JP2017045537A - リチウムイオン二次電池用負極の製造方法およびリチウムイオン二次電池用負極 - Google Patents

リチウムイオン二次電池用負極の製造方法およびリチウムイオン二次電池用負極 Download PDF

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Abstract

【課題】Li析出耐性が向上したリチウムイオン二次電池用負極を提供する。【解決手段】リチウムイオン二次電池用負極の製造方法は、少なくとも負極活物質およびタングステン酸リチウムを含有する負極合材を調製する第1ステップ(S101)と、該負極合材を用いてリチウムイオン二次電池用負極を製造する第2ステップ(S102)と、を備える。第1ステップにおいて、負極合材がタングステン酸リチウムを0μmоl/gを超え201μmоl/g以下含有するように、該負極合材を調製する。【選択図】図1

Description

本発明は、リチウムイオン二次電池用負極の製造方法およびリチウムイオン二次電池用負極に関する。
特開2015−022913号公報(特許文献1)には、リチウム(Li)イオンを可逆的に挿入および脱離させることができる、負極活物質が開示されている。
特開2015−022913号公報 特開2004−063123号公報
リチウムイオン二次電池の負極活物質として、黒鉛(グラファイト)が知られている。黒鉛は、炭素原子がsp2結合によってハニカム状に結合したシート(「グラフェン」と称される)が複数積み重なった結晶構造を有する。黒鉛において、グラフェン間の空隙には、Liイオンを可逆的に挿入および脱離させることができる。
リチウムイオン二次電池は、典型的なロッキングチェア型電池である。すなわちリチウムイオン二次電池において、電解液中のLiイオン(電荷担体)の濃度は、電池の充電状態にかかわらず略一定である。たとえば充電時は、電流の供給により、電解液中のLiイオンが負極活物質に挿入される。同時に、負極活物質に挿入されたLiイオン量と同じ量のLiイオンが、正極活物質から電解液中へと放出され、電解液中のLiイオン濃度は略一定に保たれる。
しかし実際上、電解液中のLiイオン濃度は常に均質ではなく、部分的な偏りを含む場合もある。たとえば、車載用のリチウムイオン二次電池では、短時間にパルス波状の大電流充電が行われる場合がある。このとき充電電流の大きさによっては、電解液中のLiイオンの移動が充電電流に追いつかず、負極活物質の周囲においてLiイオンが不足する場合がある。負極活物質の周囲において、負極活物質に挿入すべきLiイオンが不足すると、大きな分極が生じることになる。これにより負極電位が低下して、Li金属の析出電位に達する可能性もある。
こうした懸念から、リチウムイオン二次電池では、多くの場合、充電電流の上限が低く設定されている。そのため、たとえばハイブリッド車両等において、回生電力の回収に取りこぼしが生じる場合もある。上限を超えた充電電流(入力)が制限されるためである。
ゆえに本発明では、Li析出が起こり難い、すなわちLi析出耐性が向上したリチウムイオン二次電池用負極の提供を目的とする。
〔1〕リチウムイオン二次電池用負極の製造方法は、少なくとも負極活物質およびタングステン酸リチウムを含有する負極合材を調製する第1ステップと、該負極合材を用いてリチウムイオン二次電池用負極を製造する第2ステップと、を備える。当該製造方法では、第1ステップにおいて、負極合材がタングステン酸リチウムを0μmоl/gを超え201μmоl/g以下含有するように、該負極合材を調製する。
上記〔1〕の製造方法では、負極合材にタングステン酸リチウム(典型的には「Li2WO4」)を添加している。こうして調製された負極合材では、負極活物質の周囲にタングステン酸リチウムが存在する。そのため、負極活物質の周囲においてLiイオンの存在量が増え、大電流充電時に、Liイオンの不足による負極電位の低下が抑制されると考えられる。さらにLiイオンを放出したタングステン酸イオンが非共有電子対を有するために、負極活物質の求核性、すなわち負極活物質とLiイオンとの反応性を高める効果が期待できる。これにより、Liイオンの負極活物質への挿入反応が円滑に進行すると考えられる。これらが相乗することにより、上記〔1〕の製造方法により製造されたリチウムイオン二次電池用負極では、Li析出耐性が向上すると考えられる。
ただし、負極合材に対するタングステン酸リチウムの添加量は、201μmоl/g以下とする。201μmоl/gを超えると、かえってLi析出耐性が低下する可能性があるためである。
〔2〕第1ステップにおいて、負極合材がタングステン酸リチウムを20μmоl/g以上含有するように、負極合材を調製することが好ましい。かかる範囲において、Li析出耐性の向上が期待できる。
〔3〕第1ステップにおいて、負極合材が、電気化学的な還元反応により負極活物質の表面に被膜を形成する被膜形成剤をさらに含有するように、負極合材を調製することが好ましい。被膜形成剤は、たとえば初回の充電時に、負極活物質の表面に被膜を形成する。被膜により、タングステン酸リチウムを負極活物質の表面に固定できると考えられる。また被膜には、たとえば高温保存時等において、タングステン酸リチウムの溶出を抑制する効果が期待できる。これにより高温保存時等において、Li析出耐性の低下を抑制する効果が期待できる。
〔4〕被膜形成剤は、ビニレンカーボネートであることが好ましい。ビニレンカーボネートに由来する被膜では、タングステン酸リチウムの溶出を抑制する効果が大きいと考えられる。
〔5〕第1ステップにおいて、負極合材におけるビニレンカーボネートの含有量を、該負極合材におけるタングステン酸リチウムの含有量で除した値が、0.85以上1.2以下となるように、該負極合材を調製することが好ましい。かかる範囲において、Li析出耐性の低下を抑制する効果が大きい傾向にあるためである。
〔6〕被膜形成剤は、リチウムビス(オキサレート)ボレートであってもよい。リチウムビス(オキサレート)ボレートに由来する被膜でも、タングステン酸リチウムの溶出を抑制する効果が期待できる。
〔7〕リチウムイオン二次電池用負極は、少なくとも負極活物質およびタングステン酸リチウムを含有する負極合材を備える。負極合材は、タングステン酸リチウムを0μmоl/gを超え201μmоl/g以下含有する。上記のように、タングステン酸リチウムが添加された負極合材では、Li析出耐性の向上が期待できる。
〔8〕負極合材は、タングステン酸リチウムを20μmоl/g以上含有することが好ましい。かかる範囲において、Li析出耐性の向上が期待できる。
上記によれば、Li析出耐性が向上したリチウムイオン二次電池用負極が提供される。
本発明の実施形態に係るリチウムイオン二次電池用負極の製造方法の概略を示すフローチャートである。 リチウムイオン二次電池の製造方法の概略を示すフローチャートである。 本発明の実施形態に係るリチウムイオン二次電池用負極の構成の一例を示す概略図である。 正極の構成の一例を示す概略図である。 電極群の構成の一例を示す概略図である。 リチウムイオン二次電池の構成の一例を示す概略断面図である。 負極合材におけるタングステン酸リチウムの含有量と、限界電流値との関係を示すグラフである。 ビニレンカーボネートの含有量をタングステン酸リチウムの含有量で除した値と、高温保存後の限界電流値との関係を示すグラフである。
以下、本発明の実施形態(以下「本実施形態」と記す場合がある)の一例を説明する。ただし、本実施形態は以下の説明に限定されるものではない。以下の説明では、リチウムイオン二次電池用負極を単に「負極」と、リチウムイオン二次電池を単に「電池」と記す場合がある。
<リチウムイオン二次電池用負極の製造方法>
図1は、本実施形態に係る製造方法の概略を示すフローチャートである。図1に示すように、当該製造方法は、第1ステップ(S101)と第2ステップ(S102)とを備える。以下、各ステップを説明する。
《第1ステップ(S101)》
第1ステップでは、少なくとも負極活物質およびタングステン酸リチウムを含有する負極合材を調製する。まず、負極合材を構成すべき各種材料を準備する。
(負極活物質)
負極活物質は、典型的には黒鉛である。負極活物質は、黒鉛の他、易黒鉛化性炭素(ソフトカーボン)、難黒鉛化性炭素(ハードカーボン)等であってもよい。すなわち、負極活物質は、黒鉛、易黒鉛化性炭素および難黒鉛化性炭素からなる群より選択される少なくとも1種でもよい。ここで易黒鉛化性炭素は、不活性雰囲気中2500℃以上の熱処理によって、黒鉛類似の規則的な結晶構造を生成し易い炭素材料を示す。また難黒鉛化性炭素は、同条件でも、黒鉛類似の規則的な結晶構造を生成し難い炭素材料を示す。
負極活物質は、たとえば鱗片状の天然黒鉛に球形化処理を施した粒子でもよい。球形化処理とは、たとえば、鱗片状の黒鉛粒子に、グラフェン平面と平行に応力を加えることにより、粒子を折りたたんで、粒子の外形を球形に近づける処理を示す。球形化処理は、部分的な粉砕を伴う場合もある。具体的には、たとえば高速気流中で、鱗片状の黒鉛粒子に衝撃を与える方法等が考えられる。球形化された黒鉛粒子に対して、さらに非晶質炭素(アモルファスカーボン)による被覆処理を施してもよい。すなわち負極活物質は、球形化黒鉛粒子と、該球形化黒鉛粒子の表面に付着した非晶質炭素とを含む複合粒子であってもよい。
負極活物質の平均粒径は、好ましくは5μm以上15μm以下である。本明細書の平均粒径は、レーザ回折散乱法によって測定された体積基準の粒度分布において、累積値50%での粒径(「d50」、「メジアン径」等とも称される)を示す。また負極活物質のBET比表面積は、好ましくは2.9m2/g以上5.1m2/g以下である。かかる範囲において、大電流充電特性と、保存特性とのバランスが良い。BET比表面積は、窒素ガスを用いたBET法により測定された値を示す。
(タングステン酸リチウム)
タングステン酸リチウムは、典型的にはLi2WO4である。ただしタングステン酸リチウムの形態は、必ずしもLi2WO4に限定されない。タングステン酸リチウムは、たとえばLi4WO5、Li629等の形態をとることも有り得る。またタングステン酸リチウムは、水和物である場合も有り得る。
タングステン酸リチウムの平均粒径は、負極活物質の平均粒径よりも小さいことが好ましい。これにより、負極活物質とタングステン酸リチウムとを混合した際に、タングステン酸リチウムを負極活物質の表面に配置しやすくなると考えられる。タングステン酸リチウムを負極活物質の表面に配置することにより、本実施形態に期待される効果が大きくなると考えられる。
タングステン酸リチウムの平均粒径は、好ましくは0.1μm以上5μm以下である。平均粒径が0.1μm以上のタングステン酸リチウムを用いることにより、Liイオン導電性が低い微粉が含まれ難くなるため、大電流充電特性の向上が期待できる。また平均粒径が5μm以下のタングステン酸リチウムを用いることにより、負極合材中において、タングステン酸リチウムが立体障害となり難く、良好な導電パスが形成されやすくなると考えられる。
(その他の成分)
前述の負極活物質およびタングステン酸リチウムの他、負極合材を構成する成分としては、増粘材および結着材等が挙げられる。
増粘材は、たとえばカルボキシメチルセルロース(CMC)、カルボキシメチルセルロースのナトリウム塩(CMC−Na)、ポリアクリル酸(PAA)、ポリアクリル酸ナトリウム(PAA−Na)、ポリビニルアルコール(PVA)等でよい。結着材は、たとえばスチレンブタジエンゴム(SBR)、アクリロニトリルブタジエンゴム(NBR)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)等でよい。
(被膜形成剤)
さらに本実施形態では、電気化学的な還元反応により負極活物質の表面に被膜を形成する被膜形成剤を、負極合材に含有させることが好ましい。電気化学的な還元反応は、たとえば電池において初回の充電時に生起させることができる。従来、こうした被膜形成剤は、電解液に添加されている。被膜形成剤を電解液ではなく、負極合材に直接含有させておくことにより、タングステン酸リチウムを負極活物質に固定する効果が大きくなると考えられる。また当該被膜によって、たとえば高温保存時等にタングステン酸リチウムの溶出を抑制できると考えられる。
被膜形成剤は、たとえば0.5〜1.5V(vs.Li+/Li)程度の範囲に、還元電位を有する化合物であることが好ましい。被膜形成剤としては、たとえばリチウムビス(オキサレート)ボレート〔LiB(C242;略称「LiBOB」〕、リチウムジフルオロオキサレートボレート〔LiBF2(C24)〕、リチウムジフルオロビス(オキサレート)ホスフェート〔LiPF2(C242〕、ジフルオロリン酸リチウム(LiPO22)、ビニレンカーボネート(VC)、ビニルエチレンカーボネート(VEC)、フルオロエチレンカーボネート(FEC)、エチレンサルファイト(ES)、プロパンスルトン(PS)等が挙げられる。これらの被膜形成剤は、1種単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。すなわち被膜形成剤は、LiBOB、LiBF2(C24)、LiPF2(C242、LiPO22、VC、VEC、FEC、ESおよびPSからなる群より選択される少なくとも1種でもよい。
本発明者の検討によると、上記の被膜形成剤のうち、VC、LiBOBにおいて特に大きな効果が期待できる。すなわち被膜形成剤は、好ましくはVCまたはLiBOBのうち少なくともいずれかである。
(負極合材の調製方法)
本実施形態において、負極合材の調製方法は特に限定されない。たとえば乾式混合により負極合材を調製してもよいし、湿式混合により負極合材を調製してもよい。負極合材は、たとえば溶媒に分散させることにより、塗料(「スラリー」、「ペースト」等と称される)となるように調製してもよい。あるいは、負極合材を造粒することにより、負極合材が造粒体(顆粒の集合体)となるように調製してもよい。以下では、好適手順の一例を示す。
まず負極合材を構成すべき各成分を秤量する。負極合材における各成分の配合は、たとえば次のとおりである。
増粘材 :0.1〜2質量%程度
結着材 :0.1〜2質量%程度
タングステン酸リチウム:0μmоl/gを超え201μmоl/g以下
負極活物質 :上記の成分以外の残部(典型的には90〜99質量%程度)。
上記のとおり、本実施形態では、負極合材がタングステン酸リチウムを、0μmоl/gを超え201μmоl/g以下含有するように、負極合材を調製する。かかる範囲でLi析出耐性の向上が期待できる。
本実施形態では、負極合材がタングステン酸リチウムを20μmоl/g以上201μmоl/g以下含有するように、負極合材を調製することが好ましい。後述するように、本発明者の検討では、20μmоl/g以上201μmоl/g以下の範囲において、Li析出耐性の向上幅が大きいことが確認されている。
同検討によると、Li析出耐性の向上幅がより大きい範囲は、20μmоl/g以上135μmоl/g以下の範囲であると考えられる。すなわち、本実施形態では、負極合材がタングステン酸リチウムを20μmоl/g以上135μmоl/g以下含有するように、負極合材を調製することがより好ましい。
同検討によると、Li析出耐性の向上幅がよりいっそう大きい範囲は、20μmоl/g以上80μmоl/g以下の範囲であると考えられる。すなわち、本実施形態では、負極合材がタングステン酸リチウムを20μmоl/g以上80μmоl/g以下含有するように、負極合材を調製することがよりいっそう好ましい。
さらに同検討によると、Li析出耐性の向上幅が最も大きい範囲は、32μmоl/g以上64μmоl/g以下の範囲であると考えられる。すなわち、本実施形態では、負極合材がタングステン酸リチウムを32μmоl/g以上64μmоl/g以下含有するように、負極合材を調製することが最も好ましい。
本実施形態において、被膜形成剤には、タングステン酸リチウムを負極活物質の表面に固定する効果が期待される。したがって負極合材における被膜形成剤の含有量は、負極合材におけるタングステン酸リチウムの含有量との関係から定められることが望ましいと考えられる。本発明者の検討によると、被膜形成剤がVCである場合、負極合材におけるVCの含有量を、該負極合材におけるタングステン酸リチウムの含有量で除した値が、0.85以上1.2以下となるように、該負極合材を調製することが好ましい。たとえば、タングステン酸リチウムの含有量が20μmоl/g以上201μmоl/g以下である場合、VCの含有量は、17μmоl/g以上241.2μmоl/g以下であることが好ましい。かかる範囲において、タングステン酸リチウムの溶出抑制効果が大きい傾向にあるためである。なお負極合材におけるVCの含有量を、該負極合材におけるタングステン酸リチウムの含有量で除した値は、より好ましくは0.90以上1.2以下である。
負極合材の調製には、たとえばプラネタリミキサ、ニーダ、ホモジナイザ等の一般的な混合装置、攪拌装置等を用いることができる。負極合材中にタングステン酸リチウムをより均一に分散させるとの観点から、以下に示すように、固練りステップ、希釈分散ステップを経て、負極合材を調製することが望ましい。
固練りステップでは、混合装置の混合容器に、負極活物質、増粘材およびタングステン酸リチウムを投入し、混合を行うことが好ましい。被膜形成剤を使用する場合、被膜形成剤は、固練りステップにおいて投入することが好ましい。かかる態様により、被膜形成剤に期待される効果が大きくなる可能性がある。
固練りステップでは、混合物の固形分比率が高い状態(すなわち粘度が高い状態)で、強いせん断力を加えながら、混合物を混練する。ここで固形分比率は、混合物において溶媒以外の成分が占める質量比率を示している。固練りステップにおける固形分比率は、たとえば60〜80質量%程度でよい。固練りステップにおける混合条件(混合時間、攪拌羽根の回転速度等)は、混合物の粉体物性等に応じて適宜変更できる。
希釈分散ステップでは、混合物に溶媒を追加し、固形分比率を下げた状態(すなわち粘度が低い状態)で、負極合材を溶媒中に分散させる。希釈分散ステップにおける固形分比率は、たとえば40〜60質量%程度である。結着材は、希釈分散ステップにおいて、添加することが望ましい。かかる態様により、大電流充電特性が向上する可能性がある。希釈分散ステップにおける混合条件も、混合物の粘度等に応じて適宜変更できる。たとえば希釈分散ステップでは、固練りステップよりも攪拌羽根の回転速度を速くしてもよい。以上より、負極合材を調製することができる。
《第2ステップ(S102)》
第2ステップでは、負極合材を用いてリチウムイオン二次電池用負極を製造する。上記のように負極合材が塗料化している場合には、負極集電体上に塗料を塗工し、乾燥させることにより、負極合材を負極集電体上に塗着する。塗工には、たとえばダイコータ、グラビアコータ等を用いることができる。負極集電体は、たとえば銅(Cu)箔等である。塗着後の負極合材、すなわち負極合材層を圧縮してもよい。圧縮には、たとえばロール圧延機等を用いることができる。その後、全体を所定の寸法に切断することにより、負極を製造することができる。切断には、たとえばスリッタ等を用いることができる。
負極集電体は、たとえばCu、ニッケル(Ni)等からなる発泡金属基材でもよい。この場合、発泡金属基材に塗料を含浸することにより、負極を製造することができる。また負極合材が造粒体である場合には、たとえば、ロール間で造粒体を圧密することにより、造粒体をシート状に成形し、負極を製造することもできる。
以上、第1ステップおよび第2ステップを経ることにより、リチウムイオン二次電池用負極を製造することができる。
<リチウムイオン二次電池用負極>
図3は、本実施形態に係るリチウムイオン二次電池用負極の構成の一例を示す概略図である。負極100は、帯状のシート部材である。負極100は、負極集電体101と、負極集電体101上に配置された負極合材102とを備える。負極合材102は、負極集電体101の両主面上に配置されている。負極集電体101が負極合材102から露出した露出部103は、外部端子との接続のために設けられている。負極集電体101上において、負極合材102は、負極合材層を構成している。負極100では、負極合材102が、少なくとも負極活物質およびタングステン酸リチウムを含有するため、Li析出耐性の向上が期待できる。
リチウムイオン二次電池用負極の製造方法において説明したように、負極合材は、タングステン酸リチウムを、0μmоl/gを超え201μmоl/g以下含有する。負極合材は、タングステン酸リチウムを20μmоl/g以上200μmоl/g以下含有することが好ましい。負極合材は、タングステン酸リチウムを20μmоl/g以上135μmоl/g以下含有することがより好ましい。負極合材は、タングステン酸リチウムを20μmоl/g以上80μmоl/g以下含有することがよりいっそう好ましい。負極合材は、タングステン酸リチウムを32μmоl/g以上64μmоl/g以下含有することが最も好ましい。負極合材において、タングステン酸リチウムの含有量は、たとえばICP発光分光分析装置(ICP−AES)等を用いて測定することができる。
負極合材は、前述した被膜形成剤(好ましくはVCまたはLiBOBの少なくともいずれか)を含有することが好ましい。負極合材に、被膜形成剤を直接含有させておくことにより、電池製造時に、負極活物質の表面に、被膜形成剤に由来する被膜を形成することができる。被膜により、タングステン酸リチウムを負極活物質の表面に固定する効果が期待できる。また当該被膜には、タングステン酸リチウムの溶出を抑制する効果が期待できる。被膜形成剤がVCである場合、負極合材において、VCの含有量を、タングステン酸リチウムの含有量で除した値は、0.85以上1.2以下であることが好ましい。同値は、0.90以上1.2以下であることがより好ましい。
<リチウムイオン二次電池の製造方法>
次に、リチウムイオン二次電池の製造方法を説明する。当該製造方法は、前述したリチウムイオン二次電池用負極の製造方法を含む、リチウムイオン二次電池の製造方法である。
すなわちリチウムイオン二次電池の製造方法は、少なくとも負極活物質およびタングステン酸リチウムを含有する負極合材を調製する第1ステップ(S101)と、該負極合材を用いてリチウムイオン二次電池用負極を製造する第2ステップ(S102)と、を備える。
図2は、リチウムイオン二次電池の製造方法の概略を示すフローチャートである。図2に示すように、当該製造方法は、負極製造ステップ(S100)、正極製造ステップ(S200)、電極群製造ステップ(S300)、ケース収容ステップ(S400)、注液ステップ(S500)および初期充放電ステップ(S600)を備える。
《負極製造ステップ(S100)》
負極製造ステップでは、前述したリチウムイオン二次電池用負極の製造方法に従って、負極を製造する。ここでは同じ説明を繰り返さない。
《正極製造ステップ(S200)》
正極製造ステップでは、正極を製造する。まず、正極活物質、導電材および結着材等を含有する正極合材を調製する。正極活物質は、特に限定されない。正極活物質は、たとえばLiCoO2、LiNiO2、一般式LiNiaCob2(ただし式中、a+b=1、0<a<1、0<b<1である。)で表される化合物、LiMnO2、LiMn24、一般式LiNiaCobMnc2(ただし式中、a+b+c=1、0<a<1、0<b<1、0<c<1である。)で表される化合物、LiFePO4等でよい。一般式LiNiaCobMnc2で表される化合物としては、たとえばLiNi1/3Co1/3Mn1/32等が挙げられる。正極合材は、正極活物質を、たとえば80〜98質量%程度含有するように調製される。
導電材は、たとえばアセチレンブラック、サーマルブラック等のカーボンブラック類でよい。正極合材は、導電材を、たとえば1〜10質量%程度含有するように調製される。結着材は、たとえばポリフッ化ビニリデン(PVdF)、PTFE等でよい。正極合材は、結着材を、たとえば1〜10質量%程度含有するように調製される。
前述した負極合材の調製と同様に、正極合材の調製にもプラネタリミキサ等の混合装置を用いることができる。溶媒には、たとえばN−メチル−2−ピロリドン(NMP)等を用いることができる。
正極合材を調製した後、たとえば正極合材を正極集電体上に塗着することにより、正極を製造できる。正極合材が塗料化されている場合、たとえばダイコータ等を用いて、該塗料を正極集電体上に塗工し、乾燥させればよい。正極集電体は、たとえばアルミニウム(Al)箔等である。塗着後の正極合材、すなわち正極合材層を圧縮してもよい。圧縮には、たとえばロール圧延機を用いることができる。その後、全体を所定の寸法に切断することにより、正極を製造することができる。切断には、たとえばスリッタ等を用いることができる。
図4は、正極の構成の一例を示す概略図である。正極200は、帯状のシート部材である。正極200は、正極集電体201と、正極集電体201上に配置された正極合材202とを備える。正極合材202は、正極集電体201の両主面上に配置されている。正極集電体201が正極合材202から露出した露出部203は、外部端子との接続のために設けられている。正極集電体201上において、正極合材202は、正極合材層を構成している。
《電極群製造ステップ(S300)》
電極群製造ステップでは、電極群を製造する。図5は、電極群の構成の一例を示す概略図である。図5に示すように、電極群800は、セパレータ300を挟んで、負極100と正極200とを積層し、さらにこれらを巻回することにより、製造される。電極群の製造には、巻回装置を用いることができる。電極群は、巻回後、たとえば平板プレス機等を用いて扁平状に成形してもよい。
セパレータ300は、たとえばポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)等からなる微多孔膜でよい。セパレータは、単層構造でもよいし、多層構造でもよい。セパレータは、たとえばPPの微多孔膜と、PEの微多孔膜とがPP/PE/PPの順で積層された3層構造を有していてもよい。セパレータは、その表面に無機フィラー(たとえばアルミナ等)を含有する耐熱層を有していてもよい。
《ケース収容ステップ(S400)》
ケース収容ステップでは、電池ケースに電極群を収容する。図6は、リチウムイオン二次電池の構成の一例を示す概略図である。電池ケース500は、角形の外形を呈する。電池ケースは、たとえば有底角形のケース本体と、蓋とから構成される。電池ケース500の材質は、たとえばAl合金等でよい。電池ケース500は、外部端子501,502を備える。電池ケース500には、注液口、安全弁、電流遮断機構等が設けられていてもよい。電極群800は、電池ケース500に収容される。収容時、電極群800は、露出部103,203において、外部端子501,502と接続される。
《注液ステップ(S500)》
注液ステップでは、電池ケースに電解液を注入する。電解液600は、たとえば電池ケース500に設けられた注液口から注入することができる。注液後、所定の手段(たとえばレーザ溶接等)で、電池ケースを密閉する。
電解液は、非プロトン性溶媒に、支持塩としてLi塩を溶解させた液体電解質である。非プロトン性溶媒は、たとえばエチレンカーボネート(EC)、プロピレンカーボネート(PC)、ブチレンカーボネート(BC)およびγ−ブチロラクトン(γBL)等の環状カーボネート類、ならびにジメチルカーボネート(DMC)、エチルメチルカーボネート(EMC)およびジエチルカーボネート(DEC)等の鎖状カーボネート類等が挙げられる。これらの非プロトン性溶媒を2種以上混合して混合溶媒としてもよい。混合溶媒において、環状カーボネート類と鎖状カーボネート類との体積比は、たとえば環状カーボネート類:鎖状カーボネート類=1:9〜5:5程度でよい。かかる範囲において、電気伝導率と電気化学的な安定性とのバランスが良い。
Li塩は、たとえばヘキサフルオロリン酸リチウム(LiPF6)、テトラフルオロホウ酸リチウム(LiBF4)、過塩素酸リチウム(LiClO4)、ヘキサフロオロ砒酸リチウム(LiAsF6)、リチウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド〔Li(CF3SO22N:略称「LiTFSI」〕、リチウムビス(フルオロスルホニル)イミド〔Li(FSO22N:略称「LiFSI」〕、トリフルオロメタンスルホン酸リチウム(LiCF3SO3)等でよい。2種以上のLi塩を併用してもよい。電解液中のLi塩濃度は、たとえば0.5〜2.0mоl/l程度でよい。
電解液は、前述したVCおよびLiBOB等の被膜形成剤、ならびにシクロヘキシルベンゼン(CHB)、ビフェニル(BP)等のガス発生剤等を含有していてもよい。
《初期充放電ステップ(S600)》
初期充放電ステップでは、初回の充放電を行う。このとき本実施形態の負極合材が、被膜形成剤を含有する場合には、被膜形成剤が還元分解され、負極活物質の表面に、被膜形成剤に由来する被膜が形成される。
換言すれば、リチウムイオン二次電池の製造方法は、負極合材に含有される被膜形成剤を電気化学的に還元分解することにより、負極活物質の表面に、該被膜形成剤に由来する被膜を形成するステップを含み得る。前述のように当該被膜には、タングステン酸リチウムの溶出抑制効果等が期待できる。
このステップでは、たとえば低い電流値によるフルレンジ充放電サイクルを1〜3回程度行うとよい。充電および放電は、たとえばCCCV方式とするとよい。具体的な充放電サイクル条件は、たとえば次のとおりである。
充電条件:CC電流値=0.1C、CV電圧=4.1V、カット電流値=0.01C
放電条件:CC電流値=0.1C、CV電圧=3.0V、カット電流値=0.01C。
ここで、電流値の単位「C」は電池の定格容量を1時間で放電しきる電流値を示す。また「CC」は定電流を示し、「CV」は定電圧を示し、「CCCV方式」は定電流−定電圧方式を示す。
以上のステップを経ることにより、リチウムイオン二次電池1000を製造することができる。
<リチウムイオン二次電池>
以上の製造方法で製造されたリチウムイオン二次電池においては、負極が、少なくとも負極活物質およびタングステン酸リチウムを含有する負極合材を備え、負極合材が、タングステン酸リチウムを0μmоl/gを超え201μmоl/g以下含有する。したがって当該リチウムイオン二次電池は、Li析出耐性が向上したリチウムイオン二次電池である。Li析出耐性の向上により、たとえば充電電流の上限を従来よりも高く設定することができる。これにより、回生電力の回収効率の向上あるいは充電時間の短縮等が期待できる。
リチウムイオン二次電池において、負極を構成する負極合材は、被膜形成剤に由来する被膜を含有することが好ましい。被膜は、VCまたはLiBOBの少なくともいずれかに由来することが好ましい。被膜は、負極活物質の表面に付着していることが好ましい。被膜は、タングステン酸リチウムにも付着していることが好ましい。すなわち負極合材は、負極活物質およびタングステン酸リチウムに付着した被膜を含有することが好ましい。当該被膜には、タングステン酸リチウムを負極活物質の表面に固定する効果が期待できる。また当該被膜には、たとえば高温保存時に、タングステン酸リチウムの溶出を抑制する効果が期待できる。
以上の特徴に基づき、当該リチウムイオン二次電池は、車載用途に好適と考えられる。リチウムイオン二次電池の定格容量は、たとえば1〜30Ah程度(典型的には4〜25Ah程度)である。
以上、角形電池を例にとって本実施形態を説明した。ただし上記の説明はあくまで一例であり、本実施形態は角形電池に限定されない。本実施形態は、たとえば円筒形電池、ラミネート式電池等に適用してもよい。電極群も巻回型に限定されない。電極群は、積層型(「スタック型」とも称される)としてもよい。
以下、実施例を用いて本実施形態を説明するが、本実施形態はこれらの例に限定されるものではない。
<実験1:負極合材におけるタングステン酸リチウムの含有量の検討>
実験1では、タングステン酸リチウムの含有量の検討を行った。具体的には、以下のようにNo.1〜No.21に係る負極ならびにこれを用いた電池(定格容量5Ah)を製造し、Li析出耐性を評価した。
《No.1》
1.負極製造ステップ(S100)
1−1.第1ステップ(S101)
まず以下の材料を準備した
負極活物質:非晶質コート球形化天然黒鉛
(BET比表面積=2.9m2/g、平均粒径=10μm)
タングステン酸リチウム:Li2WO4(平均粒径=3μm)
増粘材 :CMC−Na
結着材 :SBR
溶媒 :水
負極集電体:Cu箔
ここで、「非晶質コート球形化天然黒鉛」とは、球形化処理が施された天然黒鉛粒子に、非晶質炭素による被覆処理をさらに施した複合粒子を示している。
1−1−1.固練りステップ
プラネタリミキサの混合容器に、次の配合で各材料を投入した
増粘材 :1質量%(最終的な負極合材に対する値)
タングステン酸リチウム:20μmоl/g(最終的な負極合材に対する値)
負極活物質:残部(最終的な負極合材に対する値)。
混合容器に、混合物の固形分比率が65質量%となるように、溶媒を加え、固練りを行った。
1−1−2.希釈分散ステップ
次いで、混合物の固形分比率が50質量%となるように、溶媒を追加し、さらに混合した。このとき、1質量%(最終的な負極合材に対する値)の結着材も混合物に追加した。
以上より、少なくとも負極活物質およびタングステン酸リチウムを含有する負極合材を調製した。当該負極合材は塗料化されたものである。
1−2.第2ステップ(S102)
ダイコータを用いて、上記で得た塗料を負極集電体の両主面上に塗工し、乾燥させた。ロール圧延機を用いて、乾燥後の負極合材を圧縮した。さらにスリッタを用いて所定の寸法に切断した。以上より、図3に示す負極100を製造した。
2.正極製造ステップ(S200)
以下の材料を用いて、図4に示す正極200を製造した。正極合材の配合は、質量比で正極活物質:導電材:結着材=90:8:2とした。
正極活物質:LiNi1/3Co1/3Mn1/32
導電材 :アセチレンブラック
結着材 :PVdF
溶媒 :NMP
正極集電体:Al箔。
3.電極群製造ステップ(S300)
PP/PE/PPの3層構造を有するセパレータを準備した。巻回装置を用いて、セパレータを挟んで、負極と正極とを積層し、さらにこれらを巻回した。巻回後、平板プレス機を用いて、電極群を扁平状に成形した。これにより、図5に示す電極群800を製造した。
4.ケース収容ステップ(S400)
図6に示す角形の電池ケース500を準備した。電極群800を外部端子501,502と接続し、電極群800を電池ケース500に収容した。
5.注液ステップ(S500)
以下の組成の電解液600を電池ケース500に注入した。注入後、電池ケース500を密閉した
Li塩:LiPF6(1.1mоl/l)
溶媒 :[EC:DMC:EMC=3:4:3(体積比)]。
6.初期充放電ステップ(S600)
以下の条件の充放電サイクルを3サイクル実行した。今回の実験では、3サイクル目の放電容量を初期容量とした
充電条件:CC電流値=0.1C、CV電圧=4.1V、カット電流値=0.01C
放電条件:CC電流値=0.1C、CV電圧=3.0V、カット電流値=0.01C。
以上より、No.1に係る負極およびこれを用いた電池を製造した。
《No.2〜No.21》
表1に示すように、負極活物質のBET比表面積およびタングステン酸リチウムの含有量を変更することを除いては、No.1と同様にして、No.2〜No.21に係る負極およびこれを用いた電池を製造した。
表1中、タングステン酸リチウムを含有しないか、またはタングステン酸リチウムの含有量が201μmоl/gを超える、No.7、No.13、No.14、No.20、No.21が比較例であり、それ以外が実施例である。
《電池性能の評価》
電池の限界電流値を指標として、電池のLi析出耐性を評価した。限界電流値の測定手順は、次のとおりである。
まず、第1電流値で20秒間のパルス充電と、20秒間のパルス放電との組み合わせを1サイクルとするパルス充放電サイクルを100サイクル行う。100サイクル後、初期容量と同様にして、サイクル後容量を測定する。サイクル後容量を初期容量で除することにより、容量維持率(百分率)を算出する。容量維持率が90%以上であれば、電流値を第1電流値よりも大きい第2電流値(たとえば第1電流値の1.1倍程度とする)に変更して、上記と同様にパルス充放電サイクルと容量維持率の算出とを行う。
これらの操作を繰り返すことにより、容量維持率が90%を維持できる限界の電流値、すなわち限界電流値を求める。パルス充放電サイクルに伴う容量維持率の低下は、Li析出によると考えられる。したがって、限界電流値が大きいことは、大きな充電電流であってもLi析出が起こり難いこと、すなわちLi析出耐性が良好であることを示している。
測定結果を表1および図7に示す。表1中、No.1〜No.7の「限界電流値の比」の欄に示す数値は、負極合材がLi2WO4を含有しないNo.7の限界電流値を1とし、これに対する相対値(無次元数)を示している。
No.8〜No.14の「限界電流値の比」の欄に示す数値は、負極合材がLi2WO4を含有しないNo.14の限界電流値を1とし、これに対する相対値を示している。
No.15〜No.21の「限界電流値の比」の欄に示す数値は、負極合材がLi2WO4を含有しないNo.21の限界電流値を1とし、これに対する相対値を示している。
《結果と考察》
図7は、負極合材におけるタングステン酸リチウムの含有量と、限界電流値との関係を示すグラフである。図7の縦軸は、「No.1〜No.7」、「No.8〜No.14」および「No.15〜No.21」の各サンプル群において、Li2WO4を含有しないサンプルの限界電流値を1とし、これに対する相対値を示している。図7の横軸は、負極合材におけるLi2WO4の含有量を示している。
表1および図7より、負極合材にLi2WO4を含有させることにより、限界電流値が高くなることが分かる。タングステン酸リチウムの存在により、負極活物質の周囲においてLiイオンが増え、なおかつ負極活物質の反応性が向上するためと考えられる。ただし、Li2WO4の含有量が201μmоl/gを超えると、限界電流値がむしろ低下している。したがってLi2WO4の含有量は201μmоl/g以下であることを要する。
今回の実験では、Li2WO4の含有量が、20μmоl/g以上である範囲において、その効果が大きいことを確認できた。したがって、負極合材におけるLi2WO4の含有量は、20μmоl/g以上が好ましいと考えられる。
表1および図7より、限界電流値の向上幅は、負極合材におけるLi2WO4の含有量が、20μmоl/g以上135μmоl/g以下である場合に、より大きい傾向にある。さらに負極合材におけるLi2WO4の含有量が、20μmоl/g以上80μmоl/g以下である場合には、限界電流値の向上幅がよりいっそう大きくなっている。表1および図7より、最も大きな効果が期待できる範囲は、32μmоl/g以上64μmоl/g以下の範囲であると考えられる。
<実験2:負極合材における被膜形成剤の含有量の検討>
実験2では、被膜形成剤の含有量の検討を行った。具体的には、以下のようにNo.22〜No.28に係る負極ならびにこれを用いた電池を製造し、保存後のLi析出耐性を評価した。
《No.22〜No.28》
No.22〜28では、BET比表面積が4.1m2/gである負極活物質を用い、負極合材におけるタングステン酸リチウムの含有量は43μmоl/gとした。
被膜形成剤として、ビニレンカーボネート(VC)を準備した。VCは、固練りステップにおいて、負極活物質等と共に、混合物に追加した。表2に示すように、各サンプルにおいて、VCの量を変更して、各種負極合材を調製した。表2中、「(VCの含有量)÷(Li2WO4の含有量)」の欄に示す数値は、負極合材におけるビニレンカーボネートの含有量を、負極合材におけるタングステン酸リチウムの含有量で除した値(無次元数)を示している。これらを除いては前述のNo.1と同様にして、No.22〜No.28に係る負極およびこれを用いた電池を製造した。No.22〜No.28はいずれも実施例である。
《電池性能の評価》
実験1と同様にして、初期の限界電流値を測定した。結果を表2に示す。表2中、「初期」の欄に示す「限界電流値の比」は、No.25の初期の限界電流値を1とし、これに対する相対値(無次元数)を示している。
初期の限界電流値を測定した後、実験2では、以下のようにして高温保存後の限界電流値を測定した。電池のSOC(State оf charge)を80%に調整した。60℃に設定された恒温槽内に電池を配置した。この状態で電池を60日間保管した。60日経過後、初期と同様にして、限界電流値を測定した。結果を表2および図8に示す。表2中「高温保存後」の欄に示す「限界電流値の比」は、No.25の初期の限界電流値を1とし、これに対する相対値を示している。
《結果と考察》
図8は、負極合材におけるVCの含有量を、負極合材におけるタングステン酸リチウムの含有量で除した値と、高温保存後の限界電流値との関係を示すグラフである。図8の縦軸は、No.25の初期の限界電流値を1とし、これに対する相対値を示している。図8の横軸は、負極合材におけるVCの含有量を、負極合材におけるタングステン酸リチウムの含有量で除した値を示している。
表2および図8から、負極合材におけるVCの含有量を、負極合材におけるタングステン酸リチウムの含有量で除した値が、0.85以上1.2以下となるように、負極合材を調製することにより、高温保存後のLi析出耐性の低下を大幅に抑制できることが分かる。VCに由来する被膜により、タングステン酸リチウムの溶出が抑制されるためと考えられる。
表2および図8から、負極合材におけるVCの含有量を、負極合材におけるタングステン酸リチウムの含有量で除した値は、0.90以上1.2以下の範囲がより好ましいと考えられる。
なお今回の実験では、被膜形成剤としてVCを用いたが、LiBOBを用いても同様の効果が期待できる。
今回開示された実施形態および実施例はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
100 負極(リチウムイオン二次電池用負極)、101 負極集電体、102 負極合材、103,203 露出部、200 正極、201 正極集電体、202 正極合材、300 セパレータ、500 電池ケース、501,502 外部端子、600 電解液、800 電極群、1000 リチウムイオン二次電池。

Claims (8)

  1. 少なくとも負極活物質およびタングステン酸リチウムを含有する負極合材を調製する第1ステップと、
    前記負極合材を用いてリチウムイオン二次電池用負極を製造する第2ステップと、を備え、
    前記第1ステップにおいて、前記負極合材が前記タングステン酸リチウムを0μmоl/gを超え201μmоl/g以下含有するように、前記負極合材を調製する、リチウムイオン二次電池用負極の製造方法。
  2. 前記第1ステップにおいて、前記負極合材が前記タングステン酸リチウムを20μmоl/g以上含有するように、前記負極合材を調製する、請求項1に記載のリチウムイオン二次電池用負極の製造方法。
  3. 前記第1ステップにおいて、前記負極合材が、電気化学的な還元反応により前記負極活物質の表面に被膜を形成する被膜形成剤をさらに含有するように、前記負極合材を調製する、請求項1または請求項2に記載のリチウムイオン二次電池用負極の製造方法。
  4. 前記被膜形成剤は、ビニレンカーボネートである、請求項3に記載のリチウムイオン二次電池用負極の製造方法。
  5. 前記第1ステップにおいて、前記負極合材における前記ビニレンカーボネートの含有量を、前記負極合材における前記タングステン酸リチウムの含有量で除した値が、0.85以上1.2以下となるように、前記負極合材を調製する、請求項4に記載のリチウムイオン二次電池用負極の製造方法。
  6. 前記被膜形成剤は、リチウムビス(オキサレート)ボレートである、請求項3に記載のリチウムイオン二次電池用負極の製造方法。
  7. 少なくとも負極活物質およびタングステン酸リチウムを含有する負極合材を備え、
    前記負極合材は、前記タングステン酸リチウムを0μmоl/gを超え201μmоl/g以下含有する、リチウムイオン二次電池用負極。
  8. 前記負極合材は、前記タングステン酸リチウムを20μmоl/g以上含有する、請求項7に記載のリチウムイオン二次電池用負極。
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