JP2016065847A - 接着継手の破断予測方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】有限要素法解析を用いた接着継手の破断予測方法であって、接着継手の破断応力三軸度および接着継手の破断限界ひずみの関係を表す破断限界線、または、接着継手の接着部を構成する接着剤を固めた試験片の破断応力三軸度および該試験片の破断限界ひずみの関係を表す破断限界線と、接着継手の接着部における応力三軸度と、接着継手の接着部における相当塑性ひずみと、を比較することにより、接着部の破断判定を行う、接着継手の破断予測方法とする。
【選択図】図1
Description
本発明は、このような知見に基づいて完成させた。以下、本発明について説明する。
上述したように、本発明者らは、樹脂にも塑性ひずみが発生することを知見した。樹脂にも塑性ひずみが発生するので、スポット溶接継手における破断限界線の考え方を、接着部の破断にも展開することが可能であり、一つの破断限界線を用いることにより、負荷モードが異なる接着継手の破断を判定することが可能になる。本発明はこのような知見に基づいてなされたものである。
図1は、第1実施形態に係る本発明の接着継手の破断予測方法を説明する図である。図1に示した本発明の接着継手の破断予測方法S1は、第1工程(S11)と、第2工程(S12)と、第3工程(S13)と、第4工程(S14)と、判定工程(S15)と、を有している。
第1工程(以下において、「S11」と称することがある。)は、接着部にせん断が主体の負荷がかかる継手(例えばせん断継手)、および、接着部にはく離が主体の負荷がかかる継手(例えばT字継手)、を対象にした引張試験を行うことにより、それぞれの継手の最大荷重を測定する工程である。
第2工程(以下において、「S12」と称することがある。)は、上記S11の引張試験と同条件の引張試験を模擬したFEM解析を行い、S11で測定された最大荷重と、FEM解析により得られた最大荷重とが一致する変位から、破断変位を導出する工程である。
第3工程(以下において、「S13」と称することがある。)は、上記S12で特定した破断変位における破断起点要素の、応力三軸度および相当塑性ひずみを算出し、算出した応力三軸度を破断応力三軸度とするとともに、算出した相当塑性ひずみを破断限界ひずみとする工程である。
第4工程(以下において、「S14」と称することがある。)は、上記S13で異なる形状の継手(例えば、せん断継手およびT字継手。以下において同じ。)毎に算出した、破断応力三軸度および破断限界ひずみの結果を用いて、破断応力三軸度および破断限界ひずみの関係を表す破断限界線を導出する工程である。S14では、例えば、S12のFEM解析により得られる、異なる形状の継手毎の応力三軸度および相当塑性ひずみの関係を、縦軸を相当塑性ひずみとし横軸を応力三軸度とする座標平面上に記載する。その後、当該座標平面上に、上記S13で得られた、異なる形状の継手毎の破断応力三軸度および破断限界ひずみの結果を記載し、記載された、破断応力三軸度および破断限界ひずみの複数の結果の点を通る線を引くことにより、破断限界線を導出する。このようにして特定した破断限界線の例を、図8に示す。
判定工程(以下において、「S15」と称することがある。)は、上記S14で得られた破断限界線と、接着継手の接着部における応力三軸度と、接着継手の接着部における相当塑性ひずみと、を比較することにより、接着部の破断判定を行う工程である。S15では、上記S14で得られた破断限界線が記載されている、縦軸を相当塑性ひずみとし横軸を応力三軸度とする座標平面上に、破断判定を行う接着継手の応力三軸度および相当塑性ひずみの履歴を、原点を継手引張開始点としてプロットする。そして、例えば、図9のケースaに示すように、相当塑性ひずみが矢印方向に増分し、このプロットが、破断限界線を越えない場合には破断していないと判定し、上記プロットが、図9のケースbまたはケースcに示すように、破断限界線上または破断限界線を越える場合には破断していると判定することができる。また、図10に示すように、汎用解析コードAbaqusのDamage機能等を利用して、接着継手の接着部における応力三軸度および相当塑性ひずみを、継手引張過程の時系列で逐一評価して、破断限界線に到達すればその要素を削除しながら継手引張過程の計算を進めることにより、破断による剛性低下の影響を検討することができる。
図13は、第2実施形態に係る本発明の接着継手の破断予測方法を説明する図である。図13に示した本発明の接着継手の破断予測方法S2は、最大荷重測定工程(S21)と、破断変位導出工程(S22)と、破断応力三軸度・破断限界ひずみ特定工程(S23)と、破断限界線導出工程(S24)と、判定工程(S25)と、を有している。
最大荷重測定工程(以下において、「S21」と称することがある。)は、接着継手の接着部を構成する接着剤を固めることにより作製した、平行部が平滑形状である硬化接着材料の試験片、および、接着継手の接着部を構成する接着剤を固めることにより作製した、平行部が切欠付き形状である硬化接着材料の試験片、を対象にした引張試験を行うことにより、それぞれの試験片の最大荷重を測定する工程である。図14は、S25で行われる硬化接着材料の引張試験片の形態例を示す図である。図14(a)は平行部が平滑形状である試験片の形態例を説明する図であり、図14(b)は平行部が曲率半径Raである切欠付き形状の試験片の形態例を説明する図であり、図14(c)は平行部が曲率半径Rb(Ra≠Rb)である切欠付き形状の試験片の形態例を説明する図である。なお、切欠を付ける理由は,それぞれの試験片で破断起点近傍での応力場を変化させ、破断時の相当塑性ひずみと応力三軸度を変化させるためであり、切欠の種類も曲率半径をRaとRbのように変化させた複数の試験片を用いることが望ましい。
破断変位導出工程(以下において、「S22」と称することがある。)は、上記S21の引張試験と同条件の引張試験を模擬したFEM解析を行い、S21で測定された最大荷重と、FEM解析により得られた最大荷重とが一致する変位から、破断変位を導出する工程である。図15は、S22で行われるFEM解析の解析モデルの形態例を示す図で、すべてを六面体要素でメッシュ分割している。図15(a)は平行部が平滑形状である硬化接着材料の試験片の解析モデルを説明する図であり、図15(b)は平行部が切欠(曲率半径Raの切欠)付き形状である硬化接着材料の試験片の解析モデルを説明する図であり、図15(c)は平行部が切欠(曲率半径Rbの切欠)付き形状である硬化接着材料の試験片の解析モデルを説明する図である。本解析モデルは試験片の長さ、幅、板厚の各方向を対称形で定義しており、図中の矢印方向へと負荷を付与することにより、S21の引張試験と同条件の引張試験を模擬したFEM解析を行う。S22では、FEM解析により得られる最大荷重が、同形状の試験片を用いたS21の引張試験で測定された最大荷重に一致するときの変位を、破断変位とし、当該荷重が付与されているときに相当塑性ひずみが最大の要素を、破断起点要素として特定する。
破断応力三軸度・破断限界ひずみ特定工程(以下において、「S23」と称することがある。)は、上記S22で特定した破断変位における破断起点要素の、応力三軸度および相当塑性ひずみを算出し、算出した応力三軸度を破断応力三軸度とするとともに、算出した相当塑性ひずみを破断限界ひずみとする工程である。
破断限界線導出工程(以下において、「S24」と称することがある。)は、上記S23で異なる形状の試験片毎に算出した、破断応力三軸度および破断限界ひずみの結果を用いて、破断応力三軸度および破断限界ひずみの関係を表す破断限界線を導出する工程である。S24では、例えば、S22のFEM解析により得られる、異なる形状の試験片毎の応力三軸度および相当塑性ひずみの関係を、縦軸を相当塑性ひずみとし横軸を応力三軸度とする座標平面上に記載する。その後、当該座標平面上に、上記S23で得られた、異なる形状の試験片毎の破断応力三軸度および破断限界ひずみの結果を記載し、記載された、破断応力三軸度および破断限界ひずみの複数の結果から累乗関数等の近似曲線を引くことにより、破断限界線を導出する。このようにして特定した破断限界線の例を、図16に示す。
判定工程(以下において、「S25」と称することがある。)は、上記S24で得られた破断限界線と、接着継手の接着部における応力三軸度と、接着継手の接着部における相当塑性ひずみと、を比較することにより、接着部の破断判定を行う工程である。S25では、上記S24で得られた破断限界線が記載されている、縦軸を相当塑性ひずみとし横軸を応力三軸度とする座標平面上に、破断判定を行う接着継手の応力三軸度および相当塑性ひずみの履歴を、原点を継手引張開始点としてプロットする。そして、プロットが、破断限界線を越えない場合には破断していないと判定し、プロットが、破断限界線上または破断限界線を越える場合には破断していると判定することができる。また、上記S15と同様に、図10に示すように、汎用解析コードAbaqusのDamage機能等を利用して、接着継手の接着部における応力三軸度及び相当塑性ひずみを、継手引張過程の時系列で逐一評価して、破断限界線に到達すればその要素を削除しながら継手引張過程の計算を進めることにより、破断による剛性低下の影響を検討することができる。
また、作製した4種類の継手を図2(a)および図2(b)に示した形態で模擬した解析モデルを作成し、それぞれの解析モデルについて引張試験を模擬したFEM解析を行うことにより、4種類の継手の最大荷重を予測した。最大荷重の結果を表1に示す。表1において、「試験」は実際に引張試験を行った結果を意味し、「解析」はFEM解析の結果を意味する。
Claims (4)
- 有限要素法解析を用いた接着継手の破断予測方法であって、
前記接着継手の破断応力三軸度および前記接着継手の破断限界ひずみの関係を表す破断限界線と、前記接着継手の接着部における応力三軸度と、前記接着継手の接着部における相当塑性ひずみと、を比較することにより、前記接着部の破断判定を行う、接着継手の破断予測方法。 - 接着部にせん断が主体の負荷がかかる継手、および、接着部にはく離が主体の負荷がかかる継手、を対象にした引張試験を行うことにより、それぞれの継手の最大荷重を測定する、第1工程と、
前記引張試験と同条件の引張試験を模擬した有限要素法解析を行い、前記第1工程で測定された最大荷重と、前記有限要素法解析により得られた最大荷重とが一致する変位から破断変位を導出する、第2工程と、
前記破断変位における破断起点要素の、応力三軸度および相当塑性ひずみを算出し、算出した応力三軸度を破断応力三軸度とするとともに、算出した相当塑性ひずみを破断限界ひずみとする、第3工程と、
異なる形状の継手毎に算出した、前記破断応力三軸度および前記破断限界ひずみの結果を用いて、前記破断応力三軸度および前記破断限界ひずみの関係を表す破断限界線を導出する、第4工程と、を有し、
前記第4工程で導出された前記破断限界線を用いて、接着部の破断判定を行う、請求項1に記載の接着継手の破断予測方法。 - 有限要素法解析を用いた接着継手の破断予測方法であって、
前記接着継手の接着部を構成する接着剤を固めた試験片の破断応力三軸度および前記試験片の破断限界ひずみの関係を表す破断限界線と、前記接着継手の接着部における応力三軸度と、前記接着継手の接着部における相当塑性ひずみと、を比較することにより、前記接着部の破断判定を行う、接着継手の破断予測方法。 - 平行部が平滑形状である前記試験片、および、平行部が切欠付き形状である前記試験片、を対象にした引張試験を行うことにより、それぞれの試験片の最大荷重を測定する、最大荷重測定工程と、
前記引張試験と同条件の引張試験を模擬した有限要素法解析を行い、前記最大荷重測定工程で測定された最大荷重と、前記有限要素法解析により得られた最大荷重とが一致する変位から破断変位を導出する、破断変位導出工程と、
前記破断変位における破断起点要素の、応力三軸度および相当塑性ひずみを算出し、算出した応力三軸度を破断応力三軸度とするとともに、算出した相当塑性ひずみを破断限界ひずみとする、破断応力三軸度・破断限界ひずみ特定工程と、
異なる試験片毎に算出した、前記破断応力三軸度および前記破断限界ひずみの結果を用いて、前記破断応力三軸度および前記破断限界ひずみの関係を表す破断限界線を導出する、破断限界線導出工程と、を有し、
前記破断限界線導出工程で導出された前記破断限界線を用いて、前記接着部の破断判定を行う、請求項3に記載の接着継手の破断予測方法。
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