JP2017050498A - パワー半導体モジュール - Google Patents
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Abstract
【課題】半導体チップに負荷がかかることを抑制できるパワー半導体モジュールを提供する。【解決手段】実施形態にかかるパワー半導体モジュールは、1つ以上の半導体素子を有する半導体チップ部と、前記半導体チップ部の一方の面に接合された接合面を有するブロック状の第1の導体と、前記半導体チップ部の他方の面に接合された接合面を有するブロック状の第2の導体と、前記第1の導体の底面および前記第2の導体の底面に接合された冷却部と、を備え、前記第1の導体および前記第2の導体は、前記上面に溝を有し、前記溝の底部は、前記接合面と交差する方向において前記導体の中心位置よりも前記半導体チップ部に近い位置であって、前記底面と交差する方向において前記導体と前記半導体素子との接合領域の前記上面側の端部よりも前記底面側に配される、パワー半導体モジュール。【選択図】図1
Description
本発明の実施形態は、パワー半導体モジュールに関する。
例えば電気自動車等の分野において、インバータ装置等のパワー半導体モジュールの小型化および信頼性向上が要求されている。パワー半導体モジュールの小型化、信頼性向上のためには、半導体チップおよび電力変換器について、冷却効率を高めることが必要となる。
インバータ装置において、例えば、半導体チップであるIGBT(Insulated gate bipolar transistor)およびダイオードと、半導体チップの両面の電極に接合される接合面を有する第1の導体、および第2の導体と、これらの導体に接合される伝熱面を有する冷却部と、を備える構造が知られている。各導体はブロック状の金属で構成されており、大きな熱容量を有する。このため、半導体チップの短時間発熱時における温度上昇を抑制する。各導体は、部位によって温度差が生じるため、熱膨張で変形する場合がある。この場合、導体の変形によって、半導体チップに負荷がかかる。
本発明が解決しようとする課題は、温度差に起因して半導体チップに負荷がかかることを抑制できるパワー半導体モジュールを提供することである。
実施形態にかかるパワー半導体モジュールは、1つ以上の半導体素子を有する半導体チップ部と、前記半導体チップ部の一方の面に接合された接合面と、この接合面と対向する外側面と、前記接合面および外側面と交差する底面および上面と、を有するブロック状の第1の導体と、前記半導体チップ部の他方の面に接合された接合面と、この接合面と対向する外側面と、前記接合面および外側面と交差する底面および上面と、を有するブロック状の第2の導体と、前記第1の導体の底面および前記第2の導体の底面に接合された冷却部と、を備え、前記第1の導体および前記第2の導体は、前記上面に溝を有し、前記溝の底部は、前記接合面と交差する方向において前記導体の中心位置よりも前記半導体チップ部に近い位置であって、前記底面と交差する方向において前記導体と前記半導体素子との接合領域の前記上面側の端部よりも前記底面側に配される。
[第1実施形態]
以下、本発明の第1実施形態に係るパワー半導体モジュールとしてのインバータモジュール1の構成について、図1および図2を参照して説明する。また、各図において説明の便宜上、適宜構成を拡大、縮小または省略して示している。図中矢印Y,Z,Xは互いに直交する3方向をそれぞれ示している。ここで、本実施形態では、半導体チップ群12と導体15,16との接合面に垂直なX方向を導体の幅方向、冷却部17と導体15,16との接合面である伝熱面に直交するZ方向を導体高さ方向、接合面および前記底面に交差する方向をY方向として定義している。
以下、本発明の第1実施形態に係るパワー半導体モジュールとしてのインバータモジュール1の構成について、図1および図2を参照して説明する。また、各図において説明の便宜上、適宜構成を拡大、縮小または省略して示している。図中矢印Y,Z,Xは互いに直交する3方向をそれぞれ示している。ここで、本実施形態では、半導体チップ群12と導体15,16との接合面に垂直なX方向を導体の幅方向、冷却部17と導体15,16との接合面である伝熱面に直交するZ方向を導体高さ方向、接合面および前記底面に交差する方向をY方向として定義している。
図1はインバータモジュール1の構造を示す斜視図であり、図2はY方向から見た側面図である。
インバータモジュール1は、少なくとも1つの半導体チップを有する半導体チップ部としての半導体チップ群12と、半導体チップ群12の両側に配される第1および第2の導体15,16と、第1および第2の導体15,16の下に配される冷却部17と、を備える。
半導体チップ群12は、インバータの1つの相の少なくとも1アームの一部を構成する半導体素子として、スイッチング素子であるIGBT13およびダイオード14を備える。ダイオード14は、IGBT13に対して逆並列接続されている。
IGBT13およびダイオード14の外形状は、例えば矩形の板状に構成されている。IGBT13およびダイオード14は厚さ方向がインバータモジュール1の幅方向に沿う縦型配置である。本実施形態において、IGBT13およびダイオード14の両主面には、導体15,16の一部を構成するコレクタ電極板23およびエミッタ電極板24がそれぞれ設けられている。すなわち本実施形態において、導体と半導体素子との接合領域は、IGBT13と、エミッタ電極板24との接合領域となる。
IGBT13およびダイオード14の外形状は、例えば矩形の板状に構成されている。IGBT13およびダイオード14は厚さ方向がインバータモジュール1の幅方向に沿う縦型配置である。本実施形態において、IGBT13およびダイオード14の両主面には、導体15,16の一部を構成するコレクタ電極板23およびエミッタ電極板24がそれぞれ設けられている。すなわち本実施形態において、導体と半導体素子との接合領域は、IGBT13と、エミッタ電極板24との接合領域となる。
IGBT13およびダイオード14は、それぞれの一方の主面がはんだによってコレクタ電極板23を介して第1の導体15に接合され、他方の主面がはんだによってエミッタ電極板24を介して第2の導体16に接合されている。ここで、エミッタ電極板24のIGBT13との接合領域は、IGBT13の信号線等の引き出し部形成および絶縁等の関係から、IGBT13の対向する面よりも小さい。すなわち対向するIGBT13の面の一部にのみエミッタ電極板24が接合されている。
第1の導体15および第2の導体16は、導電性金属である銅もしくは銅合金から直方体に形成されたバスバーである。第1の導体15および第2の導体16は、それぞれ、半導体チップ群12の一方の面に接合された接合面と、この接合面と対向する外側面と、接合面および外側面と交差する底面および上面と、を有するブロック状に構成されている。
第1の導体15および第2の導体16は、半導体チップ群12を挟んで対向配置され、半導体チップ群12の両面に接合され、少なくとも半導体チップ群12と熱伝達可能に接続されている。第1の導体15には、半導体チップ群12の正極側が電気的かつ機械的に接合されている。第2の導体16には、半導体チップ群12の負極側が電気的かつ機械的に接合されている。したがって、第1の導体15は正側導体として正電極を形成し、第2の導体16は負側導体として負電極を形成する。具体的には、導体15,16は、IGBT13およびダイオード14に、コレクタ電極23,エミッタ電極24を介して接合される。
第1の導体15および第2の導体16には、溝15a,16aがそれぞれ形成されている。溝15a,16aは例えば第1の導体15および第2の導体16の上面から下方に所定深さに至るスリット状の切欠きである。溝15a、16aは所定幅を有し、Y方向に直交する断面が矩形状に構成されている。
溝15a,16aは第1の導体15および第2の導体16のY方向全長に亘って設けられ、例えば第1の導体15および第2の導体16を形成する際に例えば押し出し加工やプレス加工などで形成される。
溝15a,16aは、各導体15、16のX方向における中央よりも半導体チップ群12に近い位置に配置されている。また、溝15a,16aは、Z方向において、少なくとも導体と半導体素子との接合領域、すなわち本実施形態においてはエミッタ電極板24とIGBT13との接合領域に至る深さを有している。すなわち、溝15a,16aの底部は、X方向において導体15,16の中心位置よりも半導体チップ群12に近い位置であって、Z方向においてエミッタ電極板24とIGBT13との接合領域の上面側の端部よりも底面側に配されている。本実施形態において、溝15a,16aの底部は、導体15,16のZ方向における中心位置に至っている。
第1の導体15と第2の導体16の下面には、冷却部17が当接し、熱伝導可能に接合されている。
冷却部17は、放熱器20と、電気的な絶縁を確保するための絶縁部21と、ベース部22と、を備えて構成される。冷却部17は第1の導体15および第2の導体16に当接する伝熱面を有している。
放熱器20は、たとえばアルミ合金により形成され、複数の放熱フィン20aを有する。
絶縁部21は、エポキシ系樹脂等の絶縁材料により、第1および第2の導体15,16のZ方向端面に対応する矩形の板状に構成されている。ベース部22は例えば銅合金若しくはアルミ合金等の材料から絶縁部21と同様に第1および第2の導体15,16のZ方向端面に対応する矩形の板状に構成されている。
第1の導体15および第2の導体16の下面にそれぞれ絶縁部21が接合され、絶縁部21の下面にベース部22が接合される。ベース部22の下面に放熱器20が接合される。
半導体チップ群12により生じた熱は、両主面に接合された第1の導体15および第2の導体16を介して、それぞれ各導体15,16のZ方向一方の面に接合された絶縁部21、ベース部22、を介して、放熱器20に伝達され、半導体チップ群12が冷却される。
以上の様な構成のインバータモジュール1において、半導体チップ群12の発熱により温度が上昇したときの温度分布は、各導体15、16の半導体チップ群12近傍である上部は高温になり、冷却部17側である下部は低温になる。また、半導体チップ群12も発熱により高温となる。
図3は、インバータモジュール1の熱による変形の状態の概略を示す説明図である。図3に示すように、以上のような温度分布によって、各導体15,16の上方は熱膨張により上方に開く形で変形する。一方、各導体15,16の下方は温度上昇が小さいため上方に比較して変形は小さく、また半導体チップ群12自体も温度上昇により膨張する。
図4は、比較例1にかかるインバータモジュールの熱による変形の状態の概略を示す説明図である。ここで、比較例1として溝が形成されていないインバータモジュール100を例示する。インバータモジュール100は、少なくとも1つの半導体チップを有する半導体チップ群112と、半導体チップ群112の両側に配される第1および第2の導体115,116と、第1および第2の導体115,116の下に配される冷却部17と、を備える。
第1の導体115および第2の導体116は、導電性金属である銅もしくは銅合金から直方体に形成されたバスバーであり、溝は形成されていない。このような構成のインバータモジュール100において、半導体チップ群112の発熱により温度が上昇したときの温度分布は、各導体115、116の半導体チップ群112近傍である上部は高温になり、冷却部17側である下部は低温になる。また、半導体チップ群112も発熱により高温となる。このような温度分布によって、各導体115,116の上方は熱膨張により上方に開く形で変形する。一方、各導体115,116の下方は温度上昇が小さいため上方に比較して変形は小さく、また半導体チップ群112自体も温度上昇により膨張する。
図4に示すように発熱時には、IGBT113がエミッタ電極板24との接合部縁部で屈曲する形に変形するため、熱変形による負荷がかかる。このように、IGBT113を屈曲させる荷重は、IGBT113に機械的な負荷をかけるとともに、その品質を劣化させる要因となることから、信頼性の低下を招くことになる。
これに対し、本実施形態かかるインバータモジュール1は、各導体15,16の上面に溝15a、16aが形成されているため、導体15,16の上部の変形を許容し、IGBT13に作用する導体15,16の剛性を比較例と比較して小さなものとすることができる。このため、各導体15,16の変形がIGBT13に与える力は小さくなり、IGBT13の屈曲変形が抑制される。したがって、IGBT13に過大な変形および荷重の負荷がかかることを防止できる。このため、IGBT13やダイオード14といった半導体内部および表面に機械的な損傷を与えることを防止でき、信頼性を高めることが可能となる。
[第2実施形態]
図5、6を参照して、第2実施形態に係るインバータモジュール2について、説明する。図5は、第2実施形態に係るインバータモジュール2の構成を示す斜視図であり、図6はインバータモジュール2をY軸方向から見た側面図である。
図5、6を参照して、第2実施形態に係るインバータモジュール2について、説明する。図5は、第2実施形態に係るインバータモジュール2の構成を示す斜視図であり、図6はインバータモジュール2をY軸方向から見た側面図である。
なお、第2実施形態にかかるインバータモジュール2は、複数の半導体チップ群12を配置するとともに、第3の導体19を設けた点が、上記第1実施形態と異なる。この他は第1実施形態にかかるインバータモジュール1と同様であるため、第2実施形態にかかるインバータモジュール2において、インバータモジュール1と同一の構成には同一の符号を付し、重複する説明は省略する。
図5および図6に示すように、第2実施形態に係るインバータモジュール2は、冷却部17上に、第1、第2、および第3の導体15,16,19を備え、インバータモジュール2の幅方向に並列に半導体チップ群12を2つ有している。
一方の半導体チップ群12を構成するIGBT13aおよびダイオード14aは、それぞれ一方の主面が第1の導体15に接合され、他方の主面は第2の導体16に接合される。他方の半導体チップ群12を構成するIGBT13bおよびダイオード14bは、それぞれ一方の主面が第2の導体16に接合され、他方の主面は第3の導体19に接合される。第3の導体19は第1および第2の導体15,16と同様に構成されている。
第1の導体15には、一方の半導体チップ群12の正極側が電気的かつ機械的に接合されており、第2の導体16には一方の面に一方の半導体チップ群12の負極側、他方の面に他方の半導体チップ群12の正極側が電気的かつ機械的に接合されている。さらに第3の導体19には、他方の半導体チップ群12の負極側が電気的かつ機械的に接合されている。したがって、第1の導体15は、正側導体として正電極を形成し、第3の導体19は負側導体として負電極を形成し、第2の導体16は、出力となる交流側電極を形成する。
また、第1の導体15、第2の導体16、第3の導体19は、それぞれ半導体チップ群12との接合面に直交する端面に、電気的な絶縁を確保するためのシート状の絶縁部21が接着され、さらに絶縁部21はベース部22を介して放熱器20に接合されている。すなわち、半導体チップ群12との接合面に直交する両端面が冷却部17との接合面である伝熱面を構成する。
第1の導体15および第2の導体16には、溝15a,16aがそれぞれ形成されている。
溝15a,16a,19aは例えば第1の導体15、第2の導体16、第3の導体19の上面から下方に所定深さに至って形成された切欠きである。溝15a,16a、19aは第1の導体15、第2の導体16、および第3の導体19のY方向全長に延び、例えば第1の導体15、第2の導体16、および第3の導体19を形成する際に例えば押し出し加工やプレス加工などで形成される。
溝15a,19aは、各導体15、19の幅方向の中央位置よりも半導体チップ群12に近い位置、すなわち図5におけるX方向の中央よりの位置に配されている。
なお、本実施形態においては中央に位置する第2の導体16において、幅方向における2カ所に、それぞれ溝16a,16aが形成されている。
溝15a,16a,19aは、少なくともエミッタ電極板24とIGBT13との接合領域に至る深さを有している。すなわち、溝15a,16aの底部は、X方向において導体15,16の中心位置よりも半導体チップ群12に近い位置であって、Z方向においてエミッタ電極板24とIGBT13との接合領域の上面側の端部よりも底面側に配されている。本実施形態において、溝15a,16a,19aの最深部は、導体15,16、19のZ方向における中心位置に至っている。
導体15,16,19の下面には、冷却部17が当接し、熱的に接続されている。
本実施形態にかかるインバータモジュール2においても、上記第1実施形態と同様の効果が得られる。すなわち、導体15,16,19の上面にそれぞれ溝15a,16a,19aが形成されていることで、導体15,16,19の上部の外方への変形が許容され、導体15,16,19の変形がIGBT13a,13bに及ぼす荷重を低減し、IGBT13a,13bに過大な変形や負荷がかかることを抑制することができる。
[第3実施形態]
図7乃至9に従って、第3実施形態に係るインバータモジュール3について説明する。図7は、第3実施形態に係るインバータモジュール3の構成を示す斜視図であり、図8は、インバータモジュール3をY軸方向からみた側面図である。
[第3実施形態]
図7乃至9に従って、第3実施形態に係るインバータモジュール3について説明する。図7は、第3実施形態に係るインバータモジュール3の構成を示す斜視図であり、図8は、インバータモジュール3をY軸方向からみた側面図である。
図7および図8に示すように、インバータモジュール3は、導体15,16の上面に接触するように第2の冷却部18を備える。また、インバータモジュール3において、導体15,16の両側面であり、かつ半導体チップの上下に位置する箇所に、それぞれ溝15b,16bが形成されている。この他は第2実施形態にかかるインバータモジュール1、2と同様であるため、インバータモジュール4において、第1実施形態や第2実施形態に係るインバータモジュール1,2と同一の構成には同一の符号を付し、重複する説明は省略する。
インバータモジュール3は、少なくとも1つの半導体チップを有する半導体チップ群12と、半導体チップ群12の両側に配される第1および第2の導体15,16と、第1および第2の導体15,16の上下に配される第1および第2の冷却部17,18と、を備える。
第1の導体15と第2の導体16の上下面に、第1の冷却部17および第2の冷却部18がそれぞれ当接し、熱的に接続されている。
第1の冷却部17と、第2の冷却部は上下に対向配置され、対向する伝熱面を有している。第1の冷却部17および第2の冷却部18の両伝熱面の間に、第1の導体15および第2の導体16が設けられている。
第1の冷却部17および第2の冷却部18は、放熱器20と、電気的な絶縁を確保するためのシート状の絶縁部21と、ベース部22と、を備えて構成される。放熱器20は、たとえばアルミ合金により形成され、複数の放熱フィンを有する。
半導体チップ群12により生じた熱は、両主面に接合された第1の導体15および第2の導体16を介して、それぞれ各導体15,16のZ方向両側の2面に接合された絶縁部21、ベース部22、を介して、放熱器20に伝達され、半導体チップ群12が冷却される。
第1の導体15および第2の導体16のX方向の両端面、すなわち半導体チップ群12との接合面とは反対側の面において、上下2カ所にそれぞれ溝15b,16bが形成されている。
溝15b、16bは、各導体15,16の中心よりも冷却部17,18に近い位置に設けられ、例えばZ方向において導体の一部としてのエミッタ電極板24と半導体素子としてのIGBT3との接合領域の端縁の位置と同じか、それよりも冷却部17に近い位置に形成されている。
溝15b,16bは例えば第1の導体15および第2の導体16のX方向外方に向く外側面から半導体チップ群12側、すなわちX方向内側に向けて、所定深さに至って形成された切欠きである。溝15b,16bは第1の導体15および第2の導体16のY方向全長に延び、例えば第1の導体15および第2の導体16を形成する際に例えば押し出し加工やプレス加工などで形成される。
溝15b,16bは、半導体チップ群12の上方と下方に、それぞれ形成されている。溝15b,16bの底部は、Z方向において、エミッタ電極板24とIGBT13との接合領域よりも底面に近い位置と、この接合領域よりも上面に近い位置と、にそれぞれ配される。溝15b,16bは、X方向において、導体15,16の中央部位に至る深さを有している。
本実施形態にかかるインバータモジュール2においても、上記第1実施形態と同様の効果が得られる。すなわち、導体15,16,の外側端面にそれぞれ溝15a,16aが形成されていることで、導体15,16の中央部位の外方への変形が許容され、導体15,16の変形がIGBT13の変形に及ぼす影響を抑制することができる。
図9は、インバータモジュール3の熱による変形の状態を示す説明図である。図10は、比較例2にかかるインバータモジュール102の熱による変形の状態を示す説明図である。
ここで、比較例2として、上下に冷却部17,18を備えるとともに溝が形成されていない導体15,16を備えたインバータモジュール101を例示する。
インバータモジュール101は、少なくとも1つの半導体チップを有する半導体チップ群112と、半導体チップ群112の両側に配される第1および第2の導体115,116と、第1および第2の導体115,116の上下に配される冷却部17、18と、を備える。
第1の導体115および第2の導体116は、導電性金属である銅もしくは銅合金から直方体に形成されたバスバーであり、溝は形成されていない。このような構成のインバータモジュール101において、半導体チップ群112の発熱により温度が上昇したときの温度分布は、各導体115、116の半導体チップ群112近傍であるZ方向中央部分は高温になり、冷却部17、18側である上下端部は低温になる。
また、半導体チップ群112も発熱により高温となる。このような温度分布によって、各導体115,116の中央部は熱膨張により上下に伸びる形で変形する。一方、各導体115,116の上下端部は温度上昇が小さいため、中央部に比較して変形は小さく、また半導体チップ群112自体も温度上昇により膨張する。
したがって、発熱時には、IGBT113がコレクタ電極板23と、エミッタ電極板24との接合部を中心に圧縮されながら上下に引っ張られることになる。したがって、IGBT113は、コレクタ電極板23との接合部縁部を支点として屈曲する形で変形し、熱変形による負荷がかかる。このように、IGBT113を屈曲させる荷重は、IGBT113に機械的な負荷をかけるとともに、その品質を劣化させる要因となることから、信頼性の低下を招くことになる。
一方、図9に示すように、インバータモジュール1は、各導体15,16の両側面に切欠き15a、16aが形成されているため、導体15,16の外側部位が上下方向へ開くような変形を許容し、IGBT13に作用する導体15,16の剛性を比較例と比較して小さなものとすることができる。このため、各導体15,16の変形がIGBT13に与える力は小さくなり、IGBT13の屈曲変形が抑制される。したがって、IGBT13に過大な変形および荷重の負荷がかかることがなくなり、信頼性を高めることが可能となる。
[第4実施形態]
図11に従って、第4実施形態に係るインバータモジュール4について説明する。図11は、インバータモジュール4をY軸方向から見た側面図である。
[第4実施形態]
図11に従って、第4実施形態に係るインバータモジュール4について説明する。図11は、インバータモジュール4をY軸方向から見た側面図である。
図11に示すインバータモジュール4において、導体15,16は内側面に溝15c,16cをそれぞれ備えている。この他は第1実施形態にかかるインバータモジュール1と同様であるため、インバータモジュール4において、第1実施形態に係るインバータモジュール1と同一の構成には同一の符号を付し、重複する説明は省略する。
インバータモジュール4は、少なくとも1つの半導体チップを有する半導体チップ群12と、半導体チップ群12の両側に配される第1および第2の導体15,16と、第1および第2の導体15,16の下に配される冷却部17と、を備える。
第1の導体15と第2の導体16の下面に、冷却部17が当接し、熱的に接続されている。第1の導体15および第2の導体16には、溝15c,16cがそれぞれ形成されている。
溝15c,16cは、第1の導体15、第2の導体16の内側の側面であって、半導体チップ群12との接合面から、外方に所定深さに至って形成された切欠きである。
溝15c,16cは断面視においていわゆるU字状を成し、開口が所定の幅を有するとともに底部が湾曲している。
溝15c,16cは第1の導体15および第2の導体16のY方向全長に亘って設けられ、例えば第1の導体15および第2の導体16を形成する際に例えば押し出し加工やプレス加工などで形成される。
溝15c,16cは、各導体15、16の、半導体チップ群12との接合領域の端縁に配置されている。すなわち、溝15c、16cの開口部の縁は、コレクタ電極板23の外周縁とエミッタ電極板24の外周縁にそれぞれ配されている。
溝15c、16c内は、はんだ充填されてなるはんだ部15d,16dが形成されている。例えば半導体チップ群12との接合における余剰のはんだが溝15c,16cに入り込むことによって、はんだ部15d,16dが形成される。はんだは、導体15、16を構成する銅合金よりも剛性が低い材料であることから、この溝15c,16cに形成されたはんだ部15d、16dは、導体15、16の変形に追従しながら、半導体チップ群12で生じた熱を伝達する経路としての役割を果たす。
本実施形態にかかるインバータモジュール4においても、上記第1実施形態と同様の効果が得られる。すなわち、導体15,16の内側面に、溝15c,16cが形成され、導体15,16よりも変形しやすい材料で充填されているため、導体15,16の変形が許容され、導体15,16の変形がIGBT13の変形に及ぼす荷重を低減し、IGBT13の変形を抑制できる。
さらに、はんだは、高い伝熱性を有するとともに、剛性が低いことから、導体15,16の変形に追従するという効果を奏しながら、溝15c、16cを中空とした場合よりも高い放熱性が確保できる。
本発明は上記実施形態に限られるものではない。例えば、図12および図13は他の実施形態にかかるインバータモジュール5を示す斜視図および平面図である。インバータモジュール5は、第1乃至第3の導体15,16,19と複数の半導体チップ群12とを交互にX方向に並列した構成であって、導体15,16,19の上下に冷却部17,18をそれぞれ配置した構成である。本実施形態においても上記第2実施形態や第3実施形態と同様の効果を奏することができる。
また、上記実施形態では、断面が矩形状に構成された溝15a,16a,19aを例示したがこれに限られるものではない。例えば、他の実施形態として図14や図15に示すように、断面がV字形状の溝15e、16e、15g,16gをそれぞれ備える構成としてもよい。
図14に示すインバータモジュール6は、導体15,16の上面に上側に開く溝15e,16eがそれぞれ形成されている。溝15e,16eは、開口側、すなわち上側の開口幅が拡大する、いわゆる楔形状の断面を有する。
図15に示すインバータモジュール7は、上側に第2の冷却部18を備えるとともに、導体15,16の外側面において上下2カ所に、溝15e,16eがそれぞれ形成されている。溝15e,16eは、開口側、すなわちX方向外側の開口幅が拡大する、いわゆる楔形状の断面を有する。これらの実施形態においても、上記実施形態と同様の効果を奏することができる。
なお、上記第4実施形態においては、はんだで充填された溝15cが半導体チップ群12の下方にのみ形成された構成を例示したが、これに限られるものではない。例えば他の実施形態として図16に示すインバータモジュール8では、導体15,16の上下に第1および第2の冷却部17,18が配置され、半導体チップ群12の上下端縁に対応する位置にそれぞれ溝15c,16cが形成されている。溝15c、16c内にははんだが充填されたはんだ部15d,16dがそれぞれ形成されている。本実施形態においても、上記実施形態と同様の効果を奏することができる。
この他、上面からZ方向に延びる溝15a,16a,19aに代えて、導体15,16,19の上端部の外側面からX方向に延びる溝を形成してもよい。あるいは、各溝の延出方向をZ方向またはX方向に対して斜めに傾斜させてもよい。また上記実施形態においては、導体の一部として、ブロック状の導体15,16,19と半導体チップ部12との間に電極板23,24を介在させたが、これに限られるものではない。例えば電極板23,24を省略してIGBTやダイオードなどの半導体チップとブロック状の導体とを直接接合させることも可能である。この場合には半導体素子と導体の接合領域は、IGBTやダイオードなどの半導体チップと導体との接合領域となる。この場合にも、上記各実施形態と同様の効果を奏する。
また、上記実施形態においては半導体素子としてIGBTを例示したが、これに限られるものではなく、他の半導体素子と導体を接合する構成においても上記各実施形態と同様の効果を奏する。
また、上記実施形態においては、エミッタ電極板24との接合面がIGBTの対向面の一部である場合について例示したが、全面に接合される場合にも適用可能である。この場合にも、所定位置に設けたスリットによって熱変形を許容することで、半導体素子への熱変形による負荷を低減することができるという上記各実施形態と同様の効果を得られる。
半導体素子や導体の数も上記に限られるものではなく、適宜変更して実施可能である。例えば半導体素子は1つであってもよい。
なお、本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
1〜8…インバータモジュール、12…半導体チップ群(半導体チップ部)、13…IGBT(スイッチング素子)、14…ダイオード、15…第1の導体、15a〜15c,15e,15g…溝、16…第2の導体、16a〜16c,16e,16g…溝、17…第1の冷却部、18…第2の冷却部、19…第3の導体、19a…溝、20…放熱器、21…絶縁部、22…ベース部、23…コレクタ電極板、24…エミッタ電極板。
Claims (10)
- 1つ以上の半導体素子を有する半導体チップ部と、
前記半導体チップ部の一方の面に接合された接合面と、この接合面と対向する外側面と、前記接合面および外側面と交差する底面および上面と、を有するブロック状の第1の導体と、
前記半導体チップ部の他方の面に接合された接合面と、この接合面と対向する外側面と、前記接合面および外側面と交差する底面および上面と、を有するブロック状の第2の導体と、
前記第1の導体の底面および前記第2の導体の底面に接合された冷却部と、を備え、
前記第1の導体および前記第2の導体の上面に、その底部が、前記接合面と交差する方向において前記導体の中心位置よりも前記半導体チップ部に近い位置であって、前記底面と交差する方向において前記導体と前記半導体素子との接合領域の前記上面側の端部よりも前記底面側に配される、溝が設けられる、パワー半導体モジュール。 - 1つ以上の半導体素子を有する半導体チップ部と、
前記半導体チップ部の一方の面に接合された接合面と、この接合面と対向する外側面と、前
記接合面および外側面と交差する底面および上面と、を有するブロック状の第1の導体と、
前記半導体チップ部の他方の面に接合された接合面と、この接合面と対向する外側面と、前
記接合面および外側面と交差する底面および上面と、を有するブロック状の第2の導体と、
前記第1の導体の底面および前記第2の導体の底面に接合された冷却部と、を備え、
前記第1の導体および前記第2の導体は、前記外側面に溝を有し、前記溝の底部は、前記導体と前記半導体素子との接合領域よりも前記底面に近い位置、および前記接合領域よりも前記上面に近い位置の少なくとも一方に配される、パワー半導体モジュール。 - 1つ以上の半導体素子を有する半導体チップ部と、
前記半導体チップ部の一方の面に接合された接合面と、この接合面と対向する外側面と、前
記接合面および外側面と交差する底面および上面と、を有するブロック状の第1の導体と、
前記半導体チップ部の他方の面に接合された接合面と、この接合面と対向する外側面と、前
記接合面および外側面と交差する底面および上面と、を有するブロック状の第2の導体と、
前記第1の導体の前記底面および第2の導体の前記底面に接合された冷却部と、を備え、
前記第1および第2の導体は、前記接合面に形成される溝を有し、前記溝の開口部は、前記導体の接合面において前記半導体チップ部の周縁の少なくとも一部に対向する位置に配される、パワー半導体モジュール。 - 1つ以上の半導体素子を有する第1の半導体チップ部と、
前記第1の半導体チップ部の一方の面に接合された接合面と、この接合面と対向する外側面と、前記接合面および外側面と交差する底面および上面と、を有するブロック状の第1の導体と、
前記第1の半導体チップ部の他方の面に接合された接合面と、この接合面と対向する外側面と、前記接合面および外側面と交差する底面および上面と、を有するブロック状の第2の導体と、
1つ以上の半導体素子を有し、前記第2の導体の外側面に接合される第2の半導体チップ部と、
前記第2の半導体チップ部に接合された接合面と、この接合面と対向する外側面と、前記接合面および外側面と交差する底面および上面と、を有するブロック状の第3の導体と、
前記第1の導体、前記第2の導体および前記第3の導体の底面に接合された冷却部と、を備え、
前記第1の導体、前記第2の導体および前記第3の導体の、前記上面、前記外側面または前記接合面の少なくともいずれかに溝が形成される、パワー半導体モジュール。 - 前記溝は、前記接合面および前記底面に交差する方向において前記導体の全長にわたって形成されるスリット状の切り欠きである、請求項1乃至4のいずれか記載のパワー半導体モジュール。
- 前記半導体素子は、インバータの1つの相の少なくとも1アームを構成し、
前記冷却部は、前記導体の前記底面に絶縁部を介して接合され、
前記半導体チップ部は、前記導体と前記半導体素子との間に介在する電極板をそれぞれ備え、
前記溝の底部は、前記底面に交差する方向において、前記半導体素子と前記電極板との接合領域の外周部よりも深い位置に至ることを特徴とする請求項1記載のパワー半導体モジュール。 - 前記溝の内部に、前記導体よりも剛性の低い材料が配されることを特徴とする請求項1乃至6のいずれか記載のパワー半導体モジュール。
- 前記第1および第2の導体の上面に接合された第2の冷却部を備える、請求項2乃至7のいずれか記載のパワー半導体モジュール。
- 前記導体は、前記半導体素子との間に配される電極板を備え、
前記接合領域は、前記半導体素子と前記電極板との接合領域である、請求項1乃至8のいずれか記載のパワー半導体モジュール。 - 前記電極板は、前記半導体素子の対向面のうちの一部に対向する接合面を有する、請求項9記載のパワー半導体モジュール。
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