JP2017077197A - 液滴形成装置 - Google Patents

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Abstract

【課題】膜状部材の共振周波数を適切な値に維持するための情報を取得可能な液滴形成装置を提供すること。【解決手段】本液滴形成装置は、沈降性粒子を懸濁した粒子懸濁液を保持する液体保持部と、ノズルが形成され、前記液体保持部に保持された前記粒子懸濁液を振動により前記ノズルから液滴として吐出する膜状部材と、前記膜状部材を振動させる加振手段と、前記液体保持部内を大気に開放する大気開放部と、前記膜状部材の共振周波数の制御に用いる情報を取得して出力する情報取得手段と、を有する。【選択図】図1

Description

本発明は、液滴形成装置に関する。
近年、幹細胞技術の進展に伴い、複数の細胞をインクジェットで吐出し組織体を形成する技術の開発が行われている。インクジェットの方式としては、圧電素子を用いた圧電加圧方式、ヒータを用いたサーマル方式、静電引力によって液を引っ張る静電方式等が挙げられる。この中でも、圧電加圧方式は、他の方式と比べて熱や電場によるダメージを細胞に与え難いため、細胞溶液の液滴形成に用いるのに好適である。
従来の一般的な圧電加圧方式のインクジェットヘッドは、加圧液室における液の圧縮を利用して液滴を形成するものである。このため、加圧液室内に気泡が混入した際には液を圧縮することができず、不吐出になる問題があった。細胞溶液は溶媒が水であり、一般的なインクジェットインクで用いられる界面活性剤は細胞へのダメージがあることから用いることができず、高表面張力であるがために気泡を巻き込みやすいという大きな問題があった。
更に、一般的なインクジェットヘッドでは気泡が混入した状態から通常の状態に復帰させるためには、液室を加圧する、若しくはノズルから液を吸引することによって、ノズルから大量の液を排出し気泡を同時に取り除くことを行っている。しかしながら、細胞溶液は通常のインクジェットインクよりも高価で貴重なものであるから、この手法で気泡を排除することは望ましくない。
これに対して、膜を屈曲モードアクチュエータによって振動させることにより、膜上の液を噴霧させる小水滴製造装置が開示されている。この装置では、液室における加圧力を用いることなく、膜の上に形成された液を直接飛翔させることが可能である。そのため、一般的なインクジェットヘッドに比べて気泡の影響を低減することができる(例えば、特許文献1参照)。
ところで、上記の装置は上方が大気に開放されているため、液室に保持されている液量が変わると、アクチュエータの振動による圧力上昇が大気に逃げてしまい、アクチュエータの共振周波数がシフトし振動が不安定になる場合があった。しかしながら、上記の装置は、アクチュエータの共振周波数の制御に用いる情報を取得する手段を備えていなく、アクチュエータの共振周波数を適切な値に維持することができなかった。
本発明は、上記の点に鑑みてなされたものであり、膜状部材の共振周波数を適切な値に維持するための情報を取得可能な液滴形成装置を提供することを目的とする。
本液滴形成装置は、沈降性粒子を懸濁した粒子懸濁液を保持する液体保持部と、ノズルが形成され、前記液体保持部に保持された前記粒子懸濁液を振動により前記ノズルから液滴として吐出する膜状部材と、前記膜状部材を振動させる加振手段と、前記液体保持部内を大気に開放する大気開放部と、前記膜状部材の共振周波数の制御に用いる情報を取得して出力する情報取得手段と、を有することを要件とする。
開示の技術によれば、膜状部材の共振周波数を適切な値に維持するための情報を取得可能な液滴形成装置を提供できる。
第1の実施の形態に係る液滴形成装置を例示する模式図である。 圧電素子の上下電極に印加される電圧を例示する図である。 液滴が形成される過程を例示する図である。 粒子懸濁液の液量とメンブレンの共振周波数との関係を例示する図である。 第1の実施の形態に係る情報取得手段を例示するブロック図である。 粒子懸濁液の補充について説明する図である。 第1の実施の形態の変形例1に係る液滴形成装置を例示する模式図である。 第1の実施の形態の変形例2に係る液滴形成装置を例示する模式図である。
以下、図面を参照して発明を実施するための形態について説明する。各図面において、同一構成部分には同一符号を付し、重複した説明を省略する場合がある。
〈第1の実施の形態〉
[液滴形成装置の構造]
まず、第1の実施の形態に係る液滴形成装置について説明する。図1は、第1の実施の形態に係る液滴形成装置を例示する模式図である。図1を参照するに、液滴形成装置10は、液室11と、メンブレン12と、圧電素子13と、情報取得手段30とを有する。図1では、液室11に沈降性粒子350を含有する粒子懸濁液300が保持されている状態を模式的に示している。
なお、本実施の形態では、便宜上、液室11側を上側、圧電素子13側を下側とする。又、各部位の液室11側の面を上面、圧電素子13側の面を下面とする。又、平面視とは対象物をメンブレン12の上面の法線方向から視ることを指し、平面形状とは対象物をメンブレン12の上面の法線方向から視た形状を指すものとする。
液滴形成装置10において、液室11は、沈降性粒子350を懸濁した(沈降性粒子350が分散された)粒子懸濁液300を保持する液体保持部であり、例えば、金属やシリコン、セラミック等から形成することができる。液室11は、液室11内を大気に開放する大気開放部111を上部に有しており、粒子懸濁液300中に混入した気泡を大気開放部111から排出可能に構成されている。
メンブレン12は、液室11の下端部に固定された膜状部材である。メンブレン12の略中心には貫通孔であるノズル121が形成されており、液室11に保持された粒子懸濁液300はメンブレン12の振動によりノズル121から液滴として吐出される。メンブレン12の平面形状は、例えば、円形とすることができるが、楕円状や四角形等としてもよい。
メンブレン12の材質としては特に限定はないが、柔らか過ぎるとメンブレン12が簡単に振動し、吐出しないときに直ちに振動を抑えることが困難であるため、ある程度の硬さがある材質を用いることが好ましい。メンブレン12の材質としては、例えば、金属材料やセラミック材料、ある程度硬さのある高分子材料等を用いることができる。
特に、沈降性粒子350として細胞を用いる際には、細胞やタンパク質に対する付着性の低い材料であることが好ましい。細胞の付着性は一般的に材質の水との接触角に依存性があると言われており、材質の親水性が高い又は疎水性が高いときには細胞の付着性が低い。親水性の高い材料としては各種金属材料やセラミック(金属酸化物)を用いることが可能であり、疎水性が高い材料としてはフッ素樹脂等を用いることが可能である。
このような材料の他の例としては、ステンレス鋼やニッケル、アルミニウム等や、二酸化ケイ素、アルミナ、ジルコニア等を挙げることができる。これ以外にも、材料表面をコーティングすることで細胞接着性を低下させることも考えられる。例えば、材料表面を前述の金属又は金属酸化物材料でコーティングすることや、細胞膜を模した合成リン脂質ポリマー(例えば日油株式会社製、Lipidure)によってコーティングすることが可能である。
ノズル121は、メンブレン12の略中心に実質的に真円状の貫通孔として形成されていることが好ましい。この場合、ノズル121の径としては特に限定はないが、沈降性粒子350がノズル121に詰まることを避けるため、沈降性粒子350の大きさの2倍以上とすることが好ましい。具体的には、動物細胞、特にヒトの細胞の大きさは一般的に5μm〜50μm程度であるため、ノズル121の径を、使用する細胞に合わせて10μm〜100μm以上とすることが好ましい。
一方で、液滴が大きくなり過ぎると微小液滴を形成するという目的の達成が困難となるため、ノズル121の径は200μm以下であることが好ましい。つまり、本実施の形態に係る液滴形成装置10においては、ノズル121の径は、典型的には10μm〜200μmの範囲となる。
圧電素子13は、メンブレン12の下面側に形成されている。圧電素子13の形状は、メンブレン12の形状に合わせて設計することができる。例えば、メンブレン12の平面形状が円形である場合には、ノズル121の周囲に平面形状が円環状(リング状)の圧電素子13を形成することが好ましい。
圧電素子13は、例えば、圧電材料の上面及び下面に電圧を印加するための電極を設けた構造であり、圧電素子13の上下電極に電圧を印加することによって紙面横方向に圧縮応力が加わりメンブレン12を紙面上下方向に振動させることができる。圧電材料としては、例えば、ジルコン酸チタン酸鉛を用いることができる。この他にも、ビスマス鉄酸化物、ニオブ酸金属物、チタン酸バリウム、或いはこれらの材料に金属や異なる酸化物を加えたもの等、様々な圧電材料を用いることができる。
但し、メンブレン12を振動させる加振手段は圧電素子13に限られない。例えば、メンブレン12上にメンブレン12とは線膨張係数が異なる材料を貼り付け、加熱することによって線膨張係数の差を利用してメンブレン12を振動させることが可能である。この際、線膨張係数の異なる材料にヒータを形成し、通電によってヒータを加熱してメンブレン12を振動させる構成とすることが好ましい。
沈降性粒子350としては、金属微粒子や無機微粒子、或いは細胞、特にヒト由来の細胞等が想定される。本実施の形態では、粒子状態検知手段14により光学的な手法によって粒子の状態を検知するため、対象とする粒子サイズとしては1μm以上であることが望ましい。
粒子懸濁液300として特に細胞を懸濁した細胞溶液を用いた際には、細胞の基材への接着、細胞分裂、細胞死、細胞間の凝集等、粒子に様々な状態の変化が起こり得る。そのため、液室内における粒子状態をモニタリングすることは重要であり、本装置の用途として最適である。本明細書においては、粒子として主にヒト細胞を用いたときを中心に述べるが、必ずしも用途としては細胞に限られるものではない。
粒子懸濁液300として、細胞特にヒト細胞が分散された細胞懸濁液を用いる際に、細胞懸濁液の主たる成分としては細胞と親和性の高い水を用いる。更に溶液中には細胞と浸透圧を調整するための塩、pHを調整するためのpH調整剤が含まれていることが望ましい。より具体的には、細胞懸濁液としては、pHを調整したTrisバッファ水溶液や、Ca、K、Na等の金属塩を培養液と同等に加えたPBS溶液を用いることができる。
或いは、細胞懸濁液としては、当技術分野で通常用いられる細胞培養用培地であれば特に制限なく用いることができる。例えば、用いる細胞の種類に応じて、MEM培地、BME培地、DME培地、αMEM培地、IMDM培地、ES培地、DM−160培地、Fisher培地、F12培地、WE培地及びRPMI1640培地等、朝倉書店発行「日本組織培養学会編 組織培養の技術第三版」のp581に記載されているような基礎培地を用いることができる。
更に、基礎培地に血清(ウシ胎児血清等)、各種増殖因子、抗生物質、アミノ酸等を加えてもよい。又、Gibco無血清培地(インビトロジェン社)等の市販の無血清培地等を用いることができる。
情報取得手段30は、メンブレン12の共振周波数の制御に用いる情報を取得する機能を有する。情報取得手段30の取得した情報は、粒子懸濁液300の補充を行うか否かを判定する際に用いることができる。情報取得手段30についての詳細は後述する。
[液滴形成装置の液滴形成過程]
次に、第1の実施の形態に係る液滴形成装置によって、液滴が形成される過程について説明する。図2は、圧電素子の上下電極に印加される電圧を例示する図であり、図2(a)は液滴を形成するための駆動波形である吐出波形を、図2(b)は吐出を行わず粒子を撹拌するための駆動波形である撹拌波形を示している。図3は、液滴が形成される過程を例示する図であり、液滴形成装置10の一部を示している。
まず、吐出動作について説明する。液滴形成装置10の圧電素子13の上下電極に図2(a)に示すパルス状の電圧が印加された場合、図3に示すように液滴が形成される。まず、図2(a)のAのタイミングでは、図3(a)に示すように、メンブレン12が急激に変形することによって、液室11に保持された粒子懸濁液300とメンブレン12との間に高い圧力が発生する。そして、この圧力によってノズル121から液滴310が外に押し出される。
次に、図2(a)のBのタイミングでは、図3(b)に示すように、圧力が上方に緩和するまでの時間、ノズル121からの液押し出しが続き液滴310が成長する。最後に、図2(a)のCのタイミングでは、図3(c)に示すように、メンブレン12が元の状態に戻る際に、粒子懸濁液300とメンブレン12との界面近傍の液圧力が低下し、沈降性粒子350を含有する液滴310が形成される。
次に、撹拌動作について説明する。圧電素子13に印加される電圧として、図2(b)に示すような、液滴を吐出するほどには強くない複数のパルスを入力する。この電圧印加によりメンブレン12が上下に振動し、液室11に保持された粒子懸濁液300に流れが発生する。これにより、凝集していた沈降性粒子350の再分散を促進することができる。なお、撹拌動作を安定して行うには、メンブレン12の共振周波数を主成分とする駆動波形を圧電素子13に印加することが好ましい。
[情報取得手段]
液滴形成装置10において、液室11内の粒子懸濁液300中に気泡が混入する場合がある。しかし、液滴形成装置10では、液室11の上部に大気開放部111が設けられているため、粒子懸濁液300中に混入した気泡を大気開放部111を通じて外気に排出できる。これによって、気泡排出のために大量の液を捨てることなく、連続して安定的に液滴310を形成することが可能となる。
すなわち、ノズル121の近傍に気泡が混入した場合や、メンブレン12上に多数の気泡が混入した場合には吐出状態に影響を及ぼすため、長い時間安定的に液滴の形成を行うためには、混入した気泡を排出する必要がある。通常、メンブレン12上に混入した気泡は、自然に若しくはメンブレン12の振動によって上方に移動するが、液室11には大気開放部111が設けられているため、混入した気泡を大気開放部111から排出可能となる。
なお、液滴を形成しないタイミングで、液滴を形成しない範囲でメンブレン12を振動させ、積極的に気泡を液室11の上方に移動させてもよい。
このように、液滴形成装置10は、液室11内を大気に開放する大気開放部111を有するため、液室11内に気泡が混入しても大気開放部111を通じて気泡を外気に排出できる。そのため、通常の加圧液室を有するインクジェットヘッドとは異なり、液室11に気泡が混入しても不吐出が発生することを防止可能となり、連続して安定的に液滴310を形成することができる。
ところで、液滴形成装置10では、大気開放部111を設けているため、液室11に保持されている粒子懸濁液300の液量が変わると、メンブレン12の振動による圧力上昇が大気に逃げてしまう。そのため、メンブレン12の共振周波数がシフトし、攪拌が不安定になる場合がある。この場合、撹拌動作が十分に機能せず、沈降性粒子350が液室11内で沈降してしまう。
例えば、図4に示すように、粒子懸濁液300の液量が一定値未満(この例では、約50μl未満)になるとメンブレン12の共振周波数が上昇するが、一定値以上(この例では、約50μl以上)であればメンブレン12の共振周波数は安定値となる。
前述のように、撹拌動作を安定して行うには、メンブレン12の共振周波数を主成分とする駆動波形を圧電素子13に印加することが好ましい。しかしながら、図4に示すように、メンブレン12の共振周波数は、液室11内に保持される粒子懸濁液300の液量に依存するため、メンブレン12の共振周波数が安定値を維持するように制御する必要がある。
そこで、本実施の形態では、メンブレン12の共振周波数が安定値となる十分な粒子懸濁液300を保持できる程度に、液室11を大容量化している。更に、メンブレン12の共振周波数の制御に用いる情報を取得して出力する情報取得手段30を設けている。これにより、情報取得手段30が取得した情報に基づいて、メンブレン12の共振周波数が安定値か否かを判定し、安定値でないと判定した場合には、適切な方法で粒子懸濁液300の補充を行うことができる。その結果、メンブレン12の共振周波数が常に安定値となり、良好な撹拌を行うことができる。
情報取得手段30は、メンブレン12の共振周波数を測定する共振周波数測定手段である。図5は、第1の実施の形態に係る情報取得手段を例示するブロック図である。情報取得手段30において、発振器301は、例えば数V程度のランダムノイズ信号(ガウシアンノイズ)を生成し、増幅器302を介して圧電素子13に駆動信号として供給する。これにより、圧電素子13が駆動され、メンブレン12が振動する。又、発振器301は記録表示部303にトリガ信号を供給する。
レーザドップラ304はレーザやディテクタを備えており、対象物の振動速度を検出する機能を有する。レーザドップラ304のレーザからの出射光はダイクロイックミラー305により光路を変換され、対物レンズ等の光学系を介してメンブレン12のノズル121の近傍に集光照射される。なお、図5では、便宜上メンブレン12及び圧電素子13の近傍のみを図示している。
メンブレン12からの反射光は、ダイクロイックミラー305に戻り、光路を変換されてレーザドップラ304のディテクタで受光され電気信号(振動速度波形)に変換される。振動速度波形はトリガ信号のタイミングで記録表示部303に入力され、記録表示部303に記録される。記録表示部303は、振動速度波形をフーリエ変換し、例えば振動周波数のスペクトラムを表示する。この場合、表示した振動周波数のスペクトラムが、情報取得手段30が取得したメンブレン12の共振周波数の制御に用いる情報となる。
なお、メンブレン12上のレーザの照射位置を厳密に制御する必要がある場合には、ノズル121及びレーザの照射位置を顕微鏡306及び撮像素子307(CCD等)により観察し、レーザの照射位置を微調整することができる。
例えば、図4のような検量線を取得する場合には、レーザの照射位置を微調整することが好ましい。一方、メンブレン12の共振周波数の変化(液量の変化)を定期的にモニタする場合等には、おおよその液量の変化がわかればよいので、レーザの照射位置を微調整しなくてもよい。すなわち、後者の場合、顕微鏡306及び撮像素子307を設けなくてもよい。
図1において、図5の構成の情報取得手段30を用い、メンブレン12の共振周波数の制御に用いる情報(この場合には、メンブレン12の共振周波数の変化)を定期的にモニタすることにより、共振周波数がシフトしたか否かの情報を得ることができる。なお、メンブレン12の共振周波数の制御に用いる情報を常時モニタしてもよい。
情報取得手段30が取得した情報に基づいて所定の方法で共振周波数がシフトしたと判断した場合には、所定の方法で沈降性粒子350を含有する粒子懸濁液300を補充することができる。例えば、液滴形成装置10の使用者が、記録表示部303に表示された振動周波数のスペクトラムを視認し、共振周波数がシフトしたと判断した場合には、使用者が手動で粒子懸濁液300を補充することができる。
図6に示すように、粒子懸濁液300の補充は、例えば、大気開放部111から液供給手段であるマイクロピペット40を用いて行うことができる。これにより、極少量(例えば10μl程度)の粒子懸濁液300を液滴形成装置10に直接供給することが可能となる。但し、粒子懸濁液300の補充は、マイクロピペット40に限らず、シリンジやチューブ等を用いても行ってもよい。
又、情報取得手段30が取得した情報に基づく粒子懸濁液300の液量が十分か否かの判定を、所定の判定手段を設けて自動で行い、判定結果に基づいて、マイクロピペット40等を用いて自動で粒子懸濁液300を補充する構成にしてもよい。
これにより、常にメンブレン12の共振周波数が安定値となるため、メンブレン12の共振周波数を主成分とする駆動波形で安定して撹拌を行うことができる。
なお、メンブレン12の共振周波数の安定値については、適宜定義してよい。例えば、図4におけるメンブレン12の共振周波数の変曲点である液量50μl以上では、メンブレン12の共振周波数が安定していると考え、液量50μl以上におけるメンブレン12の共振周波数の測定値の平均値をメンブレン12の共振周波数の目標値とする。そして、例えば、メンブレン12の実際の共振周波数が目標値の10%以内であれば、メンブレン12の共振周波数が安定値である、と定義することができる。
このように、第1の実施の形態に係る液滴形成装置10は、メンブレン12の共振周波数の制御に用いる情報を取得する情報取得手段30を備えている。これにより、情報取得手段30が取得した情報に基づいて、共振周波数がシフトしたか否かの判定を行うことが可能となる。その結果、共振周波数がシフトしたと判定した場合に粒子懸濁液300を補充することにより、常にメンブレン12の共振周波数が安定値となるため、メンブレン12の共振周波数を主成分とする駆動波形で安定して撹拌を行うことができる。
〈第1の実施の形態の変形例1〉
第1の実施の形態の変形例1では、情報取得手段の他の例を示す。なお、第1の実施の形態の変形例1において、既に説明した実施の形態と同一構成部についての説明は省略する場合がある。
図7は、第1の実施の形態の変形例1に係る液滴形成装置を例示する模式図であり、情報取得手段を備えた液滴形成装置の他の例を示している。
図7(a)に示す液滴形成装置10Aにおいて、情報取得手段31は、液室11に保持されている粒子懸濁液300の液面300Aの高さを検知する液面検知手段である。情報取得手段31は、液室11の内壁面の深さ方向の異なる位置に設置された2つの電極311及び312を備えている。粒子懸濁液300として導電性の液を用いることにより、情報取得手段31は、電極311及び312間の抵抗値を、液室11に保持された粒子懸濁液300の液面300Aの高さを示す情報として取得することができる。
なお、図4に示したように、メンブレン12の共振周波数は液量に依存する。そこで、液滴形成装置10Aにおいて検知する液面300Aの高さを、予め定義したメンブレン12の共振周波数の安定値から外れる閾値となる値に設定しておく。例えば、液滴形成装置10Aの検量線が図4で示される場合には、液量=50μlに相当する液面300Aの高さを検知すべき液面の高さとし、この高さが検知できる位置に電極311及び312を設置する。
これにより、電極311及び312間の抵抗値はメンブレン12の共振周波数の制御に用いる情報、すなわち、メンブレン12の共振周波数が安定値か否かを判定するための情報となる。
情報取得手段31が取得した電極311及び312間の抵抗値に基づいて、メンブレン12の共振周波数が安定値か否かを判定し、安定値でないと判定した場合には、適切な方法で粒子懸濁液300の補充を行うことができる。これにより、メンブレン12の共振周波数が安定値となり、良好な撹拌を行うことができる。
図7(b)に示す液滴形成装置10Bにおいて、情報取得手段32は、液室11に保持されている粒子懸濁液300の液面300Aの高さを検知する液面検知手段である。情報取得手段32は、液室11の上方に設置された発光素子321及びポジションセンサ322を備えている。ポジションセンサ322は、発光素子321から出射され、粒子懸濁液300の液面300Aや液面300Bで正反射された光を受光可能な位置に配されている。これにより、情報取得手段32は、ポジションセンサ322の出力を、液室11に保持された粒子懸濁液300の液面の高さを示す情報として取得することができる。
上記と同様に、例えば液量=50μlに相当する液面300Aの高さを検知すべき液面の高さとし、この高さが検知できる位置に発光素子321及びポジションセンサ322を設置する。
これにより、ポジションセンサ322の出力はメンブレン12の共振周波数の制御に用いる情報、すなわち、メンブレン12の共振周波数が安定値か否かを判定するための情報となる。
情報取得手段32が取得したポジションセンサ322の出力に基づいて、メンブレン12の共振周波数が安定値か否かを判定し、安定値でないと判定した場合には、適切な方法で粒子懸濁液300の補充を行うことができる。これにより、メンブレン12の共振周波数が安定値となり、良好な撹拌を行うことができる。
なお、三角測量の原理に基づいて、ポジションセンサ322が受光した光の位置から、粒子懸濁液300の液面までの距離を算出することができる。
〈第1の実施の形態の変形例2〉
第1の実施の形態の変形例2では、情報取得手段の更に他の例を示す。なお、第1の実施の形態の変形例2において、既に説明した実施の形態と同一構成部についての説明は省略する場合がある。
図8は、第1の実施の形態の変形例2に係る液滴形成装置を例示する模式図であり、情報取得手段を備えた液滴形成装置の更に他の例を示している。
図8に示すように、液滴形成装置10Cにおいて、駆動装置50は、圧電素子13を駆動する駆動手段である。駆動装置50は、メンブレン12を振動させて液滴を形成する吐出波形と、液滴を形成しない範囲でメンブレン12を振動させる撹拌波形とを圧電素子13に選択的に(例えば、交互に)付与することができる。駆動装置50は、吐出波形を出力する毎に、情報取得手段33に吐出信号を出力することができる。
情報取得手段33は、駆動装置50から吐出信号を取得して吐出信号の回数をカウントするカウンタである。情報取得手段33のカウント結果は、表示装置60に送られ、表示装置60に表示される。
1回の吐出において吐出される液量は既知なので、情報取得手段33のカウント結果に基づいて液室11内に保持されている粒子懸濁液300の残量を知ることができる。一方、図4に示したように、メンブレン12の共振周波数は液量に依存する。そこで、液滴形成装置10Cにおいて粒子懸濁液300の残量が、予め定義したメンブレン12の共振周波数の安定値から外れる閾値となるときの、情報取得手段33のカウント回数を粒子懸濁液300を補充すべきカウント回数としておく。これにより、補充すべきカウント回数の値はメンブレン12の共振周波数の制御に用いる情報、すなわち、メンブレン12の共振周波数が安定値か否かを判定するための情報となる。
情報取得手段33が取得した吐出回数のカウント結果に基づいて、メンブレン12の共振周波数が安定値か否かを判定し、安定値でないと判定した場合には、適切な方法で粒子懸濁液300の補充を行うことができる。これにより、メンブレン12の共振周波数が安定値となり、良好な撹拌を行うことができる。
なお、吐出信号の回数をカウントする方法に代えて、吐出時間をカウントする(計測する)方法としても良い。
以上、好ましい実施の形態について詳説したが、上述した実施の形態に制限されることはなく、特許請求の範囲に記載された範囲を逸脱することなく、上述した実施の形態に種々の変形及び置換を加えることができる。
例えば、液室の形状は縦長の円柱型でも横長の円柱型でもよいし、入り口にテーパをつけてもよい。或いは、円柱型以外としてもよい。要は、メンブレン12の共振周波数が安定値となる十分な粒子懸濁液300を保持できる程度に、液室を大容量化できればよい。
10、10A、10B、10C 液滴形成装置
11 液室
12 メンブレン
13 圧電素子
30、31、32、33 情報取得手段
40 マイクロピペット
50 駆動装置
60 表示装置
111 大気開放部
121 ノズル
300 粒子懸濁液
300A 液面
301 発振器
302 増幅器
303 記録表示部
304 レーザドップラ
305 ダイクロイックミラー
306 顕微鏡
307 撮像素子
310 液滴
311、312 電極
321 発光素子
322 ポジションセンサ
350 沈降性粒子
特許第2849647号公報

Claims (5)

  1. 沈降性粒子を懸濁した粒子懸濁液を保持する液体保持部と、
    ノズルが形成され、前記液体保持部に保持された前記粒子懸濁液を振動により前記ノズルから液滴として吐出する膜状部材と、
    前記膜状部材を振動させる加振手段と、
    前記液体保持部内を大気に開放する大気開放部と、
    前記膜状部材の共振周波数の制御に用いる情報を取得して出力する情報取得手段と、を有する液滴形成装置。
  2. 前記情報取得手段は、前記膜状部材の共振周波数を測定する共振周波数測定手段であり、測定した共振周波数を前記情報として出力する請求項1に記載の液滴形成装置。
  3. 前記情報取得手段は、前記液体保持部に保持されている前記粒子懸濁液の液面の高さを検知する液面検知手段であり、検知した液面の高さを前記情報として出力する請求項1に記載の液滴形成装置。
  4. 前記粒子懸濁液は細胞を懸濁した溶液である請求項1乃至3の何れか一項に記載の液滴形成装置。
  5. 前記情報取得手段が出力した前記情報に基づいて、前記液体保持部に前記粒子懸濁液を供給し、前記膜状部材の共振周波数を安定値に維持する液供給手段を有する請求項1乃至4の何れか一項に記載の液滴形成装置。
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