JP2017048828A - ガスケット用ステンレス鋼クラッド - Google Patents

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Abstract

【課題】フランジの熱変形が生じた場合でもガスケットの面圧を低下させず、エンジン始動段階から常に優れた排気ガスのシール性を有する耐熱ガスケット用クラッドの提供。【解決手段】オーステナイト系ステンレス鋼層5aおよびフェライト系ステンレス鋼層5bを備え、加熱および冷却を含む熱履歴が付与された際に、冷却後に前記フェライト系ステンレス鋼層側に凹反りが発生する、耐熱ガスケット用クラッド5。【選択図】図5

Description

本発明は、ガスケット用ステンレス鋼クラッドに関する。
自動車および二輪車のエンジン、エキゾーストマニホールド、触媒コンバータ、EGRクーラ、ターボチャージャ等の自動車の排気系部品には、耐熱性を有するガスケットが用いられる。
図1および図2には、自動車の排気系部品の接続部に用いられるガスケットの例を示している。図1および図2に示すように、例えば、エキゾーストマニホールド10と排気管20aとの接続部30a、排気管20aと排気管20bとの接続部30bなどは、それぞれのフランジ21a、21bに形成された貫通孔に挿入したボルト40a、40bを締め付けることによって締結される。このとき、接続部30a、30bの隙間にはガスケット1a、1bが挟まれている。ガスケットには、凹凸形状の部位(以下、「ビード」という。)が形成されている。ボルト40a、40bの締め付けにより、ガスケットのビードが変形する。その結果、ビードの凸部の反発力により、接続部30a、30bからのガス漏れの防止などを達成することができる。
自動車の排気系部品の接続部には、高温での使用に耐えうるガスケットとして、特開2009−249658号公報(特許文献1)で提案されている高窒素ステンレス鋼や、JIS G 4902(耐食耐熱超合金板)に規定されるNCF625、NCF718など、Niを質量%で50%以上含む高価な材料が使用されている。また、単体の金属板ではなく、クラッド材を用いたガスケットが知られている。
クラッド材を用いたガスケットとして、特開平09−109136号公報(特許文献2)には、オーステナイト系ステンレス鋼製の基板の腐食雰囲気中に曝される部位に、フェライト系ステンレス鋼を接合した金属ガスケットが開示されている。また、実公昭62−2360号公報(特許文献3)には、オーステナイト組織層の両面にフェライト組織層を接合して、層厚さ方向にクリープ変形をさせるようにしたガスケットが開示されている。
特開2009−249658号公報 特開平09−109136号公報 実公昭62−2360号公報
自動車の排気系部品は、排気ガスの熱によって高温の熱サイクルを受けて、膨張および収縮を繰り返し、材料の回復、再結晶によりビードの反発力が低下する、いわゆる「ヘタリ」が生じることがある。ビードにヘタリが生じると、ガスケットとフランジ間の面圧が低下し排気ガスの圧力に耐え切れず完全なシールが困難となる。
本発明が対象とする技術分野の一つである自動車用耐熱ガスケットは、自動車に搭載され、その使用時間は数1000時間となるが、その間にビードのヘタリが生じ、シール性を確保できなくなる問題があった。また、使用時の到達温度は600℃以上となる。場合によって650℃以上、さらには700℃以上に至ることもある。このような高温では、フェライト系ステンレス鋼では、強度が著しく低下するため、高温強度に優れるオーステナイト系ステンレス鋼が一般的に適用されている。
図3には、前掲の図1において、エキゾーストマニホールド10と排気管20aとの接続部30a周辺を部分的に拡大した図を示す。図3(a)に示すように、接続部30aの隙間にはガスケット1aが挟まれており、ボルト40aの締め付けにより、ガスケット1aのビードが変形するので、ガスケット1aとエキゾーストマニホールド10との接触面には所定の面圧が負荷された状態で固定されている。
しかし、図3(b)に示すように、高温で長時間使用されると、ビード1aにヘタリが生じる。その結果、ガスケット1aとエキゾーストマニホールド10との間の面圧が低下し、排気管20a内を流通する排気ガスの内圧(図中白抜き矢印)に耐え切れなくなる。そして、ガスケット1aとエキゾーストマニホールド10との間に隙間が生じ、シール性を確保できなくなる。
一方、配管20a、20bの接続部に形成されたフランジ21a、21bなどは、高温で長時間の熱サイクルを受けると、熱変形して、ガスケットとの間に隙間を生じるためにシール性を確保できなくなる問題もある。
図4には、前掲の図1において、エキゾーストマニホールド10と排気管20aとの接続部30a周辺を部分的に拡大した図を示す。図4(a)に示すように、初期状態においては、ガスケット1aとエキゾーストマニホールド10との接触面には所定の面圧が負荷された状態で固定されている。しかし、高温の熱サイクルを受けると、フランジ21aが熱変形し、エキゾーストマニホールド10とフランジ21aとの隙間が広がり(図中白抜き矢印参照)、排気管20a内を流通する排気ガスの内圧(図中白抜き矢印)に耐え切れなくなる。そして、ガスケット1aとエキゾーストマニホールド10との間に隙間が生じ、シール性を確保できなくなる。フランジ21aの熱変形が大きくなると、エンジン停止時にガスケット1aとエキゾーストマニホールド10との間に隙間が生じることもある。この問題は、ビード1aにヘタリが生じていない場合でも生じる。
これらの問題は、燃焼効率向上を目的とする燃焼ガスの高温化、エンジンの小型化、同エンジンでの高出力化を目的とする給排気システムの活用により増加する傾向にある。特に、図4で説明したフランジの熱変形の問題は、冷却機能を有するエンジンと他の製品または配管との接合部で顕在化する状況にある。また、自動車の高速走行での燃焼ガス温度上昇でも顕在化する。なお、自動車の使用時間は積算にて数1000時間、その際のエンジン稼動停止も数1000回に及び、高速走行の回数も数100回程度と推定される。
単体の金属板では、特許文献1に開示されるような材料を用いてもビードのヘタリを避けられない。特許文献2の技術は、主として応力腐食割れの防止を目的とするものであり、ビードのヘタリについて検討されていない。特許文献3では、ガスケットにビードを形成することについて記載されていない。また、ガスケット厚さの垂直方向における高温時の熱膨張を抑制して、ガスケット全体の厚さを初期寸法より増大させるものであり、ビードのヘタリについて検討されていない。
上記のいずれの技術においても、フランジの熱変形が生じた場合にガスケットの面圧の低下を防止する方法について考慮されていない。
本発明は、上記の従来技術の問題を解決するためになされたものであり、フランジの熱変形が生じた場合でもガスケットの面圧を低下させず、エンジン始動段階から常に優れたシール性が得られるガスケット用ステンレス鋼クラッドを提供することを目的としている。
本発明者らは、フェライト系ステンレス鋼とオーステナイト系ステンレス鋼のクラッド材をガスケットに用いて、そのバイメタル効果の活用によりシール性の低下を効果的に防止し、エンジン始動段階から常に優れたシール性が得られる技術について検討し、下記の知見を得た。
(a)オーステナイト系ステンレス鋼は、フェライト系ステンレス鋼に比べて、高温での強度に優れ、熱膨張が大きい特性がある。また、高価かつ稀少金属に分類されるNiを必要不可欠な元素として一般的に含有する。
(b)フェライト系ステンレス鋼は、600℃以上の高温域での強度がオーステナイト系ステンレス鋼に比べて大きく低下する傾向がある。ただし、高価なNiを一般に含有せず、比較的安価である。
(c)耐熱ガスケットは、エンジンの始動および停止に際して、加熱および冷却が繰り返される。このような熱履歴を、オーステナイト系ステンレス鋼層とフェライト系ステンレス鋼層を備えるクラッド材に付与すると、バイメタル効果により、フェライト系ステンレス鋼層側が凹むように反る、凹反りが発生する。クラッド材の構成を種々調整すれば、この反りを冷却後にも残存させることができる。
(d)このようなクラッド材を用いて、上記の凹反りがビードの立ち上がり方向に一致するようにガスケットを製造すれば、エンジン作動時の加熱でビードが立ち上がり方向に反り(つまり、高さが増加し)、その反りは、エンジンが停止され、冷却された後も残存するものとなる。その積み重ねにより、ビードの高さが増加していくので、フランジの熱変形に追従し、エンジン始動段階から常に優れたシール性が得られる。
(e)コスト、資源面では、高価かつ稀少金属に分類されるNiの使用量を抑制すれば、自動車や二輪車の燃費改善による環境問題に対応することができる。
本発明者らは、上記の着想に基づき更に詳細に研究した結果、本発明を完成させた。
本発明は、下記のガスケット用ステンレス鋼クラッドを要旨とする。
(A)耐熱ガスケットに用いられるクラッドであって、オーステナイト系ステンレス鋼層およびフェライト系ステンレス鋼層を備え、加熱および冷却を含む熱履歴が付与された際に、冷却後に前記フェライト系ステンレス鋼層側に凹反りが発生する、耐熱ガスケット用クラッド。
(B)前記オーステナイト系ステンレス鋼層および前記フェライト系ステンレス鋼層が、下記(1)式の関係を満たす、上記(B)の耐熱ガスケット用クラッド。
α・σαt≧Tγ・σγt … (1)
ただし、上記(1)式中の各記号の意味は下記の通りである。
α:フェライト系ステンレス鋼層の板厚
σαt:耐熱ガスケットの使用温度でのフェライト系ステンレス鋼層の0.2%耐力
γ:オーステナイト系ステンレス鋼層の板厚
σγt:耐熱ガスケットの使用温度でのオーステナイト系ステンレス鋼層の0.2%耐力
(C)前記加熱が、600℃以上への加熱であり、前記冷却が、室温への冷却である、上記(A)または(B)の耐熱ガスケット用クラッド。
(D)加熱および冷却を繰り返す熱履歴が付与された際に、前記フェライト系ステンレス鋼層側に凹反りが発生する、上記(A)〜(C)のいずれかの耐熱ガスケット用クラッド。
(E)加熱および冷却を繰り返す熱履歴が付与された際に、10回目の冷却後に反りが0.1mm以上増加する、上記(A)〜(D)のいずれかの耐熱ガスケット用クラッド。
本発明によれば、フランジの熱変形が生じた場合でもガスケットの面圧を低下させず、エンジン始動段階から常に優れたシール性を得ることができる。
自動車の排気系部品の接続部に用いられるガスケットの例を示す部分断面図。 自動車の排気系部品の接続部に用いられるガスケットの例を示す部分分解図。 ガスケットの種々の態様を示す部分断面図。(a)は、内圧が付与されていない態様を示し、(b)は、内圧が付与された場合に、シール性を確保できない態様を示し、(c)は、内圧が付与された場合でも、シール性を確保している態様を示す。 ガスケットの種々の態様を示す部分断面図。(a)は初期の状態を示し、(b)は高温で長時間の熱サイクルを受けた後の状態を示す。 本発明に係るクラッドの例を示す断面図。 本発明に係るクラッドを用いたガスケットの例を示す断面図。 反り試験片の態様を示す図である。 シール性試験材の態様を示す図である。(a)は、平面態様を示し、(b)は、(a)におけるA−B断面での断面態様を示す。
以下、図を用いて、本発明の実施形態について説明する。
図5に示すように、本実施形態の耐熱ガスケット用クラッド5は、オーステナイト系ステンレス鋼層5aおよびフェライト系ステンレス鋼層5bを備える耐熱ガスケットに用いられるクラッドに関するものである。耐熱ガスケット用クラッド5は、加熱および冷却を含む熱履歴が付与された際に、冷却後にフェライト系ステンレス鋼層5b側が凹むように反る、凹反りが発生するものである。
次に、本実施形態の耐熱ガスケット用クラッド5を用いて製造されるガスケットの例について説明する。
図4に示すように、ガスケット1は、例えば、オーステナイト系ステンレス鋼層5aおよびフェライト系ステンレス鋼層5bを備えるクラッド5からなる平板状の基体6と、基体6に設けられた貫通孔7と、貫通孔7を囲繞する位置に基体6の厚さ方向の一方に立ち上げ形成されたビード8とを備える。貫通孔7は、流体が導通するためのものである。また、本実施形態においては、通常のガスケットと同様に、締結具を挿通するための挿通孔(図示省略)を備えている。
そして、クラッド材5は、ビード8を立ち上げ形成した面8a側にフェライト系ステンレス鋼層5bを備える。ここで、高温時には、オーステナイト系ステンレス鋼層5aの膨張が大きく、フェライト系ステンレス鋼層5bの膨張が小さいため、このクラッド材5を用いて製造されたガスケット1のビード8は、フェライト系ステンレス鋼層5a側(ビードを立ち上げ形成した面8a側)に反ることになる。また、フェライト系ステンレス鋼層5bは、エンジン作動時の温度(600℃以上の高温域)において、強度がオーステナイト系ステンレス鋼層5aに比べて大きく低下する傾向がある。このため、エンジンを停止し、ガスケットの温度が室温に低下した場合であっても、ビード8の反りの一部が残存することになる。
その結果、高温で長時間使用され、冷却された後には、前記フェライト系ステンレス鋼層5b側に凹反りを発生させることができる。このため、ビード8を立ち上げ形成した面8a側にフェライト系ステンレス鋼層5bを備える構成とすれば、ビード8を初期状態よりも反らせる方向、つまり、ビード8の立ち上げ方向に反らせることができ、すなわち、ビード8の高さが増すことになる。このため、室温においても、ガスケット1aとエキゾーストマニホールド10との間の面圧を維持することができる。これにより、エンジン始動段階においても、また、エンジン作動中も、ガスケット1aが排気管20a内を流通する排気ガスの内圧(図中白抜き矢印)に耐えることができ、シール性を常に優れた状態に維持することができる。
ここで、上記の加熱とは、エンジン作動時の排気ガスによる加熱であり、具体的には、前記耐熱ガスケットの使用温度への加熱である。前記耐熱ガスケットの使用温度とは、600℃以上である。または650℃以上、更には700℃以上に至る場合もある。また、上記の冷却とは、エンジン停止後の冷却であり、具体的には、室温への冷却である。加熱および冷却の繰り返し回数については制約がないが、特に、10回繰り返した後のフェライト系ステンレス鋼層5b側への凹反りが、初期状態よりも大きい構成のクラッドが好ましい。具体的には、実施例に示す試験条件において、10回目の冷却後に反りが初期状態よりも0.1mm以上増加する構成のクラッドが好ましい。さらに、100回繰り返した後のフェライト系ステンレス鋼層5b側への凹反りが、10回繰り返した後のフェライト系ステンレス鋼層5b側への凹反りよりも大きい構成のクラッドが好ましい。
なお、上記は、エキゾーストマニホールド10と排気管20aとの接続部30aに挟まれるガスケット1aを例にして説明しているが、このような例に限らない。排気管20aと排気管20bとの接続部30bに挟まれるガスケット1bなど、高温で使用される部位に用いられるガスケットであれば、上記と同様の効果が得られる。また、本発明によれば、仮にフランジが熱変形をした場合(図4(b)参照)であっても、その形状を追従することが可能であるので、エンジン始動段階から常に優れたシール性が得られる。
ただし、オーステナイト系ステンレス鋼は、より熱膨張率が高いものが望ましく、また、フェライト系ステンレス鋼は、熱膨張率が低いものが望ましい。オーステナイト系ステンレス鋼とフェライト系ステンレス鋼の化学組成は、特定の化学組成に限定されない。オーステナイト系ステンレス鋼としては、たとえば、SUS301、SUS301L、SUS304、SUS304LN、SUS316L、SUS310S、SUS201などが挙げられる。また、フェライト系ステンレス鋼としては、たとえば、SUS409L、SUS410L、SUS430、SUS444,SUS436J1L,SUS436L、SUS430JILなどが挙げられる。
ここで、加熱および冷却を含む熱履歴が付与された際に、冷却後に前記フェライト系ステンレス鋼層側に凹反りが発生する構成であれば、クラッドの厚さ、オーステナイト系ステンレス鋼層およびフェライト系ステンレス鋼層の厚さのバランスなどには、制約がない。
しかし、前記オーステナイト系ステンレス鋼層および前記フェライト系ステンレス鋼層は、下記(1)式の関係を満たすことが好ましい。この関係を満たす場合には、加熱および冷却を含む熱履歴が付与された際に、冷却後に前記フェライト系ステンレス鋼層側に凹反りが発生する。
α・σαt≧Tγ・σγt … (1)
ただし、上記(1)式中の各記号の意味は下記の通りである。
α:フェライト系ステンレス鋼層の板厚
σαt:耐熱ガスケットの使用温度でのフェライト系ステンレス鋼層の0.2%耐力
γ:オーステナイト系ステンレス鋼層の板厚
σγt:耐熱ガスケットの使用温度でのオーステナイト系ステンレス鋼層の0.2%耐力
なお、全厚さに対するオーステナイト系ステンレス鋼層5aの厚さの割合は、大きすぎても、小さすぎても、本発明の前提となる加熱での熱膨張差による反りを発生させることが困難となる。他方、本発明では、室温へ冷却後にも反りを残存させるため、高価なオーステナイト系ステンレス鋼の割合を少なく、変形を分担させる。そのため、全厚さに対するオーステナイト系ステンレス鋼層5aの厚さの割合は10〜50%とするのがよい。好ましい上限は45%であり、より好ましいのは40%である。
ここでは、フェライト系ステンレス鋼層5bとオーステナイト系ステンレス鋼層5aを直接重ねたクラッドで説明したが、両鋼のクラッド化が困難な場合は、Ni箔などのインサート材を用いて両鋼を接合しても問題ない。
製造コストの観点からは、二層クラッドが望ましいが、フェライト系ステンレス鋼、オーステナイト系ステンレス鋼、該オーステナイト系ステンレス鋼とは異なるオーステナイト系ステンレス鋼の三層のクラッドなどでもよい。ただし、三層以上のクラッドであっても、オーステナイト系ステンレス鋼の板厚割合は、上記の範囲とするのがよい。逆に、フェライト系ステンレス鋼を異なる材質で2層とし、オーステナイト系ステンレス鋼を1相とするクラッドでも問題ないが、この場合においてもオーステナイト系ステンレス鋼の板厚割合は、上記の範囲とするのがよい。
クラッド材5の全厚さが小さい場合であっても、高温時にフェライト系ステンレス鋼層側(ビードを立ち上げ形成した面側)に反らせることが可能ではある。しかし、選択されるクラッド材の材料の組み合わせによっては、高温時の反りが不十分で、エキゾーストマニホールドまたはフランジ(以下、「フランジ等」という。)との面圧が小さくなり、十分なシール性を確保することが困難となる場合がある。一方、全厚さが大きすぎる場合には、選択されるクラッド材の材料の組み合わせによっては、高温時にフェライト系ステンレス鋼層側(ビードを立ち上げ形成した面側)に反らせるにくい場合があり、十分なシール性を確保し難い場合がある。よって、クラッド材5の全厚さは、0.1〜0.5mmとすることが好ましい。
ビードの形状については、貫通孔を囲繞する位置に基体の厚さ方向の一方に立ち上げ形成されたものであれば、特に制約がない。すなわち、平板状の基体を部分的に盛り上がらせて形成したフルビード、台形ビードなどのビードであってもよいし、貫通孔の内周端から立ち上げ形成されたハーフビードであってもよい。ただし、本発明による効果が顕著となるのは、ハーフビードを備えるガスケットの場合である。
<クラッド材の製造方法>
本実施の態様におけるクラッド材の製造方法としては、例えば、拡散接合、熱間圧延接合、温間圧延接合、冷間圧延接合などの公知の方法を採用することが可能である。
拡散接合によってクラッド材を製造する場合には、例えば、一般的な方法(溶製後、熱間および冷間圧延と焼鈍との繰り返し)で製造した所定厚さのオーステナイト、フェライト系ステンレス鋼薄板を素材とし、所定の条件で保持し、クラッドを製造することができる。温度は800〜1200℃がよい。保持時間は1〜10hがよい。圧力は、1〜10MPaでよい。また、雰囲気は、Arガスなどの非酸化性が巣雰囲気または真空がよい。
熱間圧延接合によってクラッド材を製造する場合には、例えば、溶解後、熱間圧延した所定厚さのオーステナイト鋼厚板およびフェライト系ステンレス鋼厚板を素材とし、再結晶温度以上の高温で熱間圧延を実施し、接合して、クラッドを製造することができる。温度は800〜1200℃がよい。圧延率は、50%以上がよい。必要に応じて、次いで、高温の拡散熱処理を実施してもよい。その後、熱間圧延および冷間圧延と焼鈍とを繰り返し(一般に最終加工は冷間圧延)、目的とする板厚、構成比のクラッドを製造してもよい。
温間または冷間での圧延による接合によってクラッド材を製造する場合には、例えば、一般的な方法(溶製後、熱間および冷間圧延と焼鈍との繰り返し)で製造した所定厚さのオーステナイト、フェライト系ステンレス鋼薄板を素材とし、再結晶温度未満の温間または冷間での圧延を実施し、接合して、クラッドを製造することができる。この場合、次いで、高温の拡散熱処理を実施するのが一般的である。その後、熱間圧延および冷間圧延と焼鈍とを繰り返し(一般に最終加工は冷間圧延)、クラッドを製造してもよい。
<ガスケットの製造方法>
その他、所定の厚さに調整したオーステナイト系ステンレス鋼板およびフェライト系ステンレス鋼板のそれぞれにビート加工を施した後、これらの鋼板を重ね合わせて、周りを溶接することで、所定形状のビードを有するガスケットを製造することができる。また、クラッド材にスポット溶接(抵抗溶接)を行って、部分的に反らせ、所定形状のビードを有するガスケットを製造することができる。特に、ビートの頂点となる部分のみをスポット溶接する方法でも、クラッド板を反らせることができる。
本実施の形態のガスケットは、上記のクラッド材を使用して、プレス成形などの手法で製造することができる。具体的には、ブランキング(打抜き)、プレス成形、複数枚の組み上げによって所定形状のビードを有するガスケットを製造することができる。また、所定の厚さに調整したオーステナイト系ステンレス鋼板およびフェライト系ステンレス鋼板のそれぞれにビート加工を施した後、これらの鋼板を重ね合わせて、周りを溶接することで、所定形状のビードを有するガスケットを製造することができる。また、クラッド材にスポット溶接(抵抗溶接)を行って、部分的に反らせ、所定形状のビードを有するガスケットを製造することができる。特に、ビートの頂点となる部分のみをスポット溶接する方法でも、クラッド板を反らせることができる。
このとき、高温でフランジ等と面圧を高めるようにオーステナイト系ステンレス鋼の層とフェライト系ステンレス鋼の層を配置する。即ち、ガスケットのビードがフェライト系ステンレス鋼側に反ることで、フランジ等との面圧を高めることができる。1枚のガスケットをもとにして、本発明ガスケットを説明したが、2枚積層、3枚積層ガスケットなどの場合も、フランジ等との面圧を高めるように、オーステナイト系ステンレス鋼、フェライト系ステンレス鋼の位置を決めることで、同様の効果が発現する。
表1の化学組成を有するオーステナイト系ステンレス鋼板、フェライト系ステンレス鋼板を、一般的な熱間圧延、冷間圧延と焼鈍の繰り返しにより所定の板厚として製造した。
脱脂、洗浄した後、それらの内、異なる2枚を重ね、圧力1.4MPaを付与したまま、1050℃×3h保持、非酸化性雰囲気中で拡散接合し、形状矯正することでクラッド材を製造した。同材から、各種試験片を採取し、加熱および冷却を所定回数行った後、下記の反り試験およびシール性試験を行った。その結果を表2に示す。
<反り試験>
上記のクラッド材を幅5mm×長さ20mmの短冊に切断した後、プレス成形によって図7に示す断面形状とする反り試験片を得た。反り試験片は、具体的には、先端〜2mmの間に第1平行部、先端から2mm〜4mmの間にテーパ部、先端から4mm〜他端の間に第2平行部を有し、第1平行部と第2平行部との段差を1mmとした。この段差は、ガスケットのビード高さを想定したものである。
反り試験片を、700℃に加熱して5分保持した後、室温まで冷却する熱履歴を10回繰り返した後の段差(高さ)と、100回繰り返した後の段差(高さ)を測定した。
<シール性試験>
上記のクラッド材を、幅100mm×長さ100mmに切断した後、中央に直径70mmの貫通孔を設け、プレス成形によって図8に示す断面形状のビードを形成し、シール性試験材を得た。シール性試験材は、図8(b)に示すように、具体的には、内周端から外方に2mmまでの間に第1リング状平行部、内周端から外方に2mm〜4mmの間に円錐面部、内周端から外方に4mm〜外周端の間に第2リング状平行部を有し、第1リング状平行部と第2リング状平行部との段差(ビード高さ)を1mmとした。
シール性試験材を、700℃に加熱して5分保持した後、室温まで冷却する熱履歴を100回繰り返した後に、所定圧力のガスのシール性を評価し、○(良好)、×(劣る)で評価した。
表2に示すように、本発明例1〜27は、加熱および冷却を10回および100回繰り返した後のビードの反りが、初期の状態より大きくなっており、加熱および冷却を100回繰り返した後のシール性が良好であった。
他方、比較例28〜37は、加熱および冷却を100回繰り返した後のシール性が劣っていた。なお、比較例28はフェライト系ステンレス鋼同士、比較例29はオーステナイト系ステンレス鋼同士のクラッドであり、加熱、冷却にてビードがつぶれ、ガス漏れが発生した。比較例30〜37は、少なくとも100回の繰り返し加熱、冷却後のビード高さが減少し、主に冷却過程において室温近傍でシール性に劣る結果となった。
本発明によれば、フランジの熱変形が生じた場合でもガスケットの面圧を低下させず、エンジン始動段階から常に優れたシール性を得ることができる。
1 ガスケット
1a、1b ガスケット
2a、2b フランジ
5 耐熱ガスケット用クラッド
5a オーステナイト系ステンレス鋼層
5a フェライト系ステンレス鋼層
6 基体
7 貫通孔
8 ビード
8a ビードを立ち上げ形成した面
10 エキゾーストマニホールド
20a、20b 排気管
21a、21b フランジ
30a、30b 接続部
40a、40b ボルト

Claims (5)

  1. 耐熱ガスケットに用いられるクラッドであって、
    オーステナイト系ステンレス鋼層およびフェライト系ステンレス鋼層を備え、
    加熱および冷却を含む熱履歴が付与された際に、冷却後に前記フェライト系ステンレス鋼層側に凹反りが発生する、耐熱ガスケット用クラッド。
  2. 前記オーステナイト系ステンレス鋼層および前記フェライト系ステンレス鋼層が、
    下記(1)式の関係を満たす、請求項1に記載の耐熱ガスケット用クラッド。
    α・σαt≧Tγ・σγt … (1)
    ただし、上記(1)式中の各記号の意味は下記の通りである。
    α:フェライト系ステンレス鋼層の板厚
    σαt:耐熱ガスケットの使用温度でのフェライト系ステンレス鋼層の0.2%耐力
    γ:オーステナイト系ステンレス鋼層の板厚
    σγt:耐熱ガスケットの使用温度でのオーステナイト系ステンレス鋼層の0.2%耐力
  3. 前記加熱が、600℃以上への加熱であり、
    前記冷却が、室温への冷却である、請求項1または2に記載の耐熱ガスケット用クラッド。
  4. 加熱および冷却を繰り返す熱履歴が付与された際に、前記フェライト系ステンレス鋼層側に凹反りが発生する、請求項1から3までのいずれかに記載の耐熱ガスケット用クラッド。
  5. 加熱および冷却を繰り返す熱履歴が付与された際に、10回目の冷却後に反りが0.1mm以上増加する、請求項1から4までのいずれかに記載の耐熱ガスケット用クラッド。

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