JP2017052979A - 高張力鋼板形状の矯正方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】降伏強度の高い高張力鋼に、矯正後平坦度の高い矯正作業を、既存の矯正設備で実施可能とする。【解決手段】高張力鋼板を、熱処理炉で加熱して鋼板組織をオーステナイトとした後に、当該鋼材を45〜1000℃/秒の冷却速度にて200℃以下に水冷し、鋼板組織をマルテンサイトに変態させ、その後、焼き戻しを行って高張力鋼とし、その後、形状矯正を行うに際し、焼入れ後〜焼戻しまでの時間(t1)が24時間以上、焼戻し終了から矯正までの時間(t3)が60分以内で、焼入れ後の降伏強度が低値である時間帯に、矯正を行う。【選択図】図5

Description

本発明は、焼入れにより高張力鋼を製造するにあたり、焼入れ後に焼き戻しを行うまでの時間と、焼戻しから矯正操作までの時間経過に伴って、鋼板の降伏強度が増減する現象を利用し、熱処理後の鋼板の降伏強度が低値である時間帯にレベラー又は油圧プレスレベラーによる矯正を行うことにより、他の時間帯での矯正よりも大きい加工度を鋼板に与え、良好な矯正後平坦度を得る技術である。
高張力鋼は、メーカーや用途により様々な定義がなされているが、一般的には、概ね490MPa以上の引張強度(旧表示で50kg/mm2級)を有する鋼を指すことが多く、近年では1000MPaを超える強度のものも現われてきている。高張力鋼は、一般に、熱間圧延直後、あるいは熱処理炉での加熱直後に焼入れを施し、マルテンサイト変態を生じせしめることにより、製造される。また、用途に応じ、硬度や靭性の調整のために焼入れ後に焼戻し熱処理を行う場合もある。
この製造プロセスにおいて、焼入れは鋼板表裏面への水スプレー噴射あるいは鋼板の水槽への浸漬により行うが、冷却の前半に鋼板に不均一温度分布が生じて高温部は圧縮、低温部は引張の塑性変形が生じ易く、この過程で高温部が座屈する場合があり、またこの過程で低温であった部位は線長が伸びているため、冷却が終了し、鋼板温度が均一になる段階で座屈する場合がある。
即ち、焼入れ処理では、鋼板寸法及び冷却条件に応じ、鋼板各部に座屈による波が生じ易い。このような変形を低減するために、例えばローラークエンチ装置(Roller Quench、以下RQということがある。)による焼入れに対し、従来は特許文献1のように幅方向の冷却を均一にする技術、あるいは特許文献2のように通板の高速化により長手方向の温度勾配を低減する技術、及び拘束ロールの押し付けにより面外変形を抑制する技術が提案されている。
特許第3449295号公報 特開2008−231476号公報
しかしながら、冷却ノズルの均一性、通板速度、高速ロールの押し付け力等には設備的限界が存在し、特に板厚10mm未満の薄手高張力鋼に対しては一般的なRQでは十分な形状制御を行うことは困難である。一方、板厚が厚い高張力鋼の場合には、鋼板自体が有する冷却特性差、特に四周部と鋼板内部、及び上下面の冷却速度差が大きいため、鋼板内部の温度偏差、及びこれに伴う変形を完全に抑制することは困難である。
また、座屈変形が生じた鋼板は、一般に図1に示すローラーレベラーCLによる曲げ加工にて矯正する必要があるが、高張力鋼は降伏強度も高いため、曲げ矯正時の加工度を確保しにくく、平坦に矯正することは困難である。油圧プレスレベラーOLによる矯正も曲げ加工であり、高張力鋼の矯正が軟鋼に比較して困難である点はローラーレベラーの場合と同じである。
ここで、加工度とは、矯正中に被矯正材に与えられる曲率κを被矯正材の弾性限曲率κ0で除したものであり、式(1)で与えられる。
Figure 2017052979
レベラー矯正に於いては、図1及び図2に示すように、上下に千鳥配置されたワークロール間に鋼板を通すことにより鋼板に正負の曲げを繰り返し加える、図2のように上ワークロール#2、#4、#6、#8及び#10を傾斜させる機構を有するレベラーにおいては、入側押し込み量、即ち矯正機入側の鋼板表面と上部の先頭ワークロール#2下面との高さ差δiを正の値に設定し、出側押し込み量、即ち矯正機出側鋼板表面と上部の最終ワークロール#10下面との高さ差δoをゼロに設定することが一般的に行われている。
このようなレベラーのワークロール位置設定により、矯正の初期に鋼板に大きな加工度を与え、その後、加工度を逓減させつつ繰り返し曲げを加え、最終的に曲率ゼロ、即ち平坦に仕上げることができる。この矯正過程で鋼板に付与される加工度の最大値が大きいほど、被矯正材の板厚方向の塑性変形領域が、表層から板厚中心近傍にまで及び、矯正効果が高まる。
例えば、板厚8mm、降伏強度300MPaの軟鋼を矯正する際に、鋼板に所定の加工度を与えるためのワークロール位置設定は、ワークロールを剛体と仮定して計算すると、表1に示す値となる。 実際のレベラーでは、ロールアセンブリとフレームの変形、及びワークロールベンディングの影響等を考慮し、表1とは若干異なる値に設定される場合がある。
Figure 2017052979
式(1)の右辺に於いて、曲率κはレベラーの押込み量により決まり、Eは炭素鋼では
2.1×105N/mm2前後のほぼ一定値である。従って、同一の板厚の鋼材を同一の押込み量で矯正する場合は、被矯正材の降伏強度σyが大きいほど、加工度は小さくなる。
軟鋼の降伏強度が300MPa前後であるのに対し、焼入れにより製造される高張力鋼の降伏強度は900MPa前後であり、軟鋼のおよそ3倍の値である。従って、同一矯正条件であれば、高張力鋼に付与される最大加工度は、軟鋼に付与される最大加工度のおよそ1/3となる。
レベラー矯正においては、矯正前後の急峻度と最大加工度の間の関係は式(2)のように表わされる。
Figure 2017052979
図3に示すように、焼入れ後の形状不良材の急峻度は0.7%前後に分布しており、累積頻度を示す曲線から理解されるように、全体の約85%は1.0%未満である。また、製品として出荷可能な急峻度は0.5%以下であることが多い。鋼板の急峻度を、焼入れ後急峻度の85%をカバーする1.0%から、一般的な出荷可能平坦度である0.5%にレベラー矯正により低減させるためには、式(2)の関係より、最大加工度は4以上とする必要がある。図4はこれをグラフ化して表したものであり、矯正後急峻度は、入側急峻度を加工度の1/2乗で除した値に減少することを示している。
一方、通常のレベラーは、軟鋼に対し5乃至6の最大加工度を付与するような設計となっている場合が多く、これらのレベラーで高張力鋼を矯正すると、式(1)により最大加工度は1/3となり、式(2)によりレベラー出側の材料急峻度は、軟鋼に対し√3倍に増大する。
高張力鋼に対し、より大きな最大加工度を付与するためには、ロール押込量を増大させる必要があるが、荷重や駆動力が設備限界を超過し、噛み止めや設備破損の危険性が増すため、例えば軟鋼に対して最大加工度6を付与するロール押込量設定から設備限界に至るまでの押込量の増分は高々10〜20%であることが多い。ここで、ロール押込量をδ、ロール間隔をpとすると、当該ロールで鋼板に付与される曲率κは、下式(3)で表される。
Figure 2017052979
即ち、曲率は押込量に比例し、従って、式(1)より加工度も押込量に比例する。軟鋼に対し最大加工度6を付与する設定から押込量を20%増大させた場合、軟鋼に対しては最大加工度7.2を付与する設定となる。しかし、同じ設定で軟鋼の3倍の降伏強度を有する高張力鋼を矯正すると、最大加工度は7.2÷3=2.4に減少し、入側急峻度が1.0%の場合の出側急峻度は1.0÷√(2.4)=0.65%となり、合格基準には到達し得ない。
以上に述べたように、高張力鋼は焼入れ過程で座屈変形を起し易く、かつ焼入れ後の形状矯正は、その高い降伏強度が障害となって、軟鋼に比べ極めて困難であり、矯正による平坦化が難しい欠点があった。
上記課題を解決するために、本発明者らが、鋭意研究した結果、焼入れ後に焼き戻し処理を行った鋼板の降伏強度は、焼入れ処理から焼き戻し処理までの時間t1の経過と、焼戻し処理から矯正処理までの時間t3の経過に応じて、増減するとの知見を得た。
図5は、高張力鋼板に焼入れ、焼戻しを行うタイムスケジュールの一例を示したものである。
鋼板を加熱して930℃に1200秒保持したのち、70℃/sの冷却速度でローラークエンチ(RQ;冷却ロールに挟持して急冷)し、t1秒後に昇温を開始して500℃に1200秒保持したのち、300℃程度まで1℃/s、その後冷却終了温度50℃まで0.2℃/s〜1℃/sで冷却し、t3秒後にレベラーによる矯正を行う。ここでt3のカウントを開始するタイミングは50℃になってからの時間と定義する。
図6は、焼戻し終了からレベラーによる矯正操作開始時点までの時間t3を15分に固定して、焼入れから焼き戻しのための昇温開始までの時間t1を変化させたときの、矯正操作開始時点での高張力鋼板の降伏強度の変化を示したグラフである。
図6から明らかなように、t3を15分に固定して、焼入れから焼戻しのための昇温開始までの経過時間t1を変化させると、t1が大きい程、矯正操作開始時点の鋼板の降伏強度が低下する傾向にあることが判る。
一方、図7は、焼戻し終了時点から、レベラーによる矯正操作開始時点までの時間t1を1440分の一定値としたままで、焼入れ終了時点から焼戻しのための昇温開始までの時間t3を変化させた時の、矯正操作開始時点の鋼板の降伏強度の変化をプロットした図である。
同図によれば、焼き戻し終了後の鋼板降伏強度は、t3が短い程、小さくなる傾向にあることが判る。
即ち、焼入れ終了から1440分後に焼戻しのための昇温を開始した場合には、焼き戻し終了後の経過時間が短い程、鋼板の降伏強度は小さくなるので、矯正操作は、焼戻し終了後、なるべく早く開始することが、降伏強度が小さくなって有利となる。
図8は、図6及び図7に示したt1及びt3の変化による降伏強度の変化を重畳して記載したグラフであり、t1及びt3の変化が、焼戻し終了時の高張力鋼板の降伏強度変化に強い相関を有していることが理解できる。
図6乃至8に示した結果に基づけば、高張力鋼板に対して焼入れ及び焼戻しを実施してから、形状制御のための矯正操作を実施する際には、焼入れ後、ある程度以上の時間をおいてから、焼戻しのための昇温を開始し、焼戻し終了後には、できるだけ速やかに形状制御のための矯正操作を開始すれば、高張力鋼板の降伏強度が低い状態で矯正操作できることになり、矯正操作の効果が最大限得られることが判る。
軟鋼との対比で考えると、表2に示すように、軟鋼に最大加工度5.0乃至6.0を付与する設定のレベラーを適用した場合、本来の降伏強度に達した高張力鋼では最大加工度は1.7乃至2.1に留まり、入側急峻度1.0%の鋼板の出側急峻度は0.8%乃至0.7%である。
これに対し、同高張力鋼を降伏強度360MPaの時点で矯正すると、最大加工度4.2乃至5になり、出側急峻度を0.45乃至0.48%程度にまで低減することが可能である。
Figure 2017052979
本発明は、上記の知見に基づいてなされたものであって、降伏強度が低値である時間帯、即ち焼入れ終了後から焼き戻しまでの時間を十分確保した後、焼戻しのための昇温を開始すると共に、焼戻し終了後、できるだけ速やかにレベラー等による矯正操作を開始することで、高張力鋼板が本来有する降伏強度(最終到達降伏強度)よりもはるかに低い降伏強度を示す時点で、レベラー矯正を行うことにより、高張力鋼板に大きな加工度を付与し、良好な平坦度を得ることを特徴としており、その要旨は以下のとおりである。
(1)高張力鋼板を、熱処理炉で加熱して鋼板組織をオーステナイトとした後に、当該鋼材を45〜90℃/秒の冷却速度にて200℃以下に水冷し、鋼板組織をマルテンサイトに変態させ、その後、焼き戻しを行って高張力鋼とし、その後、形状矯正を行うに際し、焼入れ後〜焼戻しまでの時間(t1)が24時間以上、焼戻し終了から矯正までの時間(t3)が60分以内で、焼入れ後の降伏強度が低値である時間帯に、矯正を行うことを特徴とする高張力鋼板形状の矯正方法。
(2)前記高張力鋼板が、質量%でC:0.50%以下、Si:0.70%以下、P:0.05%以下、S:0.05%以下、O:0.007%以下、N:0.01%以下であって、Ni、Cr及びMoの3種の少なくとも1種以上を、各々Ni:9.5%以下、Cr:2.5%以下、Mo:1.2%以下の範囲で含み、残部不可避的不純物及びFeからなることを特徴とする前記(1)に記載の高張力鋼板形状の矯正方法。
(3)前記高張力鋼板が、更に、Cuを0.5%以下含むことを特徴とする前記(2)に記載の高張力鋼板形状の矯正方法。
(4)焼入れおよび焼戻し後の降伏強度が、最終到達強度の60%以下である時間帯に、矯正を行うことを特徴とする前記(1)〜(3)の何れかに記載の高張力鋼板形状の矯正方法。
(5)焼入れおよび焼戻し後の降伏強度を、t1、t3及び予め求めたσy0.2%に基づいて予測し、σy0.2%が低値である時間帯で、矯正を実施することを特徴とする前記(1)〜(4)の何れかに記載の高張力鋼板形状の矯正方法。
上述のように、本発明によれば、レベラーで所定の押込量を高張力鋼板に付与した場合、矯正時点での降伏強度が低いため、最終的な降伏強度に達した高張力鋼板に同一の押込量を付与した場合に比して、より大きな加工度と矯正効果が得られ、鋼板形状を良好なものとすることができる。
ローラーレベラーの基本構造と鋼板の曲げ矯正を示す図である。 鋼板とローラーレベラーの相対関係と入側押し込み量及び出側押し込み量を示す図である。 レベラー矯正において、鋼板の急峻度が、矯正前の1.0%を起点とし、レベラーで付与される最大加工度に応じて減少する様子を示す図である。 加工度の増大が急峻度の低下に与える影響を示すグラフである。 RQを用いた焼入れ、焼戻しプロセスのタイムスケジュールの一例を示す図である。 t3を15分に固定してt1を変化させた場合の降伏強度変化を示す図である。 t1を1440分(1日)に固定してt3を変化させた場合の降伏強度変化を示す図である。 t1とt3を変化させた場合の降伏強度変化を重回帰式によって示す図である。
以下に、添付した図面を参照して、本発明の一実施形態について説明する。
図5において、鋼板を熱処理炉で930℃に昇温し、20分(1200秒)保定してオーステナイト化処理を行った後、熱処理炉から抽出し、速やかに水冷しマルテンサイト変態を生じせしめることにより、高張力鋼板とする。ここで、熱処理は連続式熱処理炉またはバッチ式熱処理炉で行い、水冷は、RQまたは水槽で行う。
t1秒後に焼き戻しのための加熱を開始し、1.4℃/sの加熱速度で500℃まで加熱した後、20分(1200秒)保持してから、1℃/sで300℃まで、その後常温まで0.2℃/sで冷却し、t3秒後に、ライン下流のコールドローラーレベラー(Coldroller Leveler、CL)及び/または油圧プレスレベラー(Oil Leveler、OL)に送り、形状矯正を行う。
本発明においては、焼入れ後〜焼戻しまでの時間(t1)が24時間以上、焼戻し終了から矯正までの時間(t3)が60分以内であれば、普通鋼用の矯正装置(降伏応力が400MPa程度以下の鋼の矯正が可能)であっても、高張力鋼に対して所定の形状矯正効果が得られる程度に降伏応力の軟化が期待できるが、好ましくは、t1が36時間(2160min)以上、t3が40分以内、更に好ましくは、t1が48時間以上、t3が20分以内であれば、さらなる降伏強度の低下が期待できる。その際、降伏強度が最終強度の60%以下である時間帯に矯正を行うと、本発明の効果を十分享受することが出来る。 但し、t1を長くすることは、生産性の低下や鋼材ヤード等の保管場所の増大につながるので、それらとの兼ね合いを考慮して設定する必要がある。
本発明は、各種の高張力鋼に適用できるが、以下に成分の目安を示す。
<C:0.50%以下>
Cは、いうまでもなく、焼入れ性を確保し、鋼の強度を創出する基本元素であるが、高濃度であると、硬さは向上するものの靱性が低下し、割れなどを発生し易くなるので、 0.5%を上限とする。
<Si:0.70%以下>
Siは、脱酸操作上、鋼中に含有され、固溶強化作用を有するが、過剰に含むと溶接性やHAZ靱性を悪化させるため、0.70%を上限とした。
<P:0.05%以下>
Pは、固溶強化元素としての側面もあるが、その量が多くなると、鋼板の加工性や溶接性の低下が顕著となるので、好ましくない。特に、0.05%を超えると、これらの悪影響が大きくなるので、上限を0.05%とした。
<S:0.05%以下>
Sは、熱間圧延時の割れや加工時の割れを引き起こす元素であるため、含有量の上限を0.05%に規定した。
<Mn>
Mnは、鉄鋼成分の基本5元素のひとつであるが、本発明では、成分中に含まれるSをMnSとして捕捉する以上の作用は予定していない。したがって、不純物として含まれるSの含有量に見合う量が含まれていればよく、構造用普通鋼種と同様、含有量の上限は、1.5%程度である。
<Ni:9.5%以下>
Niは、鋼の焼き入れ性を向上させる元素であると共に、低温靱性を確保できる成分であり、実際に9%Ni含有高張力鋼は、LNGタンク素材として広く利用されているところであるが、高コストと、効果の飽和のため、上限を9.5%に規定した。
<Cr:2.5%以下>
Crは、鋼材の強度と靱性を共に向上するが、添加量が多すぎるとかえって靱性を劣化すると共に、溶接性も劣化するため、上限を2.5%に規定した。
<Mo:1.2%以下>
Moは、焼入れ性向上元素であるが、同時に固溶強化能が高く、またMoC2として析出し、強い2次硬化現象を起こす。1.2%を超えて添加すると、硬化が強くなりすぎてかえって材料が脆化するため、1.2%を上限とした。
<Cu:0.5%以下>
Cu粒子として、析出強化作用を有するが、低融点のため、高温下では、溶融して粒界に浸透し、赤熱脆化を起こす。このため、0.5%を上限とした。
なお、Niとの共存下では、熱間圧延中の割れを抑制する効果もある。
なお、Oは0.007%、Nについては、0.05%程度を含有量の上限の目安とする。その他の、高張力鋼に限らず鋼材一般に含有される不可避的不純物については、通常の鋼材と同様であって、特有の含有量範囲を設定するものではない。
(実施例)
表3に試験に使用した高張力鋼(鋼A)の成分を示す。
この鋼に、同一条件で熱処理を施し、焼入れ終了後、15分、60分(1時間)、1440分(1日)、2160分(1.5日)、2880分(2日)及び5760分(4日)経過後に、焼戻し操作を行い、15,20、40及び60分、1、2及び4日後に降伏強度を測定した結果を表4に示す。
Figure 2017052979
Figure 2017052979
表4の降伏強度の値から理解されるように、焼入れ後から焼戻し開始までの時間t1を、1日(1440分)以上とし、焼戻し終了後からの経過時間t3を60分以内として、降伏強度を測定すると、何れの場合でも400MPa未満の降伏強度を示し、普通鋼用の矯正機器でも板形状を有効に矯正できることが理解される。t1とt3の組合せとしては、好ましくはt1を1.5日以上、t3を40分以内、さら好ましくは、t1を2日以上とし、t3を20分以内と規定できるが、特にt1を長時間とすることは、生産性や待機ヤードの確保の点から、いたずらに長時間とすることは難しい。
これに対して、比較例に示すように、焼入れ後1日未満で焼戻しを行い、及び/又は焼戻し後60分以上経過してから矯正を行った場合には、高張力鋼の降伏強度が400MPa以上に上昇し、普通鋼用の矯正機器による板形状の矯正操作では、出荷基準を満たすことができない。
この発明に係る鋼板の矯正方法によれば、焼入れ処理後の高張力鋼板に対して適切な加工度を付与でき、良好な矯正後平坦度を得ることができるので、産業上の利用可能性は大きいものがある。
RQ ローラークエンチ設備
CL コールドローラーレベラー
OL 油圧プレスレベラー

Claims (5)

  1. 高張力鋼板を、熱処理炉で加熱して鋼板組織をオーステナイトとした後に、当該鋼材を45〜1000℃/秒の冷却速度にて200℃以下に水冷し、鋼板組織をマルテンサイトに変態させ、その後、焼き戻しを行って高張力鋼とし、その後、形状矯正を行うに際し、焼入れ後〜焼戻しまでの時間(t1)が24時間以上、焼戻し終了から矯正までの時間(t3)が60分以内で、焼入れ後の降伏強度が低値である時間帯に、矯正を行うことを特徴とする高張力鋼板形状の矯正方法。
  2. 前記高張力鋼板が、質量%でC:0.50%以下、Si:0.70%以下、P:0.05%以下、S:0.05%以下、O:0.007%以下、N:0.01%以下であって、Ni、Cr及びMoの3種の少なくとも1種以上を、各々Ni:9.5%以下、Cr:2.5%以下、Mo:1.2%以下の範囲で含み、残部不可避的不純物及びFeからなることを特徴とする請求項1に記載の高張力鋼板形状の矯正方法。
  3. 前記高張力鋼板が、更に、Cuを0.5%以下含むことを特徴とする請求項2に記載の高張力鋼板形状の矯正方法。
  4. 焼入れおよび焼戻し後の降伏強度が、最終到達強度の60%以下である時間帯に、矯正を行うことを特徴とする請求項1〜3の何れか1項に記載の高張力鋼板形状の矯正方法。
  5. 焼入れおよび焼戻し後の降伏強度を、t1、t3及び予め求めたσy0.2%に基づいて予測し、σy0.2%が低値である時間帯で、矯正を実施することを特徴とする請求項1〜4の何れか1項に記載の高張力鋼板形状の矯正方法。
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