JP2017065076A - 印刷装置、印刷方法、及び印刷システム - Google Patents
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Abstract
【課題】布等の被印刷面に周期的な構造を有する媒体を用いる場合において、より適切な方法で印刷を行う。
【解決手段】媒体に対してインクジェット方式で印刷を行う印刷装置12であって、インクジェットヘッド102と、予め調色されたインクである事前調色インクをインクジェットヘッドへ供給するインク供給部104とを備え、少なくとも媒体における所定面積以上の領域を事前調色インクの色で塗り潰す場合、事前調色インクの色で塗り潰す領域である塗り潰し領域に対し、インクジェットヘッド102は、媒体に着弾したインク滴により媒体上に形成されるインクのドット間に隙間が生じないように、インク滴を吐出する。
【選択図】図1
【解決手段】媒体に対してインクジェット方式で印刷を行う印刷装置12であって、インクジェットヘッド102と、予め調色されたインクである事前調色インクをインクジェットヘッドへ供給するインク供給部104とを備え、少なくとも媒体における所定面積以上の領域を事前調色インクの色で塗り潰す場合、事前調色インクの色で塗り潰す領域である塗り潰し領域に対し、インクジェットヘッド102は、媒体に着弾したインク滴により媒体上に形成されるインクのドット間に隙間が生じないように、インク滴を吐出する。
【選択図】図1
Description
本発明は、印刷装置、印刷方法、及び印刷システムに関する。
従来、インクジェット方式で印刷を行うインクジェットプリンタが広く用いられている(例えば、非特許文献1参照。)。また、インクジェットプリンタにおいては、カラー印刷(カラープリント)を行う場合の色再現の方法として、Y(イエロー)、M(マゼンタ)、C(シアン)、K(ブラック)の4色等の複数色のインクを基本色(プロセスカラー)に用いる方法が広く用いられている。この場合、基本色の各色のインクのドットを媒体(メディア)上に近接して形成することで混色を行い、様々な色を表現する。また、この混色においては、各色のインクについて、単位面積に対して吐出するインク滴の密度や数、又はインク滴の容量等を変化させることにより、インクジェットヘッドからのインクの吐出量を変化させ、様々な明るさの中間調を表現する。そして、これらの組み合わせにより、フルカラーの表現を行う。
また、従来、事前に調色した特色のインクを用いて印刷を行う方法も知られている。この場合も、中間調の表現は、通常、インクジェットヘッドからのインクの吐出量を変化させることで行う。
インターネットURL http://www.mimaki.co.jp
従来のような方法で印刷を行う場合、媒体上に細かいドットが並べて形成されることにより、印刷後の印刷物の視認結果に影響が生じる場合がある。例えば、編み目を有する布(布地)のように、媒体の被印刷面に周期的な構造が存在する場合、インクのドットの並び方の周期と、編み目等の構造の周期等との関係により、モアレ等が発生する場合がある。
また、基本色の各色のインクのドットを媒体上に近接して形成することで様々な色を表現する場合、インク滴の着弾位置のズレ等により、色ブレが生じ、目的の色を表現できなくなる場合がある。特に、媒体の被印刷面に周期的な構造が存在する場合、その構造によりインク滴の着弾位置がわずかに変化して、色ブレ等が生じる場合がある。また、例えばモアレが発生している場合、モアレがゲインとなり、色ブレが強調される場合もある。
また、従来の方法で印刷を行う場合、単位面積あたりのインクの量は、着色する色や明るさ等により変化する。そのため、媒体上のインクの量は、位置によって変化することになる。そして、この場合、媒体へのインクの浸透量が媒体の位置によって変化し、印刷の品質に影響が生じるおそれがある。特に、例えば布の媒体のように、裏側にまでインクが浸透し得る媒体を用いる場合、裏側まで抜けるインクの量が位置によって変化し、裏側から見た印象が悪くなるおそれがある。
そのため、従来、例えば布等の被印刷面に周期的な構造を有する媒体等を用いる場合において、より適切な方法で印刷を行うことが望まれていた。そこで、本発明は、上記の課題を解決できる印刷装置、印刷方法、及び印刷システムを提供することを目的とする。
本願の発明者は、鋭意研究により、モアレの発生等を防ぐための構成として、少なくとも一定面積以上の領域に対して塗り潰しを行う場合において、インクのドットを隙間なく形成することを考えた。このように構成すれば、インクのドットの並び方の周期による影響を適切に抑えることができる。また、これにより、モアレの発生等を適切に抑えることができる。
また、様々な色や中間調の色を表現する場合にもインクのドットを隙間なく形成するための構成として、更に、YMCKの各色等のインクのドットを媒体上に形成する方法ではなく、印刷により表現しようとする色に合わせて予め調色された色のインクを用いることを考えた。この場合、事前に調色された色のインクを用いるため、着弾位置のズレ等により色ブレが生じることもない。
また、この場合、事前に調色された色のインクを用い、かつ、インクのドットを隙間なく形成することにより、例えば、単位面積あたりのインクの量を一定に保つことができる。また、媒体へのインクの浸透量が媒体の位置によって変化することもなくなる。すなわち、上記の課題を解決するために、本発明は、以下の構成を有する。
(構成1)媒体に対してインクジェット方式で印刷を行う印刷装置であって、インクジェット方式でインク滴を吐出するインクジェットヘッドと、印刷により媒体上で表現すべき色に合わせて予め調色されたインクである事前調色インクをインクジェットヘッドへ供給するインク供給部とを備え、少なくとも媒体における所定面積以上の領域を事前調色インクの色で塗り潰す場合、事前調色インクの色で塗り潰す領域である塗り潰し領域に対し、インクジェットヘッドは、媒体に着弾したインク滴により媒体上に形成されるインクのドット間に隙間が生じないように、インク滴を吐出する。
このように構成した場合、例えば、事前調色インクを用いることにより、媒体上で所望の色を適切に表現することができる。また、この場合、インクのドットを隙間なく形成して塗り潰しを行うことにより、例えば、ドットの並び方の周期による影響を適切に抑えることができる。また、これにより、モアレの発生等を適切に抑えることができる。そのため、このように構成すれば、例えば、インクのドットの並び方の周期による影響を適切に抑え、より適切な方法で印刷を行うことができる。
また、事前調色インクを用いることにより、着弾位置のズレ等により色ブレが生じること等も適切に防ぐことができる。更には、事前調色インクを用い、かつ、インクのドットを隙間なく形成することにより、例えば、単位面積あたりのインクの量を一定に保つことができる。また、これにより、媒体へのインクの浸透量について、媒体の位置によらず、一定に調整することができる。
尚、この構成において、所定面積以上の領域を事前調色インクの色で塗り潰す場合とは、例えば、塗り潰しの仕方によって視認結果に影響が生じ得る面積以上の領域を塗り潰す場合のことである。また、視認結果に影響が生じ得るとは、例えば、求まられる印刷の品質に対して問題が生じ得ることであってよい。また、塗り潰しの仕方による視認結果への影響とは、例えば、インクのドット間に隙間を生じさせるか否かによる視認結果への影響であってよい。
(構成2)媒体として、被印刷面に周期的な構造を有する媒体を使用する。被印刷面における構造の周期は、例えば、印刷の解像度に対応するピッチの1/10〜3倍程度であってよい。また、この周期は、印刷の解像度に対応するピッチの1/2〜2倍程度であってよい。
被印刷面に周期的な構造を有する媒体を使用する場合、その上に形成するインクのドットの間に隙間が存在すると、媒体の構造の周期性と、インクのドットの並び方の周期性とが重なることで、モアレ等の視認結果への影響が発生しやすくなる。これに対し、このように構成した場合、間に隙間が生じないように媒体上にインクのドットを形成することにより、インクのドットの並び方の周期性による影響を適切に抑えることができる。また、これにより、モアレの発生等を適切に抑えることができる。
(構成3)媒体は、布の媒体であり、周期的な構造は、布の編み目である。このように構成すれば、例えば、布の媒体を用いる場合において、モアレの発生等を適切に抑えることができる。
(構成4)インクジェットヘッドは、インクのドットの直径が印刷の解像度に対応するピッチの√2倍以上になる容量のインク滴を吐出する。このように構成すれば、例えば、インクのドットを隙間なく適切に形成することができる。
尚、インクのドットの直径は、印刷の解像度に対応するピッチの1.5倍以上にすることが好ましい。このように構成すれば、例えば、インクのドットを隙間なく、より適切に形成することができる。また、インクのドットの直径は、印刷の解像度に対応するピッチの1.8倍以上にすることがより好ましい。
また、インクのドットの直径が大きすぎると、単位面積あたりのインクの量が多くなりすぎるおそれもある。そのため、印刷の解像度に対応するピッチに対し、インクのドットの直径は、好ましくは1.5〜3倍程度、更に好ましくは1.8〜2.5倍程度である。
(構成5)インクジェットヘッドは、単位面積あたりのインク量が予め設定された一定量になるように、塗り潰し領域を塗り潰す。このように構成すれば、例えば、均一な塗り潰しをより適切に行うことができる。
(構成6)事前調色インクは、印刷により媒体上で表現すべき色の濃度に合わせて色の濃度が更に調整されたインクである。このように構成すれば、例えば、中間調の色を表現する場合にも、インクのドットを隙間なく形成して適切に塗り潰しを行うことができる。
(構成7)事前調色インクは、複数色の有彩色の色のインクを混合することで色が調整され、かつ、色の濃度を薄めるためのインクを更に混合することで色の濃度が調整されたインクである。この場合、色の濃度とは、例えば中間調の色の明るさである。このように構成すれば、例えば、事前調色インクの色及び明るさを適切に調整できる。
尚、複数色の有彩色の色のインクとしては、例えば、YMCKインク等を好適に用いることができる。複数色の有彩色の色のインクとしては、YMCKインクに加え、R(レッド)、G(グリーン)、及びB(ブルー)の各色のインクを更に用いてもよい。また、色の濃度を薄めるためのインクとしては、白色又はクリア色等の無彩色のインクを好適に用いることができる。
(構成8)色の濃度を薄めるためのインクは、無色で透光性のクリアインクである。このように構成すれば、例えば、事前調色インクの色の濃度を適切に調整できる。また、この場合、例えば、光を透過する性質(透光性)の事前調色インクを適切に調色することができる。
(構成9)色の濃度を薄めるためのインクは、白色のインクである。このように構成すれば、例えば、事前調色インクの色の濃度を適切に調整できる。また、この場合、例えば、光を透過しない性質(非透光性、不透明)の事前調色インクを適切に調色することができる。
(構成10)複数色の有彩色の色のインクと、色の濃度を薄めるためのインクとを用いて事前調整インクの調色を行うインク調色部を更に備える。このように構成すれば、例えば、事前調整インクの調色を適切に行うことができる。
(構成11)インク供給部は、インクジェットヘッドへ供給される事前調色インクを脱気する機能を有する。このように構成すれば、例えば、脱気されたインクをインクジェットヘッドへ適切に供給できる。また、これにより、インクジェットヘッドにおいて、インク滴の吐出をより安定して行うことができる。
(構成12)事前調色インクを用いて塗り潰し領域を塗り潰す動作に加え、互いに異なる複数の色のそれぞれのインク滴を媒体に吐出することでカラー印刷を行う動作を実行可能であり、媒体における予め設定された面積よりも小さな領域に対し、カラー印刷を行う動作を行う。
小さな領域への印刷であれば、複数の色のそれぞれのインク滴を媒体に吐出することでモアレや色ブレ等が発生しても、全体の印刷品質への影響は小さいと考えられる。そのため、このように構成すれば、例えば、事前調色インクによる塗り潰しに加え、必要に応じてカラー印刷を行うことにより、事前調色インクとは異なる色も使用して、多様な印刷をより適切に行うことができる。
尚、印刷装置は、例えば、ユーザによる動作モードの設定に応じて、事前調色インクを用いて一定の領域を塗り潰す動作や、カラー印刷を行う動作を実行することが好ましい。また、この場合、動作モードについて、例えば、求められる印刷品質に応じて設定することが好ましい。そのため、例えばモアレの発生等が問題にならない用途であれば、面積が大きな領域に対し、カラー印刷を行うことも考えられる。また、必要に応じて、小さい面積の領域に対し、事前調色インクでの塗り潰しを行ってもよい。
また、印刷装置は、例えば、事前調色インク用のインクジェットヘッドに加え、カラー印刷等のインクジェットヘッドを更に備えてよい。この場合、カラー印刷等のインクジェットヘッドとして、カラー印刷の基本色となる複数の色のそれぞれ(例えばYMCKの各色又はYMCKRGBの各色等)の色のインク滴をそれぞれ吐出する複数のインクジェットヘッドを備えることが好ましい。
(構成13)媒体に対してインクジェット方式で印刷を行う印刷方法であって、インクジェット方式でインク滴を吐出するインクジェットヘッドに対し、印刷により媒体上で表現すべき色に合わせて予め調色されたインクである事前調色インクを供給し、少なくとも媒体における所定面積以上の領域を事前調色インクの色で塗り潰す場合、事前調色インクの色で塗り潰す領域である塗り潰し領域に対し、インクジェットヘッドにより、媒体に着弾したインク滴により媒体上に形成されるインクのドット間に隙間が生じないように、インク滴を吐出する。このように構成すれば、例えば、構成1と同様の効果を得ることができる。
(構成14)媒体に対してインクジェット方式で印刷を行う印刷システムであって、インクジェット方式でインク滴を吐出するインクジェットヘッドと、印刷により媒体上で表現すべき色に合わせて予め調色されたインクである事前調色インクをインクジェットヘッドへ供給するインク供給部と、事前調色インクの調色を行うインク調色部とを備え、少なくとも媒体における所定面積以上の領域を事前調色インクの色で塗り潰す場合、事前調色インクの色で塗り潰す領域である塗り潰し領域に対し、インクジェットヘッドは、媒体に着弾したインク滴により媒体上に形成されるインクのドット間に隙間が生じないように、インク滴を吐出する。このように構成すれば、例えば、構成1と同様の効果を得ることができる。
本発明によれば、例えば布等の被印刷面に周期的な構造を有する媒体を用いる場合において、より適切な方法で印刷を行うことができる。
以下、本発明に係る実施形態を、図面を参照しながら説明する。図1は、本発明の一実施形態に係る印刷システム10の一例を示す。図1(a)は、印刷システム10の構成の一例を示す。以下に説明をする点を除き、本例の印刷システム10は、公知の印刷システムと同一又は同様の構成を有してよい。例えば、以下に説明をする点を除き、印刷システム10における印刷装置12等の各構成は、公知の印刷装置(インクジェットプリンタ)等と同一又は同様の特徴を有してよい。
また、本例において、印刷システム10は、印刷対象の媒体(メディア)50に対して印刷を行う印刷システムであり、例えば被印刷面に周期的な構造を有する媒体50に対し、絵柄や文字等を含む画像を印刷する。また、より具体的に、本例において、媒体50としては、例えば布(テキスタイル)の媒体(布帛等)を用いる。この場合、例えば布の編み目(繊維を構成する網目)が、媒体50における周期的な構造に相当する。また、印刷システム10は、例えば布製品を製造する工程において布の媒体50に対して印刷を行う装置のような、複数の媒体50に対して同じ画像を印刷する印刷システムであってよい。
尚、より一般化して考えた場合、媒体50の被印刷面における構造とは、例えば、媒体50の被印刷面に存在する微小な凹凸に起因する構造等であってよい。また、この構造の周期は、例えば、印刷の解像度に対応するピッチの1/10〜3倍程度であってよい。また、この周期は、印刷の解像度に対応するピッチの1/2〜2倍程度であってよい。
また、本例において、印刷システム10は、印刷装置12、画像制御PC16、及びインク調色部14を備える。印刷装置12は、媒体50に対してインクジェット方式で印刷を行うインクジェットプリンタであり、インクジェットヘッド102、インク供給部104、プラテン106、搬送機構108、及び制御部110を有する。また、より具体的に、本例において、印刷装置12は、布の媒体50に対して印刷を行うテキスタイルプリンタであってよい。
インクジェットヘッド102は、インクジェット方式でインク滴を吐出する印刷ヘッドである。インクジェットヘッド102は、例えば、予め設定された主走査方向へ移動しつつインク滴を吐出する主走査動作を行うことにより、媒体50の各位置へインク滴を吐出する。また、これにより、媒体50上にインクのドットを並べて形成する。この場合、インクのドットとは、媒体50に着弾したインク滴により媒体50上に形成されるインクのドットのことである。
また、本例において、インクジェットヘッド102は、予め調色されたインクである事前調色インクをインク供給部104から受け取り、事前調色インクのインク滴を吐出する。この場合、事前調色インクとは、印刷により媒体50上で表現すべき色に合わせてインク調色部14において予め調色されたインクである。
また、より具体的に、本例において、インクジェットヘッド102は、少なくとも媒体50における所定面積以上の領域を事前調色インクの色で塗り潰す場合、事前調色インクの色で塗り潰す領域である塗り潰し領域に対し、インクのドット間に隙間が生じないように、インク滴を吐出する。インクジェットヘッド102により形成するインクのドットの様子については、後に更に詳しく説明をする。
尚、インクジェットヘッド102において使用するインクの種類としては、公知の様々なインクを用いることが考えられる。この場合、使用する媒体50や求められる印刷品質等に合わせた特性のインクを用いることが好ましい。より具体的に、インクジェットヘッド102においては、水性染料インク、水性顔料インク、ラテックスインク、UV硬化インク、溶剤希釈UVインク(ソルベントUVインク)、無機顔料インク、熱硬化インク、熱反応インク等の様々なインクを用いることが考えられる。また、図示及び詳しい説明は省略したが、印刷装置12は、使用するインクに合わせて、媒体50にインクを定着させるために構成(例えば、ヒータ、紫外線光源等)を更に有することが好ましい。
インク供給部104は、事前調色インクをインクジェットヘッド102へ供給するための構成であり、インク調色部14において調色された事前調色インクを貯留する。また、貯留しているインクを、インクの流路を介して、インクジェットヘッド102へ供給する。
また、より具体的に、インク供給部104としては、例えば、事前調色インクが充填されたインクパックやインクタンク等を用いることが考えられる。また、インク供給部104として、インクの流路の途中に配設されるインク貯留部(中間パック等)を用いること等も考えられる。この場合、インク供給部104は、例えば、インクの流路を介してインク調色部14と接続され、インク調色部14から供給される事前調色インクを貯留する。また、本例において、インク供給部104は、例えば、水頭差を利用した水頭差方式でインクジェットヘッド102へ事前供給インクを供給する。この場合、インク供給部104は、例えば、鉛直方向においてインクジェットヘッド102よりも高い位置に配設される。
また、本例において、インク供給部104は、インクジェットヘッド102へ供給される事前調色インクを脱気する機能を有する。このように構成すれば、例えば、脱気されたインクをインクジェットヘッド102へ適切に供給できる。また、これにより、インクジェットヘッド102において、インク滴の吐出をより安定して行うことができる。インク供給部104においてインクを脱気するための構成については、後に更に詳しく説明をする。
また、インク供給部104について、より一般化して考えた場合、インクを貯留する容器(プリンタインク供給容器)と、脱気を行う構成(脱気部)とを有する部分と考えることもできる。この場合、インク供給部104は、少なくとも1色分の事前調色インクを保持し、インクジェットヘッド102へ供給する。また、印刷装置12の構成によっては、例えば、インクの流路(インク供給路)を含めた部分について、インク供給部104と考えることもできる。
プラテン106は、インクジェットヘッド102と対向する位置において媒体50を保持する台状部材である。本例において、プラテン106は、搬送機構108により搬送される媒体50の一部を上面に載置することにより、媒体50の一部をインクジェットヘッド102と対向させて保持する。また、搬送機構108は、媒体50を搬送する機構部であり、例えば主走査動作の合間に媒体50を搬送することにより、媒体50においてインクジェットヘッド102と対向する領域を順次変更する。
尚、本例において、媒体50としては、例えば、ロール状に巻かれた布の媒体を用いることが考えられる。この場合、搬送機構108は、例えば搬送方向の下流側で媒体50を巻き取ることにより、媒体50を搬送する。また、搬送機構108は、媒体50を搬送することにより、印刷装置12に副走査動作を実行させる。この場合、副走査動作とは、例えば、主走査方向と直交する副走査方向へ媒体50に対して相対的にインクジェットヘッド102を移動させる動作のことである。また、印刷装置12の構成の変形例においては、媒体50の位置を固定して、インクジェットヘッド102の側を移動させることで副走査動作を実行してもよい。
制御部110は、例えば印刷装置12のCPUであり、印刷装置12の各部の動作を制御する。制御部110は、例えば、プリント制御回路として機能する構成であってよい。また、本例において、制御部110は、画像制御PC16から受け取る指示に応じて、印刷装置12の各部の動作を制御する。これにより、印刷装置12は、画像制御PC16の指示に応じて、媒体50に対する印刷を実行する。
画像制御PC16は、印刷すべき画像を印刷装置12へ出力するコンピュータ(画像出力用パソコン)であり、例えばユーザの指示に応じて、印刷すべき画像を示すデータを印刷装置12へ出力する。また、画像制御PC16は、例えば、印刷装置12の動作を制御する各種の指示等をユーザから受け取り、指示に応じて印刷装置12の動作を制御する。
インク調色部14は、事前調色インクの調色を行う構成であり、印刷により媒体50上で表現すべき色に合わせて事前調色インクの調色を行う。また、本例においては、事前調色インクとして、色のみではなく、色の濃度(明るさ)についても調整がされたインクを用いる。この場合、色の濃度の調整とは、例えば、印刷により媒体50上で表現すべき色の濃度に合わせて事前調色インクの色の濃度を調整することである。
また、この場合、事前調色インクとして、複数色の有彩色の色のインクを混合することで色が調整され、かつ、色の濃度を薄めるためのインクを更に混合することで色の濃度が調整されたインクを用いることが考えられる。このように構成すれば、例えば、色及び濃度が適切に調整された事前調色インクを用いることができる。また、この場合、複数色の有彩色の色のインクとしては、例えば、Y(イエロー)、M(マゼンタ)、C(シアン)、K(ブラック)の各色のインク等を好適に用いることができる。また、この場合、有彩色の色のインクとして、R(レッド)、G(グリーン)、及びB(ブルー)の各色のインクを用いることが更に好ましい。
図1(b)は、インク調色部14の構成の一例を示す。本例において、インク調色部14は、複数のインク容器202、204、調合後インク容器206、重量測定部208、調色制御回路210、及び調色制御PC212を有する。
複数のインク容器202、204のうち、インク容器202は、色の濃度を薄めるためのインクを貯留する容器である。また、本例において、インク容器202は、色の濃度を薄めるためのインクとして、無色で透光性のクリアインク(CL)を貯留する。クリアインクを用いることにより、例えば、事前調色インクの色の濃度を適切に調整できる。また、この場合、より具体的に、光を透過する性質(透光性)の事前調色インクを適切に調色することができる。
複数のインク容器204は、色の調整用に用いる有彩色である基本色のインクをそれぞれ貯留する容器(調合インク容器)である。本例において、複数のインク容器204のそれぞれは、YMCKRGBの各色のインクを貯留する。
また、本例において、複数のインク容器202、204は、調色制御PC212の制御に応じて開閉するバルブを有しており、調色制御回路210の指示に応じて、調合後インク容器206へインクを供給する。また、これにより、複数のインク容器202、204のそれぞれは、調色制御回路210の指示により指定された量のインクを、調合後インク容器206へ供給する。
尚、色の濃度を薄めるためのインクとしては、クリアインクに限らず、例えば白色(W)のインク等を用いることも考えられる。このように構成すれば、例えば、光を透過しない性質(非透光性、不透明)の事前調色インクを適切に調色することができる。また、この場合、例えば、使用する媒体50の種類や、求められる印刷の品質に応じて、色の濃度を薄めるためのインクとして、クリアインク又は白色のインクの一方を選択すること等が考えられる。また、必要に応じて、色の濃度を薄めるためのインクとして、クリアインク又は白色のインクの両方を用いること等も考えられる。これらのように構成した場合も、例えば、事前調色インクの色の濃度を適切に調整できる。また、より一般化して考えた場合、色の濃度を薄めるためのインクとしては、明るい無彩色のインクを好適に用いることができるといえる。
また、インク調色部14は、更に他の色のインク用のインク容器を更に有してもよい。例えば、様々な特色(S)用のインク容器等を更に有してもよい。この場合、特色のインクとしては、基本色以外の任意の色(例えば、白色、メタリック色オレンジ色等)のインクを用いてよい。
調合後インク容器206は、事前調色インクの調色を行うための容器であり、複数のインク容器202、204のそれぞれから受け取るインクを混合することにより、インクの調色を行う。重量測定部208は、調合後インク容器206内のインクの重量を測定する計測手段であり、測定した重量を調色制御回路210へ伝えることにより、調色制御回路210による調色の制御を補助する。重量測定部208としては、例えば電子天秤等を好適に用いることができる。
調色制御回路210は、調色の動作を制御する制御回路であり、複数のインク容器202、204のそれぞれのバルブの開閉を制御することにより、複数のインク容器202、204のそれぞれから調合後インク容器206へ供給するインクの量を調整する。また、本例において、調色制御回路210は、調色制御PC212から受け取る指示に応じて、調色制御PC212により指定される色のインクを調整する。また、これにより、事前調色インクの調色を行う。
調色制御PC212は、事前調色インクの調色を制御するコンピュータであり、例えば媒体50に対して印刷する画像の色に合わせて、調色インクの調色の動作を制御する。調色制御PC212としては、例えば画像制御PC16を兼用して用いてもよい。
ここで、インク調色部14において事前調色インクを調色する方法について、更に詳しく説明をする。上記のように、本例のインク調色部14においては、調色に必要な基本色として、クリアインク、YMCKRGBの各色のインク等が、インク容器202、204に入れられて設置されている。また、必要に応じて、白色のインクや、特色のインクについても、インク容器に入れられて設置される。
また、この場合、各色のインクについて、容器部分、バルブ、通路(インクの流路)の全てが分離され、調色に使う色のインク以外とは混色を避ける構造になっている。また、調色制御回路210によりインク容器202、204の各バルブの開閉を制御することにより、各色毎に個別の調合用ディスペンサ機能を有する構成になっている。この場合、例えば、調合用ディスペンサ機能とは、例えば、調色制御回路210により指定された量のインクをバルブの開閉制御により調合後インク容器206へ供給する機能のことである。
そして、調色の実行時には、例えば、先ず、予め作成された色見本(色票)から、希望する色Aを選択する。そして、基本色(YMCKRGB等)のインク及びクリアインクや特色のインク等を含むインクの配合データaを得る。この場合、配合データaとは、例えば、各色のインクの配合比と、クリアインクで調整する濃度値とを示すデータである。また、より具体的に、配合データaは、例えば、Y、M、C、K、R、G、B、CL、Sの各色や、Y、M、C、K、CL、Sの各色の配合比を示すデータであってよい。また、色見本を用いる方法ではなく、例えば、実際の印画物の色Aを測色して、その色Aを示す配合データaを取得すること等も考えられる。
尚、後に更に詳しく説明をするように、本例においては、濃度が低い中間調の色について、インクのドットの密度(プリント密度)を低くする方法ではなく、使用するインク自体の色(濃度)を薄くして、一定のインク密度での塗り潰し(ベタプリント)を行う方法で表現する。そして、この場合、濃淡の再現色についてブレのない印刷を行うためには、クリアインク(CL)等の色の濃度を薄めるためのインクの使用が重要な役割を担っている。また、本例においては、基本色となる有彩色のインクとして、YMCKのみではなく、YMCKRGBの各色を用いることにより、様々な色をより高精彩に表現すること等が可能になる。
そして、その後、インクの配合データaに基づき、作成する予定の事前調色インクの量Xに合わせて、配合する基本色のインク等の各々の量を算出する。そして、重量測定部208により調合後インク容器206内のインクの量を管理しつつ、調色制御回路210でインク容器204の各バルブの開閉を制御することで動作するディスペンサの機能等により、インクの配合データaに応じた所定量ずつ、複数のインク容器204のそれぞれから調合後インク容器206へインクを取り出し、配合する。また、配合データaにおける濃度値に従ってインク容器202から調合後インク容器206へクリアインクを加え、色及び濃度が調整された最終的な事前調色インク(以下、配合インクaiとする)を調合する。
また、事前調色インクの調色時には、実際にテストプリントを行って、表現される色を確認することが好ましい。この場合、例えば、配合インクaiを用い、単位面積あたりのインクの量を100%又は所定のベタプリントを行うために十分な一定量に設定して、テストプリント用の媒体(メディア)への印刷を行う。そして、印刷結果を測色して、再現色Amを求める。
そして、希望する色Aと再現色Amとを比較し、予め決めた色差ΔEの範囲内にあれば、インクの調合完了とする。この場合、以後に再度同一色Aを得たい場合には、配合インクaiと同じインクの配合率を示す配合データaを用いれば、同一色のインクを再現できる。
また、ΔEが一定値を超えた場合には、色のズレを色Aの方へ戻すように、各色(YMCKRGBの7原色及びクリアインクや、YMCKの4原色及びクリアインク等)の1つ以上について増量又は減量して配合を調整し、再度の調色を行う。また、その後、印刷結果の測色やΔEの測定等を再度行う。また、これらの動作について、ΔEが一定値以内になるまで繰り返し、一定値以内になった場合に、調色の完了とする。このように構成すれば、例えば、事前調色インクの調色を適切に行うことができる。
ここで、上記において説明をした事前調色インクの調色は、例えば、インク調色部14において自動的に行うことが好ましい。また、調色のための判断や微調整等については、例えばユーザによる手動の操作により行うこと等も考えられる。
また、上記においては、主に、1色の事前調色インクのみを用いて印刷を行う場合の構成について、説明をした。この場合、例えば複数色を用いた画像を媒体50に描くためには、複数の印刷装置12を順番に用いて媒体50に対して印刷を行うことが考えられる。
しかし、印刷装置12においては、例えば、複数色の事前調色インクを用いて印刷を行うことも考えられる。この場合、印刷装置12は、例えば、インクジェットヘッド102及びインク供給部104等の構成について、使用する色数に合わせて複数組有してよい。このように構成すれば、例えば、複数の色を同時に用いて媒体50への印刷を行うことができる。また、これにより、媒体50への多様な印刷をより高速に行うことができる。また、この場合、画像制御PC16は、例えば、使用する事前調色インクの各色について、印刷すべき画像を示すデータを印刷装置12へ出力する。
また、上記においては、インク調色部14において用いるインクとして、特色(S)のインクも使用し得ることを説明した。しかし、白色以外の特色については、多くの場合、単独で使用することが多いと考えられる。そのため、そのような場合には、調色せずに、特色のインクを直接、印刷装置12へ供給してもよい。また、特に、オレンジ色、金赤色、パール色等のように、YMCKRGB等の基本色の混色では再現が難しい特色については、必要に応じて、事前調色インクとは別に用いることが考えられる。また、上記においても説明をしたように、白色のインクについては、例えば、事前調色インクとして不透明のカラーインクを作成した場合等に、クリアインクに代えて使用すること等が考えられる。
続いて、本例においてインクジェットヘッド102により形成するインクのドットの様子について、更に詳しく説明をする。先ず、説明の便宜上、従来の構成において生じる問題点等について、説明をする。
図2及び図3は、従来の構成において生じる問題であるモアレの発生について説明をする図である。図2は、モアレの発生についての第1のモデルを示す図であり、被印刷面に周期的な構造を有する媒体50上に周期的な模様を印刷した状態の例を示す。
また、より具体的に、図2に図示した場合においては、主走査動作時のインクジェットヘッドの移動方向をY軸方向とした場合において、Y軸方向と直交するX軸方向において空間周波数がF1になる周期的な構造を有する媒体50を用い、かつ、Y軸方向へ延伸する直線を空間周波数がF2になる周期でX軸方向へ並べて印刷した状態をモデル化して示す。この場合、X軸方法は、印刷装置12(図1参照)における媒体の搬送方向と平行な方向である。
また、図2(a)は、空間周波数F1=F2であり、かつ、媒体50の構造を示す線群と、描かれた直線の並びを示す線群とが同位相で完全に重なりあった状態を示す。このように、同一空間周波数のものが、同位相で重なりあった場合、モアレは発生しない。
これに対し、空間周波数F1、F2がずれた場合や、位相がずれた場合には、モアレが発生することになる。図2(b)は、両者の空間周波数F1、F2について、F1<F2(F2≒1.07F1)とずれた場合の様子の一例を示す。図2(c)は、両者の空間周波数が同一(F1=F2)であるが、逆位相で重なった場合の様子の一例を示す。これらの図からわかるように、空間周波数F1、F2がずれた場合や、位相がずれた場合には、モアレが発生する。
また、モアレは、例えば、媒体50における被印刷面の構造と、印刷される構造とが角度をずらして重なった場合にも発生する。図3は、モアレの発生についての第2のモデルを示す図であり、角度のズレの影響の例を示す。図3(a)は、媒体50の構造を示す線群の空間周波数F1と、描かれた直線の並びを示す線群の空間周波数F2とが同一(F1=F2)であり、かつ、角度のズレがない状態(θ=0°)で両者が重なった場合の様子の一例を示す。この場合、図2(a)に関連して説明した場合と同様に、モアレは発生しない。
図3(b)は、両者の空間周波数が同一(F1=F2)であるが、角度θ=2°だけずれて重なった場合の様子の一例を示す。この状態は、例えば、布の媒体等を用いる場合において、媒体の編み目方向と、印刷装置12におけるX軸又はY軸の方向がずれた場合に相当する。図からわかるように、このような場合にも、モアレが発生する。
以上の例からわかるように、モアレは、例えば、空間周波数のズレ、位相のズレ、重なる角度のズレ等が原因で発生する。そして、例えば従来の構成(例えば、従来のテキスタイルプリンタ等)で布の媒体等に印刷を行った場合、これらのズレは、常に生じる可能性が大きいといえる。
より具体的に、布地は、細い糸を編んだ構成を有しているため、編み目のピッチに相当する凹凸が周期的に存在することになる。そのため、このような凹凸の構造の空間周波数が、上記における空間周波数F1に相当する。
一方、インクジェットヘッドにおけるノズル列の解像度(ノズルピッチ)は、通常、マルチパス走査により所定の解像度を得るように設計される。より具体的に、この場合、例えば、ノズル列の解像度が150dpiのインクジェットヘッドを用いて、600dpiの解像度で印刷をすること等が考えられる。この場合、X軸方向に600dpiずつずらして4回で間を埋める方法でマルチパス走査を行い、高解像度化を行っている。
そして、具体的にはプリントの方法にもよるが、従来の通常の方法で中間調を印刷した場合、媒体上に形成されるインクのドット間の距離は、印刷の解像度(例えば600dpi)の整数分の1の空間周波数を有することになると考えられる。また、この場合、この空間周波数は、上記における空間周波数F2に相当する。
また、テキスタイルプリンタにおいて印刷の対象となる布の媒体(テキスタイル)の場合、この空間周波数F2や編み目のピッチがインクジェットヘッドにおけるノズル列の解像度(例えば、150dpi)に近い値になることが多い。そのため、この場合、F1−F2の差分によるモアレが発生しやすくなる。
また、従来の構成で印刷を行う場合、モアレの発生以外にも、様々な問題が生じるおそれがある。例えば、空間周波数F1とF2とが近い場合や、同一の場合、布を構成する糸の上にインク滴が着弾した場合と、糸間に着弾した場合とで、視認結果における色の濃度が変化すると考えられる。そのため、例えば、従来の構成でカラー印刷を行う場合のように、YMCKの各色のインク等を用いて中間調を含む画像を印刷する場合、各色のインクジェットヘッド間で着弾位置のズレが生じると、編まれた糸への着弾位置が変わり、YMCKの各色のバランスが変化することになる。また、その結果、色相も変化することになる。そのため、従来の方法で印刷を行う場合、色相の変化により、色ズレや濃度斑等が発生するおそれがある。
また、従来の構成で印刷を行う場合、単位面積あたりのインクの量は、色や濃度によって変化することになる。そのため、例えば布の媒体のように、裏側へインクが抜ける構成の媒体を用いる場合、裏側へ抜けるインクの量が色や濃度によって異なることになる。
このように、従来の方法で布の媒体等へ印刷を行う場合、モアレの発生や、色ズレ、濃度斑等の様々な問題が生じるおそれがある。これに対し、本例においては、モアレの発生のメカニズムの考察等に基づき、これらの問題を抑え得る構成を実現している。より具体的に、本例においては、事前調色インクを用い、かつ、インクのドット間に隙間が生じないように印刷を行うことにより、特定の空間周波数成分を持つ周期構造性を有する媒体を用いる場合にも、モアレの発生を適切に抑え得る構成を実現している。また、色ズレ、濃度斑等の発生を適切に抑えることで安定な色再現性を実現し、更に、裏側へインクが抜ける構成の媒体を用いる場合にも、裏側へ抜けるインクの量を適切に均一化し得る構成を実現している。そこで、以下、インクジェットヘッド102により形成するインクのドットの様子を説明して、本例の構成によりこれらの効果が得られる点について、更に詳しく説明をする。
上記においても説明をしたように、本例において、印刷装置12(図1参照)は、事前調色インクの色で塗り潰す塗り潰し領域に対し、インクのドット間に隙間が生じないように、インクのドットを並べて形成する。この場合、インクのドット間に隙間が生じないようにインクのドットを並べて形成するとは、例えば、インクのドットサイズについて、全ベタプリント時に媒体における塗り潰し領域を実質的に完全に覆うサイズに設定することである。また、全ベタプリントとは、例えば、全ての画素の位置にインクのドットを形成するように塗り潰しを行うことである。ドットサイズとは、例えば、媒体上に形成されるインクのドットの直径である。また、ドットの直径とは、例えば設計上の直径であってよい。また、塗り潰し領域を実質的に完全に覆うとは、例えば、求められる印刷品質に対して問題となるモアレの発生等を適切に抑え得るように塗り潰し領域を覆うことである。
また、この場合、より具体的に、インクジェットヘッド102は、例えば、インクのドットサイズが印刷の解像度(プリント解像度)に対応するピッチの√2倍以上(1.414倍以上)になる容量のインク滴を吐出する。この場合、解像度に対応するピッチとは、例えば、主走査方向や副走査方向において隣接する画素間の距離(解像度に応じて決まるプリント画素間ピッチ)のことである。このように構成すれば、例えば、インクのドットを全ての方向で連結させ、インクのドットを隙間なく適切に形成することができる。
また、実際の印刷装置12においては、例えば印刷装置12の動作の精度や、インクジェットヘッド102の吐出の精度等の影響により、着弾位置自体がある程度変動する場合もある。そのため、実用上、インクのドットサイズは、印刷の解像度に対応するピッチの1.5倍以上にすることが好ましい。また、ドットサイズは、印刷の解像度に対応するピッチの1.6倍以上にすることがより好ましい。また、ドットサイズは、印刷の解像度に対応するピッチの1.8倍以上にすることが更に好ましい。また、インクのドットサイズが大きすぎると、単位面積あたりのインクの量が多くなりすぎるおそれもある。そのため、印刷の解像度に対応するピッチに対し、ドットサイズは、好ましくは1.5〜3倍程度、更に好ましくは1.8〜2.5倍程度である。
図4は、インクのドットサイズDとトッドの並び方との関係について説明をする図であり、印刷の解像度に対応するピッチPと、ドットサイズDとの大小関係を様々に異ならせた場合について、全ベタプリントを行った状態を示す。図4(a)、(b)は、ドットサイズDを小さくした場合のドットの並び方の一例を示す。図4(a)は、ドットサイズDをピッチPよりも小さくした場合(D=0.6P)のドットの並び方の一例を示す。図からわかるように、ドットサイズDがピッチPよりも小さい場合、主走査方向(Y軸方向)や副走査方向(X軸方向)において、ドット間に隙間が生じることになる。また、これらの方向のみならず、斜め方向(対角線方向)においても、隙間が生じる。そのため、様々な斜め方向(例えば45°、30°、60°等)に沿って見た場合にも、間に隙間を空けて並ぶ周期的なドット配置が現れることになる。従って、この場合、様々な方向において、インクのドットは、間に隙間を空けた周期性のパターンで並ぶことになる。
図4(b)は、ドットサイズDをピッチPと等しくした場合(D=P)のドットの並び方の一例を示す。この場合、主走査方向及び副走査方向におけるドットの最大径の部分では、隣接するドットが接続する。そのため、このような部分のみに着目した場合、濃度の周期性がなくなるともいえる。しかし、この場合も、このような部分を通る中心線からずれた他の部分においては、インクのドット間に隙間が生じることになる。また、その結果、主走査方向及び副走査方向において、間に隙間を空けた周期性のパターンが発生する。また、様々な斜め方向においても、図4(a)に示した場合と同様に、間に隙間を空けた周期性のパターンが発生する。従って、この場合も、様々な方向において、インクのドットは、間に隙間を空けた周期性のパターンで並ぶことになる。そして、図4(a)、(b)に示した場合のように、間に隙間を空けた周期性のパターンでインクのドットが並ぶ場合、このパターンの空間周波数成分と、布の媒体における織り目の空間周波数成分等との関係により、図2及び図3を用いて説明をした場合と同様にして、モアレの発生や、色ブレ、濃度ブレ等の問題が生じることになる。
これに対し、本例においては、上記のように、ドットサイズDを十分に大きくすることで、インクのドット間に隙間が生じないように、インクのドットを並べて形成する。図4(c)は、ドットサイズDを十分に大きくした場合のドットの並び方の一例を示す図であり、ドットサイズDをピッチPよりも十分に大きくした場合(D=1.5P)のドットの並び方の一例を示す。
この場合、対角線方向におけるドット間の距離よりもドットサイズDが大きくなるため、斜め方向を含めたいずれの方向に沿って見た場合にも、ドット間に隙間は生じない。また、その結果、間に隙間を空けて並ぶドットのパターンも発生しない。そして、この場合、図2及び図3を用いて説明をしたモアレの発生の原理等からも明らかなように、被印刷面に周期的な構造を有する媒体(例えば、顕著な特定の空間周波数成分を有する布の媒体等)を用いたとしても、インクのドットの並び方が特定の空間周波数成分を有さないため、モアレの発生の問題は生じない。また、同様に、媒体の被印刷面の構造に起因する様々な問題についても、適切に抑えることができる。
また、上記においても説明をしたように、本例においては、インクのドットを隙間なく適切に形成することに加え、事前調色インクを用いることにより、モアレも発生等の問題をより適切に抑えている。これは、例えば従来と同様の方法でカラー印刷を行った場合、インクのドットサイズを大きくしても、中間調の表現時等にモアレの発生等の問題が生じるおそれがあるためである。
より具体的に、例えばフルカラーでのカラー印刷(フルカラープリント)を行う場合、各色を様々な濃度(明るさ)で表現するために、媒体上において、各色の中間調を表現する必要がある。これに対し、通常のインクジェットプリンタにおいては、ドットサイズを連続的に変化させることはできない。そのため、従来と同様の方法でカラー印刷を行う場合、濃い色のYMCKインクを用いて中間調を表現するためには、単位面積あたりに形成するインクのドットの数(ドット密度)を異ならせる必要がある。しかし、この場合、ドット密度を小さくすると、インクのドット間に隙間が生じることになる。また、その結果、インクのドットの並び方に周期性が生じ、モアレの発生等の問題が生じるおそれがある。
図5は、中間調の表現の仕方について説明する図である。また、図中において、(a0)〜(a4)は、従来と同様の方法での中間調の表現の仕方の一例を示す。(b0)〜(b4)は、本例の方法での中間調の表現の仕方の一例を示す。また、これらのいずれにおいても、インクのドットサイズDは、ピッチPの1.5倍(1.5P)とした。
例えば、(a0)は、従来のYMCKインク等の濃色のインクのいずれか(例えば黒色のインク)を用いて全ベタプリントを行った状態を示す拡大図である。この場合、全ベタプリントとは、上記においても説明をしたように、例えば、全ての画素の位置にインクのドットを形成するように塗り潰しを行うことである。また、より具体的に、図示した場合において、全ベタプリントとは、例えば、印字ドット数比率が100%になるように印刷を行うことである。この場合、印字ドット数比率とは、例えば解像度に応じて設定される画素の位置のうち、インクのドットが形成される位置の割合のことである。
また、(a1)〜(a4)は、ドットの密度を小さくすることで中間調を表現した状態を示す拡大図である。より具体的に、(a1)は、印字ドット数比率50%となるようにドットの密度を低下させた状態を示す。(a2)は、印字ドット数比率25%となるようにドットの密度を低下させた状態を示す。(a3)は、印字ドット数比率12.5%となるようにドットの密度を低下させた状態を示す。(a4)は、印字ドット数比率6.25%となるようにドットの密度を低下させた状態を示す。これらの図からわかるように、ドットの密度を変えることで中間調を表現する方法の場合、明るい色を表現するために印字ドット比率を低下させると、ドット間の距離が離れ、周期性のあるドットの配置が現れることになる。また、その結果、モアレの発生や色ズレ等の問題が生じるおそれがある。
これに対し、例えばランダムディザや誤差拡散等の方法を用い、ドットの配置を変化させること等も考えられる。しかし、この場合も、ドット自体の基本ピッチは一定(例えば、600dpiで印刷を行う場合には、1/600インチで一定)であるため、空間周波数が偏ることを避けることは難しい。そのため、この場合も、モアレの発生や色ズレ等の問題を十分に防ぐことは難しい。
これに対し、本例においては、事前調色インクとして、例えばクリアインク等を用いて調色を行うことで、色のみではなく、濃度も含めて調色したインクを用いる。そのため、この場合、中間調を表現する場合にも、インクのドットの密度を変化させる必要はない。
より具体的に、本例において、インクジェットヘッド102(図1参照)は、単位面積あたりのインク量が予め設定された一定量になるように、塗り潰し領域を塗り潰す。また、この場合、中間調を含めた様々な濃度の色を表現する場合にも、図中の(b0)〜(b4)に示すように、表現すべき中間調に合わせて調色された濃度のインクを用いて、全ベタプリントを行う。このように構成すれば、例えば、均一な塗り潰しをより適切に行うことができる。
そして、この場合、図から明らかなように、中間調の濃度に関係なく、媒体上において、インクのドットは、完全に連結して一体化する。また、その結果、特定の空間周波数成分(媒体の被印刷面の構造と干渉する空間周波数成分等)を有さなくなり、布の媒体の編み目の空間周波数成分等との干渉も生じない。そのため、本例によれば、モアレの発生や色ブレ等の問題を原理的に適切に抑えることができる。
続いて、本例における印刷装置12等のより具体的な構成について、説明をする。上記のように、本例においては、インクのドットを隙間なく適切に形成することに加え、事前調色インクを用いることにより、モアレの発生等の問題をより適切に抑えている。また、このような方法で印刷を行うために、インク調色部14(図1参照)において、事前調色インクの調色を行う。
しかし、例えば図1を用いて説明をした方法等により事前調色インクの調色を行う場合、調色中にインクが一旦空気に触れるため、事前調色インクには酸素や窒素等の気体が、溶解又は気泡として含まれることになる。そして、この場合、事前調色インクをそのままインクジェットヘッド102で用いると、インクジェットヘッド102内等で気泡が発生し、吐出不良等の原因になるおそれがある。そのため、事前調色インクについては、少なくとも、インクジェットヘッド102内で生じる負圧のレベルでは大きな気泡を発生しないように、予め脱気(又は脱泡)を行うことが好ましい。これに対し、本例においては、上記においても説明をしたように、インク供給部104において事前調色インクの脱気を行う。
図6は、インク供給部104において脱気を行う方法の一例を示す。図6(a)、(b)は、脱気機能を有するインク供給部104の構成の一例を示す垂直断面図及び水平断面図である。図6(c)、(d)は、インク供給部104におけるバルブ410及びバルブ412の構成の一例を示す拡大図である。本例において、インク供給部104は、インク供給口302、インク出口304、インクパック306、及び脱気機構308を有する。
インク供給口302は、インクパック306内にインクを充填する場合に用いる供給口である。本例において、インク供給口302は、例えば、予めインクパック306にインクを充填する場合に空けられ、充填後に閉じられる。また、これにより、印刷装置12による印刷の動作時において、インク供給口302は閉栓状態になる。インク出口304は、インクジェットヘッド102へ供給するインクの出口である。
インクパック306は、インクジェットヘッド102へ供給するインクを貯留する容器であり、インク調色部14(図1参照)において予め調色された事前調色インクを貯留する。また、本例において、インクパック306は、内部のインクの量に応じて容積が変化する容器であり、容積の変化により、内部のインクの圧力を大気圧と釣り合った状態に維持する。また、これにより、インク供給部104は、水頭差方式により、インクパック306からインクジェットヘッド102へインクを供給する。
脱気機構308は、インクパック306内のインクを脱気するための機構である。本例において、脱気機構308は、ワインのストッパーの原理を応用した基本構造により脱気を行う減圧脱気手段であり、フィルタ402、空気室404、空気流路406、圧力調整部408、バルブ410、及びバルブ412を有する。
フィルタ402は、液体を通さずに気体のみを通過させるフィルタであり、インクパック306内において、空気室404の周囲を囲むように袋状に配設される。また、より具体的に、本例において、フィルタ402は、インクの表面張力によりインクは通さず、かつ、空気のみを通過させる大きさの穴が多数形成された膜状のフィルタ(隔膜)であり、一方の面を空気室404の側に向け、他方の面のみがインクパック306内のインクと接するように、インクパック306内に配設される。これにより、フィルタ402は、インクパック306内のインクに含まれる空気成分を空気室404へ向けて通過させる。フィルタ402における穴の直径は、例えば1〜20μm程度、好ましくは、1〜10μm程度である。また、フィルタ402としては、例えば多数の微細孔を形成したメッシュ状の樹脂(例えばポリエステルやナイロン等のメッシュ等)や、メッシュ状の金属(例えばSUS)を好適に用いることができる。
空気室404は、フィルタ402により囲まれる空間部分である。また、本例において、空気室404は、圧力調整部408により、インクパック306内のインクよりも低い圧力に減圧される。このように構成すれば、例えば、インク中の空気成分のみにフィルタ402の穴を通過させ、インク中の空気を空気室404へ取り出すことができる。空気流路406は、空気室404と圧力調整部408とを接続する空気の流路であり、例えば空気室404を減圧する場合に、空気室404内の空気を圧力調整部408へ向かって移動させる。
圧力調整部408は、空気室404内の圧力を調整するための手段であり、可撓性部材502、圧力板504、復帰バネ506、及び空気室508を有する。可撓性部材502は、可撓性の膜状部材であり、圧力調整部408における空間部分である空気室508の少なくとも一部の壁面を構成する。圧力板504は、空気室508の側から可撓性部材502と接する板状部材であり、復帰バネ506の付勢力に応じて、空気室508を広げる方向へ可撓性部材502を押圧する。復帰バネ506は、空気室508の外側へ向けて圧力板504を付勢する付勢部材である。空気室508は、バルブ412及び空気流路406を介して空気室404とつながる空間部分であり、バルブ410の開閉動作や空気室508による付勢力により大気圧よりも低い圧力に減圧される。また、減圧された状態でバルブ412及び空気流路406を介して空気室404と接続されることにより、空気室404内を減圧する。
バルブ410は、空気室508と圧力調整部408の外部(大気圧)とを接続するバルブであり、空気室508内の圧力が大気圧よりも低い減圧時に閉じ、空気室508内の圧力が大気圧よりも高い加圧時に開くように動作する。また、バルブ412は、空気室508と空気室404とを接続するバルブであり、空気室508内の圧力が空気室404内の圧力よりも高い加圧時に閉じ、空気室508内の圧力が空気室404内の圧力よりも低い減圧時に開くように動作する。
このように構成した場合、インクパック306内のインクの脱気を行うためには、先ず、可撓性部材502越しに圧力板504を押すことで復帰バネ506の付勢力に抗する向きの力を加える。これにより、空気室508内の圧力を高め、空気室508内の空気をバルブ410から外部に放出する。そして、その後に手を離すと、復帰バネ506の付勢力により、空気室508内の圧力は、大気圧より低くなる。また、空気室508内の圧力の低下に応じて、バルブ412が開き、空気室404内も減圧される。
そして、空気室404内が減圧されると、インクパック306内のインクに含まれる空気成分は、フィルタ402の穴を介して、空気室404へ移動する。そのため、このように構成すれば、例えば、インクパック306内のインクの脱気を適切に行うことができる。
また、この場合、復帰バネ506の付勢力等を適宜設定することにより、例えばインクパック306内のインクを使用する間、復帰バネ506が圧力板504を付勢する状態を維持することができる。また、これにより、例えば、減圧後の気圧を維持する負圧維持機構として脱気機構308を機能させ、一定の期間の間、インクを脱気する状態を維持することができる。
ここで、本例の構成により得られる効果について、更に詳しく説明をする。上記においても説明をしたように、本例においては、例えば、事前調色インクを用いることにより、媒体上で所望の色を適切に表現することができる。また、この場合、インクのドットを隙間なく形成して塗り潰しを行うことにより、例えば、ドットの並び方の周期による影響を適切に抑えることができる。また、この場合、所定の色及び濃度に調色された事前調色インクを用いることにより、中間調の色を表現する場合を含め、全ベタプリントによる着色を行うことができる。また、これにより、モアレの発生等をより適切に抑えることができる。
また、事前調色インクを用い、かつ、インクのドットを隙間なく形成して塗り潰しを行うことにより、例えば、着弾位置のズレ等により色ブレが生じること等も適切に防ぐことができる。また、この場合、モアレがゲインとなって強調される色ブレ等も発生しないため、極めて安定した色再現性を実現することもできる。
また、事前調色インクを用いることにより、例えば、使用する印刷装置12の機種や印刷装置12の製造ロットが変わることで印刷装置12の動作特性等が変化した場合にも、同じ色を適切に表現することができる。そのため、この点でも、印刷される色の再現性を適切に高めることができる。
また、事前調色インクを用い、かつ、インクのドットを隙間なく形成して塗り潰しを行うことにより、例えば、単位面積あたりのインクの量を一定に保つこともできる。また、これにより、例えば布等の媒体へのインクの浸透量について、媒体の位置によらず、一定に調整することができる。
また、本例によれば、例えば、インクジェットヘッド102において、脱気されたインクを適切に用いることができる。また、これにより、インクジェットヘッド102により、安定したインク滴の吐出をより適切に行うことができる。
また、より具体的に、図6に示した構成の場合、例えば、圧力調整部408において復帰バネ506を用いて減圧や負圧を維持する構成により、ユーザの手動操作でインクの脱気を行い得る構成を実現している。そして、この場合、印刷システム10(図1参照)に組み込まれた脱気のための構成により、印刷装置12を使用する現場においてユーザ自身により簡単に脱気を行うことが可能になる。そのため、本例によれば、簡単な構成により、印刷装置12におけるインクの容器に充填後のインクの脱気を適切に行うことができる。
続いて、本例の構成に対する様々な変形例について、説明をする。図7は、インク供給部104において脱気を行う方法の他の例を示す。
インク供給部104において減圧等を行うための具体的な構成としては、図6に示した構成に限らず、様々な他の構成を用いてもよい。図7(a)、(b)は、脱気機能を有するインク供給部104の構成の他の例を示す垂直断面図及び水平断面図である。図7(c)、(d)は、インク供給部104におけるバルブ410及びバルブ412の構成の一例を示す拡大図である。尚、以下に説明をする点を除き、図7において、図6と同じ符号を付した構成は、図6における構成と、同一又は同様の特徴を有してよい。
図7に示した変形例においては、圧力調整部408について、図6に示した構成と異ならせている。本変形例において、圧力調整部408は、注射器タイプの構成でピストンを往復運動させることでバルブ410とバルブ412とを交互に開閉させる構成を有しており、この動作により、空気室508や空気室404を減圧する。
また、より具体的に、圧力調整部408は、ピストン512、シリンダ514、復帰バネ506、及び空気室508を有する。ピストン512及びシリンダ514は、注射器状の部分を構成するピストン及びシリンダ(筒状部)である。復帰バネ506は、ピストン512を押し出す方向へ付勢する付勢手段である。また、空気室508は、注射器状の部分の内部においてピストン512とシリンダ514との間に形成される空間である。また、図6に示した構成と同様に、本例においても、空気室508は、バルブ410を介して、圧力調整部408の外部とつながっている。また、空気室508は、バルブ412及び空気流路406を介して、空気室404とつながっている。
また、バルブ410及びバルブ412は、空気室508内の圧力に応じて、図6に示した構成と同様に開閉する。そのため、本変形例においても、図6に示した構成と同様に、手動による簡易な構成を用いて、空気室404の減圧や減圧状態の維持を適切に行うことができる。また、これにより、例えば、インクパック306内のインクの脱気を適切に行うことができる。
また、インクを脱気するための構成としては、図6及び図7に示した構成に限らず、更に他の構成を用いてもよい。例えば、圧力調整部408の構成として、手動により簡易に脱気を行う構成に代えて、電動真空ポンプ等を用いて脱気を行う構成を用いてもよい。また、この場合、例えば、間歇駆動ポンプ等を用いた構成を用いること等が考えられる。
また、上記においては、主に、インクの容器(インクパック306)内のインクを脱気する構成について、説明をした。このように構成すれば、簡単な構成で適切にインクの脱気を行うことができる。また、この点に関し、印刷システム10の構成によっては、例えば、インクの残量検出やインク交換の警報発信を行う目的等により、インクの流路に沿って複数の位置にインクの容器を設ける場合もある。その場合、例えば、いずれのインクの容器の位置で脱気を行ってもよい。
また、印刷システム10の用途等によっては、例えば、公知の脱気モジュール等を用いて脱気を行ってもよい。また、例えば、インク調色部14において事前調色インクの調色を行った後、印刷装置12におけるインクの容器に事前調色インクを充填する前に、インクの脱気を十分に行うこと等も考えられる。この場合、予め脱気動作を必要な時間だけ行い、脱気度が十分に高まったことを確認した後、印刷装置12におけるインクの容器に充填することが好ましい。また、インクの脱気は、例えばインク調色部14において行ってもよい。また、インクの脱気は、例えば専用の遠心分離機や真空パッキング装置等の専用機を用いて行ってもよい。
図8は、印刷装置12の構成の変形例を示す図であり、インクの流路に沿って複数の位置にインクの容器を配設した場合の構成の一例を示す。尚、以下に説明をする点を除き、図8において、図1〜7と同じ符号を付した構成は、図1〜7における構成と、同一又は同様の特徴を有してよい。
本変形例において、印刷装置12は、図1等を用いて説明をしたインク供給部104よりも更に上流側に、他のインクパック124を更に有する。また、インク供給部104及びインクパック124は、インクを脱気するための構成をそれぞれ有する。尚、図8においては、図示の便宜上、インクを脱気するための構成(脱気手段)を省略して図示している。インクを脱気するための構成としては、例えば図6又は図7を用いて説明をした構成等を好適に用いることができる。
本変形例において、インクパック124は、印刷装置12におけるインクの流路の最上流部でインクを貯留するインク容器である。インクパック124は、例えば交換可能に印刷装置12に取り付けられる容器(交換インクパック)であり、予めインクが充填された状態で、印刷装置12に取り付けられる。また、インクの充填時には、印刷装置12から取り外された状態で、例えば図中に下側部分の口栓からインクが充填される。また、更なる変形例において、インクパック124は、例えば、外部のインク供給装置と接続される容器であってもよい。
また、本変形例において、インク供給部104は、インクパック124とインクジェットヘッド102との間に配設され、インクパック124から供給されるインクを、インクジェットヘッド102へ供給する。また、これにより、印刷装置12において、インク供給部104は、中間パックとして機能する。この場合、インク供給部104におけるインクパック306等は、印刷装置12において静止している部分に配設されることが好ましい。
また、インク供給部104は、インクパック306内のインクの量を検知する機能を有することが好ましい。このように構成すれば、例えば、上流側のインクパック124内のインクがなくなること(インクエンド)を適切に検知できる。また、これにより、例えば、必要に応じてインクパック124の交換又はインクの充填を行い、印刷装置12に長時間の連続運転をさせることができる。
また、図示した場合、上記のように、インクパック124及びインク供給部104の両方において、インクの脱気を行う。このように構成すれば、例えば、インクの脱気をより確実に行うことができる。また、更なる変形例においては、インクパック124又はインク供給部104のいずれか一方においてインクの脱気を行ってもよい。
また、図8に図示した構成において、インク供給部104は、圧力調整器122を介してインクジェットヘッド102と接続されている。圧力調整器122は、インクジェットヘッド102へのインクの供給圧力を調整するための構成である。圧力調整器122としては、例えば公知の圧力ダンパ等を好適に用いることができる。また、圧力ダンパとして、例えば袋方式の圧力ダンパや、蛇腹方式の圧力ダンパ等を好適に用いることができる。
図8のように構成した場合も、インクの脱気を適切に行うことができる。また、これにより、事前調色インクを用いた印刷を適切に行うことができる。更には、事前調色インクを用い、かつ、インクのドットを隙間なく形成することにより、モアレの発生等を抑えることができる。
また、印刷システム10や印刷装置12の構成等については、更なる様々な変形を行うことも考えられる。例えば、図1等においては、図示及び説明の便宜上、圧力調整器122を省略して印刷装置12の構成を図示している。しかし、図1〜7を用いて説明をした構成においても、図8に図示した構成と同一又は同様に、圧力調整器122を更に用いることが好ましい。このように構成すれば、例えば、水頭差方式でインクジェットヘッドに供給されるインクの供給圧力を一定の範囲に適切に保つことができる。
また、上記においては、インク調色部14に関し、主に、印刷装置12とは別の構成とする場合について説明をした。しかし、印刷システム10の構成の変形例においては、例えば、印刷装置12の一部としてインク調色部14を配設することも考えられる。また、反対に、例えば、上記において説明をした印刷装置12の構成の一部を印刷装置12とは別の構成として、印刷装置12の外部に配設すること等も考えられる。より具体的には、例えば、インク供給部104の全体又は一部について、印刷装置12とは別の構成として配設すること等も考えられる。
また、上記においては、説明の便宜上、主に、印刷装置12が1個のインクジェットヘッド102を有する場合について、説明をした。しかし、印刷システム10及び印刷装置12の構成の変形例において、印刷装置12は、複数のインクジェットヘッド102を有してもよい。この場合、複数のインクジェットヘッド102のそれぞれは、例えば、互いに異なる色のインク滴を吐出する。
より具体的に、この場合、複数のインクジェットヘッド102のそれぞれに、互いに異なる色に調色された事前調色インクを吐出させることが考えられる。このように構成すれば、例えば、複数色の事前調色インクを1台の印刷装置12で用いることで、多様な印刷を高速に行うことができる。また、この場合、印刷システム10は、例えば、互いに異なる色の事前調色インクを調色する複数のインク調色部14を有してよい。また、例えば、一のインク調色部14を用いて、複数色の事前調色インクを順番に調色してもよい。
また、印刷装置12が複数のインクジェットヘッド102を有する場合、一部のインクジェットヘッド102において、事前調色インク以外のインクを用いること等も考えられる。より具体的に、印刷装置12においては、例えば、事前調色インクを用いた塗り潰しの動作に加え、例えば媒体50の一部における狭い領域等に対し、YMCKRGBの各色(又はYMCKの各色)のインク等を用いて、カラー印刷等を行ってもよい。また、この場合、印刷装置12は、事前調色インク用にインクジェットヘッド102に加え、カラー印刷用の複数のインクジェットヘッドを更に有してよい。
尚、上記においても説明をしたように、本例においては、事前調色インクを用い、インクのドットを隙間なく形成して塗り潰しを行うことにより、モアレの発生等を抑えている。しかし、上記のようなカラー印刷の動作を更に実行した場合、モアレの発生等が問題になるようにも思われる。
この点について、例えば小さな領域への印刷であれば、カラー印刷の動作で複数の色のそれぞれのインク滴を媒体に吐出することでモアレや色ブレ等が発生しても、全体の印刷品質への影響は小さいと考えられる。そのため、この場合、例えば、媒体における予め設定された面積よりも小さな領域へ印刷を行う場合にカラー印刷を行う動作を選択可能とすることが好ましい。このように構成すれば、例えば、事前調色インクによる塗り潰しに加え、必要に応じてカラー印刷を適切に行うことができる。また、これにより、事前調色インクとは異なる色も使用して、多様な印刷をより適切に行うことができる。
また、この場合も、例えば背景色の領域等の一定面積以上の同色の部分については、事前調色インクを用いて、全ベタプリント等により、ドット間に隙間が生じないように塗り潰しを行うことが好ましい。このように構成すれば、例えば、面積が大きい領域について、モアレの発生等の原因となる空間周波数成分が発生しないように適切に着色を行うことができる。また、この場合、より具体的には、図1〜8を用いて説明をした場合と同一又は同様にして、少なくとも、インクのドット間の連結部に隙間がなくなるように、解像度に応じて決まるドットのピッチよりもドットサイズ(ドット径)が十分に大きくなるようにして、一定の密度以上の高密度で塗り潰すように印刷をすることが好ましい。
また、このようにしてカラー印刷を更に行う場合、カラー印刷用のインクとしては、上記のように、YMCKRGBの各色のインクを用いることが好ましい。このように構成すれば、例えば、高精彩なカラー印刷を適切に行うことができる。また、例えば、単位面積あたりに吐出するインクの量について、100%以下に抑えつつ、様々な色を適切に表現できる。また、これにより、例えば、インクの使用量を低減し、ランニングコストを節約することができる。また、単位面積あたりのインクの量を低減することにより、インクの滲みの発生を抑えることができる。また、これにより、高速な印刷をより適切に行うこともできる。
また、カラー印刷用のインクとして、各色のライト色のインクを更に用いてもよい。このように構成すれば、例えば、中間色をより適切に表現して、フルカラーの印刷をより適切に行うことができる。また、カラー印刷用のインクとして、例えばRGBの各色のインクを省略して、YMCKの各色のインクを用いてもよい。
また、印刷装置12は、例えば、ユーザによる動作モードの設定に応じて、事前調色インクを用いて一定の領域を塗り潰す動作や、カラー印刷を行う動作を実行することが好ましい。また、この場合、動作モードについて、例えば、求められる印刷品質に応じて設定することが好ましい。そのため、例えばモアレの発生等が問題にならない用途であれば、面積が大きな領域に対し、カラー印刷を行うことも考えられる。また、必要に応じて、小さい面積の領域に対し、事前調色インクでの塗り潰しを行ってもよい。また、このようにしてカラー印刷を行う場合、画像制御PC16(図1参照)は、印刷すべき画像を示すデータとして、例えば、カラー印刷のために使用する各色(例えばYMCKRGBの各色)毎に分版したデータを印刷装置12へ出力する。また、事前調色インクとは異なる色用のインクジェットヘッドとしては、例えば、特色用のインクジェットヘッドを用いることも考えられる。
また、上記においては、主に、布の媒体に対して印刷を行う場合について、説明をした。しかし、印刷装置12においては、布以外の媒体を用いることも考えられる。この場合も、例えば被印刷面に周期的な構造を有する媒体を用いれば、布の媒体を用いる場合と同一又は同様にして、モアレの発生等の問題が生じると考えられる。より具体的に、媒体としては、例えば、被印刷面の縞等が形成されたプラスチックの媒体等を用いることも考えられる。また、その他にも、被印刷面に微細な凹凸等の周期構造を有する様々な媒体を用いることも考えられる。このような媒体を用いる場合にも、事前調色インクを用い、インクのドットを隙間なく形成して塗り潰しを行うことにより、モアレの発生等を適切に抑え、高い色再現性の印刷を適切に行うことができる。
本発明は、例えば印刷装置に好適に用いることができる。
10・・・印刷システム、12・・・印刷装置、14・・・インク調色部、16・・・画像制御PC、50・・・媒体、102・・・インクジェットヘッド、104・・・インク供給部、106・・・プラテン、108・・・搬送機構、110・・・制御部、122・・・圧力調整器、124・・・インクパック、202・・・インク容器、204・・・インク容器、206・・・調合後インク容器、208・・・重量測定部、210・・・調色制御回路、212・・・調色制御PC、302・・・インク供給口、304・・・インク出口、306・・・インクパック、308・・・脱気機構、402・・・フィルタ、404・・・空気室、406・・・空気流路、408・・・圧力調整部、410・・・バルブ、412・・・バルブ、502・・・可撓性部材、504・・・圧力板、506・・・復帰バネ、508・・・空気室、512・・・ピストン、514・・・シリンダ
Claims (14)
- 媒体に対してインクジェット方式で印刷を行う印刷装置であって、
インクジェット方式でインク滴を吐出するインクジェットヘッドと、
印刷により前記媒体上で表現すべき色に合わせて予め調色されたインクである事前調色インクを前記インクジェットヘッドへ供給するインク供給部と
を備え、
少なくとも前記媒体における所定面積以上の領域を前記事前調色インクの色で塗り潰す場合、前記事前調色インクの色で塗り潰す領域である塗り潰し領域に対し、前記インクジェットヘッドは、前記媒体に着弾したインク滴により前記媒体上に形成されるインクのドット間に隙間が生じないように、インク滴を吐出することを特徴とする印刷装置。 - 前記媒体として、被印刷面に周期的な構造を有する媒体を使用することを特徴とする請求項1に記載の印刷装置。
- 前記媒体は、布の媒体であり、
前記周期的な構造は、布の編み目であることを特徴とする請求項2に記載の印刷装置。 - 前記インクジェットヘッドは、前記インクのドットの直径が印刷の解像度に対応するピッチの√2倍以上になる容量のインク滴を吐出することを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の印刷装置。
- 前記インクジェットヘッドは、単位面積あたりのインク量が予め設定された一定量になるように、前記塗り潰し領域を塗り潰すことを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載の印刷装置。
- 前記事前調色インクは、印刷により前記媒体上で表現すべき色の濃度に合わせて色の濃度が更に調整されたインクであることを特徴とする請求項1から5のいずれかに記載の印刷装置。
- 前記事前調色インクは、複数色の有彩色の色のインクを混合することで色が調整され、かつ、色の濃度を薄めるためのインクを更に混合することで色の濃度が調整されたインクであることを特徴とする請求項6に記載の印刷装置。
- 前記色の濃度を薄めるためのインクは、無色で透光性のクリアインクであることを特徴とする請求項7に記載の印刷装置。
- 前記色の濃度を薄めるためのインクは、白色のインクであることを特徴とする請求項7に記載の印刷装置。
- 前記複数色の有彩色の色のインクと、前記色の濃度を薄めるためのインクとを用いて前記事前調整インクの調色を行うインク調色部を更に備えることを特徴とする請求項7から9のいずれかに記載の印刷装置。
- 前記インク供給部は、前記インクジェットヘッドへ供給される前記事前調色インクを脱気する機能を有することを特徴とする請求項1から10のいずれかに記載の印刷装置。
- 前記事前調色インクを用いて前記塗り潰し領域を塗り潰す動作に加え、
互いに異なる複数の色のそれぞれのインク滴を前記媒体に吐出することでカラー印刷を行う動作を実行可能であり、
前記媒体における予め設定された面積よりも小さな領域に対し、前記カラー印刷を行う動作を行うことを特徴とする請求項1から11のいずれかに記載の印刷装置。 - 媒体に対してインクジェット方式で印刷を行う印刷方法であって、
インクジェット方式でインク滴を吐出するインクジェットヘッドに対し、
印刷により前記媒体上で表現すべき色に合わせて予め調色されたインクである事前調色インクを供給し、
少なくとも前記媒体における所定面積以上の領域を前記事前調色インクの色で塗り潰す場合、前記事前調色インクの色で塗り潰す領域である塗り潰し領域に対し、前記インクジェットヘッドにより、前記媒体に着弾したインク滴により前記媒体上に形成されるインクのドット間に隙間が生じないように、インク滴を吐出することを特徴とする印刷方法。 - 媒体に対してインクジェット方式で印刷を行う印刷システムであって、
インクジェット方式でインク滴を吐出するインクジェットヘッドと、
印刷により前記媒体上で表現すべき色に合わせて予め調色されたインクである事前調色インクを前記インクジェットヘッドへ供給するインク供給部と、
前記事前調色インクの調色を行うインク調色部と
を備え、
少なくとも前記媒体における所定面積以上の領域を前記事前調色インクの色で塗り潰す場合、前記事前調色インクの色で塗り潰す領域である塗り潰し領域に対し、前記インクジェットヘッドは、前記媒体に着弾したインク滴により前記媒体上に形成されるインクのドット間に隙間が生じないように、インク滴を吐出することを特徴とする印刷システム。
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