JP7328517B2 - スポット溶接による溶接継手の破断予測方法、スポット溶接による溶接継手の破断予測プログラム、及び、スポット溶接による溶接継手の破断予測装置 - Google Patents
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Description
スポット溶接で接合して組み立てた部材では、例えば衝突エネルギ吸収部材では、溶接ナゲット径や溶接位置(打点位置)が適切でない場合、当該組み立てた部材の衝突変形中に溶接部が破断し、本来吸収すべきエネルギを吸収しきれなくなることがあり、性能評価が重要である。
しかしながら、この技術では実験による溶接部の断面から溶接ナゲット(溶接部)及び熱影響部(以下、「HAZ」と記載することがある。)の形状をモデル化し、破断基準も実験で求めたデータを設定するため、多くの手介入作業を必要とする。また、溶接ナゲットやHAZの領域内は均一の破断基準としており、遷移層を考慮していないため、組織境界で破断基準が急激に変化することになり、これは実態とは異なる。
しかしながらここでは溶接部の形状の推定方法については述べられていない。また、溶接ナゲットやHAZの領域内は均一の破断基準としているため、遷移層を考慮していない。
しかしながらこの方法では、冷却速度の影響により生成されるマルテンサイト組織の分布については考慮されておらず、破断基準も述べられていない。
しかしながらこの方法では、溶接部形状の推定方法については述べられていない。また、破断基準は溶接後マルテンサイト分布のような組織分布に対応していない。
しなしながらこの方法では、溶接継手に引張負荷を付与した場合の継手強度と破断形態は予測できない。
このようなスポット溶接自体は公知の通りであり、溶接される複数の材料が重ねられ、これを2つの電極の間に挟んで押圧しつつ通電する。そして以下に示す形態は、このようなスポット溶接による接合部を有する部材について、数値解析によるシミュレーションを用いて破断を予測することに関する。
図2からわかるように、破断予測方法S10は、溶接プロセス演算S11と、破断解析用モデル作成S12と、破断予測演算S13と、を備えている。
このような溶接シミュレーションは汎用の数値解析ソフトウエアや自作の数値解析プログラムを用いることができ、特に限定されることはないが、本形態では次のようなシミュレーションを行う。
従って、シミュレーションによる溶接部形状の結果と、組織分布の結果とを合わせることで、スポット溶接終了後のマルテンサイト分布を得ることができる。そしてこの結果としての溶接部形状及び組織分布が保存される。この保存は、得られた結果が計算機(例えば後述する計算装置30)のメモリ、ハードディスクや、外部記憶媒体であるCD-ROM等のメディアにデータが書き込まれることにより行われる。
この例では、評価対象は590MPa級鋼板(板厚1.6mm)で長さを50mmとし、これを2次元軸対称形でモデル化をして四角形要素でメッシュ分割した。
そして、本材質に対応した機械特性データ、熱物性データ、その他材料特性データを設定した。ここで機械特性データとはヤング率、ポアソン比、変形抵抗曲線であり、熱物性データとは比熱、熱伝導率、線膨張係数であり、その他材料特性データとは電気抵抗率、密度、変態膨張係数、変態塑性係数、相変態潜熱である。
溶接条件として、電極の加圧力、電極に流す電流、通電時間、保持時間、周波数を設定した。
図4には溶融部近傍における液相率分布を示した(上側の電極11及び下側の電極12は除外されている。)。ここでは液相率0.8以上である部分を溶接金属部15とし、この部分が溶接部(接合部)となり、2つの鋼板が接合されると考えることができる。
図5にはマルテンサイト体積分率分布をそれぞれ表した(上側の電極11及び下側の電極12は除外されている。)。ここではマルテンサイト体積分率0.9以上の部位16を白色で表示している。
そしてこれらの解析結果データはハードディスク(記憶手段)に保存される。
上記した溶接プロセス演算S11を3次元モデルで実施した場合には、溶接プロセス演算S11で保存した溶接部形状をそのまま溶接継手形状モデルに適用することができる。
一方、上記した溶接プロセス解析S11を2次元軸対称モデルで実施した場合は、溶接部形状を周方向に複写し溶接継手形状モデルに適用する。
εCR=εN・Vm+εB・(1-Vm) …(1)
以上のようにして、破断解析用モデル作成S12で破断解析用モデルを得る。
この例では、継手全体の形状は、板厚1.6mm、板幅30mm、長さ50mmの形状の鋼板が2枚(鋼板20a、鋼板20b)が重ね代30mmで重ねられている。これを板幅方向1/2対称形でモデル化をして全体形状20とした。
次に、溶接プロセス解析S11で保存した解析メッシュデータ、液相率分布、マルテンサイト体積分率分布を読み込む。この例では解析メッシュデータは2次元軸対称形となっているため、周方向180°まで複写して六面体及び/又は四面体の要素に変換し溶接近傍形状21とする。これを六面体要素でメッシュ分割した継手の全体形状20に組み込み溶接継手形状22とした。
マルテンサイト体積分率に応じて上記した式(1)を用いて要素毎に破断基準を計算して設定した。変形抵抗曲線など他の材料特性データに関しても同様に算出することができる。
以上のようにして、溶接継手形状モデルが作成される。
このような応力解析は汎用の数値解析ソフトウエアや自作の数値解析プログラムを用いることができる。
図10に破断シミュレーションによる破断形態を示した。図10は(a)乃至(d)に向けて引張の量が増加していく様子を示したものである。(a)乃至(d)の各図において上側が全体図、下側が溶接部を拡大した図である。これら図からわかるように、引張負荷に応じて溶接部の近傍で破断が発生していることがわかる。本例では溶接部ではなく母材からの破壊であることもわかる。
外部記憶装置31cは、公知の外部接続可能な記憶手段であり、記憶媒体としても機能する。ここには特に限定されることなく、必要とされる各種プログラム、データを記憶させておくことができる。例えば上記した記憶手段35と同様のプログラム、データがここに記憶されていても良い。
外部記憶装置31cとしては、公知の装置を用いることができる。これには例えばCD-ROM及びCD-ROMドライブ、DVD及びDVDドライブ、ハードディスク、各種メモリ等を挙げることができる。
2 鋼材
3 鋼材
10 解析メッシュ
11、12 電極部分のメッシュ
13、14 鋼板部分のメッシュ
15 解析上の溶接金属部
16 解析上のマルテンサイト体積分率0.9以上の部位
20 モデル上の全体形状
21 モデル上の溶接近傍形状
22 モデル上の溶接継手形状
24 幅方向中央面(対称条件付与面)
25 端部(拘束条件付与面)
26 端部(負荷条件付与面)
30 溶接部の破断予測計算装置
31 入力手段
32 演算装置
33 演算手段
35 記憶手段
38 表示手段
A 溶融ナゲット
S10 スポット溶接部の破断予測方法
S11 溶接プロセス演算
S12 破断解析用モデル作成
S13 破断予測演算
Claims (6)
- 数値解析を用いてスポット溶接による溶接継手の破断を母材及び溶接ナゲットに設定した応力三軸度の影響を考慮した破断ひずみを破断基準として用いて予測する方法であって、
溶接部の形状及び前記溶接部における組織分布を得る演算をし、
得られた前記演算による前記形状及び前記組織分布を含んだ前記溶接継手の形状のデータによるモデルと、前記組織分布から式(1)によりマルテンサイト体積分率に対応した破断基準と、を作成し、
前記モデルを用いて応力解析を行い、継手強度及び破断形態を解析結果として出力する、溶接継手の破断予測方法。
εCR=εN・Vm+εB・(1-Vm)…(1)
(式(1)で、εCRは破断基準、εNは溶接ナゲットの破断基準、εBは母材の破断基準、Vmはマルテンサイトの体積分率である。) - 前記応力三軸度の影響を考慮した破断ひずみは、微小引張試験とそれを模擬した有限要素法解析により求める、請求項1に記載の溶接継手の破断予測方法。
- 演算装置に、スポット溶接による溶接継手の破断を母材及び溶接ナゲットに設定した応力三軸度の影響を考慮した破断ひずみを破断基準として用いて予測させるプログラムであって、
前記演算装置に、
溶接部の形状及び前記溶接部における組織分布を得る演算をするステップ、
得られた前記演算による前記形状及び前記組織分布を含んだ前記溶接継手の形状のデータによるモデルと、前記組織分布から式(1)によりマルテンサイト体積分率に対応した破断基準と、を形成するステップ、及び、
前記モデルを用いて応力解析を行い、継手強度及び破断形態を解析結果として出力するステップ、を実行させる溶接継手の破断予測プログラム。
εCR=εN・Vm+εB・(1-Vm)…(1)
(式(1)で、εCRは破断基準、εNは溶接ナゲットの破断基準、εBは母材の破断基準、Vmはマルテンサイトの体積分率である。) - 前記応力三軸度の影響を考慮した破断ひずみは、微小引張試験とそれを模擬した有限要素法解析により求める、請求項3に記載の溶接継手の破断予測プログラム。
- スポット溶接による溶接継手の破断を母材及び溶接ナゲットに設定した応力三軸度の影響を考慮した破断ひずみを破断基準として用いて予測する装置であって、
プログラムが記憶された記憶手段と、
前記プログラムに基づいて演算を行う演算手段と、
前記演算手段により演算された結果を表示する表示手段と、を備え、
前記演算手段では、
溶接部の形状及び前記溶接部における組織分布を得る演算、
得られた前記演算による前記形状及び前記組織分布を含んだ前記溶接継手の形状のデータによるモデルと、前記組織分布から式(1)によりマルテンサイト体積分率に対応した破断基準と、を作成する演算、及び、
前記モデルを用いて応力解析を行い、継手強度及び破断形態を解析結果として出力する演算を行う、溶接継手の破断予測装置。
εCR=εN・Vm+εB・(1-Vm)…(1)
(式(1)で、εCRは破断基準、εNは溶接ナゲットの破断基準、εBは母材の破断基準、Vmはマルテンサイトの体積分率である。) - 前記応力三軸度の影響を考慮した破断ひずみは、微小引張試験とそれを模擬した有限要素法解析により求める、請求項5に記載の溶接継手の破断予測装置。
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井上雅夫 外4名,詳細スポット溶接モデルを高強度部材に適用した車両衝突解析,計算工学講演会論文集 [CD-ROM],計算工学会,2018年06月,Vol. 23 |
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