本発明は、発泡体の成形空間に面する表面に対して段差面をなす凹部に開口部が形成された基材と、凹部に納まり基材の開口部を塞ぐ蓋本体部を有する蓋部材とを備えた発泡体成形構造において、蓋本体部の外周側面に庇状に突出して凹部の段差面に当接する舌片部を設けたものである。このような構成により、本発明は、発泡体成形構造およびそれを備えた発泡構造体を構成する部材について複雑な形状への対応を容易にするとともに、発泡体を形成する発泡樹脂材料の漏れを防止し、発泡体成形構造を含む発泡体構造の外観品質の低下を防止しようとするものである。以下、本発明の実施の形態を説明する。
本発明の実施の形態では、発泡体成形構造を備えた発泡構造体の一例として、自動車の内装構造であるインストルメントパネルを例にとって説明する。ただし、本発明に係る発泡体成形構造は、自動車のインストルメントパネルに限定されることなく、自動車のドアトリムやコンソールリッド等の他の内装構造等、発泡体を含む発泡構造体に広く適用可能である。
図1および図2に示すように、本実施形態に係るインストルメントパネル1は、所定の形状に成形された板状の基材2と、基材2の表面2a側に密着した状態で設けられた発泡体3と、基材2とともに発泡体3の成形空間を形成し、発泡体3を被覆するように設けられた表皮部材4とを備える。すなわち、インストルメントパネル1は、基材2と表皮部材4との間に発泡体3からなる発泡層を介在させ、概略的に基材2、発泡体3、および表皮部材4による3層構造をなす。なお、図2に示す断面図は、図1におけるA−A矢視断面図に相当する。
基材2は、例えば、PP(ポリプロピレン)等の合成樹脂を素材として射出成形により形成された比較的硬質の成形部材である。基材2は、全体として所定の凹凸状をなす曲面形状を有する。基材2には、グローブボックス5やエアアウトレット6や空調操作パネルやオーディオ機器等を設置するための各種形状部が形成されている。基材2においては、その外部表面における上面部から前面部に至る所定の領域部分が、発泡体3および表皮部材4の被着を受ける部分となる。
表皮部材4は、例えば、合成樹脂を素材として反応射出成形により形成された比較的軟質の成形部材である。表皮部材4は、基材2に対する被着部分の形状に合致する凹凸状の曲面形状を有し、その大部分が例えば1mm程度の厚さに形成されている。表皮部材4は、その外表面4aによってインストルメントパネル1の意匠面を形成する。このため、表皮部材4の外表面4aには、例えばシボ加工等のような質感向上のための加工が施されている。
発泡体3は、例えばポリウレタン等の発泡樹脂材料により、基材2と表皮部材4との間で発泡成形されたウレタンフォームである。本実施形態では、発泡体3は、ポリオールとイソシアネートが反応することによって得られる高分子であるウレタン樹脂である。発泡体3は、基材2と表皮部材4との間において、例えば5〜10mm程度の層厚の発泡層として形成される。
発泡体3は、発泡成形型において基材2および表皮部材4を含む部材により形成される成形空間内に充填されて発泡する発泡樹脂材料により発泡形成される。したがって、発泡体3は、発泡成形型において成形空間を形成する部材に密着した状態で設けられる。発泡体3の成形については後述する。
インストルメントパネル1には、助手席乗員用の安全装備としてのエアバッグ装置7が組み付けられる(図2参照)。エアバッグ装置7は、インストルメントパネル1の助手席側の部分の裏側に内装された状態で設けられる。そこで、インストルメントパネル1には、エアバッグ装置7のエアバッグを助手席に向けて外部へ膨出させるためのエアバッグドア構造が設けられている。
インストルメントパネル1は、エアバッグドア構造として、基材2に形成されたエアバッグ膨出用の開口部21を塞ぐエアバッグドア30を有する。エアバッグドア30は、基材2におけるエアバッグ装置7に対応する部位に設けられており、エアバッグ装置7の作動時に破断して開放され、エアバッグの展開を許容する。エアバッグドア30は、発泡体3および表皮部材4により被覆され、インストルメントパネル1の外部から視認できないように設けられている。
このような構成において、エアバッグ装置7が作動することで、エアバッグ装置7のエアバッグは、基材2の開口部21を介して、エアバッグドア30、発泡体3、および表皮部材4を破断し、インストルメントパネル1の表面側から助手席に向けて外部へと膨出する。なお、エアバッグドア30および表皮部材4には、各部材の破断に際して開裂箇所を定める肉薄部分が、所定形状のラインに沿って形成されている。
エアバッグドア30およびその基材2に対する組付け構造について説明する。エアバッグドア30は、例えば、オレフィン系熱可塑性エラストマー(TPO)を素材として射出成形により形成された成形部材である。エアバッグドア30は、基材2に対して相対的に軟質な材料により構成されている。
エアバッグドア30は、略矩形板状の外形を有するドア本体部31と、ドア本体部31の一方の板面側(裏面側)に突設された角筒状の支持枠部32とを有する。ドア本体部31および支持枠部32は、互いに一体成形された部分である。
ドア本体部31は、基材2の開口部21の略矩形状の開口形状に対応して、開口部21より一回り大きな外形寸法を有する。ドア本体部31は、その周縁部分を除いた略矩形状の部分を、エアバッグ装置7の作動時に開放するドアパネル部33とする。このため、ドアパネル部33には、エアバッグ装置7の作動時における開裂箇所を定める強度低下部として、他の部分に対して相対的な肉薄部分である開裂予定部34が設けられている。
開裂予定部34は、ドアパネル部33の裏面側において、ドア本体部31の長手方向の両側を分岐させた両Y字形状のラインに沿って、断面略「V」字形状をなすノッチ状の溝部として形成されている。このような開裂予定部34によってエアバッグ装置7の作動時にドア本体部31が開裂予定部34を開裂させることにより、ドアパネル部33は、前後左右の4つの片部に分断されて開くことになる。なお、開裂予定部34としては、両Y字形状のほか、例えばH形状や「コ」字形状のラインに沿って形成されたものであってもよく、また、ノッチ状の溝部ではなく、所定形状のラインに沿って形成された切れ込み部であってもよい。
支持枠部32は、ドア本体部31の裏側において、ドアパネル部33の外形に沿う部分から略四角筒状に突出するように設けられている。支持枠部32は、前後左右の壁部32aを有し、ドアパネル部33とともに、下側開放の箱状の部分を構成する。支持枠部32は、基材2の開口部21を貫通する部分であり、開口部21よりも一回り小さな外形寸法を有する。
支持枠部32には、インストルメントパネル1の裏側に内装されるエアバッグ装置7が支持される。つまり、エアバッグドア30は、基材2に組み付けられることにより、基材2の開口部21の下側において、支持枠部32によってエアバッグ装置7を支持する。言い換えると、エアバッグ装置7は、エアバッグドア30を介して基材2の開口部21の下側において支持される。支持枠部32の前後の(図2において左右両側の)壁部32aの下部には、エアバッグ装置7のケース体7aから側方に突出した係止アーム7bを貫通させるための矩形状の係止孔32bが形成されている。エアバッグ装置7は、係止アーム7bを係止孔32bに係止させることで支持枠部32に係止支持される。
また、エアバッグドア30は、ドア本体部31の矩形板状の外形に沿う外縁部、つまりドアパネル部33の周囲の部分を、基材2に対する取付支持部35とする。取付支持部35は、角筒状の支持枠部32の上部に板状のドア本体部31が設けられた構成において、支持枠部32に対して全周にわたって略直角に庇状に突出した部分となる。すなわち、角筒状の支持枠部32は、ドア本体部31の裏側においてドアパネル部33と取付支持部35との境界部分に対応する部分から突出した態様で設けられている。したがって、上述したようにエアバッグ装置7の作動時に開裂予定部34により分断されるドアパネル部33の前後左右の4つの片部は、取付支持部35との境界部分をヒンジ部分として開放側に変位する。
一方、エアバッグドア30が組み付けられる基材2において、開口部21が形成された部分は、エアバッグドア30のドア本体部31が納まるようにドア本体部31の外形形状に対応したドア設置凹部22をなし、他の部分に対して一段下がっている。ドア設置凹部22は、基材2に組み付けられた状態のエアバッグドア30のドア本体部31が嵌るように設けられている。したがって、ドア設置凹部22は、略矩形状のドア本体部31の外形形状・寸法に対応して、ドア本体部31よりも一回りわずかに大きい外形形状・寸法を有する。また、ドア設置凹部22は、ドア本体部31との関係において、エアバッグドア30が基材2に組み付けられた状態(以下「ドア組付け状態」という。)、つまりドア設置凹部22にドア本体部31が嵌った状態で、ドア本体部31の支持枠部32が突出する側と反対側の面である表面31aと基材2の表面2aとが略同一平面上に位置するように形成されている。なお、ドア本体部31の表面31aの外周縁部分は、内側から外側にかけて下るように傾斜している。一方、ドア本体部31の外周縁部を構成する取付支持部35の裏面(以下「ドア縁部裏面」という。)35aは、水平状の面として形成されている。
このようにドア設置凹部22が形成された基材2においては、開口部21の開口縁部を形成する部分として、ドア設置凹部22の底部分をなすドア支持板部23が設けられている。ドア支持板部23は、開口部21の表面側(図2において上側)の開口端面として、基材2の表面2aに対して縦壁面状の段差面24を介して一段さがった面である凹部底面23aを有する。つまり、ドア設置凹部22は、凹部底面23aとその周囲の段差面24とにより形成されている。段差面24は、ドア設置凹部22に嵌った状態のドア本体部31の外周側面31bが対向する面となる。
エアバッグドア30は、基材2のドア設置凹部22に嵌るドア本体部31の取付支持部35との間にドア支持板部23を挟む部分として、係止爪37を有する。本実施形態では、係止爪37は、支持枠部32を構成する前後左右の各壁部32aにおいて2箇所ずつ設けられている。係止孔32bが形成された前後の壁部32aにおいては、係止爪37は、係止孔32bよりも上側(ドア本体部31側)の位置に設けられている。
係止爪37は、支持枠部32の外側から押されることで弾性変形によって支持枠部32の内側に変位可能な部分として形成されている。係止爪37は、支持枠部32の壁部32aの外側の壁面から側面視で略三角形状(山形状)に突出している。係止爪37は、支持枠部32が貫通する基材2の開口部21の開口縁部に干渉するように支持枠部32から突設されており、エアバッグドア30の組付けに際して開口部21の開口縁端部に作用し、取付支持部35との間に基材2のドア支持板部23を挟持する。
具体的には、係止爪37は、壁部32aの外側の壁面からの略三角形状の突出形状をなす部分として、上側(ドア本体部31側)の傾斜面である係止面37aと、下側(支持枠部32の突出先端側)の傾斜面であるガイド面37bとを有する。係止面37aは、ドア組付け状態において、開口部21を形成するドア支持板部23の下側の角部に当接し、ドア本体部31とともに基材2のドア支持板部23を挟持する面となる。ガイド面37bは、エアバッグドア30の基材2への組付けに際して、開口部21への支持枠部32の挿入にともなって、開口部21を形成するドア支持板部23の上側の角部に当接した状態で作用し、係止爪37を弾性変形により内側へと変位させる面となる。
以上のような構成を備えたエアバッグドア30は、基材2に対して上側(表面2a側)から、開口部21に支持枠部32を貫通させるとともに、ドア本体部31を基材2のドア設置凹部22に嵌合させて取付支持部35をドア支持板部23に上側から重ねた状態で、基材2に組み付けられる。なお、エアバッグドア30の取付支持部35と基材2のドア支持板部23とは、例えば1cm程度の幅で重なり合っている。
エアバッグドア30は、基材2への組付けに際して係止爪37をその内側への弾性変位によって開口部21の開口縁部を乗り越えさせ、係止爪37を開口部21の開口縁部の下側に位置させる。これにより、エアバッグドア30は、ドア設置凹部22に嵌った状態のドア本体部31の取付支持部35と、複数の係止爪37とによって、基材2のドア支持板部23を上下に挟持した状態で、基材2に支持固定される。
ここで、本実施形態に係るインストルメントパネル1の製造方法に関し、インストルメントパネル1を構成する発泡体3の成形について、図6を用いて説明する。
図6(a)に示すように、発泡体3の成形においては、第1の型41および第2の型42を有する発泡成形型40が用いられる。発泡成形型40には、予め成形された基材2、表皮部材4、およびエアバッグドア30がセットされる。第1の型41および第2の型42は、それぞれ部材がセットされるセット面41a,42aを有し、発泡成形型40の型閉じ状態において、セット面41a,42aを互いに対向させる。
第1の型41のセット面41aには、互いに組み付けられたエアバッグドア30および基材2がセットされ、第2の型42のセット面42aには、表皮部材4がセットされる。第1の型41にセットされる基材2およびエアバッグドア30の組付体は、互いに略面一となる基材2の表面2aおよびドア本体部31の表面31a側が第2の型42側を向くようにセットされる。また、第2の型42にセットされる表皮部材4は、インストルメントパネル1において発泡体3側となる裏面4b側が第1の型41側を向くようにセットされる。
第1の型41および第2の型42に各部材がセットされた後、発泡成形型40の型閉めが行われる。発泡成形型40の型閉めが行われることで、基材2およびエアバッグドア30の組付体と表皮部材4との間に、発泡体3の成形空間43が形成される。図6(b)に示すように、成形空間43は、発泡体3を形成する発泡樹脂材料44が充填され発泡する空間であり、発泡体3と同一形状の空間である。このように、基材2において開口部21を塞ぐドア本体部31が重なる側の面部が、発泡体3の成形空間43を形成する面部となり、この基材2の面部には、表皮部材4の裏側の面部が対向する。これにより、基材2と表皮部材4との間に発泡体3の成形空間43が形成される。
成形空間43には、発泡樹脂材料44をなすポリオールとイソシアネートが攪拌されながら射出される。成形空間43内に射出された発泡樹脂材料44は、成形空間43内で反応して発泡し、成形空間43と同一形状の発泡体3を形成する。発泡成形型40においては、第1の型41に、成形空間43に開口して発泡樹脂材料44を射出する注入口が設けられる。
成形空間43において発泡樹脂材料44により発泡体3が形成された後、発泡成形型40の型開きおよび脱型が行われる。これにより、基材2およびエアバッグドア30の組付体の表面側、および表皮部材4の裏面4b側に密着した状態で設けられた発泡体3を有するインストルメントパネル1が得られる。
以上のように、本実施形態のインストルメントパネル1は、基材2およびエアバッグドア30の組付体と、基材2の表面2aおよびエアバッグドア30のドア本体部31の表面31aに密着した状態で設けられた発泡体3と、発泡体3を被覆する表皮部材4とを備える。そして、本実施形態のインストルメントパネル1において、互いに組み付けられる基材2とエアバッグドア30とを備えた構成が、表皮部材4とともに発泡体3の成形空間43を形成する発泡体成形構造50となる。すなわち、発泡体成形構造50は、成形空間43に面する表面2aに対して段差面24をなす凹部であるドア設置凹部22に開口部21が形成された基材2と、ドア設置凹部22に納まり開口部21を塞ぐ蓋本体部としてのドア本体部31を有する蓋部材としてのエアバッグドア30とを備える。
本実施形態に係るインストルメントパネル1のように、基材2の開口部21がエアバッグドア30により塞がれる構成においては、発泡体3の成形空間43に通じ得る部分として、互いに重なった状態となる基材2の開口部21の開口縁部とエアバッグドア30のドア本体部31の外縁部との面合わせ部が存在する。本実施形態では、かかる面合わせ部は、ドア支持板部23と取付支持部35との面合わせ部であり、ドア支持板部23の凹部底面23aと取付支持部35のドア縁部裏面35aとが互いに対向する部分となる。
このドア支持板部23と取付支持部35との面合わせ部においては、発泡体3の成形に際し、液体である発泡樹脂材料44の漏れを防止することが重要となる。しかしながら、基材2およびエアバッグドア30はそれぞれ所要の強度・剛性を有することから、基材2のドア支持板部23とドア本体部31の取付支持部35との面合わせ部において、発泡樹脂材料44の漏れを防止すべく、互いに全面的に密着した状態を得ることは非常に困難である。
そこで、本実施形態に係る発泡体成形構造50は、以下に説明するような構成を備える。本実施形態に係る発泡体成形構造50について、図7から図9を用いて説明する。
本実施形態に係る発泡体成形構造50においては、エアバッグドア30は、ドア本体部31の外周側面31bに突設された舌片部60を有する。舌片部60は、基材2の凹部底面23aとの間に空間65を形成するとともに、段差面24に当接する。
舌片部60は、一体の成形部材であるエアバッグドア30の一部としてドア本体部31に設けられている。舌片部60は、ドア本体部31の外周側面31bの上端部において外方に向けて板状に突出した肉薄部分である。つまり、舌片部60は、板状のドア本体部31の板厚方向については外周側面31bの上端部に設けられ、ドア本体部31に対して庇状に延出している。舌片部60は、ドア本体部31の外周側面31bの全周にわたって連続して設けられている。
舌片部60は、その突出先端部となる縁端部を段差面24に当接させる。舌片部60は、ドア組付け状態において、基材2の段差面24の全周に対して段差面24の上端部に当接するように設けられる。つまり、舌片部60は、ドア本体部31の外形形状やドア設置凹部22の外周形状等に応じて、ドア組付け状態において、段差面24の上端部に全周にわたって当接するように設けられる。このように、舌片部60は、段差面24に対して全周にわたって隙間なく接触する部分として設けられている。また、舌片部60は、図7に示すような断面視で段差面24に略点接触するように形成されており、ドア本体部31の外形に沿う延設方向についてはいわば線接触の態様で段差面24に接触する。
本実施形態では、舌片部60は、ドア本体部31の矩形状の外形に沿って略一定の幅(突出長さ)で設けられている。詳細には、舌片部60は、ドア本体部31の各辺部に沿う直線部60aと、隣り合う直線部60aの間の部分であってドア本体部31の角部に沿う曲線部60bとを有する(図3参照)。このように、舌片部60としては、ドア本体部31の外形形状やドア設置凹部22の外周形状等に対応して、直線部と曲線部とが適宜組み合わされ、全周にわたって段差面24に当接するような形状部分が設けられる。
図8に示すように、舌片部60は、ドア本体部31の表面31aの外周縁端部をなす表面61と、その反対側(下側)の面である裏面62とを有する。本実施形態では、舌片部60の表面61は、ドア本体部31の表面31aの取付支持部35の部分の傾斜にならって連続するように傾斜している。一方、舌片部60の裏面62は、舌片部60の基部側(図8において左側)から縁端側(同右側)にかけて上がるように傾斜している。したがって、舌片部60は、断面形状が先細り形状となるように、基部側から縁端側にかけて徐々に板厚が薄くなるような形状を有する。
舌片部60は、ドア組付け状態において段差面24の上端部に当接することで、ドア本体部31の表面31aを基材2の表面2aに連続させる。すなわち、上述したようにエアバッグドア30の表面31aと基材2の表面2aとが略同一平面上に位置する構成において、舌片部60は、ドア本体部31の表面31aを外周側に延出させ、外周側面31bと段差面24との上端部間に架設された態様で、ドア本体部31の表面31aを基材2の表面2aに連続させる。
このように、舌片部60は、基材2のドア設置凹部22に嵌るドア本体部31の外周縁と基材2との境界部分における外周側面31bと段差面24との間の隙間部分を上側から塞ぐ態様をなす部分として設けられている。この外周側面31bと段差面24との間の隙間部分は、上述したドア支持板部23と取付支持部35との面合わせ部に通じる部分となる。
舌片部60の表面61および裏面62の傾斜や舌片部60の形状等は、本実施形態に限定されるものではなく、例えば一体成形品であるエアバッグドア30の成形性等が考慮され適宜設定される。したがって、舌片部60の表面61および裏面62は、傾斜することなく、ドア本体部31に対する支持枠部32の突出方向に沿う方向(図8における上下方向、以下「上下方向」ともいう。)に垂直な水平面であってもよい。また、舌片部60は、基部側から縁端側にかけて板厚を一定とするような形状を有する部分であってもよい。
舌片部60は、ドア本体部31の板厚に対して十分に薄い部分として設けられている。図8に示すように、舌片部60は、例えば、その基端部の厚さL1を0.5mm程度とする。また、舌片部60は、外周側面31bからの突出長さL2を10mm程度とする。ただし、舌片部60の厚さL1および突出長さL2は特に限定されるものではない。
舌片部60は、上記のとおり凹部底面23aとの間に空間65を形成する。舌片部60は、ドア本体部31の上端部に設けられ、ドア組付け状態においてドア設置凹部22の凹部底面23aに対して上方に離間する位置に存在する。したがって、舌片部60の裏面62と凹部底面23aとの間には、上下方向についてドア本体部31の板厚と略同じ寸法の間隔が存在する。また、舌片部60は、外周側面31bと段差面24との隙間を上側から塞ぐ態様で設けられている。
このような構成において、舌片部60の下側に、空間65が形成される。空間65は、横方向(図8における左右方向)の寸法を、外周側面31bと段差面24との間の間隔の寸法と略同じとする。このように、空間65は、主に、凹部底面23aの外縁端部分と、段差面24と、ドア本体部31の外周側面31bと、舌片部60の裏面62とにより形成された空間である。
また、舌片部60は、その厚さや突出長さやエアバッグドア30の構成材料等により、可撓性を有する部分として設けられている。つまり、舌片部60は、柔軟性を有し、外力の作用を受けることで撓曲変形が可能な薄板状の突片部分である。ただし、舌片部60の可撓性については、成形空間43内に射出される発泡樹脂材料44の発泡圧を受けても必要以上に湾曲することなく舌片部60の段差面24に対する当接状態が保持されるように、エアバッグドア30の材料、舌片部60の厚さや突出長さ等との関係において調整される。
また、本実施形態の発泡体成形構造50は、基材2の凹部底面23aに、複数の突条部70を有する。突条部70は、凹部底面23aに対する合わせ面であるドア本体部31のドア縁部裏面35aに接触する。本実施形態では、突条部70は、凹部底面23aからの突出端面をドア縁部裏面35aに接触する接触面71とする。
突条部70は、一体の成形部材である基材2の一部としてドア支持板部23上に設けられている。突条部70は、ドア支持板部23の上面である凹部底面23aから略矩形状ないし略台形状の断面形状をなすように突出した筋状の突起部分である。突条部70は、その延設形状に沿う水平状の上面を、ドア縁部裏面35aに対する接触面71とする。突条部70は、ドア支持板部23と取付支持部35との面合わせ部の周形状に沿って、開口部21を全周にわたって囲むように設けられている。
突条部70は、その上面である接触面71を取付支持部35に接触させる。突条部70は、ドア組付け状態において、接触面71が全体的にドア縁部裏面35aに接触するように設けられる。つまり、突条部70は、ドア支持板部23および取付支持部35の平面的な形状等に応じて、ドア組付け状態において、接触面71が全周にわたってドア縁部裏面35aに当接するように設けられる。
本実施形態では、突条部70は、開口部21の開口形状に沿って矩形状の延設形状を有し、全周にわたって略一定の突出高さおよび略一定の幅で設けられている。詳細には、突条部70は、開口部21の各辺部に沿う直線部70aと、隣り合う直線部70aの間の部分であって開口部21の角部に沿う曲線部70bとを有する(図9参照)。このように、突条部70としては、ドア支持板部23および取付支持部35の平面的な形状等に対応して、直線部と曲線部とが適宜組み合わされ、全周にわたって接触面71がドア縁部裏面35aに当接するような形状部分が設けられる。
図8に示すように、突条部70は、上記のとおり凹部底面23aからの略矩形状ないし略台形状の断面形状をなす突条部分であり、凹部底面23aから立ち上がる内周側および外周側の側面として、内側面72および外側面73を有する。つまり、突条部70の内側面72は、開口部21側の側面であり、突条部70の外側面73は、段差面24側の側面である。
本実施形態では、4本の突条部70が開口部21を全周にわたって囲繞するように開口部21の開口形状に沿って平行に形成されている。したがって、4本の突条部70は、内側(開口部21側)に位置する突条部70から外側(段差面24側)に位置する突条部70にかけて徐々に開口部21周りの大きさを大きくする。すなわち、図9に示すように、4本の突条部70に関し、開口部21を囲繞するように最も内側に位置する第1突条部70Aが設けられ、第1突条部70Aの外周を囲むように第2突条部70Bが設けられ、第2突条部70Bの外周を囲むように第3突条部70Cが設けられ、第3突条部70Cの外周を囲むように第4突条部70Dが設けられている。
4本の突条部70は、断面形状および寸法を共通とする。つまり、4本の突条部70は、それぞれの接触面71を、ドア縁部裏面35aに平行な同一平面上に位置させる。ただし、各突条部70の断面形状や突出高さ等は、取付支持部35の平面的な形状等に応じて、ドア組付け状態において、接触面71が全周にわたってドア縁部裏面35aに当接するように適宜設定される。また、突条部70は、適宜一または複数設けられる。つまり、突条部70の本数は、本実施形態に限定されず、1本でもよく、また、2本または3本でもよく、5本以上であってもよい。
突条部70は、ドア設置凹部22の深さ(段差面24の高さ)に対して十分に小さい微小高さの突起部分として設けられている。突条部70は、例えば、凹部底面23aからの突出高さM1を0.2mm程度とする(図8参照)。ただし、突条部70の突出高さM1は特に限定されるものではない。
突条部70は、ドア組付け状態において、ドア縁部裏面35aと凹部底面23aとの間に、凹部底面23aからの突出高さ分の隙間を生じさせるとともに、この隙間を突条部70の延設方向に沿って仕切る部分となる。したがって、ドア組付け状態において、隣り合う突条部70間には、突条部70の延設形状に沿う空間75が形成される(図7参照)。つまり、隣り合う突条部70間の各空間75は、ドア縁部裏面35aと、凹部底面23aと、内側に位置する突条部70の外側面73と、外側に位置する突条部70の内側面72とにより形成された空間であり、開口部21を包囲するように形成される。本実施形態のように平行な4本の突条部70が設けられた構成においては、隣り合う突条部70間の空間75が3箇所に形成されることになる。なお、ドア縁部裏面35aと凹部底面23aとの間の隙間のうち、最も外側の突条部70である第4突条部70Dの外側の部分は、上述したように舌片部60により形成される空間65と連続した空間となる。
以上のような構成を備えた本実施形態の発泡体成形構造50によれば、インストルメントパネル1を構成する各部材について複雑な形状への対応を容易に行うことができ、発泡樹脂材料44の漏れを効果的に防止することができ、外観品質の低下を防止することができる。このような効果が得られることの説明に際し、まず、発泡体3を形成する発泡樹脂材料44の性質について説明する。
発泡樹脂材料44は、発泡を開始してから徐々に体積を増加させる。また、発泡樹脂材料44は、発泡が開始されるまでは液状であり、反応開始からある程度の時間が経過した後にゲル化し始め、それから徐々に固化し、最終的に完全に固化した状態(発泡体3)となる。
このような反応特性を有する発泡樹脂材料44については、次のようなことが言える。発泡樹脂材料44は、液状の状態では、わずかな隙間にも浸入し易く、発泡により液状からゲル化・固化が進行すると、流動性が低下し、わずかな隙間には浸入し難くなる。したがって、例えば取付支持部35とドア支持板部23との間の隙間等の部材間の隙間からの発泡樹脂材料44の漏れについては、発泡樹脂材料44が液状の状態では漏れ易く、発泡樹脂材料44の発泡状態では液状の状態よりも漏れ難くなる。なお、発泡樹脂材料44の発泡量は、その元となる液状のウレタン原料の量による。
また、ウレタン原料の特徴として、成形空間における容積が急変する部位では、容積差による発泡圧差が発生するという性質がある。すなわち、本実施形態のように発泡体3が層状(板状)の形状の場合、成形空間43において層厚(板厚)が急変する部位では、層厚差(板厚差)による発泡圧差が発生する。こうした発泡樹脂材料44の発泡圧差は、インストルメントパネル1において意匠面となる表皮部材4の外表面4aに微小な凹凸を発生させる原因となる。
本実施形態の発泡体成形構造50は、上記のような発泡樹脂材料44の特性に着目し、容易に発泡樹脂材料44の漏れを防止することを可能とするものである。
ここで、本実施形態の発泡体成形構造50の比較例1の構成として、図10(a)に示すように、舌片部60および突条部70を備えない構成を挙げ、かかる構成の場合における不具合について説明する。なお、以下に説明する比較例1,2の構成の説明において、本実施形態の発泡体成形構造50と共通する部分については同一の符号を用いる。
図10(a)に示すように、比較例1の構成においては、舌片部60が存在しないことから、ドア本体部31の外周側面31bと基材2の段差面24との間に、成形空間43に連続する隙間(以下「ドア外周隙間」という。)81が形成される。このドア外周隙間81は、ドア本体部31の略全周にわたって形成され、成形空間43の一部をなす空間部分となる。
また、比較例1の構成においては、突条部70が存在しないことから、取付支持部35とドア支持板部23との間に介在する部分がなく、ドア縁部裏面35aと凹部底面23aとが互いの間に何も介在させない面合わせ部(以下「ドア外縁面合わせ部」)82となる。このドア外縁面合わせ部82は、ドア外周隙間81に繋がる。つまり、ドア外縁面合わせ部82は、ドア外周隙間81を介して成形空間43に連続する部分となる。
以上のような比較例1の構成においては、成形空間43内に射出された発泡樹脂材料44が、ドア外周隙間81を介して、ドア外縁面合わせ部82の外周側に達する。ドア外縁面合わせ部82については、上述したように基材2およびエアバッグドア30はそれぞれ所要の強度・剛性を有することから互いに全面的に密着した状態を得ることは非常に困難である。
したがって、図10(b)に示すように、ドア外周隙間81からドア外縁面合わせ部82の外周側へと達した発泡樹脂材料44は、ドア外縁面合わせ部82における面同士の隙間を通過し、ドア外縁面合わせ部82の内周側から漏れ出すことになる。ドア外縁面合わせ部82の内周側から漏れた発泡樹脂材料44Xは、エアバッグドア30の支持枠部32の外周側と開口部21との隙間から支持枠部32の外周壁面を伝って外部に漏出し、最終的には漏出した部位にて固化する。
このように発泡樹脂材料44が外部に漏出することは、インストルメントパネル1の品質不良や機能不良の原因となる。具体的には、発泡樹脂材料44が成形空間43から外部に漏出すると、成形空間43内の発泡樹脂材料44の密度が部分的に低下し、成形空間43内における発泡樹脂材料44の発泡圧力のばらつきが生じる。この発泡圧力のばらつきは、インストルメントパネル1において表皮部材4の外表面4a側に現れる凹凸を生じやすくし、インストルメントパネル1の外観不良の原因となる。また、外部に漏出した発泡樹脂材料44は、エアバッグドア30の支持枠部32において固化し、例えば、エアバッグ装置7の係止アーム7bが係止される係止孔32bを塞ぎ、エアバッグ装置7の支持機能についての機能不良の原因となる。
そこで、比較例1の構成において、ドア外縁面合わせ部82からの発泡樹脂材料44の漏れを防止するためには、ドア外縁面合わせ部82における面形状の修正や、ドア外縁面合わせ部82の面同士を圧接させるために係止爪37の形状を修正することが考えられる。ここで、係止爪37の形状の修正については、係止面37aの位置を取付支持部35側に近付けることで、支持枠部32の下側への引込み量が増加し、ドア縁部裏面35aを凹部底面23aに圧接させることができる。
しかしながら、ドア外縁面合わせ部82における面形状の修正や係止爪37の形状の修正は、容易ではなく、労力や時間を過大に要するといった問題を生じさせる。また、係止爪37の形状の修正による対応によれば、ドア外縁面合わせ部82のうち係止爪37の近傍の部分についてはある程度の効果が得られるものの、それ以外の部分については発泡樹脂材料44の漏れを防止することは難しい。また、係止爪37の形状を修正することで支持枠部32の下側への引込み量を増加させると、ドア組付け状態を得るための支持枠部32の開口部21に対する挿入方向の力が増大することになる。このため、エアバッグドア30を基材2に組み付ける際の作業負担が増大する。
次に、本実施形態の発泡体成形構造50の比較例2の構成として、図11に示すように、舌片部60および突条部70を備えず、ドア本体部31の外周側面31bの下端縁に、全周にわたって外方へ延出するヒレ状のシール片部91を設けた構成を挙げる。このシール片部91は、取付支持部35がドア支持板部23に重なることで、凹部底面23aに密着するように設けられている。
比較例2の構成によれば、ドア本体部31の周縁に設けられたシール片部91が、強度・剛性が相対的に低い部分となって基材2の凹部底面23aに密着することにより、発泡樹脂材料44の漏れ防止についての優位性は得られると考えられる。しかしながら、比較例2の構成によれば、次のような不具合がある。
比較例2の構成においても、比較例1の場合と同様に、シール片部91の下面に連続するドア縁部裏面35aと凹部底面23aとの面合わせ部においては、基材2およびエアバッグドア30がそれぞれ所要の強度・剛性を有することから、互いに全面的に密着した状態を得ることは困難である。すなわち、近年における意匠の複雑化により、インストルメントパネルの構成部材の各部において3次元的な面構成が採用されているため、比較例2の構成のようにドア縁部裏面35aを延出させるシール片部91を設けた構成によってドア縁部裏面35aと凹部底面23aとの面合わせ部における発泡樹脂材料44の漏れに対応することは実際上困難である。
また、比較例2の構成のようにドア本体部31に設けたシール片部91を基材2の凹部底面23aに密着させる構成においては、基材2の開口部21が形成されたドア設置凹部22にドア本体部31が納まる構成に起因して、ドア本体部31の周囲に凹陥部92が形成されることになる。すなわち、ドア本体部31の周縁において外方に延出するシール片部91が板状のドア本体部31に対して肉薄な部分であることから、基材2の凹部底面23aに密着した状態のシール片部91の上方の空間を含み、ドア本体部31の外周側面31bとドア設置凹部22の段差面24との間に、ドア本体部31の外形に沿う溝状の凹陥部92が形成されることになる。
ドア本体部31の周囲の凹陥部92は、発泡体3の成形空間43としては凸部となり、部分的に発泡体3の層厚を増大させる。こうした発泡体3の層厚のばらつきは、上述したような成形空間43における容積が急変する部位で容積差による発泡圧差を発生させるというウレタン原料の性質から、発泡体3の成形において発泡樹脂材料44の発泡圧力にばらつきを生じさせる。発泡圧力のばらつきは、最終的な発泡構造体としてのインストルメントパネル1において表皮部材4の外表面4a側に現れる凹凸を生じやすくし、インストルメントパネル1の外観品質を低下させる要因となる。
以上のような比較例の構成に対し、本実施形態の発泡体成形構造50によれば、各比較例の構成において生じる不具合を解消することができ、インストルメントパネル1の外観品質を維持しながら、発泡樹脂材料44の漏れを効果的に防ぐことが可能となる。
本実施形態の発泡体成形構造50は、エアバッグドア30において、ドア本体部31の外周側面31bから突設されて段差面24に当接し、ドア設置凹部22の凹部底面23aとの間に隙間状の空間65を形成する舌片部60を有する。
このような構成によれば、舌片部60によって外周側面31bと段差面24との間の空間65が発泡体3の成形空間43に対して区画されることから、成形空間43内に射出された発泡樹脂材料44が取付支持部35とドア支持板部23との面合わせ部側へ漏れることを防止することができる。つまり、成形空間43内の発泡樹脂材料44が外周側面31bと段差面24との間の隙間内へと浸入することが防止される。
ここで、舌片部60は、比較例の構成におけるドア外縁面合わせ部82のような平面的な板面同士の接触ではなく、段差面24に対して線接触の態様で接触する。このことから、平面的な板面同士の接触の場合と比べて、複雑な形状に対しても容易に対応することができ、発泡樹脂材料44の漏出を効果的に防止することができる。つまり、本実施形態の発泡体成形構造50は、比較例の構成のようなドア縁部裏面35aと凹部底面23aとの面合わせに対し、舌片部60を段差面24に当接させる線状の合わせにすることにより、複雑形状への対応が容易となり、発泡樹脂材料44の漏出を効果的に防止することができる。
また、本実施形態では、舌片部60が可撓性を有するように設けられている。このような構成によれば、舌片部60が撓曲変形することで、段差面24の形状等に柔軟に対応して段差面24に接触することになるので、段差面24の形状等に多少の変形があったとしても、その変形に舌片部60が追従し、舌片部60の段差面24に対する接触状態を全周にわたって確保することができる。これにより、エアバッグドア30や基材2の複雑な形状への対応がより容易となり、より効果的に発泡樹脂材料44の漏出を防止することが可能となる。ここで、舌片部60の撓曲変形については、舌片部60の下方の空間65が舌片部60の撓曲変形を許容する空間となり、段差面24の形状等に応じて自由な変形が可能となる。
また、舌片部60は、その先端を段差面24に当接させることで、ドア本体部31の外周側面31bと段差面24との間に架設された態様の部分となる。このことから、ドア本体部31と段差面24との間に、比較例2の構成における凹陥部92のような凹部が生じることを防止したり凹部を極めて小さくしたりすることができる。これにより、ドア本体部31と基材2との間で発泡体3の層厚を略一定にすることができ、成形空間43において容積が急変する部位が生じることを防止することができるので、発泡樹脂材料44の発泡圧力のばらつきを防止することができる。結果として、発泡圧力のばらつきに起因して表皮部材4の外表面4aに生じる凹凸を防止することができ、インストルメントパネル1の外観品質を向上させることができる。
このように、ドア本体部31に舌片部60を設けた構成によれば、外観品質を向上させながら発泡樹脂材料44の漏れを防止するに際し、取付支持部35とドア支持板部23との面合わせ部の面形状の修正や係止爪37の形状の修正を行う必要がない。このため、各部の形状の修正のための労力や時間を削減することができる。また、係止爪37の形状の修正が不要となることから、ドア組付け状態を得るための支持枠部32の開口部21に対する挿入方向の力が増大することがないため、作業負担の増大を防止することができる。
また、本実施形態の発泡体成形構造50は、基材2のドア支持板部23において、凹部底面23aに、ドア縁部裏面35aに接触する突条部70が設けられている。
このような構成によれば、万一、舌片部60と段差面24との接触部分の形状誤差等によって舌片部60と段差面24との間に隙間が生じ、発泡樹脂材料44が成形空間43から漏出して空間65側へと浸入した場合であっても、突条部70が設けられたドア縁部裏面35aと凹部底面23aとの面合わせ部において、発泡樹脂材料44の進行を停止させることができる。
すなわち、図12に示すように、成形空間43内から漏出した発泡樹脂材料44が空間65を介してドア縁部裏面35aと凹部底面23aとの面合わせ部の外周側に浸入した場合、発泡樹脂材料44は、突条部70の作用を受けて内側への進行を停止することになる。すなわち、例えば約0.2mm程度の微小な隙間であるドア縁部裏面35aと凹部底面23aとの間に浸入した発泡樹脂材料44は、凹部底面23aから突出してドア縁部裏面35aに接触する突条部70によって堰き止められることになる。
このように、突条部70は、微小な隙間を隔てるドア縁部裏面35aと凹部底面23aとの間において、発泡樹脂材料44を堰き止める微小高さのダム形状部として作用し、接触面71を管理面(当たり面)としてドア縁部裏面35aに接触させる。ここで、ドア縁部裏面35aと凹部底面23aとの間に浸入する発泡樹脂材料44は、舌片部60と段差面24との間の隙間を経て空間65に一旦貯留された後のものであるから、成形空間43内への射出時からある程度の時間を経たものである。したがって、この突条部70によるダム作用を得るに際し、上述したような発泡により液状からゲル化・固化が進行するとわずかな隙間には浸入し難くなるという発泡樹脂材料44の性質が生かされる。つまり、突条部70を設けることにより、凹部底面23aとドア縁部裏面35aとの間に隙間が形成され、かかる隙間によって発泡樹脂材料44に発泡するための断面積が与えられ、発泡樹脂材料44の発泡によって発泡樹脂材料44の進行が抑えられる。
詳細には、突条部70の外周側に形成された凹部底面23aとドア縁部裏面35aとの間の隙間は、ドア本体部31の全周にわたって形成され、開口部21を包囲するように形成されるため、この隙間に浸入した発泡樹脂材料44は、突条部70の外周に沿って誘導されることになる。発泡樹脂材料44は、突条部70の外周側の隙間を移動中にゲル化・固化を進行させる。これにより、発泡樹脂材料44の進行が抑えられる。
また、舌片部60の下側の空間65は、舌片部60と段差面24との間から漏れた発泡樹脂材料44の一時貯留空間として作用する。また、発泡樹脂材料44については、発泡の開始時からある程度の時間が経過すると、発泡が停止することから、このような点からも、ドア縁部裏面35aと凹部底面23aとの間に浸入した発泡樹脂材料44の進行を停止または抑制することができる。
すなわち、上述した比較例の構成におけるドア外縁面合わせ部82のように板面同士を接触させる面合わせ部は、液状の発泡樹脂材料44が浸入した場合、発泡樹脂材料44が流れ易い断面となる。このため、発泡樹脂材料44は、その反応が最終的に停止するまで流れ込み、内周側へと進行することになり、支持枠部32と開口部21との間から外部へ漏出する可能性が高くなる。この点、取付支持部35とドア支持板部23との間に突条部70を設けた構成によれば、突条部70によるダム作用によって発泡樹脂材料44の進行を停止または抑制することができ、発泡樹脂材料44の外部への漏出を防止することができる。
また、突条部70の接触面71は、ドア支持板部23の幅に対して十分に小さい微小幅であるため、ドア縁部裏面35aに対する突条部70の接触は、突条部70の延設形状に沿う略線接触の態様となる。このため、取付支持部35の形状等について複雑な形状に対しても容易に対応することができ、発泡樹脂材料44の漏出を効果的に防止することができる。
また、仮に、突条部70と取付支持部35との接触部分の形状誤差等によって突条部70の接触面71とドア縁部裏面35aとの隙間が存在した場合であっても、接触面71とドア縁部裏面35aとの間の隙間は、ドア縁部裏面35aと凹部底面23aとの間の隙間に比べて小さいものであるから、発泡樹脂材料44の進行を停止または抑制することができる。ここでも、上述したような発泡樹脂材料44の発泡によるゲル化・固化が進行するとわずかな隙間に浸入し難くなるという性質が生かされる。
さらに、本実施形態では、突条部70が外周側から内周側にかけて4本設けられているため、万一、最外周側の第4突条部70Dを通過した発泡樹脂材料44が存在した場合であっても、第4突条部70Dと第3突条部70Cとの間に空間75が存在することで、発泡樹脂材料44が第3突条部70Cに作用するまでに時間を要する。このことから、第3突条部70Cにおいて、上述したような発泡樹脂材料44の性質に基づく突条部70による作用を、第4突条部70Dの場合よりも効果的に得ることができる。つまり、隣り合う突条部70間の空間75が、発泡樹脂材料44が発泡するための断面積を与え、発泡樹脂材料44の発泡によって発泡樹脂材料44の進行が抑えられる。
詳細には、隣り合う突条部70間の空間75は、それぞれ開口部21を包囲するように形成されるため、空間75に浸入した発泡樹脂材料44は、突条部70の外周に沿って誘導されることになる。発泡樹脂材料44は、突条部70の外周側の隙間を移動中にゲル化・固化を進行させる。これにより、発泡樹脂材料44の進行が抑えられる。そして、発泡樹脂材料44の性質に基づく突条部70による作用は、時間の経過にともない増大することから、発泡樹脂材料44の浸入方向の手前側から奥側にかけて、つまり第3突条部70Cから第2突条部70B、第1突条部70Aにかけて徐々に増大する。
このように、取付支持部35とドア支持板部23との間に突条部70を設けた構成によれば、万一、舌片部60と段差面24との間から発泡樹脂材料44が漏出した場合であっても、発泡樹脂材料44が開口部21から支持枠部32を伝って外部に漏出する前段階で、発泡樹脂材料44の反応が終了し、発泡樹脂材料44を確実に停止させることができる。特に、開口部21を囲繞する突条部70を複数設けることにより、効果的に発泡樹脂材料44の外部への漏出を防止することができる。
以上のように実施形態について説明した本発明に係る発泡体成形構造は、上述した実施形態に限定されず、本発明の趣旨に沿う範囲で、種々の態様を採用することができる。
上述した実施形態においては、ドア本体部31の外周側面31bに設けられた舌片部60は、一体の成形部材であるエアバッグドア30の一部として設けられているが、これに限定されるものではない。舌片部60は、エアバッグドア30とは別体の部材が外周側面31bに固定されることによって設けられてもよい。
また、上述した実施形態においては、凹部底面23a上に設けられた突条部70は、一体の成形部材である基材2の一部として設けられているが、これに限定されるものではない。突条部70は、基材2とは別体の部材が凹部底面23aに固定されることによって設けられてもよい。
また、上述した実施形態においては、突条部70は、基材2の一部として設けられているが、これに限定されるものではない。突条部70は、基材2の凹部底面23aおよび凹部底面23aに対する合わせ面であるドア縁部裏面35aの少なくともいずれか一方の面に設けられればよい。
したがって、例えば、図13(a)に示すように、エアバッグドア30のドア縁部裏面35aから突出するように突条部70Xが設けられてもよい。この場合、突条部70Xは、凹部底面23aに接触する接触面71Xを有する。図13(a)に示す例では、上述した実施形態と同様に4本の突条部70Xが設けられている。
また、例えば、図13(b)に示すように、凹部底面23aおよびドア縁部裏面35aの両側に突条部70(70X)が設けられもよい。図13(b)に示す例では、凹部底面23a側の突条部70とドア縁部裏面35a側の突条部70Xとが交互に2本ずつ設けられている。
また、図14において突条部70Yとして示すように、突条部70は、凹部底面23aからの突出先端部をドア縁部裏面35aに当接させる形状を有するものであってもよい。図14に示す例では、突条部70Yは、略三角形状(山形状)の断面形状を有し、その断面形状における頂点部をドア縁部裏面35aに当接させている。突条部70Yは、凹部底面23aから立ち上がる内周側および外周側の斜面として、内側斜面72Yおよび外側斜面73Yを有する。つまり、突条部70の内側斜面72Yは、開口部21側の側面であり、突条部70の外側斜面73Yは、段差面24側の側面である。
このように、突条部70Yは、図14に示すような断面視でドア縁部裏面35aに略点接触するように形成されており、開口部21の開口形状に沿う突条部70Yの延設方向についてはいわば線接触の態様でドア縁部裏面35aに接触する。突条部70Yによれば、突条部70をドア縁部裏面35aに当接させる線状の合わせにすることができ、複雑形状への対応が容易となり、発泡樹脂材料44の漏出を効果的に防止することができる。
また、上述した実施形態では、突条部70は、開口部21を囲繞するように全周に連続して設けられているが、基材2やエアバッグドア30の形状等に応じて断続的に設けられてもよい。この場合、上述した実施形態のように突条部70を複数設けた構成においては、発泡樹脂材料44の外部への漏出を防止する観点からは、外周側から内周側にかけて突条部70の分断部分が重ならないように設けられることが好ましい。
また、上述した実施形態においては、エアバッグドア30がエアバッグ装置7を支持する部分として開口部21に挿入される支持枠部32を有するが、エアバッグドア30としては、支持枠部32を備えていないものであってもよい。つまり、エアバッグドア30としては、基材2のドア設置凹部22に納まる板状のドア本体部31を有する構成のものであればよい。エアバッグドア30が支持枠部32を備えない場合、エアバッグ装置7は、例えば車体側に固定支持される。