JP2017075651A - トロイダル型無段変速機 - Google Patents
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Abstract
Description
このダブルキャビティ式トロイダル型無段変速機は、図8および図9に示すように構成されている。図8に示すように、ケーシング50の内側には入力軸1が回転可能に支持されており、この入力軸1の外周には、2つの入力側ディスク2,2と2つの出力側ディスク3,3とが取り付けられている。また、入力軸1の中間部の外周には出力歯車4が回転可能に支持されている。この出力歯車4の中心部に設けられた円筒状のフランジ部4a,4aには、出力側ディスク3,3がスプライン結合によって連結されている。
また、トロイダル型無段変速の押圧装置による押圧力は、数kN程度と大きく軸受接触部は高面圧となる。よって、軸受の転動体と内外輪との接触部(軸受接触部)においてフレッチングなどの損傷が起こる懸念があり、潤滑性を向上させることが必要である。
しかしながら、図10に示すように、入力側ディスク2から遠い側(図10において右側)において、ローディングカム46と入力軸1の端部201との間の隙間が大きくなって、潤滑油の排出量が大きくなると軸受接触部S1,S2に十分な潤滑油が供給されない懸念がある。特に高回転条件では、内輪側の軸受接触部S1への潤滑油の供給が不足になると考えられる。
なお、図10において、符号210は軸受、210aは軸受の内輪、210bは軸受の外輪、符号210cは転動体を示している。矢印Aは潤滑油の流れを示している。
このトロイダル型無段変速機では、入力軸の端部とローディングカムとの間の隙間から排出される潤滑油の排出量が、入力軸の端部とローディングカムとの間の隙間に供給される潤滑油の供給量よりも少なくなるように、入力軸の端部とローディングカムとの間の隙間を調整することによって、入力軸の端部とローディングカムとの間に油溜まりを形成している。そして、この油溜まりによって軸受接触部への潤滑油の供給不足を補うようにしている。
このように、軸受接触部への潤滑油の供給が十分でないと、当該軸受接触部においてフレッチングなどの損傷が起こる懸念があり、潤滑性を向上させることが必要である。
前記軸の端部と前記ローディングカムとの間に、スラスト荷重を支承するための軸受が設けられているトロイダル型無段変速機において、
前記軸の端部と前記ローディングカムとの間に、少なくとも前記軸受の転動体と軌道輪との接触部である軸受接触部を含むような油充填部を形成するための油充填部形成部材が設けられていることを特徴とする。
前記構成部材の内側に内輪側の前記軸受接触部が位置し、
前記構成部材の小径側の内径の半分の値が、内輪側の前記軸受接触部の半径よりも小さくなっていてもよい。
なお、本発明の特徴は、入力軸の端部とローディングカムとの間に設けられている軸受を含む油充填部の構造にあり、その他の構成および作用は前述した従来の構成および作用と同様であるため、以下においては、本発明の特徴部分についてのみ言及し、それ以外の部分については、図8〜図10と同一の符号を付してその説明を省略ないし簡略化でする。
図1は本実施の形態に係るトロイダル型無段変速機におけるローディングカム式の押圧装置12を示すもので(a)は半断面図、(b)は軸受の保持器の斜視図である。
押圧装置12は、図1(a)に示すように、図示しない駆動軸とともに回転するローディングカム46と、図示しない保持器により転動可能に保持された複数個のカムローラ(ころ)48とから構成されている。ローディングカム46の片側面(図1の左側面)には、円周方向に亙る凹凸(波状部)であるカム面46aが形成され、入力側ディスク2の外側面(図1の右側面)にも、同様の形状を有するカム面2dが形成されている。
軸方向穴230に供給される油(潤滑油)の一部は、油穴232を通して入力側ディスク2とローディングカム46との間の隙間に供給され、この隙間に供給された油は入力軸1の回転に伴う遠心力によりカムローラ48へと供給されるようになっている。
また、軸方向穴230に供給される油(潤滑油)の一部は、油穴233を通して入力軸1の右端部201とローディングカム46との間に供給されるようになっている。
軸部46cの内周面と入力軸1の右端部の外周面との間には、アンギュラ型の玉軸受(軸受)210が介挿されている。この軸受210は、内輪側の軌道輪(内輪)210aと、外輪側の軌道輪210bと、これら軌道輪210a,210b間に設けられた球状の転動体210cとから構成されている。
内輪210aは、入力軸1の端部(右端部)201の外周面に断面円弧状に形成されている。
外輪210bは、ローディングカム46の軸部46cの内周面に断面円弧状に形成され、この外輪210bと内輪210aとは、入力軸1の軸方向に対して傾斜する方向に対向して配置されている。そして、この内輪210aと外輪210bに沿って転動体210cが転動するようになっている。
また、ローディングカム46は、図示しない駆動軸に結合しており、この駆動軸の回転によって回転されるようになっている。
また、ローディングカム46の軸部46cの入力ディスク2側の端面と、入力側ディスク2の内径側の端面との間には、押圧力(予圧)を付与する皿ばね49が設けられている。
油充填部形成部材222は、軸受210の転動体210cを保持する保持器(構成部材)223と、シール部材224とを備えている。
保持器(構成部材)223は、図1(b)に示すように、油充填部形成部材222の一部を構成するもので、略円錐環状に形成され、その外周壁223aは外側に凸となるような断面略円弧状に形成されている。この外周壁223aには、周方向に沿って所定間隔で複数の円状の保持穴223bが設けられ、各保持穴223bに転動体210cが挿入されて、保持されるようになっている。
また、保持器223の小径側の開口部には、保持器223の軸方向と直交する方向でかつ内側に突出するリング状の鍔部223cが形成されている。保持器223の大径側の開口部には、リング状でかつ保持器223の軸方向に延出する延出部223dが形成されている。
この状態において、保持器223の小径側の鍔部223cは入力軸1の右端部201の外周面に当接している。この鍔部223cの当接位置は、前記油穴233の開口より左側、つまり油穴233の開口より入力軸1の長手方向中央側における右端部201の外周面である。逆に言えば、油穴233の開口は入力軸1の軸方向において、軸受210側に位置している。
したがって、油穴233から供給される潤滑油は、保持器223の内側に供給され、鍔部223cによって保持器223の内側に回収されるようになっている。
また、保持器223の大径側の延出部223dの先端部は、ローディングカム46の軸部46cの内周面と入力軸1の右端部201の外周面との間に設けられた略リング状のリング状部材225に当接されている。
入力軸1およびローディングカム46は、運転時は回転しているので、油穴233から供給された潤滑油は、ローディングカム46の半径方向外側に移動して、保持器223の内側および軸受接触部S2に油充填部221が形成されるが、r1>r2であるので、内輪側の軸受接触部S1および外輪側の軸受接触部S2が油充填部221内に存在することになる。なお、外輪側の軸受接触部S2には、保持穴223bと転動体210cとの間の隙間から潤滑油が供給されるようになっている。
また、シール部材224は、潤滑油の漏れがある程度許容できる場合は金属材料など、他の材料で形成してもよい。以下の他の実施の形態においても同様である。
さらに、シール部材224は、入力側ディスク側において、入力軸1の右端部201とローディングカム46との間に設けてもよいし、当該シール部材224は、入力側ディスク側および反入力側ディスク側の少なくとも一方の側において、入力軸1の右端部201とローディングカム46との間に設ければよい。
図2は第2の実施の形態に係るトロイダル型無段変速機におけるローディングカム式の押圧装置12の半断面図である。
なお、本実施の形態において、図1に示す第1の実施の形態と同一の構成については同一符号を付してその説明を省略する。
この延出部46dの先端部は入力軸1の右端部201の外周面に若干の隙間をもって近接している。また、延出部46dには、円環状の傾斜面46eが形成されている。この傾斜面46eは軸部46cの径方向外側に向かうほど軸受210側に近付くように傾斜している。また、油穴233の開口位置は、入力軸1の軸方向において、延出部46dの先端部より軸受210側である。
なお、本実施の形態における延出部46dと第1の実施の形態における保持器223の鍔部223cとは潤滑油を回収するという同じ役割を果たすため、置き換え可能である。
また、本実施の形態においても、第1の実施の形態と同様の効果が得られるのは言うまでもない。
図3は第3の実施の形態に係るトロイダル型無段変速機におけるローディングカム式の押圧装置12の半断面図である。
なお、本実施の形態において、図1に示す第1の実施の形態と同一の構成については同一符号を付してその説明を省略する。
すなわち、図3(a)に示すように、油充填部形成部材222の一部を構成するシール部材226は、ゴムなどの弾性部材によって形成されたリング状の部材である。ローディングカム46の軸部46cの、入力側ディスク2側に近い内周面には、嵌合溝が形成されており、この嵌合溝にシール部材226の外周部が嵌め込まれている。シール部材226の内周部は軸部46cの内側に突出しており、その先端部が入力軸1の右端部201の外周面に、油穴233の開口より入力軸1の長手方向中央側(図3において左側)において当接されている。これによって、入力軸1の右端部201の左側の内周面とローディングカム46との間の隙間から潤滑油が排出されるのを防止している。
なお、シール部材226をローディングカム46の軸部46cの内周部に取り付ける代わりに、入力軸1の右端部201の外周部に取り付けてもよい。
このようにすれば、同一部品に遠心油圧が発生するため、入力側ディスク2の押圧力には影響しない。よって、遠心油圧による過押し付けを防ぐときに有効である。
このようにすれば、遠心油圧が発生するため、入力側ディスク2の押圧力が増加する。よって、予圧としてまたはカムによる推力の不足分として遠心油圧を利用することができる。
図4は第4の実施の形態に係るトロイダル型無段変速機におけるローディングカム式の押圧装置12の半断面図である。
なお、本実施の形態において、図3に示す第3の実施の形態と同一の構成については同一符号を付してその説明を省略する。
本実施の形態では、第3の実施の形態と同様の効果を得ることができる他、油充填部221にグリースを封入したので、図3に示すような、油穴233を入力軸1に形成する必要がなく、このため入力軸1の耐力向上とコスト低減に貢献できる。
図5は第5の実施の形態に係るトロイダル型無段変速機におけるローディングカム式の押圧装置12の半断面図である。
なお、本実施の形態において、図1に示す第1の実施の形態と同一の構成については同一符号を付してその説明を省略する。
本実施の形態では、円盤状部材240と保持器223とによって油充填部形成部材222が構成されている。
また、本実施の形態では、第1の実施の形態のトロイダル型無段変速機が備えていたシール部材224は設けられていない。
図6は第6の実施の形態に係るトロイダル型無段変速機におけるローディングカム式の押圧装置12の半断面図である。
なお、本実施の形態において、図1に示す第1の実施の形態と同一の構成については同一符号を付してその説明を省略する。
すなわち、保持器250は、延出部223dがさらに入力軸1の軸方向右端部側に延ばされ、この延出部223dの端部にドーナツ盤状の円盤部223eが入力軸1と同軸に形成されている。この円盤部223eによって入力軸1の右端部201の右端面の外周部が覆われている。そして、このような保持器250の内側が油充填部221となっている。したがって、本実施の形態では、油充填部221を形成するための油充填部形成部材222は保持器250によって構成されている。
また、本実施の形態では、保持器250は組立性の確保のため、分割型とされている。例えば、延出部223dと円盤部223eとが別体に構成され、延出部223dの端部に円盤部223eが接合されている。
また、本実施の形態では、第1の実施の形態のトロイダル型無段変速機が備えていたシール部材224は設けられていない。
図7は第7の実施の形態に係るトロイダル型無段変速機におけるローディングカム式の押圧装置12を示すもので(a)はその半断面図、(b)は保持器の斜視図である。
なお、本実施の形態において、図1に示す第1の実施の形態と同一の構成については同一符号を付してその説明を省略する。
すなわち、保持器260は、図7(b)に示すように、油充填部形成部材222を構成するもので、円筒状の円筒部260aと、この円筒部260aに同軸に当該円筒部260aと一体的に形成された略円錐環状の外周壁260bと、この外周壁260bと同軸にかつ当該外周壁260bと一体的に形成された鍔部260cとを備えている。
外周壁260bは外側に凸となるような断面略円弧状に形成されている。この外周壁260bには、周方向に沿って所定間隔で複数の円状の保持穴260dが設けられ、各保持穴260dに転動体210cが挿入されて、保持されるようになっている。
鍔部260cは、保持器260の軸方向と直交する方向でかつ内側に突出するようにして外周壁260bの開口縁部に形成されている。この鍔部260cの外径はローディングカム46の軸部46cの入力側ディスク2側の内径とほぼ等しいか若干小さめに設定され、内径は入力軸1の右端部201の入力側ディスク2側の外径とほぼ等しいか若干大きめに設定されている。
この状態において、鍔部260cの外周面は、入力側ディスク2側において、ローディングカム46の軸部46cの内周面に当接され、内周面は入力軸1の右端部201の外周面に当接されている。
また、円筒部260aは、反入力側ディスク2側において、ローディングカム46の軸部46cの内周面と入力軸1の右端部201の外周面との間の隙間に挿入され、円筒部260aの外周面はローディングカム46の軸部46cの内周面に当接され、内周面は入力軸1の右端部201の外周面に当接されている。したがって、保持器260の内側が油充填部221となっており、当該油充填部221は保持器260の円筒部260aと鍔部260cとによって封鎖されている。
さらに、保持器260の鍔部260cの内径の半分の値であるr2は、内輪側の軸受接触部S1の半径r1より小さくなっている。このようにr1とr2を設定することによって、内輪側の軸受接触部S1と外輪側の軸受接触部S2とは油充填部221内に存在するようになっている。
また、保持器260の円筒部260aおよび鍔部260cによって油充填部221内の潤滑油の排出を抑制できるとともに、シール部材224を使用していないので、第1の実施の形態に比して、フリクションロスの低減を図ることができるとともに、トロイダル型無段変速機に必要な押圧装置12による押圧力を適切に付与することができる。
2 入力側ディスク(第1ディスク)
2a カム面
3 出力側ディスク(第2ディスク)
11 パワーローラ
12 押圧装置
46 ローディングカム
46a カム面
48 転動体
201 入力軸の端部
210 軸受
210a 内輪
210b 外輪
210c 転動体
221 油充填部
222 油充填部形成部材
223 保持器(構成部材)
250,260 保持器
S1 軸受接触部
S2 軸受接触部
Claims (2)
- 軸と、この軸にそれぞれの内側面同士を互いに対向させた状態で互いに同心的にかつ回転可能に設けられた第1ディスクおよび第2ディスクと、これら両ディスクの間に挟持されるパワーローラと、前記両ディスクを互いに近づけ合う方向に押圧する押圧装置とを備え、この押圧装置が、ローディングカムと、このローディングカムのカム面と前記第1ディスクのカム面との間で転動自在に保持された転動体とを有し、
前記軸の端部と前記ローディングカムとの間に、スラスト荷重を支承するための軸受が設けられているトロイダル型無段変速機において、
前記軸の端部と前記ローディングカムとの間に、少なくとも前記軸受の転動体と軌道輪との接触部である軸受接触部を含むような油充填部を形成するための油充填部形成部材が設けられていることを特徴とするトロイダル型無段変速機。 - 前記軸の端部に、前記油充填部形成部材の少なくとも一部を構成する略円錐環状の構成部材がその小径側を前記軸の長手方向中央側に向けて前記軸と同軸に設けられ、
前記構成部材の内側に内輪側の前記軸受接触部が位置し、
前記構成部材の小径側の内径の半分の値が、内輪側の前記軸受接触部の半径よりも小さいことを特徴とする請求項1に記載のトロイダル型無段変速機。
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