JP2017068310A - 抵抗スポット溶接のナゲット径予測方法、コンピュータプログラム、および、当該プログラムを記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体 - Google Patents
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Description
本発明は、このような知見に基づいて完成させた。以下、本発明について説明する。
界面接触力=∫Spds
本発明において、一対のスペーサを挟む2枚の被溶接材の抵抗スポット溶接を行う場合における、被溶接材界面の界面接触力は、実験により求めても良く、有限要素法などの数値解析により求めても良い。
一対のスペーサを用いる抵抗スポット溶接を行う場合の界面接触力と、リング状のスペーサを用いる抵抗スポット溶接を行う場合の界面接触力とが略同等になる、リング状のスペーサの設置半径reqを特定し、これを反映した2次元軸対称モデルを用いる抵抗スポット溶接の2次元数値解析を行う。これにより、一対のスペーサを挟む2枚の被溶接材の抵抗スポット溶接を行う場合のナゲット径を高精度に予測することができる。後述するように、設置半径reqを決定する際に3次元数値解析を用いたとしても、上記方法によりナゲット径を予測する際の所要時間は、抵抗スポット溶接の3次元数値解析によりナゲット径を予測する際の所要時間よりも極めて短い。所要時間の短さは計算負荷が小さいことに由来するので、このような形態にすることにより、板隙を有する抵抗スポット溶接におけるナゲット径を、抵抗スポット溶接の3次元数値解析よりも小さい計算負荷で予測することが可能な、抵抗スポット溶接のナゲット径予測方法を提供することができる。
F3D算出工程の計算負荷、および、設置半径決定工程の計算負荷は、何れも小さい。したがって、このような形態であっても、板隙を有する抵抗スポット溶接におけるナゲット径を、抵抗スポット溶接の3次元数値解析よりも小さい計算負荷で予測することが可能である。
図1は、本発明の抵抗スポット溶接のナゲット径予測方法(以下において、「本発明の予測方法」と称することがある。)S10を説明する図である。図1に示した本発明の予測方法S10は、弾塑性数値解析工程S11と、2次元熱弾塑性数値解析工程S12と、を有している。
弾塑性数値解析工程S11は、2次元軸対称数値解析で用いるリング状のスペーサの設置半径reqを決定する工程である。より具体的には、一対のスペーサを用いる抵抗スポット溶接を行う場合のスクイズ段階の界面接触力と、リング状のスペーサを用いる抵抗スポット溶接を行う場合のスクイズ段階の界面接触力とが略同等になるような、リング状のスペーサの設置半径reqを決定する工程である。図1に示したように、弾塑性数値解析工程S11は、F3D算出工程S111と、設置半径決定工程S112と、を有している。
F3D算出工程S111(以下において、単に「S111」と称することがある。)は、一対のスペーサを挟んで配置される2枚の金属板と、該2枚の金属板を挟持する一対の電極とを模擬した3次元解析モデルを用いる弾塑性解析を行うことにより、2枚の金属板間の界面接触力F3Dを求める工程である。ここで、「界面接触力」は、2枚の被溶接材の接触界面の面積をS、該面積Sの領域に分布する、接触界面における接触圧力をpとするとき、pをSの領域について積分した値として算出される。例えば、界面接触力を有限要素法から算出する際には、いずれも数値解析結果として得られるpおよびSから、次式により算出することができる。
界面接触力=∫Spds
設置半径決定工程S112(以下において、単に「S112」と称することがある。)は、リング状のスペーサを挟んで配置される2枚の金属板と、該2枚の金属板を挟持する一対の電極とを模擬した2次元軸対称モデルを用いる弾塑性解析を行うことにより求めた、2枚の金属板間のスクイズ段階の界面接触力F2Dと、S111で求めた界面接触力F3Dとが略一致する、リング状のスペーサの設置半径reqを決定する工程である。
実際に、図3に示したような、厚さgのスペーサを金属板間に間隔dで平行配置し、スペーサ間の中央(d/2位置)を溶接する場合を対象とし、これを2次元軸対称モデルによるスポット溶接数値解析を用いてナゲット径を予測する場合を考えると、後述するように、単純に半径がd/2の位置に厚さgのスペーサを配置した計算では、実際のセットアップを忠実に再現した3次元モデルによる数値解析と、大きく異なる予測結果となる。
2次元スポット溶接数値解析工程S12(以下において、単に「S12」と称することがある。)は、S11で決定した設置半径reqであるリング状のスペーサ、を挟んで配置される2枚の金属板と、該2枚の金属板を挟持する一対の電極とを模擬した2次元軸対称モデルを用いる、スポット溶接の2次元数値解析を行うことにより、設置半径reqであるリング状のスペーサの中央に形成されるナゲットの径を算出する工程である。換言すれば、S12は、2次元軸対称モデルを用いてスポット溶接解析を行うことにより、設置半径がreqであるリング状のスペーサを挟んで配置された2枚の金属板を抵抗スポット溶接した際のナゲット径を算出する工程である。
図6は、本発明のコンピュータプログラムを実行させることが可能なコンピュータシステムの形態例を示す図である。図6に示したコンピュータシステムにおいて、符号100はコンピュータ(PC)である。コンピュータ100は、CPU101を備え、ROM102またはハードディスク(HD)111に記録された、あるいはフレキシブルディスクドライブ(FD)112より供給されるデバイス制御ソフトウェアを実行し、システムバス104に接続される各デバイスを総括的に制御する。上述した本発明の予測方法は、例えば、コンピュータ100のCPU101、ROM102、またはハードディスク(HD)111に記録された本発明のコンピュータプログラムを実行することにより、実施することができる。
表1に示す溶接条件で、2枚の金属板(1500MPa級の引張強さを有するホットスタンプ(焼入れ)鋼板。以下において、「HS1500」と称することがある。)をスポット溶接した場合のナゲット径を、上記本発明の予測方法で予測した(実施例1)。
一方、比較のため、表1に示す実施例1と同じ溶接条件で、図3に示したセットアップを忠実に再現した3次元モデルによる解析を行うことにより、ナゲット径を求めた(比較例1A)。比較例1Aでは、スポット溶接中の熱的−電気的―力学的な相互作用をそれぞれ数値モデル化し、溶接中の非定常過程を妥当に計算できるプログラムとして、本発明者らが開発した3次元スポット溶接解析FEMプログラムを利用した。比較例1Aで使用した、3次元モデルの例を、図7に示す。比較例1Aでは、スポット溶接位置をスペーサ間の中央かつ板幅の中央としたため、プロセスの対称性を考慮して、セットアップ全体の1/4領域をモデル化した。また、板隙量gを与えるにおいて、スペーサをモデル化するのではなく、板隙量gを維持するような変位境界条件を、スペーサ設置相当位置に規定した。
また、実施例1および比較例1Aに加え、実施例1で得られた等価半径req(=24.35mm)に代えて、r=d/2(=10mm)とし、図5に示す2次元モデルを用いて解析することにより、ナゲット径を予測した(比較例1B)。
金属板を590MPa級の引張強さを有する鋼板(以下において、「590」と称することがある。)に変更し、これに伴って加圧力を変更した表3に示す溶接条件でスポット溶接した場合のナゲット径を、上記本発明の予測方法で予測した(実施例2)。
一方、溶接条件を表3に示した条件に変更したほかは比較例1Aと同様にして、3次元モデルによる解析を行うことにより、ナゲット径を求めた(比較例2A)。
また、溶接条件を表3に示した条件に変更したほかは比較例1Bと同様にして、図5に示す2次元モデルを用いて解析することにより、ナゲット径を予測した(比較例2B)。
また、図8および図9を比較すると、相対的に高強度の鋼板のナゲット径を予測した図8の方が、図9よりも、実施例の結果が3次元のスポット溶接解析を行った結果と良く一致し、r=d/2と仮定した比較例の結果との差が顕著であった。すなわち、高強度鋼板の板組の方が、本発明の効果が大きかった。
表4に示す溶接条件で、2枚の金属板(1500MPa求の引張強さを有するホットスタンプ(焼入れ)鋼板)をスポット溶接した場合のナゲット径を、上記本発明の予測方法で予測した(実施例3)。
一方、溶接条件を表4に示した条件に変更したほかは比較例1Aと同様にして、3次元モデルによる解析を行うことにより、ナゲット径を求めた(比較例3A)。
また、溶接条件を表4に示した条件に変更したほかは比較例1Bと同様にして、図5に示す2次元モデルを用いて解析することにより、ナゲット径を予測した(比較例3B)。
101…CPU
102…ROM
103…RAM
104…システムバス
105…キーボードコントローラ(KBC)
106…表示コントローラ(CRTC)
107…ディスクコントローラ(DKC)
108…ネットワークインタフェースカード(NIC)
109…キーボード(KB)
110…表示装置(CRT)
111…ハードディスク(HD)
112…フレキシブルディスク(FD)
120…LAN
Claims (5)
- 一対のスペーサが挿入されることによって形成される隙間を挟んで配置された2枚の被溶接材を有する積層体を、一対の電極で挟持し、押圧しつつ、通電する過程を経て、前記2枚の被溶接材の接触界面にナゲットを形成することにより、前記2枚の被溶接材を抵抗スポット溶接する際のナゲット径を予測する方法であって、
2次元軸対称数値解析で用いるリング状のスペーサの設置半径reqを決定する、弾塑性数値解析工程と、
内側の半径が、前記弾塑性数値解析工程で決定した前記設置半径reqであるリング状のスペーサを挟んで配置される2枚の被溶接材と、該2枚の被溶接材を挟持する一対の電極とを模擬した2次元軸対称モデルを用いる、2次元スポット溶接数値解析を行うことにより、前記リング状のスペーサの中央に形成されるナゲットの径を算出する、2次元スポット溶接数値解析工程と、
を有する、抵抗スポット溶接のナゲット径予測方法。 - 前記弾塑性数値解析工程は、
一対のスペーサを挟んで配置される2枚の被溶接材と、該2枚の被溶接材を挟持する一対の電極とを模擬した3次元解析モデルを用いる弾塑性解析を行うことにより、前記2枚の被溶接材間の接触力F3Dを求める、F3D算出工程と、
リング状のスペーサを挟んで配置される2枚の被溶接材と、該2枚の被溶接材を挟持する一対の電極とを模擬した2次元軸対称モデルを用いる弾塑性解析を行うことにより求めた、前記2枚の被溶接材間の接触力F2Dと、前記F3D算出工程で求めた前記接触力F3Dとが略一致する、前記リング状のスペーサの設置半径reqを決定する、設置半径決定工程と、
を有する、請求項1に記載の抵抗スポット溶接のナゲット径予測方法。 - 一対のスペーサが挿入されることによって形成される隙間を挟んで配置された2枚の被溶接材を有する積層体を、一対の電極で挟持し、押圧しつつ、通電する過程を経て、前記2枚の被溶接材の接触界面にナゲットを形成することにより、前記2枚の被溶接材を抵抗スポット溶接する際のナゲット径を予測するコンピュータプログラムであって、
2次元軸対称数値解析で用いるリング状のスペーサの設置半径reqを決定する、弾塑性数値解析処理と、
内側の半径が、前記弾塑性数値解析処理で決定された前記設置半径reqであるリング状のスペーサを挟んで配置される2枚の被溶接材と、該2枚の被溶接材を挟持する一対の電極とを模擬した2次元軸対称モデルを用いる、2次元スポット溶接数値解析を行うことにより、前記リング状のスペーサの中央に形成されるナゲットの径を算出する、2次元スポット溶接数値解析処理と、
をコンピュータに実行させる、コンピュータプログラム。 - 一対のスペーサが挿入されることによって形成される隙間を挟んで配置された2枚の被溶接材を有する積層体を、一対の電極で挟持し、押圧しつつ、通電する過程を経て、前記2枚の被溶接材の接触界面にナゲットを形成することにより、前記2枚の被溶接材を抵抗スポット溶接する際のナゲット径を予測するコンピュータプログラムであって、
一対のスペーサを挟んで配置される2枚の被溶接材と、該2枚の被溶接材を挟持する一対の電極とを模擬した3次元解析モデルを用いる弾塑性解析を行うことにより、前記2枚の被溶接材間の接触力F3Dを求める、F3D算出処理と、
リング状のスペーサを挟んで配置される2枚の被溶接材と、該2枚の被溶接材を挟持する一対の電極とを模擬した2次元軸対称モデルを用いる弾塑性解析を行うことにより求めた、前記2枚の被溶接材間の接触力F2Dと、前記F3D算出処理で求めた前記接触力F3Dとが略一致する、前記リング状のスペーサの設置半径reqを決定する、設置半径決定処理と、
前記設置半径決定処理で決定された前記設置半径reqであるリング状のスペーサ、を挟んで配置される2枚の被溶接材と、該2枚の被溶接材を挟持する一対の電極とを模擬した2次元軸対称モデルを用いる、2次元スポット溶接数値解析を行うことにより、前記リング状のスペーサの中央に形成されるナゲットの径を算出する、2次元スポット溶接数値解析処理と、
をコンピュータに実行させる、コンピュータプログラム。 - 請求項3又は4に記載のプログラムを記録したことを特徴とするコンピュータ読み取り可能な記録媒体。
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