JP2017064619A - 流体浄化装置 - Google Patents

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Yukihiko Ishibashi
行彦 石橋
雅也 近藤
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雅也 近藤
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浩志 宮本
陽子 大西
Yoko Onishi
陽子 大西
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Yui Okamoto
結 岡本
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Abstract

【課題】ハニカム構造を有するケミカルフィルタを使用しながら、ハニカム構造部分の浄化能力が十分であり、且つ、ハニカム構造部分の浄化能力を長期間維持できる流体浄化装置を提供する。
【解決手段】三次元網目構造、プリーツ構造、及び充填構造からなる群より選択される少なくとも一種の構造を有するケミカルフィルタ(A)、並びにハニカム構造のケミカルフィルタ(B)をこの順に有することを特徴とする流体浄化装置。前記流体浄化装置は、前記ケミカルフィルタ(B)の下流側に、さらに、三次元網目構造、プリーツ構造、及び充填構造からなる群より選択される少なくとも一種の構造を有するケミカルフィルタ(A2)を有することが好ましい。
【選択図】なし

Description

本発明は、流体を浄化するための装置に関する。また、本発明は、該装置を用いた流体浄化方法に関する。
半導体製造プロセスの露光工程において、ヘキサメチルジシラザン(HMDS)のようなジシラザン化合物が、フォトレジスト密着剤として使用されることが知られている。HMDSは、例えばガスとしてウエハ表面に吹き付けられることにより、ウエハ表面の水酸基をトリメチルシラノール基に置換させることで、ウエハ表面を疎水化させて、ウエハ表面のレジスト剤との密着性を向上させている。しかし、HMDSは加水分解して低分子量物のトリメチルシラノール(TMS)となり、露光設備内にガス状で浮遊することがある。浮遊したTMSは、レンズ等の表面に結合してレンズ曇りの原因となり、露光障害等を引き起こすおそれがある。
このため、露光工程が行われる露光設備のチャンバ内部には、通常、TMS等のシラノール化合物を除去するために、活性炭等の吸着剤を有するケミカルフィルタが用いられている。このようなケミカルフィルタとしては、通気性が良好であり圧力損失が少ない観点から、ハニカム構造のケミカルフィルタが用いられることがある(例えば、特許文献1参照)。
特開平11−333226号公報
しかしながら、上記のようなハニカム構造のケミカルフィルタでは、それぞれ独立した孔の中を空気が抜けていくため、三次元網目構造のケミカルフィルタよりもハニカムフィルタ内では空気が拡散しにくいという問題があった。また、ケミカルフィルタが設置される配管やダクト内は、空気の流れにバラツキがあるため、流速が速い部分のみの吸着剤が消費される。この場合、例えば吸着剤を備えたケミカルフィルタでは、ケミカルフィルタ全体として吸着剤が消費されていなくても吸着効果が低下することにより、ケミカルフィルタ全体としても早期に除去性能が低下することになる。さらに、圧力配管のライン中に設けられたケミカルフィルタ(圧力配管用ケミカルフィルタ)においては、通気する空気の流量が大きく、このような用途に用いる場合は特に上記の問題が顕著であった。
従って、本発明の目的は、ハニカム構造を有するケミカルフィルタを使用しながら、ハニカム構造部分の浄化能力が十分であり、且つ、ハニカム構造部分の浄化能力を長期間維持できる流体浄化装置を提供することを目的とする。
本発明者らは、上記目的を達成するため鋭意検討した結果、ハニカム構造部分の上流側に、三次元網目構造部分が設けられたケミカルフィルタとすることにより、たとえ圧力配管用に用いた場合であっても、ハニカム構造を有するケミカルフィルタを使用しながら、ハニカム構造部分の浄化能力が十分であり、且つ、ハニカム構造部分の浄化能力が長く維持できることを見出した。本発明は、これらの知見に基づいて完成させたものである。
すなわち、本発明は、三次元網目構造、プリーツ構造、及び充填構造からなる群より選択される少なくとも一種の構造を有するケミカルフィルタ(A)、並びにハニカム構造のケミカルフィルタ(B)をこの順に有することを特徴とする流体浄化装置を提供する。
前記流体浄化装置は、前記ケミカルフィルタ(B)の下流側に、さらに、三次元網目構造、プリーツ構造、及び充填構造からなる群より選択される少なくとも一種の構造を有するケミカルフィルタ(A2)を有することが好ましい。
前記ケミカルフィルタ(A)は、三次元網目構造であることが好ましい。
前記流体浄化装置は、配管用ケミカルフィルタであることが好ましい。
前記ケミカルフィルタ(B)は、純水と混合させて得られる水混合物(含有割合:5wt%)のpHが7以下である無機シリカ系多孔質材料を吸着剤として用いた有機ケイ素化合物除去用ケミカルフィルタであることが好ましい。
前記ケミカルフィルタ(A)は、前記有機ケイ素化合物除去用ケミカルフィルタの有機ケイ素化合物除去能を低下させる阻害物質を除去する阻害物質除去用ケミカルフィルタであることが好ましい。
また、本発明は、前記流体浄化装置を用いて流体中の汚染物質を除去することを特徴とする流体浄化方法を提供する。
本発明の流体浄化装置によれば、流体が通過する際、上流側のケミカルフィルタ(A)によって乱流が生じることによるものと推測されるが、該ケミカルフィルタ(A)の下流側のハニカム構造のケミカルフィルタ(B)と流体との接触確率が向上するため、ハニカム構造を有するケミカルフィルタを使用しながら、ハニカム構造部分の浄化能力が十分であり、且つ、ハニカム構造部分の浄化能力を長期間維持できる。また、このような効果は、上記流体浄化装置を圧力配管用に用いた場合であっても得られる。
さらに、ハニカム構造のケミカルフィルタ(B)の下流側にさらにケミカルフィルタ(A)を有する本発明の流体浄化装置によれば、上流側のケミカルフィルタ(A)で生じた乱流が、ハニカム構造のケミカルフィルタ(B)で整流される。これにより、さらに下流側のケミカルフィルタ(A2)には、除去される物質の濃度分布のバラツキが少なく、流速のバラツキが少ない流体が通過するため、該ケミカルフィルタ(A2)に部分的な浄化能力の低下が起こりにくく、ケミカルフィルタの浄化能力を長期間維持できる。
本発明の流体浄化装置は、三次元網目構造、プリーツ構造、及び充填構造からなる群より選択される少なくとも一種の構造を有するケミカルフィルタ(A)、並びにハニカム構造のケミカルフィルタ(B)をこの順に有する。なお、本明細書において、上記「三次元網目構造、プリーツ構造、及び充填構造からなる群より選択される少なくとも一種の構造を有するケミカルフィルタ(A)」を、単に「ケミカルフィルタ(A)」と称する場合がある。また、上記「ハニカム構造のケミカルフィルタ(B)」を、単に「ケミカルフィルタ(B)」と称する場合がある。本発明の流体浄化装置は、ケミカルフィルタ(A)及びケミカルフィルタ(B)以外のケミカルフィルタを有していてもよい。
(ケミカルフィルタ(A))
ケミカルフィルタ(A)は、三次元網目構造、プリーツ構造、及び充填構造からなる群より選択される少なくとも一種の構造を有するケミカルフィルタである。ハニカム構造のケミカルフィルタ(B)の上流にケミカルフィルタ(A)が設けられていることにより、本発明の流体浄化装置では、流体がハニカム構造よりも先に三次元網目構造、プリーツ構造、又は充填構造に衝突することにより、乱流が生じるものと推測される。これにより、三次元網目構造、プリーツ構造、又は充填構造を通過した流体において流れのバラツキが少なくなるため、下流側のハニカム構造のケミカルフィルタと流体との接触効率が高くなる。また、ハニカム構造全体で流体浄化が行われる。
ケミカルフィルタ(A)における三次元網目構造としては、例えば、ポリウレタンフォーム等から構成される発泡体や、ガラス繊維(グラスウール等)やロックウール繊維、あるいは有機繊維や無機繊維等の繊維から構成される繊維状基材(織布あるいは不織布)の繊維を立体的に加工して作製した網目構造体のフィルタ基材を有する構造、あるいは針状繊維化されたポリテトラフルオロエチレンなどが好ましく例示される。なお、上記繊維状基材としては、後述するものなどが挙げられる。
ケミカルフィルタ(A)におけるプリーツ構造には、例えば、限られたスペースの中でろ過面積を効率的に拡大することを目的として、波形あるいはV字型が連続するように加工されたジャバラ形状を有する構造が含まれる。
ケミカルフィルタ(A)における充填構造は、例えば、ペレット化された吸着剤を、流体(特に、気体)が内部を通過できる構造のケーシング内に充填した構造が挙げられる。また、吸着剤の粉末の粒径が、ケーシング内で保持できる程度に大きい粒径を有する場合は、上記ペレットの代わりに、ペレット化せず、粉末のままでもケーシング内に充填した構造とすることもできる。
中でも、ケミカルフィルタ(A)としては、三次元網目構造を有するケミカルフィルタ(特に、三次元網目構造のケミカルフィルタ)であることが好ましい。
ケミカルフィルタ(A)としては、三次元網目構造、プリーツ構造、及び充填構造からなる群より選択される少なくとも一種の構造を有するものであれば特に限定されず、公知乃至慣用の三次元網目構造、プリーツ構造、又は充填構造を有するケミカルフィルタを使用することができる。このようなケミカルフィルタとしては、例えば、吸着剤やイオン交換樹脂を有するフィルタ、フィルタ基材そのものが吸着作用を有するものなどが挙げられる。また、上記吸着剤は、酸性物質、塩基性物質、酸化剤等の添着剤が添着されていてもよく、添着剤が添着されていなくてもよい。また、上記イオン交換樹脂としては、ケミカルフィルタに用いられる公知乃至慣用の酸性、塩基性等のイオン交換樹脂が使用できる。上記吸着剤、イオン交換樹脂、及びフィルタ基材は、一種のみを使用してもよく、二種以上を組み合わせて使用してもよい。
上記吸着剤としては、ケミカルフィルタに用いられる公知乃至慣用の吸着剤が使用でき、例えば、活性炭;粘土鉱物;アルミナ;ゼオライト(例えば、合成ゼオライト、天然ゼオライト等)、シリカ、ガラス、シリカゲル、シリカアルミナ、ケイ酸アルミニウム、多孔質ガラス、珪藻土、含水ケイ酸マグネシウム質粘土鉱物(例えば、タルク)、アロフェン、イモゴライト、酸性白土、活性白土、活性ベントナイト、メソポーラスシリカ、アルミノケイ酸塩、ヒュームドシリカ、フライアッシュ、クリンカアッシュ等の無機シリカ系多孔質材料などが挙げられる。
上記添着剤としての塩基性物質としては、ケミカルフィルタに用いられる公知乃至慣用の塩基性の添着剤が使用でき、例えば、エタノールアミン、ポリエチレンイミン、アニリン、P−アニシジン、スルファニル酸等のアミン系化合物、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸グアニジン、リン酸グアニジン、アミノグアニジン硫酸塩、5,5−ジメチルヒダントイン、ベンゾグアナミン、2,2−イミノジエタノール、2,2,2−ニトロトリエタノール、エタノールアミン塩酸塩、2−アミノエタノール、2.2−イミノジエタノール塩酸塩、p−アミノ安息香酸、スルファニル酸ナトリウム、L−アルギニン、メチルアミン塩酸塩、セミカルバジド塩酸塩、ヒドラジン、ヒドロキノン、硫酸ヒドロキシルアミン、過マンガン酸塩、炭酸カリウム、炭酸水素カリウムなどが挙げられる。上記塩基性物質の添着剤は、一種のみを使用してもよく、二種以上を組み合わせて使用してもよい。
上記添着剤としての酸性物質としては、ケミカルフィルタに用いられる公知乃至慣用の酸性の添着剤が使用でき、例えば、硫酸銅(II)(CuSO4)、硫酸鉄(II)(FeSO4)、硫酸鉄(III)(Fe2(SO43)、硫酸アルミニウム(Al2(SO43)、硫酸水素カリウム(KHSO4)等の硫酸塩;硝酸鉄(III)(Fe(NO33)、硝酸銀(AgNO3)、硝酸アルミニウム(Al(NO33)、硝酸マンガン(II)(Mn(NO32)等の硝酸塩;硫酸、リン酸、ホスホン酸等の無機酸;クエン酸等の有機酸などが挙げられる。上記酸性物質の添着剤は、一種のみを使用してもよく、二種以上を組み合わせて使用してもよい。
(ケミカルフィルタ(B))
ケミカルフィルタ(B)は、ハニカム構造のケミカルフィルタである。ケミカルフィルタ(B)におけるハニカム構造には、いわゆる蜂の巣状の構造の他、例えば、断面が格子状、円形状、波形状、多角形状、不定形状、全部あるいは一部に曲面を有する形状などであって、流体(特に、空気)が構造体の要素となるセルを通過し得る構造が全て含まれる。
上記ハニカム構造としては、例えば、コルゲート加工によって成形されたコルゲート状のシートと平坦状のシートが交互に積層して得られる構造(コルゲート状ハニカム構造)、プリーツ形状のシートと平坦状のシートからなる構造であって、通気方向に対して、プリーツ形状のシートと直角に平坦状のシートを順に積層した構造などが挙げられる。
ハニカム構造を有するケミカルフィルタとしては、例えば、繊維状基材を用いたフィルタ基材がコルゲート状ハニカム構造を有するケミカルフィルタ、繊維状基材を用いたフィルタ基材が蜂の巣状の構造を有するケミカルフィルタ、アルミニウム等の金属製のフィルタ基材が蜂の巣状の構造を有するケミカルフィルタなどが挙げられる。
ケミカルフィルタ(B)としては、ハニカム構造を有するものであれば特に限定されず、公知乃至慣用のハニカム構造のケミカルフィルタを使用することができる。このようなケミカルフィルタとしては、例えば、吸着剤やイオン交換樹脂を有するフィルタ、フィルタ基材そのものが吸着作用を有するフィルタなどが挙げられる。上記イオン交換樹脂としては、ケミカルフィルタに用いられる公知乃至慣用の酸性、塩基性等のイオン交換樹脂が使用できる。また、上記吸着剤としては、ケミカルフィルタに用いられる公知乃至慣用の吸着剤が使用でき、特に限定されないが、上述のケミカルフィルタ(A)が有していてもよい吸着剤として例示及び説明された吸着剤(添着剤により添着された吸着剤も含む)が挙げられる。上記吸着剤、イオン交換樹脂、及びフィルタ基材は、一種のみを使用してもよく、二種以上を組み合わせて使用してもよい。
[本発明の流体浄化装置]
本発明の流体浄化装置は、ケミカルフィルタ(A)、ケミカルフィルタ(B)の順に流体が通過するような構成であれば特に限定されない。本発明の流体浄化装置は、ケミカルフィルタ(A)及びケミカルフィルタ(B)以外のケミカルフィルタ(「その他のケミカルフィルタ」と称する場合がある)を有していてもよい。上記その他のケミカルフィルタとしては、ハニカム構造、三次元網目構造、プリーツ構造、及び充填構造以外の構造のケミカルフィルタが挙げられる。上記その他のケミカルフィルタの位置は、特に限定されず、ケミカルフィルタ(A)の上流、ケミカルフィルタ(A)とケミカルフィルタ(B)の間、ケミカルフィルタ(B)の下流のいずれであってもよい。
本発明の流体浄化装置において、ケミカルフィルタ(A)及びケミカルフィルタ(B)の数は、それぞれ、1以上であれば特に限定されない。また、本発明の流体浄化装置において、ケミカルフィルタ(A)が複数である場合、複数のケミカルフィルタ(A)としては、一種のみを用いてもよいし二種以上を用いてもよい。また、本発明の流体浄化装置において、ケミカルフィルタ(B)が複数である場合、複数のケミカルフィルタ(B)としては、一種のみを用いてもよいし二種以上を用いてもよい。さらに、各ケミカルフィルタを複数有する場合、本発明の流体浄化装置において、ケミカルフィルタ(A)及びケミカルフィルタ(B)がこの順に有する構成を少なくとも一つ有していればよい。
本発明の流体浄化装置は、中でも、ケミカルフィルタ(A)、ケミカルフィルタ(B)の下流側に、さらにケミカルフィルタ(A)を有することが好ましい。なお、この場合における、上流側のケミカルフィルタ(A)を、「ケミカルフィルタ(A1)」と称する場合があり、下流側のケミカルフィルタ(A)を、「ケミカルフィルタ(A2)」と称する場合がある。
上記ケミカルフィルタ(A1)と上記ケミカルフィルタ(A2)は、同一のケミカルフィルタであってもよいし、異なるケミカルフィルタ(例えば、吸着剤の組成が異なるケミカルフィルタ)であってもよい。
本発明の流体浄化装置は、特に、配管用ケミカルフィルタであることが好ましく、高圧配管用ケミカルフィルタであることがより好ましい。配管用ケミカルフィルタ(高圧配管用ケミカルフィルタを含む)は、配管(ライン)中に設けること(インライン)により、ラインを通過する流体を浄化するためのケミカルフィルタである。流体をユニット内で断面方向に広がりやすくするために、上記配管用ケミカルフィルタの配管(ユニット)において、流体の入り口は、配管用ケミカルフィルタに繋がるラインの太さからユニットの太さまで徐々に広がる構造をしており、出口は、ユニットの太さからラインの太さまで徐々に狭くなる構造をしているものが知られている。しかしながら、このような構造の配管用ケミカルフィルタであっても、筒状のユニットの断面の全面にハニカム構造のケミカルフィルタ(特に、濾材)が詰められていても、ユニットの入り口から出口まで最短距離で流体が流れるため、ハニカム構造の濾材の一部のみしか流体が通過しない。そうすると、濾材の一部のみが消費されるため、流体が通過しない部分が全く消費されていなくても濾材を新品に取り替えなければならず、その結果濾材としての寿命が短くなる。また、配管用ケミカルフィルタは、濾材を設置するスペースが限られているため、複数の濾材を有する場合、複数の濾材間の距離が短かったり、流体の流入口から濾材までの間隔が短い傾向がある。従って、本発明の流体浄化装置を配管用ケミカルフィルタとして用いることにより、本発明の流体浄化装置の効果がよりいっそう発揮される。
上記配管用ケミカルフィルタとしては、例えば、筒状(例えば、円筒状、角筒状等)等の配管の内部の一部に濾材が詰められたケミカルフィルタが挙げられる。なお、濾材が詰められている部分においては、浄化する流体全てが濾材を通過するように、筒状の配管の断面の全面に濾材が詰められていることが好ましい。上記配管用ケミカルフィルタは、圧力配管中に好ましく用いることができる。
なお、配管用ケミカルフィルタにおけるケミカルフィルタ(B)のハニカム構造は、上記コルゲート状ハニカム構造を、コルゲート形状が見える方向が流体の通過方向となるように打ち抜いた濾材であってもよいし、コルゲート状のシートと平坦状のシートが積層されたシートを丸めた濾材であってもよい。上記丸めた濾材は、コルゲート状のシートが内向きとなるように丸められていてもよいが、濾材のクッション性を向上させ、配管内への設置のしやすさ及びリーク防止性(濾材と配管との隙間を流体が通過することを防止する特性)の観点から、外向きとなるように丸められていてもよい。また、上記打ち抜いた濾材を用いた場合も、濾材のクッション性が向上し、配管内への設置のしやすさ及びリーク防止性が向上する。
配管用ケミカルフィルタにおいて、各ケミカルフィルタ(濾材)は、通気性の袋体(メッシュコップ、不織布等)に収納されていることが好ましい。この場合、リーク防止性が優れ、また、吸着剤の脱落による下流側への汚染を防ぐことができる。また、各ケミカルフィルタは、それぞれが袋体に収納されていてもよいし、複数のケミカルフィルタが一つの袋体に収納されていてもよい。
本発明の流体浄化装置において、各ケミカルフィルタ(例えば、ケミカルフィルタ(A)、ケミカルフィルタ(B)等)は、隔離して配置されていてもよいし、接触(例えば、積層)して配置されていてもよい。隔離して配置されている場合、隔離の間隔は特に限定されないが、例えば、1m以下が好ましく、より好ましくは50cm以下、さらに好ましくは10cm以下、特に好ましくは5cm以下であり、積層していることが最も好ましい。特に、ケミカルフィルタ(A)とケミカルフィルタ(B)の間の距離が長いほど、ケミカルフィルタ(A)を通過した流体が、流れ方向とは垂直方向(例えば、配管用ケミカルフィルタにおける断面方向)に拡散する距離を確保しやすいため、流体がケミカルフィルタ(B)に到達する時点では既に拡散しており、流体がハニカム構造全体を通過しやすい。しかしながら、本発明の流体浄化装置においては、ケミカルフィルタ(A)とケミカルフィルタ(B)の間隔が短い場合(特に、積層している場合)であっても、ケミカルフィルタ(A)の下流で乱流が発生するため、流体がハニカム構造全体を通過できる。
本発明の流体浄化装置において、ケミカルフィルタ(A)は、中でも、ケミカルフィルタ(B)の流体浄化性能を低下させる阻害物質を除去する阻害物質除去用ケミカルフィルタであることが好ましい。
本発明の流体浄化装置は、有機ケイ素化合物の除去に特に効果を発揮できる観点から、有機ケイ素化合物除去用に用いられることが好ましい。なお、本明細書において、有機ケイ素化合物除去用に用いられる本発明の流体浄化装置を、「本発明の有機ケイ素化合物除去装置」と称する場合がある。
上記有機ケイ素化合物としては、シラノール化合物、シロキサン化合物が好ましい。上記有機ケイ素化合物除去用ケミカルフィルタは、シラノール化合物のみを除去するものであってもよいし、シロキサン化合物のみを除去するものであってもよいし、両方を除去するものであってもよい。上記有機ケイ素化合物は、揮発性を有するものが好ましい。
上記シラノール化合物は、R4-nSi(OH)nで表されるように、シラノール基(−Si−OH)を少なくとも有する化合物である。上記nは、1〜3の整数である。上記Rは、水素原子;フッ素原子、塩素原子等のハロゲン原子;置換基を有していてもよい炭化水素基(好ましくはアルキル基、より好ましくは炭素数1〜3のアルキル基)などが挙げられる。なお、Rが複数ある場合、複数のRのうちの2以上が同一であってもよいし、それぞれが異なっていてもよい。また、上記シラノール化合物は、揮発性を有するものが好ましい。上記シラノール化合物としては、特に、トリメチルシラノール(TMS)が好ましい。
上記シロキサン化合物は、分子内にSi−O−Si骨格を少なくとも有する化合物である。シロキサン化合物としては、例えば、環状シロキサン化合物(例えば、ヘキサメチルシクロトリシロキサン、オクタメチルシクロテトラシロキサン、デカメチルシクロペンタシロキサン等のD3〜D20の環状シロキサン化合物等)、直鎖状シロキサン化合物(例えば、ヘキサメチルジシロキサン、オクタメチルトリシロキサン、デカメチルテトラシロキサン等のケイ素原子数が2〜20の直鎖状シロキサン化合物等)、分岐鎖状シロキサン化合物などが挙げられる。中でも、環状シロキサン化合物、直鎖状シロキサン化合物が好ましい。また、シロキサン化合物は、揮発性を有するものが好ましい。
[有機ケイ素化合物除去装置]
本発明の有機ケイ素化合物除去装置におけるケミカルフィルタ(B)としては、特に限定されないが、純水と混合させて得られる水混合物(含有割合:5wt%)のpHが7以下である無機シリカ系多孔質材料を吸着剤として用いた有機ケイ素化合物除去用ケミカルフィルタであることが好ましい。また、この場合、ケミカルフィルタ(A)は、有機ケイ素化合物除去用ケミカルフィルタであるケミカルフィルタ(B)の有機ケイ素化合物除去能を低下させる阻害物質を除去する阻害物質除去用ケミカルフィルタであることが好ましい。
<有機ケイ素化合物除去用ケミカルフィルタ>
上記有機ケイ素化合物除去用ケミカルフィルタは、純水と混合させて得られる水混合物(含有割合:5wt%)のpHが7以下である無機シリカ系多孔質材料を吸着剤として用いている有機ケイ素化合物除去用ケミカルフィルタである。なお、本明細書では、純水と混合させて得られる水混合物(含有割合:5wt%)のpHが7以下である無機シリカ系多孔質材料を用いた吸着剤を、「吸着剤(a)」と称する場合がある。また、本明細書において、「水混合物のpH」は、特に断りのない限り、「水混合物(含有割合:5wt%)のpH」を言うものとする。
(吸着剤(a))
上記有機ケイ素化合物除去用ケミカルフィルタは、無機シリカ系多孔質材料を必須の吸着剤として用いている。上記無機シリカ系多孔質材料は、一種のみを用いてもよいし、二種以上を用いてもよい。
上記無機シリカ系多孔質材料は、純水と混合させて得られる水混合物(含有割合:5wt%)のpHが7以下(例えば、3〜7)であり、好ましくは7未満(例えば、3以上7未満)、より好ましくは3〜6.5、さらに好ましくは4〜6である。上記pHが7以下であることにより、有機ケイ素化合物を高効率で除去することができる。これは、特にシラノール化合物に対しては、無機シリカ系多孔質材料の水混合物のpHが7以下であることにより、無機シリカ系多孔質材料中にシラノール基(−Si−OH)が十分に存在し、このシラノール基が流体中のシラノール化合物の除去に密接に関連していることによるものと推測される。
本明細書において、純水と混合させて得られる水混合物(含有割合:5wt%)のpHとは、水混合物全体に対して、当該水混合物中に混合させる物質(対象物質)の含有割合が5wt%である条件で測定したときのpHをいう。例えば、無機シリカ系多孔質材料の、純水と混合させて得られる水混合物(含有割合:5wt%)のpHは、無機シリカ系多孔質材料の含有割合が5wt%である条件で測定したときのpHである。上記水混合物のpHは、例えば、pH測定器を用いて測定することができる。なお、上記無機シリカ系多孔質材料に添着剤等を添着したものを吸着剤(a)として用いる場合、上記「純水と混合させて得られる水混合物(含有割合:5wt%)のpH」は、添着剤等を添着する前の状態(即ち、添着剤等を添着していない状態)の無機シリカ系多孔質材料の、純水と混合させて得られる水混合物(含有割合:5wt%)のpHを言うものとする。
本明細書において、水混合物(含有割合:5wt%)は、例えば、以下の「水混合物(含有割合:5wt%)の作製方法」によって作製することができる。
水混合物(含有割合:5wt%)の作製方法
上記水混合物(含有割合:5wt%)は、例えば、含有割合が5wt%となるように、水混合物のpHの測定の対象とするサンプル(「対象サンプル」と称する場合がある)を純水に混合し、十分に撹拌したのち静置して作製することができる。上記水混合物の作製には純水を使用するが、有機溶媒と純水との混合溶媒を使用してもよい。ただし、有機溶媒を使用する場合、有機溶媒の種類や濃度によっては酸解離定数が大きく変動するため、一般的に、アルコールなどの水溶性の有機溶媒であって、pHに大きな影響を与えない範囲の濃度とする。なお、上記「wt%」は、「重量%」と同一の意味である。含有割合が5wt%である水混合物を作製するには、具体的には、例えば、対象サンプルを、秤などを用いて5g計り取り、さらに純水を加え、全体を100gとし、液を十分に撹拌することで作製することができる。例えば、無機シリカ系多孔質材料の水混合物(含有割合:5wt%)は、無機シリカ系多孔質材料を上記対象サンプルとして作製することができる。
上記無機シリカ系多孔質材料は、特に限定されないが、比表面積(BET比表面積)が10m2/g以上(例えば、10〜1000m2/g)であってもよく、好ましくは50m2/g以上(例えば、50〜800m2/g)、より好ましくは100m2/g以上(例えば、100〜700m2/g)である。
上記無機シリカ系多孔質材料は、特に限定されないが、多孔質材料中のSiO2の含有量が5重量%以上(例えば、5〜100重量%)であってもよく、好ましくは10重量%以上、より好ましくは20重量%以上、さらに好ましくは50重量%以上、さらに好ましくは65重量%以上、特に好ましくは75重量%以上である無機シリカ系多孔質材料などが挙げられる。
上記無機シリカ系多孔質材料としては、特に限定されないが、例えば、ゼオライト(例えば、合成ゼオライト、天然ゼオライト等)、シリカゲル、シリカアルミナ、ケイ酸アルミニウム、多孔質ガラス、珪藻土、含水ケイ酸マグネシウム質粘土鉱物(例えば、タルク)、アロフェン、イモゴライト、酸性白土、活性白土、活性ベントナイト、メソポーラスシリカ、アルミノケイ酸塩、ヒュームドシリカ、フライアッシュ、クリンカアッシュなどが挙げられる。吸着剤として上記無機シリカ系多孔質材料を用いることにより、有機ケイ素化合物を高効率で除去することができる。中でも、ゼオライト、珪藻土、シリカゲル、活性白土が好ましく、より好ましくは合成ゼオライト、珪藻土、シリカゲル、活性白土である。吸着剤としてゼオライト(特に、合成ゼオライト)、珪藻土、シリカゲル、又は活性白土を用いると、より長期間に亘って有機ケイ素化合物(シラノール化合物、シロキサン化合物)を効率よく除去し続けることができる。中でも、ゼオライト(特に、合成ゼオライト)、シリカゲルを用いた場合、直鎖状シロキサン化合物及び環状シロキサン化合物両方のシロキサン化合物の除去効率が顕著に優れる傾向がある。また、シリカゲル、珪藻土を用いた場合、該シロキサン化合物をより選択的に除去することができる傾向がある。上記無機シリカ系多孔質材料は、一種のみを使用してもよいし、二種以上を使用してもよい。なお、上記合成ゼオライトには、人工ゼオライトが含まれるものとする。
上記ゼオライトは、主にケイ素元素(Si)、アルミニウム元素(Al)、及び酸素元素(O)から構成される骨格を有する多孔質材料であるが、当該骨格中の一部又は全部のアルミニウム元素(Al)を、鉄元素(Fe)、ホウ素元素(B)、ガリウム元素(Ga)等の3価の金属元素;亜鉛元素(Zn)等の2価の金属元素に置き換えたものであってもよい。
上記ゼオライトの細孔構造は、特に限定されない。ゼオライトの員環数は、特に限定されないが、例えば4〜20、好ましくは8〜20、より好ましくは8〜12である。なお、ゼオライトの員環数は、一般的に細孔環構造中のO原子数で表す。また、ゼオライトの細孔接続(channel system)は、特に限定されないが、1〜3次元が好ましく、より好ましくは3次元である。特に、員環数が12であり、細孔接続が3次元である細孔構造を有するゼオライト(特に、合成ゼオライト)が好ましい。
上記合成ゼオライトとしては、特に限定されないが、例えば、A型、フェリエライト、MCM−22、ZSM−5、ZSM−11、SAPO−11、モルデナイト、ベータ型、X型、Y型、L型、チャバザイト、オフレタイト等の骨格構造を有する合成ゼオライトなどが挙げられる。なお、上記合成ゼオライトは、一種の骨格構造のゼオライトを使用してもよいし、二種以上のゼオライトを組み合わせて使用してもよい。また、合成ゼオライトの形状は、粉末状に作製されたものでもよいし、膜状に作製されたものを使用してもよい。
上記人工ゼオライトとしては、例えば、一般に、石炭火力発電所から排出される石炭灰や製紙工場から排出される製紙スラッジ焼却灰など、ケイ素やアルミニウムを含む廃棄物から製造されたゼオライトなどが挙げられる。上記人工ゼオライトは、一種のみを使用してもよいし、二種以上を併用してもよい。
上記天然ゼオライトとしては、特に限定されないが、例えば、クリノプチロライト(斜プチロル沸石)、モルデナイト(モルデン沸石)、菱沸石、ナトロライト、ゴンナルダイト、エディングトナイト、アナルシム、リューサイト、ユガワラライト、ギスモンダイン、ポーリンジャイト、フィリップサイト、チャバザイト、エリオナイト、ホージャサイト、フェリエライト、ミューティナアイト、チェルニヒアイト、ヒューランダイト、スティルバイト、コウレサイト、アルミノケイ酸塩、ベリロケイ酸塩(ロギアナイト、シャンハライト等)、ジンコケイ酸塩(ガウルタイト)などが挙げられる。上記天然ゼオライトは、一種のみを使用してもよいし、二種以上を併用してもよい。
上記ゼオライトは、純水と混合させて得られる水混合物(含有割合:5wt%)のpHが7以下(例えば、3〜7)であり、好ましくは7未満(例えば、3以上7未満)、より好ましくは3〜6.8、さらに好ましくは3.5〜6.7、特に好ましくは4〜6.5である。なお、ゼオライトの水混合物(含有割合:5wt%)は、上記「水混合物(含有割合:5wt%)の作製方法」により、ゼオライトを対象サンプルとして作製することができる。上記pHが7以下であることにより、有機ケイ素化合物を高効率で除去することができる。これは、特にシラノール化合物に対しては、ゼオライトの水混合物のpHが7以下であることにより、ゼオライト中にシラノール基が十分に存在し、このシラノール基が流体中のシラノール化合物の除去に密接に関連していることによるものと推測される。
上記合成ゼオライトにおけるSiO2とAl23の比(モル比)[SiO2/Al23]は、特に限定されないが、有機ケイ素化合物の除去効率の観点から、4〜2000であってもよく、好ましくは10〜1500、より好ましくは15〜1000、さらに好ましくは100〜500である。上記[SiO2/Al23]は、ゼオライトの親水性或いは疎水性を示す指標と考えられる。[SiO2/Al23]が高い(即ち、シリカ比が高くアルミナ比が低い)と、疎水性が高くなる傾向がある。一方、[SiO2/Al23]が低い(即ち、シリカ比が低くアルミナ比が高い)と、親水性が高くなる傾向がある。親水性が高すぎる(即ち、疎水性が低すぎる)と、骨格表面が水分子で覆われ、疎水性の有機ケイ素化合物が吸着サイト(吸着する場所)へ近づきにくくなる。親水性が低すぎる(即ち、疎水性が高すぎる)と、ゼオライト中の吸着サイトが少なくなり、有機ケイ素化合物の除去効率が低下する傾向がある。このため、例えば、[SiO2/Al23]を上記範囲内とすることにより、ゼオライトの親水性或いは疎水性を適宜調節でき、有機ケイ素化合物の除去効率がより優れるようにすることができる。中でも、有機ケイ素化合物が環状シロキサン化合物である場合、上記合成ゼオライトは疎水性が高いことが好ましく[SiO2/Al23]が高い方が好ましい。
上記ゼオライトは、特に限定されないが、骨格構造中に陽イオンを含んでいてもよい。上記陽イオンとしては、特に限定されないが、例えば、水素イオン(H+);アンモニウムイオン(NH4 +);アルキル置換のアンモニウムイオン(例えば、メチルアンモニウムイオン((CH3)H3+)、ジメチルアンモニウムイオン((CH322+)、トリメチルアンモニウムイオン((CH33HN+)、テトラメチルアンモニウムイオン((CH34+)等);アリール又はアラルキル置換のアンモニウムイオン;リチウムイオン(Li+)、ナトリウムイオン(Na+)、カリウムイオン(K+)等のアルカリ金属イオン;マグネシウムイオン(Mg2+)、カルシウムイオン(Ca2+)、バリウムイオン(Ba2+)等のアルカリ土類金属イオン;亜鉛イオン(Zn2+)、スズイオン(Sn2+、Sn4+)、鉄イオン(Fe2+、Fe3+)、白金イオン(Pt2+)、パラジウムイオン(Pd2+)、チタンイオン(Ti3+)、銀イオン(Ag+)、銅イオン(Cu+、Cu2+)、マンガンイオン(Mn2+、Mn4+)、コバルトイオン(Co2+)等の遷移金属イオン;ガリウムイオン(Ga+)などが挙げられる。上記陽イオンは一種のみ含まれていてもよいし、二種以上含まれていてもよい。上記ゼオライト中の上記陽イオンの含有量は特に限定されない。特に、プロトン型ゼオライトと呼ばれる、骨格構造中に含まれている陽イオンとして水素イオン(H+)の含有率が多いゼオライトが好ましい。
なお、上記ゼオライトの比表面積(BET比表面積)、平均粒子径(平均粒径)、平均細孔径(直径)、全細孔容積などは、特に限定されない。また、上記ゼオライトは、一種のみを用いてもよいし、二種以上を用いてもよい。
上記ゼオライトとして、天然ゼオライト又は合成ゼオライトを酸処理して得られる酸処理物、天然ゼオライト又は合成ゼオライトを水熱処理して得られる水熱処理物、アンモニウム型ゼオライトを焼成処理して得られるアンモニウム処理物、プロトン型ゼオライトを用いてもよい。
上記酸処理物及び上記水熱処理物は、酸処理における酸又は水熱処理における加熱水蒸気によってゼオライト中の陽イオンとアルミニウム元素が脱離することによってゼオライト中のシラノール基が増加するためと推測されるが、水混合物のpHが7以下となり、有機ケイ素化合物の除去効率が高くなる。
上記プロトン型ゼオライトとしては、例えば、天然ゼオライトや合成ゼオライト中の水素イオン以外の全陽イオン(例えば、金属イオン、アンモニウムイオン等)のうちの少なくとも一部の陽イオンを水素イオンに置き換えたもの、水素イオンを多く含むように作製された合成ゼオライトなどが挙げられる。また、上記プロトン型ゼオライトは、例えば、天然ゼオライト又は合成ゼオライト中のナトリウムイオンなどの陽イオンをアンモニウムイオンにイオン交換した後、焼成する方法などを用いて作製することもできる。なお、一般的には、ゼオライト中の陽イオンを水素イオンに置き換えられたものをプロトン型ゼオライトと称されており、上記プロトン型ゼオライトは、ゼオライト中の少なくとも一部の陽イオンが水素イオンに置き換えられていればよく、ゼオライト中の全ての陽イオンが水素イオンに置き換えられているものには限定されない。
上記酸性白土としては、特に限定されず、各地で産出される酸性白土を用いることができる。例えば、新潟県産の酸性白土、山形県産の酸性白土などが挙げられる。上記酸性白土は、一種のみを用いてもよいし、二種以上を用いてもよい。
上記活性白土は、上記酸性白土を酸処理することによって得られ、例えば、上記酸性白土を硫酸等の鉱酸でモンモリロナイトの基本構造の全部を破壊しない程度に酸処理することにより、MgやFeの酸化物等の金属酸化物が溶出し、比表面積や細孔容積を増大させたものなどが挙げられる。上記活性白土は、一種のみを用いてもよいし、二種以上を用いてもよい。
上記活性白土の比表面積(BET比表面積)は、特に限定されないが、中でも、50〜600m2/gが好ましく、より好ましくは100〜500m2/g、さらに好ましくは200〜400m2/gである。活性白土の比表面積が上記範囲内である場合、有機ケイ素化合物の除去性能により優れる傾向がある。
上記酸性白土及び上記活性白土は、純水と混合させて得られる水混合物(含有割合:5wt%)のpHが7以下(例えば、3〜7)であり、好ましくは7未満(例えば、3以上7未満)、より好ましくは3〜6.5、さらに好ましくは3.2〜5、特に好ましくは3.5〜4.7である。なお、酸性白土の水混合物(含有割合:5wt%)及び活性白土の水混合物(含有割合:5wt%)は、上記「水混合物(含有割合:5wt%)の作製方法」により、酸性白土又は活性白土を対象サンプルとして作製することができる。
上記活性白土の細孔径(平均細孔径)は、特に限定されないが、10〜500Åが好ましく、より好ましくは30〜300Å、さらに好ましくは40〜200Åである。活性白土の細孔径が上記範囲内である場合、有機ケイ素化合物の除去性能により優れる傾向がある。
上記珪藻土としては、特に限定されず、各地で産出される珪藻土を用いることができる。例えば、北海道稚内産の珪藻土(珪藻頁岩)、秋田県綴子産の珪藻土、岡山県蒜山産の珪藻土、大分県九重産の珪藻土、石川県能登産の珪藻土(珪藻泥岩)などのいずれの珪藻土であってもよい。上記珪藻土は、一種のみを用いてもよいし、二種以上を用いてもよい。
上記珪藻土は、純水と混合させて得られる水混合物(含有割合:5wt%)のpHが7以下(例えば、3〜7)であり、好ましくは7未満(例えば、3以上7未満)、より好ましくは3〜6.7、さらに好ましくは3.2〜6.5、特に好ましくは3.5〜6.2である。なお、珪藻土の水混合物(含有割合:5wt%)は、上記「水混合物(含有割合:5wt%)の作製方法」により、珪藻土を対象サンプルとして作製することができる。
上記珪藻土の比表面積(BET比表面積)は、特に限定されないが、中でも、10〜500m2/gが好ましく、より好ましくは30〜300m2/g、さらに好ましくは50〜200m2/gである。珪藻土の比表面積が上記範囲内である場合、有機ケイ素化合物の除去性能により優れる傾向がある。有機ケイ素化合物がシロキサン化合物である場合、中でも、北海道稚内産の珪藻土が好ましい。
上記珪藻土の細孔径(平均細孔径)は、特に限定されないが、5〜400Åが好ましく、より好ましくは10〜250Å、さらに好ましくは20〜100Åである。珪藻土の細孔径が上記範囲内である場合、有機ケイ素化合物の除去性能により優れる傾向がある。
上記シリカゲルの比表面積(BET比表面積)は、特に限定されないが、50〜1000m2/gが好ましく、より好ましくは100〜500m2/g、さらに好ましくは200〜350m2/gである。シリカゲルの比表面積が上記範囲内である場合、有機ケイ素化合物の除去性能により優れる傾向がある。
上記シリカゲルの細孔径(平均細孔径)は、特に限定されないが、50〜700Åが好ましく、より好ましくは100〜500Å、さらに好ましくは200〜400Åである。シリカゲルの細孔径が上記範囲内である場合、有機ケイ素化合物の除去性能により優れる傾向がある。
合成ゼオライト、酸性白土、活性白土、珪藻土以外の無機シリカ系多孔質材料(「その他の無機シリカ系多孔質材料」と称する場合がある)は、純水に混合させて得られる水混合物(含有割合:5wt%)のpHが7以下(例えば、3〜7)であり、好ましくは7未満(例えば、3以上7未満)、より好ましくは3〜6.5、さらに好ましくは3.5〜6.3、特に好ましくは4〜6である。なお、その他の無機シリカ系多孔質材料の水混合物(含有割合:5wt%)は、上記「水混合物(含有割合:5wt%)の作製方法」により、その他の無機シリカ系多孔質材料を対象サンプルとして作製することができる。
上記合成ゼオライト以外の無機シリカ系多孔質材料において、SiO2の含有量は、特に限定されないが、無機シリカ系多孔質材料の総重量(100重量%)に対して、50重量%以上(例えば、50〜100重量%)であってもよく、好ましくは60重量%以上、より好ましくは70重量%以上である。
上記無機シリカ系多孔質材料は、特に限定されないが、添着剤等が添着されていないことが好ましい。即ち、上記無機シリカ系多孔質材料には、添着剤等が添着された無機シリカ系多孔質材料が除かれることが好ましい。上記添着剤としては、酸性物質の添着剤や塩基性物質の添着剤、酸化剤などが挙げられる。例えば、酸性物質の添着剤を添着すると、上記無機シリカ系多孔質材料の骨格が変化したり、細孔が添着剤で埋まることで有機ケイ素化合物との反応性が低下するおそれがある。
吸着剤(a)は、特に限定されないが、必要に応じて、上記水混合物のpHが7以下である無機シリカ系多孔質材料以外の吸着剤(他の吸着剤)を含んでいてもよい。即ち、吸着剤(a)として、上記水混合物のpHが7以下である無機シリカ系多孔質材料とともに、他の吸着剤を用いてもよい。上記他の吸着剤としては、例えば、上記水混合物のpHが7以下である無機シリカ系多孔質材料以外の多孔質材料、その他のシリカ、粘土鉱物、活性炭、アルミナ、ガラスなどが挙げられる。吸着剤として上記他の吸着剤を併用することで、有機ケイ素化合物の除去性能に優れるという効果に加えて、他の吸着剤の効果を有するケミカルフィルタとすることもできる。
吸着剤(a)中(全吸着剤中)の上記水混合物のpHが7以下である無機シリカ系多孔質材料の含有量は、特に限定されないが、有機ケイ素化合物の除去効率の観点から、吸着剤の総重量(100重量%)に対して、10重量%以上(例えば、10〜100重量%)が好ましく、より好ましくは30重量%以上、さらに好ましくは50重量%以上、特に好ましくは70重量%以上である。
吸着剤(a)は、有機ケイ素化合物をより高効率で除去できる観点から、中でも、水混合物のpHが7以下の無機シリカ系多孔質材料として、ゼオライト(特に、合成ゼオライト)、珪藻土、シリカゲル、酸性白土、又は活性白土を、吸着剤の総重量(100重量%)に対して10重量%以上(例えば、10〜100重量%、好ましくは50重量%以上、より好ましくは70重量%以上)含有することが好ましい。なお、上記無機シリカ系多孔質材料として、ゼオライト(特に、合成ゼオライト)、珪藻土、シリカゲル、酸性白土、及び活性白土のうちの2以上を含む場合、上記含有量は、上記2以上の合計の含有量である。
吸着剤(a)は、シラノール化合物をよりいっそう高効率で除去できる観点から、中でも、水混合物のpHが7以下の無機シリカ系多孔質材料として、ゼオライト(特に、合成ゼオライト)を、吸着剤の総重量(100重量%)に対して、10重量%以上(例えば、10〜100重量%、好ましくは50重量%以上、より好ましくは70重量%以上)含有することが好ましい。
有機ケイ素化合物除去用ケミカルフィルタは、ハニカム構造であり、且つ、水混合物(含有割合:5wt%)のpHが7以下である無機シリカ系多孔質材料を吸着剤として用いたものであれば、特に限定されない。上記ケミカルフィルタとしては、例えば、フィルタ基材に吸着剤(a)が付着(固着)されているハニカム構造のケミカルフィルタが挙げられる。なお、吸着剤(a)がバインダとしての機能も有するものである場合、バインダを用いずに吸着剤をフィルタ基材に付着させることもできるが、吸着剤(a)はバインダを用いてフィルタ基材に付着されていることが好ましい。即ち、上記有機ケイ素化合物除去用ケミカルフィルタは、フィルタ基材に、バインダを用いずに吸着剤(a)が付着されている(あるいは、吸着剤(a)のみが付着されている)ケミカルフィルタであってもよいが、フィルタ基材に吸着剤(a)がバインダを用いて付着されているケミカルフィルタであることが好ましい。
吸着剤(a)は、特に限定されないが、ペレット化されていてもよい。即ち、吸着剤(a)は、ペレット化された吸着剤であってもよい。即ち、有機ケイ素化合物除去用ケミカルフィルタは、ペレット化された吸着剤(a)を含んでもよい。上記ペレット化は、例えば、吸着剤(a)の粉末を、上記バインダを用いて造粒して行うことができる。
(フィルタ基材)
上記フィルタ基材としては、特に限定されず、ケミカルフィルタのフィルタ基材として一般に用いられるものを使用できる。上記フィルタ基材としては、例えば、上記繊維状基材、紙、ポリウレタンフォーム等から構成される発泡体、耐火性金属酸化物や耐火性無機物(例えば、アルミニウム等の金属、セラミックスなど)を使用したフィルタ基材などが挙げられる。上記繊維状基材の織布の形状は特に限定されず、例えば、メッシュ状に繊維を織ったものなどが挙げられる。中でも、上記フィルタ基材として、繊維状基材が好ましい。
上記繊維状基材における繊維としては、例えば、シリカアルミナ繊維、シリカ繊維、アルミナ繊維、ムライト繊維、ガラス繊維、ロックウール繊維、炭素繊維等の無機繊維;ポリエチレン繊維、ポリプロピレン繊維、ナイロン繊維、ポリエステル繊維(例えば、ポリエチレンテレフタレート繊維等)、ポリテトラフルオロエチレン繊維、ポリビニルアルコール繊維、アラミド繊維、パルプ繊維、レーヨン繊維等の有機繊維などが挙げられる。上記の中でも、ケミカルフィルタの強度を高める観点、及び繊維からのアウトガスなどによる汚染が少ない観点から、無機繊維が好ましく、より好ましくはガラス繊維である。即ち、上記フィルタ基材としては、ガラス繊維を用いた繊維状基材(ガラスクロス(ガラス布))が好ましい。上記繊維は、一種のみを使用してもよいし、二種以上を組み合わせて使用してもよい。また、上記無機繊維及び上記有機繊維の形状は特に限定されない。
(バインダ)
上記バインダは、吸着剤のフィルタ基材への付着を促進させることや、吸着剤のペレット化に使用することができる。上記バインダとしては、特に限定されず、公知乃至慣用のフィルタ用(例えば、エアフィルタ用、ケミカルフィルタ用等)のバインダを用いることができる。上記バインダとしては、有機バインダであってもよいし、無機バインダであってもよい。上記バインダは、特に限定されないが、無機バインダであることが好ましい。上記バインダは、一種のみを使用してもよいし、二種以上を使用してもよい。
上記バインダは、酸性であってもよいし、塩基性であってもよいが、酸性であることが好ましい。酸性のバインダは、純水と混合させて得られる水混合物(含有割合:5wt%)のpHが7以下(例えば、3〜7)であり、好ましくは7未満(例えば、3以上7未満)、より好ましくは3〜6.8、さらに好ましくは3.5〜6.7、特に好ましくは4〜6.5である。なお、バインダの水混合物(含有割合:5wt%)は、上記「水混合物(含有割合:5wt%)の作製方法」により、バインダを対象サンプルとして作製することができる。なお、上記バインダがコロイダルシリカなど溶媒を含むバインダである場合、上記含有割合は、上記水混合物に対する、上記バインダ中の固形分の含有割合である。
上記有機バインダとしては、例えば、ポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂、メタクリル酸メチル等のアクリル系樹脂、ABS樹脂、PET等のポリエステル系樹脂、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂、酢酸ビニル系樹脂、ポリビニルアルコール、カルボキシメチルセルロース等のセルロース、アラビヤゴムなどが挙げられる。上記有機バインダは、一種のみを使用してもよいし、二種以上を使用してもよい。
上記無機バインダとしては、上記無機シリカ系多孔質材料の表面を完全に覆わない粒子状のものが好ましく、例えば、ケイ酸ソーダ、シリカゾル、アルミナゾル、コロイダルシリカ、コロイダルアルミナ、コロイド状酸化スズ、コロイド状酸化チタンなどの無機酸化物粒子等が挙げられ、中でも、コロイダルシリカ、コロイダルアルミナ、コロイド状酸化スズ、コロイド状酸化チタン等のコロイド状の無機酸化物粒子などが好ましく挙げられる。中でも、コロイダルシリカが好ましい。上記無機バインダは、一種のみを使用してもよいし、二種以上を使用してもよい。
上記無機バインダの平均粒子径(一次粒子径)、比表面積(BET比表面積)、平均細孔径(直径)、全細孔容積などは、特に限定されない。
(製造方法)
有機ケイ素化合物除去用ケミカルフィルタの製造方法は、特に限定されず、公知乃至慣用の吸着剤を有するケミカルフィルタの製造方法を用いることができる。有機ケイ素化合物除去用ケミカルフィルタは、特に限定されないが、例えば、フィルタ基材に吸着剤(a)を付着させる工程(吸着剤付着工程)を少なくとも有する。有機ケイ素化合物除去用ケミカルフィルタの製造方法は、特に限定されないが、上記吸着剤付着工程以外の工程(他の工程)を有していてもよい。また、上記フィルタ基材は、市販のフィルタ基材を購入してそのまま使用してもよい。
上記吸着剤付着工程において、吸着剤(a)の付着は、例えば、上記フィルタ基材を、吸着剤(a)、溶媒(例えば水など)、及び、必要に応じて上記バインダを含む懸濁液中に浸漬した後、懸濁液から取り出し、乾燥することにより行うことができる。上記懸濁液には、有機ケイ素化合物除去能を損なわない範囲内で、沈降防止剤を含んでいてもよい。
吸着剤(a)の付着は、他に、上記フィルタ基材に、上記溶媒と必要に応じて上記バインダを含む懸濁液中に浸漬した後、懸濁液から取り出し、乾燥し、その後、フィルタ基材表面に吸着剤(a)を分散して付着させることにより行うこともできる。
吸着剤(a)の付着は、他に、吸着剤(a)と、上記溶媒と、必要に応じて上記バインダを含む混合溶液を、スプレー等を用いて上記フィルタ基材(特に、不織布)に塗布して付着させることにより行うこともできる。
吸着剤(a)の付着は、他に、上記フィルタ基材に、吸着剤(a)の粉末を造粒して製造したペレットを、接着剤等で付着させたり、ハニカム構造のフィルタ基材内部に充填したりして行うこともできる。吸着剤(a)の粉末を造粒する際には、必要に応じて上記バインダを混合してもよい。吸着剤(a)の粉末、上記バインダ及び溶媒(好ましくは水)を適量含んだ状態で混合すると、粘土状の粘性と可塑性を示すようになり、造粒が可能となる。
吸着剤(a)の付着は、他に、針状繊維化されたポリテトラフルオロエチレン樹脂を用い、該針状繊維に吸着剤(a)を捕捉させて担持させることにより行うこともできる。
吸着剤(a)は、他に、吸着剤(a)がナノファイバー中に含有される状態で付着していてもよい。上記ナノファイバーとしては、公知乃至慣用のナノファイバーを用いることができる。また、上記ナノファイバーは、公知乃至慣用のナノファイバーの製造方法により作製することもできる。上記ナノファイバーの製造方法としては、例えば、エレクトロスピニング(ES)法(電解紡糸、静電紡糸)、メルトブロー法、複合溶融紡糸法などが挙げられる。上記ES法は、吸着剤(a)をポリマー溶液に分散させた懸濁液に高電圧を与え、アース表面(例えば、表面が0電位のフィルタ基材(例えば、不織布など))にスプレーして行う。上記ES法では、懸濁液を高電圧でスプレーした際に、吸着剤(a)を含有したナノファイバーが形成される。
また、吸着剤が付着しにくいフィルタ基材(例えば、金属製のフィルタ基材等)を用いたケミカルフィルタの場合、吸着剤(a)の付着は、接着剤を用いてフィルタ基材に担持させて行ってもよい。
上記他の工程としては、例えば、フィルタ基材を加工する工程(フィルタ基材加工工程)などが挙げられる。なお、上記フィルタ基材加工工程と上記吸着剤付着工程の順序は、特に限定されないが、作業性の観点から、フィルタ基材加工工程、吸着剤付着工程の順が好ましい。
上記フィルタ基材加工工程としては、例えば、上述したように、フィルタ基材にコルゲート加工を施す工程、ハニカム構造を形成する工程、フィルタ基材に細孔を設ける工程などが挙げられる。上記フィルタ基材加工工程は、1工程のみを行ってもよいし、同一又は異なる2以上の工程を行ってもよい。上記フィルタ基材加工工程を2工程以上行う場合も、その順序は特に限定されない。
また、有機ケイ素化合物除去用ケミカルフィルタは、抄紙法により製造されたケミカルフィルタであってもよい。上記抄紙法により製造されたケミカルフィルタは、例えば、繊維状基材及び吸着剤(a)を少なくとも有するケミカルフィルタであって、上記繊維状基材を構成する繊維及び吸着剤(a)を含有する懸濁液に凝集剤を加えることにより生成される物質(フロック)を湿式抄紙法でシート化した後、熱処理して得られる。
また、有機ケイ素化合物除去用ケミカルフィルタは、セラミック型のケミカルフィルタであってもよい。上記セラミック型のケミカルフィルタは、公知乃至慣用のセラミックス材料の加工方法により作製することができる。例えば、吸着剤(a)を、セラミックス原料とともに成形及び焼成して製造することができる。具体的には、例えば、吸着剤(a)、上記バインダ、造孔材、及び必要に応じて他のセラミックス原料を秤量及び混練を行って坏土を作製した後、この坏土をスクリュー式押出機等の押出機により押出加工し、成形体を作製する。得られた成形体を乾燥及び焼成して、多孔質のセラミック型のケミカルフィルタが得られる。上記セラミック型のケミカルフィルタは、上記セラミック型のケミカルフィルタは、適宜、端面をダイヤモンドカッター、ダイヤモンドソー等の研削工具で、所定の長さに加工することもできる。
有機ケイ素化合物除去用ケミカルフィルタは、上記の中でも、表面に吸着剤(a)が無機バインダにより付着された波形シートが、薄板シートを介して複数個積層されたハニカム構造を有するケミカルフィルタが特に好ましい。
特に限定されないが、有機ケイ素化合物除去用ケミカルフィルタにおいて、添着剤(例えば、酸性物質、塩基性物質、酸化剤等)が添着されている吸着剤を備えていないことが好ましい。即ち、有機ケイ素化合物除去用ケミカルフィルタには、添着剤が添着されている吸着剤を備えたものが除かれることが好ましい。
本発明の有機ケイ素化合物除去装置において、有機ケイ素化合物除去用ケミカルフィルタは、一種のみを用いてもよいし、二種以上を組み合わせて用いてもよい。
<阻害物質除去用ケミカルフィルタ>
上記阻害物質除去用ケミカルフィルタは、上記有機ケイ素化合物除去用ケミカルフィルタの有機ケイ素化合物除去能を低下させる阻害物質を除去するためのケミカルフィルタである。ケミカルフィルタ(A)である上記阻害物質除去用ケミカルフィルタは、有機ケイ素化合物除去用ケミカルフィルタ(即ち、ケミカルフィルタフィルタ(B))の上流に設置されている。
上記阻害物質除去用ケミカルフィルタは、有機ケイ素化合物除去用ケミカルフィルタの有機ケイ素化合物除去能を低下させる物質(阻害物質)を除去するケミカルフィルタであれば特に限定されない。このような阻害物質除去用ケミカルフィルタとしては、例えば、アンモニア、アミン等の塩基性物質を吸着する塩基性物質除去用ケミカルフィルタ;硫化水素、硫黄酸化物、窒素酸化物、有機酸等の酸性物質を吸着する酸性物質除去用ケミカルフィルタ;ベンゼン、トルエン、シクロヘキサノン、エステル等の有機物質を吸着する有機物質除去用ケミカルフィルタなどが挙げられる。上記阻害物質除去用ケミカルフィルタとしては、中でも、塩基性物質除去用ケミカルフィルタ、有機物質除去用ケミカルフィルタが好ましい。上記阻害物質除去用ケミカルフィルタが塩基性物質除去用ケミカルフィルタであると、上記有機ケイ素化合物除去用ケミカルフィルタにおける吸着剤(a)中の無機シリカ系多孔質材料の酸点を減少させる可能性がある塩基性物質を効率的に除去でき、上記有機ケイ素化合物除去用ケミカルフィルタの有機ケイ素化合物除去能を低下させず、長く維持することができる傾向がある。また、上記阻害物質除去用ケミカルフィルタが有機物質除去用ケミカルフィルタであると、有機ケイ素化合物除去用ケミカルフィルタにおける吸着剤(a)の細孔を埋めて有機ケイ素化合物除去能を低下させる有機物質を効率的に除去でき、また、有機物質が吸着剤(a)中の無機シリカ系多孔質材料により分解されることを抑制でき、有機ケイ素化合物除去用ケミカルフィルタの有機ケイ素化合物除去能を低下させず、長く維持することができる傾向がある。さらに、有機物質が分解されて発生する汚染物質が本発明の有機ケイ素化合物除去装置の下流側への流出を防止できる傾向がある。なお、上記阻害物質除去用ケミカルフィルタは、一種のみを使用してもよいし、二種以上を使用してもよい。
(吸着剤)
上記阻害物質除去用ケミカルフィルタにおける吸着剤としては、具体的には、上記阻害物質が塩基性物質である場合は酸性物質が添着された吸着剤(特に、酸性物質が添着された活性炭)が、上記阻害物質が酸性物質である場合は塩基性物質が添着された吸着剤(特に、塩基性物質が添着された活性炭)が、上記阻害物質が有機物質である場合は無添着の吸着剤(特に、無添着の活性炭)がそれぞれ好ましい。なお、上記無添着の吸着剤は、有機物質の除去が極端に阻害されない程度に添着剤が添着されていてもよい。
上記阻害物質除去用ケミカルフィルタは、少なくともエステルを除去するためのケミカルフィルタ(「エステル除去用ケミカルフィルタ」と称する場合がある)であることが好ましい。上記エステルとしては、例えば、揮発性のエステルや常温常圧で気体状のエステルが挙げられ、例えばPGMEA等がある。
半導体製造プロセスの露光工程では、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)が大量に使用されているため、クリーンルーム内の空気は、PGMEAを含有する。有機ケイ素化合物に加えてPGMEAを含有する空気を上記有機化合物除去用ケミカルフィルタに通気させた場合、水混合物のpHが7以下の無機シリカ系多孔質材料が酸触媒として作用して加水分解が起こり、PGMEAが酢酸とプロピレングリコールモノメチルエーテルとに分解されたものと推測されるが、その結果ケミカルフィルタの下流に酢酸やプロピレングリコールモノメチルエーテル等の汚染物質が流出するおそれがあった。酢酸がケミカルフィルタの下流側に流出した場合、クリーンルーム内の機器を腐食させるおそれがある。このため、上記阻害物質除去用ケミカルフィルタは、少なくともエステルを除去するためのケミカルフィルタであることが好ましい。
エステル除去用ケミカルフィルタとしては、例えば、吸着剤を有するフィルタなどが挙げられる。上記吸着剤としては、エステルを除去できる公知乃至慣用の吸着剤が挙げられる。
上記エステル除去用ケミカルフィルタに用いられる吸着剤としては、例えば、上述のケミカルフィルタ(A)における吸着剤として例示及び説明されたものなどが挙げられる。上記吸着剤は、一種のみを使用してもよく、二種以上を組み合わせて使用してもよい。
エステル除去用ケミカルフィルタとしては、公知乃至慣用のエステル等の有機物質の除去が可能なケミカルフィルタを用いることができる。エステル除去用ケミカルフィルタに用いられる吸着剤としては、中でも、添着剤が添着されていない活性炭(無添着の活性炭)が好ましい。この場合、エステル除去用ケミカルフィルタにおける吸着剤には、無添着の活性炭以外の吸着剤が一部(例えば、吸着剤全体に対して10重量%以下、好ましくは5重量%以下)用いられていてもよい。
エステル除去用ケミカルフィルタにおける吸着剤が、無添着の活性炭を含む場合、吸着剤の総重量(100重量%)に対する無添着の活性炭の含有量は、特に限定されないが、50重量%以上が好ましく、より好ましくは70重量%以上、さらに好ましくは90重量%以上、特に好ましくは95重量%以上である。なお、上限は100重量%であってもよい。
エステル除去用ケミカルフィルタにおける吸着剤は、特に限定されないが、ペレット化されていてもよい。即ち、上記吸着剤は、ペレット化された吸着剤であってもよい。即ち、エステル除去用ケミカルフィルタは、ペレット化された吸着剤を含んでもよい。上記ペレット化は、上記吸着剤(a)のペレット化と同様の方法により行うことができる。
阻害物質除去用ケミカルフィルタとしては、例えば、フィルタ基材に上記吸着剤が付着(固着)されているケミカルフィルタが挙げられる。なお、上記吸着剤がバインダとしての機能も有するものである場合、バインダを用いずに吸着剤をフィルタ基材に付着させることもできるが、上記吸着剤はバインダを用いてフィルタ基材に付着されていることが好ましい。即ち、上記阻害物質除去用ケミカルフィルタは、フィルタ基材に、バインダを用いずに上記吸着剤が付着されている(あるいは、上記吸着剤のみが付着されている)ケミカルフィルタであってもよいが、フィルタ基材に上記吸着剤がバインダを用いて付着されているケミカルフィルタであることが好ましい。
(フィルタ基材)
上記フィルタ基材としては、特に限定されず、ケミカルフィルタのフィルタ基材として一般に用いられるものを使用できる。上記フィルタ基材としては、例えば、上述の有機ケイ素化合物除去用ケミカルフィルタにおけるフィルタ基材として例示及び説明されたものが挙げられる。中でも、阻害物質除去用ケミカルフィルタにおけるフィルタ基材として、発泡体(特に、ウレタンフォーム)が好ましい。上記フィルタ基材は、一種のみを使用してもよいし、二種以上を使用してもよい。
(バインダ)
上記バインダとしては、特に限定されず、公知乃至慣用のフィルタ用(例えば、エアフィルタ用、ケミカルフィルタ用等)のバインダを用いることができる。上記バインダとしては、例えば、上述の有機ケイ素化合物除去用ケミカルフィルタにおけるバインダとして例示及び説明されたものが挙げられる。上記バインダは、一種のみを使用してもよいし、二種以上を使用してもよい。
本発明の有機ケイ素化合物除去装置は、ケミカルフィルタ(B)である有機ケイ素化合物除去用ケミカルフィルタの下流側に、さらに、ケミカルフィルタ(A2)を有していてもよい。この場合におけるケミカルフィルタ(A2)としては、エステルの分解物を除去するためのケミカルフィルタ(「エステル分解物除去用ケミカルフィルタ」と称する場合がある)、上記有機物質除去用ケミカルフィルタが好ましい。上述のように、エステルは上記有機ケイ素化合物除去用ケミカルフィルタ中の無機シリカ系多孔質材料によって分解され、酸やアルコールを発生し得る。このため、ケミカルフィルタ(A2)を設けることにより、流体中のエステルが上流側の有機ケイ素化合物除去用ケミカルフィルタにおいて分解されて酸又はアルコールが有機ケイ素化合物除去用ケミカルフィルタの下流側に流出したとしても、下流側のエステル分解物除去用ケミカルフィルタにより酸やアルコール等のエステルの分解物が除去されるなるため、本発明の有機ケイ素化合物除去装置の下流側に流出する汚染物質の量が少なくなる。
エステル分解物除去用ケミカルフィルタとしては、公知乃至慣用の少なくとも酸又はアルコールの除去が可能なケミカルフィルタを用いることができる。エステル分解物除去用ケミカルフィルタに用いられる吸着剤としては、中でも、酸を効率的に除去し、下流側への酸の流出を削減する観点から、塩基性物質が添着された活性炭が好ましい。また、アルコールを効率的に除去し、下流側へのアルコールの流出を削減する観点から、無添着の活性炭であることが特に好ましい。さらに、上記吸着剤は、酸及びアルコールの両方を効率的に除去し、これらの下流側への流出を削減できる観点からは、塩基性物質が添着された活性炭と、無添着の活性炭とを含むことが特に好ましい。なお、この場合、エステル分解物除去用ケミカルフィルタにおける吸着剤には、塩基性物質が添着された活性炭及び無添着の活性炭以外の吸着剤が一部(例えば、吸着剤全体に対して10重量%以下、好ましくは5重量%以下)用いられていてもよい。また、上記塩基性物質が添着された活性炭における塩基性物質は、中でも、炭酸カリウムが好ましい。また、上記塩基性物質が添着された活性炭における塩基性物質の添着量は、特に限定されないが、添着された活性炭の総重量(100重量%)に対して1〜20重量%(好ましくは5〜15重量%)が好ましい。
エステル分解物除去用ケミカルフィルタにおける吸着剤が、塩基性物質が添着された活性炭及び無添着の活性炭を含む場合、吸着剤の総重量(100重量%)に対する塩基性物質が添着された活性炭及び無添着の活性炭の含有量の合計は、特に限定されないが、50重量%以上が好ましく、より好ましくは70重量%以上、さらに好ましくは90重量%以上、特に好ましくは95重量%以上である。なお、上限は100重量%であってもよい。
エステル分解物除去用ケミカルフィルタにおける吸着剤が、塩基性物質が添着された活性炭及び無添着の活性炭を含む場合、塩基性物質が添着された活性炭と無添着の活性炭の比率[前者:後者](重量比)は、特に限定されないが、10:90〜90:10が好ましく、より好ましくは30:70〜70:30である。
エステル分解物除去用ケミカルフィルタにおける吸着剤は、特に限定されないが、ペレット化されていてもよい。即ち、上記吸着剤は、ペレット化された吸着剤であってもよい。即ち、エステル分解物除去用ケミカルフィルタは、ペレット化された吸着剤を含んでもよい。上記ペレット化は、吸着剤(a)のペレット化と同様の方法により行うことができる。
本発明の有機ケイ素化合物除去装置におけるケミカルフィルタ(A2)としては、例えば、フィルタ基材に上記吸着剤が付着(固着)されているケミカルフィルタが挙げられる。なお、上記吸着剤がバインダとしての機能も有するものである場合、バインダを用いずに吸着剤をフィルタ基材に付着させることもできるが、上記吸着剤はバインダを用いてフィルタ基材に付着されていることが好ましい。即ち、上記エステル分解物除去用ケミカルフィルタは、フィルタ基材に、バインダを用いずに上記吸着剤が付着されている(あるいは、上記吸着剤のみが付着されている)ケミカルフィルタであってもよいが、フィルタ基材に上記吸着剤がバインダを用いて付着されているケミカルフィルタであることが好ましい。なお、ケミカルフィルタ(A2)におけるフィルタ基材及びバインダとしては、上述の有機ケイ素化合物除去用ケミカルフィルタにおけるものが使用できる。
また、本発明の有機ケイ素化合物除去装置は、下記(i)〜(iii)の構成のうちの少なくとも一つの構成を有することが特に好ましい。なお、本発明の有機ケイ素化合物除去装置は、下記(i)〜(iii)の構成のうちの二以上の構成を有していてもよい。
(i)上流側から、塩基性物質除去用ケミカルフィルタ、エステル除去用ケミカルフィルタ、有機ケイ素化合物除去用ケミカルフィルタ、及びケミカルフィルタ(A2)(特に、エステル分解物除去用ケミカルフィルタ)がこの順に設けられている構成
(ii)上流側から、エステル除去用ケミカルフィルタ、有機ケイ素化合物除去用ケミカルフィルタ、及びエステル分解物除去用ケミカルフィルタがこの順に設けられている構成
(iii)上流側から、エステル除去用ケミカルフィルタ、有機ケイ素化合物除去用ケミカルフィルタ、及び有機物質除去用ケミカルフィルタがこの順に設けられている構成
なお、上記(i)〜(iii)の構成において、有機ケイ素化合物除去用ケミカルフィルタはケミカルフィルタ(B)であり、塩基性物質除去用ケミカルフィルタ及びエステル除去用ケミカルフィルタはケミカルフィルタ(A1)であり、エステル分解物除去用ケミカルフィルタ及び有機物質除去用ケミカルフィルタはケミカルフィルタ(A2)である。
本発明の有機ケイ素化合物除去装置が上記(i)の構成を有する場合、有機ケイ素化合物及びエステルを含む流体がさらに塩基性物質を含んでいたとしても、塩基性物質除去用ケミカルフィルタによりアンモニア等の塩基性物質が除去されるため、下流側のエステル除去用ケミカルフィルタのエステル除去能が低下しにくい。また、下流側の有機ケイ素化合物除去用ケミカルフィルタにも塩基性物質が流れ込みにくくなり、無機シリカ系多孔質材料の酸点や細孔がつぶされにくくなるため、有機ケイ素化合物除去用ケミカルフィルタの有機ケイ素化合物の除去能が低下しにくい。さらに、有機ケイ素化合物除去用ケミカルフィルタの下流側のケミカルフィルタ(A2)により、わずかに流れ込むエステル又はエステルの分解物も除去される。このため、本発明の有機ケイ素化合物除去装置の下流側には、有機ケイ素化合物に加えて、エステル又はエステルの分解物である酸やアルコールが流出しにくい。さらに、有機ケイ素化合物除去用ケミカルフィルタにおける無機シリカ系多孔質材料は、塩基性物質による除去能の低下が起こりにくいため、有機ケイ素化合物除去用ケミカルフィルタの有機ケイ素化合物除去能が低下しにくく、フィルタ寿命が長持ちする。
上記(ii)の構成は、上記(i)の構成から塩基性物質除去用ケミカルフィルタを除いた構成である。流体中に塩基性物質がほとんど存在しない場合は塩基性物質除去用ケミカルフィルタを設けなくてもよい。従って、この場合も、上記(i)の構成を有する場合と同じく、本発明の有機ケイ素化合物除去装置の下流側には、有機ケイ素化合物に加えて、エステル又はエステルの分解物である酸やアルコール類が流出しにくい。
上記(iii)の構成は、上記(ii)の構成におけるエステル分解物除去用ケミカルフィルタを有機物質除去用ケミカルフィルタに置換した構成である。なお、上記(i)の構成及び(ii)の構成とは異なり、有機ケイ素化合物除去用ケミカルフィルタの下流側にエステル分解物除去用ケミカルフィルタではなく有機物質除去用ケミカルフィルタが設けられている。流体中のエステルがエステル除去用ケミカルフィルタで十分に除去される場合には、有機ケイ素化合物除去用ケミカルフィルタの下流側にエステル分解物除去用ケミカルフィルタを設けることは必須ではない。代わりに、有機物質除去用ケミカルフィルタを設けることにより、流体中に含まれ得る他の有機物質や、上流のケミカルフィルタから流出する有機物質を除去できるため、本発明の有機ケイ素化合物除去装置の下流側に汚染物質となり得る有機物質の流出も起こりにくくすることができる。このため、本発明の有機ケイ素化合物除去装置の下流側には、有機ケイ素化合物に加えて、エステル又はエステルの分解物である酸やアルコール、並びに他の有機物質が流出しにくい。なお、上記(iii)の構成において、有機物質除去用ケミカルフィルタとしては、例えば、上記エステル除去用ケミカルフィルタを用いることができる。
また、本発明の有機ケイ素化合物除去装置は、流体がコンプレッサーにより圧縮して送り出された流体(特に、気体)等の浄化にも用いることができる。流体が圧縮気体である場合、気体の圧力は、特に限定はされないが、0.5〜2.0MPaが好ましく、より好ましくは0.5〜1.0MPaである。また流体が圧縮気体である場合の流量は、特に限定されないが、10〜1300NL/minが好ましく、より好ましくは100〜600NL/minである。
[流体浄化方法]
さらに、本発明の流体浄化装置を用いて流体中の汚染物質(特に、有機ケイ素化合物)を除去することによって、流体を浄化することができる。このように、本発明の流体浄化装置を用いて流体中の汚染物質を除去して流体を浄化する方法を、「本発明の流体浄化方法」と称する場合がある。このため、本発明の流体浄化装置は、流体中(例えば、空気中)の汚染物質(特に、有機ケイ素化合物)を除去するため適宜な場所に設置できる。例えば、本発明の流体浄化装置(特に、本発明の有機ケイ素化合物除去装置)は、クリーンルーム内の設備(特に、露光設備の内部設備、塗布現像設備の内部設備、半導体チップの切削加工工程周辺の設備等の半導体製造工程周辺の設備)、磁気ディスク記憶装置内部の設備(例えば、HDD内部の設備)、液晶ディスプレイの製造工程周辺の設備、下水処理場の設備、埋め立て地の設備など、汚染物質(特に、有機ケイ素化合物)の除去が求められている用途として、特に好ましく用いることができる。
上記クリーンルーム(例えば、ガス状汚染物質が制御されたクリーンルーム、特に、半導体の製造工場のクリーンルームなど)では、シラノール化合物、シロキサン化合物等の様々なガス状有機化合物が存在している。シラノール化合物やシロキサン化合物は、半導体のシリコンウエハ表面や液晶ガラス基板表面に吸着し、これら製品に不具合を生じさせることがある。また、上記レーザー加工装置周辺では、シラノール化合物、シロキサン化合物等のガス状有機化合物が存在している場合、レーザー光がガス状有機化合物に衝突して散乱し、ガス状有機化合物がレーザー照射の妨げとなったり、レーザーの光学系、特にレンズ表面に付着してレーザー照射の障害となるため、レーザー加工に不具合が生じたり、被加工物の表面に付着し、被加工物を汚染することがある。また、上記下水処理場において、消化槽から発生する消化ガスには、シャンプーや化粧品に含まれるシリコーンオイルに起因する微量のシラノール化合物やシロキサン化合物が含まれている。さらに、上記埋め立て地においては、埋め立てに使用する泥(活性汚泥など)中のバイオガスに含まれるシロキサン化合物やシラノール化合物が問題となることがあった。従って、本発明の流体浄化装置(特に、本発明の有機ケイ素化合物除去装置)は、このような用途の流体浄化(特に、空気浄化)に特に好ましく使用することができる。
また、ガスセンサ、反応触媒等の汚染物質(特に、有機ケイ素化合物)による被毒の回避が求められる用途にも好ましく使用することができる。その他にも、各種分析装置の周辺、ガス供給ライン、細胞再生加工が行われる周辺、微細孔加工が行われる周辺、原子力プラント等にも用いることができる。また、有機ケイ素化合物は、燃料電池の起電力を低下させるおそれがあるため、燃料電池の製造工程等でも好ましく用いることができる。さらに、有機ケイ素化合物は、ガスタービン、ボイラーのバーナーや、熱交換器等に堆積して効率を低下させたり、不調や故障の発生要因となるおそれがあるため、このような場所で用いることもできる。
上記クリーンルーム内の流体浄化装置は、半導体製造装置用の流体浄化装置(特に、有機ケイ素化合物除去装置)として使用されることが好ましい。中でも、半導体製造プロセスの露光工程で用いる露光装置の内部用の流体浄化装置、塗布現像装置の内部用の流体浄化装置であることが好ましい。半導体製造プロセスの露光工程で用いる露光装置の内部、あるいは塗布現像装置(コーターデベロッパー)その他において、TMSが発生することがあり、浮遊しているTMSはレンズ等に結合して曇りの原因となり、露光障害等を引き起こすおそれがある。また、上記露光工程の空気中に環状シロキサン化合物が存在する場合、環状シロキサン化合物がウエハ表面に付着すると半導体の特性を変えてしまい、低濃度でも製品歩留まりを低下させるおそれがある。本発明の流体浄化装置(特に、本発明の有機ケイ素化合物除去装置)を半導体製造装置の内部に用いることで、本発明の半導体製造装置とすることができる。また、本発明の流体浄化装置(特に、本発明の有機ケイ素化合物除去装置)を上記露光装置の内部や、塗布現像装置に用いることで、本発明の露光装置、あるいは本発明の塗布現像装置とすることができる。
[半導体製造装置]
本発明の半導体製造装置は、本発明の流体浄化装置を備えている。上記半導体製造装置は、本発明の流体浄化装置を有する半導体製造装置であれば特に限定されない。本発明の半導体製造装置よれば、内部ケミカルフィルタとして、吸着剤(a)を用いた有機ケイ素化合物除去用ケミカルフィルタが用いられている場合、活性炭を吸着剤とする従来のケミカルフィルタを用いた半導体製造装置と比較して、流体中(特に、空気中)の有機ケイ素化合物を効率よく除去でき、さらに、エステル除去用ケミカルフィルタやエステル分解物除去用ケミカルフィルタを用いることにより、エステルやエステルの分解物の流出も抑制できる。特に、シラノール化合物の除去効率は短時間で低下することはなく、活性炭のようにシラノール化合物を放出してマイナス効率(フィルタ上流よりも下流側の方が高濃度)になることがない。また、シラノール化合物を二量化せずに吸着できるので、流体中(特に、空気中)の有機ケイ素化合物が低濃度であっても効率よく除去できる。そのため、流体中(特に、空気中)のシラノール化合物に起因する露光障害等を顕著に抑制できる。
[露光装置、塗布現像装置]
本発明の露光装置は、本発明の流体浄化装置を備えている。上記露光装置は、本発明の流体浄化装置を有する露光装置であれば特に限定されない。また、本発明の塗布現像装置は、本発明の流体浄化装置を備えている。上記塗布現像装置は、本発明の流体浄化装置を有する塗布現像装置であれば特に限定されない。本発明の露光装置び本発明の塗布現像装置によれば、内部ケミカルフィルタとして、吸着剤(a)を用いた有機ケイ素化合物除去用ケミカルフィルタが用いられている場合、活性炭を吸着剤とする従来のケミカルフィルタを用いた露光装置及び塗布現像装置と比較して、流体中(特に、空気中)の有機ケイ素化合物を効率よく除去でき、さらに、エステル除去用ケミカルフィルタやエステル分解物除去用ケミカルフィルタを用いることにより、エステルやエステルの分解物の流出も抑制できる。特に、シラノール化合物の除去効率は短時間で低下することはなく、活性炭のようにTMSを放出してマイナス効率(フィルタ上流よりも下流側の方が高濃度)になることがない。また、シラノール化合物を二量化せずに吸着できるので、流体中(特に、空気中)のシラノール化合物が低濃度であっても効率よく除去できる。そのため、流体中(特に、空気中)のシラノール化合物に起因する露光障害等を顕著に抑制できる。
本発明の流体浄化装置(特に、本発明の有機ケイ素化合物除去装置)は、レーザー加工装置用の流体浄化装置(特に、有機ケイ素化合物除去装置)として使用されることが好ましい。レーザー加工装置の内部、あるいはその周辺において有機ケイ素有機化合物が発生することがあり、レーザー光が有機ケイ素化合物に衝突して散乱することによってレーザー照射が妨げとなったり、レーザーの光学系、特にレンズ表面に付着してレーザー照射の障害となるため、レーザー加工に不具合が生じたり、被加工物の表面に付着し、被加工物を汚染することがある。また、本発明の流体浄化装置をレーザー加工装置の内部に用いることで、本発明のレーザー加工装置とすることができる。
[レーザー加工装置]
本発明のレーザー加工装置は、本発明の流体浄化装置を備えている。上記レーザー加工装置は、本発明の流体浄化装置を有するレーザー加工装置あれば特に限定されない。本発明のレーザー加工装置によれば、内部ケミカルフィルタとして、吸着剤(a)を用いた有機ケイ素化合物除去用ケミカルフィルタが用いられている場合、活性炭を吸着剤とする従来のケミカルフィルタを用いたレーザー加工装置と比較して、流体中(特に、空気中)のシラノール化合物やシロキサン化合物を効率よく除去でき、さらに、エステル除去用ケミカルフィルタやエステル分解物除去用ケミカルフィルタを用いることにより、エステルやエステルの分解物の流出も抑制できる。特に、シラノール化合物の除去効率は短時間で低下することはなく、活性炭のようにTMSを放出してマイナス効率(フィルタ上流よりも下流側の方が高濃度)になることがない。また、シラノール化合物を二量化せずに吸着できるので、流体中(特に、空気中)のシラノール化合物が低濃度であっても効率よく除去できる。そのため、流体中(特に、空気中)のシラノール化合物に起因するレーザー加工の不具合を顕著に抑制できる。
レーザー加工装置としては、公知乃至慣用のレーザー加工装置が挙げられ、例えば、レーザーによりガラスやフィルム等を切断する装置、レーザーにより金属の微細加工を行う装置等、レーザーを使用する様々な加工装置が挙げられる。また、レーザーは、炭酸ガスレーザー、YAG(イットリウム・アルミニウム・ガーネット)レーザー等、公知乃至慣用のレーザーが挙げられ、特に限定されない。

Claims (7)

  1. 三次元網目構造、プリーツ構造、及び充填構造からなる群より選択される少なくとも一種の構造を有するケミカルフィルタ(A)、並びにハニカム構造のケミカルフィルタ(B)をこの順に有することを特徴とする流体浄化装置。
  2. 前記ケミカルフィルタ(B)の下流側に、さらに、三次元網目構造、プリーツ構造、及び充填構造からなる群より選択される少なくとも一種の構造を有するケミカルフィルタ(A2)を有する、請求項1に記載の流体浄化装置。
  3. 前記ケミカルフィルタ(A)が三次元網目構造である、請求項1又は2に記載の流体浄化装置。
  4. 配管用ケミカルフィルタである請求項1〜3のいずれか一項に記載の流体浄化装置。
  5. 前記ケミカルフィルタ(B)が、純水と混合させて得られる水混合物(含有割合:5wt%)のpHが7以下である無機シリカ系多孔質材料を吸着剤として用いた有機ケイ素化合物除去用ケミカルフィルタである、請求項1〜4のいずれか一項に記載の流体浄化装置。
  6. 前記ケミカルフィルタ(A)が、前記有機ケイ素化合物除去用ケミカルフィルタの有機ケイ素化合物除去能を低下させる阻害物質を除去する阻害物質除去用ケミカルフィルタである、請求項5に記載の流体浄化装置。
  7. 請求項1〜6のいずれか一項に記載の流体浄化装置を用いて流体中の汚染物質を除去することを特徴とする流体浄化方法。
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CN115608392A (zh) * 2022-08-05 2023-01-17 广东工业大学 一种过硫酸盐催化材料及其制备方法和应用

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