JP2017074889A - 作業車両 - Google Patents

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勝美 藤木
圭将 岩村
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Abstract

【課題】トラクタのような作業車両において、軽量化及び低コスト化を確保しながら、伝動経路の高効率化とともに操作性の向上を図る。【解決手段】作業車両は、第一無段変速装置17を有する直進系伝動経路と、第二無段変速装置13を有する旋回系伝動経路と、直進系伝動経路及び旋回系伝動経路の出力を連動的に制御する制御部813,814と、回転操作可能な操縦ハンドル9を備え、直進系伝動経路の出力と旋回系伝動経路の出力を合成して左右の走行部3を駆動する。制御部813,814は、操縦ハンドル9への操作に応じて、旋回系伝動経路の出力を増速させ、直進系伝動経路の出力を減速させて、操縦ハンドル9の操舵角に基づいて旋回時の3左右の走行部の速度比を決定するものであり、操縦ハンドル9の中立位置における不感帯幅を変更可能とした。【選択図】図20

Description

例えばトラクタやコンバイン等の農作業機やクレーン車やバックフォー等の特殊作業機のような作業車両に関するものである。
従来、トラクタ、コンバインといった農作業車やクローラクレーンなどの建設機械といった作業車両の中には、エンジンからの動力が伝達される2つの油圧式無段変速機(HST)を備えており、2つの油圧式無段変速機それぞれからエンジン出力に基づき直進動力と旋回動力を出力させるものがある。本願出願人は以前に、2つの油圧式無段変速機それぞれから出力させた直進動力と旋回動力を左右の遊星ギヤ機構で合成させることで旋回可能とした作業車両を、特許文献1において提案している。
また、従来の作業車両の中には、エンジンから動力伝達されるミッションケースに、油圧式無段変速機よりも伝達効率の高い油圧機械式変速機(HMT)を備えたものがある。本願出願人は以前に、油圧ポンプの入力軸と油圧モータの出力軸とが同心状に位置するように油圧ポンプと油圧モータとを直列に配置した直列型(インライン型)の油圧機械式変速機を、特許文献2において提案している。
直列型の油圧機械式変速機では、エンジンから動力伝達される入力軸に、出力軸を相対回転可能に被嵌している。更に、入力軸には、油圧ポンプとシリンダブロックと油圧モータとを被嵌している。シリンダブロックは単独で油圧ポンプ用と油圧モータ用とを兼ねていて、油圧モータから出力軸に動力伝達される。このため、直列型の油圧機械変速機では、一般的な油圧機械式変速機とは異なり、遊星ギヤ機構を介在させずに油圧による変速動力とエンジンの動力とを合成して出力でき、高い動力伝達効率が得られるという利点を有している。
また、従来技術として、操向ハンドルの操作範囲を規制するとともに中立位置に戻す機構を設けた作業車両を、特許文献3及び4において提案している。そして、特許文献4の作業車両においては、操向ハンドルの操舵角を検出するための操舵角センサが設けられている。更に、自動車用のパワーステアリング装置では、特許文献5において、ハンドル操作に要する操舵トルクが増大する逆アシストトルクを発生させるように、電動モータを制御するものが提案されている。
特開2002−059753号公報 特開2005−083497号公報 特開2001−253360号公報 特開2001−055157号公報 特開2006−168650号公報
ところで、特許文献2における油圧機械式変速機を中型又は大型の作業車両に搭載するには、油圧機械式変速機の高出力化を図る必要がある。油圧機械式変速機の高出力化のためには、例えば油圧機械式変速機を大容量化することが挙げられる。しかし、単に油圧機械式変速機を大容量化しただけでは、油圧機械式変速機自体が大型化して製造コストが嵩むだけでなく、動力伝達効率(特に低負荷域での効率)が犠牲になるという問題があった。
また、特許文献1における機構を大型の作業車両に搭載する場合においても、油圧式無段変速機の高出力化に伴って機構が大型化するため、作業車両重量が嵩むだけでなく、動力伝達効率が油圧機械式変速機に比べて低いことから、直進方向の変速域(主変速域)が制限されてしまう。
また、特許文献3のトラクタにおいては、操向ハンドルを含む操向用の操作具と変速用の操作具やブレーキ操作具との機械的な連携が必要なため、ハンドル軸を下方まで延設させる必要があり、操向用の操作具であるステアリング機構の組立が煩雑であった。また、特許文献4のコンバインにおいては、操舵角センサを配置するために、操向ハンドルを中立位置に戻すための操向出力アームに連結させた伸縮するアブソーバを設ける必要があり、その構成が複雑なものとなっていた。
また、特許文献4では、路面モードに応じて操縦ハンドルの操舵角に対して減速割合を変更することで、旋回時の操作性を良好なものとしたものの、直進走行させる操縦ハンドルの中立領域(不感帯幅)が一定である。そのため、圃場などの路面状態によっては、作業時に予期しない振動が機体に伝達し、直進走行時に操縦ハンドルを中立領域以上に回してしまい、蛇行させてしまうことがある。また、特許文献5では、逆アシストトルクにより操作性をよくするものの、操縦ハンドルとアクスル(かじ取り機構)とを操舵軸で連結した構造であるため、操縦ハンドルの中立領域(不感帯幅)は一定のままである。
更には、走行動作を制御するコントローラは、主変速、前後進、旋回それぞれの操作具からの信号を統合して、2つの油圧式無段変速機の斜板角度を制御する必要があり、複雑な制御フローをコントローラで実行しなければならない。そのため、コントローラは、走行動作の制御フローにおける演算負荷が高くなることから、オペレータの操作性に違和感を生じることがある。
本願発明は、上記のような現状を検討して改善を施した作業車両を提供することを技術的課題としている。
本願発明の作業車両は、走行機体に搭載するエンジンと、第一無段変速装置を有する直進系伝動経路と、第二無段変速装置を有する旋回系伝動経路を備え、前記直進系伝動経路の出力と前記旋回系伝動経路の出力を合成して左右の走行部を駆動する作業車両において、前記直進系伝動経路の出力と前記旋回系伝動経路の出力とを連動的に制御する制御部と、回転操作可能な操縦ハンドルとを備えており、前記制御部は、前記操縦ハンドルへの操作に応じて、旋回系伝動経路の出力を増速させ、直進系伝動経路の出力を減速させて、前記操縦ハンドルの操舵角に基づいて旋回時の前記左右の走行部の速度比を決定するものであって、前記操縦ハンドルの中立位置における不感帯幅を変更可能としたものである。
上記作業車両において、前記制御部は、前記走行機体の直進速度が高速になると、前記操縦ハンドルの前記不感帯幅を大きくするものとしてもよい。
上記作業車両において、前記走行機体の前後進に合わせて前記操縦ハンドルによる前記走行機体の旋回半径を変更するものとしてもよい。
上記作業車両において、前記制御部が、前記直進系伝動経路の出力を制御する第1制御部と、前記旋回系伝動経路の出力を制御する第2制御部とで構成されており、前記第1制御部で設定された前記直進系伝動経路の出力を前記第2制御部が受けることで、前記旋回系伝動経路の出力を設定するものであって、
前記第2制御部が、前記走行機体の走行状態に対する前記不感帯幅を記憶しており、当該不感帯幅を任意に設定可能としたものとしてもよい。
本願発明の作業車両は、走行機体に搭載するエンジンと、第一無段変速装置を有する直進系伝動経路と、第二無段変速装置を有する旋回系伝動経路を備え、前記直進系伝動経路の出力と前記旋回系伝動経路の出力を合成して左右の走行クローラを駆動する作業車両において、前記直進系伝動経路の出力を制御する第1制御部と、前記旋回系伝動経路の出力を制御する第2制御部と、回転操作可能な操縦ハンドルとを備えており、前記操縦ハンドルへの操作に応じて、前記第1制御部が前記直進系伝動経路の出力を減速させるとともに、前記第2制御部が前記旋回系伝動経路の出力を増速させ、前記操縦ハンドルの操舵角に基づいて旋回時の前記左右の走行クローラの速度比を決定するものであって、前記直進系伝動経路の出力の減速を開始する前記操縦ハンドルの操舵角を変更可能としたものである。
上記作業車両において、前記旋回系伝動経路の出力の増速を開始する前記操縦ハンドルの操舵角を変更可能としたものとしてもよい。
上記作業車両において、前記走行機体の直進速度が高速になると、前記直進系伝動経路の出力の減速を開始する前記操縦ハンドルの操舵角を大きくするものとしてもよい。
上記作業車両において、前記走行機体の前後進に合わせて前記操縦ハンドルによる前記走行機体の旋回半径を変更するものとしてもよい。
上記作業車両において、走行機体上に設けた操縦部に操縦座席を設けるとともに、該操縦座席前側にステアリングコラムが配置され、該ステアリングコラム上面から上向きに突出したハンドル軸の上端側に平面視略丸型の操縦ハンドルを設けた作業車両において、前記操縦ハンドルの操舵角を検出する操舵角検出部と、前記操縦部に固定された固定ブラケットに対して回転可能に枢着させたチルト機構とを備えており、前記ステアリングコラム、前記ハンドル軸、及び前記操舵角検出部を前記チルト機構に固定させたものとしてもよい。これにより、操縦ハンドルの姿勢調節と連動してステアリングコラムの姿勢が変更されるように構成できるだけでなく、チルト機構上方のステアリング機構に操舵角検出部を設けて機構を小型化でき、ステアリング機構の組立性を向上できる。また、ステアリングコラムの上面側に配置される表示ランプまたはスイッチ支持位置が、操縦ハンドルと連動して位置調節されるから、座乗したオペレータの視界に表示ランプまたはスイッチを支持できる。
上記作業車両において、前記操舵角検出部が、前記ハンドル軸の下端側と連結する第1軸に設けた第1ギヤと、第1ギヤと噛合する第2ギヤと、該第2ギヤを軸支している第2軸と、該第2軸に軸支されるとともに側面に1つの凹部を備えたカムと、該カムの凹部に嵌まるように配置したデテントローラと、前記第2軸先端に設置した操舵角センサとを有したものとしてもよい。これにより、カムによるハンドル操作規制機構と操舵角センサによるセンサ機構とを1軸で構成でき、操舵角検出部を小型化できる。従って、操舵角検出部をチルト機構の可動ブラケットにコンパクトに収容できるため、チルト機構を含むステアリング機構を小型化でき、操縦部内で容易に取付けることができる。即ち、操縦ハンドルを有するステアリング機構を走行機体に固定したブレーキペダル支持ブラケットに連結するだけでよく、操縦部におけるステアリング機構の組立性及びメンテナンス性を向上できる。
そして、前記カムの側面に前記凹部を中心として対称となる位置に2つの凸部を設けており、前記凸部を前記第1軸に当接させたときに、前記操縦ハンドルの操舵角が最大となるものとしてもよい。
上記作業車両において、前記ハンドル軸の中途部であって前記チルト機構上方位置に、多重軸構造により伸縮可能なテレスコ機構を設けたものとしてもよい。
そして、前記チルト機構は、略U字形状で下側に空間を有した可動ブラケットが前記固定ブラケットに枢支されて構成されており、前記操舵角検出部を構成する筐体が前記可動ブラケット下側に吊り下げ固定されており、前記ハンドル軸下端側が、前記可動ブラケット上方に固定された前記テレスコ機構を介して、前記操舵角検出部に連結しているものとしてもよい。
本願発明によると、走行状態に応じて操縦ハンドルの回転に対する不感帯幅を変更できるため、走行機体の姿勢や振動などにより、ハンドル操作に影響があったとしても、意図しない旋回動作を防ぐことができ、操作性を向上できる。また、走行路面(圃場)条件またはオペレータの希望走行フィーリングに適応した操向または変速制御を容易に得ることができ、運転操作性の向上などを容易に図ることができる。
本願発明によると、旋回系伝動経路の出力の増速を開始する操縦ハンドルの操舵角を変更可能とし、走行状態に応じて操縦ハンドルの回転に対する不感帯幅を変更できる。そのため、走行機体の姿勢や振動などにより、ハンドル操作に影響があったとしても、意図しない旋回動作を防ぐことができ、操作性を向上できる。また、走行路面(圃場)条件またはオペレータの希望走行フィーリングに適応した操向または変速制御を容易に得ることができ、運転操作性の向上などを容易に図ることができる。
本願発明によると、直進系伝動経路の出力の減速を開始する操縦ハンドルの操舵角を変更可能とし、走行状態に応じて操縦ハンドルの回転に対する不感帯幅を変更できる。そのため、走行機体の姿勢や振動などにより、ハンドル操作に影響があったとしても、意図しない旋回動作を防ぐことができ、操作性を向上できる。また、走行路面(圃場)条件またはオペレータの希望走行フィーリングに適応した操向または変速制御を容易に得ることができ、運転操作性の向上などを容易に図ることができる。
本願発明によると、高速走行時に不感帯幅を広くすることで、オペレータの意図しない旋回動作を防止でき、操作性の向上を図れるだけでなく、高速走行時の不用意な旋回による事故を防止できる。また、本願発明によると、後進走行時の旋回半径と前進走行時の旋回半径とを変更できるものとすることで、オペレータが後方を向くことにより運転動作が困難となる後進走行時においても操作性を向上できる。
トラクタの左側面図である。 トラクタの右側面図である。 トラクタの平面図である。 走行機体の右側面図である。 走行機体の左側面図である。 走行機体の平面図である。 操縦座席部の平面説明図である。 操縦ハンドル周辺の構成を示す斜視図である。 ブレーキ機構とブレーキペダルの連結構造を示す斜視図である。 油圧機械式変速機の作動油吐出量と車速との関係を示す説明図である。 トラクタの動力伝達系統のスケルトン図である。 トラクタの油圧回路図である。 トラクタの制御系統の構成を示すブロック図である。 トラクタの走行制御系統の構成を示すブロック説明図である。 減速率テーブル及び旋回/直進比テーブルに記憶されたパラメータの関係を示す説明図である。 トラクタの走行制御動作を示すフロー図である。 スピンターンモードにおける操縦ハンドルの操舵角とトラクタの車速との関係を示す説明図である。 ブレーキターンモードにおける操縦ハンドルの操舵角とトラクタの車速との関係を示す説明図である。 緩旋回モードにおける操縦ハンドルの操舵角とトラクタの車速との関係を示す説明図である。 操向感度設定制御の動作を示すフロー図である。 操向感度設定制御に基づいて設定される減速率と旋回/直進比の関係を示す図である。 ステアリング機構の構成を示す斜視図である。 操舵角検出機構の構成を示す分解斜視図である。 操縦ハンドルの操作と操舵角検出機構の動作との関係を示す図である。 操向感度設定制御に基づいて設定される減速率と旋回/直進比の関係の別例を示す図である。 操向感度設定制御に基づいて設定される減速率と旋回/直進比の関係の別例を示す図である。
以下に、本願発明を具体化した実施形態について、農作業用トラクタを図面に基づき説明する。図1〜図6に示す如く、トラクタ1の走行機体2は、走行部としての左右一対の走行クローラ3で支持されている。走行機体2の前部にディーゼルエンジン5(以下、単にエンジンという)を搭載し、走行クローラ3をエンジン5で駆動することによって、トラクタ1が前後進走行するように構成されている。エンジン5はボンネット6にて覆われている。走行機体2の上面にはキャビン7が設置される。該キャビン7の内部には、操縦座席8と、走行クローラ3を操向操作する操縦ハンドル9とが配置されている。キャビン7の左右外側には、オペレータが乗降するステップ10が設けられている。キャビン7の左右側方下側に、エンジン5に燃料を供給する燃料タンク11が設けられており、燃料タンク11は左右のリヤフェンダー21によって覆われている。キャビン7の左側方には、燃料タンク11前方に電力供給するバッテリ817が設けられており、燃料タンク11と共に左のリヤフェンダー21によって覆われている。
走行機体2は、前バンパー12及び旋回用ミッションケース(ドライブアクスル)13を有するエンジンフレーム14と、エンジンフレーム14の後部に着脱自在に固定した左右の機体フレーム15とにより構成されている。旋回用ミッションケース13の左右両端側から外向きに、車軸16を回転可能に突出させており、車軸16を覆う車軸ケース90を旋回用ミッションケース13の左右両側面に設けている。旋回用ミッションケース13の左右両端側に車軸16を介してスプロケット62を取り付けている。機体フレーム15の後部は、エンジン5からの回転動力を適宜変速してスプロケット62に伝達するための直進用ミッションケース17と連結している。
図1〜図4に示す如く、走行機体2の下面側に左右のトラックフレーム61を配置する。トラックフレーム61は前後方向に延設されて左右一対設けられて、エンジンフレーム14及び機体フレーム15の両外側に位置している。左右のトラックフレーム61は左右方向に延設するロアフレーム67によりエンジンフレーム14及び機体フレーム15と連結される。左右のトラックフレーム61それぞれの前端は、旋回用ミッションケース13の左右両側面に設けた車軸ケース90と連結している。左右のトラックフレーム61それぞれの外側には、オペレータが乗降するステップ10aが設けられている。
ロアフレーム67の左右中央部は、連結ブラケット72を介して、エンジンフレーム14の後部側面に固設されている。左右のトラックフレーム61の前後中途部分に、左右方向に延設させた梁フレーム68の左右両端が連結されている。また、梁フレーム68の中央は、前後方向に設けた補強フレーム70を介してロアフレーム67中央と連結されている。左右のトラックフレーム61後部で内方向に突設したリヤビーム73を、直進用ミッションケース17の左右側面に固設したリヤハウジング74に連結して、トラックフレーム61後部を直進用ミッションケース17左右側面で固定させる。
トラックフレーム61には、走行クローラ3にエンジン5の動力を伝える駆動スプロケット62と、走行クローラ3のテンションを維持するテンションローラ63と、走行クローラ3の接地側を接地状態に保持する複数のトラックローラ64と、走行クローラ3の非接地側を保持する中間ローラ65とを設けている。駆動スプロケット62によって走行クローラ3の前側を支持し、テンションローラ63によって走行クローラ3の後側を支持し、トラックローラ64によって走行クローラ3の接地側を支持し、中間ローラ65によって走行クローラ3の非接地側を支持する。テンションローラ63はトラックフレーム61の後端より後方に伸縮可能に構成したテンションフレーム69の後端に回転自在に支持される。トラックローラ64はトラックフレーム61の下部に前後揺動自在に支持したイコライザフレーム71の前後に回転自在に支持される。
また、トラクタ1の前部にはフロントドーザ80を装着可能に構成している。左右一対のドーザブラケット81が、エンジンフレーム14の前部側面と車軸ケース90とロアフレーム67に固定されており、フロントドーザ80の平面視U字状(コ字状)の支持アーム83が左右のドーザブラケット81の外側(機外側)に着脱可能に枢支される。左右ドーザブラケット81は、前端内側(機内側)が左右エンジンフレーム14側面に連結されており、後端下側がロアフレーム67中途部の上面に連結されており、中途部が車軸ケース90中途部を上下で狭持するように連結されている。ドーザブラケット81は、エンジンフレーム14と車軸ケース90とロアフレーム67の3体に強固に固定されることで、フロントドーザ80による重作業に耐えられる強度を確保できる。
直進用ミッションケース17の後部には、例えばロータリ耕耘機などの対地作業機(図示省略)を昇降動させる油圧式昇降機構22を着脱可能に取付けている。前記対地作業機は、左右一対のロワーリンク23及びトップリンク24からなる3点リンク機構111を介して直進用ミッションケース17の後部に連結される。直進用ミッションケース17の後側面には、ロータリ耕耘機等の作業機にPTO駆動力を伝達するためのPTO軸25を後ろ向きに突設している。
図4〜図6に示す如く、エンジン5の後側面から後ろ向きに突設するエンジン5の出力軸(ピストンロッド)5a後端には、フライホイル26を直結するように取付けている。両端に自在軸継手を有する動力伝達軸29を介して、フライホイル26から後ろ向きに突出した主動軸27と、直進用ミッションケース17前面側から前向きに突出した入力カウンタ軸28とを連結している。直進用ミッションケース17の前面下部から前向きに突出した直進用出力軸30には、両端に自在軸継手を有する動力伝達軸31を介して、旋回用ミッションケース13から後向きに突出した直進用入力カウンタ軸508を連結している。エンジン5の前側面から前向きに突設するエンジン5の出力軸(ピストンロッド)5a前端には、両端に自在軸継手を有する動力伝達軸711を介して、旋回用ミッションケース13から後ろ向きに突出した旋回用入力カウンタ軸712を連結している。
図1〜図6に示すように、油圧式昇降機構22は、作業部ポジションダイヤル51等の操作にて作動制御する左右の油圧リフトシリンダ117と、直進用ミッションケース17の上面蓋体にリフト支点軸を介して基端側を回動可能に軸支する左右のリフトアーム120と、左右のロワーリンク23に左右のリフトアーム120を連結させる左右のリフトロッド121を有している。右のリフトロッド121の一部を油圧制御用の水平シリンダ122にて形成し、右のリフトロッド121の長さを水平シリンダ122にて伸縮調節可能に構成している。トップリンク24と左右のロワーリンク23に対地作業機を支持した状態下で、水平シリンダ122のピストンを伸縮させて、右のリフトロッド121の長さを変更した場合、前記対地作業機の左右傾斜角度が変化するように構成している。
次に、図7〜図9等を参照しながら、キャビン7内部の構造を説明する。キャビン7内における操縦座席8の前方にステアリングコラム32を配置している。ステアリングコラム32は、キャビン7内部の前面側に配置したダッシュボード33の背面側に埋設するような状態で立設している。ステアリングコラム32上面から上向きに突出したハンドル軸921の上端側に、平面視略丸型の操縦ハンドル9を取り付けている。そして、ステアリングコラム32内のハンドル軸921下端に、操縦ハンドル9の操舵角度を検出する操舵角センサ821を備えた操舵角(ハンドル切れ角)検出機構880を連結している。
ステアリングコラム32の右側には、走行機体2を制動操作するためのブレーキペダル35を配置している。ステアリングコラム32の左側には、走行機体2の進行方向を前進と後進とに切り換え操作するための前後進切換レバー36(リバーサレバー)と、動力継断用のクラッチ(図示省略)を遮断操作するためのクラッチペダル37とを配置している。ステアリングコラム32の背面側には、ブレーキペダル35を踏み込み位置に保持するための駐車ブレーキレバー43が配置されている。
ステアリングコラム32の左側で前後進切換レバー36の下方には、前後進切換レバー36に沿って延びる誤操作防止体38(リバーサガード)を配置している。接触防止具である誤操作防止体38を前後進切換レバー36下方に配置することによって、トラクタ1に乗降する際に、オペレータが前後進切換レバー36に不用意に接触するのを防止している。ダッシュボード33の背面上部側には、液晶パネルを内蔵した操作表示盤39を設けている。
キャビン7内にある操縦座席8前方の床板40においてステアリングコラム32の右側には、エンジン5の回転速度または車速などを制御するアクセルペダル41を配置している。なお、床板40上面の略全体は平坦面に形成している。操縦座席8を挟んで左右両側にはサイドコラム42を配置している。操縦座席8と左サイドコラム42との間には、トラクタ1の走行速度(車速)を強制的に大幅に低減させる超低速レバー44(クリープレバー)と、直進用ミッションケース17内の走行副変速ギヤ機構の出力範囲を切換えるための副変速レバー45と、PTO軸25の駆動速度を切換え操作するためのPTO変速レバー46とを配置している。
操縦座席8と右サイドコラム42との間には、操縦座席8に着座したオペレータの腕や肘を載せるためのアームレスト49を設けている。アームレスト49は、操縦座席8とは別体に構成すると共に、トラクタ1の走行速度を増減速させる主変速レバー50と、ロータリ耕耘機といった対地作業機の高さ位置を手動で変更調節するダイヤル式の作業部ポジションダイヤル51(昇降ダイヤル)とを備えている。なお、アームレスト49は、後端下部を支点として複数段階に跳ね上げ回動可能な構成になっている。また、本実施形態においては、主変速レバー50を前傾操作したとき、走行機体2の車速が増加する一方、主変速レバー50を後傾操作したとき、走行機体2の車速が低下する。更に、アームレスト49は、主変速レバー50の前後傾動を検出するポテンショメータ(可変抵抗器)型の主変速センサ822(図13参照)を備える。
右サイドコラム42には、前側から順に、タッチパネル機能を有してトラクタ1各部への指令操作が可能な操作用モニタ55と、エンジン5の回転速度を設定保持するスロットルレバー52と、PTO軸25からロータリ耕耘機等の作業機への動力伝達を継断操作するPTOクラッチスイッチ53と、直進用ミッションケース17の上面側に配置する油圧外部取出バルブ430を切換操作するための複数の油圧操作レバー54(SCVレバー)と、リヤハウジング74前面に配置する複動バルブ機構431を切換操作するための単複動切換スイッチ56を配置している。ここで、油圧外部取出バルブ430は、トラクタ1に後付けされるフロントローダといった別の作業機の油圧機器に作動油を供給制御するためのものである。複動バルブ機構431は、直進用ミッションケース17の上面側に配置する昇降バルブ機構652とともに動作することでリフトシリンダ117を複動式で作動させるためのものである。
次に、主として図8及び図9を参照しながら、ブレーキペダル35とブレーキ機構751との関係について説明する。ステアリングコラム32前方において、ブレーキペダル軸755を軸支するブレーキペダル支持ブラケット916がボード支持板(エアカットプレート)901背面(操縦座席8側)に固定されている。ブレーキペダル軸755にはブレーキペダル35の基端ボス部35aを被嵌しており、ブレーキペダル35の基端ボス部35aをブレーキペダル軸755と一体回動するように連結している。
ブレーキペダル軸755の両端部には、前向きに突出するペダル軸アーム756を固着しており、ペダル軸アーム756はブレーキペダル軸755と共に回動する。なお、ブレーキペダル軸755には、クラッチペダル37の基端ボス部も回動可能に被嵌している。そして、ブレーキペダル軸755の左右両端それぞれに、クラッチ位置センサ829(図13参照)及びブレーキ位置センサ828を固定している。また、ブレーキペダル35のペダルアーム35bに対向する位置にブレーキスイッチ851を配置する一方、クラッチペダル37のペダルアーム37bに対向する位置にクラッチスイッチ852(図13参照)を配置する。
ボード支持板(エアカットプレート)901の左右下部側には、左右一対で横向きのブレーキ操作軸757を支持させている。左のブレーキ操作軸757には、旋回用ミッションケース13内のブレーキ機構751の制動アーム752と連結するリンクボス体758を回動可能に被嵌している。リンクボス体758外周面に突設させたリンクアーム759に、左側ペダル軸アーム756と連結した上下長手のリンクロッド762の下端と、ブレーキ機構751の制動動作を段階的なものとする二段階伸縮リンク体763の上端とが連結されている。二段階伸縮リンク体763の下端が、ブレーキロッド766後端のリンクアーム767の先端と連結している。ブレーキロッド766は、エンジンフレーム14に固定されたリンク支持ブラケット764,765に支持されるとともに前後方向に延設されている。そして、ブレーキロッド766前端のリンクアーム768が、連結プレート753を介して、旋回用ミッションケース13内のブレーキ機構751の制動アーム752と連結している。
すなわち、ブレーキペダル軸755左端は、リンクロッド762、二段階伸縮リンク体763、及びブレーキロッド766を介して、ブレーキ機構751の制動アーム752と連結している。従って、ブレーキペダル35の踏み込みに従って、ブレーキペダル軸755が回動することで、制動アーム752を回動させることができ、ブレーキ機構751による制動動作を実行できる。このとき、二段階伸縮リンク体763が作用することで、走行速度を調整する踏み込み量が少ない時(ブレーキ機構751の遊び領域)に比べて、急ブレーキをかける踏み込み量が多い時(ブレーキ機構751による制動領域)には、ブレーキペダル35への踏力が大きくなる。
右のブレーキ操作軸757には、リンクアーム761を有するリンクボス体760を回動可能に被嵌している。右側ペダル軸アーム756に、ブレーキペダル35への踏み込みを段階的なものとする二段階伸縮リンク体769の上端が連結され、リンクボス体760外周面に突設させたリンクアーム761に、二段階伸縮リンク体769の下端が連結されている。ブレーキペダル35の踏み込みに従って、ブレーキ操作軸757を回動させたとき、二段階伸縮リンク体769が作用することで、走行速度を調整する踏み込み量が少ない時(ブレーキ機構751の遊び領域)に比べて、急ブレーキをかける踏み込み量が多い時(ブレーキ機構751による制動領域)には、ブレーキペダル35への踏力が大きくなる。
駐車ブレーキレバー43は、駐車ブレーキアーム770を介して係止部材771の一端と連結している。側面視弓形の係止部材771は、ブレーキペダル支持機構916に軸止されている。ブレーキペダル35のペダルアーム35bの左側面には、係止部材771の係止爪に係合させる係止板775を設けている。これにより、ブレーキペダル35を踏み込んだ状態で駐車ブレーキレバー43を操作することで、係止部材771を係止板775に係止させて、トラクタ1の制動状態(駐車状態)を維持させる。
次に、主として図4〜図6、図10、及び図11を参照しながら、直進用ミッションケース17及び旋回用ミッションケース13の内部構造とトラクタ1の動力伝達系統について説明する。直進用ミッションケース17の前室内には、直進用の油圧機械式無段変速機500と、後述する前後進切換機構501を経由した回転動力を変速する機械式のクリープ変速ギヤ機構502及び走行副変速ギヤ機構503とを配置している。直進用ミッションケース17の中間室内には、油圧機械式無段変速機500からの回転動力を正転又は逆転方向に切り換える前後進切換機構501を配置している。直進用ミッションケース17の後室内には、エンジン5からの回転動力を適宜変速してPTO軸25に伝達するPTO変速機構505を配置している。クリープ変速ギヤ機構502及び走行副変速ギヤ機構503は、前後進切換機構501経由の変速出力を多段変速する走行変速ギヤ機構に相当するものである。直進用ミッションケース17の右外面前部には、エンジン5の回転動力で駆動する作業機用油圧ポンプ481及び走行用油圧ポンプ482を収容したポンプケース480を取り付けている。
エンジン5の後側面から後ろ向きに突設するエンジン5の出力軸5aにはフライホイル26を直結している。フライホイル26から後ろ向きに突出した主動軸27に、両端に自在軸継手を有する動力伝達軸29を介して、直進用ミッションケース17前面側から前向きに突出した入力カウンタ軸28を連結している。エンジン5の回転動力は、主動軸27及び動力伝達軸29を経由して直進用ミッションケース17の入力カウンタ軸28に伝達され、油圧機械式無段変速機500とクリープ変速ギヤ機構502又は走行副変速ギヤ機構503とによって適宜変速される。クリープ変速ギヤ機構502又は走行副変速ギヤ機構503を経由した変速動力は、前方出力軸30、動力伝達軸31及び直進用入力カウンタ軸508を介して、旋回用ミッションケース13内のギヤ機構に伝達される。
直進用の油圧機械式無段変速機(HMT)500は、主変速入力軸511に主変速出力軸512を同心状に配置し且つ油圧ポンプ部521とシリンダブロックと油圧モータ部522とを直列状に配置した直列型(インライン型)のものである。入力カウンタ軸28の後端側には主変速入力ギヤ513を相対回転不能に被嵌している。主変速入力軸511の後端側には、主変速入力ギヤ513に常時噛み合う入力伝達ギヤ514を固着している。従って、入力カウンタ軸28の回転動力は、主変速入力ギヤ513、入力伝達ギヤ514及び主変速入力軸511を介して油圧機械式無段変速機500に伝達される。主変速出力軸512には、走行出力用として、主変速高速ギヤ516、主変速逆転ギヤ517及び主変速低速ギヤ515を相対回転不能に被嵌している。主変速入力軸511の入力側と主変速出力軸512の出力側とは、同一側(油圧機械式無段変速機500から見ていずれも後方側)に位置している。
油圧機械式無段変速機500は、可変容量形の油圧ポンプ部521と、当該油圧ポンプ部521から吐出する高圧の作動油によって作動する定容量形の油圧モータ部522とを備えている。油圧ポンプ部521には、主変速入力軸511の軸線に対して傾斜角を変更可能して作動油供給量を調節するポンプ斜板523を設けている。ポンプ斜板523には、主変速入力軸511の軸線に対するポンプ斜板523の傾斜角を変更調節する主変速油圧シリンダ524を連動連結している。実施形態では、油圧機械式無段変速機500に主変速油圧シリンダ524を組み付けていて、一つの部材としてユニット化している。
主変速レバー50の操作量に比例して主変速油圧シリンダ524を駆動させると、これに伴い主変速入力軸511の軸線に対するポンプ斜板523の傾斜角が変更される。実施形態のポンプ斜板523は、傾斜略ゼロ(ゼロを含むその前後)の中立角度を挟んで一方(正)の最大傾斜角度と他方(負)の最大傾斜角度との間の範囲で角度調節可能であり、且つ、走行機体2の車速が最低のときにいずれか一方に傾斜した角度(この場合は負で且つ最大付近の傾斜角度)に設定している。
ポンプ斜板523の傾斜角が略ゼロ(中立角度)のときは、油圧ポンプ部521では入力側プランジャ群が押し引きされない。シリンダブロックが主変速入力軸511と同一方向且つ略同一回転速度で回転するものの、油圧ポンプ部521からの作動油供給がないため、シリンダブロックの出力側プランジャ群ひいては油圧モータ部522が駆動せず、主変速入力軸511と略同一回転速度にて主変速出力軸512が回転する。
主変速入力軸511の軸線に対してポンプ斜板523を一方向(正の傾斜角又は正転傾斜角といってもよい)側に傾斜させたときは、油圧ポンプ部521が入力側プランジャ群を押し引きして油圧モータ部522に作動油を供給し、シリンダブロックの出力側プランジャ群を介して油圧モータ部522を主変速入力軸511と同一方向に回転させる。このとき、シリンダブロックは主変速入力軸511と同一方向且つ略同一回転速度で回転するため、主変速入力軸511より速い回転速度で主変速出力軸512が回転する。すなわち、主変速入力軸511の回転速度(シリンダブロックの回転速度といってもよい)に油圧モータ部522の回転速度が加算されて、主変速出力軸512に伝達される。その結果、主変速入力軸511の回転速度より高い回転速度の範囲で、ポンプ斜板523の傾斜角(正の傾斜角又は正転傾斜角といってもよい)に比例して、主変速出力軸512の変速動力が変更される。ポンプ斜板523が正で且つ最大付近の傾斜角度のときに、主変速出力軸512は高速回転するものの、走行機体2は、最低速(略ゼロ)から最高速までのちょうど中間に当たる中間速になる(図10の白抜き四角印参照)。
主変速入力軸511の軸線に対してポンプ斜板523を他方向(負の傾斜角又は逆転傾斜角といってもよい)側に傾斜させたときは、油圧ポンプ部521が入力側プランジャ群を押し引きして油圧モータ部522に作動油を供給し、シリンダブロックの出力側プランジャ群を介して油圧モータ部522を主変速入力軸511と逆方向に回転させる。このとき、シリンダブロックは主変速入力軸511と同一方向且つ略同一回転速度で回転するため、主変速入力軸511より低い回転速度で主変速出力軸512が回転する。すなわち、主変速入力軸511の回転速度(シリンダブロックの回転速度といってもよい)から油圧モータ部522の回転速度が減算されて、主変速出力軸512に伝達される。その結果、主変速入力軸511の回転速度より低い回転速度の範囲で、ポンプ斜板523の傾斜角(負の傾斜角又は逆転傾斜角といってもよい)に比例して、主変速出力軸512の変速動力が変更される。ポンプ斜板523が負で且つ最大付近の傾斜角度のときに、主変速出力軸512は最低速(略ゼロ)になる(図10の白抜き丸印参照)。詳細は後述するが、実施形態では、ポンプ斜板523が負で且つ最大付近の傾斜角度のときに、走行機体2は最低速(略ゼロ)か最高速となるように構成している。
なお、作業機用及び走行用油圧ポンプ481,482の両者を駆動させるポンプ駆動軸483には、ポンプ駆動ギヤ484を相対回転不能に被嵌している。ポンプ駆動ギヤ484は、平ギヤ機構485を介して、入力カウンタ軸28の主変速入力ギヤ513を動力伝達可能に連結している。また、直進用ミッションケース17は、油圧機械式無段変速機500や前後進切換機構501等に潤滑用の作動油を供給する潤滑油ポンプ518を備えている。潤滑油ポンプ518のポンプ軸519に固着したポンプギヤ520は主変速入力軸511の入力伝達ギヤ514に常時噛み合っている。従って、作業機用及び走行用油圧ポンプ481,482と潤滑油ポンプ518とは、エンジン5の回転動力によって駆動する。
次に、前後進切換機構501を介して実行する前進と後進との切換構造について説明する。入力カウンタ軸28の後部側に、前進高速ギヤ機構である遊星ギヤ機構526と、前進低速ギヤ機構である低速ギヤ対525とを配置している。遊星ギヤ機構526は、入力カウンタ軸28に回転可能に軸支した入力側伝動ギヤ529と一体的に回転するサンギヤ531、複数の遊星ギヤ533を同一半径上に回転可能に軸支したキャリア532、並びに内周面に内歯を有するリングギヤ534を備えている。サンギヤ531及びリングギヤ534は入力カウンタ軸28に回転可能に被嵌している。キャリア532は入力カウンタ軸28に相対回転不能に被嵌している。サンギヤ531はキャリア532の各遊星ギヤ533と半径内側から噛み合っている。また、リングギヤ534の内歯は各遊星ギヤ533と半径外側から噛み合っている。入力カウンタ軸28には、リングギヤ534と一体回転する出力側伝動ギヤ530も回転可能に軸支している。低速ギヤ対525を構成する入力側低速ギヤ527と出力側低速ギヤ528とは一体構造になっていて、入力カウンタ軸28のうち遊星ギヤ機構526と主変速入力ギヤ513との間に回転可能に軸支している。
直進用ミッションケース17には、入力カウンタ軸28、主変速入力軸511及び主変速出力軸512と平行状に延びる走行中継軸535並びに走行伝動軸536を配置している。伝達軸としての走行中継軸535に前後進切換機構501を設けている。すなわち、走行中継軸535には、湿式多板型の前進高速油圧クラッチ539で連結される前進高速ギヤ540と、湿式多板型の後進油圧クラッチ541で連結される後進ギヤ542と、湿式多板型の前進低速油圧クラッチ537で連結される前進低速ギヤ538とを被嵌している。走行中継軸535のうち前進高速油圧クラッチ539と後進ギヤ542との間には、走行中継ギヤ543を相対回転不能に被嵌している。走行伝動軸536には、走行中継ギヤ543と常時噛み合う走行伝動ギヤ544を相対回転不能に被嵌している。主変速出力軸512の主変速低速ギヤ515が入力カウンタ軸28側にある低速ギヤ対525の入力側低速ギヤ527と常時噛み合い、出力側低速ギヤ528が前進低速ギヤ538と常時噛み合っている。主変速出力軸512の主変速高速ギヤ516が入力カウンタ軸28側にある遊星ギヤ機構526の入力側伝動ギヤ529と常時噛み合い、出力側伝動ギヤ530が前進高速ギヤ540と常時噛み合っている。主変速出力軸512の主変速逆転ギヤ517が後進ギヤ542と常時噛み合っている。
前後進切換レバー36を前進側に操作すると、前進低速油圧クラッチ537又は前進高速油圧クラッチ539が動力接続状態となり、前進低速ギヤ538又は前進高速ギヤ540と走行中継軸535とが相対回転不能に連結される。その結果、主変速出力軸512から低速ギヤ対525又は遊星ギヤ機構526を介して走行中継軸535に、前進低速又は前進高速の回転動力が伝達され、走行中継軸535から走行伝動軸536に動力伝達される。前後進切換レバー36を後進側に操作すると、後進油圧クラッチ541が動力接続状態となり、後進ギヤ542と走行中継軸535とが相対回転不能に連結される。その結果、主変速出力軸512から主変速逆転ギヤ517及び後進ギヤ542を介して走行中継軸535に、後進の回転動力が伝達され、走行中継軸535から走行伝動軸536に動力伝達される。
なお、前後進切換レバー36の前進側操作によって、前進低速油圧クラッチ537及び前進高速油圧クラッチ539のどちらが動力接続状態になるかは、主変速レバー50の操作量に応じて決定される。また、前後進切換レバー36が中立位置のときは、全ての油圧クラッチ537,539,541がいずれも動力切断状態となり、主変速出力軸512からの走行駆動力が略ゼロ(主クラッチ切りの状態)になる。
ここで、図10は、油圧機械式無段変速機500の作動油吐出量(ポンプ斜板523の傾斜角度)とトラクタ1の車速との関係を示している。実施形態において、前後進切換レバー36の操作状態に拘らず主変速レバー50を中立操作した場合は、主変速油圧シリンダ524の駆動によってポンプ斜板523が負で且つ最大付近の傾斜角度(逆転傾斜角)となり(白抜き丸印参照)、主変速出力軸512や走行中継軸535は最低速回転状態(略ゼロ)になる。ひいてはトラクタ1の車速が略ゼロになる。
前後進切換レバー36を前進側に操作した状態で主変速レバー50を中立から中間速程度まで増速側に操作した場合は、主変速油圧シリンダ524の駆動によってポンプ斜板523が負で且つ最大付近の傾斜角度(逆転傾斜角)からゼロを介して正で且つ最大付近の傾斜角度(正転傾斜角)まで変化し(白抜き四角印参照)、油圧モータ部522から主変速出力軸512への変速動力を略ゼロから高速まで増速させる。このとき、前進低速油圧クラッチ537が動力接続状態となり、前進低速ギヤ538又は前進高速ギヤ540と走行中継軸535とが相対回転不能に連結される。その結果、主変速出力軸512から低速ギヤ対525を介して走行中継軸535に、前進低速の回転動力が伝達され、主変速出力軸512への増速動力によって走行中継軸535が最低速回転状態から前進中間速回転状態まで変化する(前進低速域FL参照)。そして、走行中継軸535から走行伝動軸536に動力伝達される。
前後進切換レバー36を前進側に操作した状態で主変速レバー50を中間速から最高速程度まで増速側に操作した場合は、主変速油圧シリンダ524の駆動によって正で且つ最大付近の傾斜角度(正転傾斜角)からゼロを介して負で且つ最大付近の傾斜角度(逆転傾斜角)まで変化し、ポンプ斜板523が油圧モータ部522から主変速出力軸512への変速動力を高速から略ゼロまで減速させる。このとき、前進高速油圧クラッチ539が動力接続状態となり、前進高速ギヤ540と走行中継軸535とが相対回転不能に連結される。その結果、主変速出力軸512から遊星ギヤ機構526を介して走行中継軸535に、前進高速の回転動力が伝達される。すなわち、遊星ギヤ機構526においてエンジン5からの動力と主変速出力軸512への減速動力とが合成されてから、当該合成動力によって走行中継軸535が前進中間速回転状態から前進最高速回転状態まで変化する(前進高速域FH参照)。そして、走行中継軸535から走行伝動軸536に動力伝達される。走行機体2は最高速となる。
前後進切換レバー36を後進側に操作した状態で主変速レバー50を中立から増速側に操作した場合は、主変速油圧シリンダ524の駆動によってポンプ斜板523が負で且つ最大付近の傾斜角度(逆転傾斜角)からゼロを介して正で且つ最大付近の傾斜角度(正転傾斜角)まで変化し、油圧モータ部522から主変速出力軸512への変速動力を略ゼロから高速まで増速させる。このとき、後進油圧クラッチ541が動力接続状態となり、後進ギヤ542と走行中継軸535とが相対回転不能に連結される。その結果、主変速出力軸512から主変速逆転ギヤ517及び後進ギヤ542を介して走行中継軸535に、後進の回転動力が伝達され、主変速出力軸512への増速動力によって走行中継軸535が最低速回転状態から後進高速回転状態まで変化する(後進域R参照)。そして、走行中継軸535から走行伝動軸536に動力伝達される。
実施形態では、前記油圧ポンプ部521の斜板傾斜角を正転傾斜角からゼロを介して逆転傾斜角まで変化させて前記主変速出力軸512への変速動力を高速からゼロまで減速させ、前記遊星ギヤ機構526において前記エンジン5からの動力と前記主変速出力軸512への減速動力とを合成し、前記合成動力によって前記伝達軸535を前進中間速回転状態から前進最高速回転状態まで変化させるから、前記油圧機械式無段変速機500を大容量化せずに、前記遊星ギヤ機構526を利用した変速可能範囲の拡大を確実に実現でき、前記油圧機械変速機500の高効率化、軽量化及び低コスト化と前記直進用ミッションケース17の高出力化とを的確に両立できる。
更に、実施形態では、前記油圧ポンプ部521の斜板傾斜角を逆転傾斜角からゼロを介して正転傾斜角まで変化させて前記主変速出力軸512への変速動力をゼロから高速まで増速させ、前記主変速出力軸512への増速動力によって前記伝達軸535を最低速回転状態から前進中間速回転状態まで変化させるから、初速がゼロの状態からトラクタ1を発進させるゼロ発進時の出力トルクを確実に確保できる。このため、前記油圧機械変速機500の高効率化、軽量化及び低コスト化と前記直進用ミッションケース17の高出力化とを両立したものでありながら、トラクタ1の微速走行性能を向上できる。
次に、走行変速ギヤ機構であるクリープ変速ギヤ機構502及び走行副変速ギヤ機構503を介して実行する超低速と低速と高速との切換構造について説明する。直進用ミッションケース17内には、前後進切換機構501を経由した回転動力を変速する機械式のクリープ変速ギヤ機構502及び走行副変速ギヤ機構503と、走行伝動軸536と同軸状に延びる走行カウンタ軸545と、走行カウンタ軸545と平行状に延びる副変速軸546とを配置している。
走行カウンタ軸545の後部側には伝達ギヤ547とクリープギヤ548とを設けている。伝達ギヤ547は、走行カウンタ軸545に回転可能に被嵌すると共に、走行伝動軸536に一体回転するように連結している。クリープギヤ548は走行カウンタ軸545に回転可能に被嵌している。走行カウンタ軸545のうち伝達ギヤ547とクリープギヤ548との間には、クリープシフタ549を相対回転不能で且つ軸線方向にスライド可能にスプライン嵌合させている。超低速レバー44を入り切り操作することによって、クリープシフタ549がスライド移動して、伝達ギヤ547及びクリープギヤ548が走行カウンタ軸545に択一的に連結される。副変速軸546のうち前室内の箇所には、減速ギヤ対550を回転可能に被嵌している。減速ギヤ対550を構成する入力側減速ギヤ551と出力側減速ギヤ552とは一体構造になっていて、走行カウンタ軸545の伝達ギヤ547が副変速軸546の入力側減速ギヤ551に常時噛み合い、クリープギヤ548が出力側減速ギヤ552に常時噛み合っている。
走行カウンタ軸545の前部側には低速中継ギヤ553と高速中継ギヤ554とを設けている。低速中継ギヤ553は走行カウンタ軸545に固着している。高速中継ギヤ554は走行カウンタ軸545に相対回転不能に被嵌している。副変速軸546のうち減速ギヤ対550よりも前部側には、低速中継ギヤ553に噛み合う低速ギヤ555と、高速中継ギヤ554に噛み合う高速ギヤ556とを回転可能に被嵌している。副変速軸546のうち低速ギヤ555と高速ギヤ556との間には、副変速シフタ557を相対回転不能で且つ軸線方向にスライド可能にスプライン嵌合させている。副変速レバー45を操作することによって、副変速シフタ557がスライド移動して、低速ギヤ555及び高速ギヤ556が副変速軸546に択一的に連結される。
更に、走行カウンタ軸545や副変速軸546と平行状に延びる直進用中継軸568及び直進用出力軸30を配置している。副変速軸546の前端側に相対回転不能に被嵌した主動ギヤ569に、直進用中継軸568に相対回転不能に被嵌した従動ギヤ570を常時噛み合わせている。直進用中継軸568の後端側に相対回転不能に被嵌した直進用中継ギヤ582に、直進用出力軸30に相対回転不能に被嵌した直進用出力ギヤ583を常時噛み合わせている。
副変速軸546の主動ギヤ569と、直進用中継軸568の従動ギヤ570及び直進用中継ギヤ582と、直進用出力軸30の直進用出力ギヤ583とが、副変速軸456の回転を直進用出力軸30に動力伝達させる直進用出力ギヤ機構509を構成している。直進用出力ギヤ機構509に、直進用ピックアップ回転センサ(直進車速センサ)823を設けて、直進用ピックアップ回転センサ823によって、直進出力の回転数(直進車速)を検出するように構成している。例えば、直進用中継ギヤ582に直進用ピックアップ回転センサ823を対向させて配置し、直進用中継ギヤ582の回転数により、直進出力の回転数(直進車速)を検出する。
実施形態では、超低速レバー44を入り操作すると共に副変速レバー45を低速側に操作すると、クリープギヤ548が走行カウンタ軸545に相対回転不能に連結されると共に、低速ギヤ555が副変速軸546に相対回転不能に連結され、走行伝動軸536から走行カウンタ軸545、副変速軸546及び直進用中継軸568を経て、直進用出力軸30より超低速の走行駆動力が旋回用ミッションケース13に向けて出力される。なお、超低速レバー44と副変速レバー45とは、変速牽制部材を介して連動連結していて、副変速レバー45の高速側操作と超低速レバー44の入り操作との両立を禁止するように構成している。すなわち、超低速レバー44を入り操作した状態では副変速レバー45を高速側に操作できず、副変速レバー45を高速側に操作した状態では超低速レバー44を入り操作できないように構成している。
超低速レバー44を切り操作すると共に副変速レバー45を低速側に操作すると、伝達ギヤ547が走行カウンタ軸545に相対回転不能に連結されると共に、低速ギヤ555が副変速軸546に相対回転不能に連結され、走行伝動軸536から走行カウンタ軸545、副変速軸546及び直進用中継軸568などを経て、直進用出力軸30より超低速の走行駆動力が旋回用ミッションケース13に向けて出力される。超低速レバー44を切り操作すると共に副変速レバー45を高速側に操作すると、伝達ギヤ547が走行カウンタ軸545に相対回転不能に連結されると共に、高速ギヤ556が副変速軸546に相対回転不能に連結され、走行伝動軸536から走行カウンタ軸545、副変速軸546及び直進用中継軸568などを経て、直進用出力軸30より高速の走行駆動力が旋回用ミッションケース13に向けて出力される。
旋回用ミッションケース13から後ろ向きに突出する直進用入力カウンタ軸508と、直進用ミッションケース17の前面下部から前向きに突出する直進用出力軸30とを、動力伝達軸31によって連結している。旋回用ミッションケース13は、エンジン5からの回転動力を適宜変速する旋回用の油圧式無段変速機(HST)701と、油圧式無段変速機701からの出力回転を左右の走行クローラ3(スプロケット62)に伝達する差動ギヤ機構702と、差動ギヤ機構702からの回転動力と直進用ミッションケース17からの回転動力とを合成する左右一対の遊星ギヤ機構703とを備える。
油圧式無段変速機701は、1対の油圧ポンプ部704及び油圧モータ部705を並列に配置しており、ポンプ軸706に伝達された動力にて、油圧ポンプ部704から油圧モータ部705に向けて作動油が適宜送り込まれる。なお、ポンプ軸706には、油圧ポンプ704及び油圧モータ705に作動油を供給するためのチャージポンプ707が取付けられている。旋回用油圧式無段変速機構701は、油圧ポンプ部704におけるポンプ斜板708の傾斜角度を変更調節して、油圧モータ部705への作動油の吐出方向及び吐出量を変更することにより、油圧モータ705から突出したモータ軸709の回転方向及び回転数を任意に調節するように構成されている。
旋回用ミッションケース13は、旋回用入力カウンタ軸712を油圧ポンプ部704のポンプ軸706と平行に配置しており、旋回用入力カウンタ軸712に旋回用入力ギヤ713を相対回転不能に被嵌している。旋回用入力カウンタ軸712とポンプ軸706の間には、旋回用中継軸714を旋回用入力カウンタ軸712及びポンプ軸706と平行に配置しており、旋回用入力ギヤ713と常時噛合させた旋回用中継ギヤ715を旋回用中継軸714に対して相対回転不能に被嵌している。ポンプ軸706には、旋回用中継ギヤ715と常時噛合させたポンプ入力ギヤ710を相対回転不能に被嵌しており、旋回用入力カウンタ軸712に伝達されたエンジン5からの回転動力が、旋回用中継軸714を介してポンプ軸706に伝達される。
旋回用ミッションケース13内において、モータ軸709後端に相対回転不能に被嵌させたピニオンギヤ716の両側に左右一対のサイドギヤ717を噛合させたベベルギヤ機構にて、差動ギヤ機構702を構成している。また、差動ギヤ機構702は、一端にサイドギヤ717を相対回転不能に被嵌させた左右一対の旋回用出力軸718を左右側方に向けて延設している。左右一対の旋回用出力軸718それぞれの他端に、左右一対の遊星ギヤ機構703に動力伝達させる旋回出力ギヤ719を、相対回転不能に被嵌させている。
モータ軸709から出力される油圧モータ部705からの回転動力(旋回回転動力)は、差動ギヤ機構702により、正逆回転動力に分岐して左右一対の旋回用出力軸718を介して、左右一対の遊星ギヤ機構703に伝達される。すなわち、差動ギヤ機構702において、左サイドギヤ717を被嵌させた左旋回用出力軸718を介して逆転回転動力として、左遊星ギヤ機構703に伝達される一方、右サイドギヤ717を被嵌させた右旋回用出力軸718を介して正転回転動力として、右遊星ギヤ機構703に伝達される。
旋回用油圧式無段変速機構701の油圧モータ部705に、旋回用ピックアップ回転センサ(旋回車速センサ)824を設けて、旋回用ピックアップ回転センサ824によって、旋回出力の回転数(旋回車速)を検出するように構成している。例えば、モータ軸709上に旋回用パルス発生回転輪体を設け、旋回用パルス発生回転輪体に旋回用ピックアップ回転センサ824を対向させて配置し、旋回用パルス発生回転輪体の回転数により、直進出力の回転数(旋回車速)を検出する。
旋回用ミッションケース13内において、直進用ミッションケース17からの回転動力が伝達される直進用入力カウンタ軸508上に、ブレーキペダル35の動作にあわせて連動するブレーキ機構751を設けている。そして、直進用入力カウンタ軸508前端に、直進用入力ギヤ720を相対回転不能に被嵌させている。また、直進用中継軸721を直進用入力カウンタ軸508と平行に配置しており、直進用入力ギヤ720と常時噛合させた直進用中継ギヤ722を直進用中継軸721に対して相対回転不能に被嵌している。
直進用中継軸721後端に相対回転不能に被嵌させたピニオンギヤ723にリングギヤ724を噛合させたベベルギヤ機構を設けており、左右に延設させた直進用出力軸725にリングギヤ724を相対回転不能に被嵌させている。直進用出力軸725の両端がそれぞれ、左右一対の遊星ギヤ機構703それぞれと連結している。直進用入力カウンタ軸508に入力される直進用ミッションケース17からの回転動力(直進回転動力)は、直進用出力軸725を介して、左右一対の遊星ギヤ機構703に伝達される。また、ブレーキペダル35の操作に応じてブレーキ機構751が制動作動することで、直進用出力軸725の回転動力を減衰又は停止させる。
左右各遊星ギヤ機構703は、1つのサンギヤ726と、サンギヤ726に噛合する複数の遊星ギヤ727と、旋回出力ギヤ719に噛合させたリングギヤ728と、複数の遊星ギヤ727を同一円周上に回転可能に配置するキャリア729とをそれぞれ備えている。左右の遊星ギヤ機構703のキャリア729は、同一軸線上において適宜間隔を設けて相対向させて配置されている。左右の各サンギヤ726は、中途部にリングギヤ724を被嵌させた直進用出力軸725の両端に固着している。
左右の各リングギヤ728は、直進用出力軸725に回転可能に被嵌しているとともに、その外周面の外歯を左右の各旋回出力ギヤ719に噛合させて、旋回用出力軸718と連結している。リングギヤ728に固定されたキャリア729は、遊星ギヤ727を回転可能に軸支している。左右の各キャリア729が、左右の各差動出力軸730に回転可能に被嵌している。また、左右の各遊星ギヤ727と一体回転する左右の各出力側伝動ギヤ731は、左右の各差動出力軸730に対して回転不能に被嵌している左右の差動入力ギヤ732に噛合している。左右の差動出力軸730が、中継ギヤ733,734を介して左右の中継軸735と連結しており、左右の中継軸735が、ファイナルギヤ736,737を介して左右の車軸16に連結している。
左右の各遊星ギヤ機構703は、直進用中継軸721及び直進用出力軸725を介して、直進用ミッションケース17からの回転動力を受けて、サンギヤ726を同方向の同一回転数にて回転させる。即ち、左右のサンギヤ726は、直進用ミッションケース17からの回転動力を直進回転として受け、遊星ギヤ727及び出力側伝導ギヤ731を介して、差動出力軸730に伝達する。従って、直進用ミッションケース17から左右の遊星ギヤ機構703に伝達された回転動力は、左右の車軸16から各駆動スプロケット62に同方向の同一回転数にて伝達され、左右の走行クローラ3を同方向の同一回転数にて駆動して、走行機体1を直進(前進、後退)移動させる。
一方、左右の各遊星ギヤ機構703は、差動ギヤ機構702及び旋回用出力軸718を介して、油圧モータ部705からの回転動力を受けて、リングギヤ728を同一回転数にて互いに逆方向で回転させる。即ち、左右のリングギヤ728は、油圧モータ部705からの回転動力を旋回回転として受け、キャリア729によりサンギヤ726からの直進回転に旋回回転を重畳させ、遊星ギヤ727及び出力側伝導ギヤ731を回転させる。これにより、左右の差動出力軸730の一方には、遊星ギヤ727及び出力側伝導ギヤ731を介して、直進回転に旋回回転を加算させた回転動力が伝達され、左右の差動出力軸730の他方には、遊星ギヤ727及び出力側伝導ギヤ731を介して、直進回転に旋回回転を減算させた回転動力が伝達される。
直進用入力カウンタ軸508及びモータ軸709からの変速出力は、左右の各遊星ギヤ機構703を経由して、左右の走行クローラ3の駆動スプロケット62にそれぞれ伝達され、走行機体2の車速(走行速度)及び進行方向が決定される。すなわち、油圧式無段変速機701の油圧モータ部705を停止させて左右リングギヤ728を静止固定させた状態で、直進用ミッションケース17からの回転動力が直進用入力カウンタ軸508に入力されると、直進用入力カウンタ軸508の回転が左右サンギヤ71に左右同一回転数で伝達され、左右の走行クローラ3が同方向の同一回転数にて駆動され、走行機体2が直進走行する。
逆に、直進用ミッションケース17の直進用出力軸30による回転が停止して左右サンギヤ71が静止固定した状態で、油圧式無段変速機701の油圧モータ部705を駆動させると、モータ軸709からの回転動力にて、左のリングギヤ728が正回転(逆回転)し、右のリングギヤ728は逆回転(正回転)する。その結果、左右の走行クローラ3の駆動スプロケット62のうち、一方が前進回転し、他方が後退回転し、走行機体2はその場で方向転換(信地旋回スピンターン)される。
また、直進用ミッションケース17からの直進回転によって左右サンギヤ726を駆動しながら、油圧式無段変速機701の油圧モータ部705の旋回回転によって左右リングギヤ728を駆動することによって、左右の走行クローラ3の速度に差が生じ、走行機体2は前進又は後退しながら信地旋回半径より大きい旋回半径で左又は右に旋回(Uターン)する。このときの旋回半径は左右の走行クローラ3の速度差に応じて決定される。
次に、PTO変速機構505を介して実行するPTO軸25の駆動速度の切換構造(正転三段及び逆転一段)について説明する。直進用ミッションケース17には、エンジン5からの動力をPTO軸25に伝達するPTO変速機構505を配置している。この場合、主変速入力軸511の後端側に、動力伝達継断用のPTO油圧クラッチ590を介して、主変速入力軸511と同軸状に延びるPTO入力軸591を連結している。また、直進用ミッションケース17には、PTO入力軸591と平行状に延びるPTO変速軸592、PTOカウンタ軸593及びPTO軸25を配置している。PTO軸25は直進用ミッションケース17後面から後方に突出している。
PTOクラッチスイッチ53を動力接続操作すると、PTO油圧クラッチ590が動力接続状態となって、主変速入力軸511とPTO入力軸591とが相対回転不能に連結される。その結果、主変速入力軸511からPTO入力軸591に向かって回転動力が伝達される。
PTO入力軸591には、前側から順に、中速入力ギヤ597、低速入力ギヤ595、高速入力ギヤ596及び逆転シフタギヤ598を設けている。中速入力ギヤ597、低速入力ギヤ595及び高速入力ギヤ596は、PTO入力軸591に相対回転不能に被嵌している。逆転シフタギヤ598は、PTO入力軸591に相対回転不能で且つ軸線方向にスライド可能にスプライン嵌合している。
一方、PTO変速軸592には、中速入力ギヤ597に噛み合うPTO中速ギヤ601、低速入力ギヤ595に噛み合うPTO低速ギヤ599、及び高速入力ギヤ596に噛み合うPTO高速ギヤ600を回転可能に被嵌している。PTO変速軸592には、前後一対のPTO変速シフタ602,603を相対回転不能で且つ軸線方向にスライド可能にスプライン嵌合している。第一PTO変速シフタ602はPTO中速ギヤ601とPTO低速ギヤ599との間に配置している。第二PTO変速シフタ603はPTO高速ギヤ600よりも後端側に配置している。前後一対のPTO変速シフタ602,603は、PTO変速レバー46の操作に伴い連動して軸線方向にスライド移動するように構成している。PTO変速軸592のうちPTO低速ギヤ599とPTO高速ギヤ600との間にPTO伝動ギヤ604を固着している。
PTOカウンタ軸593には、PTO伝動ギヤ604に噛み合うPTOカウンタギヤ605と、PTO軸25に相対回転不能に被嵌したPTO出力ギヤ608に噛み合うPTO中継ギヤ606と、PTO逆転ギヤ607とを相対回転不能に被嵌している。PTO変速レバー46を中立操作した状態で副PTOレバー48を入り操作することによって、逆転シフタギヤ598がスライド移動して、逆転シフタギヤ598とPTOカウンタ軸593のPTO逆転ギヤ607とが噛み合うように構成している。
PTO変速レバー46を変速操作すると、前後一対のPTO変速シフタ602,603がPTO変速軸592に沿ってスライド移動し、PTO低速ギヤ595、PTO中速ギヤ597、及びPTO高速ギヤ596がPTO変速軸592に択一的に連結される。その結果、低速〜高速の各PTO変速出力が、PTO変速軸592からPTO伝動ギヤ604及びPTOカウンタギヤ605を介してPTOカウンタ軸593に伝達され、更に、PTO中継ギヤ606及びPTO出力ギヤ608を介してPTO軸25に伝達される。
副PTOレバー48を入り操作すると、逆転シフタギヤ598がPTO逆転ギヤ607と噛み合い、PTO入力軸591の回転動力が、逆転シフタギヤ598及びPTO逆転ギヤ607を介してPTOカウンタ軸593に伝達される。そして、逆転のPTO変速出力が、PTOカウンタ軸593からPTO中継ギヤ606及びPTO出力ギヤ608を介してPTO軸25に伝達される。
なお、PTO変速レバー46と副PTOレバー48とはPTO牽制部材を介して連動連結していて、PTO変速レバー46の中立以外の変速操作と副PTOレバー48の入り操作との両立を禁止するように構成している。すなわち、副PTOレバー48を入り操作した状態ではPTO変速レバー46を中立以外に変速操作できず、PTO変速レバー46を中立以外に変速操作した状態では副PTOレバー48を入り操作できないように構成している。
次に、図12を参照しながら、トラクタ1の油圧回路620構造について説明する。トラクタ1の油圧回路620は、エンジン5の回転動力によって駆動する作業機用油圧ポンプ481及び走行用油圧ポンプ482を備えている。実施形態では、直進用ミッションケース17が作業油タンクとして利用されていて、直進用ミッションケース17内の作動油が作業機用油圧ポンプ481及び走行用油圧ポンプ482に供給される。走行用油圧ポンプ482は、直進用の油圧機械式無段変速機500における油圧ポンプ521と油圧モータ522とをつなぐ閉ループ油路623に接続している。エンジン5の駆動中は、走行用油圧ポンプ482からの作動油が閉ループ油路623に常に補充される。
また、走行用油圧ポンプ482は、油圧機械式無段変速機500の主変速油圧シリンダ524に対する主変速油圧切換弁624と、PTO油圧クラッチ590に対するPTOクラッチ電磁弁627及びこれによって作動する切換弁628とに接続している。更に、走行用油圧ポンプ482は、前進低速油圧クラッチ537を作動させる前進低速クラッチ電磁弁632と、前進高速油圧クラッチ539を作動させる前進高速クラッチ電磁弁633と、後進油圧クラッチ541を作動させる後進クラッチ電磁弁634と、前記各クラッチ電磁弁632〜634への作動油供給を制御するマスター制御電磁弁635とに接続している。
また、作業機用油圧ポンプ481が、直進用ミッションケース17の上面後部側にある油圧式昇降機構22の上面に積層配置した複数の油圧外部取出バルブ430と、油圧式昇降機構22における油圧リフトシリンダ117下側への作動油供給を制御する複動制御電磁弁432と右リフトロッド121に設けた水平シリンダ122への作動油供給を制御する傾斜制御電磁弁647と、油圧式昇降機構22における油圧リフトシリンダ117下側への作動油供給を制御する上昇油圧切換弁648及び下降油圧切換弁649と、上昇油圧切換弁648を切換作動させる上昇制御電磁弁650と、下降油圧切換弁649を作動させる下降制御電磁弁651とに接続している。なお、複動バルブ機構431が、複動制御電磁弁432を含む油圧回路で構成されており、昇降バルブ機構652が、上昇油圧切換弁648及び下降油圧切換弁649と上昇制御電磁弁650及び下降制御電磁弁651による油圧回路で構成される。
傾斜制御電磁弁647を切換駆動させると、水平シリンダ122が伸縮動して、前部側にあるロワーリンクピンを支点にして右側のロワーリンク23が上下動する。その結果、左右両ロワーリンク23を介して対地作業機が走行機体2に対して左右に傾動して、対地作業機の左右傾斜角度が変化する。複動制御電磁弁432を切換制御することにより、油圧リフトシリンダ117の駆動方式として、単動式又は複動式のいずれかを選択できる。すなわち、単複動切換スイッチ56の切換動作に従って、複動制御電磁弁432を切り換えることで、油圧リフトシリンダ117の駆動方式が設定される。
油圧リフトシリンダ117を単動式で駆動させる場合、上昇油圧切換弁648又は下降油圧切換弁649を切換作動させると、油圧リフトシリンダ117が伸縮動し、リフトアーム120及び左右両ロワーリンク23が共に上下動する。その結果、対地作業機が昇降動し、対地作業機の昇降高さ位置が変化する。一方、油圧リフトシリンダ117を複動式で駆動させる場合、上昇油圧切換弁648又は下降油圧切換弁649を切換作動させると同時に複動制御電磁弁432を切換駆動させて、油圧リフトシリンダ117を伸縮動させる。これにより、対地作業機が昇降動させることができるとともに、対地作業機を下降させたときに地面に向かって加圧し、対地作業機を下降位置に保持できる。
また、トラクタ1の油圧回路620は、エンジン5の回転動力によって駆動するチャージポンプ707を備え、チャージポンプ707が、旋回用の油圧式無段変速機701における油圧ポンプ704と油圧モータ705とをつなぐ閉ループ油路740に接続している。実施形態では、直進用ミッションケース17が作業油タンクとして利用されていて、直進用ミッションケース17内の作動油がチャージポンプ707に供給される。また、エンジン5の駆動中は、チャージポンプ707からの作業油が閉ループ油路740に常に補充される。トラクタ1の油圧回路620は、油圧式無段変速機701における油圧ポンプ702のポンプ斜板708角度を変更させる旋回油圧シリンダ741と、旋回油圧シリンダ741に対する旋回油圧切換弁742とを備える。
トラクタ1の油圧回路620は、前述の作業機用油圧ポンプ481及び走行用油圧ポンプ482以外に、エンジン5の回転動力で駆動する潤滑油ポンプ518も備えている。潤滑油ポンプ518には、PTO油圧クラッチ590の潤滑部に作動油(潤滑油)を供給するPTOクラッチ油圧切換弁641と、油圧機械式無段変速機500を軸支する主変速入力軸511の潤滑部と、前進低速油圧クラッチ537の潤滑部に作動油(潤滑油)を供給する前進低速クラッチ油圧切換弁642と、前進高速油圧クラッチ539の潤滑部に作動油(潤滑油)を供給する前進高速クラッチ油圧切換弁643と、後進油圧クラッチ541の潤滑部に作動油(潤滑油)を供給する後進クラッチ油圧切換弁644とに接続している。なお、油圧回路620には、リリーフ弁や流量調整弁、チェック弁、オイルクーラ、オイルフィルタ等を備えている。
次に、図13〜図16を参照しながら、トラクタ1の走行制御を実行するための構成について説明する。図13に示す如く、トラクタ1は、エンジン5の駆動を制御するエンジンコントローラ811と、ダッシュボード33搭載の操作表示盤(メーターパネル)39の表示動作を制御するメータコントローラ812と、走行機体2の速度制御等を行う直進コントローラ813及び旋回コントローラ814とを備えている。
上記コントローラ811〜814及び操作用モニタ55はそれぞれ、各種演算処理や制御を実行するCPUの他、制御プログラムやデータを記憶させるためのROM、制御プログラムやデータを一時的に記憶させるためのRAM、時間計測用のタイマ、及び入出力インターフェース等を備えており、CAN通信バス815を介して相互に通信可能に接続されている。エンジンコントローラ811及びメータコントローラ812は、電源印加用キースイッチ816を介してバッテリ817に接続されている。
エンジンコントローラ811による制御に基づき、エンジン5では、燃料タンクの燃料が燃料ポンプによってコモンレールに圧送され、高圧の燃料としてコモンレールに蓄えられる。そして、エンジンコントローラ811が、各燃料噴射バルブをそれぞれ開閉制御(電子制御)することで、不図示のコモンレール内の高圧の燃料が、噴射圧力、噴射時期、噴射期間(噴射量)を高精度にコントロールされた上で、各インジェクタ(図示せず)からエンジン5の各気筒に噴射される。
メータコントローラ812の出力側には、メータパネル39における液晶パネルや各種警報ランプなどを接続している。そして、メータコントローラ812は、メータパネル39に各種信号を出力し、警報ランプの点消灯動作及び点滅動作、液晶パネルの表示動作、警報ブザーの発報動作などを制御する。
直進コントローラ813の入力側には、主変速レバー50の操作位置を検出する主変速センサ(主変速ポテンショ)822、直進出力の回転数(直進車速)を検出する直進用ピックアップ回転センサ(直進車速センサ)823、前後進切換レバー36の操作位置を検出する前後進センサ(前後進ポテンショ)825、副変速レバー45の操作位置を検出する副変速センサ826、超低速レバー44の操作位置を検出するクリープセンサ827、ブレーキペダル35の踏み込み量を検出するブレーキ位置センサ828、クラッチペダル37の踏み込み量検出するクラッチ位置センサ829、ブレーキペダル35の踏み込みを検出するブレーキスイッチ851、クラッチペダル37の踏み込みを検出するクラッチスイッチ852、及び、駐車ブレーキレバー43の操作を検出する駐車ブレーキスイッチ853を接続している。
直進コントローラ813の出力側には、前進低速油圧クラッチ537を作動させる前進低速クラッチ電磁弁632、前進高速油圧クラッチ539を作動させる前進高速クラッチ電磁弁633、後進油圧クラッチ541を作動させる後進クラッチ電磁弁634、及び、主変速レバー50の傾動操作量に応じて主変速油圧シリンダ524を作動させる主変速油圧切換弁624を接続している。
旋回コントローラ814の入力側には、操縦ハンドル9の回動量(操舵角度)を検出する操舵角センサ(操舵ポテンショ)821、及び、旋回出力の回転数(旋回車速)を検出する旋回用ピックアップ回転センサ(旋回車速センサ)824を接続している。一方、旋回コントローラ813の出力側には、操縦ハンドル9の回転操作量に応じて旋回油圧シリンダ741を作動させる旋回油圧切換弁742を接続している。
図14に示す如く、直進コントローラ813は、油圧機械式無段変速機(第1無段変速機)500を有する直進系伝動経路の出力を制御する直進走行演算部831と、操縦ハンドル9の操舵角に対する直進車速の減速率を格納した減速率テーブルTAを記憶するメモリ832と、CAN通信バス815と接続する通信インターフェース833とを備える。メモリ832内の減速率テーブルTAは、図15に示す如く、後述する「スピンターンモード(第1モード)」、「ブレーキターンモード(第2モード)」、「緩旋回モード(第3モード)」、及び「走行モード(第4モード)」の4モードに対して、操縦ハンドル9の操舵角に対する直進車速の減速率TA1〜TA4を記憶している。
なお、図15に示す減速率テーブルTAは、各モードにおける操縦ハンドル9を右側に回転させたとき(トラクタ1の右旋回時)の減速率を示しているが、操縦ハンドル9を左側に回転させたとき(トラクタ1の左旋回時)の減速率についても同様である。即ち、操縦ハンドル9を左右方向それぞれに回転させたとき(トラクタ1を左右旋回させたとき)、指定されたモードによる減速率を、操縦ハンドル9の中立位置(0°)から回転させた操舵角により減速率テーブルTAから読み取って、直進車速の減速率を設定する。また、減速率は、直進速度に乗算される比率であり、減速率が100%のときは、直進速度は減速されず、減速率が低くなるほど、直進速度が減速される。また、操縦ハンドル9は、操舵角検出機構(ステアリングボックス)880により、中立位置となる0°から左右にθe(例えば、250°)以上の回転が規制されている。
図15に示す如く、減速率テーブルTAは、操縦ハンドル9の操舵角が0°(中立位置)からθmi(例えば、15°)であるとき、操縦ハンドル9の中立領域(いわゆる遊びの領域であり、不感帯)とし、各モードの減速率TA1〜TA4を100%とする。そして、操縦ハンドル9の操舵角がθmiからθma(例えば、245°)であるとき、操縦ハンドル9の操作領域とし、スピンターンモード、ブレーキターンモード、及び走向モードそれぞれの減速率TA1,TA2,TA4を操舵角に応じて単調減少させる一方、緩旋回モードの減速率TA3を100%で一定とする。すなわち、操舵角θmiが制御上における中立位置(0°)であり、操舵角θmaが制御上における最大操舵角となる。このとき、走向モード、ブレーキターンモード、スピンターンモードの順で、操舵角に対する減速率の変化率が大きくなっている。また、操縦ハンドル9の操舵角がθmaからθeであるとき、操縦ハンドル9の最大領域とし、スピンターンモード、ブレーキターンモード、及び走向モードにおいては、減速率TA1,TA2,TA4が最小値De1〜De3(0<De1<De2<De3<100)%となる。
図14に示す如く、旋回コントローラ814は、油圧式無段変速機(第2無段変速機)701を有する旋回系伝動経路の出力を制御する旋回走行演算部841と、操縦ハンドル9の操舵角に対する直進車速と旋回車速との旋回/直進比を格納した旋回/直進比テーブルTB(図17参照)を記憶するメモリ842と、CAN通信バス815と接続する通信インターフェース843とを備える。メモリ842内の旋回/直進比テーブルTBは、図15に示す如く、後述する「スピンターンモード(第1モード)」、「ブレーキターンモード(第2モード)」、「緩旋回モード(第3モード)」、及び「走行モード(第4モード)」の4モードに対して、操縦ハンドル9の操舵角に対する旋回/直進比TB1〜TB4を記憶している。
なお、図15に示す減速率テーブルTBは、各モードにおける操縦ハンドル9を右側に回転させたとき(トラクタ1の右旋回時)を正とするものとした旋回/直進比を示している。また、旋回/直進比は、減速立により減速された直進速度に乗算される比率であり、旋回/直進比が0のときは、旋回速度がなく、左右の走向クローラ3がともに同一の直進速度で駆動し、旋回/直進比が高くなるほど、旋回速度が大きくなるため、左右の走向クローラ3の速度差が大きくなる。以下では、主に、操縦ハンドル9を右側に回転させた場合(右旋回時)の旋回/直進比について説明するものとし、縦ハンドル9を左側に回転させた場合(左旋回時)の旋回/直進比については、括弧書きで補足する。
図15に示す如く、旋回/直進比テーブルTBは、操縦ハンドル9の操舵角が0°〜θmi(−θmi〜0°)となる中立領域では、各モードの旋回/直進比TB1〜TB4を0とする。そして、操縦ハンドル9の操舵角がθmi〜θma(−θma〜−θmi)となる操縦ハンドル9の操作領域では、スピンターンモード、ブレーキターンモード、緩旋回モード、及び走向モードそれぞれの旋回/直進比TB1〜TB4を操舵角に応じて単調増加させる。このとき、緩旋回モード、走向モード、ブレーキターンモード、スピンターンモードの順で、操舵角に対する旋回/直進比の変化率が大きくなっている。
また、操縦ハンドル9の操舵角がθma〜θe(−θe〜−θma)となる最大領域では、各モードにおいて、旋回/直進比が最大値Ra1〜Ra4(最小値−Ra1〜−Ra4)となる。なお、図15に示す如く、最大旋回/直進比Ra1〜Ra4(−Ra1〜−Ra4)は、0<Ra1<Ra2<Ra3<Ra4(−Ra4<−Ra3<−Ra2<−Ra1<0)の関係となっており、操縦ハンドル9の操舵角を最大領域としたとき、緩旋回モードにおいて最大旋回/直進比Ra1(−Ra1)となり、走向モードにおいて最大旋回/直進比Ra2(−Ra2)となり、ブレーキターンモードにおいて最大旋回/直進比Ra3(−Ra3)となり、スピンターンモードにおいて最大旋回/直進比Ra4(−Ra4)となる。
直進コントローラ813において、図16に示す如く、直進走行演算部831は、前後進センサ825からの信号を受けて、「前進」「中立」「後進」のいずれが指定されているかを認識し、副変速センサ826及びクリープセンサ827からの信号を受けて、「高速」「低速」「超低速」のいずれが指定されているかを認識する(STEP1)。直進走行演算部831は、主変速センサ822からの信号を受けて、直進状態(操舵角が0°の状態)における直進車速の目標値(以下、「直進基準目標値」とする。)を算出する(STEP2)。
直進コントローラ813は、旋回コントローラ814を通じて、操舵角センサ821からの信号を通信インターフェース833で受信し、直進走行演算部831に操舵角センサ821からの信号を与える(STEP3)。直進走行演算部831は、操舵角センサ821からの信号を受けて、操縦ハンドル9の操舵角を認識すると、メモリ832内の減速率テーブルTAを参照して、指定されたモードにおける操縦ハンドル9の操舵角に応じた直進車速の減速率を読み出す(STEP4)。
そして、直進走行演算部831は、主変速センサ822からの信号に基づく直進基準目標値に、読み出した減速率を乗算することにより、操舵角に応じた直進車速の目標値(以下、「直進目標値」とする。)を算出する(STEP5)。なお、直進基準目標値及び直進目標値における「直進車速」は、エンジン5の回転速度に対する直進用ミッションケース17における走行伝動軸536の回転速度の相対速度とする。
直進走行演算部831は、ブレーキ位置センサ828、クラッチ位置センサ829からの信号を受けて、ブレーキペダル35及びクラッチペダル37それぞれの踏み込みの有無を確認する(STEP6)。そして、直進走行演算部831は、ブレーキペダル35への機体停止操作の有無、クラッチペダル37への操作の有無、前後進切換レバー36が中立位置にあるか否かを確認する(STEP7)。
直進走行演算部831は、機体停止操作があった場合、又は、クラッチペダル37に踏み込み操作がある場合、又は、前後進切換レバー36が中立位置にある場合(STEP7でYes)、直進用ピックアップ回転センサ823からの信号(以下、「直進実測値」とする)を、通信インターフェース833から旋回コントローラ814に送信する(STEP8)。その後、直進走行演算部831は、前進の場合は、前進低速クラッチ電磁弁632、前進高速クラッチ電磁弁633、及び、後進クラッチ電磁弁634の動作を制御して、前進低速油圧クラッチ537、前進高速油圧クラッチ539、及び後進油圧クラッチ541を切断する(STEP9)。
一方、直進走行演算部831は、機体停止操作がなく、且つ、クラッチペダル37両方に踏み込み操作がなく、且つ、前後進切換レバー36が前進位置又は後進位置にある場合(STEP7でNo)、算出した直進目標値を、通信インターフェース833から旋回コントローラ814に送信する(STEP10)。その後、直進走行演算部831は、算出した直進目標値に基づき、前進の場合は、前進低速クラッチ電磁弁632、前進高速クラッチ電磁弁633、及び主変速油圧切換弁624の動作を制御する一方、後進の場合は、後進クラッチ電磁弁634、及び主変速油圧切換弁624の動作を制御する(STEP11)。これにより、全ての油圧クラッチ537,539,541がいずれも動力切断状態となり、主変速出力軸512からの走行駆動力が略ゼロ(主クラッチ切りの状態)になる。
すなわち、STEP11において、直進走行演算部831は、直進実測値(直進用ピックアップ回転センサ823からの信号)と直進目標値とに基づき、直進系伝動経路の出力(直進用出力軸30による回転速度)をフィードバック制御(主変速制御)する。なお、副変速センサ826及びクリープセンサ827からの信号により指定される変速ギヤ比に基づき、直進用ピックアップ回転センサ823からの信号から走行伝動軸536の回転速度を確認し、直進目標値と比較することで、直進系伝動経路の出力を制御する。
旋回コントローラ814において、図16に示す如く、旋回走行演算部841は、操舵角センサ821からの信号を受けて、操縦ハンドル9の操舵角を認識する(STEP51)。旋回走行演算部841は、メモリ842内の旋回/直進比テーブルTBを参照して、指定されたモードにおける操縦ハンドル9の操舵角に応じた旋回/直進比を読み出す(STEP52)。
また、旋回コントローラ814は、直進コントローラ813を通じて、副変速センサ826及びクリープセンサ827からの信号を通信インターフェース843で受信し、旋回走行演算部841に与える(STEP53)。旋回走行演算部841は、副変速センサ826及びクリープセンサ827からの信号により、副変速として「高速」「低速」「超低速」のいずれが指定されているかを認識する。旋回走行演算部841は、指定された副変速に基づいて旋回/直進比の補正値をメモリ842から読み出し、指定された副変速に基づいて旋回/直進比を補正する(STEP54)。
また、旋回コントローラ814は、直進コントローラ813で算出された直進目標値又は直進実測値(直進用ピックアップ回転センサ823からの信号)を、通信インターフェース843で受信し、旋回走行演算部841に与える(STEP55)。旋回走行演算部841は、直進目標値又は直進実測値より直進車速を確認し、当該直進車速に補正後の旋回/直進比を乗算することで、旋回車速となる旋回目標値を算出する(STEP56)。なお、旋回目標値における「旋回車速」は、エンジン5の回転速度に対する旋回用ミッションケース13におけるモータ軸709の回転速度の相対速度とする。
旋回走行演算部841は、旋回目標値を算出すると、旋回油圧切換弁742の動作を制御する。このとき、旋回走行演算部841は、旋回用ピックアップ回転センサ824からの信号(以下、「旋回実測値」とする)と旋回目標値とに基づき、旋回系伝動経路の出力(モータ軸709による回転速度)をフィードバック制御(旋回制御)する(STEP57)。
直進コントローラ813は、主変速制御を実行している際に、前後進センサ825からの信号が「前進から後進」又は「後進から前進」に切り換えられたとき、前進低速クラッチ電磁弁632及び後進クラッチ電磁弁634を制御して、前進低速油圧クラッチ537及び後進油圧クラッチ541を切り換える。このように、前進低速油圧クラッチ537及び後進油圧クラッチ541を切り換える際、直進コントローラ813は、前進低速油圧クラッチ537及び後進油圧クラッチ541のいずれか一方が必ずつながっているように制御する。
このとき、直進基準目標値(又は直進目標値)を変化させることで、主変速油圧切換弁624を制御して、主変速出力軸512や走行中継軸535は最低速回転状態にした後に、再び、元の回転数となるように、主変速出力軸512や走行中継軸535の回転数を増速させる。従って、旋回コントローラ814は、直進コントローラ813からの直進目標値を受けることによって、旋回目標値を直進目標値と同様に変化させることができる。これにより、旋回コントローラ814は、走行機体2の前進時と後進時で操縦ハンドル9の操作に対する旋回系伝動経路の出力(旋回車速)を逆転させて、オペレータに円滑な操縦性を寄与できる。
直進コントローラ813は、主変速制御を実行している際に、前後進センサ825からの信号が「前進」の状態で主変速レバー50により高速側又は低速側に操作された場合、前進低速クラッチ電磁弁632及び前進高速クラッチ電磁弁633を制御して、前進低速油圧クラッチ537及び前進高速油圧クラッチ539を切り換える。このように、前進低速油圧クラッチ537及び前進高速油圧クラッチ539を切り換える際、直進コントローラ813は、前進低速油圧クラッチ537及び前進高速油圧クラッチ539のいずれか一方が必ずつながっているように制御する。
このとき、直進コントローラ813は、直進目標値に合わせて、主変速油圧切換弁624を制御する。また、旋回コントローラ814は、直進コントローラ813からの直進目標値を受けることによって、操縦ハンドル9の操作に対する旋回系伝動経路の出力(旋回車速)を設定させるため、前進低速油圧クラッチ537及び前進高速油圧クラッチ539の切換に影響なく、複雑な演算を行うことなく、直進系伝動経路の出力(直進車速)に応じた旋回系伝動経路の出力(旋回車速)をできる。
直進コントローラ813は、クラッチペダル37等が踏み込まれるなどして、前進低速油圧クラッチ537、前進高速油圧クラッチ539、及び、後進油圧クラッチ541のそれぞれを切った状態に制御する場合、直進実測値(直進用ピックアップ回転センサ823からの信号)を旋回コントローラ814に送信する。そして、旋回コントローラ814は、直進実測値(直進用ピックアップ回転センサ823からの信号)により旋回系伝動経路の出力(旋回車速)を設定する。従って、前進高速油圧クラッチ539、及び、後進油圧クラッチ541の全てが切れており、直進系伝動経路の出力(直進車速)が直進目標値に対応していない場合でも、旋回系伝動経路の出力(旋回車速)を最適に設定できるため、オペレータは違和感なく車両を操作できる。
直進コントローラ813は、ブレーキペダル35が踏み込まれて、急ブレーキ操作などによる機体停止操作がなされたとき、走行速度(直進車速)が所定速度以上の高速領域では、前進低速油圧クラッチ537、前進高速油圧クラッチ539、及び、後進油圧クラッチ541のそれぞれを切った状態に制御する。このとき、旋回コントローラ814は、直進実測値(直進用ピックアップ回転センサ823からの信号)により旋回系伝動経路の出力(旋回車速)を設定する。従って、ブレーキペダル35操作による制動制御が実行されている際に、直進系伝動経路の出力(直進車速)が直進目標値に対応していない場合でも、旋回系伝動経路の出力(旋回車速)を直進系伝動経路の出力(直進車速)に合わせて減速できるため、オペレータは違和感なく車両を操作できる。
一方で、ブレーキペダル35に対して機体停止操作がなされた状態であっても、走行速度(直進車速)が所定速度未満の低速領域となる場合は、直進コントローラ813は、車両の前後進に合わせて、前進低速油圧クラッチ537又は後進油圧クラッチ541を繋いだ状態で、油圧機械式無段変速機500のポンプ斜板523が中立状態(0°)となるように直進目標値を設定し、主変速制御(フィードバック制御)を実行する。このとき、旋回コントローラ814は、直進実測値により旋回系伝動経路の出力(旋回車速)を設定するものとしてもよいし、直進目標値により旋回系伝動経路の出力を設定するものとしてもよい。
旋回コントローラ814は、直進系伝動経路の出力(直進車速)の減速に伴って旋回系伝動経路の出力(旋回車速)を減速させる。そして、操縦ハンドル9が操作された場合、旋回コントローラ814が、旋回系伝動経路の出力(旋回車速)を増速させ、旋回コントローラ813が、直進系伝動経路(直進車速)の出力を減速させて、操縦ハンドル9の切れ角(操舵角)に基づいて旋回時の左右の走行クローラ3の速度比を決定する。
また、オペレータは、操作用モニタ55を操作することにより、ハンドル切れ角が大きい場合に旋回内側を逆転させて小回り(スピンターン)ができる「スピンターンモード(第1モード)」と、スピンターンモードに比べて切れが鈍くハンドル切れ角が最大近くとなったときに旋回内側を停止させるブレーキターンまで実行できる「ブレーキターンモード(第2モード)」と、ブレーキターンモードに比べて更に切れが鈍い「緩旋回モード(第3モード)」と、高速車速に対応可能な「走行モード(第4モード)」とを選択できる。なお、超低速レバー44及び副変速レバー45により超低速走行又は低速走行が指定されている場合、「スピンターンモード」、「ブレーキターンモード」、及び「緩旋回モード」のいずれかによる旋回動作が許可される。一方、超低速レバー44により高速走行が指定される場合、「走行モード」による旋回動作のみが許可される。
更に、オペレータは、操作用モニタ55を操作することにより、旋回時の旋回力を複数段階に調節できる。従って、オペレータは、操作用モニタ55を操作することにより、複数のモードから択一的に選択できる上、段階的な調節も可能なため、圃場状況等に見合った適切な走行特性(旋回特性)を手軽に選定できる。
「スピンターンモード」を指定した場合、図18に示すように、操縦ハンドル9の切れ角が角度θt1(θmi<θt1<θma)となったときに、内側の走行クローラ3を停止させて、走行機体2をブレーキターンにより旋回させ、操縦ハンドル9の切れ角が角度θt1を超えると、内側の走行クローラ3を逆回転させて、走行機体2をスピンターンにより旋回させる。すなわち、操縦ハンドル9の切れ角が角度θt1未満の場合、内側の走行クローラ3を減速させ、操縦ハンドル9の切れ角が角度θt1の場合、内側の走行クローラ3を停止させ、操縦ハンドル9の切れ角が角度θt1を超える場合、内側の走行クローラ3を逆回転させる。これにより、操縦ハンドル9の操作量に合わせて、走行機体2の旋回中心及び旋回半径を変えることができる。従って、操縦ハンドル9への操作感覚に近い状態で走行機体2を旋回させることができ、結果、走行機体2を安定して走行させることができる。
また、「ブレーキターンモード」を指定した場合、図19に示すように、操縦ハンドル9の切れ角を制御上の最大角θmaに近い角度θt2(θt1<θt2<θma)となったとき、走行機体2をブレーキターンにより旋回させる。「緩旋回モード」を指定した場合、図19に示すように、操縦ハンドル9の切れ角を制御上の最大角θma以上としても、内側の走行クローラ3は停止にいたらず、走行機体2を緩旋回させる。また、「走行モード」においても、ブレーキターン及びスピンターンによる旋回動作を実行できない。
旋回コントローラ814は、減速率を100%とするとともに旋回/直進比を0とする操縦ハンドル9の不感帯幅(中立領域)−θmi〜θmiを変更可能とすべく、メモリ842に複数記憶している。以下では、旋回コントローラ814における不感体幅の切換による操向感度設定制御について、図20及び図21などを参照して説明する。図20は、操向感度設定制御の動作を示すフローチャートであり、図21は、不感帯幅の変更に基づいて設定される減速率及び旋回/直進比の関係を示す図である。
なお、本実施形態では、メモリ842に記憶される不感帯幅(中立領域)は、狭い不感帯幅−θmi1〜θmi1と広い不感帯幅−θmi2〜θmi2の2種類が記憶されるものとするがが、3種類以上の不感帯幅が記憶されるものとしてもよい。また、メモリ842に記憶される不感帯幅は、オペレータが、例えば、操作用モニタ55を操作することにより、オペレータの希望する値に変更できる。これにより、走行機体2の走行状態、圃場や道路などの路面状態などに最適な不感体幅を複数メモリ842に記憶させることができるだけでなく、個々のオペレータの運転操作に最適な操向操作が可能となる。
図20に示す如く、旋回コントローラ814は、直進用ピックアップ回転センサ823からの信号(直進実測値)を受けて、直進車速を確認するとともに(STEP601)、前後進センサ825からの信号を受けて、走行機体2の走行方向(前後進)を確認する(STEP602)。そして、走行機体2の直進車速が所定速度未満であり、走行機体2が低速走行中であり(STEP603でNo)、走行機体2が前進走行中であり(STEP604でNo)、操作用モニタ55などへの操作による感度変更の要求がない場合(STEP606でNo)、旋回コントローラ814は、狭い不感帯幅−θmi1〜θmi1に設定する(STEP608)。
一方、走行機体2の直進車速が所定速度以上であり、走行機体2が高速走行中である場合に(STEP603でYes)、操作用モニタ55などへの操作による感度変更の要求がないとき(STEP609でNo)、旋回コントローラ814は、広い不感帯幅−θmi2〜θmi2に設定する(STEP609)。また、走行機体2が後進走行中である場合(STEP603でYes)、旋回コントローラ814は、まず、旋回半径を大きくする設定を行った後(STEP605)、操作用モニタ55などへの操作による感度変更の要求がないとき(STEP609でNo)、旋回コントローラ814は、広い不感帯幅−θmi2〜θmi2に設定する(STEP609)。
また、STEP606で感度変更の要求がなされている場合は(Yes)、旋回コントローラ814は、広い不感帯幅−θmi2〜θmi2に設定する一方(STEP609)、STEP607で感度変更の要求がなされている場合は(Yes)、旋回コントローラ814は、狭い不感帯幅−θmi1〜θmi1に設定する(STEP608)。なお、感度変更の要求については、運転中の操作に限らず、走行機体2の停止時に、オペレータが圃場や路面の状態や作業の種類に応じて、操作用モニタ55などにより入力操作し、予め、旋回コントローラ814にメモリ832内のフラグなどで記憶させているものとしてもよい。
旋回コントローラ814は、不感帯幅を設定すると(STEP608又はSTEP609)、メモリ832の減速率テーブルTA及び旋回/直進比テーブルTBそれぞれを参照して、設定後の不感帯幅に合わせて、現在指定されているモードに応じた減速率及び旋回/直進比をそれぞれ設定する(STEP610〜STEP611)。
本実施形態では、図21に示す如く、例えば、スピンターンモードを選択されている場合、狭い不感帯幅−θmi1〜θmi1に設定した際には、操舵角θma1(−θma1)に減速率が最小値De1となるように減速率テーブルTA11が設定される一方、操舵角θma1(−θma1)に旋回/直進比が最大値Ra4となるように旋回/直進比テーブルTB12が設定される。一方、広い不感帯幅−θmi2〜θmi2に設定した際には、操舵角θma2(−θma1)に減速率が最小値De1となるように減速率テーブルTA12が設定される一方、操舵角θma2(−θma2)に旋回/直進比が最大値Ra4となるように旋回/直進比テーブルTB12が設定される。なお、θmi1、θmi2、θma1、θma2はそれぞれ、0<θmi1<θmi2<θma1<θma2<θeの関係となる。
すなわち、広い不感体幅−θmi2〜θmi2の減速率テーブルTA12は、狭い不感体幅−θmi1〜θmi1の減速率テーブルTA11に対して、正転側(操舵角が正の値であり右旋回)については、θmi2−θmi1だけ正の方向へオフセット(平行移動)させる一方、逆転側(操舵角が負の値であり左旋回)については、θmi2−θmi1だけ負の方向へオフセットさせるようにして設定される。また、広い不感体幅−θmi2〜θmi2の旋回/直進比テーブルTB12についても、狭い不感体幅−θmi1〜θmi1の旋回/直進比テーブルTA11に対して、正転側(操舵角が正の値であり右旋回)については、θmi2−θmi1だけ正の方向へオフセット(平行移動)させる一方、逆転側(操舵角が負の値であり左旋回)については、θmi2−θmi1だけ負の方向へオフセットさせるようにして設定される。
上述の操向感度設定制御を実行することで、走行状態に応じて操縦ハンドル9の回転に対する不感帯幅を変更できるため、走行機体2の姿勢や振動などにより、ハンドル操作に影響があったとしても、意図しない旋回動作を防ぐことができ、操作性を向上できる。また、走行路面(圃場)条件またはオペレータの希望走行フィーリングに適応した操向または変速制御を容易に得ることができ、運転操作性の向上などを容易に図ることができる。
また、上述の操向感度設定制御を実行することで、高速走行時や後進走行時に不感帯幅を広く設定できるため、オペレータの意図しない旋回動作を防止でき、操作性の向上を図れるだけでなく、高速走行時や後進走行時の不用意な旋回による事故を防止できる。また、後進走行時の旋回半径と前進走行時の旋回半径とを変更できるものとすることで、オペレータが後方を向くことにより運転動作が困難となる後進走行時においても操作性を向上できる。
本実施形態では、図21に示すように、走行機体2の直進車速(直進系伝動経路の出力)の減速を開始する操縦ハンドル9の操舵角(以下、「直進減速開始操舵角」とする)と、走行機体2の旋回車速(旋回系伝動経路の出力)の増速を開始する操縦ハンドル9の操舵角(以下、「旋回増速開始操舵角」とする)とをθmi1に設定することで、操縦ハンドル9の不感帯幅を狭く設定する。一方、ハンドル9における直進減速開始操舵角と旋回増速開始操舵角とをθmi2に設定することで、操縦ハンドル9の不感帯幅を広く設定する。
次いで、操縦座席8に設けられたステアリング機構について、図8及び図22〜図24などを参照して、以下に説明する。図8及び図22〜図24に示す如く、ステアリングコラム32は、ダッシュボード33の背面側に埋設するような状態で立設しており、ステアリングコラム32内に縦長のハンドル軸921を軸支している。ハンドル軸921上端がステアリングコラム32上面から上向きに突出しており、ハンドル軸921の上端側に平面視略丸型の操縦ハンドル9を取り付けている。
操縦ハンドル9が配置されるステアリングコラム32の左右に、操縦ハンドル9の姿勢を調節するチルトレバー915とテレスコレバー914を振分けて配置している。すなわち、ステアリングコラム32の右側面に、左右横方向に軸支されて前後方向に回動するテレスコレバー914を設けている。ステアリングコラム32の左側面下側に、左右横方向に軸支されて前後方向に回動するチルトレバー915を設けている。また、ステアリングコラム32内に操縦ハンドル9をハンドル軸921の軸方向に移動させるテレスコ機構917と、操縦ハンドル9をハンドル軸921と共に傾動させるチルト機構918とを備えている。
ステアリングコラム32前方には、左右のブレーキペダル35を軸支するブレーキペダル軸720を備えたブレーキペダル支持機構916を配置している。ブレーキペダル支持機構916は、エアカットプレート901中途部に連結支持されている。そして、チルト機構915は、ステアリングコラム32下側に設置されるとともに、ブレーキペダル支持機構916に連結した固定ブラケット919に枢着している。すなわち、ブレーキペダル支持機構916を介してエアカットプレート901に固着された固定ブラケット919に対して、チルト機構918が回動可能に軸支されている。そして、ステアリングコラム32内において、チルト機構918上側に多重軸構造により伸縮可能なテレスコ機構917を設けている。また、ステアリングコラム32は、テレスコ機構917の先端側と連結している。
オペレータは、テレスコレバー914を手前に回動させることで、テレスコ機構917による固定を解除し、操縦ハンドル9をハンドル軸921の軸方向に沿って移動可能として、操縦ハンドル9の高さ位置を調節できる。このとき、テレスコ機構915先端側にステアリングコラム32を固定しているため、操縦ハンドル9とともにステアリングコラム32を上下動させることができる。
また、オペレータは、チルトレバー915を手前に回動させることで、チルト機構918による固定を解除し、固定ブラケット919との連結部分の軸芯として回動可能として、操縦ハンドル9の傾き位置を調節できる。チルト機構918は、ハンドル軸921の下端と自在継手922との連結部分を軸芯とすることで、ハンドル軸921とともに操縦ハンドル9を傾動させることができる。
図22及び図23に示す如く、テレスコ機構917は、ハンドル軸921を軸支するコラムジャケット923と、コラムジャケット923を上側から包持するアウターカバー924と、アウターカバー924下縁に設けられたスリット両側を挟みこむように設けられた緩締部材925とを備える。ハンドル軸921は、ロワーシャフト926を円筒状のアッパーシャフト927に同軸状に挿入させて構成されており、ロワーシャフト926とアッパーシャフト927をスプライン嵌合又はセレーション嵌合させている。従って、ハンドル軸921は、固定されたロワーシャフト926に対してアッパーシャフト927を軸方向に沿って摺動可能とするとともに、アッパーシャフト927からの回転をロワーシャフト926に伝達可能とし、コラムジャケット923に対して回動可能に軸支されている。
コラムジャケット923は、アッパーシャフト926を軸受により軸支したアッパージャケットを、ロワーシャフト927を軸受により軸支するとともに後述の可動ブラケット931に固定されたロワージャケットに対して軸方向に摺動可能に構成されている。アウターカバー924は、コラムジャケット923におけるアッパージャケット上端と連結した円筒形状を有し、その下縁より軸方向に切欠いたスリットを有する。従って、コラムジャケット923のアッパージャケット及びアウターカバー924は、アッパーシャフト927と共に軸方向に移動可能となる。また、コラムジャケット923のロワージャケットを可動ブラケット931に固定することで、可動ブラケット931の傾動により、テレスコ機構917はハンドル軸921とともに傾動する。
緩締部材925は、テレスコレバー914の一端に連結させた固定用ボルト928を、アウターカバー924のスリット両側に連結させた一対の固定用プレート929に挿入しており、締付カム930により一対の固定用プレート929間の距離を変更させる。すなわち、テレスコレバー914の回動に固定用ボルト928を連動させることで、締付カム930により、一対の固定用プレート929を離間させる又は近づけることで、アウターカバー924を緩締し、テレスコ機構917を固定解除又は固定させる。また、不図示であるが、コラムジャケット923のロワージャケットに規制溝を設け、コラムジャケット923のアッパージャケット及びアウターカバー924に締結させた規制ボルトを上記規制溝に係合させることで、テレスコ機構917による移動範囲が規制される。
図22及び図23に示す如く、チルト機構918は、ハンドル軸921が貫通した可動ブラケット931を、固定ブラケット919に軸支させており、可動ブラケット931の傾斜姿勢を固定する固定部材932を設けている。可動ブラケット931は、左右両側面を略三角形状として、その一つの頂点を固定ブラケット919に軸支させるとともに、後縁を固定ブラケット919の上縁とコイルバネ933で連結して付勢させている。また、ハンドル軸921を貫通させた可動ブラケット931上面に、テレスコ機構917を固定している。
固定部材932は、固定ブラケット919の軸支させた支軸934両端にチルトレバー915とカム935を設けており、可動ブラケット931に固定された位置決めプレート936と噛合させた固定用アーム937を固定ブラケット919に軸支させている。固定用アーム937は、コイルバネ938により支軸934と連結するとともに、コイルバネ939により位置決めプレート935と連結し、支軸934及び位置決めプレート936それぞれから付勢されている。また、固定用アーム937は、カム935の外周面と当接する穴部を備えており、カム935の回転により固定用アーム937は回動する。チルトレバー915の回動にカム935を連動させることで、固定用アーム937を回動させて位置決めプレート936と固定用アーム937との噛合部分を接離することにより、チルト機構918を固定解除又は固定させる。
図8及び図22に示す如く、テレスコ機構917先端側にステアリングコラム32を固定しているため、操縦ハンドル9とともにステアリングコラム32を上下動(テレスコ動作)及び傾動(チルト動作)させることができる。すなわち、操縦ハンドル9の姿勢調節と連動してステアリングコラム32の姿勢が変更されるように構成している。したがって、ステアリングコラム32の上面側に配置されるスイッチやレバー36,962,963の支持位置が、操縦ハンドル9と連動して位置調節される。従って、座乗したオペレータの視界にあわせて、操作しやすい位置にスイッチやレバー36,962,963を支持できる。
ステアリングコラム32は、その左側面に前後進切換レバー36を突設させており、前後進切換レバー36の下方には、誤操作防止体38(リバーサガード)を配置している。また、ステアリングコラム32は、その右側面に、ワイパを駆動させるワイパレバーや作業車両を一定速度で走行させるオートクルーズ用レバーなどといった、操作レバー962,963を突設させている。
テレスコ機構917は、アウターカバー924外周面に複数の部品取付けステー941〜943とネジ受け部材944とを溶接などにより固定している。アウターカバー924上端に設けた上端側ステー941は、操作レバー962を備えたレバースイッチユニット945を締結固定する。アウターカバー924の右側面で上端側ステー941下側に設けた右側ステー942は、操作レバー963を備えたレバースイッチユニット946を締結固定する。アウターカバー924の左側面で右側ステー941下側に設けた左側ステー943が、誤操作防止体38を締結固定する。
前後進切換レバー36を備えたレバースイッチユニット947は、誤操作防止体38の上面に締結固定される。すなわち、前後進切換レバー36用のレバースイッチユニット947は、誤操作防止体38を介して左側ステー943に連結する。ステアリングコラム32は、上端側ステー941の前後縁に設けたネジ受け部948,949と、ネジ受け部材944とにボルト締結されて、テレスコ機構917に固定される。
図22〜図24に示す如く、操舵角検出機構880と固定ブラケット919に対して回転可能に枢着させたチルト機構918とを備えており、ステアリングコラム32、ハンドル軸921、及び操舵角検出部880をチルト機構918に固定させている。これにより、操縦ハンドル9の姿勢調節と連動してステアリングコラム32の姿勢が変更されるように構成できるだけでなく、チルト機構918上方のステアリング機構に操舵角検出部880を設けて機構を小型化できる。また、ステアリングコラム32の上面側に配置される表示ランプまたはスイッチ支持位置が、操縦ハンドル9と連動して位置調節されるから、座乗したオペレータの視界に表示ランプまたはスイッチを支持できる。
操舵角検出機構880が、ハンドル軸921(ロワーシャフト926)の下端側と連結する操向入力軸(第1軸)882に設けた操向入力ギヤ(第1ギヤ)883と、操向入力ギヤ883と噛合する操向出力ギヤ(第2ギヤ)885と、操向出力ギヤ885を軸支している操向出力軸(第2軸)884と、操向出力軸884に軸支されるとともに側面に1つの凹部(直進ノッチ)890を備えたハンドル操作規制用カム886と、ハンドル操作規制用カム886の凹部890に嵌まるように配置したデテントローラ887と、操向出力軸先端に設置した操舵角センサ821とを有している。操舵角検出機構880は、筐体892で、操向入力ギヤ883、操向出力ギヤ885、ハンドル操作規制用カム886、デテントローラ887、及びデテントアーム888を内包している。
これにより、ハンドル操作規制用カム886によるハンドル操作規制機構と操舵角センサ821によるセンサ機構とを1軸で構成でき、操舵角検出機構880を小型化できる。従って、操舵角検出機構880をチルト機構918の可動ブラケット931下側の空間にコンパクトに収容できるため、チルト機構918を含むステアリング機構を小型化でき、キャビン7などの操縦部内で容易に取付けることができる。即ち、固定ブラケット919から操縦ハンドル9までのステアリング機構を、ボード支持板(エアカットプレート)901に固定したブレーキペダル支持ブラケット916に連結するだけでよく、操縦部におけるステアリング機構の組立性及びメンテナンス性を向上できる。
ハンドル操作規制用カム886側面には、凹部890を中心として対称となる位置に2つの凸部(ストッパ)891を設けており、凸部891を操向入力ギヤ883に当接させたときに、操縦ハンドル9の操舵角(切れ角)が最大となる。また、操舵角センサ821は、ロータリーポテンショメータ型のセンサであって、操向出力軸884両端に設けられて、操向出力軸884の回転角度により操縦ハンドル9の操舵角を検出する。操向出力軸884両端に2つの操舵角センサ821を設けることにより、両方の操舵角センサ821の出力が一致しない場合に、センサ異常を検知できるだけでなく、異常出力となった一方の操舵角センサ821を他方の操舵角センサ821の出力により補償できる。
操舵角検出機構880を構成する筐体892は、底板895から略U字状の壁板894を立設させており、操向入力軸882上端を上方に突出させる穴を設けた天板893で覆っている。ハンドル軸921のロワーシャフト926が、筐体892の天板893上に立設されたハンドル軸連結用ボス881内に挿入されて、筐体892上面から突出した操向入力軸882と連結する。筐体892は、天板893でハンドル軸連結用ボス881を軸支するとともに、底板895で操向入力軸882下端を軸支しており、操向入力軸882は、ハンドル軸921の回転に伴って回転する。
筐体892は、天板893及び底板895で操向出力軸884を軸支するとともに、天板893上面及び底板895下面に操向出力軸884両端を突出させている。操舵角センサ821は、天板893上面及び底板895下面に固定されており、操向出力軸884の上下端それぞれが挿入され、操向出力軸884の回転角度を検出し、操縦ハンドル9の操舵角として出力する。また、操向出力ギヤ885及びハンドル操作規制用カム886が、操向出力軸884の中途部に固着されており、操向出力軸884と共に回転する。
デテントローラ887を軸支するデテントアーム888が、筐体892の底板895に枢着されている。デテントアーム888は、その一端が底板895に軸支される一方、その他端がコイルバネ(中立バネ)889により付勢されており、その中途部にデテントローラ887が枢着される。コイルバネ889は、その一端がデテントアーム888と連結される一方、その他端が筐体892の底板895下面に連結される。
ハンドル軸9の中途部であってチルト機構918上方位置に、多重軸構造により伸縮可能なテレスコ機構917を設けている。チルト機構918は、略U字形状で下側に空間を有した可動ブラケット931が固定ブラケット919に枢支されて構成されている。操舵角検出機構880を構成する筐体892が可動ブラケット831下側に吊り下げ固定されており、ハンドル軸921(ロワーシャフト926)下端側が、可動ブラケット931上方に固定されたテレスコ機構917を介して、操舵角検出機構880に連結している。即ち、筐体892の天板893がスペーサ897を介して可動ブラケット831下面にボルト896締結して、操舵角検出機構880が可動ブラケット831内側に固着されている。
図24に示す如く、操縦ハンドル9が操作されていないとき、操作規制用カム886にデテントローラ887を当接させ、凹部(直進ノッチ)890に係脱自在にデテントローラ887を係合させ、操縦ハンドル9を中立位置(直進位置)に支持させる。また、デテントアーム888に連結されたコイルバネ889により、操作規制用カム886側面にデテントローラ887を弾圧当接させている。
図24に示す如く、操縦ハンドル9により操向操作を行った際、ハンドル軸921(ロワーシャフト926)と連結した操向入力軸882の回転により、操向入力ギヤ883が回転し、操向入力ギヤ883と噛合した操向出力ギヤ885を回転させる。操向出力ギヤ885の回転により、操向出力軸884で操向出力ギヤ885と同軸となるハンドル操作規制用カム886が回転する。このとき、デテントアーム888が回動して、デテントローラ887をハンドル操作規制用カム886側面に当接した状態で、操向出力軸884より離間させる。そして、操向入力ギヤ883及び操向出力ギヤ885の最大正逆転時、操作規制用カム886の凸部(ストッパ)891を操向入力軸882に当接させ、操縦ハンドル9の回転を規制する。
図24に示す如く、操縦ハンドル9が操向操作された後に、その操作がなくなると、コイルバネ889の付勢力により、デテントローラ887を操向出力軸884側に移動させるようにデテントアーム888が回動する。これにより、ハンドル操作規制用カム886が中立位置に向かって戻ると同時に、操向出力ギヤ885の回転に同期して操向入力ギヤ883が回転することで、操向入力軸882と共にハンドル軸921が回転し、操縦ハンドル9が中立位置に戻る。このとき、操作規制用カム886側面の凹部(直進ノッチ)890にデテントローラ887を係合させさせるとともに、コイルバネ889により弾圧当接させて、操縦ハンドル9を中立位置に保持する。
なお、上述の実施形態における操向感度設定制御において、減速率及び旋回/直進比それぞれを、不感体幅に応じてオフセットして設定し、操縦ハンドル9の操作可能範囲(角度)を一定にするものとしたが、これに限るものではない。例えば、図25に示す如く、最大操舵角度θmaを一定とし、不感帯幅に応じて、減速率及び旋回/直進比それぞれの操舵角に対する変化率を変更して、減速率及び旋回/直進比を設定し、操縦ハンドル9の操作可能範囲(角度)を変更するものとしてもよい。
また、上述の実施形態における操向感度設定制御において、ハンドル9の不感帯幅を決定する直進減速開始操舵角と旋回増速開始操舵角を同一角度に設定するものとしたが、図26に示す如く、直進減速開始操舵角と旋回増速開始操舵角とを別角度に設定するものとしてもよい。即ち、狭い不感帯幅−θmi1〜θmi1に設定する場合は、旋回増速開始操舵角をθmi1とする一方で、直進増速開始操舵角をθmi1a(θmi1a>θmi1)に設定し、広い不感帯幅−θmi2〜θmi2に設定する場合は、旋回増速開始操舵角をθmi2とする一方で、直進増速開始操舵角をθmi2a(θmi2a>θmi2)に設定する。これにより、ハンドル9を中立位置から旋回操作した際に、まず、旋回速度が増速された後に直進速度の減速が開始されるため、ハンドル9の切り始めにおいて、走行機体2を円滑に走行させることができる。なお、旋回増速開始操舵角と直進減速開始操舵角の差は、不感帯幅の広さに関わらず一定となるものとしてもよいし、不感帯幅の広さが広くなるにつれて大きくなるなど変化させるものとしてもよい。
また、本願発明における各部の構成は図示の実施形態に限定されるものではなく、本願発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々変更が可能である。
2 走行機体
3 走行クローラ
4 車輪
5 ディーゼルエンジン
8 操縦座席
9 操縦ハンドル
13 旋回用ミッションケース
17 直進用ミッションケース
500 油圧機械式変速機
501 前後進切換機構
502 クリープ変速ギヤ機構
503 副変速ギヤ機構
511 主変速入力軸
512 主変速出力軸
521 油圧ポンプ部
522 油圧モータ部
523 ポンプ斜板
524 主変速油圧シリンダ
526 遊星ギヤ機構
535 走行中継軸
537 前進低速油圧クラッチ
539 前進高速油圧クラッチ
541 後進油圧クラッチ
624 主変速油圧切換弁
642 前進低速クラッチ油圧切換弁
643 前進高速クラッチ油圧切換弁
644 後進クラッチ油圧切換弁
701 油圧式無段変速機(HST)
702 差動ギヤ機構
703 遊星ギヤ機構
704 油圧ポンプ部
705 油圧モータ部
706 ポンプ軸
707 チャージポンプ
708 ポンプ斜板
709 モータ軸
741 旋回油圧シリンダ
742 旋回油圧切換弁
813 直進コントローラ
814 旋回コントローラ
821 操舵角センサ
822 主変速センサ
823 直進用ピックアップ回転センサ
824 旋回用ピックアップ回転センサ
825 前後進センサ
826 副変速センサ
827 クリープセンサ
828 ブレーキ位置センサ
829 クラッチ位置センサ
831 直進走行演算部
832 メモリ
833 通信インターフェース
841 旋回走行演算部
842 メモリ
843 通信インターフェース
880 操舵角(ハンドル切れ角)検出機構
881 ハンドル軸連結用ボス
882 操向入力軸(第1軸)
883 操向入力ギヤ(第1ギヤ)
884 操向出力軸(第2軸)
885 操向出力ギヤ(第2ギヤ)
886 ハンドル操作規制用カム
887 デテントローラ
888 デテントアーム
889 コイルバネ
890 凹部
891 凸部
892 筐体
893 天板
894 壁板
895 底板
896 ボルト
897 スペーサ
916 ブレーキペダル支持ブラケット
917 テレスコ機構
918 チルト機構
919 固定ブラケット
921 ハンドル軸
931 可動ブラケット
TA 減速率テーブル
TB 旋回/直進比テーブル

Claims (6)

  1. 走行機体に搭載するエンジンと、第一無段変速装置を有する直進系伝動経路と、第二無段変速装置を有する旋回系伝動経路を備え、前記直進系伝動経路の出力と前記旋回系伝動経路の出力を合成して左右の走行部を駆動する作業車両において、
    前記直進系伝動経路の出力と前記旋回系伝動経路の出力とを連動的に制御する制御部と、回転操作可能な操縦ハンドルとを備えており、
    前記制御部は、前記操縦ハンドルへの操作に応じて、旋回系伝動経路の出力を増速させ、直進系伝動経路の出力を減速させて、前記操縦ハンドルの操舵角に基づいて旋回時の前記左右の走行部の速度比を決定するものであって、
    前記操縦ハンドルの中立位置における不感帯幅を変更可能としたことを特徴とする作業車両。
  2. 前記制御部は、前記走行機体の直進速度が高速になると、前記操縦ハンドルの前記不感帯幅を大きくすることを特徴とする請求項1に記載の作業車両。
  3. 前記制御部は、前記走行機体の前後進に合わせて前記操縦ハンドルによる前記走行機体の旋回半径を変更することを特徴とする請求項1又は2に記載の作業車両。
  4. 前記制御部が、前記直進系伝動経路の出力を制御する第1制御部と、前記旋回系伝動経路の出力を制御する第2制御部とで構成されており、前記第1制御部で設定された前記直進系伝動経路の出力を前記第2制御部が受けることで、前記旋回系伝動経路の出力を設定するものであって、
    前記第2制御部が、前記走行機体の走行状態に対する前記不感帯幅を記憶しており、当該不感帯幅を任意に設定可能としたことを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の作業車両。
  5. 走行機体に搭載するエンジンと、第一無段変速装置を有する直進系伝動経路と、第二無段変速装置を有する旋回系伝動経路を備え、前記直進系伝動経路の出力と前記旋回系伝動経路の出力を合成して左右の走行クローラを駆動する作業車両において、
    前記直進系伝動経路の出力を制御する第1制御部と、前記旋回系伝動経路の出力を制御する第2制御部と、回転操作可能な操縦ハンドルとを備えており、
    前記操縦ハンドルへの操作に応じて、前記第1制御部が前記直進系伝動経路の出力を減速させるとともに、前記第2制御部が前記旋回系伝動経路の出力を増速させ、前記操縦ハンドルの操舵角に基づいて旋回時の前記左右の走行クローラの速度比を決定するものであって、
    前記直進系伝動経路の出力の減速を開始する前記操縦ハンドルの操舵角を変更可能としたことを特徴とする作業車両。
  6. 前記旋回系伝動経路の出力の増速を開始する前記操縦ハンドルの操舵角を変更可能としたことを特徴とする請求項1に記載の作業車両。
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