JP2017071070A - インクジェット記録装置およびインクジェット記録方法 - Google Patents

インクジェット記録装置およびインクジェット記録方法 Download PDF

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歩 平川
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歩 平川
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卓巳 金子
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Noboru Kunimine
昇 国峯
啓太 石見
Keita Ishimi
啓太 石見
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Abstract

【課題】浸透性が低いまたはない記録媒体においても、ブリード現象を抑制した高品位な画像を記録可能なインクジェット記録装置およびインクジェット記録方法を提供する。
【解決手段】所定領域に対して付与される2種類以上のインクと処理液とが混合すると想定した場合の混合液の表面張力が目標値になるように、所定領域に対する2種類以上のインクの付与量に応じて、所定領域に対する処理液の付与量を決定する。
【選択図】図8

Description

本発明は、複数種類のインクを吐出して画像を形成する記録装置および記録方法に関する。
近年、インクジェット記録装置などの画像記録装置では、高速記録化が求められている。複数種類のインクを用いて高速で画像を形成した際に、ブリード現象が発生する場合がある。特に、インクの浸透性が低いまたはない記録媒体においてブリード現象が発生しやすい。ブリード現象とは、記録媒体上において一滴または複数のインク滴が浸透する前に液体状態として存在している間に、色材の異なるインク滴が接触して一方の側に他方の色材が混ざって、色材の異なるインク滴の境界部分が混色してしまうことである。色材の異なる色間「滲み」と呼ぶ場合もある。一般的には、表面張力の低いインク滴側から表面張力の高いインク滴側へ「滲み」が発生する。このような「滲み」を抑制するための従来方法として、例えば、特許文献1には、全てのインクの表面張力の差を1.0mN/m以下に制御したインクを付与する方法が開示されている。
特開2010−64478号公報
しかしながら、特許文献1開示の方法のように全てのインクの表面張力の差を1.0mN/m以下に制御するだけでは、記録媒体の種類によって不十分な場合がある。例えば、OKトップコート+紙などのインク浸透性の低い記録媒体に画像を形成する場合に、色材の異なるインクの間に表面張力の差が僅かに存在しても、ブリード現象が発生するおそれがある。一方、インク浸透性の低い記録媒体においてもブリード現象を抑制するためにインクの表面張力の差を、さらに小さい値(例えば、0.5mN/m)以下に制御することも考えられているが、その場合、インク作製上非常に困難で、作製コストも高くなってしまう。
本発明は、このような問題を解決するためになされたものである。その目的は、インクと異なる表面張力を有する処理液をインクの付与量に応じて吐出させて、画像の表面張力を最適化することにより、インクの浸透性が低いまたは無い記録媒体においてもブリード現象を抑制できるインクジェット記録方法を提供することにある。
本発明のインクジェット記録装置は、2種類以上のインクと、表面張力が前記2種類以上のインクと異なる処理液とを夫々吐出する記録ヘッドによって、記録媒体上の所定領域に前記2種類以上のインクおよび前記処理液による画像を形成するインクジェット記録装置であって、前記所定領域に対する前記2種類以上のインクの付与量を取得するインク付与量取得手段と、前記所定領域に対して付与される前記2種類以上のインクと前記処理液とが混合すると想定した場合の混合液の表面張力が目標値になるように、インク付与量取得手段で取得された前記2種類以上のインクの付与量に応じて、前記所定領域に対する前記処理液の付与量を決定する処理液付与量決定手段とを有することを特徴とする。
本発明によれば、インクの浸透性が低いまたは無い記録媒体においても、ブリード現象を抑制することができる。
第1の実施形態に適用可能なインクジェット記録装置の一例を模式的に示す図である。 ブリード現象が生じたインク滴を示す図である。 ブリード現象により画像弊害が生じた画像の様子、および処理液の付与によりブリード現象が抑制された画像の様子を示す図である。 シアンインクに対しゾニールFSO−100の添加量を増やしたときの表面張力の変化を示すグラフである。 第1の実施形態で用いるインクセットのインクが流れ込む方向とブリード長の大きさを表した模式図である。 第1の実施形態における各インクの付与量と処理液の付与量との関係を示すグラフである。 第1の実施形態における記録システムの制御系の構成を示すブロック図である。 第1の実施形態における画像処理のフローチャートである。 第1の実施形態における処理液データ生成処理のフローチャートである。 マルチパス記録で用いるマスクを示す図である。 第2の実施形態における処理液データ生成処理のフローチャートである。 第3の実施形態における処理液データ生成処理のフローチャートである。 第3の実施形態で用いる「処理液用調整パターン」の構成を示す図である。 第4の実施形態における処理液の付与範囲を説明するための図である。 第5の実施形態におけるインクジェット記録装置を模式的に示す図である。
以下、図面を参照して、本発明の実施形態について詳細に説明する。
[第1の実施形態]
図1は、本実施形態に適用可能なインクジェット記録装置の一例を模式的に示す図である。
記録ヘッド部22は、ブラック(K)、シアン(C)、マゼンタ(M)、イエロー(Y)のインクおよび処理液(H)をそれぞれ吐出する5つの記録ヘッド22K、22C、22M、22Y、22Hから構成されている。記録ヘッド22K、22C、22M、22Y、22Hは、主走査方向(矢印B方向)に並列配置されている。各記録ヘッドには、主走査方向と直交する副走査方向(矢印A方向)に沿って1200dpiの密度で1280個の吐出口(ノズル)が配列された吐出口列が形成されている。各吐出口から1度に吐出されるインクの量は約4.5ngである。これらの吐出口から記録媒体1に対してインクと処理液が吐出されることで記録が行われる。
また、インクタンク部21は、記録ヘッド22K、22C、22M、22Y、22H用のインクを貯蔵する5つのインクタンク21K、21C、21M、21Y、21Hから構成される。インクタンク部21および記録ヘッド部22は、主走査方向に往復可能になっている。
キャップ部20は、記録ヘッド22K、22C、22M、22Y、22Hのインク吐出面および処理液吐出面(吐出口の形成面)をそれぞれキャップするための、キャップ20K、20C、20M、20Y、20Hから構成されている。記録ヘッド部22およびインクタンク部21は、記録を行なわないときにはキャップ部20の有るホームポジションに戻って待機する。そして、記録ヘッド部22のホームポジションでの待機が一定時間に達した場合には、記録ヘッド部22のインク吐出面および処理液吐出面が乾燥するのを防止するために、記録ヘッド22部がキャップされる。
なお、ここで用いる記録ヘッド部22とインクタンク部21は、一体的に構成されるものでも良いし、夫々が分離可能な構成のものでも良い。
本実施形態において、上記シリアルタイプのインクジェット記録装置は、記録媒体上の所定領域に対して複数回走査することで画像を形成するようなマルチパス記録方式により、インクおよび処理液を記録媒体に付与する。
<インクおよび処理液の組成>
次に、本実施形態で用いるインクおよび処理液について説明する。以下、「部」および「%」とあるのは、特に断りのない限り、質量基準である。
・ブラックインクの作製
(1)分散液の作製
まず、アニオン系高分子P−1[スチレン/ブチルアクリレート/アクリル酸共重合体(重合比(重量比)=30/40/30)酸価202、重量平均分子量6500]を準備する。これを、水酸化カリウム水溶液で中和し、イオン交換水で希釈して均質な10質量%ポリマー水溶液を作製する。
そして、上記ポリマー溶液を600g、カーボンブラックを100gおよびイオン交換水を300g混合し、機械的に所定時間撹拌した後、遠心分離処理によって、粗大粒子を含む非分散物を除去してブラック分散液とする。得られたブラック分散液は、その顔料濃度が10質量%であった。
(2)インクの作製
インクの作製は、上記ブラック分散液を使用する。上記ブラック分散液に以下の成分を加えて、十分に混合撹拌した後、ポアサイズ2.5μmのミクロフィルター(富士フイルム株式会社製)にて加圧濾過し、顔料濃度5質量%の顔料インクを調製する。このように、本実施形態で用いるブラックインクを作製した。
上記ブラック分散液 50部
ゾニールFSO−100(デュポン株式会社製) 0.05部
グリセリン 10部
トリエチレングリコール 10部
アセチレングリコールEO付加物(川研ファインケミカル株式会社製) 0.5部
イオン交換水 残部
・シアンインクの作製
(1)分散液の作製
まず、ベンジルアクリレートとメタクリル酸とを原料として、常法により、酸価250、数平均分子量3000のAB型ブロックポリマーを作り、水酸化カリウム水溶液で中和し、イオン交換水で希釈して均質な50質量%ポリマー水溶液を作製する。
上記ポリマー溶液を200g、C.I.ピグメントブルー15:3を100gおよびイオン交換水を700g混合し、機械的に所定時間撹拌した後、遠心分離処理によって、粗大粒子を含む非分散物を除去してシアン分散液とする。得られたシアン分散液は、その顔料濃度が10質量%であった。
(2)インクの作製
インクの作製は、上記シアン分散液を使用する。上記シアン分散液に以下の成分を加えて、十分に混合撹拌した後、ポアサイズ2.5μmのミクロフィルター(富士フイルム株式会社製)にて加圧濾過し、顔料濃度2質量%の顔料インクを調製する。このように、本実施形態で用いるシアンインクを作製した。
上記シアン分散液 20部
ゾニールFSO−100(デュポン株式会社製) 0.05部
グリセリン 10部
トリエチレングリコール 10部
アセチレングリコールEO付加物(川研ファインケミカル株式会社製) 0.5部
イオン交換水 残部
・マゼンタインクの作製
(1)分散液の作製
まず、ベンジルアクリレートとメタクリル酸とを原料として、常法により、酸価300、数平均分子量2500のAB型ブロックポリマーを作り、水酸化カリウム水溶液で中和し、イオン交換水で希釈して均質な50質量%ポリマー水溶液を作製する。
上記ポリマー溶液を100g、C.I.ピグメントレッド122を100gおよびイオン交換水を800g混合し、機械的に所定時間撹拌した後、遠心分離処理によって、粗大粒子を含む非分散物を除去してマゼンタ分散液とする。得られたマゼンタ分散液は、その顔料濃度が10質量%であった。
(2)インクの作製
インクの作製は、上記マゼンタ分散液を使用する。上記マゼンタ分散液に以下の成分を加えて、十分に混合撹拌した後、ポアサイズ2.5μmのミクロフィルター(富士フイルム株式会社製)にて加圧濾過し、顔料濃度4質量%の顔料インクを調製する。このように、本実施形態で用いるマゼンタインクを作製した。
上記マゼンタ分散液 40部
ゾニールFSO−100(デュポン株式会社製) 0.05部
グリセリン 10部
トリエチレングリコール 10部
アセチレングリコールEO付加物(川研ファインケミカル株式会社製) 0.5部
イオン交換水 残部
・イエローインクの作製
(1)分散液の作製
まず、前述したアニオン系高分子P−1を、水酸化カリウム水溶液で中和し、イオン交換水で希釈して均質な10質量%ポリマー水溶液を作製する。
上記ポリマー溶液を300g、C.I.ピグメントイエロー74を100gおよびイオン交換水を600g混合し、機械的に所定時間攪拌した後、遠心分離処理によって粗大粒子を含む非分散物を除去してイエロー分散液とする。得られたイエロー分散液は、その顔料濃度が10質量%であった。
(2)インクの作製
以下の成分を混合し、十分に攪拌して溶解・分散後、ポアサイズ1.0μmのミクロフィルター(富士フィルム株式会社製)にて加圧濾過して、顔料濃度4質量%の顔料インクを調製する。このように、本実施形態で用いるイエローインクを作製した。
上記イエロー分散液 40部
ゾニールFSO−100(デュポン株式会社製) 0.05部
グリセリン 10部
トリエチレングリコール 10部
アセチレングリコールEO付加物(川研ファインケミカル株式会社製) 1部
イオン交換水 残部
・処理液の作製
以下の成分を混合し、十分に攪拌して、処理液を調製する。このように、本実施形態で用いる処理液を作製した。
ゾニールFSO−100(デュポン株式会社製) 0.1部
グリセリン 10部
トリエチレングリコール 10部
アセチレングリコールEO付加物(川研ファインケミカル株式会社製) 0.5部
イオン交換水 残部
この処理液とは、インクと接触させることによって、耐擦過性などの画像堅牢性や光沢性などの画像品位といった画像性能を向上させる液体であり、コートインク、表面コートインク、クリアインク、反応液、向上液などと称することもある。この画像堅牢性や画像性能を向上させるため、樹脂材料を含有させる場合もある。本実施形態では画像性能のうちのブリード現象を抑制させるために用いる。もちろん、樹脂材料を含有させ画像堅牢性の効果も出しつつ、本実施形態を適用しブリード現象を抑制させる、など2つの性能を処理液に持たせることも可能である。
表1は、以上のように作製された、本実施形態で用いるインクおよび処理液の表面張力の値を示す。
Figure 2017071070
本実施形態で用いるインクは、ブリード現象の問題を解決するためにフッ素系界面活性剤ゾニールFSO−100の量を調整している。一般的に界面活性剤は、インクジェット専用の記録媒体に対するインクの浸透性を向上させるために、浸透剤として使用される。界面活性剤の添加量が多いほどインクの表面張力を低下させる性質が強くなり、記録媒体に対するインクの濡れ性および浸透性が向上する。界面活性剤の中でも、フッ素系界面活性剤は、少ない添加量で優れた界面活性効果を発揮し、そのため、より低い表面張力と優れた濡れ性を実現する。
本実施形態では、シアンインク、マゼンタインク、イエローインク、ブラックインクにはFSO−100を0.05質量%添加している。上記処方のゾニールFSO−100のほか、アセチレングリコールEO付加物や、ポリマーなどの種類と量も、表面張力に影響を与えるが、作製したインクはいずれも表面張力は約28〜29dyn/cmである。これは、ビーディングを抑制する効果がある。印刷本紙や塩ビシートのような水系インクの浸透性がかなり低い/無い記録媒体に表面張力の高いインクを用いると記録媒体の表面でインクが広がり難いため、ビーディング現象などの画像弊害がより顕著に発生する。従って、浸透性がかなり低いまたは無い記録媒体に用いるインクの好ましい表面張力は、30dyn/cm以下である。
また、本実施形態の処理液にはFSO−100を1.0質量%添加している。表面張力はシアンインク、マゼンタインク、イエローインク、ブラックインク(以下、インクセット)とは異なり約20dyn/cmである。本実施形態の処理液は、表面張力調整に使用される。
また、表面張力の測定は、全自動表面張力計CBVP−Z(協和界面科学株式会社製)を使用した。なお、インクの表面張力を測定できるのであれば、測定器は上記例示したものに限定されるものではない。
また、本実施形態のインクはどれもアニオン系の色材を使用しているため、そのインクのpHはアルカリ側で安定しており、その値は8.5〜9.5となっている。インクと接触する部材からの不純物溶出や部材を構成する材料の劣化、インク内の顔料分散樹脂の溶解性の低下などを防止する観点から、一般的にはインクのpH値は7.0以上10.0以下であることが好ましい。pHの測定は、株式会社堀場製作所製のpH METER型式F−52を使用した。なお、インクのpHを測定できるものであれば、測定器は上記例示したものに限定されるものではない。
<記録媒体>
インクジェット専用紙に比べ、水系インクの浸透性が非常に低い印刷本紙について説明する。印刷本紙とは、オフセット印刷において本刷りに使用する用紙のことである。印刷本紙は、パルプを原料とし、その状態のままで使用するのが非塗工紙であり、用紙の表面を白色顔料などで滑らかにコーティングしたのが塗工紙である。そのうち、塗工紙のほうがインクジェット記録においてはインク溢れによる画像弊害が顕著に現れる。塗工層は、パルプ間の隙間の液体吸収性を制限し水性ペンのにじみを防ぐサイズ剤(合成樹脂など)と、不透明度・白色度・平滑度などを向上させる填料(カオリンなど)と、紙力増強剤(デンプンなど)などの混合塗料を数〜40g/m2前後塗工したものである。塗工紙は、孔の半径が約0.06μmを中心に正規分布する毛細管を有し、多数の毛細管によって水分を浸透させている(毛細管現象)。しかし、その細孔容積がインクジェット専用紙と比べ非常に小さいために水系インクの浸透性が低く、用紙表面でインクが溢れて画像弊害が顕著に現れてしまう。本実施形態では、水系インクの浸透性が低い記録媒体として印刷塗工紙の1つであるOKトップコート+EF紙(王子製紙株式会社製、坪量157.0g/m2)を用いる。
インクジェット専用紙に比べ、水系インクの浸透性が全く無い塩ビシートについて説明する。塩ビシートとは、塩化ビニル樹脂を主原料として可塑剤を加え製造された柔らかいシートのことである。塩ビシートは、グラビア印刷、スクリーン印刷などでの印刷性とエンボス性(型押しによる凹凸模様付け)に優れているため、ターポリン、帆布、壁紙など多くの製品に用いられている。塩化ビニル樹脂が主原料となるため、水系インクの浸透性が全く無く、用紙表面でインクが溢れて画像弊害が顕著に現れてしまうのである。本実施形態では、水系インクの浸透性が無い記録媒体として白色光沢塩ビ粘着付(グレー糊)(株式会社きもと製、厚さ100μm)を用いる。
記録媒体に対する水系インクの浸透性を評価する方法として、JAPAN TAPPI紙パルプ試験方法No.51の『紙及び板紙の液体吸収性試験方法』に記載されたブリストー法がある。その概要は次の通りである。
一定量のインクを所定の大きさの開口スリットを有する保持容器に注入し、スリットを介して、短冊状に加工し円盤に巻きつけられた記録媒体と接触させる。保持容器の位置を固定したまま、円盤を回転させ記録媒体に転移するインク帯の面積(長さ)を測定する。インク帯の面積から単位面積辺りの転移量(ml/m2)を算出することができる。この転移量(ml/m2)は所定時間に記録媒体に吸収されたインク量を示す。ここで所定時間は、転移時間として定義される。転移時間(ミリ秒1/2)は、スリットと記録媒体の接触時間に相当し、円盤の速度と開口スリットの幅から換算される。
ブリストー法により一般的な印刷塗工紙について測定される、水系インクに対する転移量は、転移時間1秒で20ml/m2未満となる。特に、OKトップコート+EF紙の場合は、10ml/m2よりも若干小さい値が得られる。
本実施形態の記録方法が適用される記録媒体には、この印刷塗工紙のような水系インクの浸透性が低い記録媒体(低吸収性記録媒体)や塩ビシートのようなインク浸透性のない記録媒体が好適であるが、これに限定されず、他の記録媒体でもよい。例えば、インクジェット専用紙は、ブリストー法により測定される転移量が30ml/m2以上を示すものが多いが、中には転移量が20ml/m2より低いものもあり、このような記録媒体はインクジェット専用紙ではあるものの低吸収性記録媒体であると言える。このような記録媒体に対しても、本実施形態の記録方法を用いることで効果が得られる。
また、記録媒体に対する水系インクの浸透性を評価する他の方法として、実際に記録媒体にインク液滴を着弾させて、液滴が吸収されるまでを観察する方法もある。例えば、協和界面化学株式会社製の自動極小接触角計(MCAシリーズ)を用いることで、実際の記録時のインク液滴に近い量を記録媒体に対して付与させることができ、液滴が着弾してから吸収、定着されるまでの時間を計測することが可能である。この自動極小接触角計は、ピエゾヘッドから液滴を記録媒体に吐出させたときの、記録媒体と液滴の着弾面を横から観察することができ、液滴の直径、接触角の経時変化から液滴が記録媒体に吸収されるまたは空気中に蒸発するまでの時間を観察することができる。
本実施形態のブラックインクを用いて、この自動極小接触角計でインクの浸透時間を観察した結果を次に示す。記録媒体は、インクジェット専用紙としてプレミアム光沢紙[薄口](キヤノン株式会社製)を、低吸収性記録媒体としてOKトップコート+EF紙を、インクの浸透性のない(非吸収性記録媒体)として前述した塩ビシートの3種類を用いた。およそ7pLの液滴をそれぞれの記録媒体に吐出させたときの、液滴が記録媒体に着弾してから消失するまでの時間経過をインクの浸透時間として計測した。プレミアム光沢紙上では約60msecでインク液滴が消失し、OKトップコート+EF紙上では約380msecで消失し、塩ビシート上では約400〜450msecで消失したことが観察できた。塩ビシートは水分を吸収しない記録媒体なので、約400〜450msecでインク液滴が消失したことは、インク液滴の水分が蒸発したためと考えられる。プレミアム光沢紙では、インク液滴が蒸発する前にほぼ浸透していると考えられる。OKトップコート+EF紙はインク液滴が消失するまでの時間が、浸透の早いインクジェット光沢紙よりも遅く、非吸収性記録媒体の塩ビシートよりも早いので、浸透と蒸発がどちらも起こっている状態だと考えられる。例えば、この自動極小接触角計で液滴が消失するまでの時間がおよそ250msecよりも遅いものをインク浸透性のかなり低い/無い記録媒体とすることができる。
<ブリード現象>
インク浸透性の低いまたはない記録媒体上に画像を形成する場合に、ブリード現象が顕著に現れてしまう。ブリード現象のメカニズムは、インク間の表面張力の差と関係していると考えられる。
記録媒体のインク吸収量やインク吸収速度には記録媒体の種類ごとに限界がある。従って、限界を超える量のインクを吸収させようとすると、複数のインク滴が記録媒体上に吸収される前に液体状態で存在し、それらのインク滴が接触すると表面張力の低いインク滴側から表面張力の高いインク滴側にインクの流れ込みが生じる。これは、表面張力などが界面エネルギーを均一にしようと働くためである。界面エネルギーの低いインク(表面張力の低いインク)が界面エネルギーの高いインク(表面張力の高いインク)に覆いかぶさるように、短時間で流れ込みが生じる。
図2は、ブリード現象が生じたインク滴を示す図である。非吸収の記録媒体としてのガラス上に、表面張力に差のある2種類のインクをスポイトによりインク滴の縁が接触するように同時に滴下すると、この現象を容易に確認することができる。このブリード現象が生じたインク滴を上から見た様子は図2(a)に示されており、横から見た様子は図2(b)に示されている。このようなインク吸収性やインク吸収速度に起因したブリード現象は、インクジェット専用紙に比べ、浸透性がかなり低いまたは無い記録媒体であるために顕著に現れてしまう。本実施形態では、インクセットの表面張力とは異なる表面張力を有する処理液を用いて、画像を形成する記録媒体上のインク滴の表面張力を最適化することによって、このブリード現象を抑制する。
図3は、ブリード現象により画像弊害が生じた画像の様子、および処理液の付与によりブリード現象が抑制された画像の様子を示す図である。ここで、画像をマルチパス記録方式によりOKトップコート+紙に形成し、インクが定着して乾燥した後に、画像を上から観察する。なお、インクの付与量(Duty)については、1/1200インチ四方(1200dpi四方)の領域にインクを1ドット付与することを100%Dutyとする。
図3(a)は、シアンインクによるベタ画像A(単色100%Duty)とイエローインクによるベタ画像B(単色100%Duty)とが隣接する画像を形成する場合を示す。シアンインクによるベタ画像Aとイエローインクによるベタ画像Bの隣接境界部からイエローインクが滲むようにシアンインクによるベタ画像A側へと流れ込み、画像弊害が生じた様子が分かる。前述したように、シアンインクおよびイエローインクの表面張力は約28〜29dyn/cmである。詳しくは表1に示す通り、シアンインクの表面張力は29.3dyn/cm、イエローインクの表面張力は27.8dyn/cmである。これは、インクジェット専用紙でブリード現象が概ね発生しないように調整した値である。しかし、OKトップコート+EF紙などのインク浸透性の低い記録媒体ではこの僅かな差が主原因で、ブリード現象が発生してしまう。
ブリード現象の評価方法は目視で測定するほか、パーソナル画像品質評価システムPersonal IAS(Quality Engineering Associate,Inc製)(ISO13660準拠)を用いて、ブリード長Lを数値化する方法もある。本実施形態では、この方法を採用し、ブリード長Lによりブリード現象を評価する。本実施形態では、図3(a)で示すシアンインクによるベタ画像Aとイエローインクによるベタ画像Bの隣接境界部からイエローインクがシアンインクによるベタ画像Aへ流れ込んだ端部までの滲んだ長さ(ブリード長L)をブリード長と呼ぶ。ブリード長は、インク間の表面張力の差により変化する。
表2は、シアンインクの表面張力を変化させたときの図3(a)におけるブリード長Lの測定結果を示す。表面張力を変化させたシアンインク(単色100%Duty)によるベタ画像と、イエローインク画像B(単色100%Duty)とが隣接する画像をマルチパス記録方式によりOKトップコート+EF紙に形成する。インクが定着して乾燥した後に、ブリード長Lを測定する。表2において、用いたシアンインクの表面張力20.1、25.9、29.3dyn/cmに応じて、シアンインクによるベタ画像をシアンインク画像A_1、A_2、A_3と呼ぶ。また、イエローインクによるベタ画像Bをイエローインク画像Bと呼ぶ。
Figure 2017071070
ここでは、フッ素系界面活性剤であるゾニールFSO−100(デュポン製)の添加量を変更することで、シアンインクの表面張力を変化させた。これは、前述したように、一般的に界面活性剤のインクへの添加量が多いほどインクの表面張力を低下させるという性質を利用した。図4は、シアンインクに対しゾニールFSO−100の添加量を増やしたときの表面張力の変化を示すグラフである。なお、本実施形態においては、インクに含まれる界面活性剤の量の違いが主としてこの表面張力の高低関係を生んでいる。一般的には、界面活性剤を同量含んでいても、インクに含まれる色材や溶剤、ポリマーなどの種類や量によって表面張力に多少の差が生じる場合もある。
表2より、表面張力がシアンインクのほうが低い場合には、シアンインク画像からイエローインク画像へとインクが流れ込み、表面張力がシアンインクのほうが高い場合には、イエローインク画像からシアンインク画像へインクが流れ込むことが分かる。このように、表面張力の高低の関係が逆になると、ブリード現象によるインクの流れ込む方向も逆の方向へと変化することが確認できる。また、表面張力の差が大きくなると、ブリード長Lも大きくなることも確認できる。
図5は、本実施形態で用いるインクセットのインクが流れ込む方向およびブリード長の大きさを模式的に示す図である。具体的には、イエローインク、マゼンタインク、イエローインク、ブラックインクによるベタパッチ(単色100%Duty)を互いに隣接するように配置したパターンを、マルチパス記録方式によりOKトップコート+EF紙に形成する。インクが定着して乾燥した後に、ブリード長を測定する。図5は、その結果を見て、他のインクに流れ込むインクを上側に、他のインクに流れ込まれるインクを下側に並べ、そのインクの間隔をブリード長の大きさで表現したものである。概ね、インク間の表面張力の差が大きいと、ブリード長は大きくなっている。
本実施形態では、前述したブリード現象のメカニズムに基づいて、低吸収性または非吸収性記録媒体においてもブリード現象を抑制する、具体的にはブリード長を小さくすることが目的である。そのために、インクセットの表面張力とは異なる表面張力を有する処理液を用いて、記録媒体上の画像を形成するインク滴の表面張力を最適化する。簡単のため、画像を形成するインク滴の表面張力を、画像の表面張力と称する。
<処理液の付与によるブリード現象の抑制>
以下、表面張力が高いインクとしてシアンインク、表面張力が低いインクとしてイエローインク、それらのインクより更に表面張力の低い処理液を用いて、記録媒体上の画像の表面張力を最適化することの有効性について説明する。
図3(a)は前述したように、シアンインクによるベタ画像Aとイエローインクによるベタ画像Bとが隣接する画像を、OKトップコート+EF紙にマルチパス記録方式により形成する場合にブリード現象により画像弊害が生じた画像の様子を示す図である。図3(a)において、表面張力が27.8dyn/cmと低いイエローインクが、ベタ画像Aとベタ画像Bの隣接境界部から表面張力が29.3dyn/cmと高いシアンインクによる画像A側へと流れ込む。
これに対し、図3(b)は、表面張力が29.3dyn/cmと高いシアンインクによるベタ画像Aを形成するときに、表面張力が20.0dyn/cmと最も低い処理液をシアンインクと混在するように吐出させた場合の画像の様子を示す図である。ここで、処理液をシアンインクと混在するように吐出させることは、画像形成時に処理液およびシアンインクをそれぞれ処理液の吐出口およびシアンインクの吐出口から吐出して、記録媒体上で接触させることを指す。この処理液と共に形成されたシアンインクによるベタ画像(処理液およびシアンインクによる画像)をベタ画像AAと呼ぶ。シアンインクによるベタ画像Aは処理液の付与により表面張力が低く調整され、イエローインクによるベタ画像Bの表面張力とつり合い、ブリード現象が抑制される。
具体的には、表面張力が29.3dyn/cmのシアンインクを100%Duty、表面張力が20.0dyn/cmの処理液を約19.23%Duty混在するように吐出させることで、ベタ画像AAを形成する。その結果、シアンインクおよび処理液によるベタ画像AAの表面張力がイエローインクの表面張力27.8dyn/cmと略同等の表面張力となったため、ブリード現象が抑制される。
本実施形態では、イエローインクの表面張力を目標値とし、画像夫々の表面張力がイエローインクの表面張力と略同等になるように、処理液を最適量付与して表面張力の調整を行うことで、隣接する画像間のブリード現象を抑制する。イエローインクの表面張力を目標値として設定することは以下の利点がある。まず、イエローインクの表面張力はインクセットのうち処理液の表面張力と最も近い。このようなイエローインクの表面張力を目標値として設定することで、イエローインク以外のインクの表面張力は、処理液の付与により目標値に調整することが可能である。そして、イエローインクのブリード現象が最も視覚的に目立つ。イエローインクの表面張力を調整の目標値とすることで、最も視覚的に目立つブリード現象を効果的に抑制することが可能である。
また、処理液の付与量は、所定領域に付与されるインクと処理液が混合すると想定した場合の混合液の表面張力がイエローインクの表面張力と略同等になるように、所定領域に対するインクの付与量に応じて決定される。具体的には、イエローインク以外のインク毎に、インクと処理液が混合すると想定した場合の混合液の表面張力がイエローインクの表面張力になるように必要な処理液の量と、インクの量との関係を示す「処理液用テーブル」が予め作成されている。シアンインクによる画像を例にあげると、必要な処理液の量は、次の式(1)を満たすように計算する。
シアンインクの表面張力×シアンインクの付与量/(シアンインクの付与量+処理液の付与量)+処理液の表面張力×処理液の付与量/(シアンインクの付与量+処理液の付与量)=イエローインクの表面張力 式(1)
このように計算した結果を基にイエローインク以外のインク毎にインクの量とそれに応じて必要な処理液の量との関係を示す「処理液用テーブル」を予め作成し、ROM703などに格納する。画像を形成する際に、「処理液用テーブル」を参照し、記録媒体上の所定領域に対するインク夫々の付与量に応じて必要な処理液の付与量を夫々決定し、その合計付与量に従って処理液を所定領域に付与する。
図6は、本実施形態の「処理液用テーブル」における各インクの付与量と処理液の付与量との関係をグラフとして示す図である。図6に示すように、インク夫々の付与量に応じて必要な処理液の付与量は、インク夫々の付与量と比例な関係を有する。
<記録システムの制御系の構成>
図7は、本実施形態における記録システムの制御系の構成を示すブロック図である。
本実施形態における記録システムは、ホストコンピュータ71およびインクジェット記録装置70を有して構成されている。
ホストコンピュータ(画像入力部)71は、ハードディスク等の各種記憶媒体に保存されているRGB形式の多値画像データを、インクジェット記録装置70の画像処理部に送信する。
インクジェット記録装置70の画像処理部は、MPU701(Micro Processor Unit)、ASIC702などを含んで構成されている。画像処理部は、ホストコンピュータ71から多値画像データを受け取る。なお、多値画像データは、ホストコンピュータ71に接続されたスキャナやデジタルカメラ等の画像入力機器からも受け取ることができる。画像処理部は、受け取った多値画像データより、複数種類のインクに対応した画像データを生成する。また、インクの画像データとROM703に格納された「処理液用テーブル」とを基に処理液の画像データを生成する。続けてインクおよび処理液を記録ヘッドから吐出するための2値画像データ(吐出データ)を生成する。画像処理部が行う画像処理の詳細は、図8および図9を参照して後述する。
インクジェット記録装置70の画像出力部は、画像処理部で生成された複数種類のインクおよび処理液の2値画像データに基づいて、インクおよび処理液を記録媒体に付与することで画像を形成する。画像出力部は、ROM703に記憶されているプログラムに従って、MPU(Micro Processeor Unit)701により制御される。RAM704は、MPU701の作業領域や一時データ保存領域として使用される。MPU701は、ASIC702を介して、記録ヘッドを搭載したキャリッジの駆動系707、記録媒体の搬送駆動系708、記録ヘッドの回復駆動系709、および記録ヘッドの駆動系710の制御を行う。また、MPU701は、ASIC702から読み書き可能なプリントバッファ705およびマスクバッファ706への読み書きが可能な構成になっている。
プリントバッファ705は、記録ヘッドへ転送できる形式の2値画像データ(吐出データ)を一時保存する。マスクバッファ706は、記録ヘッドに転送する際にプリントバッファ705から転送される2値画像データの必要に応じてAND処理する所定のマスクパターンを一時的に保存する。
なお、本実施形態では、画像処理部はインクジェット記録装置70において構成されているが、画像処理部がホストコンピュータ71において構成されてもよい。または、画像処理部は、ホストコンピュータ71およびインクジェット記録装置70の画像出力部に通信可能な画像処理装置として構成されてもよい。
<画像処理>
本実施形態では、インクと異なる表面張力を有する処理液およびインク夫々を吐出可能な記録ヘッドを、記録媒体上の所定領域に対して複数回走査させること(マルチパス記録)により、画像形成を行う。ブリード現象を抑制するために、マルチパス記録において、表面張力が低いイエローインクの表面張力(設定した目標値)と略同等になるように、表面張力が高いインクによる画像形成時に表面張力が最も低い処理液を混在するように吐出させる。以下、マルチパス記録で用いるインクおよび処理液の吐出データを生成するための画像処理を説明する。
図8は、本実施形態における画像処理のフローチャートである。図8のフローにより、記録用のインクの画像データと生成された処理液の画像データに基づいて記録が行われる。
まず、ホストコンピュータ(画像入力部)71からRGB形式の多値画像データが画像処理部に入力される。ステップS801において、画像処理部が、RGB形式の多値画像データを、多値色変換により、画像形成に用いる複数種類のインク(K、C、M、Y)夫々に対応した多値画像データに変換する。
ステップS802において、画像処理部が、インクの多値画像データを基に処理液の多値画像データを生成する。この処理液データ生成処理の詳細については、図9を参照して後述する。
ステップS803において、画像処理部が、記憶されているパターンに従って、インク夫々および処理液に対応した多値画像データを2値の画像データに展開する。これにより、複数種類のインク夫々および処理液を吐出するための2値画像データ(吐出データ)が生成される。
ステップS804において、画像処理部が、2値画像データ(吐出データ)を複数回の記録走査に分配するためのマスクパターン処理を行う。このマスクパターン処理の詳細については、図10を参照して後述する。マスクパターン処理により、記録ヘッドへ転送できる形式の走査毎の吐出データが生成される。
生成された走査毎の吐出データは記録ヘッド22に転送される。記録ヘッド22は、転送された走査毎の吐出データに従って、インクおよび処理液を記録媒体に付与して画像を形成する。
図9は、ステップS802で行われる処理液データ生成処理のフローチャートである。本フローにより、インクの画像データに応じた処理液の画像データが生成される。
ステップS901において、画像処理部が、ROM703から「処理液用テーブル」を読み出す。
ステップS902_C、S902_M、S902_Y、S902_Kにおいて、画像処理部が、「処理液用テーブル」を参照して、インク夫々の多値画像データ(所定領域に対する付与量)より、インク夫々に対応した処理液の付与量(Duty)を決定する。
次いで、ステップS903において、画像処理部が、ステップS902_C、S902_M、S902_Y、S902_Kで決定されたインク夫々に対応した処理液の付与量の合計(処理液の合計付与量)を求める。この処理液の合計付与量は、すなわち処理液の多値画像データとなる。
図10は、マルチパス記録で用いるマスクを示す図である。ここで、8×4ドットの所定領域に対して8回の記録走査で画像を形成する。図10(a)、(b)、(c)、(d)夫々には、1回目から8回目の記録走査に対応する8つのマスクパターンを並べたマスクが示されている。各マスクパターンにはインクおよび処理液が吐出されるエリアを黒塗りで示しており、各マスクは8つのマスクパターンの全てを重ね合わせると100%Dutyでインクおよび処理液が吐出されるように設定されている。マスクパターン処理では、インクおよび処理液を記録ヘッドから吐出するための2値画像データの一部(8×4ドットの大きさ)と各記録走査(各パス)に対応するマスクパターンとの論理積(AND)処理を行う。このような処理により、各記録走査でインクおよび処理液を吐出するための走査毎の吐出データが生成される。
本実施形態においては、図10(a)に示すようなマスクを用いてステップS804のマスクパターン処理を行う。図10(a)に示すマスクは、各記録走査に対して均等に12.5%ずつにインクおよび処理液の付与量を分配する。このマスクを用いると、記録ヘッドの吐出口列全域に渡って均等にインクおよび処理液を吐出するように分配する。
以下、図9に示す処理液データ生成処理を具体例で説明する。
例えば、ステップS801で多値画像データに変換された画像が、シアンインク100%Dutyのベタ画像Aとイエローインク100%Dutyのベタ画像Bとが隣接するレイアウトの画像である場合とする。
ステップS901では「処理液用テーブル」がROM703から読み出される。「処理液用テーブル」は、イエローインク以外のインク毎に、インクと処理液が混合すると想定した場合の処理液の表面張力がイエローインクの表面張力と同等になるように必要な処理液の量とインクの量との関係を示すテーブルとして予め作成されている。この「処理液用テーブル」に基づき、処理液の多値画像データが作成される。具体的には、シアンインク100%Dutyのベタ画像Aの形成時にはステップS902_Cにより処理液を約19.23%Duty付与する必要がある、と決定される。また、イエローインク100%Dutyのベタ画像Bの形成時にはステップS902_Yにより処理液を0%Duty付与する必要がある、と決定される。ステップS903では、処理液の合計付与量(Duty)を求める。シアンインク100%Dutyのベタ画像Aに対しては処理液の合計付与量は約19.23%Dutyとなる。イエローインク100%Dutyのベタ画像Bに対しては処理液の合計付与量は0%Dutyとなる。このように処理液の多値画像データが生成される。
続けて、インクおよび処理液の多値画像データは、ステップS803で2値画像データ、ステップS804で走査毎の吐出データへと生成される。インクジェット記録装置70の画像出力部の記録ヘッドが、インクおよび処理液の走査毎の吐出データに従って、マルチパス記録方式での吐出によりシアンインクおよび処理液によるベタ画像AAとイエローインクによるベタ画像Bを隣接して形成する。
このように、イエローインク100%Dutyのベタ画像Bに隣接する、シアンインク100%Dutyのベタ画像Aの形成時に、処理液を約19.23%Duty混在するように吐出させることで画像夫々の表面張力を略同等にする。すなわち、表面張力が29.3dyn/cmのシアンインクによるベタ画像Aを形成するときに表面張力が20.0dyn/cmの処理液を必要量混在するように吐出させることで、27.8dyn/cmのイエローインクによるベタ画像Bと略同等の表面張力とする。これにより、ブリード現象を抑制することができる。
また、本実施形態における処理液データ生成処理が行われる画像は、単色の画像が隣接するレイアウトの画像に限定されるものではない。ステップS801で多値画像データに変換された画像が、単色の画像と2種類以上のインクによる画像とが隣接する、または2種類以上のインクによる画像が互いに隣接するレイアウトの画像であっても同様に処理することができる。以下に例を挙げ説明を行う。
例えば、シアンインク20%Dutyおよびイエローインク100%Dutyによる画像Cとシアンインク40%Dutyおよびイエローインク50%Dutyによる画像Dとが隣接するレイアウトの画像の場合とする。インクのDutyを割合にして計算すると、ベタ画像Cの表面張力は、29.3×20/(20+100)+27.8×100/(20+100)≒28.05dyn/cmとなる。また、ベタ画像Dの表面張力は、29.3×40/(40+50)+27.8×50/(40+50)≒28.47dyn/cmとなる。そのため、ベタ画像Cのインクがベタ画像Dに流れ込むことになる。
そこで、ステップS901で「処理液用テーブル」が読み出される。この「処理液用テーブル」に基づき、ベタ画像Cのシアンインク20%Dutyに対してはステップS902_Cにより処理液を約3.85%Duty付与する必要がある、と決定される。また、ベタ画像Cのイエローインク100%Dutyに対してはステップS902_Yにより処理液を0%Duty付与する必要がある、と決定される。同様に、ベタ画像Dのシアンインク40%Dutyに対しては、ステップS902_Cにより処理液を約7.73%Duty、イエローインク50%Dutyに対してはステップS902_Yにより処理液を0%Duty付与する必要がある、と決定される。ステップS903では、シアンインク20%Dutyとイエローインク100%Dutyとのベタ画像Cに対しては、処理液合計約3.85%Dutyと求められる。また、シアンインク40%Dutyとイエローインク50%Dutyとのベタ画像Dに対しては、処理液合計約7.73%Dutyと求められる。このように処理液の多値画像データが生成され、その結果、ベタ画像Cもベタ画像Dもシアンインクとイエローインクと処理液とにより形成されることになる。
このように、2種類以上のインクによる画像同士が隣接する場合であっても、「処理液用テーブル」に基づき、両方の画像にそれぞれ必要量の処理液を混在するように吐出させれば、各画像で用いるインクの表面張力を同等にすることが可能である。すなわち、表面張力が約28.05dyn/cmのベタ画像Cと表面張力が約28.47dyn/cmのベタ画像Dの形成時に、夫々処理液を必要量混在するように吐出させることで、どちらも約27.8dyn/cmとなり、ブリード現象を抑制することができる。
同様に、2種類以上のインクによる画像同士が複雑に隣接し合う場合であっても、すなわち3つ以上の画像が隣接する場合であっても、画像夫々で用いるインクの表面張力を同等にし、ブリードを抑制することができる。以下に例を挙げて説明を行う。
例えば、シアンインク30%Dutyとマゼンタインク60%Dutyとによるベタ画像Eが前述したベタ画像Cとベタ画像Dとに隣接するレイアウトの画像の場合とする。前述したようにインクのDutyを割合にして計算すると、ベタ画像Cを形成するインクの表面張力は約28.05dyn/cm、ベタ画像Dは約28.47dyn/cmと求められる。また、ベタ画像Eを形成するインクの表面張力は、29.3×30/(30+60)+28.5×60/(30+60)≒28.77dyn/cmとなる。そのため、ベタ画像Cのインクがベタ画像Dとベタ画像Eに、ベタ画像Dのインクがベタ画像Eに流れ込むことになる。
ステップS901で読み出した「処理液用テーブル」に基づき、ベタ画像Eのシアンインク30%Dutyに対しては、ステップS902_Cにより処理液を約5.77%Duty付与する必要がある、と決定される。また、ベタ画像Eのマゼンタインク60%Dutyに対してはステップS902_Mにより処理液を約5.38%Duty付与する必要がある、と決定される。従って、ステップS903では、シアンインク30%Dutyとマゼンタインク60%Dutyとによるベタ画像Eに対しては、処理液合計約11.15%Dutyと求められる。このように処理液の多値画像データが生成され、その結果、ベタ画像C、D、E間のブリード現象を抑制することができる。
このように、ブリード現象のメカニズムに基づいて、画像形成に用いるインクセットの表面張力とは異なる表面張力を有する処理液を用いると、記録媒体上の画像を形成するインクの表面張力を最適化することができる。これにより、低吸収紙において顕著なブリード現象を抑制することができる。具体的には、複数の画像が隣接して形成されるときに、インクセットの表面張力の範囲とは異なる表面張力の処理液をインクと混在するように吐出させることにより、複数の隣接する画像の表面張力を略同等に調整することができる。
なお、本実施形態においては、図10(a)に示すように、処理液は複数の走査で均等な割合で付与されるマスクを用いて吐出する。本実施形態では、表面張力がある範囲のインクセットを用いて画像を形成するときに、そのインクセットより表面張力が低い処理液がインクと混在するように吐出されればよい。従って、インクおよび処理液の付与を複数回の記録走査に分配するためのマスクは、特に限定されるものではない。例えば、複数の走査のうち後半の走査で付与される割合が高いマスク(図10(b))でもよく、前半の走査で付与される割合が高いマスクパターン(図10(c))でもよい。また、本実施形態では、所定領域に対してインクおよび処理液を付与する記録走査回数は、特に限定されるものではなく、どちらかが複数の走査のうち一部の走査のみで吐出されてもよい。例えば、インクは図10(a)のマスクを用い、処理液は図10(d)のマスクを用いるような形態としてもよい。但し、インクと処理液とが記録媒体上で液滴として存在している間に混在するのが表面張力の調整には最も効果的である。従って、ブリード現象の抑制という目的以外のためにマスクの変更などによりインクと処理液が接触する確率が下がる場合には、ブリード現象の抑制効果も下がる場合がある。その場合には、表面張力を調整する効果の減り分を考慮して、処理液の付与量を決定すればよい。
また、本実施形態ではマルチパス記録方式を用い、インクの吐出データを分配する方法としてマスクパターンを利用したが、他の分配方法でもよい。
また、本実施形態ではイエローインクの表面張力を目標値として設定し、画像夫々の表面張力がイエローインクの表面張力と略同等になるように、イエローインク以外のインクの付与量に応じて必要な処理液の付与量を示す「処理液用テーブル」を作成する。しかし、「処理液用テーブル」の作成はこれに限定されるものではない。例えば、イエローインクの表面張力と処理液の表面張力の間の値を目標値として設定し、画像夫々の表面張力が設定した目標値と略同等になるように、インク夫々の付与量に応じて必要な処理液の付与量を示す「処理液用テーブル」を作成してもよい。このように作成した「処理液用テーブル」を用いても同じ効果を得ることができる。
さらには、イエローインクは明度L*の高いインクであるため、ブリード現象にて他の色に滲まれるよりは、イエローインクが他の色に滲むほうが、ブリード現象による画像弊害が目立たない。従って、イエローインクから他の色への滲みを抑制せず、他の色からイエローインクへの滲みおよび他の色間の滲みを抑制することで、画像弊害が目立たないようにすることもできる。この場合、図5のインクが流れ込む方向の順番より、ブラックインクの表面張力、または、イエローインクの表面張力とブラックインクの表面張力の間の値を目標値として設定する。画像夫々の表面張力が設定した目標値と略同等になるように、イエローインク以外のインクの付与量に応じて必要な処理液の付与量を示す「処理液用テーブル」を作成する。このように作成した「処理液用テーブル」を用いると、画像弊害が目立たないようにすることができる。
また、本実施形態において、処理液はインクセットの表面張力より更に低い表面張力を有するように作製されており、インクセットの表面張力が処理液を用いることにより、低いほうで略同等となるように制御する。しかし、処理液はインクセットの表面張力より更に低い表面張力のものに限定されず、インクセットの表面張力より更に高い表面張力を有するように作製されてもよい。その場合、インクセットの表面張力が処理液を用いることにより、高いほうで略同等となるように制御を行う。これによって、インク間で起こるブリード現象を抑制することができる。
なお、処理液の表面張力がインクセットの表面張力の間にある場合には、一部のインクの表面張力を略同等にすることができないが、残りのインクのブリード現象を前述したように制御することは可能である。
[第2の実施形態]
第1の実施形態では、イエローインクの表面張力を目標値とし、画像夫々の表面張力がイエローインクの表面張力と略同等になるように処理液の付与量を決定する。本実施形態では、隣接する画像夫々の表面張力の差に着眼し、その差を小さくするように処理液の付与量を決定する。なお、第1の実施形態と同様の部分については、説明を省略する。
<画像処理>
本実施形態では、隣接する画像夫々の表面張力を計算し、最も低い画像の表面張力と同じになるように、その他の画像の形成時に処理液を混在するように吐出させる。本実施形態における画像処理は、第1の実施形態と同じように図8のフローに従って行われるが、ステップS802の処理液データ生成処理は、第1の実施形態と異なる。
図11は、本実施形態における処理液データ生成処理のフローチャートである。本フローにより、インクの画像データに応じた処理液の画像データが生成される。
ステップS1101〜S1103において、画像処理部が、複数の隣接する画像に対して、その個数回繰り返し、画像夫々で用いられるインクが混合すると想定した場合の混合液の表面張力を画像の表面張力として計算する。具体的には、複数の隣接する画像を順次抜き出し、その画像で用いられるインク夫々の表面張力およびインク夫々の付与量(Duty)より、想定した混合液の表面張力を計算し、RAM704などの記憶領域に登録する。表面張力の計算には、前述したインクの表面張力および付与量(Duty)より求める計算方法のほか、浸透速度や蒸発速度など他のパラメータを計算に加えてもよい。
ステップS1104において、画像処理部が、複数の隣接する画像夫々について登録された表面張力のうち、最小値を示す表面張力を、複数の隣接する画像夫々に処理液を混在するように吐出させて調整するための表面張力の目標値に設定する。
そして、ステップS1105〜S1107において、画像処理部が、複数の隣接する画像に対して、その個数回繰り返し画像夫々の処理液の付与量を決定する。具体的には、複数の隣接する画像を順次抜き出し、その画像の表面張力をステップS1104で設定した目標値とする表面張力と略同等にするために必要な処理液の付与量(Duty)を決定する。この処理液の付与量が、すなわち処理液の多値画像データとなる。
続けて、インクおよび処理液の多値画像データは、ステップS803で2値画像データ、ステップS804で走査毎の吐出データへと生成される。インクジェット記録装置70の画像出力部の記録ヘッドが、インクおよび処理液の走査毎の吐出データに従って、インクおよび処理液による画像を形成する。
以下、図11に示す処理液データ生成処理を具体例で説明する。
ステップS801で多値画像データに変換された画像が、シアンインク20%Dutyおよびイエローインク100%Dutyによる画像Cとシアンインク40%Dutyおよびイエローインク50%Dutyによる画像Dが隣接するレイアウトの画像の場合とする。
そこで、ステップS802の処理液データ生成処理では、ステップS1101の隣接画像の繰り返しにより、まず画像Cを抜き出す。ステップS1102ではシアンインクの表面張力29.3dyn/cmとDuty20%、イエローインクの表面張力27.8dyn/cmとDuty100%より、画像Cで用いられるインクが混合すると想定した場合の混合液の表面張力を求める。すなわち、29.3×20/(20+100)+27.8×100/(20+100)≒28.05dyn/cmとなり、画像Cの表面張力としてRAM704などに記憶する。続けて、ステップS1103からステップS1101への繰り返しにより、画像Dを抜き出す。ステップS1102ではシアンインクの表面張力とDuty40%、イエローインクの表面張力とDuty50%より、画像Dで用いられるインクが混合すると想定した場合の混合液の表面張力を求める。すなわち、29.3×40/(40+50)+27.8×50/(40+50)≒28.47dyn/cmとなり、画像Dの表面張力としてRAM704などに記憶する。
次のステップS1104では、記憶した画像の表面張力より、最小値を示す約28.05dyn/cmを目標値に設定する。
そしてステップS1105の隣接画像の繰り返しにより画像Cを抜き出し、ステップS1106で目標値とする約28.05dyn/cmとなるように画像Cの形成時に必要な処理液の付与量を計算する。必要な処理液の付与量は、次の式(2)を満たすように計算する。
シアンインクの表面張力×シアンインクの付与量/(インクの付与量の合計+処理液の付与量)+イエローインクの表面張力×イエローインクの付与量/(インクの付与量の合計+処理液の付与量)+処理液の表面張力×処理液の付与量/(インクの付与量の合計+処理液の付与量)=目標値とする表面張力 式(2)
また、上記計算は、ステップS1102で算出された画像の表面張力を利用してもよい。すなわち、要な処理液の付与量は、次の式(3)を満たすように計算する。
画像の表面張力×インクの付与量の合計/(インクの付与量の合計+処理液の付与量)+処理液の表面張力×処理液の付与量/(インクの付与量の合計+処理液の付与量)=目標値とする表面張力 式(3)
画像Cの場合、画像Cの表面張力が目標値とする表面張力と設定したため、必要な処理液の付与量は0%Dutyとなる。画像Cの表面張力が目標値とする表面張力のためステップS1106の計算を行わずに、ステップS1107に進めてもよいし、ステップS1106の計算により画像Cの形成時に必要な処理液の付与量を0%Dutyと求めてもよい。
続けて、ステップS1107からステップS1105への繰り返しにより、画像Dを抜き出し、ステップS1106で目標値とする約28.05dyn/cmとなるように画像Dの形成時に必要な処理液の付与量を計算する。画像Dの場合、必要な処理液の付与量は、上記式(2)または式(3)を満たすように計算し、すなわち、(28.47−28.05)×90/(28.05−20.0)≒4.70(%Duty)となる。
このように、シアンインク20%Dutyおよびイエローインク100%Dutyによるベタ画像Cとシアンインク40%Dutyおよびイエローインク50%Dutyによるベタ画像Dとが隣接する場合でも、画像夫々の表面張力を略同等にする。具体的には、ベタ画像Dの形成時に、処理液を約4.70%Duty混在するように吐出させることで画像夫々の表面張力を略同等にする。すなわち、表面張力が28.47dyn/cmの画像Dを形成するときに20.0dyn/cmの処理液を必要量混在するように吐出させることで、28.05dyn/cmの画像Cと略同等の表面張力となる。これにより、画像Cと画像Dとの境界部分に生じるブリード現象を抑制することができる。
本実施形態において、画像Cと画像Dが隣接するレイアウトの画像を形成するときに、インクと混在するように吐出させる処理液の量は、画像Cには0%Dutyで、画像Dには約4.70%Dutyで、合計約4.70%Dutyである。これに対し、第1の実施形態において、画像Cと画像Dが隣接するレイアウトの画像を形成するときに、インクと混在するように吐出させる処理液の量は、画像Cには約3.85%Dutyで、画像Dには約7.73%Dutyで、合計11.58%Dutyである。第1の実施形態に比べると、本実施形態のほうが少ない処理液の付与量で、画像Cと画像Dとの境界部分に生じるブリード現象を抑制することができる。
[第3の実施形態]
第1の実施形態において、「処理液用テーブル」はインク夫々および処理液の表面張力より計算にて求めるが、予め図3(b)のように画像を形成し、インクの付与量と処理液の付与量とブリード長との関係を確認して、その結果を基に作成してもよい。本実施形態では、インクの付与量と処理液の付与量とブリード長との関係を確認するための「処理液用調整パターン」を記録媒体に形成し、実際に発生したブリード現象を評価し、その結果を基に「処理液用テーブル」を作成する。そして、第1の実施形態と同様に、「処理液用テーブル」を参照して処理液の付与量を決定する。第1の実施形態と同様の部分については、説明を省略する。
本実施形態では、出力として「処理液用調整パターン」を記録媒体に形成し、実際に発生したブリード現象を目視で評価し手動で取得、またはセンサーなどを用いて自動で取得し、その結果を基に、処理液の付与量を決定する「処理液用テーブル」を作成する。第1の実施形態においてインクおよび処理液の表面張力を基に、必要な処理液の付与量を計算にて決定するのに対し、本実施形態では、記録媒体において実際に発生したブリード現象を評価し、その結果を基に必要な処理液の付与量を決定する。そのため、ブリード現象の抑制をさらに正確に行うことができる。以下、その原因を詳細に説明する。
ブリード現象は、記録媒体上において一滴または複数のインク滴が浸透する前に液体状態として存在している間に、色材の異なるインク滴が接触して一方の側に他方の色材が混ざって、色材の異なるインク滴の境界部分が混色してしまうことである。従って、同じインク同じ記録条件で比較すると、浸透性の良い記録媒体ではブリード長が小さく、浸透性の悪い記録媒体ではブリード長が大きい。これは、浸透性の良い記録媒体上のインク滴は、速やかに記録媒体に吸収されるためブリード現象(色材の移動)が短時間で止まるからである。
また、同じインク同じ記録媒体で比較すると、マルチパス記録方式の画像完成までの走査回数が多いとブリード長が小さく、走査回数が少ないとブリード長が大きい。これは、走査回数が多い場合、1回分の走査で吐出されるインクのドット数が少ないため(ドット密度が低いため)記録媒体への吸収や空気中への蒸発が速やかに進み、ブリード現象(色材の移動)が短時間で止まるからである。
また、例えば、同じインク同じ記録媒体同じ記録方法で比較すると、高温低湿な環境下での記録ではブリード長が小さく、高温多湿な環境下での記録ではブリード長が大きい。これは、高温低湿な環境下であると、記録媒体への吸収や空気中への蒸発がさらに速やかに進むため、ブリード現象(色材の移動)が短時間で止まるからである。また同様な理由で、例えば、送風や温風やヒーターなどによる乾燥機が用いられる場合にも、ブリード長が小さい。
図5において、インクが流れ込む方向はインクの表面張力と概ね順序が合っているが、ブリード長の大きさを示す間隔は、インクの表面張力の差と多少のずれが生じている。これは、記録媒体、記録条件(記録走査回数など)、記録時環境などの影響を受けているためである。
本実施形態では、実際の各種記録条件下でブリード現象確認用の調整パターンを記録媒体に形成し、ブリード現象のブリード長や最適なブリードレベルを、目視またはセンサーなどで評価し取得した結果を基に処理液の付与量を決定する。これにより、実際の各種記録条件に応じた表面張力調整が可能となり、ブリード現象の抑制をさらに正確に行うことができる。
また、調整パターンの利用は、インクドットの着弾ズレを修正する「レジ調整」やヘッドの吐出性能の変化による発色性の違いを修正する「カラーキャリブレーション」などと同じような工程で、ユーザ先の各種記録条件下で行われるのが好ましい。
<調整パターンの利用>
図12は、本実施形態における「処理液用調整パターン」を利用して「処理液用テーブル」を作成するフローチャートである。
まず、ステップS1201において、インクジェット記録装置70の画像処理部が、ROM703から前回の「処理液用調整パターン」の出力により登録された各種設定値を読み出す。各種設定値とは、例えば、ブラックインクによるパッチとイエローインクによるパッチが隣接するときに最適な処理液の付与量などで、インクの階調ごとに登録した処理液の付与量(対応情報)などである。
次に、ステップS1202において、画像処理部が、今回「処理液用調整パターン」の画像形成に用いる複数種類のインク(K、C、M、Y)夫々および処理液(H)に対応した画像データを生成する。具体的には、画像処理部が、ROM703から予め登録された「処理液用調整パターン」のRGB形式の多値画像データを読み出し、色変換により複数種類のインク(K、C、M、Y)夫々に対応した多値画像データに変換する。そして、変換された複数種類のインク(K、C、M、Y)の多値画像データおよびステップS1201で読み出された各種設定値を基に、「処理液用調整パターン」の画像形成に用いる処理液(H)に対応した多値画像データを生成する。なお、複数種類のインク(K、C、M、Y)夫々に対応した多値画像データは、ここで色変換により生成されるが、予めROM703に登録されてもよい。
ステップS1203において、画像処理部が、記憶されているパターンに従って、多値画像データを2値の画像データに展開する。これにより、今回「処理液用調整パターン」の画像形成に用いる複数種類のインク夫々および処理液に対応した2値画像データが生成される。なお、ステップS1202で生成された画像データは2値の画像データであってもよい。その場合に、本ステップは不要である。
次いで、ステップS1204において、画像処理部が、2値画像データを複数回の記録走査に分配するためのマスクパターン処理を行い、記録ヘッドへ転送できる形式の走査毎の吐出データを生成する。
ステップS1205において、インクジェット記録装置70の画像出力部が、ステップS1204で生成されたインクおよび処理液の走査毎の吐出データに従って、「処理液用調整パターン」を記録媒体に形成する。このように、「処理液用調整パターン」の出力結果を取得する。
ステップS1206において、ステップS1205で取得された「処理液用調整パターン」の出力結果をユーザが目視で評価し、例えばインクジェット記録装置のボタンなど入力手段から手動で評価結果を入力する。評価結果は、インクの付与量と、その際に色間のインク滲みの程度が許容範囲内になるように必要な処理液の付与量との対応情報である。画像処理部は、入力された評価結果を基に、今回の各種設定値をROM703に登録する。または、センサーなどにより自動で評価し、評価結果を基に今回の各種設定値をROM703に登録する。今回の各種所定値を基に、ステップS1207では今回用いる「処理液用テーブル」が作成される。
図13は、本実施形態で用いる「処理液用調整パターン」を示す図である。まず、図13(a)に示す「処理液用調整パターン」を説明する。
ブロックAは、ブラックインク第1階調(例えば、100%Duty)のパッチ40と、イエローインク(基準インク)第1階調(例えば、100%Duty)のパッチ41と(2色のパッチ)が隣接するように構成されている。列1〜列7に並んだパッチ40およびパッチ41は夫々同一のパッチの繰り返しであるが、その列1〜列7の各パッチに対して処理液が数%Duty刻みで付与される構成である。すなわち、列1〜列7はインクに対応した画像データが同じであるが、処理液に対応した画像データが異なる。処理液は、列1から順に、ブラックインクのパッチ40に対して3%Duty、4%Duty、5%Duty、6%Duty、7%Duty、8%Duty、9%Dutyと付与される。
ブロックBは、ブラックインク第2階調(例えば、50%Duty)のパッチ42と、イエローインク第2階調(例えば、50%Duty)のパッチ43とが隣接するように構成されている。処理液は、列1から順に、ブラックインクのパッチ42に対して0%Duty、1%Duty、2%Duty、3%Duty、4%Duty、5%Duty、6%Dutyと付与される。なお、ブロックBのイエローインクによるパッチ43は、イエローインク第1階調のパッチとしてもよい。
このように、ブラックインクの量および処理液の量を段階的に(ここで、ブラックインクは2段階、処理液は7段階)変化させるパッチを、イエローインク(基準インク)のパッチに隣接して記録媒体上に出力する。出力結果における色間のインク滲みの程度を評価することにより、ブリード性能の傾向が詳細に明らかになる。
同様に、ブロックCは、シアンインク第1階調(例えば、100%Duty)のパッチ44と、イエローインク第1階調(例えば、100%Duty)のパッチ45とが隣接するように構成されている。処理液は、列1から順に、シアンインクのパッチ44に対して16%Duty、17%Duty、18%Duty、19%Duty、20%Duty、21%Duty、22%Dutyと付与される。ブロックDは、シアンインク第2階調(例えば、50%Duty)のパッチ46と、イエローインク第2階調(例えば、50%Duty)のパッチ47とが隣接するように構成されている。処理液は、列1から順に、シアンインクのパッチ46に対して8%Duty、9%Duty、10%Duty、11%Duty、12%Duty、13%Duty、14%Dutyと付与される。このように、シアンインクの複数個の階調(ここで、2階調)について処理液をそれぞれの量で付与した際のブリード現象を評価する。
また、同様に、ブロックEおよびブロックFは、マゼンタインクのパッチとイエローインクのパッチとが隣接するように構成されており、列1〜列7のマゼンタインクのパッチに対して処理液が数%Duty刻みで付与される。このように、マゼンタインクの複数個の階調(ここで、2階調)について処理液をそれぞれの量で付与した際のブリード現象を評価する。
図13(a)の「処理液用調整パターン」の説明では、処理液を数%Duty刻みで振った付与量が予め決められているが、この付与量の中心値は、前回の「処理液用調整パターン」の出力によりROM703に登録された各種設定値の一つである。なお、「処理液用調整パターン」の出力が初めて行われる場合には、予め登録されている初期設定値を基にステップS1202にて「処理液用調整パターン」の画像形成に用いる複数種類のインク夫々および処理液に対応した画像データを生成する。
図13(a)の「処理液用調整パターン」をステップS1205で記録媒体に形成した後は、例えばユーザが目視でブリード性能を評価する。評価するのは、「処理液用調整パターン」の出力結果においてブロックAの列1〜列7のうち、最もブリード現象が目立ちにくい、すなわち最もブリード長が短い列を選択する。選択した列の処理液の付与量は、ブラックインクの第1階調(Duty)に応じた最適な処理液の付与量(Duty)と決定する。同様に、ブロックBからも最もブリード長が列を選択し、選択した列の処理液の付与量(Duty)は、ブラックインクの第2の階調(Duty)に応じた最適な処理液の付与量(Duty)と決定する。これらを基準にしてブラックインクの他のDutyに応じた処理液のDutyが補間により求められる。
また、「処理液用調整パターン」をステップ1205で記録媒体に形成した後、センサーなどを用いて自動でブリード性能を評価してもよい。その場合、記録ヘッド22を搭載したキャリッジ(不図示)は、カラーパッチの色測定や記録媒体の検知のためのカラーセンサーをも備える。カラーセンサーは測定値としてRGB値を取得するものが一般的である。このカラーセンサーにてブリード長を色味の変化として測定し、最もブリード現象が目立ちにくいと予測される列を選択すればよい。測定値は、CMYK値やL*a*b*値、XYZ値を取得する形態であってもよい。また、前述したパーソナル画像品質評価システムPersonal IAS(Quality Engineering Associates製)(ISO13660準拠)などを用いてもよい。
センサーなどを用いて自動でブリード性能を評価する場合には、例えば図13(b)のような「処理液用調整パターン」が好ましい。
図13(b)において、ブロックA′は、ブラックインク第1階調(例えば、100%Duty)の細長いパッチ40′、イエローインク第1階調(例えば、100%Duty)の細長いパッチ41′の2色のパッチの縞構成であり複数の隣接を備える。その細長いパッチの形状に合わせて列1〜列7に対して処理液が付与される。縞構成の細長いパッチは、センサーの測定スポット径に複数組みが納まるような幅のパッチにすると、ブリード長を色味の変化として認識しやすくなる。このように、ユーザによる目視評価の他、センサーなどによる自動評価も行うことができるため、「処理液用調整パターン」の形状や組み合わせ内容は、特に限定されるものではなく、簡易なパターンから複雑なパターンまで使用可能である。
以上のように、本実施形態では「処理液用調整パターン」を記録媒体に形成し、実際に発生したブリード現象を基に「処理液用テーブル」を作成することで、ブリード現象の抑制をより正確に行うことができる。
なお、本実施形態では、記録媒体の種類により、処理液を用いる記録方法/用いない記録方法を切り替えたり、処理液の付与量を変更したりすることができる。例えば、インク浸透性の低い記録媒体(例えば印刷本紙)は「処理液用調整パターン」を利用して「処理液用テーブル」を作成するが、浸透性の高い記録媒体(例えば光沢紙)は「処理液用テーブル」を作成しない。画像をインク浸透性の低い記録媒体に形成する場合に処理液を用いる記録方法に切り替え、画像をインク浸透性の高い記録媒体の場合に処理液を用いない記録方法に切り替える。また、予め記録媒体の種類に応じた「処理液用テーブル」を複数登録し、画像を記録媒体に形成する際にその記録媒体の種類によって「処理液用テーブル」を切り替えることもできる。
また、同じ記録媒体であっても、記録条件(例えば、記録走査回数)や記録時環境(例えば、温湿度環境)などによってブリード性能が大きく変化する場合がある。本実施形態では、予め異なる記録条件や記録時環境に応じた「処理液用テーブル」を複数登録し、実際の記録条件や記録時環境によって「処理液用テーブル」を切り替える。これにより、ブリード現象の抑制をさらに正確に行うことができる。
[第4の実施形態]
第1〜第3の実施形態では、隣接する画像夫々の表面張力の差に着眼し、その差を小さくするように処理液をどちらか一方の画像、あるいは両方の画像に夫々の最適量を付与することで、隣接する画像間で発生するブリード現象を軽減させる。第1〜第3の実施形態では、処理液を付与する範囲について説明を省略したが、一般的には処理液を付与する画像の全域(領域全体)が好ましい。本実施形態では、隣接する画像の境界部内側(端部)にのみ処理液を最適量付与する。これにより、処理液の消費量を抑えつつ、ブリード現象を効果的に抑制することができる。
図14は、本実施形態における処理液の付与範囲を説明するための図である。以下、図3(b)に示す処理液の付与範囲と比較して本実施形態における処理液の付与範囲を説明する。
図3(a)は前述したように、シアンインクによるベタ画像Aとイエローインクによるベタ画像Bとが隣接する画像を、OKトップコート+紙にマルチパス記録方式により形成する場合にブリード現象により画像弊害が生じた画像の様子を示す図である。表面張力が27.8dyn/cmと低いイエローインクがベタ画像Aとベタ画像Bの隣接境界部から表面張力が29.3dyn/cmと高いシアンインクによる画像A側へと流れ込む。
これに対し第1の実施形態では、図3(b)のように、シアンインクによるベタ画像Aを形成するときに、ベタ画像Aの全域において表面張力が20.0dyn/cmと最も低い処理液をシアンインクと混在するように吐出させた。このように形成した処理液およびシアンインクによるベタ画像AAの表面張力が、イエローインクによるベタ画像Bの表面張力とつり合い、ブリード現象を抑制することができた。このとき処理液を付与した範囲は、シアンインクによるベタ画像Aの全域である。しかし、ブリード現象は、図3(a)に示すように隣接する画像の境界部内側(端部)に発生するので、隣接する画像の境界部内側(端部)にのみ表面張力の差を小さくすることでもブリード現象を抑制する効果を得ることができる。
そこで、本実施形態では、図14のように、シアンインクによるベタ画像Aを形成するときに、イエローインクによるベタ画像Bと隣接するベタ画像Aの境界部(端部)において処理液をシアンインクと混在するように吐出させる。このように形成した処理液およびシアンインクによるベタ画像AA′の表面張力が、イエローインクによるベタ画像Bの表面張力とつり合い、ブリード現象を抑制することができた。このとき処理液を付与した範囲は、イエローインクによるベタ画像Bと隣接するベタ画像Aの境界部(端部)である。
以上のように、本実施形態では隣接する画像の境界分にのみ処理液を最適量付与して、隣接する画像夫々の表面張力の差を小さくすることにより、処理液の消費量を抑えつつブリード現象を抑制することができる。
[第5の実施形態]
第1〜第4の実施形態では、マルチパス記録を行うシリアルタイプの記録装置において、隣接する画像間のブリード現象を抑制するため、画像夫々の表面張力を目標値とした表面張力と略同等になるように、処理液の付与量を決定し付与していた。しかし、記録装置は、第1〜第4の実施形態のようなマルチパス記録を行うシリアルタイプの記録装置に限定されず、例えば1回の走査で画像を完成させる記録(1パス記録)を行うシリアルタイプの記録装置またはシリアルタイプ以外の記録装置でもよい。例えば、本実施形態では、記録紙の幅方向の全域に対応した長さを有する記録ヘッドを用いたフルラインタイプの記録装置において、同様に処理液を用いてブリード現象の抑制を行うことができる。第1〜第4の実施形態と同様の部分について、説明を省略する。
図15は、本実施形態におけるインクジェット記録装置を模式的に示す図である。
記録ヘッド部220は、記録領域の全幅にわたって吐出口が並設されているフルマルチタイプの記録ヘッドが複数並置して、多色の記録が可能に構成されたものである。ブラック(K)、シアン(C)、マゼンタ(M)、イエロー(Y)、処理液(H)のインクをそれぞれ吐出する5つの記録ヘッド220K、220C、220M、220Y、220Hから構成されている。
搬送ベルト50は、記録媒体1を搬送するエンドレスのベルトであり、2個のローラによって矢印方向に回転自在に保持されている。記録媒体1は、給紙ガイドに沿って給紙され搬送ベルト50により矢印方向に送り込まれる。記録媒体1に対して、記録ヘッド220C、220K、220M、220H、220Yの順序でインクが吐出されて、記録が行われる。
記録ヘッドのインク並び順は、表面張力を加味したインクの順番であって、イエローインクの表面張力と略同等となるように処理液を付与するため、シアンインク、ブラックインク、マゼンタインクのすぐ後に処理液を配置するようにした。このように、表面張力を加味したインク順番、例えば、表面張力が高いほうからの順番や低いほうからの順番が好ましい。処理液の記録ヘッドの位置は紙搬送の最上流や最下流、更には図15のようにインクセットの間に構成されていても、インクと処理液が記録媒体上で液滴として存在している間に接触することができれば、ブリード現象抑制の効果を得ることが可能である。
以上のように、マルチパス記録を行うシリアルタイプの記録装置以外の記録装置においても、画像夫々の表面張力を目標値とした表面張力と略同等になるように、処理液の付与量を決定し付与することで、ブリード現象を抑制することができる。
[第6の実施形態]
第1〜第5の実施形態では、インクセットの表面張力とは異なる表面張力を有する処理液を用いて、記録媒体上の画像を形成するインク滴の表面張力を最適化し、ブリード現象を抑制した。しかし、色味の持たない処理液だけで表面張力の調整を行うのではなく、淡色のインクも画像の表面張力の調整に用いることが可能である。本実施形態では、淡色のインク、具体的にはライトマゼンタインク、ライトシアンインクも用いてブリード現象の抑制を行う。なお、第1〜第5の実施形態と同様の部分については、説明を省略する。
本実施形態におけるインクジェット記録装置は、ブラック(K)、シアン(C)、マゼンタ(M)、イエロー(Y)、ライトシアン(LC)、ライトマゼンタ(LM)のインクおよび処理液を夫々吐出する7つの記録ヘッドから構成されている記録ヘッド部を有する。
<インクおよび処理液の組成>
本実施形態のブラックインク、シアンインク、マゼンタインク、イエローインクおよび処理液の組成については第1の実施形態と同様であるので省略する。以下、第1の実施形態と異なるライトシアンインクおよびライトマゼンタインクの組成について説明する。
・ライトシアンインクの作製
(1)分散液の作製
シアンインクについて説明したのと同様の原料および作製方法により、顔料濃度が10質量%のシアン分散液を作製する。
(2)インクの作製
インクの作製は、上記シアン分散液を使用し、これに以下の成分を加えて、十分に混合撹拌した後、ポアサイズ2.5μmのミクロフィルター(富士フイルム製)にて加圧濾過し、顔料濃度0.4質量%の顔料インクを調製する。このように、本実施形態で用いるライトシアンインクを作製した。
上記シアン分散液 4部
ゾニールFSO−100(デュポン製フッ素系界面活性剤) 0.07部
グリセリン 10部
トリエチレングリコール 10部
アセチレングリコールEO付加物(川研ファインケミカル株式会社製) 0.5部
イオン交換水 残部
・ライトマゼンタインクの作製
(1)分散液の作製
マゼンタインクについて説明したのと同様の原料および作製方法により、顔料濃度が10質量%のマゼンタ分散液を作製する。
(2)インクの作製
インクの作製は、上記マゼンタ分散液を使用し、これに以下の成分を加えて、十分に混合撹拌した後、ポアサイズ2.5μmのミクロフィルター(富士フイルム製)にて加圧濾過し、顔料濃度0.8質量%の顔料インクを調製する。このように、本実施形態で用いるライトマゼンタインクを作製した。
上記マゼンタ分散液 8部
ゾニールFSO−100(デュポン製フッ素系界面活性剤) 0.07部
グリセリン 10部
トリエチレングリコール 10部
アセチレングリコールEO付加物(川研ファインケミカル株式会社製) 0.5部
イオン交換水 残部
本実施形態では、ライトシアンインク、ライトマゼンタインクにFSO−100を0.07質量%添加している。これにより、ライトシアンインクおよびライトマゼンタインクのいずれも表面張力は約25〜26dyn/cmである。シアンインク、マゼンタインク、イエローインク、ブラックインクの表面張力約28〜29dyn/cmと、処理液の表面張力約20dyn/cmとの間の値になるように作製された。
画像形成において、シアンインクとライトシアンインク、マゼンタインクとライトマゼンタインクのように一般的に同色系であるため、濃インクと同時に付与することが容易である。画像形成時に淡インクも付与することにより、画像の表面張力が目標値とした表面張力に近づくようになる。
本実施形態では、濃インクおよび淡インクの付与量は画像形成時の色味の関係や記録媒体への総付与量の関係などに基づいて決定する。さらに、処理液の付与量は濃インクおよび淡インクの付与量に応じて決定する。このように決定したインクおよび処理液の付与量に従って、記録媒体に対して濃インク、淡インクおよび処理液を混在するように吐出させて、画像夫々の表面張力を最適化する。
本実施形態では、濃インクの表面張力とは異なる表面張力を有するように作製された淡インクを、表面張力の調整にも用いることにより、表面張力を調整するための処理液の付与量を大きく低減させることが可能となる。これにより、処理液を吐出する記録ヘッドの耐久性を、処理液のみ表面張力の調整に用いていた場合と比べ、良くすることができる。
なお、処理液は、オーバーコートを目的とする処理液の組成に、ブリード現象の抑制機能を追加してもよい。その場合、オーバーコートする処理液の付与量がブリード現象を抑制する処理液の付与量を兼ねていてもよい。また、オーバーコートする処理液の付与量がブリード現象を抑制する処理液の付与量とは別に設定され、インクと処理液の混在によりブリード現象が抑制された後に、オーバーコートする処理液の付与量が付与されてもよい。
[その他の実施形態]
本発明は、上述の実施形態の1以上の機能を実現するプログラムを、ネットワーク又は記憶媒体を介してシステム又は装置に供給し、そのシステム又は装置のコンピュータにおける1つ以上のプロセッサーがプログラムを読出し実行する処理でも実現可能である。また、1以上の機能を実現する回路(例えば、ASIC)によっても実現可能である。
1 記録媒体
22 記録ヘッド部
70 インクジェット記録装置

Claims (17)

  1. 2種類以上のインクと、表面張力が前記2種類以上のインクと異なる処理液とを夫々吐出する記録ヘッドによって、記録媒体上の所定領域に前記2種類以上のインクおよび前記処理液による画像を形成するインクジェット記録装置であって、
    前記所定領域に対する前記2種類以上のインクの付与量を取得するインク付与量取得手段と、
    前記所定領域に対して付与される前記2種類以上のインクと前記処理液とが混合すると想定した場合の混合液の表面張力が目標値になるように、インク付与量取得手段で取得された前記2種類以上のインクの付与量に応じて、前記所定領域に対する前記処理液の付与量を決定する処理液付与量決定手段と
    を有することを特徴とするインクジェット記録装置。
  2. 前記目標値は、前記2種類以上のインクおよび前記処理液の表面張力に基づいて予め設定された値であることを特徴とする請求項1に記載のインクジェット記録装置。
  3. 前記処理液付与量決定手段は、前記2種類以上のインク毎に作成された、各インクと前記処理液とが混合すると想定した場合の混合液の表面張力が前記目標値となるように必要な前記処理液の量と当該インクの量との関係を示すテーブルを参照し、インク付与量取得手段で取得された前記2種類以上のインク夫々の付与量に応じて必要な前記処理液の量を夫々決定し、決定した必要な前記処理液の量の合計を前記処理液の付与量として算出することを特徴とする請求項2に記載のインクジェット記録装置。
  4. 前記処理液の表面張力は、前記2種類以上のインクの表面張力における最小値より小さく、前記所定の目標値は、前記最小値であることを特徴とする請求項2または3に記載のインクジェット記録装置。
  5. 前記処理液の表面張力は、前記2種類以上のインクの表面張力における最大値より大きく、前記所定の目標値は、前記最大値であることを特徴とする請求項2または3に記載のインクジェット記録装置。
  6. 前記2種類以上のインクは、第1の濃インクと、前記第1の濃インクに対応した第1の淡インクと、第2の濃インクと、前記第2の濃インクに対応した第2の淡インクとを含み、
    前記第1の淡インクおよび前記第2の淡インクの表面張力は、前記目標値と前記処理液の表面張力との間の値であることを特徴とする請求項4または5に記載のインクジェット記録装置。
  7. 前記所定領域に対して付与される前記2種類以上のインクが混合すると想定した場合の混合液の表面張力と、前記所定領域に隣接する領域に対して付与される前記2種類以上のインクが混合すると想定した場合の混合液の表面張力とを算出し、算出した表面張力における最小値を前記目標値に設定する目標値設定手段をさらに有し、
    前記処理液付与量決定手段は、前記所定領域に付与される前記2種類以上のインクと前記処理液とが混合すると想定した場合の混合液の表面張力が、前記目標値設定手段で設定された前記目標値になるように、前記所定領域に対する前記処理液の付与量を、前記所定領域に対する前記2種類以上のインクの付与量より算出することを特徴とする請求項1に記載のインクジェット記録装置。
  8. 2種類以上のインクと、表面張力が前記2種類以上のインクより小さいまたは大きい処理液とを夫々吐出する記録ヘッドによって、記録媒体上の所定領域に前記2種類以上のインクおよび前記処理液による画像を形成するインクジェット記録装置であって、
    前記2種類以上のインクのうち表面張力が前記処理液の表面張力と最も近いインクを基準インクとし、他のインク毎に、単位面積あたりのインクの量および前記処理液の量を段階的に変化させるパッチを、前記基準インクのパッチに隣接して前記記録媒体上に出力し、出力結果を取得する出力手段と、
    前記出力結果に基づいて、インクの量と、当該インクの量の場合に色間のインク滲みの程度が許容範囲内になるように必要な前記処理液の量との対応情報を取得する対応情報取得手段と、
    前記所定領域に対する前記他のインクの付与量を取得するインク付与量取得手段と、
    前記対応情報に基づいて、取得された前記他のインク夫々の付与量に応じて必要な前記処理液の量を夫々決定し、決定した必要な前記処理液の量の合計を、前記所定領域に対する前記処理液の付与量として算出する処理液付与量決定手段と
    を有することを特徴とするインクジェット記録装置。
  9. 前記出力手段は、前記記録媒体の種類および/または温湿度環境が異なる場合に応じて、複数の出力結果を取得し、
    前記対応情報取得手段は、前記複数の出力結果に基づいて、前記記録媒体の種類および/または温湿度環境により必要な前記処理液の量が異なる複数の対応情報を取得し、
    前記処理液付与量決定手段は、前記記録媒体の種類および/または温湿度環境に応じて、前記複数の対応情報を切り替えることを特徴とする請求項8に記載のインクジェット記録装置。
  10. 前記インクジェット記録装置は、前記記録ヘッドを記録媒体上の所定領域に対して複数回走査させることにより画像を形成することを特徴とする請求項1乃至9のいずれか1項に記載のインクジェット記録装置。
  11. 前記インクジェット記録装置は、前記記録ヘッドを記録媒体上の所定領域に対して複数回走査させることにより画像を形成し、
    前記出力手段は、前記走査の回数が異なる場合に応じて、複数の出力結果を取得し、
    前記対応情報取得手段は、前記複数の出力結果に基づいて、前記走査の回数により必要な前記処理液の量が異なる複数の対応情報を取得し、
    前記処理液付与量決定手段は、前記走査の回数に応じて、前記複数の対応情報を切り替えることを特徴とする請求項8に記載のインクジェット記録装置。
  12. 前記所定領域は、前記2種類以上のインクによる画像の領域全体、または他の画像に隣接する前記2種類以上のインクによる画像の端部であることを特徴とする請求項1乃至11のいずれか1項に記載のインクジェット記録装置。
  13. 前記2種類以上のインクの表面張力が、30(mN/m)以下であることを特徴とする請求項1乃至12のいずれか1項に記載のインクジェット記録装置。
  14. 前記記録媒体は、前記2種類以上のインクに対するブリストー法によるインク転移量が、20ml/m2より小さい記録媒体であることを特徴とする請求項1乃至13のいずれか1項に記載のインクジェット記録装置。
  15. 前記記録媒体は、印刷塗工紙であることを特徴とする請求項1乃至14のいずれか1項に記載のインクジェット記録装置。
  16. 2種類以上のインクと、表面張力が前記2種類以上のインクと異なる処理液とを夫々吐出する記録ヘッドによって、記録媒体上の所定領域に前記2種類以上のインクおよび前記処理液による画像を形成するインクジェット記録方法であって、
    前記所定領域に対する前記2種類以上のインクの付与量を取得するインク付与量取得工程と、
    前記所定領域に対して付与される前記2種類以上のインクと前記処理液とが混合すると想定した場合の混合液の表面張力が目標値になるように、インク付与量取得工程で取得された前記2種類以上のインクの付与量に応じて、前記所定領域に対する前記処理液の付与量を決定する処理液付与量工程決定工程と
    を備えることを特徴とするインクジェット記録方法。
  17. 2種類以上のインクと、表面張力が前記2種類以上のインクより小さいまたは大きい処理液とを夫々吐出する記録ヘッドによって、記録媒体上の所定領域に前記2種類以上のインクおよび前記処理液による画像を形成するインクジェット記録方法であって、
    前記2種類以上のインクのうち表面張力が前記処理液の表面張力と最も近いインクを基準インクとし、他のインク毎に、単位面積あたりのインクの量および前記処理液の量を段階的に変化させるパッチを、前記基準インクのパッチに隣接して前記記録媒体上に出力し、出力結果を取得する出力工程と、
    前記出力結果に基づいて、インクの量と、当該インクの量の場合に色間のインク滲みの程度が許容範囲内になるように必要な前記処理液の量との対応情報を取得する対応情報取得工程と、
    前記所定領域に対する前記他のインクの付与量を取得するインク付与量取得工程と、
    前記対応情報に基づいて、取得された前記他のインク夫々の付与量に応じて必要な前記処理液の量を夫々決定し、決定した必要な前記処理液の量の合計を、前記所定領域に対する前記処理液の付与量として算出する処理液付与量決定工程と
    を備えることを特徴とするインクジェット記録方法。
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