JP2017050925A - 永久磁石表面貼付形モータの回転子及びその製造方法 - Google Patents

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智 太田
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智 太田
隆志 沖津
Takashi Okitsu
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Abstract

【課題】CFRP製の保護管を、回転子軸に張り付けた永久磁石の外周面に容易かつ効率的に取り付ける。【解決手段】回転子軸11の外周面に永久磁石12が貼り付けられ、CFRP製の保護管13が永久磁石12の外周面の全面を覆っている。回転子軸11には、中空室11a及び流通孔11b,11cが形成されており、液体窒素などを内部に流通させることにより、回転子軸11が熱収縮する。回転子軸11が収縮して径が小さくなっている状態において、保護管13を回転子軸11に嵌入して永久磁石12の外周側に配置する。【選択図】図1

Description

本発明は、永久磁石表面貼付形モータの回転子及びその製造方法に関し、CFRP(Carbon Fiber Reinforced Plastics:炭素繊維強化プラスチック)製の保護管を回転子部材に容易かつ効率的に取り付けることができるように工夫したものである。
永久磁石表面貼付形モータ(SPMモータ:Surface Permanent Magnet Motor)は、回転子軸の表面に永久磁石を貼り付けて磁極を形成した、回転界磁形の同期モータである。SPMモータは、磁石の持つ強い磁力を効率的に利用できるため、小型でありながら高トルクを発生できるとともに、低トルクリプル化を実現することができる。
このようなSPMモータのうち特に高速用のSPMモータでは、永久磁石の外周面を覆う状態で保護管を嵌入している。保護管は、永久磁石の外周面を覆うことにより、遠心力による永久磁石の破損や飛散を防止する。
保護管は、回転磁界内に配置されると共に大きな遠心力が作用するため、非磁性材料であって、高剛性且つ軽量な材料により形成される必要がある。このため保護管としては、CFRP(Carbon Fiber Reinforced Plastics:炭素繊維強化プラスチック)製の保護管が使用されることがある(特許文献1参照)。CFRP製の保護管は、円周方向に巻回して円筒状に形成された炭素繊維に、エポキシ樹脂等を含浸して固めた円筒状部材である。CFRPは引張強度が非常に高く大きな遠心力に耐えることができるため、高速用のSPMモータの多くにCFRP製の保護管が適用されている。
ここでCFRP製の保護管を回転子軸に取り付ける従来の手法を説明する。
第1の従来手法では、回転子軸の表面に張り付けた永久磁石の隣(軸方向に関して隣)に、永久磁石側から反永久磁石側に向かって径が漸減するスリーブ部材を配置する。そして、円筒状の保護管を、スリーブ部材の反永久磁石側から、押し込みつつ回転子軸に嵌入していく。そうすると、保護管はスリーブ部材を通過していく際に内周側から外周側に押し広げられ、永久磁石の外周面を覆う状態で嵌入していく。
次にCFRP製の保護管を回転子軸に取り付ける第2の従来手法を、図6及び図7を参照して説明する。
図6に示すように、回転子軸1のうち、軸方向の中央部分(大径部分)の周面には、複数の永久磁石2が貼り付けられている。また図7に示すように、CFRP製の保護管3は、本例では、6個の分割保護管3a〜3fを軸方向に緊密に並べて構成されている。
保護管3の製造手順を説明すると、図6に示すように、回転子軸1の一端側から、プレス機械により1つ目の分割保護管3aを押し込みつつ回転子軸1に嵌入していく。このようにして、1つ目の分割保護管3aを軸方向に移動させていって、回転子軸1に配置した永久磁石2の外周面を覆う。2つ目から6つ目の分割保護管3b〜3fも、1つ目の分割保護管3aと同様に、1つずつ、プレス機械により押し込まれ回転子軸1に嵌入していって永久磁石2の外周面を覆う。このようにして、6つの分割保護管3a〜3fが緊密に軸方向に並ぶことにより、永久磁石2の外周面を覆う保護管3が形成される。
保護管3をこのような多数の分割保護管3a〜3fにより構成した理由は次のとおりである。
仮に保護管3を、分割型ではなく、軸方向寸法が長い一体の円筒部材(CFRP)により形成した場合には、この一体型の保護管は、径方向に作用する力に対して弱くなる。これは、保護管は、円周方向に巻回して円筒状に形成された炭素繊維にエポキシ樹脂等を含浸して固めて形成したものであるため、遠心力(径方向外側に向かう力)には強いが、軸方向に作用する力にはそもそも弱いからである。このような特性になっているため、保護管の軸方向寸法を長くすると、径方向に作用する力に対して弱くなる。
したがって、軸方向寸法の長い一体型の保護管を、プレス機械により押し込み回転子軸1に嵌入していこうとした場合には、軸方向の力によって一体型の保護管が潰れてしまい、嵌入ができなくなる。
一方、軸方向寸法の短い個々の分割保護管3a〜3fは、大きな軸方向の力が作用しても潰れることはない。
かかる状況に鑑みて、軸方向寸法の短い多数の分割保護管3a〜3fを、1つずつ押し込んで嵌入させていくことにより、保護管3を形成しているのである。
なおCFRPは熱による膨張率が小さいため、「CFRP製の保護管を加熱して焼き嵌めする」、という手法は採用できない。
特開平11−89142号公報
ところで第1の従来手法では、永久磁石側から反永久磁石側に向かって径が漸減するスリーブ部材が必要であり、部品点数が多くなるという問題があった。
第2の従来手法では、多数の分割保護管3a〜3fを押し込む作業が多数回必要になるため、製造工数が多くなるという問題があった。またプレス機械が必要であり組立設備が大型化していた。
本発明は、上記従来技術に鑑み、CFRP製の保護管を回転子部材(回転子軸に永久磁石を貼り付けたもの)に容易かつ効率的に取り付けることができる、永久磁石表面貼付形モータの回転子及びその製造方法を提供することを目的とする。
上記課題を解決する本発明の永久磁石表面貼付形モータの回転子は、
軸方向の中央部の内部に中空室が形成されると共に、軸方向の両端部には前記中空室に連通する流通孔が形成された回転子軸と、
前記回転子軸の外周面に貼り付けられた永久磁石と、
前記永久磁石の外周面の全面を覆う、炭素繊維強化プラスチック製の保護管と、
を有することを特徴とする。
また本発明の永久磁石表面貼付形モータの回転子は、
回転子軸の外周面に永久磁石が貼り付けられ、炭素繊維強化プラスチック製の保護管が前記永久磁石の外周面の全面を覆っている永久磁石表面貼付形モータの回転子であって、
前記回転子軸は、軸方向の中央部の内部に中空室が形成されると共に、軸方向の両端部には前記中空室に連通する流通孔が形成されており、
前記流通孔の一方から冷却媒体を供給してこの冷却媒体を一方の前記流通孔,前記中空室および他方の前記冷却孔に流通させることにより、前記永久磁石が貼り付けられている前記回転子軸を冷却して熱収縮させた状態において、前記保護管が前記回転子軸の一端側から前記回転子軸に嵌入されていって前記永久磁石の外周側に配置されている、
ことを特徴とする。
また本発明の永久磁石表面貼付形モータの回転子の製造方法は、
軸方向の中央部の内部に中空室が形成されると共に軸方向の両端部には前記中空室に連通する流通孔が形成された回転子軸の外周面に永久磁石が貼り付けられ、炭素繊維強化プラスチック製の保護管が前記永久磁石の外周面の全面を覆っている永久磁石表面貼付形モータの回転子の製造方法であって、
前記回転子軸の外周面に前記永久磁石を貼り付け、
前記回転子軸の前記流通孔の一方から冷却媒体を供給してこの冷却媒体を一方の前記流通孔,前記中空室および他方の前記冷却孔に流通させることにより、前記回転子軸を冷却して熱収縮させ、
前記回転子軸が冷却により熱収縮している状態において、前記保護管を前記回転子軸の一端側から前記回転子軸に嵌入していって前記永久磁石の外周側に配置した、
ことを特徴とする。
本発明によれば、組立性が向上すると共に、保護管を回転子部材に容易かつ効率的に取り付けることができる。
本発明の実施例に係る永久磁石表面貼付形モータの回転子を示す断面図。 本発明の実施例に係る永久磁石表面貼付形モータの回転子に用いる回転子軸の製造方法を示す断面図。 本発明の実施例に係る永久磁石表面貼付形モータの回転子の回転子部材を示す斜視図。 本発明の実施例に係る永久磁石表面貼付形モータの回転子の製造方法を示す斜視図。 本発明の実施例に係る永久磁石表面貼付形モータの回転子の製造方法を示す断面図。 従来技術に係る製造方法を示す斜視図。 従来技術に係る製造方法を示す斜視図。
以下、本発明に係る永久磁石表面貼付形モータの回転子及びその製造方法を、実施例に基づき詳細に説明する。
〔実施例〕
図1は本発明の実施例に係る、永久磁石表面貼付形モータの回転子10を示す。この回転子10の回転子軸11は、軸方向の中央部において内部に中空室11aが形成されており、軸方向の両端部において内部に流通孔11b,11cが形成されている。流通孔11b,11cは中空室11aに連通している。このように、内部に中空室11aが形成されているため、回転子軸11は薄肉になり、冷却されたときに効率的に熱収縮してその径が小さくなる。
回転子軸11のうち、軸方向の中央部分(大径部分)の外周面には、複数の永久磁石12が貼り付けられている。
更に、永久磁石12の外周面には、CFRP製の保護管13が嵌入されている。本例では、保護管13は、軸方向に関して永久磁石12の全面を覆うことができる程度に長い、一体型の円筒部材になっている。この場合、保護管13は、永久磁石12の外周面に密着しつつ外周側から内周面側に押し込む状態で、永久磁石12の外周面の全面を覆っている。
ここで回転子軸11の製造方法について、図2を参照して説明する。
回転子軸11を製造するには、図2に示すように、深孔(中空室11a及び流通孔11bに相当する孔)を有する管部材11−1と、孔(流通孔11cに相当する孔)を有する管部材11−2を形成する。
そして、管部材11−1の一端面(図2では右端面)と、管部材11−2の他端面(図2では左端面)とを接触させ、摩擦溶接により両端面を溶接(溶着)することにより、中空室11a及び流通孔11b,11cを有する回転子軸11を形成している。
なお、管部材11−1に、中空室11aの半分の長さの孔と流通孔11bに相当する孔を形成し、管部材11−2に、中空室11aの半分の長さの孔と流通孔11cに相当する孔を形成し、両管部材11−1,11−2を摩擦溶接により溶接(溶着)して回転子軸11を形成することもできる。
次に、保護管13の嵌入手法(組み付け手法)を説明する。
図3に示すように回転子軸11の周面に永久磁石12を貼り付けて、回転子部材を形成する。
次に図4,図5に示すように、回転子部材(回転子軸11に永久磁石12を貼り付けたもの)に隣接してCFRP製の保護管13を隣接してセットする。つまり軸方向に沿い回転子部材と保護管13を並べて配置する。
そして冷却媒体(液体窒素などの冷却液)CLを流通孔11bから回転子軸11の内部に供給する。そうすると冷却媒体CLが、流通孔11b,中空室11a,流通孔11cを流通していく。このため回転子軸11が冷却され、回転子軸11の径が熱収縮する。前述したように、回転子軸11は、内部に中空室11aが形成されているため薄肉であり、冷却されたときに効率的に熱収縮してその径が小さくなる。
このように冷却媒体により回転子軸11を冷却してその径を収縮させている状態において、保護管13を軸方向に移動させていって、永久磁石12を備えた回転子軸11に回転子軸11の一端側から嵌入していき、保護管13を永久磁石12の外周側に配置させる。
次に、冷却媒体の流通を停止する。そうすると回転子軸11の温度が冷却温度から常温にまで上昇していき、その径が拡大していく。回転子軸11の温度が常温に戻ったときには、回転子軸11に張り付けた永久磁石12が、保護管13を内周側から外周側に押し広げる状態で保護管13の内周面に密着する。逆に言えば、保護管13は、永久磁石12の外周面に密着しつつ外周側から内周面側に押し込む状態で、永久磁石12を覆う状態になる。
このようにして、保護管13を回転子部材(回転子軸11に永久磁石12を貼り付けたもの)に嵌入(組み付ける)ことができる。
本実施例では、回転子軸11に永久磁石12を貼り付けた回転子部材を冷却した状態で、軸方向に長い1本の保護管13を回転子軸11に嵌入することができ、作業回数が低減する。
また、スリーブ部材が不要になり、部品点数が削減して組立性が向上する。
なお上記例では、保護管13の軸方向長さは、回転子軸11に備えられた永久磁石12の軸方向長さと同じ、またはやや長い程度になっているが、この保護管13を軸方向の中央部において切断し、2つの分割保護管を形成し、この2つの分割保護管を、冷却した回転子部材に嵌入するようにしていくこともできる。
なお、保護管13の分割数は、2に限るものではないが、従来の分割数よりは少なくする。
10 回転子
11 回転子軸
11a 中空室
11b,11c 流通孔
11−1,11−2 管部材
12 永久磁石
13 CFRP製の保護管
CL 冷却媒体(冷却液)

Claims (3)

  1. 軸方向の中央部の内部に中空室が形成されると共に、軸方向の両端部には前記中空室に連通する流通孔が形成された回転子軸と、
    前記回転子軸の外周面に貼り付けられた永久磁石と、
    前記永久磁石の外周面の全面を覆う、炭素繊維強化プラスチック製の保護管と、
    を有することを特徴とする永久磁石表面貼付形モータの回転子。
  2. 回転子軸の外周面に永久磁石が貼り付けられ、炭素繊維強化プラスチック製の保護管が前記永久磁石の外周面の全面を覆っている永久磁石表面貼付形モータの回転子であって、
    前記回転子軸は、軸方向の中央部の内部に中空室が形成されると共に、軸方向の両端部には前記中空室に連通する流通孔が形成されており、
    前記流通孔の一方から冷却媒体を供給してこの冷却媒体を一方の前記流通孔,前記中空室および他方の前記冷却孔に流通させることにより、前記永久磁石が貼り付けられている前記回転子軸を冷却して熱収縮させた状態において、前記保護管が前記回転子軸の一端側から前記回転子軸に嵌入されていって前記永久磁石の外周側に配置されている、
    ことを特徴とする永久磁石表面貼付形モータの回転子。
  3. 軸方向の中央部の内部に中空室が形成されると共に軸方向の両端部には前記中空室に連通する流通孔が形成された回転子軸の外周面に永久磁石が貼り付けられ、炭素繊維強化プラスチック製の保護管が前記永久磁石の外周面の全面を覆っている永久磁石表面貼付形モータの回転子の製造方法であって、
    前記回転子軸の外周面に前記永久磁石を貼り付け、
    前記回転子軸の前記流通孔の一方から冷却媒体を供給してこの冷却媒体を一方の前記流通孔,前記中空室および他方の前記冷却孔に流通させることにより、前記回転子軸を冷却して熱収縮させ、
    前記回転子軸が冷却により熱収縮している状態において、前記保護管を前記回転子軸の一端側から前記回転子軸に嵌入していって前記永久磁石の外周側に配置した、
    ことを特徴とする永久磁石表面貼付形モータの回転子の製造方法。
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