JP2017045596A - 二次電池負極用炭素材、二次電池負極用活物質、二次電池負極および二次電池 - Google Patents

二次電池負極用炭素材、二次電池負極用活物質、二次電池負極および二次電池 Download PDF

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Abstract

【課題】二次電池の高温環境下におけるサイクル特性を改善しうる二次電池負極用炭素材を提供し、また上記二次電池負極用炭素材を含んで生成される二次電池負極用活物質、当該二次電池負極用活物質を用いて構成される二次電池負極、および当該二次電池負極を用いる二次電池を提供する。【解決手段】二次電池負極用炭素材は、X線光電子分光分析による化学結合状態分布において130.7eVのピーク高さP1と、134.7eVのピーク高さP2との比率[P1/P2]が、55℃の温度環境下で充放電試験を100回繰り返す高温寿命試験前で1以上であるとともに、高温寿命試験後で0.3以上である。【選択図】図2

Description

本発明は、二次電池負極用炭素材、二次電池負極用活物質、二次電池負極および二次電池に関する。
近年、携帯電話などの小型電気製品から自動車など大型機械製品まで種々の技術分野で二次電池の利用が検討されている。二次電池としては、電解質として有機電解質等を使用する非水電解液二次電池、または固体電解質を使用する固体電池など種々のタイプが検討されている。いずれのタイプの二次電池においても、二次電池の電荷担体となる化学種(たとえばリチウムイオンなど)が、正極の電極活物質層と負極の電極活物質層とを移動することによって充電および放電が繰り返される。
かかる二次電池において、負極に設けられる電極活物質層には、電極活物質として炭素材が含有されていることが一般的である。上記電極活物質層は、層構造である炭素材の層間に、化学種を吸蔵し、かつ当該層間から吸蔵された上記化学種を放出することにより、二次電池における充電および放電を可能とする。
負極の電池性能を改善するために、上記炭素材にリンを含有させることが提案されている。
たとえば、特許文献1には、炭素、リンおよび酸素を主成分とする負極材料の発明(以下、従来技術1ともいう)が開示されている。従来技術1は、P核−固体NMRスペクトルにおいて特定の範囲にピークを有するとともに、X線光電子分光分析において、リン原子2p軌道スペクトルが135eV以下のピークを有していることが特定されている。より具体的には、従来技術1は、その内部組成が(CO)P(=O)(OH)であり、表面組成が(CO)P(=O)(OH)とさらに還元された(CP(=O)(OH)、(CP=O、(CPからなる特殊な化合物であることが特許文献1段落[0111]に記載されている。同文献同段落には、かかる特殊な構造を有する従来技術1は、リチウムドープ量を増加させるという効果を発揮すると記載されている。
また、特許文献2には、負極に用いられる炭素材として、リンと酸素と不可逆不純物とを含んだ非晶質炭素(以下、従来技術2ともいう)が開示されている。従来技術2は、石油生コークスにリン含有化合物を添加したものを500℃から1500℃にて加熱することにより生成された非晶質炭素である。特許文献2において、リンは負の電荷を帯び易い材料であるため、従来技術2にリンが含有されていることにより、ドナーサイトがコークス内に多数形成され、これがリチウムイオンの吸着サイトとなることが推察されている。
即ち、特許文献1および2はいずれも、二次電池負極用炭素材がリンを含有することによりリチウムイオンの充電容量が増大する効果が発揮されることが記載されている。
特開平5−74457号公報 特開平10−241690号公報
ところで、二次電池は、充電容量の増大と並び、サイクル特性を向上することが大きな課題の一つとなっている。特に近年は、二次電池の用途範囲が拡充し、常温使用だけではなく50℃以上の高温環境下において電池性能を保持しつつ繰り返し使用することが求められるようになってきている。
ところが、この高温環境下における繰り返し使用を可能とするか否かという検討は、上述する特許文献1および2のいずれにおいてもなされていない。
本発明者がリンを含有する二次電池負極用炭素材を詳細に検討したところ、かかる二次電池負極用炭素材を用いた負極を使用し、55℃の高温環境下において充放電を繰り返すことにより、放電容量が低下する傾向にあることがわかった。この結果、高温環境下におけるサイクル特性が低下する傾向にあることがわかった。即ち、リンを含有する二次電池負極用炭素材は、高温環境下における電池性能の維持に関し、未だ改善の余地があることがわかった。
本発明は、上記課題に鑑みなされたものである。即ち、本発明は、二次電池の高温環境下におけるサイクル特性を改善しうる二次電池負極用炭素材を提供する。
また、本発明は、上記二次電池負極用炭素材を含んで生成される二次電池負極用活物質、当該二次電池負極用活物質を用いて構成される二次電池負極、および当該二次電池負極を用いる二次電池を提供する。
本発明の二次電池負極用炭素材は、リンを含む二次電池負極用炭素材であって、X線光電子分光分析による化学結合状態分布において130.7eVのピーク高さP1と、134.7eVのピーク高さP2との比率[P1/P2]が、55℃の温度環境下で充放電試験を100回繰り返す高温寿命試験前で1以上であるとともに、上記高温寿命試験後で0.3以上であることを特徴とする。
また本発明の二次電池負極用活物質は、本発明の二次電池負極用炭素材を含有することを特徴とする。
また本発明の二次電池負極は、本発明の二次電池負極用活物質を含む二次電池負極用活物質層と、上記二次電池負極用活物質層が少なくとも表面の一部に配置された負極用集電体と、を有することを特徴とする。
また本発明の二次電池は、本発明の二次電池負極と、電解質と、二次電池正極と、を備えることを特徴とする。
本発明の炭素材は、組成(CPを示す130.7eVのピーク高さP1と、組成(CO)POを示す134.7eVのピーク高さP2との比率[P1/P2]が、高温寿命試験の前後で所定の範囲に特定されている。かかる構成を備える本発明の炭素材は、従来のリンを含む炭素材に比べて高温環境下におけるサイクル特性が改善される。
また、本発明の炭素材を含有する負極用活物質は、これを備える負極の高温環境下でのサイクル特性を向上させ得る。
そのため、本発明の負極は、高温環境下でのサイクル特性に優れ、当該負極を備える本発明の二次電池は、高温環境下における繰り返し使用に耐えうる優れた電池性能を示す。
本発明の炭素材を用いて製造された負極を備えるリチウムイオン二次電池の一例を示す模式図である。 アルゴンガスクラスタ法を用いたX線光電子分光分析による実施例1のリン原子2p軌道スペクトルである。
以下に本発明の二次電池負極用炭素材(以下、単に炭素材ともいう)について説明する。
本発明の炭素材は、リンを含む二次電池負極用炭素材であり、X線光電子分光分析(以下、XPSともいう)による化学結合状態分布において130.7eVのピーク高さP1と、134.7eVのピーク高さP2との比率[P1/P2]が、以下の範囲であることを特徴とする。
本発明において、比率[P1/P2]は、55℃の温度環境下で充放電試験を100回繰り返す高温寿命試験前で1以上であるとともに、高温寿命試験後で0.3以上である。
本発明において、ピーク高さとは、XPSにおいて得られた化学結合状態分布を示すチャートにおいて、特定の結合エネルギ(eV)における光電子の強度(Intensity(Counts/sec))から、当該チャートの波形処理により得られたベースラインの値(Intensity(Counts/sec))を差し引いた値を意味する。ここで特定の結合エネルギ(eV)とは、130.7eVおよび134.7eVである。所定の化学結合に関する結合エネルギ(eV)は、測定環境によって若干の誤差が生じる場合もあり得る。本発明に関し、XPSの化学結合状態分布において、130.7eVとは、(CPの結合エネルギを意味し、134.7eVとは、(CO)POの結合エネルギを意味する。尚、本発明に関する結合エネルギは、炭素原子1s軌道スペクトルの炭素と炭素との結合エネルギ284.6eVとしたときの、リン原子2p軌道スペクトルの値を示すものである。
本発明の炭素材に含まれる(CPは、炭素材の製造時に、原料である炭素とリンとが結合してリン化合物を形成し、これが還元されたことで生成された化合物であると推察される。(CPは、炭素材製造後、高温寿命試験前の炭素材において有意に存在することから、望ましく製造された炭素材の基本構造の一部をなす化合物の1つであるものと推察される。
一方、本発明者の検討によれば、(CO)POは、炭素材製造後、高温寿命試験前においては、炭素材に実質的に含まれないか、あるいは少量含まれ、高温寿命試験後において、存在比率が高くなることがわかった。このことから、高温寿命試験後に検出される(CO)POは、主として、炭素材を使用した二次電池負極の使用により経時的に生成される副生物であると推察された。
本発明の炭素材は、高温寿命試験前のピーク高さの比率[P1/P2]が1以上であることから、高温寿命試験前において、炭素材の基本構造をなす(CPが、(CO)POと同等またはそれ以上に含まれる。また本発明の炭素材は、高温寿命試験後のピーク高さの比率[P1/P2]が0.3以上であることから、高温環境下における使用によって副生された(CO)POに対し、(CPが有意に残存する。
かかる特徴を有する本発明の炭素材は、リンが含まれることにより、充電容量が高く、しかも55℃という高温環境下において繰り返し使用した場合であっても、高いサイクル特性を示す。本発明においてサイクル特性とは、広くは電池性能の維持を意味し、具体的には、たとえば、所定条件下における繰り返し使用の前後において充電容量または放電容量の値が高い割合で維持されていることを意味する。
本発明の炭素材を用いた二次電池用負極を搭載する二次電池によれば、高温寿命試験前の放電容量に対する高温寿命試験後の放電容量を85%以上の高い比率で維持可能であり、サイクル特性に優れる。ただし、上述する放電容量の維持率の値は、本発明の傾向を表すものであって何ら本発明を限定するものではない。
本発明の炭素材によりもたらされる高い充電容量および高温環境下における良好なサイクル特性は、以下の理由によるものと本発明者は推察する。即ち、炭素材に有意な量のリンが含有されることにより、充電容量が増大し、その結果、高い充放電効率を発揮可能である。加えて本発明の炭素材は、高温寿命試験の実施により、副生物である(CO)POが増大するものの、炭素材の基本構造の一部をなす(CPが有意に残存する。このことから、高温寿命試験を経ても、炭素材の炭素骨格が望ましい状態で維持されていると推察される。その結果、本発明の炭素材はサイクル特性に優れ、たとえば、高温寿命試験前の放電容量に対する高温寿命試験後の放電容量の維持率が高い傾向にあるものと思われる。
高温環境下における使用によっても高い充放電効率を維持するという観点からは、上記比率[P1/P2]が、高温寿命試験前で2以上であることがより好ましく、3以上であることがさらに好ましい。また比率[P1/P2]は、高温寿命試験後で0.5以上であることがより好ましく、0.7以上であることがさらに好ましい。
本発明において、高温寿命試験前の比率[P1/P2]の上限は特に限定されない。高温寿命試験前においてP2が実質的に含まれない炭素材も本発明は含むことから、高温寿命試験前の比率[P1/P2]の上限は無限大である場合を含む(即ちP2=0の場合を含む)。
また、本発明において、高温寿命試験後の比率[P1/P2]の上限は特に限定されない。本発明の炭素材は、高温寿命試験後のピーク高さP2よりも高温寿命試験後のピーク高さP1の方が高い場合も含み、高温寿命試験後の比率[P1/P2]は、たとえば5以下、または3以下、さらには1以下であってもよい。
また、本発明の炭素材に関し、高温寿命試験前後におけるピーク高さP1の変化に着眼した場合に、高温寿命試験前のピーク高さP1であるP1(I)と、高温寿命試験後のピーク高さP1であるP1(II)と、の比率[P1(II)/P1(I)]が0.9以上であることが好ましい。
かかる態様の炭素材は、高温寿命試験後において、副生物である(CO)POが増大するにもかかわらず炭素材の基本構造の一部をなす(CPが顕著な減少を示さない。これにより、高温環境下において使用された場合でも、良好に炭素材の基本構造が維持され、もって良好なサイクル特性が発揮され得る。
また本発明の炭素材は、好ましくは、55℃の温度環境下で実施する充放電試験の50サイクル目で、上述する比率[P1/P2]が1以上である。
かかる態様では、高温寿命試験の初期段階において、(CPが速やかに分解されることを回避する。そのため、かかる態様の炭素材は、高温環境下におかれた場合であっても、急激な充放電効率の低下を生じ難い。
本発明に関し、X線光電子分光分析は、公知のX線光電子分光分析装置を用いて実施することができる。具体的な例としては、たとえば株式会社島津製作所製X線光電子分光分析装置ESCA−3400を用いることができるが、これに限定されない。また、本発明に関し、XPSの化学結合状態分布とは、分析に供される炭素材を構成する元素の化学結合状態を分析した分布を意味し、所謂、ナロースキャン分析により示される分布を意味する。
本発明における高温寿命試験は、以下のとおり実施することができる。
即ち、高温寿命試験は、二次電池負極用炭素材を含有する二次電池負極と、二次電池正極と、電解質を溶解させてなる電解液と、セパレータと、を備えるリチウムイオン二次電池を用いる。当該リチウムイオン二次電池を用い、下記に示す所定の充放電サイクルを5サイクル実施するエージング処理を行う。そして、上記エージング処理後のリチウムイオン二次電池を用い、55℃の温度環境下、1Cの定電流で4.2Vまで充電し、その後、4.2Vの定電圧で電流値が0.02Cに減衰するまで充電した後、30分間55℃の温度環境で保持し、次いで、1Cの定電流で2.5Vまで放電する(当該放電時の放電容量を測定し放電容量Iとする)。その後、30分間55℃の温度環境で保持する充放電サイクルを実施してこれを1サイクルとする。続いて、上記充放電サイクルをさらに99サイクル実施して、合計100サイクルの充放電サイクルを実施する(100サイクル目の放電時における放電容量を測定して放電容量IIとする)。
上記高温寿命試験において、測定した放電容量Iおよび放電容量IIを用い、下記数式(1)にて高温寿命特性を算出する。
[数1]
高温寿命特性(%)=放電容量II(mAh/g)/放電容量I(mAh/g)×100 (1)
ここで、高温寿命試験における所定の充放電サイクルとは、上記リチウムイオン二次電池を用い、測定温度を25℃とし、充電時の電流密度を25mA/gとして定電流充電を行い、電位が4.2Vに達した時点から、4.2Vを保持して定電圧充電を行い、電流密度が2.5mA/gに達するまで充電し、次いで、放電時の電流密度を25mA/gとして定電流放電を行い、電位が2.5Vに達するまで放電するサイクル(1サイクル)をいう。
以上に述べる高温寿命試験およびこれに伴う高温寿命特性の評価によれば、二次電池負極用炭素材以外の条件を統一することによって、評価に供される二次電池負極用炭素材に起因する高温環境下における寿命特性の評価を行うことができる。
本発明の炭素材において、上述するピーク高さP1およびピーク高さP2は、炭素材の表面付近(たとえば表面から数nmの深度まで)の化学結合状態分布を示すものであってもよいが、さらに好ましくは以下のとおりである。
即ち、本発明の炭素材において、ピーク高さP1およびピーク高さP2は、炭素材の外表面から20nm以上の深度における化学結合状態分布のピーク高さであることが好ましい。炭素材の内部組成を正しく把握し、これにより炭素材の状態をより充分に把握するという観点からは、上記深度は、30nm以上であることがより好ましく、40nm以上であることがさらに好ましい。
これにより、炭素材の表面だけでなく、バルク内部の構成を良好なものとすることができ、高温環境下における繰り返し使用に耐えうる炭素材の提供をより確実にすることができる。
一般的に、XPSによる分析は、物質の表面付近に限られる。炭素材において表面付近は、最もリチウムなどの化学種の吸蔵放出が繰り返される領域であるため、炭素材の表面付近の性質を把握することは有用である。しかし本発明者の検討によれば、リンを含む炭素材は、充電容量が増大することから、従来のリンを含まない炭素材と比較して、炭素材の内部(例えば数十nmの深度)における化学種の吸蔵放出が活発であるものと推察された。そこで、本発明者は、本発明の炭素材の好ましい態様として、上述のとおり、所定深度以上におけるピーク高さP1およびピーク高さP2に着眼した。リンを含み、20nm以上の深度におけるピーク高さP1およびピーク高さP2が上述する比率を満たす炭素材は、高温寿命試験を経ても高いサイクル特性を示す。
XPSを利用した分析において、炭素材のバルク内部の化学結合状態分布を分析する方法は特に限定されないが、たとえばアルゴンイオンまたはアルゴンガスクラスタ法を用い、イオン銃などで炭素材表面をイオンエッチングして深さ方向のXPS分析を行う方法を例示することができる。
アルゴンガスクラスタ法は、アルゴンイオンに比べて、エッチングによる炭素材の内部構造の破壊を回避することができるため好ましい。ここでアルゴンガスクラスタとは、数百個から数万個のアルゴン原子のクラスタであって、イオン化されたものである。アルゴンガスクラスタをイオンビームとして炭素材の表面に照射することによって当該炭素材の表面をエッチングし、数十nmの深度におけるXPS分析を可能とする。アルゴンガスクラスタ法の照射条件は、炭素材の粒径等によって適宜変更してよいが、たとえば、二次電池負極用の炭素材として好適な範囲の粒子径(0.1μm以上20μm以下)の炭素材の表面に対し、たとえば、アルゴンガスクラスタ法を1kV以上20kV以下の範囲の加速電圧にて、10秒以上60秒以下の範囲で照射することによって、20nm以上の深度のXPS分析を良好に実施することができる。
以下、本実施形態の炭素材の詳細を説明する。以下の説明では、化学種として適宜、リチウムイオンを例に説明するが、これは例示であって、本実施形態にかかる炭素材が他の化学種を吸蔵放出する態様を除外するものではない。
(炭素成分)
本実施形態の炭素材は、炭素を主成分とする。ここで主成分とは厳密な数値に特定されるものではないが、少なくとも炭素材の組成100%における炭素原子の組成が80%以上であることが好ましく、90%以上であることがより好ましく、95%以上であることが特に好ましい。尚、本実施形態にかかる炭素材は、少なくとも主成分である炭素およびリンを含有するが、これ以外の原子が含まれていることを排除するものではない。
本実施形態の炭素材に含まれる炭素の構造は特に限定されず、たとえば、ハードカーボン、黒鉛、またはこれらの組み合わせであってもよい。
ハードカーボンは、その表面全体において、リチウムイオンの吸蔵放出が可能であるという特性を有する一方で、黒鉛に比べ、内部におけるリチウムイオンの拡散性(移動性)が低いという課題を有している。これに対し、本実施形態の炭素材は、リンを含むため、リチウムイオンが吸蔵されやすく、ハードカーボンを用いてなる炭素材において、充電容量および充放電効率を向上させ、ハードカーボンの上記課題を改善し得る。このように本実施形態ではハードカーボンを有利に使用することができることから、本実施形態の炭素材100質量%において、ハードカーボンが80質量%以上、好ましくは90質量%以上、より好ましくは95質量%以上含まれることが好ましい態様の一つである。
即ち、本発明の炭素材の好ましい態様の一つとして、当該炭素材に含まれる炭素粒子は、線源としてCuKα線を用いたX線回折法により求められる(002)面の平均面間隔d002が0.340nm以上であるハードカーボンを含む。
ハードカーボン(難黒鉛化性炭素)とは、グラファイト結晶構造が発達しにくい高分子を焼成して得られる炭素材であって、アモルファス(非晶質)な物質である。換言すると、ハードカーボンは、線源としてCuKα線を用いたX線回折法により求められる(002)面の平均面間隔d002が0.340nm以上であり、好ましくは、0.360nm以上である。かかるハードカーボンであれば、リチウムイオンの吸蔵に伴う層間の収縮・膨張が起こり難くなるため、サイクル性の低下を抑制できる。平均面間隔d002の上限は、特に規定されないが、たとえば0.390nm以下とすることができる。上記平均面間隔d002が0.390nm以下、特に0.380nm以下である場合にはリチウムイオンの吸蔵放出が円滑に行われ、充放電効率の低下を抑制できる。
さらに、上記ハードカーボンは、c軸方向((002)面直交方向)の結晶子の大きさLcが0.8nm以上5nm以下であることが好ましい。
Lcを0.8nm以上、特に0.9nm以上とすることでリチウムイオンを吸蔵放出することができる炭素層間スペースが形成され、充分な充放電容量が得られるという効果があり、5nm以下、特に1.5nm以下とすることでリチウムイオンの吸蔵放出による炭素積層構造の崩壊や、電解液の還元分解を抑制し、充放電サイクル性の低下を抑制できるという効果がある。
Lcは以下のようにして算出される。
X線回折測定から求められるスペクトルにおける002面ピークの半値幅と回折角から次のScherrerの式を用いて決定した。
Lc=0.94λ/(βcosθ) (Scherrerの式)
Lc:結晶子の大きさ
λ:陰極から出力される特性X線Kα1の波長
β:ピークの半値幅(ラジアン)
θ:スペクトルの反射角度
ハードカーボンにおけるX線回折スペクトルは、株式会社島津製作所製・X線回折装置「XRD−7000」により測定することができる。ハードカーボンにおける、上記平均面間隔の測定方法は以下の通りである。
ハードカーボンのX線回折測定から求められるスペクトルより、平均面間隔dを以下のBragg式より以下のとおり算出することができる。
λ=2dhklsinθ (Bragg式)(dhkl=d002
λ:陰極から出力される特性X線Kα1の波長
θ:スペクトルの反射角度
黒鉛は、炭素の同素体の1つであり、六炭素環が連なった層からできている層状格子をなす六方晶系、六角板状結晶の物質である。上記黒鉛は、所謂、グラフェン構造を有する。上記黒鉛は、天然黒鉛と人造黒鉛を含む。
黒鉛は、放電初期から放電末期まで電圧変化が少ないという望ましい性質を有しており、放電末期まで安定した高い電圧を維持可能である。本発明の炭素材に含まれる炭素粒子の一部または全部が黒鉛から構成されていてもよい。
ハードカーボンおよび黒鉛の長所をそれぞれ活かし、バランスのよい炭素材を提供するという観点から、本発明の炭素材における炭素粒子は、ハードカーボンおよび黒鉛を含んでいてもよい。
炭素粒子としてハードカーボンおよび黒鉛の両方を含む本発明の態様は、顕微鏡観察において、ハードカーボンの粒子と黒鉛の粒子とが個別独立に観察される場合と、両者が融合または結着し、見かけ上、一体的に観察される場合と、を含む。
本発明の炭素材におけるハードカーボンと黒鉛との含有比率は特に限定されない。たとえば、ハードカーボンと黒鉛とを含む態様の本発明の炭素材において、炭素材における両者の質量比は、ハードカーボン:黒鉛=51質量%:49質量%から95質量%:5質量%までの範囲であることが好ましい。
(炭素成分の出発材料)
本実施形態の炭素材に含まれる炭素成分の出発材料について説明する。炭素材における炭素の出発材料は、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において特に限定されず、二次電池負極用炭素材を構成する炭素を含む適宜の材料から選択することができる。
たとえば、上記出発材料として、フェノール性水酸基含有樹脂、またはアセナフチレンもしくは石油ピッチなどの石油系材料を用いることができる。
上記フェノール性水酸基含有樹脂は、人工的に合成できる材料であり、使用される技術分野が多様化する二次電池に対応し、負極の設計の自由度を広げることが可能である。かかる観点からフェノール性水酸基含有樹脂は、本実施形態の炭素材の出発物質として好ましい。
ここでフェノール性水酸基含有樹脂とは、分子内にフェノール性水酸基を有する樹脂をいう。本実施形態におけるフェノール性水酸基含有樹脂は、ノボラック型フェノール樹脂またはレゾール型フェノール樹脂などのフェノールを出発物質として合成された樹脂;m−クレゾール樹脂、キシレノール樹脂、ナフトール樹脂などのフェノール以外のフェノール類を用いて合成された樹脂;フェノール以外のモノマーとホルムアルデヒドなどのアルデヒド類を酸またはアルカリ性の触媒存在下で合成することによってなる分子内にフェノール性水酸基を有する樹脂;または上述する樹脂に変性剤が含有されてなる変性フェノール性水酸基含有樹脂を含む。
たとえば、上記フェノール性水酸基含有化合物は、フェノール類と、任意の反応化合物と、を反応させることによって合成することができる。
中でもノボラック型フェノール樹脂に代表される水酸基当量が300g/eq以下のフェノール性水酸基含有樹脂は、分子構造が単純化され合成容易であり、炭素材料の出発物質として好ましい例の一つである。
水酸基当量が300g/eq以下のフェノール性水酸基含有樹脂としては、ノボラック型フェノール樹脂、レゾール型フェノール樹脂、またはフェノール類とフェノール類との間に任意の変性剤が結合されてなる変性フェノール性水酸基含有樹脂等を挙げることができるが、これに限定されない。
ここで水酸基当量とは、フェノール性水酸基含有樹脂における水酸基1つに対する分子量を意味する。水酸基当量の測定はJIS K 0070(1992)に規定される中和滴定法に準じて行うことができる。
尚、本明細書においてノボラック型フェノールとは、上述するフェノール類とホルムアルデヒドとを酸触媒下で反応させて合成されるフェノール樹脂を意味する。また、本明細書においてレゾール型フェノールとは、上述するフェノール類とホルムアルデヒドとをアルカリ触媒下で反応させて合成されるフェノール樹脂を意味する。
一般的に、水酸基当量が小さいほど(たとえば、水酸基当量が200g/eq以下、さらには150g/eq以下、特には120g/eq以下)、製造容易性および製造コストの観点からは好ましく、二次電池負極用の材料としての使用が期待される。
フェノール性水酸基含有樹脂は、フェノール類と反応化合物とを反応させることによって合成される樹脂を含む。フェノール性水酸基含有樹脂の合成には必要に応じて触媒が用いられる。ここでフェノール類とは、芳香族化合物に水酸基を有する有機化合物を意味し、所謂、フェノールだけではなく、クレゾール等のベンゼン環に1つの水酸基以外の官能基が設けられた有機化合物を含む。上記反応化合物とは、ホルムアルデヒドのみならず、変性フェノール性水酸基含有樹脂を合成可能な変性剤化合物も含む。
フェノール類の具体的な例としては、たとえば、フェノール;o−クレゾール、m−クレゾール、p−クレゾール、キシレノール、またはp−t−ブチルフェノール等のアルキル置換フェノール類;p−フェニルフェノール等の芳香族置換フェノール類;カテコール、またはレゾルシノール等の二価フェノール類;α−ナフトール、またはβ−ナフトール等のナフトール類等が挙げられるがこれに限定されない。
(リン成分)
次に本実施形態の炭素材に含まれるリンについて説明する。本実施形態の炭素材は、上述する炭素成分を主成分として含み、当該炭素成分に比べて少量の成分としてリンを含む。本実施形態の炭素材は、適宜の炭素成分の配合が確保される範囲においてリンの配合量は限定されない。
たとえば、二次電池負極用炭素材100質量%に対し、リンが0.3質量%以上1.5質量%以下の範囲で含有されていることが好ましい。炭素材に含まれるリンの含有量が0.3質量%以上であることにより、リチウムイオンの吸蔵量が有意に改善される。また、炭素材に含まれるリンの含有量が1.5質量%以下であることにより、リチウムイオンの吸蔵量を改善するとともに、炭素材の主成分である炭素の組成比を高く維持することができる。かかる範囲であれば、炭素材は、過不足ないリンを含有することになり、充放電容量を増大させるとともに高い充放電効率の実現を可能とする。
炭素材におけるリンの含有量は、たとえば、炭素材を生成するために用いられリン成分の出発材料の添加量を調整するなどして適宜調整することができる。リン成分の出発材料については後述する。
本実施形態において、リンの含有量は、たとえば高周波誘導結合プラズマ(ICP)発光分析装置を用いて測定することができる。
本実施形態の炭素材は、炭素およびリンが結合した化合物、または炭素、リンおよび酸素が結合した化合物、またはこれらの組み合わせに含まれることが一般的である。ただし、本実施形態の炭素材は、当該炭素材に含まれるリンの一部が、単独の原子として含まれていてもよい。
炭素およびリンが結合した化合物としては、(CPを挙げることができる。また、炭素、リンおよび酸素が結合した化合物としては、(CO)P(=O)、(CO)P(=O)(OH)、(CP(=O)(OH)、および(CP(=O)の群から選択される1または2以上を挙げることができるが、これに限定されない。
上述する化合物は、炭素成分の出発材料およびリン成分の出発材料を適宜、焼成するなどして炭素材を製造する過程において生成されるものと推察される。本実施形態の炭素材は、リンを含む化合物として、最も還元の進んだ(CPを少なくとも含む。
一般的に、二次電池は、高温環境下において繰り返し使用されるうちに、当該二次電池に含まれる炭素材の炭素の基本骨格が損傷し、これによってサイクル特性が低下する傾向にある。これに対し、本実施形態では、高温環境下における繰り返し使用において、副生物である(CO)POが生成されるものの、最も還元の進んだ(CPが高い割合で保持される。そのため、全体として炭素材の基本骨格の損傷が抑制されサイクル特性の低下が回避されるものと推察される。
(リン成分の出発材料)
本実施形態の炭素材に含まれるリン成分の出発材料について説明する。炭素材に含まれるリンの出発材料は、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において特に限定されず、リン原子を含む適宜の材料から選択することができる。
たとえば、上記リンの出発材料としては、リン酸、または五酸化二リンなどの比較的分子量の小さいリン酸化合物、またはリン酸エステルを用いることができる。上記リン酸エステルとしては、1以上のフェニル基を備えるリン酸エステルを挙げることができるが、これに限定されない。
リン成分の出発原料であるリン酸エステルは、リン酸における3つの水素の一部または全てが有機基で置き換わった構造を有していることが好ましい。
好ましいリン酸エステルの例としては、リン酸トリフェニル(たとえば大八化学工業株式会社製、難燃剤、非ハロゲンリン酸エステル、商品名:TPP)、クレジルジフェニルホスフェート(たとえば大八化学工業株式会社製、難燃剤、非ハロゲンリン酸エステル、商品名:CDP)、クレジルジ2,6−キシレニルホスフェート(たとえば大八化学工業株式会社製、難燃剤、非ハロゲンリン酸エステル、商品名:PX−110)、市販品のノンハロゲン系リン酸エステルである大八化学工業株式会社製の難燃剤「商品名:DAIGUARD−1000」を例示することができる。上述に例示列挙するリン酸エステルは、いずれもリン酸トリエステルである。
またリン酸エステルは、縮合リン酸エステルであってもよく、たとえば市販品の芳香族縮合リン酸エステルである大八化学工業株式会社製の難燃剤「商品名:PX−200」を例示することができる。
上記大八化学工業株式会社製の難燃剤「商品名:PX−200」は、下記化学式(1)に示される構造を有し、分子量は816である。
Figure 2017045596
上記クレジルジフェニルホスフェートは、下記化学式(2)に示される構造を有し、分子量は340である。
Figure 2017045596
上記クレジルジ2,6−キシレニルホスフェートは、下記化学式(3)に示される構造を有し、分子量は396である。
Figure 2017045596
本発明者は鋭意検討により、炭素の出発材料が水酸基当量の小さいフェノール性水酸基含有樹脂である場合に、リンの出発材料としてリン酸エステルを選択することは、特に好ましいという知見を得た。即ち、炭素材を炭化するための焼成工程において、フェノール性水酸基含有樹脂における水酸基が分子内および/または分子間で脱水縮合して架橋する。その結果、生成される炭素材は、望ましいグラフェン様構造の成長が阻害される虞がある。これに対し、リン酸エステルが炭素材の材料となる炭素材生成組成物に含有されることによって、上述する水酸基の脱水縮合を抑制し、リチウムイオンの吸蔵放出量の高い炭素材を製造することができる。かかる観点からは、リン酸エステルとして特に上述する化学式(1)から(3)に例示されるリン酸トリエステルが好ましい。
ここでリン酸トリエステルは、リン酸が持つ3個の水素がいずれも有機基で置き換わった構造を有し、リン酸エステルの中でも大きい分子構造を備える。そのため、炭素材生成時におけるフェノール性水酸基含有樹脂の水酸基間の立体障害となり易く、当該水酸基間における架橋を良好に阻止可能である。
特にリン酸トリエステルとして、リン酸トリフェニルまたはリン酸トリフェニル誘導体が選択されることが好ましい。
リン酸に含まれるフェニル基が、フェノール性水酸基含有樹脂を出発物質として生成される炭素材の炭素骨格の一部に取り込まれ、当該炭素材の結晶構造の成長に寄与することが期待されるからである。
リン酸トリフェニル誘導体とは、リン酸トリフェニルの3つのフェニル基のいずれかまたは全てに置換基を有する化合物のことをいう。たとえば、本実施形態のリン酸トリフェニル誘導体としては、上述する化学式(1)で示される化合物を好適に用いることができる。
(その他の成分)
本実施形態の炭素材は、上述する炭素およびリン以外に、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において、任意の成分が含まれていてもよい。任意の成分は、たとえば、炭素材を製造する際に用いられる任意の添加剤の残存成分などであってもよい。
上記任意の添加剤としては、硬化剤、有機酸、無機酸、含窒素化合物、含酸素化合物、芳香族化合物、非鉄金属原子などを挙げることができる。これら添加剤は、用いる樹脂の種類や性状などにより、1種または2種類以上を組み合わせて用いることができる。
炭素材を生成する際に用いられる硬化剤は、炭素成分の出発材料(例えばフェノール性水酸基含有樹脂)の熱硬化を促進させるための剤である。上記硬化剤は、特に限定されず、用いられる炭素成分の出発材料との組み合わせで適宜決定するとよい。例えば、当該出発物質がノボラック型フェノール樹脂の場合は、硬化剤としてヘキサメチレンテトラミン、レゾール型フェノール樹脂、またはポリアセタールなどが好適に用いられる。また当該出発物質がレゾール型フェノール樹脂の場合は、硬化剤としてヘキサメチレンテトラミンなどが好適に用いられる。
(炭素材の生成方法)
次に本実施形態の炭素材の生成方法について説明する。炭素材は、上述する炭素成分の出発物質、リン成分の出発物質、および任意の添加成分を用い、これらの材料を焼成することで生成することができる。
焼成工程を含む炭素材の生成方法は、特に限定されない。たとえば、炭素成分の出発材料を予め焼成し、或る程度炭化させた後、リン成分の出発材料を加え、さらに焼成することによって炭素材を生成することができる。
異なる生成方法としては、上述する炭素成分の出発材料、リン成分の出発材料、および任意の添加剤を適当量含む組成物(以下、炭素材生成組成物という場合がある)を調製し、炭素材生成組成物を焼成して炭素材を生成することもできる。
以下に、予め炭素材生成組成物を調製しこれを用いて炭素材を生成する方法について説明する。以下に説明する炭素材の生成方法は、本実施形態にかかる炭素材の製造方法の一例であって、何ら本発明を限定するものではない。
本実施形態の炭素材は、予め調製された炭素材生成組成物を焼成することによって炭化され生成される。焼成工程は、たとえば以下に述べる第一焼成工程と第二焼成工程とに分けて実施される。
第一焼成工程は、炭素材生成組成物を焼成時の最高温度が1000℃未満である焼成条件で焼成して炭素材前駆体を生成する工程である。
第二焼成工程は、第一焼成工程において生成された炭素材前駆体を焼成時の最高温度が1000℃以上の温度である焼成条件で焼成することによって炭素材を生成する工程である。
第一焼成工程および第二焼成工程は、連続的に実施してもよいし、分けて実施してもよい。
第一焼成工程と第二焼成工程とを分けて実施する態様の例として、たとえば第一焼成工程と第二焼成工程との間には、第一焼成工程にて得られた炭素材前駆体を粉砕する粉砕工程を設けることができる。第二焼成工程における炭素材前駆体の熱履歴を均一にするという観点からは、上記粉砕工程を実施することが好ましい。上記粉砕工程において得られる炭素材前駆体の粉砕物の粒径は特に限定されないが、1μm以上20μm以下、より好ましくは5μm以上15μm以下である。上記粉砕物の粒径が上記数値範囲の下限値以上であることにより、粉砕物の取り扱い性が良好であり、またリン成分の出発物質(リン酸エステル等)に含有されるリンを最終的に形成される炭素材中に有意に残存させることができる。また、上記粉砕物の粒径が上記数位範囲の上限値以下であることにより、第二焼成工程における炭素材の熱履歴の均一化を良好に図ることができる。
上記粉砕物の粒径は、体積基準の累積分布における50%累積時の粒径(D50、平均粒径)を意味する。
上記粉砕工程における粉砕方法は特に限定されないが、たとえば任意の粉砕装置を用いることができる。上記粉砕装置としては、ボールミル装置、振動ボールミル装置、ロッドミル装置、ビーズミル装置などの衝撃型粉砕装置、またはサイクロンミル装置、ジェットミル装置、乾式気流粉砕装置など気流粉砕装置を挙げることができるがこれに限定されない。粉砕工程において、これらの装置を1種または2種以上使用し、または、1種の装置で複数回粉砕して用いてもよい。また粉砕工程において、これらの装置に加え、篩などを用いて適宜、分級してもよく、また分級機能を有する粉砕装置を用いてもよい。
上述する第一焼成工程および第二焼成工程のガス雰囲気は特に限定されないが、不活性ガス雰囲気で行うことが好ましい。ここで不活性ガス雰囲気とは、不活性ガスのみから構成される雰囲気および不活性ガスと酸素との混合ガスから構成される雰囲気のいずれも含む。上記不活性ガスとしては、窒素ガス、アルゴンガス、ヘリウムガスなどが挙げられる。これらの中でも、窒素ガス雰囲気が特に好ましく、窒素ガスが99.00%以上99.90以下であって、残余が酸素で構成される混合ガス雰囲気がより好ましい。
第一焼成工程および第二焼成工程のガス雰囲気は同じであってもよいし、異なっていてもよい。
第一焼成工程および第二焼成工程における昇温速度、焼成温度、焼成時間などの条件は、生成される炭素材の使用が予定される負極の特性を最適なものにするため適宜調整することができる。
以下に、本発明の炭素材を含む本発明の二次電池負極用活物質(以下、単に負極用活物質ともいう)、当該負極用活物質を含む負極用活物質層を備える本発明の二次電池負極(以下、単に負極ともいう)、および当該負極を備える本発明の二次電池について説明する。
<負極用活物質>
本発明の二次電池負極用活物質は、上述する本発明の二次電池負極用炭素材を含有する。
これにより、本発明の負極用活物質は、リチウムイオンまたはナトリウムイオンなどのアルカリ金属イオンの充放電容量が大きく、かつ高温環境下において使用した場合であっても高いサイクル特性が示され得る。
ここで負極用活物質とは、アルカリ金属イオン電池などの二次電池において、アルカリ金属イオン(例えばリチウムイオンまたはナトリウムイオン)などの化学種を吸蔵および放出することのできる物質である。本明細書において説明する負極用活物質は、本発明の炭素材を含有する物質を意味する。
負極用活物質は、実質的に本発明の炭素材のみから構成されてもよいが、当該炭素材とは異なる材料をさらに含んでもよい。このような材料としては、例えば、シリコン、一酸化ケイ素、他の黒鉛質材料など一般的に負極材料として公知の材料が挙げられる。
<二次電池負極および二次電池>
以下、本発明の二次電池負極および当該二次電池負極を備える本発明の二次電池について説明する。
本発明の二次電池負極は、上述する本発明の二次電池負極用活物質を含む二次電池負極用活物質層と、二次電池負極用活物質層が少なくとも表面の一部に配置された負極用集電体と、を有して構成される。
また本発明の二次電池は、上述する本発明の二次電池負極と、電解質と、二次電池正極と、を備えて構成される。
本発明の負極は、本発明の負極用活物質を用いて構成されることにより、充電容量が高く、かつ高温環境下において繰り返し使用された場合でも高いサイクル特性が示され得る。また、本発明の負極を備える本発明の二次電池は、負極の充電容量およびサイクル特性の向上が反映され優れた電池性能を示す。たとえば、本発明の負極によれば、充電容量が高く、かつ高温環境下においても良好なサイクル特性が示され得る。そのため本発明の二次電池は、高い充放電効率が期待されるとともに、高温環境下での使用にも耐えうる。
上記二次電池としては、例えば、リチウムイオン二次電池またはナトリウムイオン二次電池などのアルカリ金属二次電池を挙げることができるがこれに限定されるものではない。また上記二次電池は、非水電解液二次電池、および固体二次電池などの異なる電解質を使用する種々の形式を含む。以下の説明では、二次電池として、リチウムイオン二次電池を例に説明する。
以下に、図1を用いて、本発明の炭素材を含むリチウムイオン二次電池の一例を説明する。図1は、本発明の炭素材を含むリチウムイオン二次電池100の一例を示す模式図である。
リチウムイオン二次電池100は、図1に示すように、負極10と、正極20と、セパレータ30と、電解液40とを有している。
負極10は、図1に示すように、負極用活物質層12と負極集電体14とを有している。
負極用活物質層12は、上述した本発明の炭素材を含有している。
負極集電体14としては特に限定されず、一般的に公知の負極用集電体を用いることができ、例えば、銅箔またはニッケル箔などを用いることができる。
負極10は、例えば、以下のようにして製造することができる。
上述する負極用活物質100質量部に対して、一般的に公知の有機高分子結着剤(例えば、ポリフッ化ビニリデン、ポリテトラフルオロエチレンなどのフッ素系高分子;スチレン・ブタジエンゴム、ブチルゴム、ブタジエンゴムなどのゴム状高分子;など)1質量部以上30質量部以下、および適量の粘度調整用溶剤(N−メチル−2−ピロリドン、ジメチルホルムアミド、アルコール、水など)または水を添加して混練して、負極スラリーを調製する。
また、上述する負極用活物質に対し、必要に応じてさらに導電材を添加してもよい。導電材としては、たとえばアセチレンブラック、ケッチェンブラック、気相法炭素繊維などのいずれかまたは組み合わせを用いることができる。導電材の配合量は、特に限定されないが、たとえば負極用活物質100質量%において、2質量%以上10質量%以下が好ましく、さらに好ましくは3質量%以上7質量%以下である。これらの範囲外でも用いることができるが、導電剤の配合量が多すぎると電極中に存在する負極用活物質量が必要以上に減少するおそれがあり、負極の体積容量が低下するおそれがある。
得られたスラリーを圧縮成形、ロール成形などによりシート状、ペレット状などに成形して、負極用活物質層12を得ることができる。そして、このようにして得られた負極用活物質層12と負極集電体14とを積層することにより、負極10を得ることができる。
また、得られた負極スラリーを負極集電体14に塗布して乾燥することにより、負極10を製造することもできる。
電解液40は、正極20と負極10との間を満たすものであり、充放電によってリチウムイオンが移動する層である。
電解液40としては特に限定されず、一般的に公知の電解液を用いることができ、例えば、非水系溶媒に電解質となるリチウム塩を溶解した非水電解液が用いられる。
この非水系溶媒としては、例えば、プロピレンカーボネート、エチレンカーボネート、γ−ブチロラクトンなどの環状エステル類;ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、エチルメチルカーボネートなどの鎖状エステル類;ジメトキシエタンなどの鎖状エーテル類;あるいはこれらの混合物などを用いることができる。
電解質としては特に限定されず、一般的に公知の電解質を用いることができ、例えば、LiClO、LiPFなどのリチウム金属塩を用いることができる。また、上記塩類をポリエチレンオキサイド、ポリアクリロニトリルなどに混合し、固体電解質として用いることもできる。
セパレータ30としては特に限定されず、一般的に公知のセパレータを用いることができ、例えば、ポリエチレンまたはポリプロピレンなどを用いて構成される多孔質フィルム、不織布などを用いることができる。
正極20は、図1に示すように、正極活物質層22と正極集電体24とを有している。
正極活物質層22としては特に限定されず、一般的に公知の正極活物質により形成することができる。正極活物質としては特に限定されず、例えば、リチウムコバルト酸化物(LiCoO)、リチウムニッケル酸化物(LiNiO)、リチウムマンガン酸化物(LiMn)、ニッケルコバルトマンガン酸リチウム(LiNiCoMn、x+y+z=1)などの複合酸化物;ポリアニリン、ポリピロールなどの導電性高分子;などを用いることができる。
正極活物質は、上述する負極用活物質と同様に、有機高分子結着剤および導電材が含有される。正極活物質における有機高分子結着剤および導電材の配合量は、特に限定されず、負極用活物質と同等にしてもよく、また負極用活物質とは異なる量を配合してもよい。
正極集電体24としては特に限定されず、一般的に公知の正極集電体を用いることができ、例えば、アルミニウム箔、ステンレス箔、チタン箔、ニッケル箔、銅箔などを用いることができる。
そして、本実施形態における正極20は、一般的に公知の正極の製造方法により製造することができる。
以上にリチウムイオン二次電池100を例に説明したが、上述は本発明の炭素材がリチウムイオン二次電池以外の二次電池に用いられることを除外するものではない。本発明の炭素材は、たとえばナトリウムイオンなどのリチウムイオン以外のアルカリイオンを化学種とする二次電池に用いることも可能である。このとき各アルカリイオン二次電池は、上述するリチウムイオン二次電池100に用いられる部材と同様の部材を用いて構成されてもよいし、異なる部材を用いて構成されてもよい。たとえば、ナトリウムイオン二次電池における負極集電体には、上述にて例示される負極集電体の他、アルミニウム箔を選択することもできる。
以上、本発明の実施形態について述べたが、これらは本発明の例示であり、上記以外の様々な構成を採用することもできる。たとえば、図1では、負極集電体14の一方側の面に負極用活物質層12が形成され、また正極集電体24の一方側の面に正極活物質層22が形成された例を示した。変形例として、負極集電体14の両面に負極用活物質層12を形成し、正極集電体24の両面に正極活物質層22を形成し、これらをセパレータ30および電解液40を介して対向させて二次電池を構成してもよい。
また、本発明は前述の実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を達成できる範囲での変形、改良などは本発明に含まれるものである。
二次電池は、負極10、正極20、セパレータ30、および電解液40を二次電池に適応するケースに適切に配置して形成することができる。二次電池の型は、特定されないが、例えば円筒型、コイン型、角型、またはフィルム型などを挙げることができる。
以下、本発明の実施例および比較例を説明する。ただし、本発明は以下に示す実施例および比較例に限定されるものではない。尚、実施例では、「部」は「質量部」を示し、「%」は「質量%」を示す。
(フェノール性水酸基含有樹脂の合成)
はじめに実施例または比較例に用いるフェノール性水酸基含有樹脂を以下のとおり合成した。
(ノボラック型フェノール樹脂の合成)
フェノール100部、37%ホルムアルデヒド水溶液64.5部、およびシュウ酸3部を攪拌機および冷却管を備えた3つ口フラスコに入れ、100℃で3時間反応後、昇温脱水し、ノボラック型フェノール樹脂90部を得た。上述のとおり得られたノボラック型フェノール樹脂の水酸基当量を、JIS K 0070(1992)の中和滴定法に準じて測定したところ、105g/eqであった。
<実施例1>
上述のとおり得られたノボラック型フェノール樹脂100部に対して、リン酸トリフェニル(大八化学工業株式会社製、商品名:TPP)10部、およびヘキサメチレンテトラミン3部を振動ボールミルにて粉砕混合し炭素材生成組成物を得た。
上述のとおり調製された炭素材生成組成物を窒素雰囲気(窒素濃度99.90%および酸素濃度0.10%)下にて室温から100℃/時間の昇温速度にて昇温し、550℃に到達後、焼成状態を1.5時間保持して炭化処理を行った(第一焼成工程)。その後に、粉砕工程を実施し、炭素材前駆体を得た。
上記炭素材前駆体を、以下の粉砕工程に供した。粉砕工程の粉砕条件は、以下の通りである。即ち、第一焼成工程を実施して得られた炭素材前駆体を室温まで自然放冷し、ボールミル粉砕装置にて、φ10mmのアルミナボール5900gを入れた容器の中に入れ処理し、粉砕中間物を得た。次いで上記粉砕中間物を、目開き75μmの篩に通して粗大粒子を取り除き、粉砕物(炭素材前駆体)を得た。尚、上記ボールミル粉砕装置は、回転式ボールミル(1段式―B、株式会社入江商会提供)を用いた。
上述のとおり得た粉砕物(炭素材前駆体)を、窒素雰囲気(窒素濃度99.90%および酸素濃度0.10%)下にて室温から100℃/時間の昇温速度にて焼成し1200℃に到達後、焼成状態を2時間保持して炭化処理を行った(第二焼成工程)。これにより得られた炭素材を、実施例1とした。
実施例に含有されるリン含有量を使用した材料から算出し表1に示した。
尚、上述する粉砕処理にて用いた粉砕装置は以下のとおりである。
<ハーフセル型リチウムイオン二次電池の作成>
(負極の作成)
上述のとおり得られた実施例1の炭素材の電池特性を評価するために、以下のとおり各炭素材を用いた負極を作成した。
実施例炭素材100%に対し、結着剤としてスチレン・ブタジエンゴム3%、増粘剤としてカルボキシメチルセルロース1.5%、導電材としてアセチレンブラック2%の割合で配合し、純水を適量加えて希釈混合し、スラリー状の負極用混合物を得た。
上述で得たスラリー状の負極用混合物を厚さ10μmの銅箔(集電体)に同量ずつ塗布し、110℃で1時間、真空乾燥した。次いで、ロールプレスによって60μmの厚みに加圧成形したものを所定形状に打ち抜き、直径13mm、電極活物質層(集電体を除いた部分)の厚さ50μmである円盤状のリチウムイオン二次電池用の負極を作成した。
(作用極の作成)
作用極として厚さ1mmのリチウム金属を準備した。
(電解液の調製)
エチレンカーボネートとジエチルカーボネートの混合液(体積比3:7)に六フッ化リン酸リチウムを1モル/リットルの濃度で溶解させて、電解液を調製した。
(リチウムイオン二次電池の作成)
上述のとおり得た負極、作用極、電解液を用い、以下のとおりリチウムイオン二次電池を作成した。
負極、セパレータ(ポリプロピレン製多孔質フィルム:厚さ25μm)、作用極の順に、宝泉株式会社製二極セルの所定の位置に配置し、電解液を注液し、リチウムイオン二次電池を作成した。
[初回充放電特性評価]
上述のとおり作成したハーフセル型リチウムイオン二次電池を用いて以下のとおり電池特性を評価した。
測定温度を25℃とし、充電時の電流密度を25mA/gとして定電流充電を行い、電位が0Vに達した時点から、0Vを保持して定電圧充電を行い、電流密度が2.5mA/gになるまで充電した電気量を初回充電容量とした。
次いで、放電時の電流密度を25mA/gとして定電流放電を行い、電位が2.5Vに達した時点の電気量を初回放電容量とした。
下記数式(2)に示すとおり、初回充電容量で初回放電容量を除した値に100を乗じて初回充放電効率を算出した。尚、初回充放電特性評価の結果は、表1に示す。
尚、本初回充放電特性評価において、「充電」とは、電圧の印加により、金属リチウムで構成された作用極から炭素材を用いて構成された負極にリチウムイオンを移動させることをいう。また「放電」とは、炭素材を用いて構成された負極から、金属リチウムで構成された作用極にリチウムイオンが移動する現象のことをいう。
[数2]
初回充放電効率(%)=初回放電容量(mAh/g)/初回充電容量(mAh/g)×100 (2)
<フルセル型リチウムイオン二次電池の作成>
上述のとおり得られた実施例の高温環境における電池特性を評価するために、フルセル型リチウムイオン二次電池の作成を行った。
作成方法は上述のハーフセル型リチウムイオン二次電池の作成方法における、作用極を正極に変更したこと以外は、同様の方法で行った。
正極としては、LiCoOを活物質とし、集電体上に塗布して作製したものを用い、正極の集電体として、アルミ箔を用いた単層シート(パイオニクス株式会社製、商品名;ピオクセルC−100)を直径12mmの円盤状に形成したものを用いた。
[高温寿命特性評価]
上述の通り作製した、実施例のフルセル型リチウムイオン二次電池を用い、以下の通りに高温寿命特性評価を行った。
測定温度を25℃とし、充電時の電流密度を25mA/gとして定電流充電を行い、電位が4.2Vに達した時点から、4.2Vを保持して定電圧充電を行い、電流密度が2.5mA/gに達するまで充電し、次いで、放電時の電流密度を25mA/gとして定電流放電を行い、電位が2.5Vに達するまで放電し、これを1サイクルとした。さらに同様の条件で充電および放電を行い合計5サイクルの充放電を実施してエージング処理を行った。上記エージング処理において、5サイクル目の放電時における放電容量(放電容量I)を測定した。
エージング処理後、各リチウムイオン二次電池を、55℃の温度環境下、1Cの定電流で4.2Vまで充電し、その後、4.2Vの定電圧で電流値が0.02Cに減衰するまで充電した後、30分間55℃の温度環境で保持した。次に、1Cの定電流で2.5Vまで放電し、30分間55℃の温度環境で保持し、これを1サイクルとした。上記1サイクル目の放電時のリチウムイオン二次電池の放電容量(放電容量I)を測定した。
続いて、上述と同様の条件で充放電を99サイクル実施し、計100サイクルの充放電を実施した。100サイクル目の放電時における放電容量(放電容量II)を測定し「高温寿命特性評価」を行った。具体的には、下記数式(3)に示すとおり、100サイクル目の放電容量(放電容量II)を、1サイクル目の放電容量(放電容量I)で除した値に100を乗じた値を「高温寿命特性」として評価した。
[数3]
高温寿命特性(%)=放電容量II(mAh/g)/放電容量I(mAh/g)×100 (3)
実施例の高温寿命特性は、表1に示す。
<X線光電子分光分析>
アルゴンガスクラスタ法を用いたXPSを以下の通り実施した。
上述する実施例を用いたフルセル型の二次電池に用いる負極を10個作成した。そして、ランダムに選択した5つの負極の電極活物質層表面において、アルゴンガスクラスタ法を用いたXPSを行い、高温寿命試験前の化学結合状態分布を示すチャートを得た。
次いで、残りの5個の負極を用い、上述のとおりの方法でフルセル型の二次電池を5個作成し、それぞれを高温寿命試験に供し、充放電を100サイクル実施した。高温寿命試験終了後の上記5個の二次電池を分解して負極を取出し、当該負極の電極活物質層表面において、アルゴンガスクラスタ法を用いたXPSを行い、高温寿命試験前の化学結合状態分布を示すチャートを得た。
尚、アルゴンガスクラスタ法は、10kVの加速電圧にて300秒間、電極活物質層に照射した。これによって電極活物質層の表面から20nm以上の深度における電極活物質層(炭素材)のXPSを実施した。
高温寿命試験前後において得られた典型的なチャートを図2に示す。図2において、実線で示すチャート110は、高温寿命試験前の電極活物質層のX線光電子分光分析を示し、破線で示すチャート120は、高温寿命試験後の電極活物質層のX線光電子分光分析を示す。
上述するXPSの結果から、波形分析によりベースラインの値を算出したところ220(Intensity(Counts/sec))であった。各負極の高温寿命試験前における、所定のピークにおける光電子強度等を以下のとおり求め、その平均を算出し表1に示した。同様に、各負極の高温寿命試験後における、所定のピークにおける光電子強度等を以下のとおり求め、その平均を算出し表1に示した。
結合エネルギ130.7eVのピークP1の光電子強度(Intensity(Counts/sec))であるP1光電子強度を表1に示した。また、結合エネルギ134.7eVのピークP2の光電子強度(Intensity(Counts/sec))であるP2光電子強度を表1に示した。
またピークP1の光電子強度からベースラインの値を減じた値であるピーク高さP1(以下、「P1ピーク高さ」という場合がある)、およびピークP2の光電子強度からベースラインを減じた値であるピーク高さP2(以下、「P2ピーク高さ」という場合がある)を求めた。
またP1ピーク高さとP2ピーク高さの比率として、比率[P1/P2]を求めた。
また高温寿命試験前のP1ピーク高さ(=P1(I))と、高温寿命試験後のP1ピーク高さ(=P1(II))を求めた。
表1に示すとおり、実施例1を用いた二次電池(実施例1二次電池)は、初回充電容量が441.5mAh/gと高く、リンを含有させたことによる効果が示唆された。また実施例1二次電池の充放電効率が88.4%と高く、電池性能が高いことが確認された。
実施例1二次電池の高温寿命試験前のピーク高さの比率[P1/P2]は3.5であった。これにより、高温環境下で使用する前の実施例1は、(CO)P(=O)(OH)に比べて(CPの存在比率が顕著に高いことが確認された。また、高温寿命試験後の比率[P1/P2]は0.82であった。これにより、高温環境下で使用した後であっても(CO)P(=O)(OH)に比べて(CPが有意に残っていることが確認された。また、高温寿命試験前後の比率[P1(II)/P1(I)]は1.54であり、高温環境下で使用しても(CPが減損していないことが確認された。上述する比率から、実施例1二次電池における炭素材は、高温環境下において使用した場合であっても炭素の基本骨格が良好に維持されていることが推察された。かかる実施例1二次電池は、高温寿命特性評価において87.6%と非常に高く、高温環境下で使用しても放電容量が高い値で維持されており、サイクル特性が良好であった。
Figure 2017045596
上記実施形態は、以下の技術思想を包含するものである。
(1)リンを含む二次電池負極用炭素材であって、
X線光電子分光分析による化学結合状態分布において130.7eVのピーク高さP1と、134.7eVのピーク高さP2との比率[P1/P2]が、55℃の温度環境下で充放電試験を100回繰り返す高温寿命試験前で1以上であるとともに、前記高温寿命試験後で0.3以上であることを特徴とする二次電池負極用炭素材。
(2)前記ピーク高さP1および前記ピーク高さP2が、前記二次電池用炭素材の外表面から30μm以上の深度における前記化学結合状態分布のピーク高さである上記(1)に記載の二次電池負極用炭素材。
(3)前記高温寿命試験前の前記ピーク高さP1であるP1(I)と前記高温寿命試験後の前記ピーク高さP1であるP1(II)との比率[P1(II)/P1(I)]が0.9以上である上記(1)または(2)に記載の二次電池負極用炭素材。
(4)前記二次電池負極用炭素材100質量%に対し、前記リンが0.3質量%以上1.5質量%以下の範囲で含有されている上記(1)から(3)のいずれか一項に記載の二次電池負極用炭素材。
(5)前記比率[P1/P2]が、前記高温寿命試験前で2以上であるとともに、前記高温寿命試験後で0.5以上である上記(1)から(4)のいずれか一項に記載の二次電池負極用炭素材。
(6)55℃の温度環境下で実施する前記充放電試験の50サイクル目で、前記比率[P1/P2]が1以上である上記(1)から(5)のいずれか一項に記載の二次電池負極用炭素材。
(7)前記高温寿命試験は、
前記二次電池負極用炭素材を含有する二次電池負極と、二次電池正極と、電解質を溶解させてなる電解液と、セパレータと、を備えるリチウムイオン二次電池を用い、
所定の充放電サイクルを5サイクル実施するエージング処理を行い、
前記エージング処理後の前記リチウムイオン二次電池を用い、55℃の温度環境下、1Cの定電流で4.2Vまで充電し、その後、4.2Vの定電圧で電流値が0.02Cに減衰するまで充電した後、30分間55℃の温度環境で保持し、次いで、1Cの定電流で2.5Vまで放電し、その後、30分間55℃の温度環境で保持する充放電サイクルを実施してこれを1サイクルとし、
続いて、前記充放電サイクルをさらに99サイクル実施して、合計100サイクルの充放電サイクルを実施する試験である上記(1)から(6)のいずれか一項に記載の二次電池負極用炭素材。
(8)上記(1)から(7)のいずれか一項に記載の二次電池負極用炭素材を含有することを特徴とする二次電池負極用活物質。
(9)上記(8)に記載の二次電池負極用活物質を含む二次電池負極用活物質層と、前記二次電池負極用活物質層が少なくとも表面の一部に配置された負極用集電体と、を備えることを特徴とする二次電池負極。
(10)上記(9)に記載された二次電池負極と、電解質と、二次電池正極と、を備えることを特徴とする二次電池。
10・・・負極
12・・・負極用活物質層
14・・・負極集電体
20・・・正極
22・・・正極活物質層
24・・・正極集電体
30・・・セパレータ
40・・・電解液
100・・・リチウムイオン二次電池
110、120・・・チャート

Claims (10)

  1. リンを含む二次電池負極用炭素材であって、
    X線光電子分光分析による化学結合状態分布において130.7eVのピーク高さP1と、134.7eVのピーク高さP2との比率[P1/P2]が、55℃の温度環境下で充放電試験を100回繰り返す高温寿命試験前で1以上であるとともに、前記高温寿命試験後で0.3以上であることを特徴とする二次電池負極用炭素材。
  2. 前記ピーク高さP1および前記ピーク高さP2が、前記二次電池負極用炭素材の外表面から30μm以上の深度における前記化学結合状態分布のピーク高さである請求項1に記載の二次電池負極用炭素材。
  3. 前記高温寿命試験前の前記ピーク高さP1であるP1(I)と前記高温寿命試験後の前記ピーク高さP1であるP1(II)との比率[P1(II)/P1(I)]が0.9以上である請求項1または2に記載の二次電池負極用炭素材。
  4. 前記二次電池負極用炭素材100質量%に対し、前記リンが0.3質量%以上1.5質量%以下の範囲で含有されている請求項1から3のいずれか一項に記載の二次電池負極用炭素材。
  5. 前記比率[P1/P2]が、前記高温寿命試験前で2以上であるとともに、前記高温寿命試験後で0.5以上である請求項1から4のいずれか一項に記載の二次電池負極用炭素材。
  6. 55℃の温度環境下で実施する前記充放電試験の50サイクル目で、前記比率[P1/P2]が1以上である請求項1から5のいずれか一項に記載の二次電池負極用炭素材。
  7. 前記高温寿命試験は、
    前記二次電池負極用炭素材を含有する二次電池負極と、二次電池正極と、電解質を溶解させてなる電解液と、セパレータと、を備えるリチウムイオン二次電池を用い、
    所定の充放電サイクルを5サイクル実施するエージング処理を行い、
    前記エージング処理後の前記リチウムイオン二次電池を用い、55℃の温度環境下、1Cの定電流で4.2Vまで充電し、その後、4.2Vの定電圧で電流値が0.02Cに減衰するまで充電した後、30分間55℃の温度環境で保持し、次いで、1Cの定電流で2.5Vまで放電し、その後、30分間55℃の温度環境で保持する充放電サイクルを実施してこれを1サイクルとし、
    続いて、前記充放電サイクルをさらに99サイクル実施して、合計100サイクルの充放電サイクルを実施する試験である請求項1から6のいずれか一項に記載の二次電池負極用炭素材。
  8. 請求項1から7のいずれか一項に記載の二次電池負極用炭素材を含有することを特徴とする二次電池負極用活物質。
  9. 請求項8に記載の二次電池負極用活物質を含む二次電池負極用活物質層と、前記二次電池負極用活物質層が少なくとも表面の一部に配置された負極用集電体と、を備えることを特徴とする二次電池負極。
  10. 請求項9に記載された二次電池負極と、電解質と、二次電池正極と、を備えることを特徴とする二次電池。
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