JP2017052005A - 重ね接合継手及びその製造方法 - Google Patents

重ね接合継手及びその製造方法 Download PDF

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仁寿 ▲徳▼永
仁寿 ▲徳▼永
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富士本 博紀
Hironori Fujimoto
博紀 富士本
晃樹 阪本
Koki Sakamoto
晃樹 阪本
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Abstract

【課題】継手強度に優れた接合継手を提供する。【解決手段】重ね合わされた複数の金属板で構成され、点状の接合部を有する重ね接合継手において、前記点状の接合部は、前記複数の金属板に跨る溶融凝固部を有し、前記溶融凝固部は、再溶融凝固部と、凝固再加熱部とを有し、前記再溶融凝固部は、前記溶融凝固部を平面視したとき、当該溶融凝固部の円相当中心軸を含む点状で、前記複数の金属板に跨っており、前記凝固再加熱部は、前記再溶融凝固部の周囲に位置し、前記点状の接合部の溶融境界を含んでおり、更に、前記金属板の重ね合わせ面の前記溶融境界から前記中心軸側に100μmの点を中心点とした、100μm×100μmの矩形平面領域にて、Pの偏析が緩和されていることを特徴とする重ね接合継手。【選択図】図3

Description

本発明は、重ね接合継手とその製造方法に関し、特に、自動車車体に用いられる高強度鋼板の重ね接合継手とその製造方法に関するものである。
近年、自動車分野では、低燃費化やCO排出量の削減のため、車体を軽量化することや、衝突安全性の向上のため、車体部材を高強度化することが求められている。これらの要求を満たすためには、車体部材や各種部品などに高強度鋼板を使用することが有効である。
このような高強度鋼板よりなる車体の組立や部品の取付けなどの工程では、主として、抵抗加熱を用いたスポット状の溶融接合が広く普及しているが、近年、この抵抗スポット接合に替えて、一部で高パワー密度を有する光線(以下、光線とする)を用いた溶融接合(以下、単に接合とする)が使用されるようになってきている。光線による接合は、高速施工が可能であり、また、既存の接合部への接合電流の分流が発生しないため、接合部の間のピッチを短くすることができ、多点接合による車体剛性の向上も可能である。
溶融接合により形成された継手(以下、接合継手とする)の品質指標の一つである継手強度には、せん断方向に引張荷重を負荷して測定する引張せん断強さ(TSS)と、剥離方向に引張荷重を負荷して測定する十字引張強さ(CTS)がある。光線による接合により得られる接合継手において、特に、CTSは、従来の抵抗スポット接合により得られる接合継手と同程度、又は、低下する傾向があり、炭素量の多い高強度鋼板の場合にはさらにCTSが低くなることがあった。このため、高強度鋼板に対して光線による接合を行って得られた接合継手において、CTS等の継手強度を向上させる技術が望まれていた。
このような状況のもと、光線を用いた接合により得られる接合継手の継手強度を向上させる技術として、接合部の近傍に、他の接合部を形成する技術(特許文献1参照)、閉ループ状の本ビードの内側に、本ビードを焼き戻すことを目的とした他のビードを形成する技術(特許文献2、3参照)が知られている。
一方、自動車車体の組立工程においては、スポット接合が多用されているが、この接合法で形成される、平面視で点形状の重ね接合継手と同様の形状を光線による接合で得る方法が特許文献4に開示されている。重ね鋼板の両側から電極で挟めない場合などにおいて、スポット接合継手に代替する技術として、光線による点状の重ね接合継手が注目されている。
特開2010−012504号公報 特開2012−240086号公報 国際公開第2012/050097号 特開昭60−68185号公報
しかしながら、上記光線によって形成される点状の重ね接合継手は、特に高強度鋼板の重ね接合継手の場合、十字引張強さ(CTS)が十分に得られないという問題があり、継手強度を向上させることが望まれていた。
本発明は、このような実情に鑑み、継手強度に優れた重ね接合継手を提供することを課題とする。
本発明者らは、金属板に光線による接合を実施し、点状の接合部を形成した接合継手の継手強度を向上させるために、点状の接合部の溶融境界近傍の靱性を向上させる手段について鋭意検討した。
本発明者らは、点状の接合部を熱処理することに着想し、熱処理箇所及び熱処理方法について種々調査した。その結果、光線の照射側から点状の接合部の溶融凝固部を平面視したとき、当該溶融凝固部の内側に光線を照射して、外側輪郭が略円形状で、その中心まで再溶融凝固している形状(以下、「点状」という)で、複数の金属板に跨って、再溶融凝固させて再溶融凝固部を形成するとともに、点状の接合部の溶融境界付近を、Pのような脆化元素の偏析を緩和するように再加熱して凝固再加熱部を形成することで、CTSが向上することを見出した。
本発明は、上記知見に基づいてなされたもので、その要旨とするところは以下の通りである。
(1)重ね合わされた複数の金属板で構成され、点状の接合部を有する重ね接合継手において、
前記点状の接合部は、前記複数の金属板に跨る溶融凝固部を有し、
前記溶融凝固部は、再溶融凝固部と、凝固再加熱部とを有し、
前記再溶融凝固部は、前記溶融凝固部を平面視したとき、当該溶融凝固部の円相当中心軸を含む点状で、前記複数の金属板に跨っており、
前記凝固再加熱部は、前記再溶融凝固部の周囲に位置し、前記点状の接合部の溶融境界を含んでおり、
更に、前記凝固再加熱部において、前記金属板の重ね合わせ面の前記溶融境界から前記中心軸側に100μmの点を中心点とし、
前記中心点から前記中心軸へ向かう方向に平行で、前記金属板面に垂直な、前記中心点を中心とした、100μm×100μmの矩形平面領域にて、P濃度を質量%で、当該金属板面に平行な方向及び当該金属板面に垂直な方向それぞれに沿って1μmピッチで測定し、これにより100点×100点の測定点それぞれにおける当該P濃度の測定値を求め、
前記100点×100点の測定点のうち、前記金属板面に平行な方向に一列に並んだ隣り合う20点の各前記測定点における前記P濃度の測定値の部分平均値を、当該金属板面に平行な方向及び当該金属板面に垂直な方向それぞれに沿って1点ずつずらしながら算出することを繰り返し、これにより81個×100個の部分平均値を求めた場合に、
前記部分平均値のうち、前記100点×100点の測定点それぞれにおける前記P濃度の測定値の全平均値の2倍を超える前記部分平均値の個数が0個以上100個以下であることを特徴とする重ね接合継手。
(2)前記中心点から前記中心軸へ向かう方向に平行で、前記金属板面に垂直な断面において、前記再溶融凝固部の外側端部から前記溶融境界までの距離が0.5〜1.0mmで
あることを特徴とする前記(1)に記載の重ね接合継手。
(3)前記複数の金属板が、表面処理皮膜を有する金属板を1枚以上含むことを特徴とする前記(1)又は(2)に記載の重ね接合継手。
(4)複数の金属板を重ね合わせ、光線を照射して接合する重ね接合継手の製造方法において、
重ね合わされた一方の金属板に光線を照射して、前記複数の金属板に跨って点状に溶融凝固した溶融凝固部を有する点状の接合部を形成し、
前記光線の照射側から前記溶融凝固部を平面視したとき、当該溶融凝固部の内側に前記光線を再照射し、当該溶融凝固部の円相当中心軸を含む点状に、前記複数の金属板に跨って再溶融凝固させて再溶融凝固部を形成し、更に、当該再溶融凝固部の周囲に前記点状の接合部の溶融境界を含む凝固再加熱部を形成するとともに、その際に再加熱条件を調整して、
前記金属板の重ね合わせ面の前記溶融境界から前記中心軸側に100μmの点を中心点とし、
前記中心点から前記中心軸へ向かう方向に平行で、前記金属板面に垂直な、前記中心点を中心とした、100μm×100μmの矩形平面領域にて、P濃度を質量%で、当該金属板面に平行な方向及び当該金属板面に垂直な方向それぞれに沿って1μmピッチで測定し、これにより100点×100点の測定点それぞれにおける当該P濃度の測定値を求め、
前記100点×100点の測定点のうち、前記金属板面に平行な方向に一列に並んだ隣り合う20点の各前記測定点における前記P濃度の測定値の平均値を、当該金属板面に平行な方向及び当該金属板面に垂直な方向それぞれに沿って1点ずつずらしながら算出することを繰り返し、これにより81個×100個の部分平均値を求めた場合に、
前記部分平均値のうち、前記100点×100点の測定点それぞれにおける前記P濃度の測定値の全平均値の2倍を超える前記部分平均値の個数が0個以上100個以下となるようにする
ことを特徴とする重ね接合継手の製造方法。
(5)前記光線の再照射は、前記中心点から前記中心軸へ向かう方向に平行で、前記金属板面に垂直な断面において、前記再溶融凝固部の外側端部から前記溶融境界までの距離が0.5〜1.0mmとなるように行われることを特徴とする前記(4)に記載の重ね接合継手の製造方法。
(6)前記複数の金属板に、表面処理皮膜を形成した金属板を1枚以上用いることを特徴とする前記(4)又は(5)に記載の重ね接合継手の製造方法。
本発明によれば、点状の接合部の溶融境界近傍に、Pの偏析を低減した凝固再加熱部を設けたので、重ね接合継手の継手強度、特に、十字引張強さ(CTS)を向上させることができる。
点状の接合部を有する接合継手の断面図を示す。(a)は光線の再照射前の接合継手の断面図を示し、(b)は光線の再照射後の接合継手の断面図を示す。 溶融凝固部の断面拡大図である。 本発明の接合継手の断面を示す図である。 点状の接合部を有する接合継手のビッカース硬さ分布の概略図を示す。(a)は接合継手の断面を示し、(b)は接合継手のビッカース硬さ分布の概略を示す。 点状の接合部の中心部に光線を照射した接合継手のビッカース硬さ分布の概略図を示す。(a)は接合継手の断面を示し、(b)は接合継手のビッカース硬さ分布の概略を示す。 接合継手のビッカース硬さ分布の概略図を示す。(a)は点状の接合部を有する接合継手のビッカース硬さ分布の概略を示し、(b)点状の接合部の中心部に光線を照射した接合継手のビッカース硬さ分布の概略を示す。 点状の接合部の形成の概要を示す斜視図である。(a)は異なる照射直径で光線を照射する概要を示し、(b)は集光面積を広くして光線を照射する概要を示し、(c)は形成された点状の接合部を示す。 点状の接合部の熱処理の概要を示す斜視図である。(a)は異なる照射直径で光線を照射する概要を示し、(b)は集光面積を広くして光線を照射する概要を示し、(c)は再溶融凝固部と凝固再加熱部とを有する点状の接合部を示す。
本発明の重ね接合継手(以下、「本発明の接合継手」という)は、複数の金属板に、光線を照射して形成された点状の接合部を有する重ね接合継手であって、前記点状の接合部が、溶融凝固部を有し、該溶融凝固部が、再溶融凝固部と、凝固再加熱部とで構成され、該凝固再加熱部のPの偏析が緩和している点に特徴を有する。
以下、本発明の接合継手に至った検討の経緯について説明するとともに、本発明の接合継手について説明する。
点状の接合部を有する重ね接合継手において、更に、継手強度を向上させることが望まれていた。そこで、本発明者らは、点状の接合部に熱処理することを検討し、点状の接合部の熱処理箇所及び熱処理方法について調査した。
重ね接合継手は、剥離方向に接合部に荷重が負荷されると、溶融境界の近傍に応力が集中し、破断に至り易い。そこで、光線の照射側から直径約6.0mmの点状の接合部の溶融凝固部を平面視したとき、この溶融凝固部の内側に光線径約4.0mmの光線を点状に再照射し、点状に溶融凝固させるとともに、溶融凝固部の溶融境界を熱処理する試験を試みた。その結果、溶融境界の靱性の向上が確認された。この試験について、図面を用いて説明する。
図1に、点状の接合部を有する接合継手の断面図を示す。図1(a)は、光線の再照射前の接合継手の断面を示し、図1(b)は、光線の再照射後の接合継手の断面を示す。図1(a)及び図1(b)は、点状の接合部の溶融凝固部を含むように板厚方向に切断した接合継手の断面を示している。
まず、図1(a)に示すように、金属板2a、2bを重ね合わせ、点状に光線を用いて接合して、直径約6mmの溶融凝固部3を有する接合継手1aを形成した。次に、図1(b)に示すように、溶融凝固部3の内側に光線を点状に再照射して、再溶融凝固させ、直径約4.4mmの点状の再溶融凝固部3aと、それにより再加熱された凝固再加熱部3bとを有する接合継手1bを形成した。
この接合継手1a、1bに対して、十字引張強さ(CTS)を調査したところ、溶融凝固部3の内側に光線を再照射して得られた接合継手1bの十字引張強さの方が、接合継手1aの十字引張強さより高くなることが判明した。
次に、本発明者らは、接合継手1a、1bに対して、溶融境界近傍における脆化元素であるPの偏析の解析を実施した。Pの偏析の解析では、国際公開第2013/161937号に開示の方法を採用した。Pの偏析の解析方法は、この文献で詳細に説明されているので、ここでは簡潔に説明する。
図2に、溶融凝固部の断面拡大図を示す。図2は、図1(b)の溶融凝固部3の中心軸Cから片側を拡大した図である。
まず、Pの偏析の解析では、金属板2a、2bの重ね合わせ面5の溶融境界6から中心軸C側に100μmの点を中心点とする。この中心点から中心軸Cへ向かう方向に平行で、金属板2a、2bの表面に垂直な、中心点を中心とした100μm×100μmの矩形平面領域Aを設定する。
この矩形平面領域Aにおいて、金属板2a、2bの表面に平行な方向及び金属板2a、2bの表面に垂直な方向それぞれに沿って1μmピッチでP濃度(質量%)を測定し、100点×100点の測定点それぞれにおけるP濃度(質量%)の測定値を求める。P濃度(質量%)は、電界放出型電子線マイクロアナライザ(FE−EPMA)で測定する。
次に、100点×100点の測定点のうち、金属板2a、2bの表面に平行な方向に一列に並んだ隣り合う20点の各測定点におけるP濃度の測定値の部分平均値を、金属板2a、2bの表面に平行な方向及び金属板2a、2bの表面に垂直な方向それぞれに沿って1点ずつずらしながら算出する。これを繰り返し、81個×100個の部分平均値を求める。
この部分平均値のうち、100点×100点の測定点それぞれにおけるP濃度の測定値の全平均値の2倍を超える部分平均値の個数を比較する。この個数が0個以上100個以下である場合をPの偏析が緩和されており、101個以上をPが偏析していると判断する。
このPの偏析の解析法を用いて、図1(a)に示す接合継手1aと、図1(b)に示す接合継手1bにおいて、Pの偏析の解析を実施したところ、接合継手1aでは、Pが偏析していたが、接合継手1bでは、Pの偏析が緩和されていた。
これより、点状の接合部を有する重ね接合継手において、点状の接合部の溶融境界を含む凝固再加熱部(溶融境界近傍)のPの偏析が緩和されていることで、十字引張強さが向上することを知見した。また、金属板の組合せを変えても、Pの偏析が緩和されているものでは、十字引張強さが向上することが確認された。
本発明は、以上のような検討過程を経て上記(1)に記載の発明に至ったものであり、そのような本発明について、さらに、必要な要件や好ましい要件について順次説明する。
次に、本発明の接合継手について、図3を用いて説明する。図3は、接合部を含むように板厚方向に切断した本発明の接合継手の断面図を示している。
本発明の接合継手10は、複数の金属板20a、20bを重ね合わせ、金属板20a側から金属板20a表面の一部の限られた領域内に光線を照射し、点状の接合部を形成して複数の金属板20a、20bを光線接合したものである。金属板20a、20bは、点状の接合部の溶融凝固部30により接合されている。溶融凝固部30は、光線の照射側から溶融凝固部30を平面視したとき、中心部に溶融凝固したままの組織である再溶融凝固部30aと、凝固後に再加熱された凝固再加熱部30bとにより構成されている。
以下、点状の接合部、及び、複数の金属板の順で詳細に説明する。
<点状の接合部>
点状の接合部は、複数の金属板20a、20bを重ね合わせ、光線の照射により溶融凝固した溶融凝固部30を有するものである。点状の接合部の溶融凝固部30は、複数の金属板20a、20bに跨って形成されていれば、複数の金属板20a、20bを貫通していても、貫通していなくてもよい。
点状とは、光線の照射側から溶融凝固部を平面視したとき、溶融凝固部の外周輪郭が円形状又多角形状で、その輪郭の中心まで溶融凝固していることを意味する。円形状とは、光線の照射側から溶融凝固部を平面視したとき、溶融凝固部が円形や楕円形の場合以外に、直径の異なる半円や半楕円を組み合わせたものも含むものである。また、金属板に光線を渦巻状に、外周側から中心側又は中心側から外周側に向かって照射して形成した溶融凝固部の形状も点状に含まれる。
点状の接合部の溶融凝固部30の幅W(光線の照射側から溶融凝固部を平面視したときの溶融凝固部の円相当径)は、継手強度等に応じて調整すればよく、特に限定されるものでないが、3〜12mmが例示される。好ましくは、4〜10mmである。
(再溶融凝固部)
再溶融凝固部30aは、点状の接合部の溶融凝固部30の内側に光線を再照射し、点状に溶融凝固させて得られる部分であり、溶融凝固したままの組織となっている。点状とは、光線の照射側から再溶融凝固部を平面視したとき、再溶融凝固部の外周輪郭が円形状又多角形状で、その輪郭の中心まで溶融凝固していることを意味する。円形状とは、光線の照射側から再溶融凝固部を平面視したとき、再溶融凝固部が円形や楕円形の場合以外に、直径の異なる半円や半楕円を組み合わせたものも含むものである。また、金属板に光線を渦巻状に、外周側から中心側又は中心側から外周側に向かって照射して形成した再溶融凝固部の形状も点状に含まれる。
再溶融凝固部30aは、光線の照射側から溶融凝固部を平面視したとき、溶融凝固部の円相当の中心軸Cを含み、溶融凝固部30の溶融境界を含まないように形成されている。ただし、光線の照射側から溶融凝固部を平面視したとき、溶融凝固部の円相当の中心軸Cと、再溶融凝固部30aの円相当の中心軸とは、一致する必要はない。
また、再溶融凝固部30aは、接合継手10の板厚方向において、複数の金属板20a、20bに跨って形成されている。すなわち、図3に示すように、再溶融凝固部30aは、少なくとも複数の金属板に跨って形成されていれば、金属板20bを貫通してもしていなくてもどちらでもよい。
再溶融凝固部30aの幅Wa(光線の照射側から溶融凝固部を平面視したときの再溶融凝固部の円相当径)の上限は、特に限定されるものでなく、再溶融凝固部30aの周囲にある凝固再加熱部30bの幅Wbとの関係で決められる。
(凝固再加熱部)
凝固再加熱部30bは、点状の接合部の溶融凝固部30に光線を再照射し、再溶融凝固部30aの周囲に溶融境界を含むように形成される部分であり、Pの偏析が低減されている。凝固再加熱部30bは、母材の融点以下Ac3点温度以上に再加熱された部位である。凝固再加熱部30bは、Pの偏析が緩和されており、少なくとも金属板の重ね合わせ面近傍の溶融境界の周囲に形成されている。
凝固再加熱部30bの幅Wbとして、0.5〜1.0mmとすることが好ましい。接合
継手10に剥離方向に荷重が負荷されると、金属板の重ね合わせ面近傍の溶融境界に応力が集中し、破断に至るため、少なくとも凝固再加熱部30bの靱性を向上させる。
凝固再加熱部のPの偏析の解析は、上述したように行う。ただし、P濃度(質量%)は、電界放出型電子線マイクロアナライザ(FE−EPMA)で測定することができ、測定条件として、以下が例示される。
加速電圧:15kV
ビーム電流:0.5μA
1ピクセル当たりのビーム滞在時間:60ms
ピクセル数:250×250
視野:100μm×100μm
また、凝固再加熱部30bは、母材の融点以下Ac3点温度以上に再加熱され、その後、冷却されるため、その過程で、逆変態及び変態を受け、結晶が微細化する。特に、凝固再加熱部30bにおいては、結晶粒のアスペクト比が1.5以下のポリゴナルフェライトとなっていることが好ましい。
(再溶融凝固部及び凝固再加熱部のビッカース硬さ)
次に、点状の接合部の溶融凝固部に光線を再照射する前と再照射した後の接合継手におけるビッカース硬さを調査した。
図4に、点状の接合部を有する接合継手のビッカース硬さ分布の概略図を示す。図4(a)は、接合継手の断面図を示し、図4(b)は、接合継手のビッカース硬さ分布の概略図を示す。図5に、点状の接合部の中心部に光線を照射した接合継手のビッカース硬さ分布の概略図を示す。図5(a)は、接合継手の断面図を示し、図5(b)は、接合継手のビッカース硬さ分布の概略図を示す。
図4(a)及び図5(a)は、点状の接合部の溶融凝固部を含むように板厚方向に切断した接合継手の断面図を示している。図4(a)に示す接合継手10aは、点状の接合部の溶融凝固部30に光線を再照射する前のものである。図5(a)に示す接合継手10bは、光線を再照射した後の再溶融凝固部30aと凝固再加熱部30bを有するものである。接合継手10a、10bの金属板20a、20bは、引張強さ980MPa鋼板である。
図4(b)及び図5(b)に示すビッカース硬さ分布の図は、それぞれ図4(a)及び図5(a)に示す、点線Xの位置(板厚方向のビッカース硬さの測定位置)を金属板表面と平行方向のビッカース硬さの測定範囲L1にわたって求めた概略図である。点線Xは、板厚方向において、金属板20a、20bの重ね合わせ面から金属板20a側に0.2mmの位置である。また、L2は、溶融凝固部のビッカース硬さの測定範囲である。L3は、再溶融凝固部のビッカース硬さの測定範囲である。
図4(b)に示すように、溶融凝固部30に光線を再照射する前の接合継手10aのビッカース硬さは、溶融凝固部30の内側(L2)において、HV410程度と硬く、ほぼ一定となっている。L2のすぐ外側は、溶融凝固部ではないが、高温域まで加熱され、焼入れられるので、硬さが大きい。なお、さらに外側に硬さの低い部位があるが、これは母材である鋼板のHAZ軟化部である。
図5(b)に示すように、光線を再照射した後の接合継手10bのビッカース硬さは、再溶融凝固部30a(L3)と凝固再加熱部30bとをあわせた領域(L2)において、HV410程度と硬く、ほぼ一定となっている。さらに外側に焼き戻されたビッカース硬さが低い部位が形成された。なお、溶融凝固部30の外側の母材のHAZ軟化部はそのままの硬さとして残っている。
次に、被接合部材の金属板を1500MPa級ホットスタンプ鋼板に変えて、上記と同様の調査を行った。
図6に、接合継手のビッカース硬さ分布の概略図を示す。図6(a)は、点状の接合部を有する接合継手のビッカース硬さ分布の概略を示し、図6(b)、点状の接合部の中心部に光線を照射した接合継手のビッカース硬さ分布の概略を示す。
図6(a)に示すように、溶融凝固部30に光線を再照射する前の接合継手10aのビッカース硬さは、溶融凝固部30の内側(L2)において、HV450程度と硬く、ほぼ一定となっている。L2のすぐ外側は、溶融凝固部ではないが、高温域まで加熱され、焼入れられるので、硬さが大きい。なお、さらに外側に硬さの低い部位があるが、これは母材である鋼板のHAZ軟化部である。
図6(b)に示すように、光線を再照射した後の接合継手10bのビッカース硬さは、再溶融凝固部30a(L3)と凝固再加熱部30bとをあわせた領域(L2)において、HV420程度と硬く、ほぼ一定となっている。さらに外側にビッカース硬さが低い部位が形成された。なお、溶融凝固部30の外側の母材のHAZ軟化部はそのままの硬さとして残っている。
このように、本発明の接合継手では、金属板の鋼種が異なる場合であっても、再溶融凝固部30a、及び、凝固再加熱部30bのビッカース硬さがほぼ同等となり、接合金属の部分的な軟化がないため、引張せん断強度の低下が抑制される。引張せん断強度の低下を抑制するためには、凝固再加熱部30bのうち、金属板20a、20bの重ね合わせ面の溶融境界から、再溶融凝固部30aに向かって0.5mmの範囲のビッカース硬さの平均値を、再溶融凝固部30aのビッカース硬さの平均値の±Hv70未満とすることが好ましい。
再溶融凝固部30a、及び、溶融境界から再溶融凝固部30aに向かって0.5mmの範囲のビッカース硬さの平均値の測定では、中心軸Cを含む板厚方向の断面において、金属板の重ね合わせ面と接する溶融凝固部30の溶融境界同士を結んだ線上を測定する。そして、再溶融凝固部30aにおいては、中央(穴状欠陥を除く)と両端近傍を含む3点以上等間隔でビッカース硬さを測定し、平均値を求める。溶融境界から再溶融凝固部30aに向かって0.5mmの範囲においては、その範囲の中央と両端近傍を含む3点以上等間隔でビッカース硬さを測定し、平均値を求める。
また、金属板の重ね合わせ面が複数あるときは、それぞれの金属板の重ね合わせ面と接する溶融凝固部30の溶融境界同士を結んだ線上で測定する。なお、再溶融凝固部と凝固再加熱部とは、ミクロ組織の観察により、判別することができる。
<複数の金属板>
次に、本発明の接合継手を構成する複数の金属板について説明する。
(金属板の種類、組成)
金属板は、特に限定されるものでなく、種々の金属の板とすることができるが、鋼板とすることが好ましい。鋼板の成分組成は、特に限定されるものでなく、用途に応じた機械特性等が得られる成分組成の鋼板とすればよい。また、本発明の接合継手に炭素含有量を0.10〜0.25質量%の高強度鋼板を適用すると、十字引張強さの向上が顕著であり、このような鋼板を対象とすることが好ましい。また、P含有量は、特に限定されるものでないが、0.05質量%以下、好ましくは0.03質量%以下が例示される。
(金属板の板厚)
金属板の板厚は、特に限定されるものでなく、0.5〜3.2mmの範囲とすることができる。板厚が0.5mm未満であっても、接合部の継手強度の向上の効果は得られるが、継手強度が板厚に影響するので、接合継手全体の強度向上の効果が小さくなり、接合継手の適用範囲が限定される。また、板厚が3.2mm超であっても、接合部の継手強度の向上の効果は得られるが、部材の軽量化の観点から、接合継手の適用範囲が限定される。
(金属板の表面処理皮膜)
複数の金属板は、少なくとも接合箇所の両面又は片面に表面処理皮膜を形成した金属板を1枚以上含んでいてもよい。表面処理皮膜は、めっき皮膜を含むものであり、更に、塗装皮膜等を含むものとすることができる。めっき皮膜としては、例えば、亜鉛めっき、アルミニウムめっき、亜鉛・ニッケルめっき、亜鉛・鉄めっき、亜鉛・アルミニウム・マグネシウム系めっき等であり、めっきの製造方法としては、溶融めっき、電気めっき等である。またホットスタンプされた亜鉛やアルミニウムのめっきでもよい。
(金属板の形態)
金属板の形態は、少なくとも接合継手を形成する部分が板状であればよく、全体が板でなくてもよい。例えば、断面ハット形の特定の形状にプレス成型された部材のフランジ部、パイプの平面部などを含むものである。重ね合わせる金属板の枚数は、2枚に限らず、3枚以上としてもよい。また、各金属板の、種類、成分組成及び板厚は、全て同じとしても、相互に異なっていてもよい。また、別々の金属板から構成されるものに限定されず、1枚の金属板を管状などの所定の形状に成形して、端部を重ね合わせたものの重ね接合継手であってもよい。
以下、これに限定されるものではないが、自動車での重ね接合継手の例を示す。
Aピラーの場合、270〜340MPa級の合金化溶融亜鉛めっき鋼板と、590〜1800MPa級非めっき鋼板もしくはホットスタンプ鋼板と、590〜1800MPa級非めっき鋼板もしくはホットスタンプ鋼板の3枚重ねの組み合わせでの重ね接合継手が例示される。
Bピラーの場合、引張強さが270〜340MPa級の合金化溶融亜鉛めっき鋼板と、590〜1800MPa級非めっき鋼板もしくはホットスタンプ鋼板と、440〜980MPa級非めっき鋼板の3枚重ねの組み合わせでの重ね接合継手が例示される。
サイドシルの場合、270〜340MPa級の合金化溶融亜鉛めっき鋼板と、590〜1800MPa級合金化溶融亜鉛めっき鋼板と、590〜1800MPa級合金化溶融亜鉛めっき鋼板の3枚重ねの組み合わせでの重ね接合継手が例示される。
フロアメンバーの場合、270〜590MPa級の合金化溶融亜鉛めっき鋼板のフロアパネルと、440〜1800MPa級非めっき鋼板もしくは合金化溶融亜鉛めっき鋼板のフロアメンバーとの2枚重ねでの組み合わせでの重ね接合継手が例示される。
次に、本発明の光線接合継手の製造方法(以下、「本発明の製法」という)について説明する。
本発明の製法は、
(a)複数の金属板を重ね合わせ、光線を照射し、金属板表面側から平面視したとき、外側輪郭が略円形状で、その中心まで溶融凝固した点状の接合部を形成すること、及び、
(b)点状の接合部の内側に光線を再照射し、光線の照射側から溶融凝固部を平面視したとき、外側輪郭が略円形状で、その中心まで再溶融凝固した形状(点状)に再溶融凝固させるともに、Pの偏析が緩和されるように溶融境界を再加熱することを含むものである。
まず、(a)複数の金属板を重ね合わせ、光線を照射し、金属板表面側から平面視したとき、外側輪郭が略円形状で、その中心まで溶融凝固した点状の接合部を形成することについて、図7を用いて説明する。
図7は、点状の接合部の形成の概要を示す斜視図である。図7(a)は、異なる照射直径で光線を照射する概要を示し、図7(b)は、集光面積を広くして光線を照射する概要を示し、図7(c)は、形成された点状の接合部を示す。
図7(a)には、光線70を照射する方法の一例を示しており、異なる照射直径で光線70を照射するものである。この図には、光線70の照射予定箇所80aを点線で示しており、照射直径の異なる3つの照射予定箇所80aが示されている。
点状の接合部の形成では、まず、複数の金属板20a、20bを重ね合わせ、一方の金属板20a側から光線70を照射して光線接合を行う。光線70の照射では、光線70の照射側から照射予定箇所80aを平面視したとき、白抜き矢印で示すように、略円状に光線を走査する。その際に、光線70の照射を、外側の照射予定箇所80aに行い、その後、内側の照射予定箇所80aに行っても、内側の照射予定箇所80aに行い、その後、外側の照射予定箇所80aに行ってもよい。光線の走査方向は、特に限定されるものでなく、時計回り、反時計回りのいずれでもよい。
また、光線70の照射側からの照射予定箇所80aを平面視した場合、光線70の照射予定箇所80aの外周形状を円としているが、楕円状、多角形状、直径の異なる半円や半楕円を組み合わせた形状、渦巻状の形状としてもよい。光線70の照射予定箇所80aを渦巻状の形状とした場合、光線70の照射は、渦巻状の照射予定箇所80bの外側の端部から、内側の端部に向かって、又は、渦巻状の照射予定箇所80bの内側の端部から、外側の端部に向かって、渦巻状に光線を走査して行う。渦巻の方向は、特に限定されるものでなく、時計回り、反時計回りのいずれでもよい。
図7(a)では、直径の異なる3つの照射予定箇所を例示したが、光線の集光面積や、点状の接合部の接合面積に応じて、直径の異なる照射予定箇所の数を増減させることができる。
図7(b)には、光線70を照射する方法の他の例を示しており、集光面積を広くして光線70を照射するものである。この図には、光線70の照射予定箇所80bを点線で示している。そして、光線70の照射は、光線の集光面積を広くして1回で行われる。
図7(a)または図7(b)に示すように光線70を照射することで、溶融した溶融部が外側から中心側に凝固し、図7(c)に示すように点状の接合部の溶融凝固部30を形成できる。
また、複数の金属板に、表面処理皮膜を形成した金属板を1枚以上用いる場合、光線70の照射を、外側の照射予定箇所80aに行い、その後、内側の照射予定箇所80aに行うことが好ましい。これにより、接合部内に欠陥を生じさせる気体となった皮膜を、溶融部の中心付近に集め、攪拌除去することが容易となる。なお、光線70の照射を、内側の照射予定箇所80aに行い、その後、外側の照射予定箇所80aに行っても、光線70の集光面積を広くして行っても、気体となった皮膜を溶融部から除去することができるため、これらの光線の照射方法を採用することを排除するものでない。
次に、(b)点状の接合部の内側に光線を再照射し、光線の照射側から溶融凝固部を平面視したとき、外側輪郭が略円形状で、その中心まで再溶融凝固した形状(点状)に再溶融凝固させるともに、Pの偏析が緩和されるように溶融境界を再加熱することについて説明する。
点状の接合部の熱処理では、図7で示す方法等により得られた点状の接合部の溶融凝固部30の温度が所定温度以下、例えば、鋼板ではMs点−50℃(Ms点:マルテンサイト変態開始温度)以下となるまで待機し、その後に、金属板20a側から溶融凝固部30の内側に光線70を照射して行う。内側とは、溶融凝固部30の溶融境界を除く溶融凝固部30内をいう。また、点状の接合部の溶融凝固部30の熱処理の開始するときの溶融凝固部30の温度の下限は、特に限定されないが、Ms点−250℃以下とするのが好ましい。Ms点−250℃で、一般の鋼板はマルテンサイト変態を終了するからである。
次に、点状の接合部の熱処理における光線70の照射のうち、光線70の走査について、図8を用いて説明する。
図8は、点状の接合部の熱処理の概要を示す斜視図である。図8(a)は、異なる照射直径で光線を照射する概要を示し、図8(b)は、集光面積を広くして光線を照射する概要を示し、図8(c)は、再溶融凝固部と凝固再加熱部とを有する点状の接合部を示す。
図8(a)には、再溶融予定箇所に光線70を照射する方法の一例を示しており、異なる照射直径で光線を照射するものである。この図には、光線70の照射予定箇所90aを点線で示しており、溶融凝固部30の内側に、照射直径の異なる2つの照射予定箇所90aが示されている。
光線70の照射では、白抜き矢印で示すように略円状に光線を走査する。その際に、光線70の照射を、内側の照射予定箇所90aに行い、その後、外側の照射予定箇所90aに行っても、外側の照射予定箇所90aに行い、その後、内側の照射予定箇所90aに行ってもよい。光線の走査方向は、特に限定されるものでなく、時計回り、反時計回りのいずれでもよい。
光線70の照射予定箇所90aは、光線70の照射側から溶融凝固部30を平面視したとき、溶融凝固部30の円相当中心を含む点状に再溶融され、溶融凝固部30の溶融境界近傍のPの偏析が緩和されるように設定される。
また、光線70の照射側から接合部を平面視した場合、光線70の照射予定箇所90aの外周形状を円としているが、楕円状、多角形状、直径の異なる半円や半楕円を組み合わせた形状、渦巻状の形状としてもよい。また、直径の異なる2つの照射予定箇所を例示したが、光線の焦点面積や、点状の接合部の溶融凝固部の面積に応じて、直径の異なる照射予定箇所の数を増減させることができる。
図8(b)には、再溶融予定箇所に光線70を照射する方法の他の例を示しており、集光面積を広くして光線70を照射するものである。この図には、溶融凝固部30の内側に、光線70の照射予定箇所90bを点線で示している。そして、光線70の照射は、光線の集光面積を広くして、1回で行われる。この例においても、光線70の照射予定箇所90bは、光線70の照射側から溶融凝固部30を平面視したとき、溶融凝固部30の円相当中心を含む点状に再溶融され、溶融凝固部30の溶融境界近傍のPの偏析が緩和されるように設定される。
図8(a)、図8(b)に示すように光線70を照射することで、図8(c)に示すように、光線70の照射側から溶融凝固部30を平面視したとき、当該溶融凝固部の円相当中心を含む点状に再溶融凝固部30aが形成され、その周囲に凝固再加熱部30bが形成される。そして、溶融境界を含む凝固再加熱部30bのPの偏析が緩和され、靱性が向上する。
また、点状の接合部の形成、及び、点状の接合部の溶融境界の熱処理において、光線の照射方法は、同じ照射方法でも、異なる照射方法でもよい。例えば、異なる照射直径で光線を照射して、点状の接合部を形成し、異なる照射直径で光線を照射して、点状の接合部の溶融境界を熱処理しても、集光面積を広くして光線を照射して、点状の接合部の形成し、異なる照射直径で光線を照射して、点状の接合部の溶融境界を熱処理してもよい。
次に、光線70の照射のうち、凝固再加熱部30bの加熱温度について説明する。
点状の接合部の溶融凝固部30のうち、少なくとも金属板20a、20bの重ね合わせ面近傍の溶融境界近傍のPの偏析が緩和されるように再加熱するとよい。
重ね合わせ面近傍の溶融境界近傍のPの偏析を緩和するには、凝固再加熱部30bの最高到達温度が母材の融点以下Ac3点温度以上(例えば、900℃以上)となる条件で、光線70を溶融凝固部30の内側に照射する。凝固再加熱部30bの温度は、鋼板表面で測定した温度を代表値として用いることができる。温度は、放射温度計や熱電対を用いて測定することができる。
このような温度とするには、予め、再溶融予定箇所(光線の照射予定箇所)の円相当直径又は形成される凝固再加熱部の幅Wbと、光線の再照射中の前記溶融境界近傍の温度との関係や、光線の再照射時間と前記溶融境界近傍の温度との関係等を調査しておき、再溶融予定箇所(光線の照射予定箇所)の円相当直径、凝固再加熱部の幅Wb、光線の再照射時間等を調整することで行うことができる。また、凝固再加熱部30bを900℃以上とするには、凝固再加熱部の幅Wbを0.5〜1.0mmとなるように光線の照射を調整することが例示される。好ましくは、0.6〜0.9mmである。
次に、点状の接合部の形成、及び、点状の接合部の熱処理で使用する光線について説明する。
光線にはレーザを用いるのが一般的であるが限定されるものではない。加工装置は特に限定されるものでないが、リモート接合装置とすることが好ましい。リモート接合装置は、ロボットアームの先端に取り付けたガルバノミラーにより、光線を接合打点の間を高速で移動させるものであり、接合の作業時間の大幅な短縮が可能になる。また、発振器としては、例えば、気体励起タイプ、固体励起タイプ、半導体タイプなどを用いることができる。
また、光線による接合の条件は、従来の条件を採用することができる。例えば、光線出力2〜30kW、集光面の光線径0.1〜8.0mm、接合速度0.1〜60m/minの接合条件で行うことができる。
また、自動車の組み立ては、複数の接合工程からなるが、1つの工程内で本発明の製法を実施する場合、1つ1つの接合点に対して、光線照射による接合と再溶融を実施してもよいが、Ms点−250℃以下までの冷却の待ち時間を低減するため、より好適には、光線照射により複数の溶融接合を実施し、その後、光線照射により複数の再溶融を実施するとことが好ましい。また複数の接合工程で本発明の製法を実施する場合、光線照射による溶融接合工程と、光線照射による再溶融工程を別々の工程とすることで、冷却の待ち時間を無くすことができる。
次に、本発明の実施例について説明するが、実施例での条件は、本発明の実施可能性及び効果を確認するために採用した一条件例であり、本発明は、この一条件例に限定されるものではない。本発明は、本発明の要旨を逸脱せず、本発明の目的を達成する限りにおいて、種々の条件を採用し得るものである。
表1に、被接合部材とする鋼板を示す。
Figure 2017052005
表1に示す、同種の鋼板を2枚重ね合わせて、ガルバノミラーを有するリモート光線接合装置を用い、ファイバーレーザにより接合を行い、点状の接合部を有する試験片を作成した。表2に、点状の接合部の形成条件を示す。ビーム径は、集光面での光線の直径である。
Figure 2017052005
次に、各試験片の点状の接合部の熱処理を行った。この熱処理では、光線の照射側から溶融凝固部を平面視したとき、溶融凝固部と再溶融凝固部の中心が一致するようにし、試験片を貫通するように再溶融凝固部を形成して行った。表3に、点状の接合部の熱処理条件を示す。ビーム径は、集光面での光線の直径である。なお、熱処理では、点状の接合部の形成と同じリモート光線接合装置を用いた。
Figure 2017052005
表4に、熱処理後の試験片について、凝固再加熱部の幅Wb、再溶融凝固部の平均ビッカース硬さA(引け巣は除く)、溶融凝固部の溶融境界から0.5mmの範囲の平均ビッカース硬さB、平均ビッカース硬さAとBの差、P偏析、十字引張強さ(CTS)について示す。
P偏析は、上述のPの偏析の解析法に従い、P濃度(質量%)の部分平均が全平均値の2倍を超える個数が0個以上100個以下である場合を「○」と表記し、個数が101個以上である場合を「×」と表記した。また、CTSは、JIS Z3137にスポット接合の強度試験方法として記載されている方法を援用した。なお、比較例1、5、14のビッカース硬さAは、溶融凝固部の中心部の平均ビッカース硬さである。
Figure 2017052005
No.2〜4、6〜8、10〜13は、点状の接合部に熱処理を行い、本発明の接合継手で規定する構成をすべて満足するため、溶融凝固部の溶融境界近傍のPの偏析が緩和され、靱性が向上し、十字引張強さ(CTS)が向上している。
それに対して、No.1、No.5、及び、No.14は、点状の接合部に熱処理を行っていないため、溶融凝固部の溶融境界の靱性が向上せず、十字引張強さ(CTS)が低い。また、No.9は、溶融凝固部の全部に熱処理を行ったため、溶融凝固部の溶融境界の靱性が向上せず、十字引張強さ(CTS)が低いことが確認された。
本発明によれば、点状の接合部の溶融境界近傍に、Pの偏析を低減した凝固再加熱部を設けたので、重ね接合継手の継手強度、特に、十字引張強さ(CTS)を向上させることができる。よって、本発明は、産業上の利用可能性が高いものである。
1a、1b 接合継手
2a、2b 金属板
3 点状の接合部の溶融凝固部
3a 再溶融凝固部
3b 凝固再加熱部
5 重ね合わせ面
6 溶融境界
10、10a、10b 接合継手
20a、20b 金属板
30 点状の接合部の溶融凝固部
30a 再溶融凝固部
30b 凝固再加熱部
70 光線
80a、80b 照射予定箇所
90a、90b 照射予定箇所
A 矩形平面領域
C 中心軸
L1 金属板表面と平行方向のビッカース硬さの測定範囲
L2 溶融凝固部のビッカース硬さの測定範囲
L3 再溶融凝固部のビッカース硬さの測定範囲
W 溶融凝固部の幅
Wa 再溶融凝固部の幅
Wb 凝固再加熱部の幅
X 板厚方向のビッカース硬さの測定位置

Claims (6)

  1. 重ね合わされた複数の金属板で構成され、点状の接合部を有する重ね接合継手において、
    前記点状の接合部は、前記複数の金属板に跨る溶融凝固部を有し、
    前記溶融凝固部は、再溶融凝固部と、凝固再加熱部とを有し、
    前記再溶融凝固部は、前記溶融凝固部を平面視したとき、当該溶融凝固部の円相当中心軸を含む点状で、前記複数の金属板に跨っており、
    前記凝固再加熱部は、前記再溶融凝固部の周囲に位置し、前記点状の接合部の溶融境界を含んでおり、
    更に、前記凝固再加熱部において、前記金属板の重ね合わせ面の前記溶融境界から前記中心軸側に100μmの点を中心点とし、
    前記中心点から前記中心軸へ向かう方向に平行で、前記金属板面に垂直な、前記中心点を中心とした、100μm×100μmの矩形平面領域にて、P濃度を質量%で、当該金属板面に平行な方向及び当該金属板面に垂直な方向それぞれに沿って1μmピッチで測定し、これにより100点×100点の測定点それぞれにおける当該P濃度の測定値を求め、
    前記100点×100点の測定点のうち、前記金属板面に平行な方向に一列に並んだ隣り合う20点の各前記測定点における前記P濃度の測定値の部分平均値を、当該金属板面に平行な方向及び当該金属板面に垂直な方向それぞれに沿って1点ずつずらしながら算出することを繰り返し、これにより81個×100個の部分平均値を求めた場合に、
    前記部分平均値のうち、前記100点×100点の測定点それぞれにおける前記P濃度の測定値の全平均値の2倍を超える前記部分平均値の個数が0個以上100個以下であることを特徴とする重ね接合継手。
  2. 前記中心点から前記中心軸へ向かう方向に平行で、前記金属板面に垂直な断面において、前記再溶融凝固部の外側端部から前記溶融境界までの距離が0.5〜1.0mmであることを特徴とする請求項1に記載の重ね接合継手。
  3. 前記複数の金属板が、表面処理皮膜を有する金属板を1枚以上含むことを特徴とする請求項1又は2に記載の重ね接合継手。
  4. 複数の金属板を重ね合わせ、高パワー密度光線を照射して接合する重ね接合継手の製造方法において、
    重ね合わされた一方の金属板に高パワー密度光線を照射して、前記複数の金属板に跨って点状に溶融凝固した溶融凝固部を有する点状の接合部を形成し、
    前記高パワー密度光線の照射側から前記溶融凝固部を平面視したとき、当該溶融凝固部の内側に前記高パワー密度光線を再照射し、当該溶融凝固部の円相当中心軸を含む点状に、前記複数の金属板に跨って再溶融凝固させて再溶融凝固部を形成し、更に、当該再溶融凝固部の周囲に前記点状の接合部の溶融境界を含む凝固再加熱部を形成するとともに、その際に再加熱条件を調整して、
    前記金属板の重ね合わせ面の前記溶融境界から前記中心軸側に100μmの点を中心点とし、
    前記中心点から前記中心軸へ向かう方向に平行で、前記金属板面に垂直な、前記中心点を中心とした、100μm×100μmの矩形平面領域にて、P濃度を質量%で、当該金属板面に平行な方向及び当該金属板面に垂直な方向それぞれに沿って1μmピッチで測定し、これにより100点×100点の測定点それぞれにおける当該P濃度の測定値を求め、
    前記100点×100点の測定点のうち、前記金属板面に平行な方向に一列に並んだ隣り合う20点の各前記測定点における前記P濃度の測定値の平均値を、当該金属板面に平
    行な方向及び当該金属板面に垂直な方向それぞれに沿って1点ずつずらしながら算出することを繰り返し、これにより81個×100個の部分平均値を求めた場合に、
    前記部分平均値のうち、前記100点×100点の測定点それぞれにおける前記P濃度の測定値の全平均値の2倍を超える前記部分平均値の個数が0個以上100個以下となるようにする
    ことを特徴とする重ね接合継手の製造方法。
  5. 前記高パワー密度光線の再照射は、前記中心点から前記中心軸へ向かう方向に平行で、前記金属板面に垂直な断面において、前記再溶融凝固部の外側端部から前記溶融境界までの距離が0.5〜1.0mmとなるように行われることを特徴とする請求項4に記載の重ね溶接継手の製造方法。
  6. 前記複数の金属板に、表面処理皮膜を形成した金属板を1枚以上用いることを特徴とする請求項4又は5に記載の重ね接合継手の製造方法。
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