JP2017059089A - 歩数計測装置、歩数計測方法、およびプログラム - Google Patents

歩数計測装置、歩数計測方法、およびプログラム Download PDF

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Abstract

【課題】人の歩行または走行による歩数の誤検出の発生を低減する歩数計測装置を提供する。【解決手段】歩数計測装置1は、複数の計測軸を有する加速度センサ101によって計測された夫々の計測軸(xa,ya,za)の加速度の計測値を合成して合成値を算出する合成値算出部12と、所定の条件を満たす合成値の変動を検出し、その検出回数に基づいて加速度センサ10の着用者による歩行または走行による歩数を算出する歩数算出部14とを有し、歩数算出部14は、所定の条件を満たす合成値の変動を検出した後、所定期間Tx内に発生した所定の条件を満たす合成値の変動を歩数としてカウントしない。【選択図】図1

Description

本発明は、人の歩行または走行による歩数を計測するための歩数計測装置、歩数計測方法、およびプログラムに関する。
従来から、人の生体情報を測定するための生体情報測定装置として、着用した人の歩行または走行による歩数を計測するための歩数計測装置が知られている。歩数計測装置の多くは、直交する3軸の加速度センサを備え、その加速度センサによって着用した人の歩行または走行を検出し、歩行または走行による歩数を計測している。
例えば、非特許文献1には、ピエゾ抵抗型3軸加速度センサによって、X軸、Y軸、およびZ軸の夫々の方向の加速度を検出し、検出した3軸の加速度を合成した値(3軸の加速度の合成値)が1Gよりも低くなった後に1Gよりも高くなったことを歩行の発生とみなして、歩数をカウントする技術が開示されている。また、非特許文献2には、3軸の合成値に基づいて歩数をカウントし、カウントした歩数を表示装置に表示させる従来の歩数計測装置のシステム構成図が開示されている。
「3軸加速度センサーアプリケーションノート ピエゾ抵抗型3軸加速度センサー HAAM−326B 歩数計編」、第1版、北陸電気工業株式会社、2007年2月。 "Low-Power Pedometer Using an MSP430TM MCU", Dennis Lehman, Application Report, SLAA599, TEXAS INSTRUMENT, May 2013.
非特許文献1や非特許文献2に開示された従来の歩数計測技術では、人の歩行を誤検出する場合があることが、本願発明者らの検討によって明らかとなった。以下、詳細に説明する。
非特許文献1や非特許文献2に開示された従来の一般的な歩数計測技術では、(式1)によって、3軸の合成値を算出し、その値に基づいて人の歩行および走行を検出している。
式(1)において、a[n]は3軸の加速度の合成値であり、ax[n]、ay[n]、およびaz[n]は、3軸の加速度センサによって計測された、歩数の計測を開始してからn(nは1以上の整数)番目の3軸夫々の方向の加速度の計測値である。
上記式(1)から理解されるように、3軸の加速度の合成値は常に“0”以上の値となる。そのため、各軸方向の加速度の値が全て“負”の値であったとしても、3軸の加速度の合成値は正となる。
一般に、人の歩行時または走行時の動作(以下、「歩行動作」と称する。)では、左足および右足の一方が床に接触している接地期間と、左足および右足の両方が浮いている無接地期間とがある。接地期間では、一方の足が地面に就いた衝撃により、瞬間的に、地面から歩行者の身体に対して、地面に対して垂直上向き(鉛直上向き)に大きな力が加わる。無接地期間では、歩行者の身体は滞空しているので、身体に加わる力は地面に対して垂直下向き(鉛直下向き)の重力加速度のみが生じる。
例えば、着用者の体動が大きい歩行動作時には、接地期間と無接地期間とが交互に繰り返され、歩行者の身体には、地面に対して垂直方向の加速度振動が生じる。この加速度振動の時間変化は、正弦的な周期波形になると考えられる。すなわち、歩行者の身体に生じる加速度の合成値は、接地期間において凸となり、無接地期間において凹となるような特性になる。したがって、この加速度の合成値のピークの発生を検出することで、歩数をカウントすることができる。
一方、着用者の動きが緩慢で体動が小さい歩行動作時には、一つひとつが明確に分離され、且つ時間の長い接地期間が連続して発生する。これらの接地期間では、一方の足が着地したタイミングで3軸の加速度の合成値が上昇して上に凸となるピークが生じ、その後、加速度の合成値が低下する。すなわち、夫々の接地期間において、加速度の合成値は一つの大きなピークを有する波形となる。したがって、この場合も同様に、加速度の合成値のピークの発生を検出することで、歩数をカウントすることができる。
しかしながら、従来の歩数計測方法では、着用者の動きが緩慢で体動が小さい歩行動作のように、一つひとつの接地期間が長く、且つ夫々の接地時間が明確に分離されている歩行動作において、歩数の誤検出が発生する場合がある。
図16は、従来の3軸の加速度センサを備えた歩数計測装置の歩数算出結果を示す図である。
図16には、着用者の動きが緩慢で体動が小さい歩行動作時における3軸の加速度の合成値の特性1001と、その合成値に基づいて計測された歩数1002とが示されている。
図16に示される歩数1002は、非特許文献1の「歩数の計測方法」および「表1」に記載された従来の歩数計測装置の歩数検出アルゴリズムにより計測したものである。具体的に、歩数1002は、第1ステップとして最初に3軸の合成値が閾値“0.9G”より低くなることを検出し、その後、第2ステップとして、一定時間(1秒)内に、3軸の合成値が閾値“1.1G”よりも高く且つ、前回の3軸の合成値との差が閾値“0.2G”以上であることを検出したら歩数としてカウントし、上記第2ステップが成立または不成立の場合に再び上記第1ステップに戻るという歩数検出アルゴリズムによって得られた結果である。
図16に示されるように、一つひとつの接地期間において、一方の足が着地したタイミングで3軸の加速度の合成値が上昇し、上に凸となるピークが生じる。このピークの発生を検出することによって歩数がカウントされる。
しかしながら、これらの接地期間においては、接地後しばらくしてから一方の足で地面を蹴り出して前に進むタイミング(蹴り出しのタイミング)においても、3軸の加速度の合成値が上昇する。この蹴り出しタイミングにおいて、加速度の合成値の大きな上昇が発生した場合には、図16に示すように、合成値が上に凸となるピークが生じる。このピークが歩数検出に係る条件を満たした場合、参照符号1003に示すように、歩数の誤検出が発生してしまう。
このような歩数の誤検出があると、実際の歩数と検出された歩数との間に誤差が生じ、その誤差が累積されることで歩数計測装置としての正確性が著しく低下する。その結果、歩数計測装置の着用者に誤った情報を提示し、健康を心がけている着用者の生活の質を著しく損なわせるおそれがある。
本発明は、上記の問題に鑑みてなされたものであり、本発明の目的は、人の歩行または走行による歩数の誤検出の発生を低減することにある。
本発明に係る歩数計測装置(1,2,3,4)は、複数の計測軸を有する加速度センサ(101)によって計測された夫々の計測軸(xa,ya,za)の加速度の計測値を合成して合成値を算出する合成値算出部(12)と、所定の条件を満たす合成値の変動を検出し、その検出回数に基づいて加速度センサの着用者による歩行または走行による歩数を算出する歩数算出部(14)とを有し、歩数算出部は、上記所定の条件を満たす合成値の変動を検出した後、所定期間(Tx)内に発生した所定の条件を満たす合成値の変動を歩数としてカウントしないことを特徴とする。
上記歩数計測装置(1,2,3,4)において、合成値に基づいて着用者による歩行動作の歩行ピッチを推定する歩行ピッチ推定部(13)を更に有し、歩数算出部は、歩行ピッチ推定部によって推定された歩行ピッチに基づいて、上記所定期間の長さを変更してもよい。
上記歩数計測装置(1,2,3,4)において、歩行ピッチ推定部は、合成値の平均値からのばらつきの大きさに基づいて歩行ピッチを推定し、歩数算出部は、前記歩行ピッチの増大に応じて前記所定期間が短くなるように設定してもよい。
上記歩数計測装置(2,4)において、着用者の移動速度を算出する移動速度算出部(17)を更に有し、歩数算出部は、移動速度が閾値を超えていない場合には、所定の条件を満たす合成値の変動を前記歩数としてカウントし、移動速度算出部によって算出された移動速度が上記閾値を超えている場合には、上記所定の条件を満たす合成値の変動を歩数としてカウントしないようにしてもよい。
上記歩数計測装置(4)において、上記加速度センサを有するセンサ部(10)と、上記加速度センサによって計測された計測軸毎の加速度の計測値を出力する出力部(103)と、出力部から出力された計測軸毎の加速度の計測値を記憶する記憶部(11)とを更に有し、センサ部および出力部は第1端末(5)に形成され、記憶部、合成値算出部、前記歩行ピッチ推定部、および前記歩数算出部は上記第1端末とは異なる第2端末(6)に形成されていてもよい。
なお、上記説明では、一例として、発明の構成要素に対応する図面上の構成要素を、括弧を付した参照符号によって表している。
本発明によれば、人の歩行または走行による歩数の誤検出の発生を低減することができる。
図1は、実施の形態1に係る歩数計測装置の構成を示す図である。 図2は、実施の形態1に係る歩数計測装置による歩数計測処理の概要を示す図である。 図3は、歩行動作における加速度の合成値の分散と歩行ピッチとの関係を示す図である。 図4は、実施の形態1に係る歩数計測装置における制限期間の決定方法の一例を示す図である。 図5は、実施の形態1に係る歩数計測装置の歩数計測結果を示す図である。 図6は、実施の形態2に係る歩数計測装置の構成を示す図である。 図7は、実施の形態1に係る歩数計測装置による歩数計測結果を示す図である。 図8は、実施の形態3に係る歩数計測装置の構成を示す図である。 図9は、実施の形態3に係る歩数計測装置による歩数計測処理の概要を示す図である。 図10は、実施の形態3に係る歩数計測装置における傾斜算出部の内部構成の一例を示す図である。 図11は、重力加速度に対する加速度センサの各計測軸の傾きを算出する処理を説明するための図である。 図12は、従来の3軸の加速度センサを備えた歩数計測装置の歩数計測結果を示す図である。 図13は、実施の形態3に係る歩数計測装置の歩数計測結果を示す図である。 図14は、実施の形態4に係る歩数計測装置の構成を示す図である。 図15は、実施の形態4に係る歩数計測装置の具体的な実現例を示す図である。 図16は、実施の形態4に係る歩数計測装置の構成を示す図である。
以下、本発明の実施の形態について図を参照して説明する。
≪実施の形態1≫
〈実施の形態1に係る歩数計測装置1の構成〉
図1は、実施の形態1に係る歩数計測装置の構成を示す図である。
同図に示される歩数計測装置1は、例えば人に代表される生体に装着され、加速度センサによる加速度の検出結果に基づいて、装着した生体(着用者)の歩行または走行による歩数を計測する装置である。歩数計測装置1は、加速度の検出結果に基づいて歩数を算出する際に、着用者の歩行動作の体動規模に応じて適切な歩数検出を行う機能を有している。
以下、歩数計測装置1の具体的な構成について説明する。
図1に示すように、歩数計測装置1は、センサ部10、記憶部11、合成値算出部12、歩行ピッチ推定部13、歩数算出部14、および表示部15を含む。
センサ部10は、着用者の体の動きや重力によって生じる生体情報を読み取る機能部である。センサ部10は、例えば、複数の計測軸を有する加速度センサ101とA/D変換器102を含む。
加速度センサ101は、例えば、X軸、Y軸、およびZ軸の3つの計測軸を有する3軸加速度センサであって、X軸、Y軸、およびZ軸の各計測軸の加速度を計測する。
A/D変換器102は、加速度センサ101によって計測されたアナログの各軸の計測値を所定の変換周期でディジタル信号に夫々変換し、X軸方向の加速度の計測値(X軸の加速度)ax[n]、Y軸方向の加速度の計測値(Y軸の加速度)ay[n]、およびZ軸方向の加速度の計測値(Z軸の加速度)az[n]として出力する。ここで、上述したように、nは1以上の整数であり、計測が開始されてからの順番(例えば、A/D変換処理が行われた順番)を表している。
記憶部11は、センサ部10から出力された各軸の加速度の計測値を記憶するための機能部である。記憶部11としては、例えばフラッシュメモリ等の書き換え可能な不揮発性のメモリやRAM(Random Access Memory)等を例示することができる。
合成値算出部12、歩行ピッチ推定部13、および歩数算出部14は、例えば、MCU(Memory Control Unit)等のプログラム処理装置が実行するプログラム処理によって実現される。
合成値算出部12は、記憶部11に記憶された夫々の計測軸の加速度の計測値を合成して合成値を算出する。
歩行ピッチ推定部13は、歩行または走行時における着用者の体動規模を評価するための指標としての着用者の歩行ピッチを推定する機能部である。
ここで、歩行ピッチとは、単位時間(例えば、1分間)あたりの歩数である。
歩数算出部14は、合成値算出部12によって算出された加速度の合成値に基づいて、着用者による歩行または走行による歩数を算出するための機能部である。具体的に、歩数算出部14は、歩数検出条件を満たす合成値の変動を検出し、その検出回数に基づいて歩数を算出する。
ここで、歩数検出条件とは、加速度の合成値の時間経過に伴う変動に基づいて、歩行または走行の有無を判定するための条件である。なお、歩数検出条件の詳細については、後述する。
また、歩数算出部14は、歩数の算出処理を実行している期間において、合成値の変動が歩数検出条件を満たした場合であっても歩数としてカウントしない期間(以下、「制限期間Tx」と称する。)を有している。制限期間Txは、歩数算出部14が歩数検出条件を満たす合成値の変動を検出した直後(例えば、歩数をカウントした直後)に設定されている。
また、歩数算出部14は、歩行ピッチ推定部13による歩行ピッチの推定結果に基づいて、制限期間Txの長さを設定する。
表示部15は、歩数算出部14によって算出された歩数の情報を、着用者を含むユーザに対して視覚的に提供するための機能部である。表示部15としては、液晶ディスプレイや有機ELディスプレイ等の表示装置を例示することができる。
〈実施の形態1に係る歩数計測装置1による歩数計測処理〉
次に、実施の形態1に係る歩数計測装置1による歩数計測処理について説明する。
図2は、実施の形態1に係る歩数計測装置による歩数計測処理の概要を示す図である。
先ず、歩数計測装置1は、記憶部11に記憶された加速度センサ101による3軸の加速度の計測値を合成して、加速度の合成値を算出する(S1)。次に、歩数計測装置1は、ステップS1で算出した加速度の合成値に基づいて、着用者による歩行ピッチを推定する(S2)。次に、歩数計測装置1は、ステップS2で推定した歩行ピッチに基づいて、歩数をカウントする際の制限期間Txの長さを決定する(S3)。その後、歩数計測装置1は、ステップS3で決定した制限期間Txに従って歩数検出条件を満たす加速度の合成値の変動を検出し、その検出回数に基づいて加速度センサの着用者による歩行または走行による歩数を算出する(S4)。
その後は、算出された歩数の情報が表示部15に表示される。なお、上記歩数の情報は、表示部15に表示されるのみならず、記憶部11に記憶されてもよいし、外部の装置に無線または有線によって送信されてもよい。
次に、図2に示した歩数計測処理における各ステップについて、詳細に説明する。
(1)ステップS1(加速度の合成値a[n]の算出処理)
ステップS1では、合成値算出部12が、記憶部11に記憶されたX軸の加速度ax[n]、Y軸の加速度ay[n]、およびZ軸の加速度az[n]に基づいて、3軸の加速度の合成値a[n]を算出する。具体的には、合成値算出部12は、上述した式(1)を解くことにより、3軸の加速度の合成値a[n]を算出する。
(2)ステップS2(歩行ピッチの推定処理)
ステップS2では、歩行ピッチ推定部13が着用者の歩行ピッチを推定する。
本願発明者による検討によれば、歩行ピッチと加速度の合成値a[n]の統計量との間に相関関係があることがわかっている。
図3は、歩行動作における加速度の合成値の統計量と歩行ピッチとの関係を示す図である。
図3には、被験者11名による歩行または走行時の歩行ピッチ(1分間あたりの歩数)と、歩行動作における加速度の合成値の統計量の一つである、加速度の合成値の平均値からのばらつきの大きさを表す分散S[n] 2の実測結果が示されている。
また、図3において、縦軸は加速度の合成値の分散〔G2〕を表し、横軸は歩行ピッチ〔spm:steps per minute〕を表している。
図3から理解されるように、右上がりに計測結果が散布しており、歩行ピッチと分散との間には相関関係がある。例えば、歩行ピッチが低い歩行時には分散が小さくなり、歩行ピッチが高い走行時には分散が大きくなる。すなわち、歩行ピッチが高くなるほど、分散も高くなる傾向がある。したがって、加速度の合成値の分散を求めれば、着用者の歩行ピッチ(体動規模)を推定することができる。
n番目の加速度の合成値に対する分散S[n] 2は、式(2)によって表すことができる。
ここでは、一例として、分散を算出する際の合成値のサンプル数を“25”とし、n番目に計測された加速度の合成値に関する直近の時系列25個の加速度の合成値を用いている。
式(2)において、Av[n]は、加速度の合成値の平均値であり、式(3)で表すことができる。
ステップS2では、歩行ピッチ推定部13が、上記式(2),(3)の演算を行うことにより、n番目の加速度の合成値の分散S[n] 2を算出し、歩行ピッチを推定する。
(3)ステップS3(制限期間Txの決定処理)
ステップS3では、歩数算出部14が制限期間Txの長さを決定する。
具体的には、歩数算出部14は、歩行ピッチの増大に応じて制限期間Txが短くなるように設定する。より具体的には、歩数算出部14は、歩行ピッチ推定部13によって算出されたn番目の加速度の合成値の分散S[n] 2に基づいて制限期間Txを決定する。
図4は、制限期間Txの決定方法の一例を示す図である。
図4に示されるように、歩数算出部14は、分散S[n] 2の範囲に応じて異なる制限期間Txを定める。例えば、分散S[n] 2が0.26未満の場合には、制限期間Txを320msとし、分散S[n] 2が0.26以上0.6未満の場合には、制限期間Txを240msとし、分散S[n] 2が0.6以上の場合には、制限期間Txを120msとする。
このように、歩数算出部14は、分散S[n] 2が大きいほど制限期間Txが短くなるように設定する。これによれば、例えば、歩行のように体動の小さい歩行動作の場合には制限期間Txが長く設定され、走行のように体動が大きい歩行動作の場合には、制限期間Txが短く設定される。
なお、上記の例では、加速度の合成値の平均値からのばらつきの大きさを表す指標として分散を用いたが、分散の代わりに標準偏差を用いてもよい。標準偏差Sは、式(4)に示すように、分散S2の平方根をとることによって算出することができる。
(5)ステップS4(歩数の算出処理)
ステップS4では、歩数算出部14が、ステップS3で設定した制限期間Txに従って、ステップS1で算出された加速度の合成値a[n]の時間経過に伴う変動が歩数検出条件を満たした回数をカウントし、その回数を歩数として算出する。
ここでは、一例として、歩数算出部14は、図16に示した従来の歩数計測装置と同様の歩数検出条件を採用する。すなわち、歩数算出部14は、加速度の合成値a[n]が第1閾値(例えば0.9G)より低くなった後の一定時間(例えば1秒)内に、加速度の合成値a[n]が第2閾値(例えば1.1G)よりも高く、且つ前回の加速度の合成値a[n]との差が第3閾値(例えば0.2G)以上であることを、歩数検出条件とする。
歩数算出部14は、加速度の合成値a[n]が上記歩数検出条件を満たした場合には、歩行または走行があったと判定し、歩数をカウントアップする。一方、加速度の合成値a[n]が上記歩数検出条件を満たさない場合には、歩数をカウントアップしない。
また、歩数算出部14は、歩数検出条件を満たす合成値の変動を検出してから制限期間Txが経過するまで検出した次の合成値の変動は、歩数としてカウントしない。すなわち、歩行または走行を検出した直後の制限期間Tx内に、加速度の合成値a[n]の変動が上記歩数検出条件を満たした場合であっても、歩行または走行があったとは判定せず、歩数をカウントアップしない。
〈実施の形態1に係る歩数計測装置1による効果〉
図5は、実施の形態1に係る歩数計測装置1の歩数計測結果を示す図である。
図5には、図16に示した従来の歩数計測装置と同様の各計測軸の加速度のデータを用いることによって、歩数計測装置1が算出した加速度の合成値a[n]の特性2001と、歩数計測装置1が加速度の合成値a[n]に基づいて算出した歩数2002とが示されている。また、比較例として、図16に示した従来の歩数計測装置によって算出した歩数1002も示されている。
上述したように、歩数計測装置1では、歩数検出条件を満たす加速度の合成値a[n]の変動が検出されてから制限期間Txが経過するまでの間は、歩数検出条件を満たす加速度の合成値a[n]の次の変動が起こったとしても、歩行または走行があったと判定されない。その結果、歩数計測装置1では、図5に示すように、時刻t4からt5の接地期間において発生した蹴り出し時における加速度の合成値a[n]の上昇に伴う歩数のカウントは行われず、従来の歩数計測装置において発生していた歩数の誤検出を防止することができる。
以上、実施の形態1に係る歩数計測装置1によれば、歩数検出条件を満たす加速度の合成値a[n]の変動が検出された後に歩数の検出をマスクする制限期間Txを設けるので、例えば、体動が小さい歩行動作において片足を蹴り出すタイミングで発生する加速度の合成値の上昇に伴う歩数の誤検出を防止することができる。
これにより、従来の歩数計測装置に比べて、歩数の誤検出の発生を低減することができ、歩数計測装置の着用者に対して、より正確な歩数の情報を提示することが可能となる。
また、歩数計測装置1によれば、制限期間Txを着用者の歩行ピッチに応じて変更するので、様々な歩行動作に対応した適切な歩数計測を実現することができる。
例えば、歩行ピッチの低い(体動が小さい)歩行動作において、1回の歩行を検出してから280ms後に、歩数検出条件を満たす加速度の合成値の変動が起きる場合には、図5に示すように制限期間Txを320msに設定すれば、その変動は歩数としてカウントされないようにすることができる。
一方、ランニング等のように歩行ピッチの高い(体動が大きい)歩行動作は、ピッチの低い歩行動作に比べて一つひとつの接地期間が短いので、制限期間Txを上述の歩行時と同一の値に設定すると、本来検出すべき歩行が検出できなくなるような事態が生じる可能性がある。
そこで、実施の形態1に係る歩数計測装置1のように、歩行ピッチが高いほど制限期間Txが短くなるように設定することで、本来検出すべき歩行または走行が検出できなくなるという事態を回避することができる。
すなわち、歩数計測装置1によれば、歩行時のように体動が小さい場合には、制限期間Txが長く設定され、走行時のように体動が大きい場合には、制限期間Txが短く設定されるので、様々な歩行動作に対応した適切な歩数検出を実現することができる。
≪実施の形態2≫
図6は、実施の形態2に係る歩数計測装置の構成を示す図である。
実施の形態2に係る歩数計測装置2は、着用者の移動速度に基づいて歩数検出を制限する機能を備える点において、実施の形態1に係る歩数計測装置1と相違し、その他の点においては、実施の形態1に係る歩数計測装置1と同様である。
具体的に、歩数計測装置2は、実施の形態1に係る歩数計測装置1を構成する機能部に加えて位置情報取得部16と移動速度算出部17を更に有し、歩数算出部14の代わりに歩数検出部18を備える。
なお、実施の形態2に係る歩数計測装置2において実施の形態1に係る歩数計測装置1と同一の構成要素には、同一の符号を付し、その詳細な説明を省略する。
位置情報取得部16は、着用者の位置情報を取得するための機能部である。
ここで、上記位置情報は、例えばGPSや携帯電話などの無線通信システムより提供される位置に関する情報である。上記位置情報には、例えば、人工衛星から不連続に到来する、着用者が存在する場所の緯度の情報と経度の情報とが含まれる。
例えば、位置情報取得部16は、GPSや携帯電話などの無線通信システムから送信されたデータを受信するためのアンテナや通信回路等を含んでいる。
移動速度算出部17は、位置情報取得部16によって取得した位置情報に基づいて、着用者の移動速度を算出する機能部である。
具体的に、移動速度算出部17は、位置情報取得部16によって取得した緯度および経度の情報の時間変化から移動速度を算出する。より具体的には、移動速度算出部17は、球(地球)の中心からその球面における2つの地点を夫々結んだ2つ直線によって作られる角度を算出し、その角度に基づいて移動速度を算出する。
以下、移動速度算出部17による移動速度の算出方法について詳細に説明する。
先ず、移動速度算出部17は、n番目に計測された着用者の地点の緯度をδ[n]、経度をλ[n]、n+1番目に計測された着用者の地点の緯度をδ[n+1]、経度をλ[n+1]としたとき、地球の中心から2つの地点を夫々結んだ2つ直線によって作られる角度dを算出する。
ここで、角度dは、球面三角法の公式より、式(5)で表すことができる。
式(5)において、経度は,東経を正、西経を負とし、緯度は,北緯を正、南緯を負としている。また、角度dの単位はラジアンである。
ここで、知りたいのは角度dであるが、徒歩での移動距離は、地球の大きさに対して非常に小さく、角度が小さいとき余弦はほとんど変化しないため、GPSなどの機械精度の誤差の影響を受ける可能性がある。そこで、式(5)を、左辺の余弦を正弦に変換した式(6)に書き換える。
ここで、上記式(6)は、式(5)を半角・倍角公式を用いて変形したものであり、いかなる近似も使用していないので、式(5)と等価である。それ故、原理を変えずに、歩行へ適応条件を広げることを可能にしている。
そこで、移動速度算出部17は、先ず、式(6)からsin2(d/2)を算出する。次に、移動速度算出部17は、sin2(d/2)の平方根に対する正弦の逆関数(arcsin)を算出した上で、その値を2倍することにより、角度dを算出する。
次に、移動速度算出部17は、2つの地点間の距離Rを算出する。
扇形の弧の長さは中心角と半径の積で表されることから、角度dに地球の平均半径(=6370km)を乗じることにより、2つ地点間の距離Rを求めることができる。具体的には、移動速度算出部17は、下記式(7)を解くことによって、2つの地点間の距離R〔km〕を算出する。
式(7)において、距離Rは、位置情報を取得するサンプリング間隔あたりの移動距離である。したがって、上記サンプリング間隔をT[秒]とすれば、移動速度v〔km/h〕を算出することができる。具体的には、移動速度算出部17は、式(8)を解くことによって、着用者の移動速度v〔km/h〕を算出する。
歩数算出部18は、移動速度算出部17によって算出された着用者の移動速度vに基づいて、歩数検出の有効/無効を判定する。
図7は、移動速度vに基づく歩数検出の有効/無効の決定方法の一例を示す図である。
歩数算出部18は、移動速度vが閾値よりも大きいか否かを判定することにより、歩数検出の有効/無効を決定する。
例えば、図7に示されるように、移動速度vが閾値vt=35km/h未満の場合には、歩数検出を有効とし、制限期間Tx以外の期間において歩数検出条件を満たす加速度の合成値の変動を検出したら歩数としてカウントする。一方、移動速度vが閾値vt=35km/h以上の場合には、歩数検出を無効とし、歩数検出条件を満たす加速度の合成値の変動を検出したとしても、歩数としてカウントしない。
以上、実施の形態2に係る歩数計測装置2によれば、着用者の移動速度に応じて歩数検出の有効/無効を切り替えることができるので、例えば、着用者の移動速度が一般的な歩行や走行とかけ離れた値(例えば時速35km以上)であり、着用者が自動車、自転車または電車等の乗り物で移動していることが推察される場合には、歩数検出条件を満たす加速度の合成値の変動が生じても、歩数をカウントしないように設定することができる。これにより、歩数の誤検出の発生を更に低減することができる。
≪実施の形態3≫
図8は、実施の形態3に係る歩数計測装置の構成を示す図である。
実施の形態3に係る歩数計測装置3は、着用者の歩行動作時の地面に対して垂直方向の加速度振動を考慮して加速度の合成値を補正し、補正した合成値に基づいて歩数検出を行う点において、実施の形態1に係る歩数計測装置1と相違し、その他の点においては、実施の形態1に係る歩数計測装置1と同様である。
具体的に、歩数計測装置3は、傾斜算出部20、振動方向判定部21、および合成値補正部22を更に有している。傾斜算出部20、振動方向判定部21、および合成値補正部22は、歩行ピッチ推定部13等と同様に、MCU等のプログラム処理装置が実行するプログラム処理によって実現される。
傾斜算出部20は、歩数計測装置を生体に着用したときの加速度センサ101の取り付け角度を検出するための機能部である。具体的に、傾斜算出部20は、記憶部11に記憶された各計測軸の加速度の計測値に基づいて、加速度センサ101の地面に対して垂直な方向(鉛直方向)に対する傾き(傾斜)を算出する。
振動方向判定部21は、傾斜算出部20によって算出された傾斜に基づいて、加速度センサ101を着用した着用者の鉛直方向の振動の向き(位相)を判定する機能部である。
合成値補正部22は、加速度センサ101の着用者の鉛直方向の動きに応じて、加速度の合成値を補正するための機能部である。具体的に、合成値補正部22は、振動方向判定部21によって判定された着用者の鉛直方向の振動の向きに基づいて、合成値算出部12によって算出された合成値を補正する。
歩行ピッチ推定部23および歩数算出部24は、合成値算出部12によって算出された加速度の合成値の代わりに、合成値補正部22によって補正された加速度の合成値を用いて、実施の形態1に係る歩行ピッチ推定部13および歩数算出部14と同様の処理を行う。
次に、実施の形態3に係る歩数計測装置3による歩数計測処理について説明する。
図9は、実施の形態3に係る歩数計測装置による歩数計測処理の概要を示す図である。
先ず、歩数計測装置3は、実施の形態1に係る歩数計測装置1と同様に、記憶部11に記憶された加速度センサ101による3軸の加速度の計測値を合成して、加速度の合成値を算出する(S1)。次に、歩数計測装置3は、各計測軸の加速度の計測値に基づいて、加速度センサ101の鉛直方向に対する傾斜を算出する(S6)。
次に、歩数計測装置3は、ステップS6で算出した傾斜に基づいて、加速度センサ101の着用者の鉛直方向の振動の向きを判定する(S7)。次に、歩数計測装置3は、ステップS7で判定した振動の向きに基づいて、ステップS1で算出した各計測軸の加速度の合成値を補正する(S8)。
その後、歩数計測装置3は、実施の形態1に係る歩数計測装置1と同様に、ステップS8で算出した補正後の合成値に基づいて、歩行ピッチの推定処理(S2)、制限期間Txの決定処理(S3)、および歩数の算出処理(S4)を実行する。
次に、図9に示した歩数計測処理における各ステップについて、詳細に説明する。
ここでは、実施の形態3に係る歩数計測装置3に特有の処理ステップであるステップS6、ステップS7、およびステップS8について詳細に説明し、実施の形態1に係る歩数計測装置1と同様の処理ステップS2〜S4については、説明を省略する。
(1)ステップS6(傾斜の算出処理)
ステップS6では、傾斜算出部20が、加速度センサ101の鉛直方向に対する傾斜を算出する。
具体的に、傾斜算出部20は、先ず、3軸の加速度の合成値a[n]から高周波成分を除去することにより、重力加速度に基づくベクトル量を抽出する処理を行う。次に、傾斜算出部20は、抽出した重力加速度に基づくベクトル量に基づいて、重力加速度に対する加速度センサ101の各計測軸の傾斜を算出する処理を行う。以下、上記の各処理について具体的に説明する。
図10は、傾斜算出部20の内部構成の一例を示す図である。
図10に示されるように、傾斜算出部20は、ローパスフィルタ201と、角度算出部202とを含む。
ローパスフィルタ201は、上述の重力加速度に基づくベクトル量を抽出する処理を実現するための機能であり、記憶部11に記憶されたX軸の加速度ax[n]、Y軸の加速度ay[n]、Z軸の加速度az[n]、および3軸の加速度の合成値a[n]に対して、帯域制限処理を行う。
本実施の形態では、ローパスフィルタ201として、式(9)で示される帯域制限処理を行うフィルタを例にとり、説明する。
式(9)において、β[n]はローパスフィルタ201の入力を表し、上述したax[n]、ay[n]、az[n]、およびa[n]の何れかが代入される。β´[n]は、ローパスフィルタ201の出力を表している。また、hは任意のフィルタ係数であり、0から1の範囲の値である。hを“1”に近いほど、ローパスフィルタ201の帯域制限の効果が強くなり、除去される周波数帯域が広くなる。
式(9)において、例えばh=0.9とした場合、1つ前の計測周期で計測された加速度の90%が、次の計測周期で計測された加速度に引き継がれるということを意味する。フィルタ係数hを0.9程度(例えば、h=0.85〜0.95)に設定することにより、鋭い凹凸の発生のみを前回測定値の継続という手段によって除去できる。
このように、ローパスフィルタ201に加速度のデータを入力すると、その加速度のデータに含まれる高周波成分、すなわち鋭い凹凸が除去されるので、時間経過に伴う加速度の変化(加速度の特性)が正弦波に近い形状となる。
上述のステップS6における、重力加速度に基づくベクトル量を抽出するため処理では、ローパスフィルタ201に加速度の合成値a[n]を入力することにより、高周波成分が除去され、低周波数成分のみを含む合成値a´[n]が算出される。これにより、加速度センサ101の着用者の体動による加速度成分が除去され、重力加速度の成分が支配的なベクトル量a´[n]を得ることができる。以下、このベクトル量a´[n]を、重力加速度に基づくベクトル量a´[n]と称する。
この重力加速度に基づくベクトル量a´[n]を参照することにより、重力加速度の向きを判定することが可能となる。また、式(9)で表されるローパスフィルタ201によれば、式(9)における右辺の2項目“(1−h)β[n]”によって、次の計測周期で計測された加速度のデータの一部(h=0.9の場合、次の計測周期の加速度のデータの10%)が更新されるため、着用者の姿勢の大まかな変動にも追随することが可能となる。
なお、一般的に加速度センサでは、重力加速度そのものではなく、その抗力を反作用として計測しているため、重力加速度に基づくベクトル量a´[n]は、重力加速度の反作用を表している。
角度算出部202は、上述の重力加速度に対する加速度センサ101の各計測軸の傾斜を算出する処理を実現するための機能部であり、重力加速度に対する加速度センサ101の各計測軸の傾きを算出する。
図11は、重力加速度に対する加速度センサ101の各計測軸の傾きを算出する処理を説明するための図である。
図11において、Z軸は、地面に対して垂直な方向(鉛直方向)の軸である。X軸およびY軸は、互いに直交し、且つZ軸に対しても直交する軸である。また、xa軸、ya軸、およびza軸は、加速度センサ101の計測軸である。
加速度センサ101の計測軸であるxa軸、ya軸、およびza軸の向きは、着用者の身体への加速度センサ101の取り付け角度に依存するため、必ずしも、xa軸、ya軸、およびza軸の何れかが地面に対して垂直の軸となる訳ではない。そこで、角度算出部202により、地面に対して垂直なZ軸に対するxa軸、ya軸、およびza軸の傾斜(ずれ)を、重力加速度の反作用と加速度センサ101の各計測軸との間の角度として算出する。
具体的には、図11に示すように、角度算出部202は、重力加速度に基づくベクトル量a´[n]に対する、ローパスフィルタ201を通した後のxa軸の加速度a´x[n]、ya軸の加速度a´y[n]、およびza軸の加速度a´z[n]との間の角度の情報を夫々算出する。より具体的には、下記式(10)、(11)、および(12)を解くことによって、重力加速度に基づくベクトル量a´[n]に対するxa軸、ya軸、およびza軸の角度の情報sinθx[n],sinθy[n],sinθz[n]を夫々算出する。
(2)ステップS7(鉛直方向の振動の向きの判定処理)
ステップS7では、振動方向判定部21が、ステップS6で算出した傾斜に基づいて、加速度センサ101の着用者の鉛直方向の振動の向きを判定する。
具体的に、振動方向判定部21は、先ず、加速度センサ101の各計測軸xa、ya、およびzaのうち、鉛直方向の軸(Z軸)に最も近い最垂直軸を決定する処理を行う。具体的には、振動方向判定部14は、角度算出部202によって上記式(10)乃至(12)に基づいて算出された角度の情報sinθx[n],sinθy[n],sinθz[n]を夫々比較し、最も小さい上記角度の情報を有する計測軸を最垂直軸とする。
例えば、|sinθx[n]|≦|sinθy[n]|、且つ|sinθx[n]|≦|sinθz[n]|のとき、加速度センサ101のxa軸が最垂直軸となる。また、|sinθy[n]|≦|sinθx[n]|、且つ|sinθy[n]|≦|sinθz[n]|のとき、加速度センサ101のya軸が最垂直軸となる。また、|sinθz[n]|≦|sinθx[n]|、且つ|sinθz[n]|≦|sinθy[n]|のとき、加速度センサ101のza軸が最垂直軸となる。
次に、振動方向判定部21は、最垂直軸の地面に対する向きを判定する処理を行う。具体的に、振動方向判定部21は、ローパスフィルタ201を通した後の最垂直軸の加速度の値の符号から、その最垂直軸が地面に対して上向き(鉛直上向き)であるか、下向き(鉛直下向き)であるかを判定する。
例えば、xa軸が最垂直軸である場合に、ローパスフィルタ201を通した後のxa軸の加速度a´x[n]≧0であれば、最垂直軸であるxa軸が鉛直上向きであると判定され、a´x[n]<0であれば、最垂直軸であるxa軸が鉛直下向きであると判定される。また、例えば、ya軸が最垂直軸である場合に、ローパスフィルタ201を通した後のya軸の加速度a´y[n]≧0であれば、最垂直軸であるya軸が鉛直上向きであると判定され、a´y[n]<0であれば、最垂直軸であるya軸が鉛直下向きであると判定される。また、例えば、za軸が最垂直軸である場合に、ローパスフィルタ201を通した後のza軸の加速度a´z[n]≧0であれば、最垂直軸であるza軸が鉛直上向きであると判定され、a´z[n]<0であれば、最垂直軸であるza軸が鉛直下向きであると判定される。
次に、振動方向判定部21は、加速度センサ101の着用者の鉛直方向の振動の向きを判定する処理を行う。具体的に、振動方向判定部21は、最垂直軸の加速度の計測値と、上記処理で判定した最垂直軸の方向とに基づいて、合成値a[n]の最垂直軸に対する位相を判定する。
例えば、最垂直軸であるxa軸が鉛直上向きである場合に、ローパスフィルタ201を通す前のxa軸の加速度ax[n]≧0ならば、合成値a[n]は最垂直軸に対して順位相であり、加速度センサ101の着用者の鉛直方向の振動が鉛直上向きであると判定する。一方、xa軸の加速度ax[n]<0ならば、合成値a[n]は最垂直軸に対して逆位相であり、加速度センサ101の着用者の鉛直方向の振動が鉛直下向きであると判定する。
また、例えば、最垂直軸であるya軸が鉛直上向きである場合に、ローパスフィルタ201を通す前のya軸の加速度ay[n]≧0ならば、合成値a[n]は最垂直軸に対して順位相であり、加速度センサ101の着用者の鉛直方向の振動が鉛直上向きであると判定する。一方、xa軸の加速度ay[n]<0ならば、合成値a[n]は最垂直軸に対して逆位相であり、加速度センサ101の着用者の鉛直方向の振動が鉛直下向きであると判定する。
また、例えば、最垂直軸であるza軸が鉛直上向きである場合に、ローパスフィルタ201を通す前のza軸の加速度az[n]≧0ならば、合成値a[n]は最垂直軸に対して順位相であり、加速度センサ101の着用者の鉛直方向の振動が鉛直上向きであると判定する。一方、za軸の加速度az[n]<0ならば、合成値a[n]は最垂直軸に対して逆位相であり、加速度センサ101の着用者の鉛直方向の振動が鉛直下向きであると判定する。
(3)ステップS8(加速度の合成値の補正処理)
ステップS8では、合成値補正部22が、ステップS7で判定した着用者の鉛直方向の振動の向きに基づいて、各計測軸の加速度の合成値を補正する。
具体的には、ステップS7において、着用者の鉛直方向の振動が鉛直上向きであると判定された場合には、合成値算出部12によって算出された合成値a[n]の符号を“正”とし、着用者の鉛直方向の振動が鉛直下向きであると判定された場合には、合成値算出部12によって算出された合成値a[n]の符号を“負”とする。
すなわち、補正後の加速度の合成値A[n]は、着用者の鉛直方向の振動が鉛直上向きであると判定された場合には、式(13)で表され、着用者の鉛直方向の振動が鉛直下向きであると判定された場合には、式(14)で表される。
これにより、着用者の鉛直方向の振動の向きと同じ符号のベクトルを持つ合成値を得ることができる。
ステップテップS8で得られた補正後の加速度の合成値は、上述したように、歩行ピッチ推定部23および歩数算出部24に供給され、実施の形態1に係る歩数計測装置1と同様に、歩行ピッチの推定処理(S2)、制限期間Txの決定処理(S3)、および歩数の算出処理(S4)に利用される。
次に、実施の形態3に係る歩数計測装置3による効果について説明する。
図12は、実施の形態3に係る歩数計測装置3の比較例として、従来の3軸の加速度センサを備えた歩数計測装置の歩数計測結果を示す図である。
図13は、実施の形態3に係る歩数計測装置3の歩数計測結果を示す図である。
図12には、着用者の体動が大きい歩行動作時における3軸の加速度の合成値の特性3001と、その合成値に基づいて計測された歩数3002とが示されている。
また、図13には、図12に示した従来の歩数計測装置と同様の各計測軸の加速度の計測値を用いることによって、実施の形態3に係る歩数計測装置3が算出した補正後の加速度の合成値a´[n]の特性4001と、歩数計測装置3が補正後の加速度の合成値a´[n]とに基づいて算出した歩数4002とが示されている。
なお、図12、13に示される従来の歩数計測装置の歩数の算出結果と、実施の形態3に係る歩数計測装置3による歩数の算出結果は、実施の形態1に係る歩数計測装置1と同様の歩数検出条件を用いた歩数検出アルゴリズムを適用することにより、得られたものである。
図12、13から理解されるように、従来の歩数計測装置では、上記(1)に従って加速度の合成値を算出しているため、当該加速度の合成値は正の値となる。これに対し、歩数計測装置3では、上記(1)に従って算出した加速度の合成値に対して、着用者の鉛直方向の振動の向きを考慮した補正を行うため、補正後の合成値A[n]は正または負の値となる。
従来の歩数計測装置では、図12に示すように、時刻t2からt3までの無接地期間において、3軸の加速度の合成値が上に凸となるピークが発生する。このピークの発生は、上記式(1)に基づいて加速度の合成値を算出することによる、各軸の加速度の合成値の符号の反転に起因する。すなわち、上記式(1)に従って加速度の合成値を算出すると、各軸の加速度の測定値の符号の情報が失われるため、一つでも大きな負の加速度が計測された場合には、加速度の合成値が大きな正の値に変換されてしまう。この加速度の合成値の正のピークの発生が、上述した歩数検出条件を満足すると、図12の参照符号3003に示すように、歩数の誤検出が起こる。
これに対し、実施の形態3に係る歩数計測装置3によれば、着用者の歩行動作時の地面に対して垂直方向の加速度振動を考慮して加速度の合成値に符号を付す補正を行うので、図13に示すように、補正後の合成値A[n]には加速度の合成値の符号の反転に起因する凸のピークが抑えられる。これにより、従来の歩数計測装置の計測結果において見られた時刻t2からt3までの無接地期間における歩数の誤検出を防止することができる。
以上、実施の形態3に係る歩数計測装置3によれば、加速度センサ101の各計測軸の鉛直方向に対する傾斜に基づいて加速度センサ101を身に付けた着用者の鉛直方向の振動の向きを判定するとともに、判定した鉛直方向の振動の向きに応じて加速度センサ101の各計測軸の加速度の合成値を補正し、補正した合成値に基づいて歩数を検出するので、例えば、体動が大きい歩行動作時に発生する無接地期間における歩数の誤検出を防止することができる。
すなわち、実施の形態3に係る歩数計測装置3によれば、実施の形態1に係る歩数計測装置と同様に、体動が小さい歩行動作における歩数の誤検出を防止することができ、且つランニングのような体動が大きい歩行動作における歩数の誤検出を防止することができるので、従来の歩数計測装置に比べて、より高精度な歩数検出を実現することができる。
≪実施の形態4≫
図14は、実施の形態4に係る歩数計測装置の構成を示す図である。
実施の形態4に係る歩数計測装置4は、加速度センサ101を含むセンサ部10と、歩行ピッチ推定部13等の歩数を算出するための信号処理部とが別個の端末に形成されている点において、実施の形態1乃至3に係る歩数計測装置1乃至3と相違する。
なお、実施の形態4に係る歩数計測装置4において実施の形態1乃至3に係る歩数計測装置1乃至3と同一の構成要素には、同一の符号を付し、その詳細な説明を省略する。
具体的に、歩数計測装置4は、センサ端末5と子端末6とから構成される。
センサ端末5は、センサ部10と、センサ部10によって計測された各計測軸の加速度の計測値(ax[n]、ay[n]、およびaz[n])を出力する出力部103とを有するウェアラブル装置である。
子端末6は、センサ部10、記憶部11、合成値算出部12、歩行ピッチ推定部13、表示部15、位置情報取得部16、移動速度算出部17、傾斜算出部20、振動方法判定部21、合成値補正部22、歩数算出部24、およびデータ取得部25を有している。
データ取得部25は、センサ端末5から出力された各計測軸の加速度の計測値を取得し、記憶部11に記憶する。合成値算出部12、位置情報取得部16、移動速度算出部17、傾斜算出部20、振動方法判定部21、合成値補正部22、歩行ピッチ推定部23、および歩数算出部24は、実施の形態1乃至3に係る歩数計測装置1乃至3と同様に、歩数を算出するための各種信号処理を行う。
図15は、実施の形態2に係る歩数計測装置の具体的な実現例を示す図である。
図15に示すように、センサ端末5は、ユーザ(生体)が身に着けることが可能な衣類7等に装着される。図15では、衣類7としてシャツを例示しているが、衣類7はユーザが身に着けることができるものであればよく、例えば、パンツ、腹まき、サポータ、バンド等であってもよい。
センサ端末5と子端末6とは、有線または無線により、通信を行うことが可能になっている。具体的に、子端末6は、例えばBluetooth(登録商標)等の小電力無線によってセンサ端末5と接続され、センサ端末5から出力された加速度の計測値を受信する。子端末6は、例えば、携帯電話やスマートフォン、タブレット端末等の情報処理端末である。
子端末6は、センサ端末5から受信した加速度の計測値に基づいて、実施の形態1乃至3に係る歩数計測装置1乃至3と同様の手法により歩数を算出し、算出した歩数の情報を表示部15に表示する。また、子端末6は、セルラー方式や無線LAN方式などの無線通信により通信網と接続され、例えば、算出した歩数の情報や子端末6の位置情報等を上記通信網を介してサーバ等に送信してもよい。
以上、実施の形態4に係る歩数計測装置4によれば、センサ部10とその他の信号処理部とを分離し、夫々をセンサ端末5と子端末6とに分けて構成しているので、センサ端末5を小型化することができ、ユーザが携帯する上で邪魔にならないようにすることができる。また、センサ端末5の省電力化が可能となるので、長時間動作が可能となり、ユーザの充電の手間を減らすことが可能となる。
以上、本発明者らによってなされた発明を実施の形態に基づいて具体的に説明したが、本発明はそれに限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々変更可能であることは言うまでもない。
例えば、上記実施の形態において、加速度センサ101が3軸加速度センサである場合を一例として説明したが、これに限定されるものではない。例えば、加速度センサ101は、2つの計測軸を有する加速度センサであってもよいし、4つ以上の計測軸を有する加速度センサであってもよい。
また、上記実施の形態において、加速度の計測値の情報および位置情報等を一つの記憶部11に記憶させる構成を例示したが、記憶する情報の種類等に応じて記憶部を複数設け、各情報を対応する記憶部に記憶させるようにしてもよい。
また、実施の形態2に係る歩数計測装置2として、実施の形態1に係る歩数計測装置1に位置情報取得部16および移動速度算出部17を追加した構成を例示したが、これに限られない。例えば、実施の形態3に係る歩数計測装置3に、位置情報取得部16および移動速度算出部17を追加することもできる。
また、上記実施の形態において、歩数算出部14,18による歩数算出アルゴリズムにおいて、加速度の合成値が第1閾値より低くなった後に、加速度の合成値が第2閾値よりも高くなることを歩数検出条件とする場合を例示したが、これに限られない。例えば、加速度の合成値が第2閾値より高くなった後に、加速度の合成値が第1閾値よりも低くなることを歩数検出条件としてもよいし、加速度の合成値が第1閾値よりも低下したことを検出せずに、加速度の合成値が第2閾値よりも高くなることを歩数検出条件としてもよい。なお、加速度の合成値の代わりに合成値補正部22による補正後の加速度の合成値を用いる歩数算出部24においても同様である。
一般に、歩行発生時には、最初に加速度センサが上側に振れることから、上記のように、合成値の正方向(上側)への変動の検出を優先することにより、時間的に素早い歩数検出が可能となる。
また、歩数計測装置1乃至4において、加速度センサ101の各計測軸の加速度の計測値(ax[n]、ay[n]、az[n])や合成値a[n]を用いて信号処理を行う場合には、帯域制限を適宜施すことも可能である。例えば、各種の信号処理を行う前または後に、ローパスフィルタやバンドパスフィルタ等を使用することで、高周波のノイズ成分を除去してもよい。例えば、サンプリングレートが非常に細かく、高周波成分のノイズが顕著に見える場合等には、加速度の合成値の算出の前後に複数回の帯域制限用のフィルタリングを施しても良い。
また、合成値算出部12、歩行ピッチ推定部13、および歩数算出部14等の機能部が、プログラム処理によって実現される場合を例示したが、上記機能部の一部を専用のハードウェア回路によって実現してもよい。
また、実施の形態4に係る歩数計測装置4において、合成値算出部12を子端末6に設ける場合を例示したが、合成値算出部12をセンサ端末5に内蔵し、センサ端末5から各計測軸の加速度の計測値と合成値算出部12によって算出した合成値とを子端末6に出力するようにしてもよい。
1,2,3,4…歩数計測装置、5…センサ端末、6…子端末、7…衣類、10…センサ部、11…記憶部、12…合成値算出部、13,23…歩行ピッチ推定部、14,18,24…歩数算出部、15…表示部、16…位置情報取得部、17…移動速度算出部、20…傾斜算出部、21…振動方向判定部、22…合成値補正部、25…データ取得部、101…加速度センサ、102…A/D変換器、201…ローパスフィルタ、202…角度算出部。

Claims (8)

  1. 複数の計測軸を有する加速度センサによって計測された、夫々の前記計測軸の加速度の計測値を合成して合成値を算出する合成値算出部と、
    所定の条件を満たす前記合成値の変動を検出し、その検出回数に基づいて前記加速度センサの着用者による歩行または走行による歩数を算出する歩数算出部と、を有し、
    前記歩数算出部は、所定の条件を満たす前記合成値の変動を検出した後、所定期間内に発生した前記所定の条件を満たす前記合成値の変動を前記歩数としてカウントしない
    ことを特徴とする歩数計測装置。
  2. 請求項1に記載の歩数計測装置において、
    前記合成値に基づいて、前記着用者による歩行動作の歩行ピッチを推定する歩行ピッチ推定部を更に有し、
    前記歩数算出部は、前記歩行ピッチ推定部によって推定された前記歩行ピッチに基づいて、前記所定期間の長さを変更する
    ことを特徴とする歩数計測装置。
  3. 請求項2に記載の歩数計測装置において、
    前記歩行ピッチ推定部は、
    前記合成値の平均値からのばらつきの大きさに基づいて、前記歩行ピッチを推定し、
    前記歩数算出部は、前記歩行ピッチの増大に応じて前記所定期間が短くなるように設定する
    ことを特徴とする歩数計測装置。
  4. 請求項2または3に記載の歩数計測装置において、
    前記着用者の移動速度を算出する移動速度算出部を更に有し、
    前記歩数算出部は、前記移動速度が閾値を超えていない場合には、前記所定の条件を満たす前記合成値の変動を前記歩数としてカウントし、前記移動速度算出部によって算出された移動速度が前記閾値を超えている場合には、前記所定の条件を満たす前記合成値の変動を前記歩数としてカウントしない
    ことを特徴とする歩数計測装置。
  5. 請求項2乃至4のいずれか一項に記載の歩数計測装置において、
    前記加速度センサを有するセンサ部と、
    前記加速度センサによって計測された前記計測軸毎の加速度の計測値を出力する出力部と、
    前記出力部から出力された前記計測軸毎の加速度の計測値を記憶する記憶部と、を更に有し、
    前記センサ部および前記出力部は、第1端末に形成され、
    前記記憶部、前記合成値算出部、前記歩行ピッチ推定部、および前記歩数算出部は、前記第1端末とは異なる第2端末に形成されている
    ことを特徴とする歩数計測装置。
  6. 複数の計測軸を有する加速度センサによって計測された、前記計測軸毎の加速度の計測値を合成して合成値を算出する第1ステップと、
    所定の条件を満たす前記合成値の変動を検出し、その検出回数に基づいて前記加速度センサの着用者による歩行または走行による歩数を算出する第2ステップと、
    前記第2ステップは、前記合成値の変動を検出してから所定期間内に発生した前記所定の条件を満たす前記合成値の変動を前記歩数としてカウントしないステップを含む
    ことを特徴とする歩数計測方法。
  7. 請求項6に記載の歩数計測方法において、
    前記着用者による歩行動作の歩行ピッチを推定する第3ステップを更に含み、
    前記第2ステップは、前記第3ステップにおいて推定された前記歩行ピッチに基づいて、前記所定期間の長さを変更するステップを含む
    ことを特徴とする歩数計測方法。
  8. コンピュータに、請求項6または7に記載の歩数計測方法における各ステップを実行させるためのプログラム。
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