JP2017053123A - 高さ調整自在な建築物 - Google Patents

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Abstract

【課題】建築物全体をリフトアップさせる事ができ、建築物の傾斜や沈下した部分を補修など行う際にも、スペーサやモルタル等を挿入又は充填して固定する必要が無く、再度補修工事が必要になった場合にも該工事作業が容易となる建築物の提供。【解決手段】コンクリートからなる基礎と、この基礎上に構築された構造物とからなる建築物であって、前記基礎には、前記構造物を高さ方向に昇降自在に支持する昇降装置が複数設けられており、当該昇降装置は、前記構造物の水平を保った状態で昇降可能である事を特徴とする建築物を提供する。【選択図】図7

Description

建築物全体をリフトアップさせる事ができ、高さを調整できるようにした建築物に関し、建築物の傾斜や沈下した部分を補修など行う際、或いは日常生活において、居住空間の地上高を調整できるようにした建築物に関する。
周知の通り、家屋等の建築物や土木構造物には定期的なメンテナンスが必要である。特に近年は、地震や地盤沈下、或いは浸水といった被害も多い為、建築物が沈下してしまったり、傾斜を生じてしまったりすることも多い。こうした建築物を補修、或いは耐震性向上のための免震装置の設置、等の工事を行う際には、建築物の基礎部分をリフトアップさせる必要があり、従来より様々な工法が利用されている。
例えば、特許文献1(特開平10−280427号公報)では、工期が短縮でき施工費を低く抑える修正用装置および工法が提案されている。即ち、該特許文献1では、建築物の基礎の上面の一部に形成された凹部と、この凹部の底面に予め埋め込まれ雄ネジ部が上方に突出しているアンカーボルトと、このアンカーボルトに螺合する下部ナットと、この下部ナットの上側に位置しアンカーボルトが貫通するボルト孔が形成され土台の下面を受ける修正具と、この修正具に受けられアンカーボルトが貫通するボルト孔が形成され基礎の上面に据え付けられる土台と、前記修正具に一体的に設けられ側方に突出してジャッキの力を受け土台に伝えるジャッキ受け部と、前記土台の上側に位置し上記アンカーボルトに螺合する上部ナットとを有する建築物の沈下を修正する修正装置が提案されている。
また、特許文献2(特開平08−027829号公報)では、一度の施工で事が足り、しかも正確な沈下修正を行うことができる沈下修正工法が提案されている。即ち、該特許文献2では、(a) 既設の建築物における基礎を根伐して穴の内周を土止めし、(b) 鋼管よりなり、長さが基礎下面から穴の底面までの距離よりも小なる基礎杭を基礎下の地盤に立て、基礎杭の上端と基礎下面との間に取り付けた油圧ジャッキにより杭を地盤に圧入し、油圧ジャッキによって基礎が持ち上がるようになるまで順次新たな杭を接続して圧入し、(c) 鋼管杭の上端に鋼板よりなる受け台を溶接して受け台と基礎の下面との間にジャーナルジャッキを設置し、(d) 基礎をジャッキアップすることによる建築物の水平調整を、前記基礎杭の先端が支持地盤に充分圧入されるまで繰り返し、(e) 前記受け台上面から基礎下面までの距離に長さを合わせて切断された鋼管よりなるスペーサを前記ジャーナルジャッキの側方に取り付けて受け台の上面に溶接し、同ジャッキを撤去した後、スペーサのまわりをモルタル等のセメントで固定し、土砂で埋め戻す上記(a) 〜(e) の工程よりなる建築物の沈下修正工法が提案されている。
さらに、特許文献3(特開平09−013696号公報)では、リフトアップした既存建築物に加わる水平力に充分対抗し得るリフトアップ工法が提案されている。即ち、該特許文献3では、既存建築物下部の基礎を地盤側基礎から切り離し、該既存建築物を所要高さまでリフトアップする工法であって、該既存建築物の上方を跨ぐ仮設フレームを構築し、該仮設フレームの上部から吊り下ろした吊材を介して該仮設フレームに反力を取りつつ該既存建築物を上昇させるとともに、該既存建築物下部の基礎と地盤側基礎との間にこれらを繋ぐ架台を設け、該既存建物を該架台を介して地盤側基礎にて支持するリフトアップ工法が提案されている。
特開平10−280427号公報 特開平08−027829号公報 特開平09−013696号公報
前述の通り、従前においても、建築物の補修等の目的で基礎部分をリフトアップさせる工法については種々検討され、提案されている。
しかしながら、何れの技術においても、建築物の一部分をリフトアップして補修又は修正を行うものであり、建築物全体をリフトアップさせるものではなかった。建築物全体をリフトアップさせることができれば、床下空間に簡単に入る事ができる為、害虫駆除等の定期メンテナンスや傾斜修正等の工事を容易に行うことができる他、床下空間を保管庫としても利用することも可能になる。即ち、建築物全体をリフトアップさせることで、床下空間の有効利用が可能となる。
そこで本発明では建築物の一部または片側のみならず、建築物全体をもリフトアップさせる事ができる建築物を提供する事を第1の課題とする。
また、何れの文献も、建築物をリフトアップさせた状態で保持し、リフトアップさせたままの状態で使用(または居住)する事はできない技術である。建築物をリフトアップさせた状態で保持する事ができれば、床下浸水或いは床上浸水等の浸水被害の事前対策が可能になり、建築物内部に被害を被ることの無い、安心・安全な建築物の保護が可能になる。
そこで本発明では、建築物をリフトアップさせた状態で保持し、リフトアップさせたままの状態で使用(または居住)する事のできる建築物を提供する事を第2の課題とする。
また、特許文献1や特許文献2の技術では、建築物の傾斜、或いは沈下した部分を補修する為に、ジャッキで基礎部分を昇降させた後、スペーサやモルタル等を挿入又は充填して固定する必要があった。特に、特許文献2では、上記工程後に埋め戻す必要があった。その為、再度補修工事が必要になった場合などには、改めて基礎の底面を掘削してジャッキを設置する必要があり、多くの時間と手間を要していた。
そこで、本発明では建築物の傾斜や沈下した部分を補修など行う際に、スペーサやモルタル等を挿入又は充填して固定する必要が無く、再度補修工事が必要になった際にも該工事作業が容易となる建築物を提供する事を第3の課題とする。
前記課題の少なくとも何れかを解決するべく、本発明では、コンクリートからなる基礎と、この基礎上に構築された構造物とからなる建築物であって、前記基礎には、前記構造物を高さ方向に昇降自在に支持する複数の昇降装置を均等に設け、当該複数の昇降装置は、それぞれが均等に伸縮可能である建築物を提供する。
前記基礎とは、構造物からの力(荷重など)を地盤に伝え、構造物を安全に支持する機能を有し、従前においても多くの建築物に設けられている。当該基礎は、地盤条件や構造物の性質、或いは施行条件等を鑑みて選択施工する事ができる。例えば、杭基礎やケーソン基礎、鋼管矢板基礎、ベタ基礎等を施工する事ができ、住宅等の木造構造物に対して利用する場合には、防湿用または耐圧盤のコンクリートが敷設された布基礎、ベタ基礎、独立基礎等を採用する事ができる。
また本発明において、上記基礎上に構築された構造物とは、屋根及び柱、もしくは壁を有する構造物を広く含んでおり、例えば一般住宅や寺院・神社の他、オフィスビル、官公庁舎、空港、商業施設、或いは物置や倉庫といった、様々な構造物をも広く含んでいる。
本発明にかかる建築物は、前記基礎に対して前記構造物を高さ方向に昇降自在に支持する昇降装置を複数設けている。当該昇降装置は、その上端が構造物に固定され、下端(基端)が基礎と一体化されており、当該昇降装置を介して前記構造物が基礎と一体化した構造となっている。また、当該昇降装置は、構造物の水平を保った状態で昇降できるよう構成するのが望ましい。即ち、複数の昇降装置は、それぞれの昇降量が同じ(均等)になるよう構成されており、望ましくはその昇降速度も均等になるように形成するのが望ましい。昇降に際して傾斜上になることにより、家屋などの構造物内に設置した家具や電化製品などの移動や倒伏を阻止するためである。
複数の昇降装置の昇降量が同じになるよう構成するに際し、その構成方法に特に限りは無いが、例えば複数の昇降装置が同時に起動し、連動して動作するような制御機能を備えた制御装置を別途設ける等して構成しても良い。複数の昇降装置を連動して同時に昇降させる事で、任意に構造物全体を上下動させる事ができ、目的に合わせた構造物の昇降移動が容易なものとできる。
その結果、例えば、床下空間に入り、害虫駆除や定期的なメンテナンス、或いは補修工事等を行う際にも、昇降装置によって構造物を上昇させる事で、当作業が容易なものとできる。また、構造物を上昇させる事で、床下の空間を確保する事ができ、当空間を保管庫として有効利用する事ができる他、ゲリラ豪雨等の急な災害が発生した場合にも、床下浸水或いは床上浸水等の浸水被害の事前対策が可能になり、構造物内部に被害を被ることの無い、安心・安全な建築物を実現する事ができる。
さらに上記昇降装置は、構造物を意図的に傾斜させて昇降するように動作させても良い。地震や地盤沈下等による被害によって建築物が傾いてしまった場合には、傾き補正が必要な箇所の昇降装置のみを動作させる事で、構造物の傾き補正が可能になる。その他にも、近年は屋根に対して太陽光発電装置を設置している住宅も増加しており、日照量を確保しやすい構造が望まれている所、こうした場合にも、本発明によれば当該昇降装置によって構造物を意図的に傾斜させ、日照量の得られる時間帯に必要な角度だけ傾斜させる事も可能になる。
本発明にかかる建築物では、前記構造物が前記基礎の上方に設けられる土台を備えている家屋などにおいて有効に実施できる。その際、前記昇降装置は、基端側が前記基礎に固定して設けられると共に、先端側が前記土台に固定して設けられた高さ方向に伸縮自在なジャッキである事が望ましい。当該土台は、基礎の上方に横にして据える事で、構造物を支持するものである所、当該土台に対して、構造物の柱、或いは壁部材を差し込み、構造物と土台を一体化させる事で、強度を有する建築物が完成する。当該土台は、檜やカラマツ等の木材からなる角材や、金属からなるH鋼、L字鋼等を用いて複数敷設して構成する事ができるが、住宅等で使用する場合には防腐処理された材料を用いるのが望ましい。
そして、前記昇降装置は、前記構造物を昇降させる事ができる限りにおいて、様々な装置や器具を使用する事ができる。例えば、パワーリフト等の電動式の昇降装置を用いても良いし、油圧式のジャッキや手動式のジャッキであっても良い。但し、本発明にあっては、昇降装置として、先端側が前記土台に固定して設けられた高さ方向に伸縮自在なジャッキを用いる事で、少ない力で容易に構造物を昇降させる事が可能になる。当該ジャッキを使用する事で、女性や高齢者といった力の弱い者でも確実に構造物を上下動させる事が可能になる。使用するジャッキの種類に特に限りは無く、ラチェット式ねじジャッキや軸受式ねじジャッキ、又はラック駆動ジャッキ等を含む機械式のジャッキや、油圧ジャッキ等を含む液体作動式のジャッキ、或いは空気式のジャッキ等を選択使用する事ができる。当該ジャッキは、取り外しができ、交換可能に構成するのが尚望ましい。ジャッキを交換可能に構成する事で、ジャッキが故障した際の交換作業が容易になる他、ジャッキを任意の箇所に取り付けできる為、昇降させたい部分に対して適切に配置する事ができる。
その他にも、昇降装置に安全対策機能等を備える事で、より安全に使用する事ができる。例えば昇降装置が降下中に障害物を察知した際には自動停止する機能であったり、急降下を防止する機能等を備える事で、人が操作して昇降させる場合にも、安心・安全な昇降作業が可能となる。更に、構造物を昇降させる主昇降装置に加え、当該主昇降装置が故障などによって機能しない場合において、予備的に当該構造物を支持できる複昇降装置を備えても良い。かかる複昇降装置は、構造物の上昇に際しては、主昇降装置よりも遅れて上昇すると共に、構造物の下降に際しては、主昇降装置よりも早く下降するように構成する事ができる。
また、当該昇降装置は、前記構造物の端部側に吊着されたカバー部材によって隠覆されているのが望ましい。これは、当該カバー部材によって昇降装置を隠覆する事によって、昇降装置が伸縮して構造物が昇降する際にも、基礎と構造物との隙間空間に物や人が挟まる危険性を極力減じる事ができる為である。当該カバー部材は、昇降装置が伸縮した際に、基礎と構造物との隙間空間に物や人が挟まる危険性を減じる効果があれば良い為、形成材料、及び長さ等は用途に応じて選択使用する事ができる。例えば、当該カバー部材の材料としては、塩化ビニル等の樹脂材料を用いることもできるし、耐候性を重視したい場合にはポリオレフィン系やフッ素樹脂等を用いても構わない。その他、絶縁性を鑑みた場合には、ポリウレタンやポリカーボネート等を使用しても良いし、用途によっては紙や木材或いは金属等を用いてカバー部材を形成しても良い。上記のような材料によって形成されたカバー部材は、例えば構造物が上昇する際に、連動して延伸する構成にする事によって、基礎と構造物との隙間空間を確実に隠覆する事ができる。
さらに、前記構造物の外側には、構造物に接続される屋外設置物を保持して、当該構造物とともに昇降する屋外設置物保持部を設けるのが望ましい。ここで言う屋外設置物とは、例えばエアコンの室外機や、プロパンガスボンベ、電気給湯装置、或いはTV等のアンテナ等が該当する。即ち、屋外設置物とは、屋内に何らかの効果をもたらすために屋外に設けられる設備を指し、こうした屋外設置物を保持する屋外設置物保持部を、前記構造物の外側に設ける事で、昇降装置によって昇降する構造物と一体となって屋外設置物及び屋外設置物保持部を移動させる事ができる。その結果、屋外設置物と屋内とを繋ぐホース等が断線する事無く、普段の生活環境に影響を及ぼす可能性を極力減ずることができる。
かかる屋外設置物保持部は、構造物に対して、前記したようなアンテナやエアコンの室外機等を保持する構成であればよく、構造物の壁面から水平方向に延出する床面を備えた構成とする事もできる。かかる屋外設置物保持部は、主として屋外設置物(通常は地面に設置される物)を保持するものとして構成される点において、従前の構造物におけるベランダや屋外デッキ等とは異なる。即ち、この屋外設置物保持部は、利用者が居住空間として使用するものでなく、保持する屋外設置物の質量や大きさとの関係において構成されている点に特徴を有する。かかる屋外設置物保持部は、例えば木材や樹脂或いは金属等によって板状、或いは箱状等に形成する事ができる。そして当該屋外設置物保持部を構造物の外側に固定する事で、昇降装置によって昇降移動する際にも、屋外設置物を安全に構造物と共に昇降移動させる事が可能になる。
また、前記構造物が住宅等である場合には、多くの場合、当該構造物には給排水設備やガスの配管設備が設けられ、電柱からは電線又は通信線が設けられる。その為、こうした設備が、構造物の昇降移動に対して対応可能に構成されているのが望ましい。よって、当該給排水設備の配管やガス配管、或いは電線又は通信線は、構造物の昇降に伴って伸縮又は変形自在に形成されているのが望ましい。例えば、給排水管やガスの配管として、伸縮又は変形自在なフレキシブルチューブ等を用いる事で、構造物の昇降移動に対しても柔軟に追従させる事が可能になる。具体的には、昇降装置によって構造物が上昇する際には、フレキシブルチューブで形成された配管が延伸する事ができ、一方で構造物が降下する際には、延伸した分、収縮する事が可能になる。また、給排水管やガス配管を長尺に形成して、その変形によって構造物の昇降に追従するように構成しても良い。
さらに、電柱からの電線又は通信線においても、上記同様に伸縮又は変形自在に形成する事が望ましい。電線又は通信線を伸縮又は変形自在に形成するには、上記のようにフレキシブルチューブやスプリング等を用いて形成したり、或いは電線又は通信線を長尺に形成して構造物の内部にその長尺な線を巻き取る巻き取りリールを設ける等する事で、構造物の昇降移動に追従可能な構成とする事ができる。
上記のように構成することで、構造物が住宅等で形成され、給排水設備における配管や、電柱からの電線又は通信線といった、通常生活に必要な構造が充填されている構造物であっても、安心・安全に昇降移動させる事ができる。そして、本発明にかかる建築物は、建築物の傾斜や沈下した部分を補修など行う際に、スペーサやモルタル等を挿入又は充填して固定する必要が無い為、補修工事が必要になった場合などにも該工事作業が容易なものとなる。その結果、一般住宅等に住む女性や高齢者であっても、構造物の昇降移動を容易にでき、生活環境に合わせた適切な建築物の提供が可能となる。
本発明による建築物では、基礎に対して構造物を高さ方向に昇降自在に支持する昇降装置が複数設けられており、当該昇降装置は、均等に昇降する事ができるように構成している。よって、任意に構造物を上下動させる事ができ、目的に合わせて構造物を昇降させることができる。その結果、例えば床下の通気性を良くしたい場合には、構造物を高い位置に上昇させ、床下を一定の温度に保持する場合などには、構造物を低い位置に下降させておくことができる。即ち、季節や生活環境に合わせた高さに調整する事の出来る建築物を提供する事ができる。
特に、前記構造物の昇降移動に際して、各昇降装置を均等な速度で動作させることにより、当該構造物は水平を保った状態で昇降する事ができ、その結果、室内環境に影響を与えることなく、昇降動作させることのできる建築物が実現する。
更に、本発明にかかる建築物は、例えば床下に入り害虫駆除や定期的なメンテナンス、或いは補修工事を行う際にも昇降動作させることができる。即ち、昇降装置によって構造物を上昇させる事で、当作業が容易なものとできる。本発明では建築物の傾斜や沈下した部分を補修など行う際に、スペーサやモルタル等を挿入又は充填して固定する必要が無く、再度補修工事が必要になった場合などにも該工事作業が容易となる建築物を提供できる。
また、構造物を上昇させる事で、床下の空間を確保する事ができ、当空間を保管庫として有効利用する事ができる他、ゲリラ豪雨等の急な災害が発生した場合にも、床下浸水或いは床上浸水等の浸水被害の事前対策が可能になり、構造物内部に被害を被ることの無い、安心・安全な建築物の保護が可能になる。
さらに、地震や地盤沈下等による被害によって、建築物が傾いてしまった場合にも、傾き補正が必要な箇所の昇降装置のみを動作させる事で、構造物の傾き補正が可能になる。その他にも、近年は屋根に対して太陽光発電装置を設置している住宅も増加していることもあり、日照量を確保しやすい構造が望まれている。こうした場合にも、本発明によれば、当該昇降装置によって構造物を意図的に傾斜させ、日照量の得られる時間帯に必要な角度だけ傾斜させる事も可能になる。
特に、本発明にあっては、昇降装置として、先端側が前記土台に固定して設けられた高さ方向に伸縮自在なジャッキを用いる事で、少ない力で容易に構造物を昇降させる事が可能になる。特にこの昇降装置が油圧や電力によって動作する場合には、一般住宅等に住む女性や高齢者であっても、構造物の昇降移動を容易にでき、目的に合わせた建築物の提供が可能になる。
本実施の形態にかかる建築物を示す図であり、(A)初期の状態を示す斜視図、(B)構造物を上昇させた様態を示す斜視図。 地盤沈下によって傾斜した建築物を修正する様態を示す図であり、(A)地盤沈下によって建築物が傾斜している様態を示す斜視図、(B)構造物を上昇させて傾斜を修正した様態を示す斜視図。 構造物を意図的に傾斜させ、日照量を確保する様態を示す図であり、(A)初期の状態を示す斜視図、(B)構造物を必要な角度だけ傾斜させ、日照量を確保する様態を示す斜視図。 昇降装置としてジャッキを用いた場合を示す図であり、(A)油圧式ジャッキを示す要部縦断面略図、(B)パンタグラフジャッキを示す要部縦断面略図。 カバー部材によって昇降装置を隠覆する様態を示す図であり、(A)初期の状態を示す要部縦断面略図、(B)ジャッキが上昇する動作に合わせてカバー部材がスライドしてジャッキを隠覆する様態を示す要部縦断面略図。 本実施の形態にかかる建築物における給排水設備の構造を示す要部縦断面斜視略図。 昇降時における給排水設備の状態の(A)初期状態を示す断面図、(B)上昇状態を示す断面図。 従来の建築物の傾斜の修正方法を示す要部縦断面略図。
以下、図面を参照しながら、本実施の形態にかかる建築物を具体的に説明する。図1に示すように、本実施の形態にかかる建築物Rは、コンクリートからなる基礎11と、この基礎11上に構築された構造物12、そして当該基礎11に対して設けられた複数の昇降装置10とから構成している。本実施の形態にかかる構造物12は、屋根及び柱、そして壁を有する木造住宅であり、基礎11としては、耐圧盤のコンクリートが敷設された布基礎を利用している。また、本実施の形態にかかる構造物12は、基礎11の上方に設けた図示しない土台(後述する図4では図示している)を備えた構成としている。当該土台は、基礎11の上方に横にして据える事で、構造物12を支持する要素である。即ち、当該土台に対して、構造物12の柱、或いは壁部材を差し込み、構造物12と土台を一体化させる事で、強度を有する建築物が完成する。当該土台は、檜やカラマツ等の木材を用いて形成された角材を複数敷設して構成している。
本実施の形態にかかる昇降装置10は、その上端を構造物12に固定し、当該構造物12が昇降装置10を介して基礎11と一体化された構造としている。また、当該昇降装置10は、構造物12の水平を保った状態で昇降できるよう構成している為、任意に構造物12を上下動させる事ができ、目的に合わせた構造物12の昇降移動が可能なものとしている。その結果、例えば、床下に入り害虫駆除や定期的なメンテナンス、或いは補修工事を行う際にも、昇降装置10によって構造物12を上昇させる事で、当作業が容易なものとできる。
また、構造物12を上昇させる事で、床下の空間を確保する事ができ、当空間を保管庫として有効利用する事ができる他、ゲリラ豪雨等の急な災害が発生した場合にも、床下浸水或いは床上浸水等の浸水被害の事前対策が可能になり、構造物12内部に被害を被ることの無い、安心・安全な建築物Rとすることができる。
さらに、当該昇降装置10によって、構造物12の水平を確保するように傾斜補正を行う事もできる。例えば、図2に示すように、地震や地盤沈下等による被害によって、建築物Rが傾いてしまった場合にも、傾き補正が必要な箇所の昇降装置10のみを上昇させる事で、構造物12の傾き補正が可能になる。
その他にも、図3に示すように、近年は屋根に対して太陽光発電装置40を設置している住宅も増加していることもあり、日照量を確保しやすい構造が望まれている。こうした場合にも、当該昇降装置10によって構造物12を意図的に傾斜させ、太陽40の日照量の得られる時間帯に必要な角度だけ傾斜させる事も可能になる。また、掃除や排水などの理由から構造物の内部の床面を意図的に傾斜させたい場合にも、当該昇降装置10によって構造物12を意図的に傾斜させることができる。
なお、当該昇降装置10は、前記構造物12を昇降させる事ができれば良い為、その構成方法に限りは無い。例えば、パワーリフト等の電動式の昇降装置を用いても良いし、柱等で構成しても構わない。但し、昇降装置10として、先端側が前記土台13に固定して設けられた高さ方向に伸縮自在なジャッキを用いる事で、少ない力で容易に構造物を昇降させる事が可能になる。例えば、図4(A)に示すように、昇降装置10Aとして油圧式のジャッキを用いても良いし、図4(B)にかかる昇降装置10Bのように、パンタグラフジャッキを用いても良い。即ち、当該ジャッキは、梃子のように力のモーメントを距離に分散させる形で大きい力に変換している為、当該ジャッキを使用する事で、女性や高齢者といった力の弱い者でも確実に構造物を上下動させる事ができる。また、例えば昇降装置10が降下中に障害物を察知した際には自動停止する機能であったり、急降下を防止する機能等を備える事で、人が操作して昇降させる場合にも、安心・安全な昇降作業が可能な構成とするのが望ましい。
上記のように安心・安全な昇降作業を実現する為にも、図5に示すように、構造物12の端部側に吊着されたカバー部材50によって、昇降装置10を隠覆する構成とするのが尚望ましい。これは、当該カバー部材50によって昇降装置10を隠覆する事によって、昇降装置10が伸縮して構造物12が昇降する際にも、基礎11と構造物12との隙間空間に物や人が挟まる危険性を極力減じる事ができる為である。図5では、構造物12が上昇する際に、連動してカバー部材50が延伸する構成にしている為、基礎11と構造物12との隙間空間を確実に隠覆する事が可能な構成としている。
本実施の形態において、昇降装置10は、構造物の基礎11に均等に設置しており、外壁部分のみならず、内部にも均等に設置する事が望ましい。この昇降装置の設置数量10は、使用する昇降装置の昇降能力(耐荷重)と、構造物の重さによって算出されるものであり、1つ当たりの昇降装置にかかる荷重が等しくなるように設置するのが望ましい。また何れの昇降装置を動作させるかを制御する制御装置を備える事が望ましい。かかる制御装置では、例えば構造物を南側に傾斜させる場合には北側に設けた昇降装置を動作させるようにし、且つ各昇降装置の昇降量(上昇量)も、傾斜させる角度に基づいて算出且つ制御するのが望ましい。
ここで、図8に示す図を参照しながら従来技術との比較説明をする。従来においても、地震や地盤沈下等の要因により、傾斜してしまった建築物の修正工法は提案されている。例えば、図8(A)(前述した特許文献1の技術)では、建築物等の基礎Bと土台Dを切り離し、この切り離した部分の間隙にジャッキJを介在させ、該ジャッキJを昇降させる事により建築物等の傾斜を水平にする。その後に、該間隙に介在したジャッキJの代わりに鉄板等のスペーサやモルタルを挿入又は充填して固定する修正工法が行われていた。
上記工法の他には、図8(B)(前述した特許文献2の技術)では、すでに完成している上部構造物の下部で新しい基礎を施行して構造物の荷重を受け替える、いわゆるアンダーピニング工法が行われていた。この工法には各種あるが、例えば、傾斜した基礎Bの底面の周辺を掘削して基礎Bの下側に基礎杭Pを圧入する。そして、基礎杭Pの上端面に受け台Fを設けてジャッキJを配設して基礎Bを持ち上げ、基礎Bの傾斜を修正した後にジャッキJの代わりにスペーサ等を挿入する。最後にその周辺をモルタルで固定して埋め戻す工法があった。
しかしながら、従来におけるいずれの技術においても、建築物の傾斜、或いは沈下した部分を補修する為に、ジャッキで基礎部分を昇降させた後、スペーサやモルタル等を挿入又は充填して固定する必要があった。一方で、本実施の形態にかかる建築物Rでは、建築物Rの傾斜や沈下した部分を補修など行う際に、スペーサやモルタル等を挿入又は充填して固定する必要が無く、再度補修工事が必要になった場合などにも該工事作業が容易であるため、時間と手間を大幅に減ずる事ができる。また、昇降装置10として、高さ方向に伸縮自在なジャッキを用いた場合には、一般住宅等に住む女性や高齢者であっても、構造物12の昇降移動を容易にできる構成とする事ができる。
さらに、本実施の形態にかかる建築物Rには、図1に示す様に、前記構造物12の外側に屋外設置物20としてエアコン室外機を設置しており、当該エアコン室外機は板状の屋外設置物保持部21によって保持された構成としている。その他の屋外設置物20としては、図示しないプロパンガスボンベ、電気給湯装置等があり、全て屋外設置物保持部21によって保持された構成としている。こうした屋外設置物20を保持する屋外設置物保持部20を、構造物12の外側に設ける事で、昇降装置10によって昇降する構造物12と一体となって屋外設置物20及び屋外設置物保持部21を移動させる事ができる構成としている。その結果、屋外設置物20と屋内とを繋ぐホース等が断線する事無く、普段の生活環境に影響を及ぼす可能性を極力減ずることができる。即ち、当該屋外設置物保持部21を構造物12の外側に固定する事で、昇降装置10によって昇降移動する際にも、屋外設置物20を安全に構造物12と共に昇降移動させる事が可能な構成としている。
また、建築物Rの周囲に存在する電柱30からの電線31には、フレキシブルチューブ等で形成された伸縮自在な伸縮部32を備えた電線31を採用している。その結果、昇降装置10による構造物12の昇降移動に対しても、柔軟に追従する事が可能になり、生活環境に影響を及ぼす可能性を極力減じる事が可能な構成としている。
さらに、本実施の形態にかかる建築物Rには、図6に示すように、給排水設備60が設けられている。当該給排水設備60は、配水管62からの水を供給する配管60、そして止水栓63及び水道メータ64とからなり、住宅における生活用水を供給する設備として利用している。本実施の形態にかかる給排水設備60の配管61は、構造物12の昇降に伴って伸縮自在に形成している。具体的には、トイレや風呂、洗濯槽や台所用水としての水を供給する配管61に伸縮部32を設けた構成とし、構造物12の昇降移動に対して柔軟に追従できる構成としている。その為、昇降装置10によって構造物12が上昇する際には、フレキシブルチューブ等で形成された配管61が延伸する事ができ、一方で構造物12が降下する際には、延伸した分収縮する事が可能になる。
図7は、特に上記建築物Rの昇降動作に追従する給排水設備を示す(A)初期状態の断面図、(B)上昇状態の断面図である。この図に示す様に、本実施の形態にかかる建築物Rは、給排水設備における排水管(下水側)65及び給水管(上水側)66の夫々に、伸縮自在な伸縮部32を設けている。特にこの図7の実施形態において、下水を排出する排水管65には蛇腹状の伸縮部32を設け、上水を供給する給水管66には柔軟な樹脂チューブなどからなる伸縮部32を設けている。また、当該伸縮部32は土台の下に設けており、これによりジャッキアップさせた状態において、当該給排水設備のメンテナンスを容易に行う事ができる。なお、この実施の形態において、土台13はH鋼やL字鋼等を繋ぎ合わせてプラットホームとして形成した補強フレーム13Aと、この補強フレーム13A上に設けた角材フレーム13Bとで構成している。このように、土台が金属フレームを含んでいることにより、建築物を上昇させたり、或いは傾斜させた場合であっても、建築物の歪みを無くすことができる。
上記のように構成することで、構造物12が住宅等で形成され、給排水設備60における配管61や、電柱30からの電線31又は通信線といった、通常生活に必要な構造が充填されている構造物12であっても、安心・安全に昇降移動させる事ができる。そして、本実施の形態にかかる建築物Rは、建築物Rの傾斜や沈下した部分を補修など行う際に、スペーサやモルタル等を挿入又は充填して固定する必要が無い為、補修工事が必要になった場合などにも該工事作業が容易なものとなる。その結果、一般住宅等に住む女性や高齢者であっても、構造物12の昇降移動を容易にでき、生活環境に合わせた適切な建築物Rの提供が可能となる。
R 建築物
10 昇降装置
11 基礎
12 構造物
13 土台
20 屋外設置物
21 屋外設置物保持部
30 電柱
31 電線
32 伸縮部
40 太陽光発電装置
41 太陽
50 カバー部材
60 給排水設備
61 配管
62 配水管
63 止水管
64 水道メータ

Claims (5)

  1. コンクリートからなる基礎と、この基礎上に構築された構造物とからなる建築物であって、
    前記基礎には、前記構造物を高さ方向に昇降自在に支持する複数の昇降装置を均等に設け、
    当該複数の昇降装置は、それぞれが均等に伸縮可能である事を特徴とする、建築物。
  2. 前記構造物は、前記基礎の上方に設けられる土台を備えており、
    前記昇降装置は、その基端側が前記基礎に固定して設けられると共に、先端側が前記土台に固定して設けられた、高さ方向に伸縮自在なジャッキである、請求項1に記載の建築物。
  3. 前記昇降装置は、前記構造物の端部側に吊着されたカバー部材によって隠覆されている、請求項1又は2に記載の建築物。
  4. 前記構造物の外側には、構造物に接続される屋外設置物を保持して、当該構造物とともに昇降する屋外設置物保持部が設けられている、 請求項1〜3の何れか1項に記載の建築物。
  5. 前記構造物には給排水設備が設けられており、
    当該給排水設備の配管は、構造物の昇降に伴って伸縮又は変形自在に形成されている、請求項1〜4の何れか一項に記載の建築物。
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