面が当接可能な縮径部74が形成される。これにより鍔部52が縮径部74に係止することで、上フランジ部40bの下降と共にスリーブ30も下降可能となる。上フランジ部40bは、下フランジ部40aと略同形状の略正方形に設けられ、その対角位置には挿入孔部73を挟むように貫通穴部72と連通する挿通孔75が設けられ、この挿通孔75の下部には拡径状の段状部76が形成されている。この挿通孔75の内部にナット部材50が装着可能に設けられている。
図2、図8に示すように、上フランジ部40bにおいて、挿入孔部73との直交する位置には六角穴付きボルトからなる固着ボルト77を挿入可能な、上部が拡径した2つの係合孔78が対向して設けられている。一方、前記下フランジ部40aの係合孔78が対応する位置には、2つの雌螺子部79が対向して設けられる。下フランジ部40a、上フランジ部40bは、ナット部材50を内蔵しながら係合孔78、雌螺子部79を介して上フランジ部40bの上方から固着ボルト77で固着されて積層状態で一体に固定される。
固着ボルト77のネジ込み完了時には、固着ボルトの頭部77aが係合孔78の拡径部分に収納される。そのため、この埋設状態で、図5に示すように上フランジ部40bを上面側から薄膜材料で形成されたシール材である被覆材80で少なくとも係合孔78を覆うことにより、空気弁本体1の補修時等に固着ボルト77を誤って回転することを防止できる。被覆材80には、補修時のナット部材50の回転方向の矢印などからなる表示部81を設けるとよい。
図1、図2において、ナット部材50は、上フランジ部40bの挿通孔75に装着可能な外径の略円筒状に形成され、その中央部にはめねじ90が形成され、このめねじ90がボルト部材35のおねじ91に螺合される。ナット部材50の底部には、上フランジ部40bの段状部76に係合する環状鍔部92が設けられている。ナット部材50は、回動自在に段状部76に係合可能な構造であればよく、例えば、環状鍔部92の代わりに、図示しないC形止め輪や割りリングを装着してもよい。
ナット部材50の上部、より詳しくは、このナット部材50をフランジ部40内に収容したときに上フランジ部40bから突出する部分には、例えば、スパナやレンチ等の一般的に用いられる図示しない工具の回動操作用の係止面93が設けられる。この係止面93は、例えば、断面六角形状に形成される。
ナット部材50は、上下に分割された前記フランジ部40の間に係合状態で装着され、これにより、フランジ部40に位置規制状態で、かつ回動可能に装着されて、ボルト部材35に螺合して上下動可能に設けられている。その際、環状鍔部92が上フランジ部40bの段状部76に係合され、底面側が下フランジ部40aの上面側に当接されることで、スリーブ部11がフランジ部40を介してナット部材50と共に昇降動可能に設けられる。
このようにして、スリーブ部11が、少なくとも2本のボルト部材50への螺合により弁箱部10に対して非回転状態で強制的に上昇或は下降移動され、図6或は図7に示すように、スリーブ側連通部25、弁箱側連通部24が相互に閉塞又は開放されて、水道本管2との流路が開閉可能に設けられている。
この場合、前記したボルト部材35の長さは、図7における連通部24、25同士の閉塞状態で、ナット部材50の上面と当該ボルト部材35のねじ先35bとが略同じ高さになるように設定される。ナット部材50は、図1の空気弁本体1の開放状態から、閉塞状態である上面側がボルト部材ねじ先35bと略同じ高さになるまでの移動距離Dにより移動可能となる。
図1、図2において、ふた15は、中央に大空気孔100を有する略環状に形成され、スリーブ部11の上部に設けられる。ふた15の下部外周にはおねじ部101が形成され、このおねじ部101がスリーブ30の上部内周のめねじ部53にネジ込まれることで、ふた15がスリーブ30の内周側に着脱自在に装着される。ふた15とスリーブ部11とこのスリーブ部11の下部に設けられた前述した底ふた51との間には、遊動弁体13とフロート弁体14とが移動可能な弁室102が設けられ、ふた15の取外し時には、そのネジ込みを緩めるに従って弁室102内の水圧を徐々に抜くことが可能になっている。
ふた15のおねじ部101の上部外周にはOリング103が設けられ、ふた15のスリーブ30へのネジ込み時には、Oリング103がスリーブ30の内周に密着シール可能になっている。Oリング103の上部には、拡径状の当接段部104が形成され、ふた15のネジ込み完了後には、この当接段部104がスリーブ30の上端に当接することによりふた15が位置保持される。
図6に示すように、前記Oリング103は、ふた15をやや緩めた状態で、スリーブ部11とのシール状態が解除されるように、当接段部104の上端側から距離Hの位置に配置される。これにより、Oリング103は、ふた15の当接段部104がスリーブ30の上端側に当接した状態、すなわち、ふた15が完全にネジ込まれた状態において、スリーブ30の上端側からやや下方の位置でこのスリーブ30内周にシールする。そのため、空気弁本体1の補修時等においてふた15を取外す際には、Oリング103によるシール状態が距離Hの間維持される。
ふた15の底面側には、遊動弁体13が当接して大空気孔100を塞ぐ弁座面105が形成され、この弁座面105に、Oリング106が装着されている。弁座面105は、前述のふた15のスリーブ30へのねじ込み構造によって自動的に調心されることから、この調心された弁座面105により遊動弁体13とのシール性が向上する。
このように、弁座面側のOリング106が、前記ふた上部外周に装着されるOリング103よりも下方に位置した、いわゆる段違い状に配置されていることから、弁座面105の高さ位置がふた15の装着面よりも下がることで外気の影響を受けにくくなって、凍結防止性が向上する。Oリング106は、段違い状に配置されていれば凍結防止性を発揮できることから、この向上を目的とする場合には必ずしもふた15を螺合により固定する必要はなく、例えば、嵌め込みによりふた15をスリーブ30に装着するようにしてもよい。
さらに、後述する遊動弁体13の小空気孔13aの下部に設けられる小空気孔弁座13bが、弁箱部10のフランジ21底面側よりも下部に位置しているため、この小空気孔弁座13bの凍結防止性も向上する。
遊動弁体13がOリング106に当接してシール可能な構造を確保しつつ、ふた15の装着時にこのふた15とスリーブ30とをOリング103で周面シールする構造であることから、Oリング103によりこれらの螺合部分からの漏れを防いでいる。ふた15を取外す場合、Oリング103によるシール状態が徐々に上にあがり、内圧が減圧される。Oリング103がスリーブ30の上端面に達した時にシール状態が解除される。
図1に示すように、本実施形態では、スリーブ30へのふた15のネジ込み完了後には、このふた15の上面側が上フランジ部40bの上面側と略同一平面上に配置するように設けられる。これにより、ふた15のネジ込みが完了したことを外部から視認できる。
ふた15は、例えばネジ込み状態から約3.5回転することでスリーブ30から取外しできるように設けられる。この場合、少なくともふた15を緩める際の最初の1回転、すなわち、おねじ部101とめねじ部53との螺合の1リードの間は、Oリング103によるシール状態が維持されることが望ましい。
図5、図8に示すように、ふた15の上部には十文字状の係合溝110が設けられ、この係合溝110にふた15着脱用工具を沿わせて装着可能に設けられる。
図7において、係合溝110は、この係合溝110に装着した工具、たとえば長尺の棒状の工具を回転させたときに、この工具が空気弁本体1の上部に設けた規制部50に当接する位置に配置される。本実施形態における規制部はナット部材50であり、このナット部材50に、係合溝110への装着状態の工具が回転により当接するように設けられているが、空気弁本体1の上部に突出し、係合溝110に装着したふた着脱用工具が当接係止可能であれば、その態様にこだわることはない。
図8に示すように、遊動弁体13、フロート弁体14は、それぞれ樹脂製または中空のステンレス製などで略円柱状に形成され、これらは積み重ねられた状態でスリーブ30の内部に着脱可能に装着される。
図6、図7において、遊動弁体13の中央には小空気孔13aが設けられ、この小空気孔13aの下部内周にはフロート弁体14の上面側がシールする小空気孔弁座13bが設けられ、この小空気孔弁座13bには固定部材13cが装着される。スリーブ30へのネジ込みにより、ふた15の底面側がスリーブ30に内挿されていることから、大空気孔100の底面側の弁座面105についても、スリーブ30の内方位置、すなわち水道本管2側に下がった位置に設けられる。
これにより、弁座面105に当接する遊動弁体13も水道本管2側に下がり、これに伴って遊動弁体13の小空気孔弁座13bも水道本管2側に下がった位置になる。本実施形態においては、遊動弁体13が弁座面105に当接したときの小空気孔弁座13bの位置が、弁箱部10のフランジ21の下面よりも水道本管2側になるように設けられる。そして、空気弁本体1が水道本管2に接続されたときに、小空気孔弁座13bが水道本管2の内部に位置することで、この小空気孔弁座13b弁座面の凍結を効果的に防止できる。
一方、フロート弁体14は、遊動弁体13と略同じ外径で、遊動弁体13よりも長尺状に形成される。これらのフロート弁体14、遊動弁体13は、弁箱20内の水位に応じて浮力を受け、スリーブ30に案内されてスムーズに上下移動可能となり、この動作により水道水に含まれる空気が大空気孔100を介して空気弁本体1の外部に排出可能に設けられる。
図1、図2において、カバー部12は、少なくともカバー本体120、保温材121で構成され、弁箱部10、スリーブ部11を上方から被覆可能に設けられる。
カバー本体120は、例えばステンレス製の板材を材料として断面略コ字形の逆椀状に加工され、このカバー本体120の内面側に保温材121が装着される。カバー部12には、二ヶ所にボルト穴122が穿孔され、このボルト穴122の下方からナット部材50に螺合されたボルト部材35のおねじ91が挿入され、カバー本体120の上部より突出したこのおねじ91の先端側には、袋ナット123が螺合され、この袋ナット123を締付けることで上方から覆うように固定される。
この場合、カバー本体120の裏面側とナット部材50との間には、ワッシャ状のスペーサ124が介在される。袋ナット123の締付け時には、ボルト穴122の周辺がスペーサ124により裏面側から支えられてカバー本体120の変形が防止される。さらに、スペーサ124を樹脂製とすれば、コストを抑えつつボルト穴122周辺の強度を確保できる。スペーサ124は、予め保温材121に固定されていたり、或は保温材121に一体成形されていてもよく、本実施形態では、保温材121にインサート成形で固定され、これにより、スペーサ124の脱落や紛失が防止されている。
保温材121は、カバー本体120の内面に当接するように収納され、この保温材121の内周面側には排気路125が設けられ、ふた15の大空気孔100から流れ出る空気が、この排気路125を介して外部に排出される。保温材121には、ナット部材50取付用の図示しない挿通孔や、スペーサ124装着用の装着凹部126が形成されている。
なお、上記実施形態では、ボルト部材35をフランジ21底面側からネジ込みにより取付けているが、ボルト部材を植え込みボルトとし、フランジ21の上面側から螺着してもよい。
また、ボルト部材35に対して、ナット部材50を介してスリーブ11を上昇させることにより連通部24、25同士を閉塞させたときに流路閉とし、ナット部材50を介してスリーブ11を下降させることにより連通部24、25同士を開放させたときに流路開としているが、これらを逆にして、ナット部材50の下降時に連通部24、25同士を閉塞させるようにしてもよい。
弁箱側連通部24を長穴状、スリーブ側連通部25を丸穴状に設けているが、これらは逆であってもよく、弁箱側連通部24に凹部26、スリーブ側連通部25に凹状部56をそれぞれ設けているが、これらのうちの何れか一方を設けるようにしてもよい。
続いて、上述した空気弁本体の組立て手順を説明する。
図1、図2において、先ず、フランジ21の底面側から、ボルト部材35を、頭部35aが凹状収容部36に収容されるまでネジ込む。このネジ込みにより、ねじ先35bが所定の高さに設定されながら、おねじ91がフランジ21上面側より突出した状態となる。フランジ底面側の環状テーパ溝41には、Oリング43を嵌め込んで装着する。
続いて、フランジ21底面側の所定位置に被覆板23を重ねるように配置し、フランジ21底面側から弁箱20をネジ込んでこの弁箱20をフランジ部21に固定し、弁箱部10を構成する。このとき、環状係止部22が被覆板23の底面側に係止することで、弁箱20をフランジ21の所定位置に装着でき、環状係止部22とフランジ21との間に被覆板23を挟み込むことでその脱落を防止している。
一方、下フランジ部40aの上方よりスリーブ30を挿入してその鍔部52を係合段部71に係合させた状態にし、スリーブ30の外周にOリング31、32、57をそれぞれ装着する。続いて、スリーブ30を弁箱20に対して上方から挿入し、スリーブ30の下部にOリング61、バックアップリング62の順序で下から装着し、スリーブ30の下端側に底ふた51をネジ込んで固着する。これにより、スリーブ30と底ふた51との間の装着溝63にOリング61をバックアップリング62で保護した状態で装着できる。
次いで、ボルト部材35に、ナット部材50を下フランジ部40aに当接させる程度までネジ込んだ後に、挿通孔75にナット部材50を挿入しつつ、下フランジ部40aに上フランジ部40bを載置する。この状態で上フランジ部40bの2つの係合孔78から固着ボルト77を下フランジ部40aの雌螺子部79に螺合させる。このとき、2つの固着ボルト77を交互に締め付けて、下フランジ部40a、上フランジ部40bでナット部材50を均等に挟み込むようにしながら、固着ボルト頭部77aが拡径部分に収納されるまで締付ける。
スリーブ30の内部にフロート弁体14、遊動弁体13の順序でこれらを挿入し、挿入孔部73からおねじ部101をめねじ部53にネジ込むようにしてふた15をスリーブ30の所定位置に装着する。
最後に、ナット部材50の上に保温材121とスペーサ124が収納されたカバー部12を弁箱部10の上から装着し、袋ナット123をボルト部材35に螺着してカバー本体120を固定する。以上の手順により、空気弁本体1の組み立てが完了となる。
空気弁本体1を水道本管2に接続する場合、図1に示すように、略水平方向に配管された水道本管2におけるチーズ形状のフランジ部材3の分岐位置に、空気弁本体1が立設状態で装着される。フランジ部材3は、水道本管2への接続部3a、空気弁本体1装着用の筒状部3b、空気弁本体1とのフランジ接続部3cを有し、フランジ接続部3cにボルトナット130で空気弁本体1のフランジ21が固定される。フランジ接続部3cは、GF形(溝付き)の態様に設けられ、その溝部分にシール用ガスケット4が装着され、このガスケット4により空気弁本体1との間がシールされる。この場合、空気弁本体1のフランジ21下面側に被覆板23を設けていることで、ガスケットシール領域の防食性が確保され、ガスケット4との密着性が向上した状態で空気弁本体1を接続できる。
空気弁本体1の接続後には、筒状部3b内にスリーブ部11の下部が挿入された状態となり、このスリーブ部11や弁箱部19が水道本管2よりも高い位置に配置される。これにより、スリーブ側連通部25、弁箱側連通部24や、充水用の連通孔60も水道本管2よりも高い位置に設けられる。
水道本管2への接続後において、空気弁本体1の弁箱20内に水が無い場合には、図1の状態からフロート弁体14、遊動弁体13が降下してふた15の大空気孔100が開放した状態となり、この状態から急速排気や急速吸気の動作がおこなわれる。
急速排気は、水道本管2に充水するときに、管路内の空気を、大空気孔100を介して急速に多量に排気する動作となる。急速排気時には、遊動弁体13、フロート弁体14はともに浮き上がることなくスリーブ30の下方に位置するため、大空気孔100が全開状態になる。これにより、管路内の空気が、空気弁本体1の弁箱側連通部24、スリーブ側連通部25、大空気孔100を介して外部に効率的に排出される。このとき、連通孔60が一箇所かつ小径に設けられていることにより、この連通孔60から流入した空気によって、フロート弁体14、遊動弁体13が上昇することがないため、大空気孔100が閉塞することはない。
急速吸気は、管路内の水を排出するときに、空気弁本体1を介して急速に管路内に多量の吸気する動作であり、遊動弁体13、フロート弁体14が降下した状態でおこなわれる。この場合、大空気孔100が開口し、この大空気孔100、スリーブ側連通部25、弁箱側連通部24を介して効率的に吸気し、管路内の排水が迅速におこなわれる。
これら急速排気、急速吸気により、水道本管2への最初の送水や、水道本管2からの排水などの作業を短時間でおこなうことができる。
空気弁本体1内への充水がおこなわれる際には、主に連通孔60から内部に水が入ることにより、フロート弁体14を下方から押し上げる力が働く。これにより、フロート弁体14がスムーズに上昇し、このフロート弁体14により遊動弁体13も充水時の所定位置まで確実に上昇する。
空気弁本体1内への充水が完了して管路内が満水状態になったときには、フロート弁体14、遊動弁体13が浮力によって上昇した状態となり、遊動弁体13の上面側がふたの弁座面105に密着して大空気孔100を塞ぎ、かつ、フロート弁体14が遊動弁体13の小空気孔13aを塞いだ状態となる。これにより、弁室102から外部への水の流出が防がれる。
この充水時の圧力下(例えば、呼び径25の時は、0.1〜0.75MPa)において、水道本管2内に混入している空気は徐々に空気弁本体1に集まり、弁室102の上部に溜まる。この空気量が一定に達すると、先ずフロート弁体14のみが降下し、遊動弁体13の小空気孔13aが開いた状態となり、空気の排気がおこなわれる。
空気の排出により弁箱20内の空気量が少なくなると、フロート弁体14が水の浮力により上昇して再び小空気孔13aを塞ぐ。以上の動作を繰り返すことにより、空気弁本体1を介して本管内に溜まった空気を自動的に弁外に排出する。
次に、本発明の不凍結形空気弁の上記実施形態における作用を述べる。
空気弁本体1の点検や清掃などの補修作業をおこなう場合には、先ず、図1の状態から袋ナット123を緩め、カバー部12を持ち上げるようにして弁箱部10から取外すようにする。この状態で、図6において、2つのナット部材50の係止面93にスパナ等の工具を係止して緩める方向(ナット部材50が上昇する方向)に少しずつ交互に回転させる。このとき、ナット部材50の環状鍔部92が上フランジ部40bの段状部76、上フランジ部40bと一体の下フランジ部40aの係合段部71がスリーブ30の鍔部52にそれぞれ係合していることで、フランジ部40、スリーブ30も上昇し、スリーブ30が弁箱20に対して上昇して、図7に示すように連通部24、25を相互に閉塞させ、空気弁本体1と水道本管2との流路を遮断状態にできる。
このとき、装着溝63に装着されたOリング61が弁箱の拡径シール溝33内に嵌まり込み、Oリング61によりスリーブ30と弁箱20の下端側とをシールする。これにより、連通孔60を遮断状態として水の浸入を防止できる。
以上の連通部24、25の閉塞、連通孔60の遮断状態、及びフロート弁体14、遊動弁体13が小空気孔13a、大空気孔100を塞いだ状態により、弁室102内に水圧が内封される。
この状態において、ふた15を取外すことにより、内部の遊動弁体13、フロート弁体14を取り外してこれらの部品や内部の補修作業を実施できる。
このように、ナット部材50とボルト部材35との螺合を介してスリーブ部11を上昇させていることにより、水道本管2内の水圧を利用することなく、手動で強制的に流路を遮断できる。この場合、ふた15の上面側に不要な着脱用ボルトやナット等の締付け部品がなく、ナット部材50のみを回転すればよいため作業を簡略化でき、作業工程を誤ることなく容易に流路を開閉できる。
しかも、ナット部材50をフランジ部40に対して位置規制しつつ回動可能に装着していることにより、スリーブ部11がナット部材50とともに回転することがなく、スリーブ部11を非回転状態で弁箱部10に対して上昇できる。このため、スリーブ部11の回転によるOリングの損傷を防止してシール性を確保し、工具の取り回しスペースを小さくすることもできる。
図9において、ふた15を取外す場合、このふた15をスリーブ部11の上部に着脱自在にネジ込んでいることで、図9(a)の状態から図9(b)の状態まで移動幅Tの分だけ緩めて上昇させたときに、この上昇に伴って空気弁本体1の弁室102内の容積を拡張して内封された水圧を減圧できる。このとき、ふた15外周側に装着したOリング103でスリーブ部11との間をシールして漏れの防止状態を保持でき、しかも、ふた15をネジ込んで取付けていることで、このふた15が一度に抜け出すおそれもない。
さらに、ふた15をやや緩めた後にスリーブ部11とのシール位置を解除する位置に、例えば、ふた15を約1.5回転した位置までOリング103を配置していることで、ふた15を約1回転させることでやや緩めて図9(b)の状態まで弁室102の容積を拡張した後に、さらに少しずつふた15を緩めることでOリング103による側面シールを徐々に解除して、ネジ込み部分の隙間、すなわち、おねじ部101とめねじ部53の隙間から、いわゆる「漏れ現象」を利用して弁室102内の水圧を徐々に抜いて、スリーブ30上端側が一度に開口することを防止できる。このようにして、ふた15を約3.5回転することで、弁室102内を徐々に減圧することにより水の噴き出し現象を防止しながらふた15を取外しできるため、安全な補修作業が実施可能となる。
図8において、ふた15の上部に、十文字状の工具装着用の係合溝110を設けていることにより、この係合溝110にスパナ等の工具を縦方向に差し入れてふた15を回転操作できる。このため、ふた15の上部側に余分なボルトやナット等を突出させることなく補修作業を実施でき、部品点数も削減できる。
しかも、係合溝110に装着した工具を回転させたときに、この工具がナット部材50に当接する位置に係合溝110を設けていることにより、工具を略90°回転する度にこの工具が規制部50に当接係止し、それ以上の回転を防いでいる。続いて、工具を係止溝110の縦方向に交差する横方向に差し入れることで、作業者が作業位置を変えることなく同様にふたを90°回転できる。この繰り返しによって専用工具を用いることなくふた15をスリーブ30から着脱でき、このふた15の一度による緩め操作を防止することにより、弁室102からの水の噴き出しを確実に防止する。
以上のように、空気弁本体1の補修時には、この空気弁本体1を水道本管2(フランジ部材3)から取外すことなく、連通部24、25や連通孔60を塞いで、水道本管2から外部への漏れを塞いだ状態で内部部品を取外すことができる。
補修作業後には、上記と逆の手順で空気弁本体1を組立てて、水道本管2との流路を開状態に戻すようにすればよい。流路を開状態にする場合には、2つのナット部材50を工具で締める方向(ナット部材50が下降する方向)に少しずつ交互に回転させる。これによってナット部材50底面が下フランジ部40a上面側に当接してこの下フランジ部40aが下降し、上フランジ部40bの縮径部74が鍔部52を押圧することでスリーブ30が下降する。このようにして、スリーブ部11と弁箱部10との連通部24、25を相互に開放させて流路を開状態に戻すことができる。
図10においては、本発明の不凍結形空気弁の他の実施形態を示している。なお、この実施形態以降において、それ以前の実施形態と同一箇所は同一符号によって表し、その説明を省略する。
この実施形態では、図10(a)に示すように、スリーブ30の連通部25の上方、具体的には、Oリング57よりも上方に弁室102内の残圧抜き用の貫通孔140が設けられる。この場合、補修時等には弁箱20に対してスリーブ30を上昇させ、図10(b)に示すように、貫通孔140が弁箱20の上端付近に達したときに、貫通孔140と弁箱20とのシール状態が解除され、弁室102内の水圧が貫通孔140から排出される。このため、空気弁本体1と水道配管2との流路を、遮断動作に伴って自動的に弁室102内の水圧を抜くことが可能となる。図において、スリーブ30に貫通孔140を形成する場合には、貫通孔140の上方にシール用Oリング141を別途設けることにより、補修時以外での貫通孔140から弁室102内の水圧が抜けることを防止するとよい。
弁箱20の上部内周には、上部に向かって拡径するテーパ面部142が設けられており、このテーパ面部142を介して貫通孔140から水圧が外部に排出される。そのため、貫通孔140が弁箱20の上端に達していないスリーブ30の上昇位置がやや低い状態でも残圧を抜くことができる。テーパ面部142は、空気弁本体1の組立時にスリーブ30を弁箱20に挿入する際に、Oリング141の損傷を防止する機能も有する。
さらに、上記テーパ面部142により、上昇後のスリーブ30を下降させるときのOリング141への摺動抵抗を減少してOリング141の損傷を防止することもできる。
図11〜図13においては、本発明の不凍結形空気弁の更に他の実施形態を示している。この実施形態における空気弁本体150では、スリーブ部11が、底ふた151、スリーブ30、フランジ部40、ナット部材50、ふた15を有し、スリーブ部11の内部には、前記実施形態と同様に、遊動弁体13、フロート弁体14が内蔵される。
図14に示した底ふた151は、略円柱状の基部152と、この基部152の上部に位置する環状突部153、基部152の下部に位置する拡径部154とを有し、スリーブ30の下部開口側に取付けられて被蓋可能に設けられる。
基部152の上面には、所定の幅及び深さにより環状溝160が形成され、この環状溝160との交差方向には、環状溝160と外部とを連通する連通孔161が形成される。環状溝160は、基部152の上面に同心状態に設けられる。
連通孔161は、前述の実施形態の場合と同様に、例えば、穴径φ6mm程度の小径により、底ふた151の下部の少なくとも一箇所に形成され、この連通孔161を介して環状溝160からスリーブ部11内に充水可能となる。連通孔161は、例えば、底ふた151の側面から環状溝160に向けてドリルの穿孔により形成され、ドリルを環状溝160に到達するまで進めることで容易に形成される。図示しないが、基部152には、環状溝160を設けることなく連通孔161を形成してもよく、この場合、基部152の上面、側面のそれぞれからドリルで穿孔して互いに連通させることで容易に形成可能となる。連通孔161は、例えば、放射状に複数個形成してもよく、これにより、フロート弁体14の真下への均等な充水が可能になる。
環状溝160よりも中央側には、適宜の外径、高さにより円錐台162が形成され、この円錐台162には、フロート弁体14の底面中央に形成された円錐台部163が、フロート弁体14の降下時に当接可能に設けられる。前述の連通孔161は、円錐台163よりも下部に位置していることから、降下したフロート弁体14の底面よりも下部に位置することになる。
環状突部153の外周には雄螺子部170が形成され、この雄螺子部170は、スリーブ30の下部内周に形成された雌螺子部171に螺合可能に設けられている。これら雄螺子部170と雌螺子部171とを螺合させることで、底ふた151がスリーブ30の下部に取付けられる。
拡径部154は、基部152よりも拡径した円板状に形成され、この拡径部154の上面154aが、弁箱20の下端部20aと当接可能に設けられる。これらの当接により、前述の実施形態と同様にリフトストッパ機能が発揮され、図13に示すスリーブ部11上昇時の位置が規制可能となる。底ふた151の拡径部154のやや上部にはOリング172が装着され、このOリング172により、底ふた151外周と弁箱20内周との間がシールされる。拡径部154の外周側には、平行二面部173が形成され、この平行二面部173を工具で把持して回転することにより、底ふた151を容易に取付け可能となる。
この場合、前述したように、底ふた151に連通孔161が形成され、この連通孔161と拡径部154との間にOリング172が装着されている構造であることから、リフトストッパ時にはOリング172が拡径部154に当たることで、脱落方向に移動するおそれがない。このため、バックアップリングを用いることなくOリング172の損傷やねじれを防止でき、部品点数を削減しながら単純化した取付構造でOリング172を装着することも可能になる。
図13の流路の閉塞状態では、外部からの水は、底ふた151の拡径部154と弁箱部10下端との間から浸入しようとする。この場合、底ふた151と弁箱部10との間に設けたOリング172により1箇所で水を確実にシールできるため、止水性能を向上することが可能になる。
なお、図1の構造の空気弁本体1の場合には、図7の流路の閉塞状態において、外部からの水が底ふた51と弁箱部10との隙間から水が浸入しようとしたときに、この水は、底ふた51と弁箱部10との間と、底ふた51とバックアップリング62との間に進むことが考えられる。この場合、底ふた51と弁箱部10との間は、Oリング61により塞がれた状態になるが、底ふた51とバックアップリング62との間には水が進み、この水が雄螺子部170と雌螺子部171との間から浸入するおそれがある。このため、これら雄螺子部170と雌螺子部171との間に、シール剤などの止水対策を必要とする場合もある。
図11に示した空気弁本体150に対して、初期充水がおこなわれる際には、主に、底ふた151の連通孔161から環状溝160に水が入り、この環状溝160から水の力がフロート弁体14に加わる。その際、前述したように、連通孔161が、降下したフロート弁体14の底面よりも下部に位置していることにより、フロート弁体14の底面に向けて真下方向から水圧が加わって、このフロート弁体14、及び遊動弁体13を上方に押し上げる力が働くようになっている。
このことから、初期充水時に勢いの強い水が連通孔161から入った場合にも、この水が降下状態のフロート弁体14に対して下面から当たってスリーブ30内面に押し付けることがなく、フロート弁体14の浮力を流水が阻害することがない。さらに、フロート弁体14の傾きが防がれることで、フロート弁体14とスリーブ30との間に余分な摩擦力が発生することもない。これらにより、充水時のフロート弁体14、遊動弁体13の動作が妨げられることがなく、図12に示すように、フロート弁体14、遊動弁体13をスムーズに上昇移動させながら充水をおこなうことができる。
しかも、基部152上面に同芯状態で環状溝160を形成しているため、この環状溝160を介して図11に示す降下状態のフロート弁体14の底面に均等に水圧を加えることができ、このフロート弁体14、遊動弁体13に傾く方向の力が加わることがないことで、図12の状態までその上昇動作を安定できる。
さらには、図11の降下時のフロート弁体14は、円錐台部163が底ふた151の円錐台162に当接した状態になっているため、フロート弁体14と底ふた151との接触面積が小さく抑えられる。これによって、フロート弁体14が上昇しようとするときに、底面側が底ふた151に付着するおそれがなく、フロート弁体14の底部外周の水を受ける面積が広くなることで浮きやすくなり、充水機能に寄与する。
空気弁本体150に対して点検や清掃などの補修作業を実施する場合には、前述の実施形態と同様にして、先ず、カバー部12を弁箱部10から取外すようにする。
次に、ナット部材50を工具で上昇方向に回転させてフランジ部40、スリーブ30を弁箱20に対して上昇させる。スリーブ30の上昇時には、拡径部154の上面154aが弁箱20の下端部20aに当接してリフトストッパ機能が発揮され、スリーブ部11が弁箱20の所定位置で停止する。これにより、図13に示すように、連通部24、25が相互に閉塞され、空気弁本体150と水道配管2との流路が遮断される。
このとき、Oリング172により、底ふた151と弁箱20との間がシールされることで、連通孔161が遮断状態になり、内部への水の浸入が阻止される。
このように、連通部24、25を閉塞し、連通孔161を遮断し、フロート弁体14、遊動弁体13により小空気孔13a、大空気孔100を塞いで弁室102内の水圧を内封し、この状態でふた15を取外すことにより、遊動弁体13、フロート弁体14を取り外し、これらの部品や内部の補修作業を実施可能になる。
なお、この実施形態では、底ふた151に連通孔161を設け、底ふた151を、スリーブ30の雌螺子部171に対して、雄螺子部170を螺子込んで一体化しているが、連通孔161が降下したフロート弁体14の底面よりも下方に位置する構成であれば、底ふた151とスリーブ30との取付け構造にこだわることはない。このため、例えば、連通孔をスリーブ30側に形成するなどの各種の構造に設けることもできる。