JP2017042689A - アルギン酸の繊維状吸着材、アルギン酸の繊維状吸着材の製造方法、およびその繊維状吸着材を用いる吸着方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】ストロンチウム等の放射性物質等の吸着対象物質を吸着する際の吸着速度および吸着率が高い、アルギン酸の繊維状吸着材、アルギン酸の繊維状吸着材の製造方法を提供する【解決手段】アルギン酸により形成されるアルギン酸の繊維状吸着材である。そのアルギン酸の繊維状吸着材の製造方法は、1価のアルギン酸塩を含むアルギン酸塩水溶液を、酸を含む酸水溶液に吐出紡糸してゲル状繊維を得るゲル化工程と、ゲル化工程で得られたゲル状繊維を乾燥する乾燥工程と、を含む。【選択図】なし
Description
本発明は、アルギン酸の繊維状吸着材、アルギン酸の繊維状吸着材の製造方法、およびその繊維状吸着材を用いる吸着方法に関する。
アルギン酸は、コンブ、ワカメ等の褐藻類等に含まれる天然多糖類である。アルギン酸、アルギン酸塩、およびその誘導体は、食品分野では増粘剤、安定剤、ゲル化剤等として利用され、その他にも医薬品、化粧品、繊維加工等、幅広い用途に利用されている。
アルギン酸塩としては、アルギン酸のナトリウム塩、アルギン酸のカルシウム塩等があり、このアルギン酸塩を繊維状としたアルギン酸塩繊維が知られている。
例えば、特許文献1には、アルギン酸、アルギン酸誘導体、ヒアルロン酸、およびヒアルロン酸誘導体から選ばれる多糖類10質量部と、曳糸性付与剤0.4〜1.2質量部とを含む組成物からなり、曳糸性付与剤が重量平均分子量60万〜650万のポリエチレンオキサイド等の熱可塑性樹脂であり、平均繊維径が1nm以上1000nm未満である多糖類ナノファイバーが記載され、アルギン酸およびアルギン酸誘導体の中で、アルギン酸ナトリウム、アルギン酸カルシウム、アルギン酸アンモニウム、アルギン酸プロピレングリコールが好ましいこと、具体的な製造例として、アルギン酸アンモニウムとポリエチレンオキサイドとから形成されるナノファイバーが記載され、この多糖類ナノファイバーは、創傷被覆材、浄化フィルター、皮膚化粧料等に好適に使用できることが記載されている。
特許文献2には、アルギン酸のナトリウム塩、マグネシウム塩、アンモニウム塩、有機アミン塩、エステルまたはこれらの混合物である水溶性アルギン酸繊維に抗菌性物質を重量比率で0.1〜20重量%包含させた抗菌性物質包含水溶性アルギン酸繊維が記載され、この抗菌性物質包含水溶性アルギン酸繊維は、ガーゼ、包帯、当て布等の医療用材料として好適に用いられることが記載されている。
特許文献3には、アルギン酸のナトリウム塩、カリウム塩、マグネシウム塩、アンモニウム塩の1種または2種以上の混合物である水溶性アルギン酸塩を含有する水性ドープを酸中に吐出紡糸した後、水溶性を付与するイオンからなる水溶性水酸化物を含む水−有機溶剤溶液に所定時間浸漬する乾強力が0.5g/デニール以上の水溶性アルギン酸塩繊維の製造方法が記載され、この水溶性アルギン酸塩繊維は、ガーゼ、包帯、あて布等の医療用材料として好適に用いられることが記載されている。
特許文献4には、カルシウム、バリウム、ニッケル、およびコバルトから選ばれた一種または二種以上である2価金属を含み、2価金属塩化率が60〜90%であり、かつ乾強度1.5g/d以上、乾伸度8%以上のアルギン酸系繊維が記載され、創傷面当材、止血綿等の医療用繊維製品として特に有用であることが記載されている。
一方、これらのアルギン酸塩繊維や、アルギン酸塩をビーズ状にしたアルギン酸系ビーズを、ストロンチウム等の放射性物質等の吸着対象物質を吸着させる吸着材として用いることが検討されている。しかし、アルギン酸系ビーズのストロンチウム等の放射性物質等の吸着速度および吸着率は十分ではなかった。また、アルギン酸塩繊維についても、さらなる吸着速度および吸着率の向上が望まれている。
本発明の目的は、ストロンチウム等の放射性物質等の吸着対象物質を吸着する際の吸着速度および吸着率が高い、アルギン酸の繊維状吸着材、アルギン酸の繊維状吸着材の製造方法、およびその繊維状吸着材を用いる吸着方法を提供することにある。
本発明は、アルギン酸により形成されるアルギン酸の繊維状吸着材である。
また、本発明は、アルギン酸の繊維状吸着材の製造方法であって、1価のアルギン酸塩を含むアルギン酸塩水溶液を、酸を含む酸水溶液に吐出紡糸してゲル状繊維を得るゲル化工程と、前記ゲル化工程で得られたゲル状繊維を乾燥する乾燥工程と、を含むアルギン酸の繊維状吸着材の製造方法である。
本発明は、前記アルギン酸の繊維状吸着材、または前記製造方法によって得られたアルギン酸の繊維状吸着材を用いて吸着対象物質を吸着する吸着方法である。
本発明により、ストロンチウム等の放射性物質等の吸着対象物質を吸着する際の吸着速度および吸着率が高い、アルギン酸の繊維状吸着材、アルギン酸の繊維状吸着材の製造方法、およびその繊維状吸着材を用いる吸着方法を提供することが可能となる。
本発明の実施の形態について以下説明する。本実施形態は本発明を実施する一例であって、本発明は本実施形態に限定されるものではない。
本発明の実施形態に係る繊維状吸着材は、アルギン酸により形成される。
本発明者らは、アルギン酸により形成される繊維状吸着材により、驚くべきことにアルギン酸カルシウム繊維等のアルギン酸塩繊維に比べて、ストロンチウム等の放射性物質等の吸着対象物質を吸着する際の吸着速度および吸着率が高い繊維状吸着材が得られることを見出した。
アルギン酸は、生分解性の高分子多糖類であって、D−マンヌロン酸(M)とL−グルロン酸(G)という2種類のウロン酸が直鎖状に重合したポリマである。より具体的には、D−マンヌロン酸のホモポリマ画分(MM画分)、L−グルロン酸のホモポリマ画分(GG画分)、およびD−マンヌロン酸とL−グルロン酸がランダムに配列した画分(MG画分)が任意に結合したブロック共重合体である。アルギン酸のD−マンヌロン酸とL−グルロン酸の構成比(M/G比(モル比))は、主に海藻等の由来となる生物の種類によって異なる。
本実施形態におけるアルギン酸のM/G比は、特に制限はないが、0.5〜2.0の範囲であることが好ましく、1.0〜1.5の範囲であることがより好ましい。アルギン酸のM/G比が0.5未満であると、得られた繊維が固く脆くなる場合があり、2.0を超えると、紡糸が困難になる場合がある。
本明細書において、「アルギン酸により形成される」とは繊維状吸着材の繊維が実質的にアルギン酸のみによって形成され、第8版食品添加物公定書(発行:日本食品添加物協会)の225頁〜226頁で示される定量法で分析して、繊維状吸着材の繊維の総質量に対して85質量%以上アルギン酸が含まれることをいい、91質量%以上アルギン酸が含まれることが好ましい。すなわち、本実施形態に係る繊維状吸着材の繊維を構成する成分として、ポリエチレンオキサイド等の熱可塑性樹脂を含まない。
本発明の実施形態に係るアルギン酸の繊維状吸着材の製造方法は、1価のアルギン酸塩を含むアルギン酸塩水溶液を、酸を含む酸水溶液に吐出紡糸してゲル状繊維を得るゲル化工程と、前記ゲル化工程で得られたゲル状繊維を乾燥する乾燥工程と、を含む。乾燥工程の前に、ゲル化工程で得られたゲル状繊維について水洗等による洗浄する洗浄工程を含んでもよい。
本発明者らは、本実施形態に係る繊維状吸着材の製造方法により、ストロンチウム等の放射性物質等の吸着対象物質を吸着する際の吸着速度および吸着率が高い、アルギン酸の繊維状吸着材が得られることを見出した。
本実施形態に係る繊維状吸着材の製造方法により得られるアルギン酸繊維は、アルギン酸に特有の多価カチオン吸着能により、水中の重金属等の吸着材として利用することができる。特にストロンチウムとの親和性が高いことから、放射性ストロンチウムの吸着材として高い機能を発揮する。このアルギン酸繊維は、微細な繊維の集合体であり、アルギン酸系ビーズに比べて表面積が著しく大きい。そのため、重金属等の吸着速度がアルギン酸系ビーズより優れている。また、アルギン酸塩繊維分子は、多価カチオンと架橋しており分子内のカチオン濃度が高く、対象となる重金属イオンがその多価カチオンとイオン交換反応して分子内に取り込まれ吸着されるが、このアルギン酸繊維は、分子内に多価カチオンが存在しておらず架橋していないので、分子内のカチオン濃度が極めて低く、対象となる重金属イオンと接触すると瞬時にイオン結合し、分子内に取り込んで架橋を形成し吸着する。したがって、このアルギン酸繊維は、ストロンチウム等の放射性物質等の吸着対象物質を吸着する際の吸着速度および吸着率が高いと考えられる。このアルギン酸繊維は、乾燥工程を経て乾燥されているため、アルギン酸系ビーズに比べて含水率が低く、長期保管が可能となり、軽量であるので運搬も容易である。不織布としてシート状、フィルタ状等、自由な形状に加工することができる。水中、特に海水中に投じて使用する場合には、強度が高く、崩壊することがほとんどなく、回収が容易である。吸着材そのものは吸水しにくいため、使用後は脱水、減容が容易である。
本実施形態に係る繊維状吸着材の製造方法における各工程について、説明する。
[ゲル化工程]
ゲル化工程では、例えば、1価のアルギン酸塩を含むアルギン酸塩水溶液を調製し、アルギン酸塩水溶液を、酸を含む酸水溶液に吐出紡糸することによりゲル状繊維を得る。
ゲル化工程では、例えば、1価のアルギン酸塩を含むアルギン酸塩水溶液を調製し、アルギン酸塩水溶液を、酸を含む酸水溶液に吐出紡糸することによりゲル状繊維を得る。
吐出紡糸に用いる紡糸ノズルの径は、所望のアルギン酸繊維の太さ等に応じて設定すればよく、特に制限はないが、例えば、直径0.05mm〜0.20mm程度とすればよい。最も好ましくは0.1mmである。紡糸ノズルの径が0.05mm未満であると、詰まりが多く歩留まりが低下する場合があり、0.20mmを超えると、繊維が太くなって凝固しにくく脆くなる場合がある。
吐出紡糸における吐出圧は、所望のアルギン酸塩水溶液の粘度等に応じて設定すればよく、特に制限はないが、例えば、0.05MPa〜0.2MPa程度とすればよい。
吐出紡糸における紡糸速度は、下記の巻取速度との差により設定する延伸倍率等に応じて設定すればよく、特に制限はないが、例えば、6.0m/分〜12.0m/分程度とすればよい。
吐出紡糸における巻取速度は、上記の紡糸速度との差により設定する延伸倍率等に応じて設定すればよく、特に制限はないが、例えば、7.0m/分〜15.0m/分程度とすればよい。
紡糸速度/巻取速度の比(延伸倍率)は、特に制限はないが、1.0〜2.0の範囲であることが好ましい。紡糸速度/巻取速度の比(延伸倍率)が1.0未満であると、繊維が脆くなる場合があり、2.0を超えると、紡糸のときに繊維が破断しやすくなる場合がある。
吐出紡糸における紡糸原液の温度は、特に制限はないが、例えば、20〜35℃程度とすればよい。紡糸原液の温度が高温になるとアルギン酸分子の解重合が進み、分子量が低下し、繊維が脆くなる場合がある。
本実施形態において用いられる1価のアルギン酸塩の4重量%水溶液の20℃における粘度は、特に制限はないが、例えば、5,000mPa・s〜50,000mPa・sの範囲であることが好ましく、10,000mPa・s〜30,000mPa・sの範囲であることがより好ましい。
本実施形態において用いられるアルギン酸塩水溶液中の1価のアルギン酸塩の濃度は、特に制限はないが、例えば、1重量%〜20重量%の範囲であることが好ましく、3重量%〜10重量%の範囲であることがより好ましい。
1価のアルギン酸塩としては、特に制限はないが、例えば、アルギン酸ナトリウム、アルギン酸カリウム等のアルギン酸のアルカリ金属塩や、アルギン酸アンモニウム等が挙げられる。
本実施形態において用いる1価のアルギン酸塩のM/G比は、特に制限はないが、0.5〜2.0のものを用いることが好ましく、1.0〜1.5のものを用いることがより好ましい。1価のアルギン酸塩のM/G比が0.5未満であると、得られた繊維が固く脆くなる場合があり、2.0を超えると、紡糸が困難になる場合がある。
本実施形態に係る繊維状吸着材は、繊維を形成するアルギン酸繊維の他に、添加剤としてさらに吸着剤を含んでいてもよい。なお、本明細書において、この吸着剤等の添加剤は、「繊維を形成する成分」とは呼ばない。繊維状吸着材であるアルギン酸繊維が吸着剤を含んでいると、アルギン酸に特有の多価カチオン吸着能により、水中の重金属等の吸着材として利用することができることに加え、アルギン酸だけでは捕捉が困難な成分の吸着も可能となる。例えば、アルギン酸が特にストロンチウムとの親和性が高いことから、放射性ストロンチウムの吸着材として高い機能を発揮するのに加え、セシウムを吸着する吸着剤を包含させた場合は、放射性セシウムの吸着材としても利用することができる。
吸着剤としては、所望の吸着対象物質(吸着質)に応じて選定すればよく、特に制限はないが、フェロシアン化鉄、フェロシアン化ニッケル等のフェロシアン化金属、ゼオライト、結晶化シリコンチタネート等が挙げられる。吸着剤は、吸着対象物質として、アルギン酸だけでは捕捉が困難な物質を吸着可能なものであることが好ましい。例えば、フェロシアン化鉄は、セシウムを吸着することができるので、吸着剤としてフェロシアン化鉄を含有させれば、放射性ストロンチウムだけではなく、放射性セシウムの吸着材としても利用することができる。
吸着剤の含有量は、特に制限はないが、例えば、繊維に対して2重量%〜20重量%の範囲が好ましく、5重量%〜20重量%であることがより好ましい。吸着剤の含有量が2重量%未満であると、吸着剤としての機能が不十分になる場合があり、20重量%を超えると、繊維が脆く壊れやすくなる場合がある。
酸としては、例えば、硫酸、塩酸、硝酸、リン酸等の無機酸、酢酸、シュウ酸等の有機酸が挙げられる。これらの酸は、必要に応じて2種以上の混合溶液としてもよい。
紡糸原液中の1価のアルギン酸塩に対する酸水溶液中の酸のモル比(酸(モル)/1価のアルギン酸塩(モル))は、例えば、0.2〜3.0の範囲であることが好ましく、0.5〜3.0の範囲であることがより好ましい。このモル比が0.2未満であると、ゲル化が不十分な場合があり、3.0を超えると、繊維の表面だけがゲル化し、やはりゲル化が不十分な場合がある。
ゲル化工程において、保存性向上等のために、アルギン酸塩水溶液または酸水溶液に、必要に応じて保存料等を添加してもよい。
[洗浄工程]
洗浄工程において、ゲル化工程で得られたゲル状繊維について、必要に応じて洗浄が行われる。
洗浄工程において、ゲル化工程で得られたゲル状繊維について、必要に応じて洗浄が行われる。
洗浄工程は、例えば、水による水洗等により行われればよい。
[乾燥工程]
乾燥工程において、ゲル化工程で得られたゲル状繊維について、または必要に応じて洗浄されたゲル状繊維について、乾燥される。
乾燥工程において、ゲル化工程で得られたゲル状繊維について、または必要に応じて洗浄されたゲル状繊維について、乾燥される。
乾燥工程における乾燥は、紡糸後、熱風乾燥、真空乾燥等により行われる。
乾燥工程における乾燥効率を上げるため、凝固浴(ゲル化工程)通過後、乾燥工程の前に、メタノール浴、エタノール浴等の沸点が80℃以下の親水性低沸点溶媒浴を通過させてもよい。
乾燥されたアルギン酸繊維の含水率は、20質量%以下であることが好ましく、15質量%以下であることがより好ましい。含水率が20質量%を超えると、繊維が微生物汚染を受けやすくなる場合がある。
乾燥工程における乾燥温度および乾燥時間は、上記含水率にできる程度に設定すればよく特に制限はないが、例えば、80〜90℃の範囲の乾燥温度で行えばよい。乾燥温度が100℃を越えると、繊維が脆くなる場合がある。
本製造方法において、紡糸した繊維を、凝固浴(ゲル化工程)→洗浄浴(洗浄工程)→熱風乾燥(乾燥工程)の順に連続的に工程を通過させ、巻き取ってもよい。
得られるアルギン酸繊維の太さは、特に制限はないが、1dtex〜100dtexの範囲であることが好ましく、2dtex〜80dtexの範囲であることがより好ましい。アルギン酸繊維の太さが、1dtex未満であると、繊維の歩留まりが低下する場合があり、100dtexを超えると、繊維が脆くなる場合がある。なお、1dtexは、10,000mあたり重量が1gである繊維の太さを示す。
得られるアルギン酸繊維の太さは、ゲル化工程において用いるアルギン酸塩水溶液の粘度や、吐出紡糸の際に用いる紡糸ノズルの径、吐出圧、紡糸速度、巻取速度等を調整することにより、制御することができる。通常は、ゲル化工程において用いるアルギン酸塩水溶液の粘度を低くすることにより、また吐出紡糸の際に用いる紡糸ノズルの径を小さくすることにより、得られるアルギン酸繊維の太さを細くすることができる。
本実施形態に係る繊維状吸着材の製造方法において、ゲル化工程で得られたゲル状繊維をさらに2価以上の金属塩を含む金属塩水溶液に浸漬する浸漬工程を含んでもよい。
2価以上の金属塩としては、特に制限はないが、例えば、カルシウムイオン(Ca2+)、バリウムイオン(Ba2+)、ストロンチウムイオン(Sr2+)等のアルカリ土類金属イオンや、銅イオン(Cu2+)、亜鉛イオン(Zn2+)、鉄イオン(Fe2+)、コバルトイオン(Co2+)、ニッケルイオン(Ni2+)等の2価の金属イオンの塩、鉄イオン(Fe3+)、アルミニウムイオン(Al3+)、セシウムイオン(Ce3+)等の3価の金属イオンの塩化物、臭化物、炭酸塩、硫酸塩、酢酸塩、リン酸塩、硝酸塩、水酸化物等の無機塩等が挙げられる。これらのうち、得られる処理ゲル状繊維の強度が高い等の点から3価の金属イオンの塩を用いることが好ましく、鉄イオン(Fe3+)の塩がより好ましい。
浸漬工程における浸漬時間は、特に制限はないが、通常、5秒〜60秒程度とすればよい。浸漬工程における浸漬時間が5秒未満であると、ゲル強度が十分に向上しない等の場合がある。
浸漬工程における、2価以上の金属塩のモル比は、1価のアルギン酸塩に対して0.5〜5程度とすればよい。1価のアルギン酸塩に対する2価以上の金属塩のモル比が0.2未満であると、ゲル強度の向上が不十分となる等の場合がある。
本実施形態に係る繊維状吸着材の製造方法により得られるアルギン酸繊維を用いて、水等の液体または空気等の気体等に含まれる吸着対象物質を吸着することができる。本実施形態に係る繊維状吸着材の製造方法により得られるアルギン酸繊維は、例えば、水中等の放射性物質の除去、重金属の除去、水質の浄化等の用途に利用することができる。不織布としてシート状、フィルタ状等、自由な形状に加工することができるので、様々な形態で吸着材として用いることができる。
吸着対象物質である放射性物質として、ストロンチウム、セシウム等が挙げられる。
吸着対象物質である重金属としては、例えば、鉄、鉛、金、白金、銀、銅、クロム、カドミウム、水銀、亜鉛、ヒ素、マンガン、コバルト、ニッケル、モリブデン、タングステン、錫、ビスマス、ウラン、タリウム、ポロニウム、セレン、アンチモン等が挙げられる。
吸着対象物質の吸着後には、加熱により繊維状吸着材を減容化してもよい。減容化は、例えば、大気雰囲気等において、500℃〜600℃の温度で、1時間〜2時間程度加熱することにより行うことができる。
以下、実施例および比較例を挙げ、本発明をより具体的に詳細に説明するが、本発明は、以下の実施例に限定されるものではない。
<実施例1>
[紡糸原液の調製]
M(マンヌロン酸ブロック)/G(グルロン酸ブロック)=1.0のアルギン酸ナトリウムをイオン交換水に加え、30分間撹拌して、8質量%水溶液を調製し、これを、200メッシュのフィルタでろ過、脱泡したものを紡糸原液A1とした。用いたアルギン酸ナトリウムの1質量%水溶液の20℃における粘度は、20〜50mPa・sであった。なお、M/G比は、サンプルに塩酸を加えて加水分解し、加水分解に対する抵抗性の違いにより各ブロックを分画し、単離した各ブロックをフェノール硫酸法で比色定量する方法により求めた。
[紡糸原液の調製]
M(マンヌロン酸ブロック)/G(グルロン酸ブロック)=1.0のアルギン酸ナトリウムをイオン交換水に加え、30分間撹拌して、8質量%水溶液を調製し、これを、200メッシュのフィルタでろ過、脱泡したものを紡糸原液A1とした。用いたアルギン酸ナトリウムの1質量%水溶液の20℃における粘度は、20〜50mPa・sであった。なお、M/G比は、サンプルに塩酸を加えて加水分解し、加水分解に対する抵抗性の違いにより各ブロックを分画し、単離した各ブロックをフェノール硫酸法で比色定量する方法により求めた。
[凝固浴の調製]
96質量%硫酸をイオン交換水に加え、1質量%の硫酸水溶液を調製し、これを凝固浴Bとした。
96質量%硫酸をイオン交換水に加え、1質量%の硫酸水溶液を調製し、これを凝固浴Bとした。
[紡糸工程]
紡糸原液A1を、直径0.2mmの細孔を有する紡糸ノズルから、0.06MPaの圧力で押出し、紡糸速度7.0m/分で、液温(5〜30℃)の凝固浴B中(長さ100cm)を通過させ、第一ローラの巻取速度が7.0m/s、第二ローラの巻取速度が8.4m/sで巻き取り、約1.2倍の延伸をかけた。
紡糸原液A1を、直径0.2mmの細孔を有する紡糸ノズルから、0.06MPaの圧力で押出し、紡糸速度7.0m/分で、液温(5〜30℃)の凝固浴B中(長さ100cm)を通過させ、第一ローラの巻取速度が7.0m/s、第二ローラの巻取速度が8.4m/sで巻き取り、約1.2倍の延伸をかけた。
[乾燥工程]
得られた繊維を水洗した後、熱風(80〜90℃)で30〜60分乾燥して、アルギン酸繊維を得た。得られたアルギン酸繊維の太さは、25dtexであった。
得られた繊維を水洗した後、熱風(80〜90℃)で30〜60分乾燥して、アルギン酸繊維を得た。得られたアルギン酸繊維の太さは、25dtexであった。
<比較例1>
[凝固浴の調製]
塩化カルシウムをイオン交換水に加え、5質量%の塩化カルシウム(CaCl2)水溶液を調製し、これを凝固浴Cとした。
[凝固浴の調製]
塩化カルシウムをイオン交換水に加え、5質量%の塩化カルシウム(CaCl2)水溶液を調製し、これを凝固浴Cとした。
[紡糸工程]
実施例1で用いた紡糸原液A1を、直径0.2mmの細孔を有する紡糸ノズルから、0.06MPaの圧力で押出し、紡糸速度7.0m/分で、液温(5〜30℃)の凝固浴C中(長さ100cm)を通過させ、第一ローラの巻取速度が7.0m/s、第二ローラの巻取速度が8.4m/sで巻き取り、約1.2倍の延伸をかけた。
実施例1で用いた紡糸原液A1を、直径0.2mmの細孔を有する紡糸ノズルから、0.06MPaの圧力で押出し、紡糸速度7.0m/分で、液温(5〜30℃)の凝固浴C中(長さ100cm)を通過させ、第一ローラの巻取速度が7.0m/s、第二ローラの巻取速度が8.4m/sで巻き取り、約1.2倍の延伸をかけた。
[乾燥工程]
得られた繊維を水洗した後、熱風(80〜90℃)で30〜60分乾燥して、アルギン酸カルシウム繊維を得た。得られたアルギン酸カルシウム繊維の太さは、20〜30dtexであった。
得られた繊維を水洗した後、熱風(80〜90℃)で30〜60分乾燥して、アルギン酸カルシウム繊維を得た。得られたアルギン酸カルシウム繊維の太さは、20〜30dtexであった。
(ストロンチウム吸着量分析)
塩化ストロンチウムを蒸留水に加え、ストロンチウム濃度が10ppmになるように調製した試験水溶液を作製した。酸分解ICP質量分析法により、ICP−MS装置(誘導結合プラズマ質量分析計、横河アナリティカルシステムズ社製)を用い、試験水溶液のストロンチウム濃度を測定したところ、10ppmであった。実施例1で得られたアルギン酸繊維0.5g、比較例1で得られたアルギン酸カルシウム繊維0.5gを、サンプル毎に用意した試験水溶液(蒸留水Sr濃度:10ppm)50mLの入ったビーカに直接浸漬した。ビーカの水溶液は、25℃の環境下、振とう機(ヤマト化学社製、MK161)により163rpmで振とうさせながら吸着させた。所定の時間だけ浸漬、振とうさせた後に、各サンプルを一定量取り出し、酸分解ICP質量分析法により、ICP−MS装置を用い、サンプル中のストロンチウム吸着量を分析した。浸漬時間毎に採取したサンプルの単位乾燥重量に対するストロンチウム吸着率(%)を算出した。結果を、表1および図1に示す。
塩化ストロンチウムを蒸留水に加え、ストロンチウム濃度が10ppmになるように調製した試験水溶液を作製した。酸分解ICP質量分析法により、ICP−MS装置(誘導結合プラズマ質量分析計、横河アナリティカルシステムズ社製)を用い、試験水溶液のストロンチウム濃度を測定したところ、10ppmであった。実施例1で得られたアルギン酸繊維0.5g、比較例1で得られたアルギン酸カルシウム繊維0.5gを、サンプル毎に用意した試験水溶液(蒸留水Sr濃度:10ppm)50mLの入ったビーカに直接浸漬した。ビーカの水溶液は、25℃の環境下、振とう機(ヤマト化学社製、MK161)により163rpmで振とうさせながら吸着させた。所定の時間だけ浸漬、振とうさせた後に、各サンプルを一定量取り出し、酸分解ICP質量分析法により、ICP−MS装置を用い、サンプル中のストロンチウム吸着量を分析した。浸漬時間毎に採取したサンプルの単位乾燥重量に対するストロンチウム吸着率(%)を算出した。結果を、表1および図1に示す。
実施例1の酸凝固したアルギン酸繊維は、吸着時間5分で吸着率99.7%に達し、短時間で平衡に達した。一方、比較例1のカルシウム凝固したアルギン酸カルシウム繊維は、吸着が平衡に達するのに4時間かかった。また、吸着率は、最大で84.4質量%であり、アルギン酸繊維に比べて低い値となった。
このように、実施例1のアルギン酸繊維は、比較例1のアルギン酸カルシウム繊維に比べて、ストロンチウム等の放射性物質等の吸着対象物質を吸着する際の吸着速度および吸着率が高かった。
Claims (3)
- アルギン酸により形成されることを特徴とするアルギン酸の繊維状吸着材。
- アルギン酸の繊維状吸着材の製造方法であって、
1価のアルギン酸塩を含むアルギン酸塩水溶液を、酸を含む酸水溶液に吐出紡糸してゲル状繊維を得るゲル化工程と、
前記ゲル化工程で得られたゲル状繊維を乾燥する乾燥工程と、
を含むことを特徴とするアルギン酸の繊維状吸着材の製造方法。 - 請求項1に記載のアルギン酸の繊維状吸着材、または請求項2に記載の製造方法によって得られたアルギン酸の繊維状吸着材を用いて吸着対象物質を吸着することを特徴とする吸着方法。
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