JP2017071477A - 乗客コンベア - Google Patents

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Abstract

【課題】乗客コンベアの降り運転において、わずかの間に乗客が集中したときに、安全制御を行い得る乗客コンベアを提供する。【課題を解決するための手段】エスカレータ10の踏段40を走行駆動する電動機16に対して、インバータ回路62から電力を供給する。このインバータ回路62はコンピュータ54により制御される。このコンピュータ54には、降り許容値が予め定められている。インバータ回路62から供給される電流値を検知するシャント抵抗器48と、シャント抵抗器48からの信号を増幅する増幅器50と、増幅した信号をデジタル変換するADC52を設ける。コンピュータ54はデジタル変換された電動機16の電流値を取得する。そして、取得した電動機16の電流値が降り許容値を超えているときに、コンピュータ54は、電動機16の回転速度を減速させるようにインバータ回路62を制御する。【選択図】図2

Description

本発明は、エスカレータなど乗客を昇降搬送する乗客コンベアに関し、特に乗客コンベアにおける制御技術に関する。
無端状に連結されて循環走行する複数の踏段により乗客を昇降搬送するエスカレータは、駆動チェーンを介して複数の踏段を走行させる電動機と、この電動機に電力を供給するインバータ回路を含む制御装置と、により駆動される。
このエスカレータの制御技術において、インバータ回路と電動機の間の電路に設けたサーマルリレーの作動信号を監視することにより、踏段の走行負荷が電動機の停動トルクに達する前にブレーキを作動させてエスカレータを停止させる、上記の制御装置による安全制御が知られている。このように踏段の走行を停止させることで、過熱による電動機の損傷や、乗客荷重の過多に起因して生じる踏段の逆走を未然に防止することができる。
ところが、上記サーマルリレーの熱時定数によっては、電動機の過熱状態を検知するまでのわずかの間に乗客が集中してエスカレータに乗り込み、走行負荷が電動機の停動トルクに達する前にブレーキを作動させることができない可能性があった。このため、過大な乗客荷重が踏段にかかったときにも、十分な停動トルクを発揮する電動機を選定する必要があり、これがエスカレータのコストアップの要因となっている。
一方で、特許文献1には、電動機に流れる電流を検出する電流検出器を備え、検出した電流値と所定の設定値を比較することで電動機の負荷状態を判断し、電動機が過負荷状態にあるときに踏段の走行を減速して停止させる制御装置が記載されている。この制御装置によれば、わずかの間に乗客が集中してエスカレータに乗り込んだときであっても、乗客の負荷が停動トルクを超えないよう即時に、踏段の走行を停止させることができるので、想定される乗客の最大負荷に見合った電動機を選定することができる。
特許第4298448号公報
上記特許文献の制御装置は、エスカレータの昇り運転に関する制御、すなわち電動機による踏段の走行駆動に抗して乗客の負荷が作用しているときに用いられる。しかし、エスカレータの降り運転においても、乗客が一時的に集中する可能性がある。降り走行では、電動機による踏段の走行に準じて乗客の負荷が作用する点で昇り走行と異なるため、上記特許文献の制御技術をそのまま用いることができない。
なお、このような問題は、パレット式またはゴムベルト式の踏板を無端搬送体として有し、踏板が走行方向に傾斜して設けられている乗客コンベアとしての動く歩道においても同様に生じるものである。
このような課題に鑑み、本発明は、乗客コンベアの降り運転において、わずかの間に乗客が集中したときに、安全制御を行い得る乗客コンベアを提供することを目的とする。
上記の目的を達成するため、本発明に係る乗客コンベアは、電動機と、前記電動機の動力によって走行駆動され、走行方向に傾斜して設けられた無端搬送体と、前記無端搬送体を降り走行させるように前記電動機を制御する制御装置と、を有し、
前記制御装置は、前記電動機を流れる電流の電流値を検出する検出部と、前記降り走行における前記電流の許容値が定められた設定部と、を有し、前記降り走行において、前記電流値および前記許容値を取得し、該電流値が該許容値を超えたときに、前記電動機の回転速度を減少させることを特徴とする。
前記制御装置は、また、前記無端搬送体を昇り走行させるように前記電動機を制御し、前記設定部には、前記昇り走行において許容される前記電流の昇り許容値が定められ、
前記制御装置は、さらに、前記昇り走行において、前記電流値および前記昇り許容値を取得し、該電流値が該昇り許容値を超えたときに、前記電動機の回転速度を減少させてもよい。
前記降り許容値は、前記昇り許容値よりも値が小さくてもよい。
前記制御装置は、所定の期間継続して、前記電流値が前記降り許容値を超えたことを条件として、前記電動機の回転速度を減少させてもよい。
本発明の乗客コンベアによれば、設定部に降り許容値が設定されており、制御装置が、踏段を降り走行させながら、電動機の電流値と降り許容値とを比較する。ここで、電流値が降り許容値を超えたときには、制御装置によって電動機の回転速度が減速される。このため、乗客コンベアの下り運転中に、一時的に乗客が集中したことを即座に検出して踏段の走行速度を減速させる安全制御が可能となる。
実施形態に係るエスカレータの概略構成を示す図である。 上記エスカレータにおける制御装置のハードウェア構成を示す図である。 上記制御装置の動作フローの一例を示す図である。 上記エスカレータにおける制御装置の機能ブロック図である。 上記エスカレータの乗込率と電流値の関係を示す図である。
以下、本発明の実施形態について図面を参照しながら説明する。
実施形態に係るエスカレータ10は、図1に示すように、上部機械室12を有し、上部機械室12には、駆動装置14が設置されている。この駆動装置14は正転および逆転運転が可能な電動機16を有する。電動機16の出力軸は減速機18の入力軸に連結されており、電動機16の回転動力は、その回転速度が減じられて減速機18の出力軸18Sに出力される。
減速機18の出力軸18Sには、駆動スプロケット22が軸支されている。駆動装置14は、また、駆動スプロケット22よりも大きなピッチ円の従動スプロケット24を有し、従動スプロケット24と駆動スプロケット22には、チェーン26が張架されている。
従動スプロケット24は、シャフト28に軸支されており、シャフト28には、同軸上に主踏段スプロケット30が固定されている。
一方、下部機械室32には、シャフト34に軸支された従踏段スプロケット36が設けられている。主踏段スプロケット30と従踏段スプロケット36間には、ローラチェーン38が巻き掛けられている。ローラチェーン38には、無端状に連結された複数の踏段40が取り付けられている(図では、踏段40は4台のみが図示されており、その他の踏段は省略している。)。ローラチェーン38は、主踏段スプロケット30と従踏段スプロケット36の間においては、傾斜して設けられているガイドレール42によって案内される。
上記の構成からなるエスカレータ10において、電動機16が起動されると、その回転動力が、減速機18を介して伝達され、駆動スプロケット22が回転駆動される。駆動スプロケット22が回転されると、従動スプロケット24と従動スプロケット24に張架されているチェーン26が周回走行して、駆動スプロケット22からの回転動力が従動スプロケット24に伝達される。
従動スプロケット24が回転されると、従動スプロケット24と同軸上(シャフト28上)に設けられた主踏段スプロケット30が回転される。これにより、主踏段スプロケット30と従踏段スプロケット36に巻掛けられたローラチェーン38がガイドレール42に案内されて周回走行し、これに伴って、無端状に連結された複数の踏段40が循環走行駆動される。このようにして、踏段40上の乗客は昇り又は降り方向に搬送される。
踏段40の動力源である電動機16は、代表的には、u・v・wの三相の交流電力により駆動する誘導電動機が用いられている。この電動機16の制御について、図2〜図4を参照しながら説明する。電動機16は制御装置44により制御される。制御装置44は、ドライバ回路46と、シャント抵抗器48と、増幅器50と、アナログ−デジタル変換器(以下、「ADC」といい、符号"52"を付す。)と、コンピュータ54と、操作盤56と、により実現されている。
ドライバ回路46は、コンバータ回路58と、平滑コンデンサ60と、インバータ回路62と、ブレーキ回路104と、を有している。
コンバータ回路58は、その入力端子が三相の交流電源64に接続されており、この交流電源64を直流電源に変換する。なお、図2のコンバータ回路58は、三相の交流電源64のうち1相に対応する回路を記載し、他の2相に対応する回路の記載を省略している。コンバータ回路58によって変換された直流電源は、平滑コンデンサ60に蓄積される。
平滑コンデンサ60に蓄積された直流電源に対して、インバータ回路62およびシャント抵抗器48が直列的に接続されている。このインバータ回路62は、後述する制御信号に基づいて、電動機16を駆動するu・v・wの三相の交流電力を生成する回路であり、各相に対応する3ペアのスイッチング素子を有している。ペアのスイッチング素子は、代表的には、直流電源にコレクタが接続されている一のトランジスタ66、及びこの一のトランジスタ66のエミッタに、コレクタが接続されている他のトランジスタ68から構成されている。各トランジスタ66,68のベースはコンピュータ54の出力端子70に個別に接続されている。また、一のトランジスタ66と他のトランジスタ68の接続箇所は電動機16に接続されている。このように、コンバータ回路58、平滑コンデンサ60、及びインバータ回路62は、制御信号に基づいて、電動機16を駆動する電力を生成する駆動電力生成部72として機能している。
他のトランジスタ68のエミッタとグランドの間にシャント抵抗器48が接続されている。このため、各相を流れる電流に起因する信号が、各シャント抵抗器48のエミッタ側端子に生じる。各シャント抵抗器48に対して増幅器50が個別に設けられており、エミッタ側端子の各々が増幅器50の入力端子に接続されている。
増幅器50は入力された信号の振幅を増幅させる。増幅された信号の各々は、ADC52が有する複数の入力端子に、個別に、入力される。ADC52は、その制御端子がコンピュータ54の入出力端子74に接続されている。
コンピュータ54は、上記したスイッチング素子に接続される出力端子70、及びADC52に接続される入出力端子74に加えて、操作盤56に接続される入力端子76を有している。
操作盤56には、不図示である、走行スイッチ、方向切替スイッチ、及びマイクロコンピュータが設けられている。走行スイッチは、ON/OFFの状態を有するスイッチであり、ON状態が踏段40の走行駆動の開始を示す開始信号、OFF状態が踏段40の走行駆動の停止を示す停止信号として、操作盤56のマイクロコンピュータに入力される。方向切替スイッチは、ON/OFFの状態を有するスイッチであり、ON状態が昇り方向を示す昇り信号、OFF状態が降り方向を示す降り信号として操作盤56のマイクロコンピュータに入力される。
操作盤56のマイクロコンピュータは、各スイッチの状態を取得して、昇り運転指令、降り運転指令、および運転停止指令の何れかを含む運転指令をコンピュータ54に入力する。昇り運転指令は踏段40を昇り方向に走行させる運転を指令する信号であり、マイクロコンピュータが開始信号および昇り信号を取得したときに生成される。降り運転指令は踏段40を降り方向に走行させる運転を指令する信号であり、マイクロコンピュータが開始信号および降り信号を取得したときに生成される。運転停止信号は上記の運転を停止させる信号であり、マイクロコンピュータが停止信号を取得したときに生成される。このように操作盤56の各スイッチおよびマイクロコンピュータは、運転指令をコンピュータ54に入力する運転指令入力部78として機能している。なお、操作盤56は、例えば、エスカレータ10のスカートガード(不図示)に設けられている。
コンピュータ54は、中央処理装置(以下「CPU」といい、符号"80"を付す。)と、記憶装置82と、を有している。この記憶装置82は、例えばROMやRAMなどの半導体記憶装置であり、制御プログラム84が予め記憶されている。CPU80は、コンピュータ54に電源が投入されたときに、記憶装置82から制御プログラム84をロードすることにより、図3に示す処理を実行する。
先ず、CPU80は、操作盤56からの運転指令の有無を確認する(s11)。運停指令が無いとき(s11:NO)は、この確認を継続する。一方、運転指令を取得すると(s11:YES)、CPU80は、運転指令に応じて踏段40の走行方向を定めるフラグを設定する(s12)。例えば、昇り運転指令を取得したときは、フラグ"UP"を立てる。一方、降り運転指令を取得したときは、フラグ"DN"を立てる。このように、コンピュータ54は、操作盤56からの運転指令を取得する取得部86、運転指令に基づいて踏段40の走行方向を定める方向設定部88として機能している。
次に、CPU80は、コンピュータ54の出力端子70を制御して、インバータ回路62のスイッチング素子の各々に制御信号を入力する(s20)。この制御信号は、踏段40を、運転指令に含まれる走行方向に定格速度で走行させる三相の交流電力を発生させるための信号である。この制御信号は代表的にはPWM信号であり、予め記憶装置82に記憶させておいた電動機16の回転速度、及びADC52から取得した各相の電流値に基づいて生成される。なお、電動機16の回転速度は踏段40の定格速度に基づいて定められている。このPWM信号がスイッチング素子に入力されることにより、周波数および電圧が制御された三相の交流電力が生成される。
この交流電力が供給された電動機16により、踏段40は走行駆動される。このように、記憶装置82は電動機16の回転速度を指定する速度指定部90として機能している。また、コンピュータ54は、速度指定部90から取得した回転速度、および取得部86からの走行方向に基づいて、制御信号を生成する信号生成部92として機能している。
なお、降り走行においては、乗客の負荷に準じて電動機16が回転しているので、乗客の負荷が増えるに従って、乗客の負荷によって電動機16の出力軸が回される回生状態が生じる。このときCPU80は、ADC52から取得した値が増大したことを検知して、電動機16の回転速度を落とすように生成した制御信号を各スイッチング素子に入力しながら、ブレーキ回路104を作動させる。このブレーキ回路104は、ドライバ回路46内の直流電源とグランドの間に直列的に接続されるトランジスタ106と抵抗器108を有している。トランジスタ106のコレクタは直流電源に接続され、エミッタが抵抗器に接続されている。ベースは、コンピュータ54の出力端子70に接続されている。CPU80は、出力端子70を介してトランジスタ106を作動させる。これにより、回生状態により生じた電動機16の発電電力が抵抗器108により熱となって消費され、電動機16の回転にブレーキがかかる。このような制御信号の生成およびブレーキ回路104の作動により、電動機16の出力軸の回転速度が非回生状態にある回転速度と略等しく調整されている。
次に、電流値の検出ステップ(s31)、及び比較ステップ(s32〜s35)が、この順に実行される。
電流値の検出ステップ(s31)は、CPU80がコンピュータ54の入出力端子74を介してADC52を制御することにより、増幅器50からの各信号をデジタル信号に変換させ、各デジタル信号から値を取得する。そして、CPU80は取得した各値を合算する。この合算値は、各シャント抵抗器48を流れる電流の合計、すなわち電動機16を流れる総電流に対応しており、本明細書において、単に「電動機16の電流値」という。このように、シャント抵抗器48、増幅器50、ADC52、およびコンピュータ54は、電動機16の電流値を検出する検出部94として機能している。
比較ステップ(s32〜s35)は、CPU80が電動機16の電流値と踏段40の走行方向に応じた許容値とを比較する。この許容値は予め記憶装置82に記憶されている。具体的には、フラグ"UP"が立っているとき(s32:UP=1)は、電動機16の電流値と昇り許容値とを比較する(s33)。この昇り許容値とは、踏段40の昇り走行において、電動機16を流れる電流(電動機16を駆動する電流)として許容される最大の電流値である。一方、フラグ"DN"が立っているとき(s32:DN=1)は、電動機16の電流値と降り許容値とを比較する(s34)。この降り許容値は、踏段40の降り走行において、電動機16を流れる電流(回生状態にある電動機16から流れる電流)として許容される最大の電流値である。このように記憶装置82は、踏段40の走行方向に応じた電流の許容値が設定された許容値設定部96として機能している。また、コンピュータ54は、電動機16の電流値と踏段40の走行方向に応じた許容値とを比較する比較部98として機能している。
上記の昇り許容値および降り許容値は、例えば図5のグラフを参酌して定められる。このグラフは、所定数の踏段40を所定の定格速度で走行させたときに、乗込率を変えながら電動機16の電流値を測定してグラフ化したものである。ここで、実線のグラフは昇り走行における測定結果であり、一点鎖線のグラフは降り走行における測定結果である。これらのグラフによると、昇り走行および降り走行のいずれであっても、乗込率が増加するに従って電動機16の電流値は増大する。しかし、昇り走行は、乗客の負荷に抗して電動機16を回転(正回転)させるのに対して、降り走行は乗客の負荷によって電動機16が回転(逆回転)されるので、グラフの傾斜(電流値の増大度合)は降り走行の方が緩やかになっている。そして、降り走行における電流値の増大度合は、昇り走行における電流値の増大度合に対して、半分以下となっている。なお、電流値の増大度合は、踏段40の幅寸法、踏段40の数、勾配などのエスカレータ10の仕様、チェーン26やハンドルレールの駆動機構に代表されるエスカレータ10の内部機構、電動機16の特性、及び踏段40の走行速度に応じて変化するが、上記した昇り走行に対する降り走行の増大傾向は変わらない。
本実施形態では、昇り設定値および降り設定値は、対応するグラフにおいて乗込率が90%のときの電流値に基づいて定められている。このため、降り許容値は、昇りの許容値よりも低く設定されており、昇り許容値の半分以下の値となっている。
図3に示すように、上記の比較を行った結果、電動機16の電流値が許容値を超えていないとき(s35:No)は、定格速度での運転を継続する(s20)。
一方、電動機16の電流値が許容値を超えたとき(s35:YES)には、コンピュータ54のCPU80(信号生成部92)は、制動制御を行う(s36)。すなわち電動機16の回転速度を減速させる制御信号をインバータ回路62に入力する。このような制御信号は、例えば、記憶装置82を参照して得た電動機16の回転速度の値を減じ、この減じて得た値に基づいて生成される。回転速度の減速度合は、乗客が転倒することのないように減速するのが好ましい。上記の制御信号がインバータ回路62に入力されることにより、電動機16の回転が減速されて停止し、踏段40の走行も減速され停止する。また、エスカレータ10は、電動機16に連結されている減速機18(図1)の入力軸に無励磁作動ブレーキ(不図示)を設け、CPU80は、電動機16の回転を停止させたときに、さらに、無励磁作動ブレーキを作動させるのが好ましい。
本実施形態にかかるエスカレータ10は、降り許容値が予め設定された許容値設定部96を有しており、踏段40を降り方向に走行させながら、電動機16の電流値と降り許容値とを比較し、電動機16の電流値が降り許容値を超えたときには、電動機16の回転速度を減速させる。このため、降り走行中に、一時的に乗客が集中したことを即座に検出して踏段40の走行を減速して停止させる安全制御が可能となる。
また、許容値設定部96には、降り許容値に加えて昇り許容値が設定されており、踏段40を昇り方向に走行駆動させながら、電動機16の電流値と昇り許容値とを比較し、電動機16の電流値が昇り許容値を超えたときには、電動機16の回転速度を即座に減速させる。このため、降り走行だけでなく、昇り走行中においても、一時的な乗客の集中を即座に検出して踏段40の走行速度を減速させることが可能となる。したがって、昇降両用のエスカレータ10に好適に用いられる。
以上、本発明の実施形態に係るエスカレータ10について説明したが、本発明は上記の実施形態に限定されない。
上記の実施形態において、昇り許容値と降り許容値は個別に定められていればよく、各許容値は種種の設定方法を採用することができる。例えば、昇り許容値および降り許容値は、図5に示されるグラフにおいて、乗込率が90%のときの電流値に基づいて定められているが、乗込率は90%のときに限定されず、適宜定められるものである。
また、昇り許容値と降り許容値の基礎となる乗込率は、互いに異なってもよい。すなわち、昇り許容値は乗込率80%の電流値を基に定められ、降り許容値は乗込率90%の電流値を基に定められてもよい。
さらに、各許容値は、特定の乗込率における電流値を基に定められているが、電動機16の停動電流(停動トルクを発揮しているときに電動機16を流れる電流)に基づいて、予め設定されたものであってもよい。
また、上記の実施形態において、コンピュータ54のCPU80は、所定の期間継続して、電動機16の電流値が許容値を超えていることを条件として制動制御を行ってもよい。この所定の期間は、特に限定されないが、次に述べるサーマルリレー(不図示)の作動時間よりも短く設けられるのが好ましい。
さらに、上記の実施形態において、インバータ回路62、又はインバータ回路62と電動機16の間の電路に、サーマルリレーを設けてもよい。このサーマルリレーの出力は、コンピュータ54の入力端子に接続される。そして、コンピュータ54のCPU80はサーマルリレーが作動したときに、電動機16の回転速度を減速させる制御信号をインバータ回路62に入力する。これにより、過熱による電動機16の損傷などを未然に防ぐことができる。
また、上記実施形態の増幅器50は、必須の構成ではなく、ADC52の分解能が高いときや、シャント抵抗器48に生じる信号の振幅が大きいときには省略してもよい。
また、上記実施形態では、電流を検出するためのセンサとして、シャント抵抗器48を用いたが、これに限定されず、インバータ回路62と電動機16の間の電路をクランプして電流を検出するセンサを用いてもよい。
また、上記実施形態の制御信号を生成するための方式としては、特に限定されないが、ベクトル制御方式や、V/f制御方式などの方式により生成される。
また、上記の信号生成部92、速度指定部90、検出部94、許容値設定部96、及び比較部98として機能している、シャント抵抗器48、増幅器50、ADC52、及びコンピュータ54を、上記のドライバ回路46と共にして、一つのドライバ装置100として設けてもよい。そして、取得部86および方向設定部88として機能しているコンピュータ54をPLC等のコントローラ装置102として設けてもよい。
さらに、コントローラ装置102は、ドライバ装置100の比較部98から比較結果を取得し、ドライバ装置100に減速命令を入力する減速命令部(不図示)を有してもよい。そして、ドライバ装置100は、減速命令を取得したときに、電動機16の回転速度を減速させる制御信号を生成してもよい。
また、エスカレータ10は、さらに、回転灯やサイレンに代表される警報装置を備えてもよい。この警報装置は制御装置44に接続される。コンピュータ54の記憶装置82には、警報装置を作動させるべき電流値である警報電流値が予め設定される。この警報電流値は、昇り走行時の警報電流値(以下、昇り警報電流値という。)と降り走行時の警報電流値(以下、降り警報電流値という。)を個別に有している。昇り警報電流値は、上記の昇り許容値よりも小さい値に設定されている。また、降り警報電流値は、上記の降り許容値よりも小さい値に設定されている。そして、コンピュータ54のCPU80は、踏段40を走行させながら、走行方向に対応した警報電流値と電動機16の電流値とを比較し、電動機16の電流値が警報電流値を超えたとき、警報装置を作動させる。このような、エスカレータ10は、乗客が多く乗り込んできたときに、踏段40の走行速度を減速させるに先立って、乗客に注意を促すことができる。したがって、それ以上の乗客の乗り込みを抑制することで、踏段40上の乗員の過多を未然に防ぐことができる。また、踏段40の走行が減速することを乗員に知らせることができ、乗員の転倒を防ぐことができる。
本発明はその趣旨を逸脱しない範囲で、当業者の知識に基づき種々の改良、修正、変形を加えた態様で実施し得るものであり、これらの態様はいずれも本発明の範囲に属するものである。
例えば、無端搬送体としての踏段を有するエスカレータを例にして実施形態を説明したが、本発明は、パレット式またはゴムベルト式の踏板を無端搬送体として有し、踏板が走行方向に傾斜して設けられている、乗客コンベアである動く歩道にも同様に用いることができる。
10 エスカレータ
16 電動機
40 踏段
44 制御装置
94 検出部
96 許容値設定部

Claims (4)

  1. 電動機と、
    前記電動機の動力によって走行駆動され、走行方向に向かって傾斜して設けられた無端搬送体と、
    前記無端搬送体を降り走行させるように前記電動機を制御する制御装置と、
    を有する乗客コンベアであって、
    前記制御装置は、
    前記電動機を流れる電流の電流値を検出する検出部と、
    前記降り走行において許容される前記電流の降り許容値が定められた設定部と、
    を有し、
    前記降り走行において、前記電流値および前記降り許容値を取得し、該電流値が該降り許容値を超えたときに、前記電動機の回転速度を減少させることを特徴とする乗客コンベア。
  2. 前記制御装置は、また、前記無端搬送体を昇り走行させるように前記電動機を制御し、
    前記設定部には、前記昇り走行において許容される前記電流の昇り許容値が定められ、
    前記制御装置は、さらに、前記昇り走行において、前記電流値および前記昇り許容値を取得し、該電流値が該昇り許容値を超えたときに、前記電動機の回転速度を減少させることを特徴とする請求項1に記載の乗客コンベア。
  3. 前記降り許容値は、前記昇り許容値よりも値が小さいことを特徴とする請求項2に記載の乗客コンベア。
  4. 前記制御装置は、所定の期間継続して、前記電流値が前記降り許容値を超えたことを条件として、前記電動機の回転速度を減少させることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の乗客コンベア。
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