JP2017044691A - ガスセンサの回復処理方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】従来よりも短時間で出力を回復できるガスセンサの回復処理方法を提供する。【解決手段】ガスセンサの出力回復処理方法が、あらかじめ実験的に特定しておいた、回復率が95%以上となることが見込める条件設定範囲から回復処理温度T1と回復処理時間Δτ1とを設定する工程と、温度T1と時間Δτ1とに基づいて回復処理を行う工程と、を備え、回復処理工程においては、処理開始時のセンサ素子の加熱を、ヒータDuty比を通常駆動時よりも高い値D1に瞬時に上げたうえで、温度T1に到達するまでの間は当該値D1を保つことによって行い、温度T1に到達後、時間Δτ1が経過するまでの間は、Duty比を値D2に下げてPID制御を行って温度T1を維持し、時間Δτ1が経過した時点で、Duty比を値D3に下げ、素子温度が通常駆動時の1〜1.2倍の値に到達すると、Duty比を瞬時に通常駆動時の値D0に変更する、ようにした。【選択図】図1

Description

本発明は、ガスセンサの出力を回復させる処理に関し、特に、固体電解質を主たる構成材料とするセンサ素子に対し加熱処理を行うことによって出力を回復させる処理に関する。
例えば排ガスなどの被測定ガス中の所定ガス成分を検知してその濃度を求めるガスセンサには、半導体型、接触燃焼型、酸素濃度差検知型、限界電流型、混成電位型など、種々の方式のものがある。そのなかには、ジルコニアなどの固体電解質たるセラミックスを主たる構成材料としたセンサ素子に、貴金属を主成分とする電極を設けたものが広く知られている。
ジルコニア等のセラミックスをセンサ素子の主たる構成材料とするガスセンサは、長期の使用によって電極表面に被測定ガス中のガス成分や被毒物質が付着し、出力値が変化することも知られている。係る出力変化が生じた場合、元の(使用初期の)出力値を再び実現することや、あるいは元の出力値になるべく近い出力値が得られるようにすることを意図した回復処理が、センサ素子に対し施される。係る回復処理としては、電気的処理(例えば特許文献1および特許文献2参照)や加熱処理(例えば特許文献3参照)が例示される。
ここで、電気的処理とは、固体電解質を介して対になっている電極間に、プラス・マイナスの電位を交互に印加することによって、電極を微細化させるか、あるいは吸着物質を脱離させることで、出力を回復させる手法である。
一方、加熱処理は、吸着物質や被毒物質を高温に曝すことによって、これを脱離させるかまたは焼ききる(酸化する)ことで、出力を回復させる手法である。
特開平6−265522号公報 特許第3855979号公報 特開平11−326266号公報
加熱処理による出力の回復は、一般的に長い処理時間を要する。しかしながら、センサ素子に対し加熱処理を行った場合、センサ素子が通常の動作温度に復帰するまでガスセンサは濃度を測定できず機能しないことから、加熱処理を行う場合、その処理時間はできるだけ短い方が好ましい。
しかしながら、特許文献3に開示されている加熱処理の時間は10分程度と長い。特許文献3には、設定温度にまで加熱することについては言及があるものの、加熱処理の温度プロファイルを最適化することによる加熱処理時間の短縮については、何らの開示も示唆もみられない。
また、炭化水素ガスセンサのセンサ素子の検知電極が融点の低いAu(金)を多く含む場合、加熱処理によってセンサ素子を高温環境に長い時間曝すと、当該検知電極の性状が変化し、センサ出力に影響を与えてしまう可能性がある。炭化水素ガスセンサのセンサ素子が回復対象である場合は、この点からも、加熱処理の処理時間はできるだけ短い方が好ましい。
本発明は上記課題に鑑みてなされたものであり、従来よりも短時間でガスセンサの出力を回復させることができるガスセンサの回復処理方法を提供することを目的とする。
上記課題を解決するため、本発明の第1の態様は、ガスセンサに備わるセンサ素子を、前記センサ素子内部に備わるヒータを用いて通常駆動時の温度である第1の温度よりも高い第2の温度である回復処理温度に加熱することによって前記ガスセンサの出力を回復させる、回復処理の方法であって、前記回復処理温度と、前記第1の温度から前記回復処理温度への昇温の開始時から前記回復処理温度の維持の終了時までの時間である回復処理時間とを設定する条件設定工程と、前記条件設定工程において定めた前記回復処理温度と前記回復処理時間とに基づいて前記回復処理を行う回復処理工程と、を備え、前記条件設定工程においては、あらかじめ実験的に特定しておいた、前記ガスセンサの使用開始時と前記回復処理直前のセンサ出力の差分値に対する、前記回復処理直後と回復処理直前のセンサ出力の差分値の比である回復率が95%以上となることが見込める条件設定範囲から回復処理温度と回復処理時間とを設定し、前記回復処理工程においては、前記回復処理の開始時に行う、前記第1の温度から前記回復処理温度までのセンサ素子の加熱を、前記ヒータにおけるDuty比を前記通常駆動時の値よりも高い所定の値D1に瞬時に上げたうえで、前記回復処理温度に到達するまでの間は当該値D1を保つことによって行い、前記センサ素子が前記回復処理温度に到達した後、前記回復処理時間が経過するまでの間は、前記Duty比を値D1の40%以上80%以下の値D2に下げたうえで、当該値D2を制御目標値としたPID制御を行うことで回復処理温度を維持し、前記回復処理時間が経過した時点で、前記センサ素子の温度を低下させるべく前記Duty比を値D2よりも小さい値D3に下げ、前記センサ素子の温度が前記第1の温度の1〜1.2倍の値に到達すると、前記Duty比を瞬時に前記通常駆動時の値D0に変更し、係る値D0を制御目標値として、通常駆動時の制御動作に復帰させるようにする、ことを特徴とする。
本発明の第2の態様は、第1の態様に係るガスセンサの回復処理方法であって、前記回復処理時間を1分以内とする、ことを特徴とする。
本発明の第3の態様は、第1または第2の態様に係るガスセンサの回復処理方法であって、前記センサ素子の検知電極がAuを含んでなり、前記回復処理温度をAuの融点℃以下とする、ことを特徴とする。
本発明の第4の態様は、第1ないし第3の態様のいずれかに係るガスセンサの回復処理方法であって、5%≦D0≦30%、30%≦D1≦100%、かつ、0%≦D3≦20%である、ことを特徴とする。
本発明の第1ないし第4の態様によれば、回復率が高く、従来よりも処理時間が短い回復処理が、実現されるので、回復処理のためにガスセンサが被測定ガスの濃度測定を行えない欠測時間が、従来よりも短縮される。
ガスセンサを対象に行う、回復処理の手順を示す図である。 回復処理の際のセンサ制御温度とDuty比の時間変化を示す図である。 Duty比を説明するための図である。 混成電位型のガスセンサを例とした、条件設定範囲REを示す図である。 ガスセンサ100の概略構成図である。 回復処理におけるガスセンサ100のセンサ制御温度とDuty比の時間変化を示す図である。 ガスセンサ200の概略構成図である。 回復処理におけるガスセンサ200のセンサ制御温度とDuty比の時間変化を示す図である。 ガスセンサ300の概略構成図である。 回復処理におけるガスセンサ300のセンサ制御温度とDuty比の時間変化を示す図である。 実施例および比較例に係るガスセンサのセンサ出力の時間変化を示す図である。
<ガスセンサの回復処理とその手順>
図1は、本実施の形態においてガスセンサを対象に行う、回復処理の手順を示す図である。図2は、係る回復処理の際のセンサ制御温度とDuty比の時間変化を示す図である。図3は、Duty比を説明するための図である。
本実施の形態において回復処理とは、概略、経時的な使用によって低下するガスセンサの出力(センサ出力)を、使用初期の値もしくはこれになるべく近い値にするための加熱処理である。
本実施の形態において回復処理の対象となるガスセンサは、ディーゼル乗用車に搭載されてなるエンジンの排気管内に存在する排ガスなどを被測定ガスとし、該被測定ガス中の未燃炭化水素ガスの濃度を、好適に求めるためのものである。なお、本明細書において、未燃炭化水素ガスには、C、C、n−C8などの典型的な炭化水素ガス(化学式上、炭化水素に分類されるもの)に加えて、一酸化炭素(CO)や水素も含むものとする。
より具体的には、本実施の形態において回復処理の対象となるガスセンサは、酸素イオン導電性の固体電解質であるジルコニア(ZrO)を主たる構成材料とするセンサ素子を備えるものであり、センサ素子において被測定ガス雰囲気に接触する態様にて設けられてなる検知電極と酸素濃度一定の雰囲気に接触する態様にて設けられてなる基準電極との間の電位差が、センサ出力として得られるものである。そして、当該センサ出力に基づいて、被測定ガス中の炭化水素ガス成分の濃度を知ることができるようになっている。
また、センサ素子には、素子全体を加熱するためのヒータが内蔵されてなり、ガスセンサの実使用時(通常駆動時)のみならず、回復処理の際にも、素子外部のヒータ電源からのヒータへの通電によってセンサ素子を加熱するようになっている。以下、ヒータによる加熱によって制御されるセンサ素子の温度を、センサ制御温度と称する。センサ制御温度は、通電の際のヒータの抵抗値を換算することによって実測することが可能であり、当該抵抗値をモニタすることで絶えずモニタされる。
なお、本実施の形態において、ヒータに対する通電は、図3に示すように周期的にON/OFFを繰り返すことによって行う。このときのON/OFFの1周期に対するONの割合(実際に通電されている時間の割合)がDuty比(単位%)である。なお、本実施の形態においては以降、Duty比の値として、ヒータに対する印加電圧が14Vであるときの値を用いるものとする。
回復処理を行っていない通常駆動時(つまりはセンサ出力を取得可能な状態にあるとき)、ガスセンサにおいては、センサ制御温度がT0なる値を保つように、ヒータがPID制御されているとする(図2参照)。このときのDuty比の制御目標値をD0とする。ただし、5%≦D0≦30%である。
いま、時刻t=t0において回復処理を開始するものとする(図2参照)。回復処理を開始するには、まず、図1および図2に示すように、Duty比を通常駆動時の値(〜D0)よりも高い所定の値D1に瞬時に上げる(ステップS1)。ここで、30%≦D1≦100%である。
Duty比を上げることにより、センサ素子は加熱され、センサ制御温度は上昇する。あらかじめ定めた回復処理温度T1に到達するまでの間(ステップS2でNO)は、Duty比は値D1に保たれる。
ある時刻t=t1でセンサ制御温度が回復処理温度T1に到達すると(ステップS2でYES)、この回復処理温度T1を維持するべく、Duty比を値D1から下げて(ステップS3)、D1の40%以上80%以下の値D2(つまりは12%≦D2≦80%)を制御目標値としたPID制御へと移行する(ステップS4)。
この回復処理温度T1の維持は、時刻t=t0からの経過時間があらかじめ定めた回復処理時間Δτ1となる時刻t=t2=t0+Δτ1までの間(ステップS5でNO)、継続される。センサ素子を回復処理温度T1にて維持することにより、センサ素子の検知電極等に付着している吸着物質や被毒物質が脱離する。
回復処理温度T1と回復処理時間Δτ1とは、あらかじめ実験的に特定しておいた、高い回復率が見込める回復処理温度および回復処理時間の条件範囲(高回復率範囲)に基づいて定められる。なお、回復率とは、ガスセンサの使用開始時と回復処理直前のセンサ出力の差分値に対する、回復処理直後と回復処理直前のセンサ出力の差分値の比である。回復処理温度T1と回復処理時間Δτ1の設定の詳細については後述する。
回復処理時間Δτ1の経過時刻である時刻t=t2になると(ステップS5でYES)、センサ制御温度を回復処理温度T1から通常駆動時の温度T0へと低下させるべくDuty比を値D2よりも小さい値D3に下げる(ステップS6)。ここで、0%≦D3≦20%である。
センサ制御温度が温度T0の1〜1.2倍の値に到達するまでの間(ステップS7でNO)、Duty比は値D3に保たれる。
ある時刻t=t3でセンサ制御温度が温度T0の1〜1.2倍の値に到達すると(ステップS7でYES)、Duty比を瞬時に通常駆動時の値D0に変更し(ステップS8)、係る値D0を制御目標値としたPID制御へと移行する(ステップS9)。つまりは通常駆動時の制御動作に復帰する。
以上が、本実施の形態における回復処理の手順である。
<回復処理温度および回復処理時間の設定>
図2に示したように、本実施の形態に係る回復処理においては、t=t0からt=t3までの時間Δτ2=t3−t0が、センサ出力が得られない欠測時間となる。ガスセンサは通常、被測定ガスの濃度をリアルタイムで測定するべく、連続的な使用が求められるものであることから、この欠測時間はできるだけ短い方が望ましいが、その一方で、一度の処理が十分な効果を奏するように、つまりは高い回復率が実現されるように、回復処理を行うことも求められる。また、回復処理温度T1を高くしすぎると、センサ素子に備わる電極が溶融し劣化してしまうという点も考慮する必要がある。通常は、回復処理温度T1は、通常駆動時の温度T0よりも200℃〜500°程度高い値に設定されればよい。
本実施の形態においては、これらの点を鑑み、上述のようにあらかじめ実験的に高い回復率が見込める回復処理温度および回復処理時間の条件範囲(高回復率範囲)を特定しておき、係る高回復率範囲に基づいて、回復処理を行う際の回復処理温度T1および回復処理時間Δτ1を設定するようにする。
より詳細には、未使用のガスセンサを複数用意し、全てのガスセンサについて共通の条件で初期のセンサ出力測定(そのときの出力値をy0とする)と、意図的にセンサ出力を低下させる処理である劣化処理と、劣化処理後のセンサ出力(同:y1)とを行った後、個々のガスセンサ毎に異なる処理条件(異なる回復処理温度と回復処理時間の組み合わせ)で、図1に示した手順での回復処理を行い、さらに、全てのガスセンサについて共通の条件で回復処理後のセンサ出力測定(同:y2)を行い、それぞれのガスセンサについて以下の式(1)により回復率r(%)を算出する。
r(%)={(y2−y1)/(y0−y1)}×100・・・(1)
係る場合において、センサ出力の測定は、実使用時の被測定ガスの組成に類似した組成を有する基準ガスを被測定ガスとして行う。また、劣化処理は、それぞれのガスセンサを基準ガスに比して未燃炭化水素ガス濃度が十分に高いガス雰囲気に所定時間曝すことによって行う。
そして、回復率rが95%以上となる回復処理温度と回復処理時間の範囲を高回復率範囲と定める。なお、95%以上という回復率rは、ガスセンサの測定精度に照らせば十分にセンサ出力が回復したとみなすことができる値である。また、劣化処理の条件は、ガスセンサに実際に生じるセンサ出力の低下の程度と少なくとも同程度以上にセンサ出力を低下させるように定められているので、高回復率範囲から回復処理温度T1と回復処理時間Δτ1とを設定した場合には、実際に回復処理に供するガスセンサのセンサ出力においても、95%以上という高い回復率を見込むことができる。
最後に、特定された高回復率範囲から、電極の融点を超えず、かつ、なるべく回復処理時間が短くなる範囲を、条件設定範囲REとし、係る条件設定範囲REから回復処理における回復処理温度T1と回復処理時間Δτ1とを設定する。
図4は、通常駆動時において温度T0=500℃であり、センサ素子の外面に融点が1064℃であるAu(金)を含有する検知電極10を備えた混成電位型のガスセンサ(図5参照)を例とした、条件設定範囲REを示す図である。なお、図4に示した結果を求めるにあたっては、基準ガスの組成を、
=300ppm、O=10%、HO=5%、N=残余
とし、劣化処理時のガス雰囲気の組成を、
=2000ppm、O=10%、N=残余
とし、劣化処理の処理時間を15分としている。
図4においては、回復率rが95%以上であって95%に最も近い値を菱形印(◆)にてプロットし、回復率rが95%未満であって95%に最も近い値を四角印(■)にてプロットしている。
図4においては、菱形印のデータ点を結んで得られる曲線Lよりも回復処理温度が高い範囲が、高回復率範囲ということになる。曲線Lは、回復処理時間が小さいほど回復処理温度が高くなる傾向があり、これは、短い回復処理時間Δτ1で高い回復率rを実現するには、回復処理温度T1を高くする必要があることを示している。
そして、Auの融点よりも低い1000℃以下であり、かつ、回復処理時間が1分以下となる範囲が、条件設定範囲REとされている。係る条件設定範囲REから回復処理温度T1および回復処理時間Δτ1を定めたうえで、図1に示した手順で回復処理を行えば、短い回復処理時間および欠測時間で、95%以上という高い回復率rでの回復処理が見込める。
なお、図4に例示したのは、センサ素子の外面に検知電極を備えたガスセンサについての、高回復率範囲を示す曲線Lおよび条件設定範囲REであるが、電極組成、センサ素子の構成材料、および被測定ガスの種類が同様であれば、構造の異なるセンサ素子を有するガスセンサにも図4に例示した条件設定範囲REを適用が可能である。その際、回復処理温度の要件は少なくとも検知電極が備わる位置の近傍でみたされていればよく、例えばヒータ近傍やセラミックスのみが存在する部分などでは、センサ素子の特性に影響を与えない範囲で、条件設定範囲REの上限温度範囲を超えていてもよい。
以上、説明したように、本実施の形態によれば、ガスセンサにおけるセンサ出力を回復させる回復処理をセンサ素子に対する加熱処理によって行うにあたって、あらかじめ実験的に特定しておいた95%以上の回復率が見込める条件範囲から、電極の融点を超えず、かつ、なるべく回復処理時間が短くなるように、回復処理温度と回復処理時間とを定めておくようにする。そして、実際の回復処理においては、通常駆動時の温度から回復処理温度までのセンサ素子の加熱を、センサ素子に備わるヒータにおけるDuty比を通常駆動時の値よりも高い所定の値D1に瞬時に上げたうえで、回復処理温度に到達するまでの間は当該値D1を保つことによって行い、センサ素子が回復処理温度に到達した後、回復処理時間が経過するまでの間は、Duty比を値D1の40%以上80%以下の値D2に下げたうえで、当該値D2を制御目標値としたPID制御を行い、回復処理温度を維持するようにする。そして、回復処理時間が経過した時点で、センサ素子の温度を低下させるべくDuty比を値D2よりも小さい値D3に下げ、センサ素子の温度が通常駆動時の温度の1〜1.2倍の値に到達すると、Duty比を瞬時に通常駆動時の値D0に変更し、係る値D0を制御目標値として、通常駆動時の制御動作に復帰させるようにする。
係る態様にて回復処理を行うようにすることで、回復率が高く、従来よりも処理時間が短い回復処理が、実現されるので、回復処理のためにガスセンサが被測定ガスの濃度測定を行えない欠測時間が、従来よりも短縮される。
なお、回復処理を行ったガスセンサを使用し続けると、再びセンサ出力は低下する。その場合は、改めて回復処理を行えばよい。すなわち、回復処理は、繰り返し行ったとしてもその都度その効果を奏するものである。換言すれば、適宜のタイミングで回復処理を行うことで、ガスセンサの長寿命化を図ることができる。
実施例として、センサ素子の構造が異なる3種類のガスセンサについて、回復処理を行った。
(実施例1)
<センサ素子の概要>
図5は、本実施例において回復処理の対象としたガスセンサ100の概略構成図である。図5(a)は、ガスセンサ100の主たる構成要素であるセンサ素子101の長手方向(以下、素子長手方向)に沿った垂直断面図である。また、図5(b)は、図5(a)のA−A’位置における素子長手方向に垂直な断面を含む図である。
ガスセンサ100は、概略的にいえば、ジルコニア(ZrO)等の酸素イオン伝導性固体電解質たるセラミックスを主たる構成材料とするセンサ素子101の表面に設けた検知電極10と、該センサ素子101の内部に設けた基準電極20との間に、混成電位の原理に基づいて両電極近傍における測定対象たるガス成分の濃度の相違に起因して電位差が生じることを利用して、被測定ガス中の当該ガス成分の濃度を求める混成電位型のガスセンサである。
また、センサ素子101には、上述した検知電極10および基準電極20に加えて、基準ガス導入層30と、基準ガス導入空間40と、表面保護層50とが主に設けられてなる。
センサ素子101は、それぞれが酸素イオン伝導性固体電解質からなる第1固体電解質層1と、第2固体電解質層2と、第3固体電解質層3と、第4固体電解質層4と、第5固体電解質層5と、第6固体電解質層6との6つの層を、図面視で下側からこの順に積層した構造を有し、かつ、主としてそれらの層間あるいは素子外周面に他の構成要素を設けてなる。なお、それら6つの層を形成する固体電界質は緻密な気密のものである。係るセンサ素子101は、例えば、各層に対応するセラミックスグリーンシートに所定の加工および回路パターンの印刷などを行った後にそれらを積層し、さらに、焼成して一体化させることによって製造される。
検知電極10は、被測定ガスを検知するための電極である。検知電極10は、Auを所定の比率で含むPt、つまりはPt−Au合金と、ジルコニアとの多孔質サーメット電極として形成されてなる。係る検知電極10は、センサ素子101の表面Sa(図5において第6固体電解質層6の上面)であって、長手方向の一方端部たる先端部E1寄りの位置に平面視略矩形状に設けられてなる。なお、ガスセンサ100が使用される際には、センサ素子101のうち、少なくとも係る検知電極10が設けられている部分までが、被測定ガス中に露出する態様にて配置される。
より詳細には、検知電極10においては、その構成材料たるPt−Au合金につき、Auの組成比を10重量%とすることで、Au存在比が0.7となっている。これによって、未燃炭化水素ガスに対する触媒活性が不能化されてなる。つまりは、検知電極10での未燃炭化水素ガスの分解反応を抑制させられてなる。これにより、ガスセンサ100においては、検知電極10の電位が、当該未燃炭化水素ガスに対して選択的に、その濃度に応じて変動する(相関を有する)ようになっている。換言すれば、検知電極10は、未燃炭化水素ガスに対しては、電位の濃度依存性が高い一方で、他の被測定ガスの成分に対しては電位の濃度依存性が小さいという特性を有するように、設けられてなる。
なお、本明細書において、Au存在比とは、検知電極10を構成する貴金属粒子の表面のうち、Ptが露出している部分に対する、Auが被覆している部分の面積比率を意味している。Ptが露出している部分の面積と、Auによって被覆されてなる部分の面積が等しいときに、Au存在比は1となる。本明細書においては、XPS(X線光電子分光法)により得られるAuとPtとについての検出ピークのピーク強度から、相対感度係数法を用いてAu存在比を算出するものとする。
なお、検知電極10においてAu存在比が0.3以上である場合、検知電極10を構成する貴金属粒子の表面にAuが濃化した状態となる。より詳細には、PtリッチなPt−Au合金粒子の表面近傍に、AuリッチなPt−Au合金が形成された状態となる。係る状態が実現されてなる場合に、検知電極10における触媒活性が好適に不能化され、検知電極10の電位の未燃炭化水素ガス濃度依存性が高められる。
また、検知電極10における貴金属成分とジルコニアとの体積比率は、5:5から8:2程度であればよく、本実施例においては6:4となっている。
また、ガスセンサ100がその機能を好適に発現するには、検知電極10の気孔率が10%以上30%以下であり、検知電極10の厚みは、5μm以上であることが好ましい。特に、気孔率が15%以上25%以下であり、厚みが25μm以上35μm以下であることがより好ましい。本実施例においては気孔率が20%となっており、厚みが25μmとなっている。
基準電極20は、センサ素子101の内部に設けられた、被測定ガスの濃度を求める際に基準となる平面視略矩形状の電極である。より具体的には、基準電極20は、第5固体電解質層5と第6固体電解質層6との間において、および基準ガス導入層30に覆われる態様にて設けられてなる。基準電極20は、Ptとジルコニアとの多孔質サーメット電極として形成されてなる。
基準ガス導入層30は、第5固体電解質層5と第6固体電解質層6との間において、基準電極20を覆うように、かつ、センサ素子101の長手方向に延在する態様にて設けられた、多孔質のアルミナからなる層である。基準ガス導入空間40は、センサ素子101の基端部E2側において、第5固体電解質層5の一部が外部と連通する空間とされる態様にて設けられた内部空間である。基準ガス導入空間40には、未燃炭化水素ガス濃度を求める際の基準ガスとしての大気(酸素)が外部より導入される。
これら基準ガス導入空間40と基準ガス導入層30は互いに連通しているので、ガスセンサ100が使用される際には基準ガス導入空間40および基準ガス導入層30を通じて基準電極20の周囲が絶えず大気(酸素)で満たされるようになっている。それゆえ、ガスセンサ100の使用時、基準電極20は、常に一定の電位を有してなる。
なお、基準ガス導入空間40および基準ガス導入層30は周囲の固体電解質によって被測定ガスと接触しないようになっているので、検知電極10が被測定ガスに曝されている状態であっても、基準電極20が被測定ガスと接触することはない。
表面保護層50は、センサ素子101の表面Saにおいて、少なくとも検知電極10を被覆する態様にて設けられてなる。表面保護層50は、アルミナからなる多孔質層であり、ガスセンサ100の使用時に被測定ガスに連続的に曝されることによる検知電極10の劣化を抑制する電極保護層として設けられてなる。
また、ガスセンサ100においては、図5(b)に示すように、検知電極10と基準電極20との間の電位差Vsが図示しない電位差計にて測定可能とされてなり、係る電位差Vsがセンサ出力として用いられる。
さらに、センサ素子101は、ヒータ部70を備えている。ヒータ部70は、ヒータ電極71と、ヒータ72と、スルーホール73と、ヒータ絶縁層74、圧力放散孔75とを備えている。ヒータ部70によって、通常駆動時および回復処理時のセンサ素子101の(より具体的にはセンサ素子101を形成する固体電解質の)加熱および保温が行われる。
ヒータ部70においては、センサ素子101の内部に設けられた電気抵抗体であるヒータ72が、図5(b)に概略的に示すように、素子外部のヒータ電源80と電気的に接続されてなる。より詳細には、図5(a)に示すように、ヒータ72は、スルーホール73を介して、センサ素子101の裏面Sb(図5においては第1固体電解質層1の下面)に接する態様にて形成されてなるヒータ電極71と接続されており、ヒータ電源80からヒータ72に対する電圧印加は、ヒータ電極71を介して行われる。
ヒータ絶縁層74は、ヒータ72の上下面に、アルミナ等の絶縁体によって形成されてなる絶縁層である。ヒータ絶縁層74は、第2固体電解質層2とヒータ72との間の電気的絶縁性、および、第3固体電解質層3とヒータ72との間の電気的絶縁性を得る目的で形成されている。
圧力放散孔75は、第3固体電解質層3および第4固体電解質層4を貫通し、基準ガス導入空間40に連通するように設けられてなる部位であり、ヒータ絶縁層74内の温度上昇に伴う内圧上昇を緩和する目的で形成されてなる。
以上のような構成を有するガスセンサ100を用いて被測定ガスにおける未燃炭化水素ガス濃度を求める際には、上述したように、センサ素子101のうち先端部E1から少なくとも検知電極10を含む所定の範囲のみを、被測定ガスが存在する空間に配置する一方で、基端部E2の側は当該空間とは隔絶させて配置し、基準ガス導入空間40に対し大気(酸素)を供給する。また、ヒータ72によりセンサ素子101を適宜の温度400℃〜800℃に、好ましくは500℃〜700℃、より好ましくは500℃〜600℃に加熱する。
そして、被測定ガスに曝されてなる検知電極10と大気中に配置されてなる基準電極20との間の電位差Vsが、検知電極10の周囲に存在する被測定ガスの組成に応じた値となることを利用して、被測定ガス中の未燃炭化水素ガス濃度がほぼリアルタイムで求められるようになっている。
係るガスセンサ100においては、上述したように、検知電極10を覆う表面保護層50が設けられてはいるものの、使用を継続することで、被測定ガス中のガス成分や被毒物質が付着する。それゆえ、センサ出力の劣化を抑制するべく、適宜のタイミングで回復処理を行うことが必要となる。
<回復処理>
以上のような構成を有する、使用開始後のガスセンサ100を対象に、回復処理を行った。ガスセンサ100は、通常駆動時、
T0=500℃;
D0=10%;
なる条件で用いられるものであり、初期のセンサ出力y0は275mVであり、回復処理前のセンサ出力y1は200mVであった。
回復処理の実行に先立つ、回復処理温度T1と回復処理時間Δτ1の設定に際しては、未使用のガスセンサ100を用意し、図4に示した態様にて条件設定範囲REを定めた。すなわち、図4に示した結果は、本実施例に係るガスセンサ100についてのものである。そして、条件設定範囲REより、回復処理温度T1=850℃、回復処理時間Δτ1=30秒と設定した。その他、Duty比の条件値は、
D1=65%;
D2=35%;
D3=1%;
とした。以上の条件に基づいて、図1に示した手順にて回復処理を行った。
図6は、係る回復処理におけるガスセンサ100のセンサ制御温度とDuty比の時間変化を示す図である。図6に示すDuty比の変化から求まる欠測時間Δτ2は約50秒であった。また、回復処理後のセンサ出力y2は272.8mVであったことから、回復処理における実際の回復率rは(式1)より97%であった。
すなわち、本実施例においては、ガスセンサ100に関し、短い回復処理時間および欠測時間で高い回復率が得られた。
(実施例2)
<センサ素子の概要>
図7は、本実施例において回復処理の対象としたガスセンサ200の概略構成図である。図7(a)は、ガスセンサ200の主たる構成要素であるセンサ素子201の長手方向(以下、素子長手方向)に沿った垂直断面図である。また、図7(b)は、図7(a)のB−B’位置における素子長手方向に垂直な断面を含む図である。
ガスセンサ200は、実施例1に係るガスセンサ100と同様、検知電極10と基準電極20との間に、混成電位の原理に基づいて両電極近傍における測定対象たるガス成分の濃度の相違に起因して電位差が生じることを利用して、被測定ガス中の当該ガス成分の濃度を求めるものである。そのため、ガスセンサ200が具備する、ガスセンサ100と同様の構成要素については、同一の符号を付してその詳細な説明を省略する。
ガスセンサ100とガスセンサ200とは、ガスセンサ100においては検知電極10がセンサ素子101の上面に設けられていたのに対し、ガスセンサ200のセンサ素子201は、検知電極10がセンサ素子201の内部に設けられてなる点で相違する。
具体的には、センサ素子201の先端部E1側であって、第6固体電解質層6の下面と第4固体電解質層4の上面との間には、ガス導入口210と、第1拡散律速部211と、緩衝空間212と、第2拡散律速部213と、第1内部空所214と、第3拡散律速部215と、第2内部空所216とが、素子長手方向においてこの順に連通する態様にて隣接形成されてなる。センサ素子201はいわゆる直列2室構造型のセンサ素子である。ガス導入口210から第2内部空所216に至る部位を、ガス流通部とも称する。
ガス導入口210と、緩衝空間212と、第1内部空所214と、第2内部空所216とは、第5固体電解質層5をくり抜いた態様にて設けられた内部空間である。緩衝空間212と、第1内部空所214と、第2内部空所216とはいずれも、上部を第6固体電解質層6の下面で、下部を第4固体電解質層4の上面で、側部を第5固体電解質層5の側面で区画されてなる。
一方、第1拡散律速部211、第2拡散律速部213、第3拡散律速部215はいずれも、2本の横長の(図7(a)において図面に垂直な方向に開口が長手方向を有する)スリットとして設けられる。
また、センサ素子201において、検知電極10は、第2内部空所216内に(第2内部空所216に面して)設けられてなる。基準電極20は、第3固体電解質層3と第4固体電解質層4との間において、および基準ガス導入層30に覆われる態様にて設けられてなる。
そして、基準ガス導入層30は、第3固体電解質層3と第4固体電解質層4との間において、基準電極20を覆うように、かつ、センサ素子201の長手方向に延在する態様にて設けられてなる。基準ガス導入空間40は、センサ素子201の基端部E2側において、第4固体電解質層4の一部が外部と連通する空間とされる態様にて設けられてなる。
センサ素子201においては、外部に対して開口してなるガス導入口210を通じて外部空間から内部に被測定ガスが取り込まれる。係る被測定ガスは、第1拡散律速部211、第2拡散律速部213および第3拡散律速部215において所定の拡散抵抗を付与されるとともに、第1内部空所214および第2内部空所216において、図示を省略する電気化学的ポンプセルによってその酸素濃度が未燃炭化水素ガスの検知に影響を与えないように調整されたうえで、第2内部空所216内に設けられた検知電極10の近傍へと到達する。
以上のような構成を有するガスセンサ200においても、ヒータ72によりセンサ素子201を適宜の温度に加熱したうえで、検知電極10と基準電極20との間の電位差Vsを測定することで、被測定ガス中の未燃炭化水素ガス濃度がほぼリアルタイムで求められるようになっている。それゆえ、使用を継続することで、被測定ガス中のガス成分や被毒物質が付着する。それゆえ、センサ出力の劣化を抑制するべく、適宜のタイミングで回復処理を行うことが必要となる。
<回復処理>
以上のような構成を有する、使用開始後のガスセンサ200を対象に、回復処理を行った。ガスセンサ200は、通常駆動時、
T0=650℃(ただし検知電極10の近傍では500℃);
D0=20%;
なる条件で用いられるものであり、初期のセンサ出力y0は240mVであり、回復処理前のセンサ出力y1は185mVであった。
回復処理の実行に先立つ、回復処理温度T1と回復処理時間Δτ1の設定に際しては、図4に示した条件設定範囲REを用い、回復処理温度T1=1000℃、回復処理時間Δτ1=30秒と設定した。なお、T1=1000℃とした場合に検知電極10の近傍の温度は850℃程度となることが、あらかじめ確認されている。その他、Duty比の条件値は、
D1=75%;
D2=50%;
D3=1%;
とした。以上の条件に基づいて、図1に示した手順にて回復処理を行った。
図8は、係る回復処理におけるガスセンサ200のセンサ制御温度とDuty比の時間変化を示す図である。図8に示すDuty比の変化から求まる欠測時間Δτ2は約40秒であった。また、回復処理後のセンサ出力y2は238.4mVであったことから、回復処理における実際の回復率rは(式1)より97%であった。
すなわち、本実施例においては、ガスセンサ200に関し、短い回復処理時間および欠測時間で高い回復率が得られた。
(実施例3)
<センサ素子の概要>
図9は、本実施例において回復処理の対象としたガスセンサ300の概略構成図である。図9(a)は、ガスセンサ300の主たる構成要素であるセンサ素子301の長手方向(以下、素子長手方向)に沿った垂直断面図である。また、図9(b)は、図9(a)のC−C’位置における素子長手方向に垂直な断面を含む図である。
ガスセンサ300は、実施例1に係るガスセンサ100および実施例2に係るガスセンサ200と同様、検知電極10と基準電極20との間に、混成電位の原理に基づいて両電極近傍における測定対象たるガス成分の濃度の相違に起因して電位差が生じることを利用して、被測定ガス中の当該ガス成分の濃度を求めるものである。また、ガスセンサ300は、先端部E1側に備わるガス流通部の構成を除き、ガスセンサ200と同様の構成を有する。そのため、ガスセンサ300が具備する、ガスセンサ100またはガスセンサ200と同様の構成要素については、同一の符号を付してその詳細な説明を省略する。
ガスセンサ200とガスセンサ300とは、ガスセンサ200のセンサ素子201が、外部に対し開口したガス導入口210を有するとともに、2つの内部空所を備えた直列2室構造型のセンサ素子であったのに対し、ガスセンサ300のセンサ素子301においては、ガス導入口を兼ねる第1拡散律速部311と、緩衝空間312と、第2拡散律速部313と、第1内部空所314と、第3拡散律速部315と、第2内部空所316と、第4拡散律速部317と、第3内部空所318とが、素子長手方向においてこの順に連通する態様にて隣接形成されてなる、という点で相違する。センサ素子301はいわゆる直列3室構造型のセンサ素子である。
緩衝空間312と、第1内部空所314と、第2内部空所316と、第3内部空所318とは、第5固体電解質層5をくり抜いた態様にて設けられた内部空間である。緩衝空間312と、第1内部空所314と、第2内部空所316と、第3内部空所318とはいずれも、上部を第6固体電解質層6の下面で、下部を第4固体電解質層4の上面で、側部を第5固体電解質層5の側面で区画されてなる。
一方、ガス導入口を兼ねる第1拡散律速部311、第2拡散律速部313、第3拡散律速部315、および第4拡散律速部317はいずれも、2本の横長の(図9(a)において図面に垂直な方向に開口が長手方向を有する)スリットとして設けられる。
そして、検知電極10は、第3内部空所318内に(第3内部空所318に面して)設けられてなる。
センサ素子301においては、ガス導入口を兼ねる第1拡散律速部311を通じて外部空間から内部に被測定ガスが取り込まれる。係る被測定ガスは、第1拡散律速部311、第2拡散律速部313、第3拡散律速部315,および第4拡散律速部317において所定の拡散抵抗を付与されるとともに、第1内部空所314、第2内部空所316、および第3内部空所318において、図示を省略する電気化学的ポンプセルによってその酸素濃度が未燃炭化水素ガスの検知に影響を与えないように調整されたうえで、検知電極10の近傍へと到達する。
以上のような構成を有するガスセンサ300においても、ヒータ72によりセンサ素子301を適宜の温度に加熱したうえで、検知電極10と基準電極20との間の電位差Vsを測定することで、被測定ガス中の未燃炭化水素ガス濃度がほぼリアルタイムで求められるようになっている。それゆえ、使用を継続することで、被測定ガス中のガス成分や被毒物質が付着する。それゆえ、センサ出力の劣化を抑制するべく、適宜のタイミングで回復処理を行うことが必要となる。
<回復処理>
以上のような構成を有する、使用開始後のガスセンサ300を対象に、回復処理を行った。ガスセンサ300は、通常駆動時、
T0=650℃(ただし検知電極10の近傍では500℃);
D0=20%;
なる条件で用いられるものであり、初期のセンサ出力y0は240mVであり、回復処理前のセンサ出力y1は185mVであった。
回復処理の実行に先立つ、回復処理温度T1と回復処理時間Δτ1の設定に際しては、図4に示した条件設定範囲REを用い、回復処理温度T1=1000℃、回復処理時間Δτ1=30秒と設定した。なお、T1=1000℃とした場合に検知電極10の近傍の温度は850℃程度となることが、あらかじめ確認されている。その他、Duty比の条件値は、
D1=75%;
D2=50%;
D3=1%;
とした。以上の条件に基づいて、図1に示した手順にて回復処理を行った。
図10は、係る回復処理におけるガスセンサ300のセンサ制御温度とDuty比の時間変化を示す図である。図10に示すDuty比の変化から求まる欠測時間Δτ2は約40秒であった。また、回復処理後のセンサ出力y2は242.6mVであったことから、回復処理における実際の回復率rは(式1)より96%であった。
すなわち、本実施例においては、ガスセンサ300に関し、短い回復処理時間および欠測時間で高い回復率が得られた。
(実施例4)
実施例1のガスセンサ100に関し、回復処理を繰り返し行うことの効果を確認した。
具体的には、
C2H4=2000ppm、O2=10%、N2=残余
という劣化処理雰囲気にガスセンサ100を曝した状態で、センサ出力を絶えずモニタしつつ、約60分に一度、回復処理を行い、そのときのセンサ出力の変化を確認した。回復処理の条件は実施例1と同じとした。
また、比較例として、実施例と構造が同じであり、同じ劣化処理雰囲気に曝されつつも、回復処理は行われないガスセンサについて、センサ出力の変化を確認した。
図11は、実施例および比較例に係るガスセンサのセンサ出力の時間変化を示す図である。なお、実施例の場合、本来であれば回復処理の間はセンサ出力は欠測となるが、図示の単純化のためグラフは連続線となっている。
図11に示す結果からは、比較例の場合、センサ出力が時間経過と共に単調減少するのに対して、実施例の場合は、回復処理と回復処理の間においてセンサ出力は減少する傾向にあるものの、回復処理を行うたびにセンサ出力はほぼ初期状態と同程度の400mV程度にまで回復することが確認される。なお、個々の回復処理における回復率rは97%〜98%と高い値であった。
係る結果は、回復処理を繰り返すことで、センサ出力を何度でも回復させることが可能であることを示している。
なお、劣化処理雰囲気は、ガスセンサの実使用時に比して炭化水素ガスが非常に高い雰囲気となっている。それゆえ、実施例および比較例ともにセンサ出力の劣化は急激になっているが、ガスセンサの実使用時におけるセンサ出力の劣化は図11に示す実施例の場合に比して緩やかであることから、回復処理を行う時間間隔は、実施例にて行った約60分に一度という時間間隔に比して十分大きくてもよい。
10 検知電極
20 基準電極
30 基準ガス導入層
40 基準ガス導入空間
50 表面保護層
70 ヒータ部
71 ヒータ電極
72 ヒータ
80 ヒータ電源
100、200、300 ガスセンサ
101、201、301 センサ素子
210 ガス導入口
211、311 第1拡散律速部
212、312 緩衝空間
213、313 第2拡散律速部
214、314 第1内部空所
215、315 第3拡散律速部
216、316 第2内部空所
317 第4拡散律速部
318 第3内部空所
E1 (センサ素子の)先端部
E2 (センサ素子の)基端部
RE 条件設定範囲
Sa (センサ素子の)表面
Sb (センサ素子の)裏面

Claims (4)

  1. ガスセンサに備わるセンサ素子を、前記センサ素子内部に備わるヒータを用いて通常駆動時の温度である第1の温度よりも高い第2の温度である回復処理温度に加熱することによって前記ガスセンサの出力を回復させる、回復処理の方法であって、
    前記回復処理温度と、前記第1の温度から前記回復処理温度への昇温の開始時から前記回復処理温度の維持の終了時までの時間である回復処理時間とを設定する条件設定工程と、
    前記条件設定工程において定めた前記回復処理温度と前記回復処理時間とに基づいて前記回復処理を行う回復処理工程と、
    を備え、
    前記条件設定工程においては、あらかじめ実験的に特定しておいた、前記ガスセンサの使用開始時と前記回復処理直前のセンサ出力の差分値に対する、前記回復処理直後と回復処理直前のセンサ出力の差分値の比である回復率が95%以上となることが見込める条件設定範囲から回復処理温度と回復処理時間とを設定し、
    前記回復処理工程においては、
    前記回復処理の開始時に行う、前記第1の温度から前記回復処理温度までのセンサ素子の加熱を、前記ヒータにおけるDuty比を前記通常駆動時の値よりも高い所定の値D1に瞬時に上げたうえで、前記回復処理温度に到達するまでの間は当該値D1を保つことによって行い、
    前記センサ素子が前記回復処理温度に到達した後、前記回復処理時間が経過するまでの間は、前記Duty比を値D1の40%以上80%以下の値D2に下げたうえで、当該値D2を制御目標値としたPID制御を行うことで回復処理温度を維持し、
    前記回復処理時間が経過した時点で、前記センサ素子の温度を低下させるべく前記Duty比を値D2よりも小さい値D3に下げ、
    前記センサ素子の温度が前記第1の温度の1〜1.2倍の値に到達すると、前記Duty比を瞬時に前記通常駆動時の値D0に変更し、係る値D0を制御目標値として、通常駆動時の制御動作に復帰させるようにする、
    ことを特徴とする、ガスセンサの回復処理方法。
  2. 請求項1に記載のガスセンサの回復処理方法であって、
    前記回復処理時間を1分以内とする、
    ことを特徴とする、ガスセンサの回復処理方法。
  3. 請求項1または請求項2に記載のガスセンサの回復処理方法であって、
    前記センサ素子の検知電極がAuを含んでなり、
    前記回復処理温度をAuの融点℃以下とする、
    ことを特徴とする、ガスセンサの回復処理方法。
  4. 請求項1ないし請求項3のいずれかに記載のガスセンサの回復処理方法であって、
    5%≦D0≦30%、30%≦D1≦100%、かつ、0%≦D3≦20%である、
    ことを特徴とする、ガスセンサの回復処理方法。
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