JP2017054618A - 固体酸化物形燃料電池 - Google Patents

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広幸 岩井
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Abstract

【課題】 電池性能を高く保ちながら燃料極支持体を低コスト化し得る固体電解質形燃料電池を提供する。【解決手段】 アノード支持形SOFCにおいて、支持体が酸化鉄を主成分とする材料(Fe2O3/8YSZ)で構成されることから、これにニッケル触媒を含む燃料極が積層された積層体は、電解質およびニッケル触媒の混合材料で全体が構成された従来の燃料極支持体に比較して安価に製造し得る。このとき、支持体に酸化鉄を含む材料が用いられていることから、燃料極中のニッケルと支持体中の鉄との相互拡散に起因して電解質近傍におけるニッケル濃度が低下し得るが、電解質−燃料極界面から支持体側に5(μm)までの電解質近傍の位置におけるNi濃度が80(atom%)以上に保たれているので、電池性能の低下が好適に抑制される。したがって、電池性能を高く保ちながら、SOFCの燃料極支持体を低コスト化できる。【選択図】図6

Description

本発明は、支持体上に燃料極、電解質および空気極を積層した構造の固体酸化物形燃料電池に関する。
固体酸化物形燃料電池(SOFC)は、酸化物イオン伝導体から成る固体電解質と、空気極(カソード)と、燃料極(アノード)とを備えたもので、空気極上に供給された空気中の酸素が電気化学的に還元されて酸素イオンとなり、その酸素イオンが電解質膜を経由して燃料極に到達し、燃料極上に供給された水素等の燃料ガスを酸化して、外部負荷に電子を放出し、電気エネルギーを生成する。このようなSOFCは、発電効率が高いこと、大気汚染の原因物質の排出量が少なく低環境負荷であること、および天然ガス、石炭ガス等の多様な燃料の使用が可能であること等の点から、次世代の発電装置として開発が進められている。
一般的なSOFCは空気極および燃料極で固体電解質を挟んだ積層構造が採られる(例えば、特許文献1を参照。)。空気極および燃料極は、ガス拡散性の良い多孔質材料で構成される。また、固体電解質材料としては、イオン伝導性、安定性、価格のバランスの良好なイットリア安定化ジルコニア(YSZ)が広く用いられている。
上記のような積層構造においては、固体電解質が薄くなるほど性能が向上するため、近年、固体電解質を燃料極多孔質基材(すなわち燃料極支持体)上に薄膜として形成するアノード支持形SOFCの開発が進んでいる(例えば、特許文献2を参照。)。この構造において、燃料極支持体材料としては一般にNiO等の触媒およびYSZ等の電解質の混合物(以下、NiO/YSZ)が用いられ、固体電解質薄膜材料としてはYSZ(特に8YSZすなわちY2O3を8(mol%)含むイットリア安定化ジルコニア)等が用いられる。また、固体電解質上に形成される空気極の構成材料としては(La,Sr)CoO3、(La,Sr)(Co,Fe)O3、(La,Sr)MnO3(以下、それぞれLSC、LSCF、LSMという)等のペロブスカイト型酸化物等が用いられるが、このような組合せでは固体電解質材料と空気極材料とが反応し易いため、この形式のSOFCでは、これら2層の間にその反応を抑制するための反応抑止層が設けられる。この反応抑止層には、例えば、ガドリニウムドープセリア(以下、GDC)、特にGdが10(mol%)ドープされた10GDCが用いられる。セリア(CeO2)は高いイオン伝導性を有する材料であり、特に、これにアクセプタであるガドリニウムがドープされたGDCは優れたイオン伝導体であることから、電解質と空気極との間のイオン伝導を阻害しないため、反応抑止層の構成材料として好ましい。
上記燃料極支持体を製造するに際しては、例えば、NiO/YSZおよび造孔剤を溶剤・樹脂等と混合してスラリー化し、ドクターブレード法等でシート状に成形する。成形したシート間に接着剤となる有機物を塗布し或いは加熱圧着して、例えば300〜1000(μm)程度の所望厚みとなるように積層することにより、燃料極支持体層が得られる。この燃料極支持体層の上に、電解質層、反応抑止層、空気極層を、20〜50(μm)程度の厚みとなるようにシート成形体を積層し或いはペースト印刷等で積層し、焼成処理を施すことで単セルが得られる。これをセパレータを介して数十枚積み重ねてスタック構造とすることにより、所望する出力の燃料電池が得られる。この際、燃料極へ供給される燃料ガス(還元ガス)と空気極へ供給される酸素(酸化ガス)とが混合しないようにインターコネクタや封止材でシールされる。
特開2005−339878号公報 特許第4913260号公報 特許第5317379号公報 特許第5260052号公報 特開2013−041717号公報
ところで、上記のようなアノード支持形SOFCにおいては、燃料極支持体に燃料極としての機能に加えて支持体としての機械的強度が要求されることから、その燃料極の材料コストを含めた製造コストが無視できないほど大きくなる。そこで、燃料極支持体の機械的強度の確保が容易で安価に製造し得る構成が種々提案されている。
例えば、燃料ガス供給路を内部に備えた多孔質平板構造の平坦形支持体の一面にアノード層を設けた固体酸化物燃料電池が提案されている(例えば、特許文献3を参照。)。上記平坦形支持体は、フェライトステンレス鋼、ニッケル基合金、或いは高クロム合金から成るもので、例えば、押出成形により製造される。また、アノード層は、例えばNiO/YSZから成るもので、共押出、吹き付け、溶射、ディップなどの方法で形成される。このような固体酸化物燃料電池によれば、金属材料の一面にアノード層を設けて燃料極支持体を構成することにより、機械的強度を確保しながら、アノード層を薄くして三相界面へのガス供給を容易にできる利点があるものとされている。
また、平板状の金属サポート材料の上に、活性アノード層、電解質層、活性カソード層、遷移層、カソード集電板が順次に積層された固体酸化物形燃料電池において、上記活性アノード層を多孔質材料に炭化水素クラッキング触媒を含浸して構成することが提案されている(例えば、特許文献4を参照。)。上記金属サポートの構成材料としては、フェライト系ステンレス鋼等が示されている。また、活性アノード層の構成材料としては、多孔質材料としてドープドセリア等、炭化水素クラッキング触媒としてNi合金等が示されており、炭化水素クラッキング触媒は、多孔質材料の焼結後にその気孔に含浸させられる。このような固体酸化物形燃料電池によれば、金属材料製の前記平坦形支持体が用いられた場合と同様に機械的強度の確保が容易になり、しかも、多孔質材料の焼結の際には炭化水素クラッキング触媒が含浸されていないため、その焼結の際に活性アノード層のNiまたはNiOがフェライト系ステンレス鋼等から成る金属サポートに拡散することが生じず、延いてはサポート材料のフェライト相からオーステナイト相への相変態が生じない利点があるものとされている。
また、金属基板上に第1電極、電解質、第2電極を積層した金属支持形電解質・電極接合体を製造するに際して、金属基板上に形成した第1電極を焼結させる際にこれを選択的に且つ短時間で加熱することが提案されている(例えば、前記特許文献5を参照。)。このように第1電極を選択的に加熱すると共に、加熱時間を短時間とすることにより、熱膨張係数の不整合に起因して第1電極が金属基板から剥離し或いは反りが生じることや、金属基板および第1電極中の元素が相互拡散することが回避されるものとされている。上記金属基板としては、耐熱性を有するSUS316が示されているが、これに含まれるCrがカソード側電極中に拡散すると電極の所期の機能が損なわれ、電池性能が得られなくなる。
このように、アノード支持形SOFCにおいて、全体がアノード材料から成る燃料極支持体に代えて、ステンレス鋼等から成る金属製支持体の上にアノード層を形成したものを用いることが提案されている。これらは有力な構成ではあるが、本発明者等は、燃料電池製造コストの一層の低減のために、同様な構成で支持体材料として一層安価なFe酸化物等を用いることを試みた。しかしながら、材料を置き換えるだけでは、所期の電池性能が得られないことが明らかとなった。
本発明は、以上の事情を背景として為されたものであって、その目的は、電池性能を高く保ちながら燃料極支持体を低コスト化し得る固体電解質形燃料電池を提供することにある。
斯かる目的を達成するため、本発明の要旨とするところは、多孔質の支持体の一面に、ニッケル触媒を含む燃料極、電解質、および空気極が順次に積層された固体酸化物形燃料電池であって、(a)前記支持体は鉄または酸化鉄を主たる成分として含み、(b)前記燃料極は前記電解質との界面近傍よりも前記支持体との界面近傍におけるニッケル/(ニッケル+鉄)原子分率が低い傾斜組成を有し、且つ前記電解質との界面から前記支持体側に5(μm)の位置におけるその原子分率が80(atom%)以上であることにある。
このようにすれば、多孔質の支持体上に燃料極、電解質、および空気極が順次に積層されたアノード支持形SOFCにおいて、支持体が鉄または酸化鉄を主成分とする材料で構成されることから、これにニッケル触媒を含む燃料極が積層された燃料極支持体に相当する積層体は、電解質およびニッケル触媒の混合材料で全体が構成された燃料極支持体に比較して安価に製造し得る。このとき、支持体に鉄または酸化鉄を含む材料が用いられていることから、燃料極中のニッケルと支持体中の鉄との相互拡散に起因して電解質近傍におけるニッケル濃度が低下し得るが、電解質−燃料極界面から支持体側に5(μm)までの電解質近傍の位置におけるニッケル濃度はニッケル/(ニッケル+鉄)原子分率で80(atom%)以上に保たれているので、電池性能の低下が好適に抑制される。したがって、電池性能を高く保ちながら、固体電解質形燃料電池の燃料極支持体を低コスト化できる。
なお、本願において、「鉄または酸化鉄を主たる成分として含む」とは、質量比で支持体の構成材料の半分以上がFeまたはFe2O3等の酸化鉄であることを意味する。
因みに、本発明者等は、鉄若しくは酸化鉄を主成分とする支持体を用いたときに電池性能が得られない理由について検討を重ねたところ、支持体中のFeと、燃料極中のNi触媒とが相互拡散して、電解質近傍におけるNi濃度が低下することにより、電池性能が低下するとの結論に至った。Feもアノード上で起きる水素酸化反応の触媒として機能し得るが、触媒活性はNiに比較して格段に低い。そのため、反応が最も盛んな電解質と燃料極との界面近傍におけるNi濃度の低下が電池性能を低下させるものと考えられるのである。従来、支持体材料に酸化鉄を主成分とするものを用いることは殆ど検討されておらず、ましてや燃料極中のニッケルと支持体中の鉄との相互拡散の程度やその影響については、検討されていなかった。本発明者等は、前記特許文献4、5等に記載されているような拡散防止策を採っても、拡散を完全に防ぎ得ないことを前提として、どのような拡散状態でどのような影響が生ずるかを把握した上で、最適解を探るべきとの考えの下、電解質と燃料極との界面の極近傍におけるNi濃度が一定以上必要であることを見出し、本発明を完成させたのである。Ni濃度は、電解質と燃料極との界面から支持体側に5(μm)以上の範囲に亘って、ニッケル/(ニッケル+鉄)が80(atom%)以上であることが好ましい。なお、上記Ni濃度は、SEM-EDXによって元素マッピングして求められる値である。
ここで、好適には、前記燃料極および前記電解質は、パルスレーザ堆積法により、1000(℃)未満の基板温度で製膜したものである。パルスレーザ堆積法によれば、高温の焼成処理を必要とすることなく、所望する組成の膜を高い相対密度で形成できる。そのため、燃料極から支持体へのNi拡散の抑制が一層容易になる。基板温度が1000(℃)以上になるとNiの拡散が進みやすいため、拡散を抑制するためには1000(℃)未満にすることが好ましい。
なお、パルスレーザ堆積法により形成された膜は、形成面に強固に固着されることから、層間の剥離が生じ難い利点がある。因みに、スラリー塗布および焼成処理によって膜形成する場合には、その焼成処理に少なくとも1300(℃)以上の高温を必要とすることから、加熱時間や雰囲気等の焼成条件次第ではあるが、Ni拡散の抑制が困難である。
また、好適には、前記燃料極および前記電解質は600(℃)以上の基板温度で製膜したものである。パルスレーザ堆積法では、基板温度を500(℃)以上にすれば容易に製膜できるが、電解質を緻密化させるためには基板温度を600(℃)以上にすることが好ましい。
また、好適には、前記固体酸化物形燃料電池は、前記電解質と前記空気極との間にそれらの反応を抑制するための反応抑止層を備えたものである。このようにすれば、電解質の構成材料と空気極の構成材料とが反応し易い組み合わせの場合にも、それらの反応が相互間に設けられた反応抑止層によって抑制されるため、その反応に起因する高抵抗層の形成延いては出力低下が抑制される。本発明は、このような反応抑止層を設けた固体酸化物形燃料電池にも好適に適用される。上記反応抑止層は、例えば、ガドリニウムドープセリアが用いられ、特にGdが10(mol%)ドープされたものが好ましい。
また、好適には、前記固体酸化物形燃料電池は、前記反応抑止層と前記空気極との界面全体に分布する多数の微粒子を含むものである。このようにすれば、反応抑止層と空気極との間に存在する多数の微粒子は、微細であることから反応抑止層および空気極の表面に容易に食い込むため、アンカー効果が得られる。そのため、反応抑止層と空気極との熱膨張係数が著しく相違しても、起動・停止に伴うヒートサイクルに起因する剥離が抑制される。なお、上記多数の微粒子の平均粒径は5〜100(nm)の範囲内であることが好ましい。平均粒径が5(nm)以上であれば、十分に大きいのでアンカー効果が確実に得られる。また、100(nm)以下であれば、微粒子相互の独立性が保たれて膜化し難いので十分なアンカー効果が得られる。
前記多数の微粒子はセラミックス材料で構成されたものである。このようにすれば、空気極を形成するための加熱処理が施される際にも微粒子が熔融することがなく、粒子が独立して存在するため、一層高いアンカー効果が得られる。
また、好適には、前記多数の微粒子は前記空気極と同材料で構成されたものである。このようにすれば、多数の微粒子は実質的に空気極の一部を構成するため、運転時に供給される空気と空気極との接触界面がそれら多数の微粒子によって実質的に増大することから、その空気極の酸素還元性能が高められる。しかも、反応抑止層と空気極との界面に存在する多数の微粒子は、空気極と同材料であることからそれらの間のイオン伝導を阻害することはない。寧ろそれらの界面に表面の凹凸や空気極の多孔性に起因して生じ得る隙間に微粒子が存在することにより、それらの間に微粒子を介したイオン伝導経路が形成されるので、イオン伝導性が高められる。更に、空気極材料の微粒子が酸素の還元に高活性であるためと思われるが、低温運転でも空気極の反応抵抗すなわち過電圧が抑制される。そのため、多数の微粒子が空気極と反応抑止層との界面に存在しても、これに起因する性能低下はなく、却って、酸素還元性能の向上、イオン伝導性の向上、低温における過電圧の抑制によって、低温運転でも高い発電性能を有するSOFCが得られる。
また、好適には、前記反応抑止層はGDCで構成されたものである。GDCはイオン伝導性が高いことから反応抑止層に好ましい材料であるが、酸素の還元活性の高い空気極材料に比べて熱膨張係数が低い傾向にある。例えば、空気極材料として一般に用いられるLSCやLSCF等の熱膨張係数は17(ppm)程度であるのに対し、GDCの熱膨張係数は12(ppm)程度である。そのため、このように熱膨張係数が著しく相違することから、反応抑止層と空気極とは使用中のヒートサイクルで剥離し易いので、それらの界面に前記微粒子を備えることによる剥離抑制効果が一層顕著に得られる。
また、好適には、前記反応抑止層は95(%)以上の相対密度を有するものである。このようにすれば、反応抑止層の密度が十分に高められているため、一層高いイオン伝導性が得られる。そのため、動作温度を例えば500〜600(℃)程度と低くしても十分に高い発電性能が得られる。イオン伝導性は一般に低温になるほど低下することから、700〜1000(℃)程度の高温運転であれば、90(%)以下の低い相対密度でも十分に高いイオン伝導性が得られ延いては十分に高い発電性能が得られる。しかしながら、500〜600(℃)程度の低温運転では斯かる低密度ではイオン伝導性が低く発電性能が得られなかったのである。なお、相対密度を高くすると、表面の平滑性が向上することから、反応抑止層と空気極との剥離が一層生じ易くなるものと考えられるが、本発明によれば、界面に存在するナノ粒子のアンカー効果により剥離が十分に抑制される。
また、好適には、前記反応抑止層はパルスレーザ堆積法によって形成されたものである。このようにすれば、高温の焼成処理を必要とすることなく、95(%)以上の相対密度の反応抑止層を容易に得ることができる。すなわち、従来は前記特許文献2等にも示されるように、スラリー塗布および焼成によりGDCが形成されていたが、この方法では前述したように90(%)以下の相対密度に留まっていた。焼成温度を例えば1500(℃)以上の高温にすれば相対密度を高めることができるが、燃料極の多孔性を維持すると共に、電解質と反応抑止層との反応により固溶層が生成して抵抗が増大することを抑制するためには、焼成温度を1400(℃)以下に留めることが好ましいことから、相対密度を高めることができなかったのである。上記態様によれば、95(%)以上の高密度を容易に得られると共に、従来に比較しても一層低温での製膜が可能になるため、電解質と反応抑止層との界面抵抗を低減し得る。
また、好適には、前記多数の微粒子はパルスレーザ堆積法によって形成されたものである。このようにすれば、微粒子を容易に形成することができると共に、パルスレーザ堆積法により形成された微粒子は形成面に強固に固着されることから、高いアンカー効果を得ることができる。
また、好適には、前記空気極は、パルスレーザ堆積法によって形成されたものである。このようにすれば、形成面に強固に固着された空気極を容易に形成することができる。このように、本発明においては、支持体上に積層される各層を全てパルスレーザ堆積法により形成することができる。
また、前記空気極の構成材料は特に限定されないが、(La1-xSrx)(Co1-yFey)O3-δ(但し、0<x<1、0≦y<1、0≦δ<1)、La(Ni1-xFex)O3-δ(但し、0<x<1、0≦δ<1)、(Sm1-xSrx)CoO3-δ(但し、0<x<1、0≦δ<1)等が挙げられる。本発明を適用し得るSOFCは各層の構成材料が特に限定されないが、例えば、空気極材料は上記LSCF、La(Ni1-xFex)O3-δ等が好ましい。特に、LSCやLSCFは高いイオン伝導性を有することから、高い発電性能を得ることができる。
また、前記電解質の構成材料は特に限定されないが、例えば、8YSZ、10ScSZ(Sc2O3を10(mol%)含むスカンジア安定化ジルコニア)、(La1-xSrx)(Ga1-yMgy)O3-δ(但し、0<x<1、0≦y<1、0≦δ<1)等が挙げられる。前記空気極材料および上記電解質材料の組合せでは反応により高抵抗層が形成され易いので、前記反応抑止層が必須となる。本発明は、このような反応抑止層を必須とする構成材料の組合せに対しても好適に適用される。
なお、前記燃料極の構成材料は特に限定されないが、例えば、前記NiO/8YSZの他、CoO/8YSZ、Co3O4/8YSZ、FeO/8YSZ、Fe2O3/8YSZ、Fe3O4/8YSZ等の混合材料や、(La1-xSrx)TiO3(但し、0<x<1、0≦δ<1)等のペロブスカイト型酸化物等が挙げられる。
また、前記支持体の構成材料は、鉄または酸化鉄を主成分として含むものであれば、特に限定されず、鉄や酸化鉄のみから成るものもコスト面で好ましいが、鉄を含有する耐熱性のある金属材料も好ましく、例えば、SUS310S、SUS316、SUS430等の合金鋼が挙げられる。また、鉄、酸化鉄や合金鋼の他に燃料極と共通の構成成分を含む組成とすれば、支持体上に形成した燃料極との固着強度が高められるため、好ましい。例えば、燃料極がNiO/8YSZで構成される場合には、支持体の好ましい構成材料としては、Fe2O3/8YSZ等が挙げられる。
また、好適には、前記支持体は、酸化鉄粉末と必要に応じて添加される他の粉末との混合粉末から、ドクターブレード成形や粉末プレス成形等の適宜の成形方法を用いて成形され、構成材料に応じた適宜の温度で焼成処理を施すことによって製造される。
本発明の一実施例のアノード支持形SOFCの層構成を模式的に示す図である。 図1のSOFCの反応抑止層と空気極の界面を拡大して模式的に示す図である。 図1のSOFCの製造方法を説明する工程図である。 図1のSOFCの要部断面の電子顕微鏡写真である。 図4の断面におけるFeの元素マッピング写真である。 図4の断面におけるNiの元素マッピング写真である。
以下、本発明の一実施例を図面を参照して詳細に説明する。なお、以下の実施例において図は適宜簡略化或いは変形されており、各部の寸法比および形状等は必ずしも正確に描かれていない。
図1は、本発明の一実施例のSOFC10の層構成を模式的に示す図である。図1において、SOFC10は、支持体12の一面に、燃料極14、電解質16、反応抑止層18、空気極20が順次に積層された積層体である。
上記の支持体12は、例えば、Fe2O3と8YSZとの混合材料 Fe2O3/8YSZから成る多孔質体であり、その下面から燃料極14側の上面まで連なる多数の連通細孔を有している。支持体12の気孔率は、10〜40(%)の範囲内、例えば25(%)程度である。また、Fe2O3/8YSZの混合割合は、例えば質量比でFe2O3:8YSZ=50:50〜95:5の範囲内、例えば、6:4程度である。すなわち、支持体12は、酸化鉄 Fe2O3を主たる成分として含む材料で構成されている。また、支持体12の厚さ寸法は、例えば0.5〜1.0(mm)の範囲内、例えば、0.8(mm)程度である。
また、前記の燃料極14は、例えば、NiOと8YSZとの混合材料 NiO/8YSZから成る多孔質体であり、前記支持体12と同様に、その下面から電解質16側の上面まで連なる多数の連通細孔を有している。燃料極14の気孔率は、5〜20(%)の範囲内、例えば15(%)程度である。また、NiO/8YSZの混合割合は、例えば質量比でNiO:8YSZ=3:7〜7:3の範囲内、例えば、6:4程度である。燃料極14の厚さ寸法は、例えば5〜10(μm)の範囲内、例えば、8(μm)程度である。
このように、本実施例では、燃料極14は支持体12の一面に5〜10(μm)程度の厚さ寸法で設けられているが、支持体12に含まれるFe酸化物も水素酸化反応の触媒として働くため、支持体12および燃料極14の積層体が実質的に燃料極として機能する。したがって、これらが一体となって燃料極支持体を構成しており、電解質16等はその燃料極支持体上に積層されてこれにより支持された構造となっている。すなわち、SOFC10はアノード支持形SOFCの一形態と言える。
また、上記の電解質16は、8YSZから成る緻密質体であり、例えば1〜10(μm)の範囲内、例えば、3(μm)程度の厚さ寸法を備えている。この電解質16の相対密度は、例えば、95〜100(%)程度である。
また、上記の反応抑止層18は、ガドリニウムを5〜20(mol%)の範囲内、例えば10(mol%)ドープしたセリア(10GDC)から成るもので、95(%)以上、例えば98(%)程度の極めて高い相対密度を有し、例えば12(ppm)程度の熱膨張係数を有している。この反応抑止層18の厚さ寸法は、例えば、1〜10(μm)の範囲内、例えば3(μm)程度である。
また、上記の空気極20は、例えば(La,Sr)CoO3(例えば、La0.6Sr0.4CoO3;以下、適宜LSCという)や、(La,Sr)(Co,Fe)O3(例えば、La0.6Sr0.4Co0.2Fe0.8O3;以下、適宜LSCFという)等のLa,Sr,Coを含むペロブスカイト型酸化物から成る多孔質体であり、その上面から反応抑止層18側の下面まで連なる多数の連通細孔を有している。これらLSCおよびLSCFは、A,B両サイトの置換割合を種々定め得るもので、所望するイオン伝導性や還元膨張率等に応じて適宜の置換割合のものを用いることができる。また、上記空気極20は、例えば20〜50(μm)の範囲内、例えば30(μm)程度の厚さ寸法を備えたもので、気孔率は例えば20〜50(%)の範囲内、例えば30(%)程度であり、熱膨張係数は例えば13〜20(ppm)の範囲内、例えば17(ppm)程度である。
また、上記空気極20を構成するLSC、LSCFは、比較的高い電子伝導率およびイオン伝導率を有し且つ比較的大きい還元膨張率を有する材料であり、例えば、La0.6Sr0.4Co0.2Fe0.8O3では200(S/cm)程度の電子伝導率と1(%)以上の還元膨張率とを有している。
また、上記反応抑止層18と空気極20との間には、図2にその界面を拡大して模式的に示すように、多数の微粒子22がその界面全体に分布して備えられている。微粒子22は、空気極20と同材料すなわちLSC、LSCF等のペロブスカイト型酸化物から成るもので、5〜100(nm)の範囲内、例えば50(nm)程度の粒子径を備えたナノ粒子である。この微粒子22は反応抑止層18に固着されていると共に、その反応抑止層18よりも突き出した部分が空気極20に食い込んでいる。この結果、反応抑止層18と空気極20とは、一部において直に接し、一部において微粒子22を介して接した状態にある。また、反応抑止層18の上面および空気極20の下面は必ずしも平坦ではなく、図2に模式的に示すように凹凸が存在しており、その凹凸に起因する隙間も生じている。
図3は、上記のSOFC10の製造方法の一例を説明する工程図である。図3において、支持体成形工程P1においては、例えば平均粒径が0.5(μm)程度の市販のFe2O3粉末と、平均粒径が0.5(μm)程度の市販の8YSZ粉末とを、例えば6:4の質量比で混合し、この混合粉末58(wt%)に、キシレン等の溶剤を24(wt%)、メタクリル酸エステルポリマー等の有機結合剤を8.5(wt%)、カーボン、でんぷん等の気孔形成剤(すなわち炭素成分)を5(wt%)、フタル酸エステル等の可塑剤を4.5(wt%)とを添加して、十分に攪拌してスラリーを調製する。このスラリーから、例えばドクターブレード成形等の適宜のシート成形法によって、厚さ寸法が0.5〜1.0(mm)程度のシート成形体を成形する。
次いで、支持体焼成工程P2では、上記のシート成形体に焼成処理を施す。焼成処理の最高保持温度は例えば1350(℃)程度である。これにより、シート成形体から前記支持体12が得られる。
次いで、アノード積層工程P3においては、支持体12を所定のチャンバーに入れ、パルスレーザ堆積法を用いて、その支持体12上に燃料極材料を製膜する。膜の形成条件は、例えば、基板温度700(℃)、レーザフルエンス6.7(kJ/m2)、周波数10(Hz)、酸素分圧20(Pa)、ショット回数100000〜200000回程度である。また、チャンバー内には、形成しようとする膜の構成材料、本実施例では質量比でNiO:8YSZ=6:4程度の混合材料から成るターゲットを配置する。このターゲットは、例えば、平均粒径が1(μm)程度の原料をプレス成形して、1500(℃)で焼成したペレットである。これにより、支持体12上に厚さ寸法が5〜10(μm)程度のNiO/8YSZ膜が形成される。
上記のようなパルスレーザ堆積法によれば、所望する組成の膜を容易に形成できる特徴がある。なお、基板温度は、500〜1000(℃)の間で適宜設定される。低すぎると酸化物が生成されず、高すぎると形成面の構成材料との間で反応して所望する特性の膜が得られなくなる等の不都合が生ずる。また、レーザフルエンスは、0.1〜30(kJ/m2)の間で適宜設定される。低すぎると材料が膜形成面上に飛ばず、高すぎると膜を均一に成形できない。また、酸素分圧は、0.01〜100(Pa)の範囲で適宜設定されるが、低すぎると酸化物ができなくなる。これら膜形成における条件は、上記NiO/8YSZだけでなく、以下に説明する各層においても同様である。
次いで、電解質積層工程P4では、NiO/8YSZ膜を形成した支持体12をチャンバーに入れたまま、パルスレーザ堆積法を用いて、そのNiO/8YSZ膜上に電解質材料を製膜する。膜の形成条件は、上述した条件の範囲内において、例えば、基板温度700(℃)、レーザフルエンス6.7(kJ/m2)、周波数10(Hz)、酸素分圧20(Pa)、ショット回数100000〜300000回程度である。また、チャンバー内には、形成しようとする膜の構成材料、本実施例では8YSZから成るターゲットを配置する。このターゲットは、例えば、平均粒径が0.5(μm)程度の原料をプレス成形して、1500(℃)で焼成したペレットである。これにより、NiO/8YSZ膜上に厚さ寸法が5(μm)程度の8YSZ膜が形成される。なお、上記の膜形成条件によれば、YSZ単一材料であるため、前記NiO/8YSZ膜の場合とは異なり、例えば相対密度98(%)程度の緻密な8YSZ膜が得られる。
次いで、反応抑止層形成工程P5では、8YSZ膜を形成した支持体12をチャンバーに入れたまま、パルスレーザ堆積法を用いて、その8YSZ膜上に反応抑止層材料を製膜する。膜の形成条件は、前述した条件の範囲内において、例えば、基板温度700(℃)、レーザフルエンス6.7(kJ/m2)、周波数10(Hz)、酸素分圧20(Pa)、ショット回数20000〜50000回程度である。また、チャンバー内には、形成しようとする膜の構成材料、本実施例ではGDCのターゲットを配置する。このターゲットは、例えば、平均粒径が0.3(μm)程度の原料をプレス成形して、1500(℃)で焼成したペレットである。これにより、電解質16上に厚さ寸法が1〜3(μm)程度で相対密度が98(%)程度の10GDCが形成される。なお、前記の膜形成条件の範囲よりも基板温度が高すぎると、電解質の構成材料である8YSZとの間で反応して抵抗層が生じ易くなる。
次いで、微粒子形成工程P6では、GDC膜を形成した支持体12をチャンバーに入れたまま、パルスレーザ堆積法を用いて、そのGDC膜上にナノ粒子を形成する。ナノ粒子の形成条件は、前述した条件の範囲内において、例えば、基板温度700(℃)、レーザフルエンス6.7(kJ/m2)、周波数10(Hz)、酸素分圧20(Pa)、ショット回数50〜500回である。ショット回数は、形成しようとするナノ粒子の粒子径によって変更するもので、前述したような粒子径が50(nm)程度の微粒子22を形成する場合のショット回数は200回程度である。また、チャンバー内には、形成しようとするナノ粒子の構成材料、本実施例ではLSCのターゲットを配置する。このターゲットは、LSC原料をプレス成形し、1200(℃)程度で焼成したペレットである。これにより、反応抑止層18上に所望の平均粒径を備えた多数の微粒子22(ナノ粒子)が形成され、その形成面に強固に固着される。なお、ナノ粒子形成の場合には、前記条件よりも基板温度或いはレーザフルエンスが高すぎると拡散が早すぎるため粒子が形成されず膜になり易い。
次いで、カソード積層工程P7では、ナノ粒子を形成した支持体12をチャンバーに入れたまま、パルスレーザ堆積法を用いて、そのナノ粒子上に空気極材料を形成する。膜の形成条件は、例えば、基板温度700(℃)、レーザフルエンス6.7(kJ/m2)、周波数10(Hz)、酸素分圧20(Pa)、ショット回数100000〜300000回である。また、チャンバー内には、形成しようとする膜の構成材料、本実施例ではLSCFのターゲットを配置する。このターゲットは、例えば、平均粒径が1(μm)程度の原料をプレス成形して、1300(℃)で焼成したペレットである。これにより、ナノ粒子上に厚さ寸法が5〜10(μm)程度のLSCF膜が形成される。
次いで、焼成工程P8では、上述したように各層を製膜した後、これに焼成処理、すなわち共焼成を施す。焼成処理の最高保持温度は、例えば、1350(℃)程度である。これにより、支持体12上に製膜された各層から、燃料極14、電解質16、反応抑止層20、微粒子22、および空気極20が生成され、アノード支持形SOFC10が得られる。
図4は、上記のようにして製造されたSOFC10の断面を示す電子顕微鏡写真である。写真の右側に層構成を示すように、支持体12の上に薄い燃料極14,電解質16,反応抑止層18が積層された断面構造を有している。図5、図6は、図4と同一断面において、SEM-EDXによって元素マッピングした結果を示したもので、図5がFeの分布、図6がNiの分布で、それぞれ対象元素が白色の点で表されている。Feは専ら支持体12に存在するが、燃料極14にも相当量が拡散している。Niは専ら燃料極14に存在するが、支持体12および電解質16にも僅かに拡散している。なお、元素マッピングは、EDX(例えばHORIBA EX-470)を用いて、20(kV)、距離10(mm)、測定時間15分、倍率1000倍で界面の元素マッピングを行い、FE-SEM(例えば HITACHI S-4700)のソフトウェアを用いて測定結果画面の点分析を、燃料極14から支持体12に向かってライン状に実施することで行った。
上記元素マッピング結果に基づいて、Ni濃度すなわちNi/(Ni+Fe)を求めると、電解質16と燃料極14との界面から支持体12側に向かうに従ってNi濃度は低下するが、図4〜図6に示す例では、その界面から支持体12側に6(μm)の位置において、Ni濃度が1(atom%)に低下する。これは、支持体12から燃料極14側にFeが拡散すると共に、燃料極14から支持体側にNiが拡散する相互拡散に起因するもので、本実施例では、電解質16と燃料極14との界面からその電解質16側に、Ni濃度が1(atom%)以下になる位置までの距離を拡散距離とする。また、上記界面から支持体12側に5(μm)までの範囲では、Ni濃度は80(atom%)以上に保たれている。5(μm)位置におけるNi濃度は、例えば、85(atom%)である。また、相互拡散層は2〜3(μm)の厚さである。
下記の表1は、本実施例のSOFC10において、パルスレーザ堆積法による製膜時の基板温度を種々変更して評価した結果を、製膜温度が不適切な比較例および実施例と同一の支持体12の上に各層を印刷積層した比較例の評価結果と併せて示したものである。
上記の表1において、「層形成方法」欄の「PLD」はパルスレーザ堆積法によって製膜したもので、「印刷」は実施例と同様にして製造した支持体12の上に厚膜スクリーン印刷法を燃料極以下の各層を製膜したものである。また、「積層温度」欄は、PLDにより製膜したものはそのときの基板温度で、印刷により製膜したものは印刷後の焼成温度である。また、「電解質の緻密化」欄は、形成された電解質の相対密度に基づいて判定したもので、相対密度96(%)以上を「◎」、相対密度93(%)以上を「○」、相対密度90(%)以上を「△」、相対密度90(%)未満を「×」とした。「Fe-Ni拡散距離」欄は、前述したようにSEM-EDXによって元素マッピングして求めた拡散距離であり、「界面から5(μm)のNi/(Fe+Ni)(atom%)」は、前述した界面から5(μm)位置のNi濃度である。また、「発電性能」は、市販の燃料電池評価装置(例えば、チノー製燃料電池評価装置)を用いて、セル温度が700(℃)になるように設定して出力を評価した最大出力密度である。測定に際しては、セル面積をφ20(mm)、カソード面積をφ10(mm)として、H2:50(ml/min)、Air:100(ml/min)をセルに供給して発電させた。また、集電にはPtメッシュを用いた。
なお、上記比較例のうち印刷法による比較例3〜7の製造方法は以下の通りである。燃料極は、市販の平均粒径0.5(μm)のNiO粉末と平均粒径0.5(μm)の8YSZ粉末とを6:4の質量比で混合し、混合粉末58(wt%)にキシレン等の溶剤24(wt%)と、エチルセルロース等の有機結合剤8.5(wt%)と、炭素粉等の気孔形成剤5(wt%)と、可塑剤4.5(wt%)とを添加してペーストを調製し、支持体上にスクリーン印刷法で膜形成した。また、電解質は、市販の平均粒径0.5(μm)の8YSZ粉末60(wt%)に、ターピネオール等のアルコール系の溶剤36(wt%)と、エチルセルロース等の有機結合剤4(wt%)とを添加してペーストを調製し、燃料極の印刷膜上にスクリーン印刷法で膜形成した。また、反応抑止層は、平均粒径0.5(μm)程度の市販の10GDC粉末65(wt%)に、ターピネオール等のアルコール系溶剤31(wt%)、エチルセルロース等の有機結合剤4(wt%)を添加してペーストを調製し、電解質の印刷膜上にスクリーン印刷法によって1〜6(μm)の厚さ寸法で塗布して膜形成する。これを例えば1350(℃)の最高保持温度で焼成処理を施すことにより、燃料極,電解質,反応抑止層を共焼成により形成する。焼成後、平均粒径1.0(μm)程度の市販のLSCF粉末80(wt%)に、ターピネオール等のアルコール系の溶剤17(wt%)と、エチルセルロース等の有機結合剤3(wt%)とを添加してペーストを調製し、焼成した反応抑止層上に、スクリーン印刷法で、例えば20〜50(μm)程度の厚さ寸法で塗布する。これに例えば1100(℃)程度の最高保持温度で焼成処理を施すことにより、空気極が形成されてSOFCが得られる。
上記の表1に示すように、パルスレーザ堆積法で基板温度600〜900(℃)で製膜した実施例1〜4では、電解質16が十分に緻密化すると共に、Fe-Niの相互拡散距離が20(μm)以下に留まり、或いは、電解質・燃料極界面から5(μm)位置におけるNi濃度が80(atom%)以上に保たれていることから、0.45(W/cm2)以上の十分に高い発電性能を有する。
これに対して、比較例1,2は、パルスレーザ堆積法によって製膜したものではあるが、比較例1は、製膜時の基板温度が低すぎるため、電解質16が十分に緻密化していない。そのため、性能が得られないことが明らかであるため、発電性能を評価していない。比較例2は、製膜時の基板温度が高すぎるため、電解質16は緻密化はしているが、Fe-Niの相互拡散距離が25(μm)以上と大きく、界面から5(μm)位置のNi濃度も50(atom%)に留まる。そのため、発電性能は0.22(W/cm2)に留まった。なお、基板温度が1000(℃)以上になると、燃料極14の多孔性の確保が困難になり、セルとして機能し難くなる。
また、比較例3〜7は、支持体12上に各層を印刷形成し、焼成処理を施したものであるが、印刷形成した膜は、表1に示すように、1300(℃)以上の温度で焼成処理を施さないと、緻密化しない。そのため、焼成温度が低い比較例3,4は、電解質が緻密化しないため、発電性能の評価を行わなかった。なお、Fe-Niの相互拡散距離は25(μm)、30(μm)と、実施例に比較すると大きく、緻密化しない温度でも拡散が著しいことが確かめられた。十分に緻密化した比較例6,7については、発電性能を評価したが、Fe-Niの相互拡散距離が50〜80(μm)と大きく、界面から5(μm)位置におけるNi濃度が5(atom%)と小さいため、発電性能は0.21〜0.23(W/cm2)と小さく、特性が得られないことが明らかとなった。なお、緻密化が不十分(△)な比較例5も発電性能を評価したが、Fe-Niの相互拡散距離が比較例6より小さいにも拘わらず、それよりも発電性能が劣る結果となった。
上記の評価結果によれば、Fe2O3/8YSZから成る安価な支持体12を用いても、パルスレーザ堆積法によって燃料極14等をその上に製膜してSOFC10を製造することにより、十分に高い発電性能が得られることが明らかとなった。但し、パルスレーザ堆積法を用いる場合でも、電解質16が十分に緻密化し、しかも、Fe-Ni相互拡散距離が20(μm)以下に留まるように、製膜時の基板温度を600〜900(℃)の範囲内で製膜することが、発電性能を得るために必要である。
要するに、本実施例によれば、多孔質の支持体12上に燃料極14、電解質16、反応抑止層18、および空気極20が順次に積層されたアノード支持形SOFC10において、支持体12が酸化鉄を主成分とする材料(Fe2O3/8YSZ)で構成されることから、これにニッケル触媒を含む燃料極14が積層された積層体すなわち燃料極支持体は、電解質およびニッケル触媒の混合材料で全体が構成された従来の燃料極支持体に比較して安価に製造し得る。このとき、支持体12に酸化鉄を含む材料が用いられていることから、燃料極14中のニッケルと支持体12中の鉄との相互拡散に起因して電解質16近傍におけるニッケル濃度が低下し得るが、電解質16−燃料極14界面から支持体側に5(μm)までの電解質近傍の位置におけるNi濃度が80(atom%)以上に保たれているので、電池性能の低下が好適に抑制される。したがって、電池性能を高く保ちながら、SOFC10の燃料極支持体を低コスト化できる。
また、本実施例によれば、支持体12上に積層される各層14〜20がパルスレーザ堆積法により、600〜900(℃)の基板温度で製膜されることから、高温の焼成処理を必要とすることなく、所望する組成の膜を高い相対密度で形成できるので、燃料極14から支持体12へのNi拡散の抑制が一層容易である。
また、本実施例によれば、SOFC10は、電解質16と空気極20との反応を抑制するための反応抑止層18が設けられると共に、それら反応抑止層18と空気極20との界面全体に粒子径が5〜100(nm)程度の多数の微粒子22が分布することから、その微粒子22が反応抑止層18および空気極20の表面に容易に食い込むため、アンカー効果が得られ、前述したように熱膨張係数が12(ppm)程度、17(ppm)程度と大きく相違する両層18,20であっても、ヒートサイクルに起因する剥離が生じ難い利点がある。
以上、本発明を図面を参照して詳細に説明したが、本発明は更に別の態様でも実施でき、その主旨を逸脱しない範囲で種々変更を加え得るものである。
10 SOFC
12 支持体
14 燃料極
16 電解質
18 反応抑止層
20 空気極
22 微粒子

Claims (2)

  1. 多孔質の支持体の一面に、ニッケル触媒を含む燃料極、電解質、および空気極が順次に積層された固体酸化物形燃料電池であって、
    前記支持体は鉄または酸化鉄を主たる成分として含み、
    前記燃料極は前記電解質との界面近傍よりも前記支持体との界面近傍におけるニッケル/(ニッケル+鉄)原子分率が低い傾斜組成を有し、且つ前記電解質との界面から前記支持体側に5(μm)の位置におけるその原子分率が80(atom%)以上であることを特徴とする固体酸化物形燃料電池。
  2. 前記燃料極および前記電解質は、パルスレーザ堆積法により、1000(℃)未満の基板温度で製膜されたものである請求項1の固体酸化物形燃料電池。
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