JP2017052005A - 重ね接合継手及びその製造方法 - Google Patents
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Abstract
Description
本発明は、このような実情に鑑み、継手強度に優れた重ね接合継手を提供することを課題とする。
(1)重ね合わされた複数の金属板で構成され、点状の接合部を有する重ね接合継手において、
前記点状の接合部は、前記複数の金属板に跨る溶融凝固部を有し、
前記溶融凝固部は、再溶融凝固部と、凝固再加熱部とを有し、
前記再溶融凝固部は、前記溶融凝固部を平面視したとき、当該溶融凝固部の円相当中心軸を含む点状で、前記複数の金属板に跨っており、
前記凝固再加熱部は、前記再溶融凝固部の周囲に位置し、前記点状の接合部の溶融境界を含んでおり、
更に、前記凝固再加熱部において、前記金属板の重ね合わせ面の前記溶融境界から前記中心軸側に100μmの点を中心点とし、
前記中心点から前記中心軸へ向かう方向に平行で、前記金属板面に垂直な、前記中心点を中心とした、100μm×100μmの矩形平面領域にて、P濃度を質量%で、当該金属板面に平行な方向及び当該金属板面に垂直な方向それぞれに沿って1μmピッチで測定し、これにより100点×100点の測定点それぞれにおける当該P濃度の測定値を求め、
前記100点×100点の測定点のうち、前記金属板面に平行な方向に一列に並んだ隣り合う20点の各前記測定点における前記P濃度の測定値の部分平均値を、当該金属板面に平行な方向及び当該金属板面に垂直な方向それぞれに沿って1点ずつずらしながら算出することを繰り返し、これにより81個×100個の部分平均値を求めた場合に、
前記部分平均値のうち、前記100点×100点の測定点それぞれにおける前記P濃度の測定値の全平均値の2倍を超える前記部分平均値の個数が0個以上100個以下であることを特徴とする重ね接合継手。
(2)前記中心点から前記中心軸へ向かう方向に平行で、前記金属板面に垂直な断面において、前記再溶融凝固部の外側端部から前記溶融境界までの距離が0.5〜1.0mmで
あることを特徴とする前記(1)に記載の重ね接合継手。
(3)前記複数の金属板が、表面処理皮膜を有する金属板を1枚以上含むことを特徴とする前記(1)又は(2)に記載の重ね接合継手。
(4)複数の金属板を重ね合わせ、光線を照射して接合する重ね接合継手の製造方法において、
重ね合わされた一方の金属板に光線を照射して、前記複数の金属板に跨って点状に溶融凝固した溶融凝固部を有する点状の接合部を形成し、
前記光線の照射側から前記溶融凝固部を平面視したとき、当該溶融凝固部の内側に前記光線を再照射し、当該溶融凝固部の円相当中心軸を含む点状に、前記複数の金属板に跨って再溶融凝固させて再溶融凝固部を形成し、更に、当該再溶融凝固部の周囲に前記点状の接合部の溶融境界を含む凝固再加熱部を形成するとともに、その際に再加熱条件を調整して、
前記金属板の重ね合わせ面の前記溶融境界から前記中心軸側に100μmの点を中心点とし、
前記中心点から前記中心軸へ向かう方向に平行で、前記金属板面に垂直な、前記中心点を中心とした、100μm×100μmの矩形平面領域にて、P濃度を質量%で、当該金属板面に平行な方向及び当該金属板面に垂直な方向それぞれに沿って1μmピッチで測定し、これにより100点×100点の測定点それぞれにおける当該P濃度の測定値を求め、
前記100点×100点の測定点のうち、前記金属板面に平行な方向に一列に並んだ隣り合う20点の各前記測定点における前記P濃度の測定値の平均値を、当該金属板面に平行な方向及び当該金属板面に垂直な方向それぞれに沿って1点ずつずらしながら算出することを繰り返し、これにより81個×100個の部分平均値を求めた場合に、
前記部分平均値のうち、前記100点×100点の測定点それぞれにおける前記P濃度の測定値の全平均値の2倍を超える前記部分平均値の個数が0個以上100個以下となるようにする
ことを特徴とする重ね接合継手の製造方法。
(5)前記光線の再照射は、前記中心点から前記中心軸へ向かう方向に平行で、前記金属板面に垂直な断面において、前記再溶融凝固部の外側端部から前記溶融境界までの距離が0.5〜1.0mmとなるように行われることを特徴とする前記(4)に記載の重ね接合継手の製造方法。
(6)前記複数の金属板に、表面処理皮膜を形成した金属板を1枚以上用いることを特徴とする前記(4)又は(5)に記載の重ね接合継手の製造方法。
点状の接合部を有する重ね接合継手において、更に、継手強度を向上させることが望まれていた。そこで、本発明者らは、点状の接合部に熱処理することを検討し、点状の接合部の熱処理箇所及び熱処理方法について調査した。
まず、Pの偏析の解析では、金属板2a、2bの重ね合わせ面5の溶融境界6から中心軸C側に100μmの点を中心点とする。この中心点から中心軸Cへ向かう方向に平行で、金属板2a、2bの表面に垂直な、中心点を中心とした100μm×100μmの矩形平面領域Aを設定する。
以下、点状の接合部、及び、複数の金属板の順で詳細に説明する。
点状の接合部は、複数の金属板20a、20bを重ね合わせ、光線の照射により溶融凝固した溶融凝固部30を有するものである。点状の接合部の溶融凝固部30は、複数の金属板20a、20bに跨って形成されていれば、複数の金属板20a、20bを貫通していても、貫通していなくてもよい。
再溶融凝固部30aは、点状の接合部の溶融凝固部30の内側に光線を再照射し、点状に溶融凝固させて得られる部分であり、溶融凝固したままの組織となっている。点状とは、光線の照射側から再溶融凝固部を平面視したとき、再溶融凝固部の外周輪郭が円形状又多角形状で、その輪郭の中心まで溶融凝固していることを意味する。円形状とは、光線の照射側から再溶融凝固部を平面視したとき、再溶融凝固部が円形や楕円形の場合以外に、直径の異なる半円や半楕円を組み合わせたものも含むものである。また、金属板に光線を渦巻状に、外周側から中心側又は中心側から外周側に向かって照射して形成した再溶融凝固部の形状も点状に含まれる。
凝固再加熱部30bは、点状の接合部の溶融凝固部30に光線を再照射し、再溶融凝固部30aの周囲に溶融境界を含むように形成される部分であり、Pの偏析が低減されている。凝固再加熱部30bは、母材の融点以下Ac3点温度以上に再加熱された部位である。凝固再加熱部30bは、Pの偏析が緩和されており、少なくとも金属板の重ね合わせ面近傍の溶融境界の周囲に形成されている。
継手10に剥離方向に荷重が負荷されると、金属板の重ね合わせ面近傍の溶融境界に応力が集中し、破断に至るため、少なくとも凝固再加熱部30bの靱性を向上させる。
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次に、点状の接合部の溶融凝固部に光線を再照射する前と再照射した後の接合継手におけるビッカース硬さを調査した。
図6に、接合継手のビッカース硬さ分布の概略図を示す。図6(a)は、点状の接合部を有する接合継手のビッカース硬さ分布の概略を示し、図6(b)、点状の接合部の中心部に光線を照射した接合継手のビッカース硬さ分布の概略を示す。
次に、本発明の接合継手を構成する複数の金属板について説明する。
金属板は、特に限定されるものでなく、種々の金属の板とすることができるが、鋼板とすることが好ましい。鋼板の成分組成は、特に限定されるものでなく、用途に応じた機械特性等が得られる成分組成の鋼板とすればよい。また、本発明の接合継手に炭素含有量を0.10〜0.25質量%の高強度鋼板を適用すると、十字引張強さの向上が顕著であり、このような鋼板を対象とすることが好ましい。また、P含有量は、特に限定されるものでないが、0.05質量%以下、好ましくは0.03質量%以下が例示される。
金属板の板厚は、特に限定されるものでなく、0.5〜3.2mmの範囲とすることができる。板厚が0.5mm未満であっても、接合部の継手強度の向上の効果は得られるが、継手強度が板厚に影響するので、接合継手全体の強度向上の効果が小さくなり、接合継手の適用範囲が限定される。また、板厚が3.2mm超であっても、接合部の継手強度の向上の効果は得られるが、部材の軽量化の観点から、接合継手の適用範囲が限定される。
複数の金属板は、少なくとも接合箇所の両面又は片面に表面処理皮膜を形成した金属板を1枚以上含んでいてもよい。表面処理皮膜は、めっき皮膜を含むものであり、更に、塗装皮膜等を含むものとすることができる。めっき皮膜としては、例えば、亜鉛めっき、アルミニウムめっき、亜鉛・ニッケルめっき、亜鉛・鉄めっき、亜鉛・アルミニウム・マグネシウム系めっき等であり、めっきの製造方法としては、溶融めっき、電気めっき等である。またホットスタンプされた亜鉛やアルミニウムのめっきでもよい。
金属板の形態は、少なくとも接合継手を形成する部分が板状であればよく、全体が板でなくてもよい。例えば、断面ハット形の特定の形状にプレス成型された部材のフランジ部、パイプの平面部などを含むものである。重ね合わせる金属板の枚数は、2枚に限らず、3枚以上としてもよい。また、各金属板の、種類、成分組成及び板厚は、全て同じとしても、相互に異なっていてもよい。また、別々の金属板から構成されるものに限定されず、1枚の金属板を管状などの所定の形状に成形して、端部を重ね合わせたものの重ね接合継手であってもよい。
Aピラーの場合、270〜340MPa級の合金化溶融亜鉛めっき鋼板と、590〜1800MPa級非めっき鋼板もしくはホットスタンプ鋼板と、590〜1800MPa級非めっき鋼板もしくはホットスタンプ鋼板の3枚重ねの組み合わせでの重ね接合継手が例示される。
本発明の製法は、
(a)複数の金属板を重ね合わせ、光線を照射し、金属板表面側から平面視したとき、外側輪郭が略円形状で、その中心まで溶融凝固した点状の接合部を形成すること、及び、
(b)点状の接合部の内側に光線を再照射し、光線の照射側から溶融凝固部を平面視したとき、外側輪郭が略円形状で、その中心まで再溶融凝固した形状(点状)に再溶融凝固させるともに、Pの偏析が緩和されるように溶融境界を再加熱することを含むものである。
図8は、点状の接合部の熱処理の概要を示す斜視図である。図8(a)は、異なる照射直径で光線を照射する概要を示し、図8(b)は、集光面積を広くして光線を照射する概要を示し、図8(c)は、再溶融凝固部と凝固再加熱部とを有する点状の接合部を示す。
点状の接合部の溶融凝固部30のうち、少なくとも金属板20a、20bの重ね合わせ面近傍の溶融境界近傍のPの偏析が緩和されるように再加熱するとよい。
光線にはレーザを用いるのが一般的であるが限定されるものではない。加工装置は特に限定されるものでないが、リモート接合装置とすることが好ましい。リモート接合装置は、ロボットアームの先端に取り付けたガルバノミラーにより、光線を接合打点の間を高速で移動させるものであり、接合の作業時間の大幅な短縮が可能になる。また、発振器としては、例えば、気体励起タイプ、固体励起タイプ、半導体タイプなどを用いることができる。
2a、2b 金属板
3 点状の接合部の溶融凝固部
3a 再溶融凝固部
3b 凝固再加熱部
5 重ね合わせ面
6 溶融境界
10、10a、10b 接合継手
20a、20b 金属板
30 点状の接合部の溶融凝固部
30a 再溶融凝固部
30b 凝固再加熱部
70 光線
80a、80b 照射予定箇所
90a、90b 照射予定箇所
A 矩形平面領域
C 中心軸
L1 金属板表面と平行方向のビッカース硬さの測定範囲
L2 溶融凝固部のビッカース硬さの測定範囲
L3 再溶融凝固部のビッカース硬さの測定範囲
W 溶融凝固部の幅
Wa 再溶融凝固部の幅
Wb 凝固再加熱部の幅
X 板厚方向のビッカース硬さの測定位置
Claims (6)
- 重ね合わされた複数の金属板で構成され、点状の接合部を有する重ね接合継手において、
前記点状の接合部は、前記複数の金属板に跨る溶融凝固部を有し、
前記溶融凝固部は、再溶融凝固部と、凝固再加熱部とを有し、
前記再溶融凝固部は、前記溶融凝固部を平面視したとき、当該溶融凝固部の円相当中心軸を含む点状で、前記複数の金属板に跨っており、
前記凝固再加熱部は、前記再溶融凝固部の周囲に位置し、前記点状の接合部の溶融境界を含んでおり、
更に、前記凝固再加熱部において、前記金属板の重ね合わせ面の前記溶融境界から前記中心軸側に100μmの点を中心点とし、
前記中心点から前記中心軸へ向かう方向に平行で、前記金属板面に垂直な、前記中心点を中心とした、100μm×100μmの矩形平面領域にて、P濃度を質量%で、当該金属板面に平行な方向及び当該金属板面に垂直な方向それぞれに沿って1μmピッチで測定し、これにより100点×100点の測定点それぞれにおける当該P濃度の測定値を求め、
前記100点×100点の測定点のうち、前記金属板面に平行な方向に一列に並んだ隣り合う20点の各前記測定点における前記P濃度の測定値の部分平均値を、当該金属板面に平行な方向及び当該金属板面に垂直な方向それぞれに沿って1点ずつずらしながら算出することを繰り返し、これにより81個×100個の部分平均値を求めた場合に、
前記部分平均値のうち、前記100点×100点の測定点それぞれにおける前記P濃度の測定値の全平均値の2倍を超える前記部分平均値の個数が0個以上100個以下であることを特徴とする重ね接合継手。 - 前記中心点から前記中心軸へ向かう方向に平行で、前記金属板面に垂直な断面において、前記再溶融凝固部の外側端部から前記溶融境界までの距離が0.5〜1.0mmであることを特徴とする請求項1に記載の重ね接合継手。
- 前記複数の金属板が、表面処理皮膜を有する金属板を1枚以上含むことを特徴とする請求項1又は2に記載の重ね接合継手。
- 複数の金属板を重ね合わせ、高パワー密度光線を照射して接合する重ね接合継手の製造方法において、
重ね合わされた一方の金属板に高パワー密度光線を照射して、前記複数の金属板に跨って点状に溶融凝固した溶融凝固部を有する点状の接合部を形成し、
前記高パワー密度光線の照射側から前記溶融凝固部を平面視したとき、当該溶融凝固部の内側に前記高パワー密度光線を再照射し、当該溶融凝固部の円相当中心軸を含む点状に、前記複数の金属板に跨って再溶融凝固させて再溶融凝固部を形成し、更に、当該再溶融凝固部の周囲に前記点状の接合部の溶融境界を含む凝固再加熱部を形成するとともに、その際に再加熱条件を調整して、
前記金属板の重ね合わせ面の前記溶融境界から前記中心軸側に100μmの点を中心点とし、
前記中心点から前記中心軸へ向かう方向に平行で、前記金属板面に垂直な、前記中心点を中心とした、100μm×100μmの矩形平面領域にて、P濃度を質量%で、当該金属板面に平行な方向及び当該金属板面に垂直な方向それぞれに沿って1μmピッチで測定し、これにより100点×100点の測定点それぞれにおける当該P濃度の測定値を求め、
前記100点×100点の測定点のうち、前記金属板面に平行な方向に一列に並んだ隣り合う20点の各前記測定点における前記P濃度の測定値の平均値を、当該金属板面に平
行な方向及び当該金属板面に垂直な方向それぞれに沿って1点ずつずらしながら算出することを繰り返し、これにより81個×100個の部分平均値を求めた場合に、
前記部分平均値のうち、前記100点×100点の測定点それぞれにおける前記P濃度の測定値の全平均値の2倍を超える前記部分平均値の個数が0個以上100個以下となるようにする
ことを特徴とする重ね接合継手の製造方法。 - 前記高パワー密度光線の再照射は、前記中心点から前記中心軸へ向かう方向に平行で、前記金属板面に垂直な断面において、前記再溶融凝固部の外側端部から前記溶融境界までの距離が0.5〜1.0mmとなるように行われることを特徴とする請求項4に記載の重ね溶接継手の製造方法。
- 前記複数の金属板に、表面処理皮膜を形成した金属板を1枚以上用いることを特徴とする請求項4又は5に記載の重ね接合継手の製造方法。
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