JP2017039382A - 車両用操舵装置 - Google Patents
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Abstract
【課題】転舵アクチュエータに要求される出力を低減でき、適切な補助転舵トルクを転舵機構に付与できる車両用操舵装置を提供する。【解決手段】車両用操舵装置1は、車輪3と、車輪3に回転駆動力を与える車輪駆動モータ6と、車輪3を転舵する転舵機構9と、転舵機構9に転舵力を与える車輪転舵アクチュエータ10とを含む。車両用操舵装置1は、さらに、遊星歯車機構50と、油圧回路60と、目標リングギアトルク設定手段と、目標モータトルク演算手段とを含む。油圧回路60は、リングギア52の回転に連動して駆動され、作動油を介してリングギア52のトルクを補助転舵トルクとして転舵機構9に伝達する。目標リングギアトルク設定手段は、リングギア52の目標リングギアトルクを設定する。目標モータトルク演算手段は、目標リングギアトルクに基づいて、車輪駆動モータ6の目標モータトルクを演算する。【選択図】図2
Description
本発明は、車両用操舵装置に関する。
特許文献1は、車輪と、車輪を独立して転舵可能な転舵機構と、車輪を回転駆動させるための車輪駆動モータとを含む自動車を開示している。転舵機構は、転舵モータ(転舵アクチュエータ)と、転舵モータの回転を車輪に伝達する伝達機構とからなる。
特許文献1の構成では、たとえば車両の停車中に車輪を操舵する据え切り操舵時に、転舵アクチュエータに大きな出力を発生させる必要がある。このため、転舵アクチュエータとして大出力のものが要求される。そこで、本発明者らは、車輪駆動モータの回転に連動して駆動する油圧回路を用いて、当該車輪駆動モータのトルクを補助転舵トルクとして転舵機構に伝達する構成を検討している。この構成によれば、転舵アクチュエータの大出力化を回避できると考えられる。
しかしながら、車輪駆動モータのトルクが過大であると、油圧回路が車輪駆動モータのトルクを受け切れず、転舵機構に適切な補助転舵トルクを付与できない虞がある。また、車輪駆動モータのトルクが過小であると、油圧回路の駆動が不十分となり、この場合も、転舵機構に適切な補助転舵トルクを付与できない虞がある。
そこで、本発明は、転舵アクチュエータに要求される出力を低減でき、適切な補助転舵トルクを転舵機構に付与できる車両用操舵装置を提供することを目的とする。
そこで、本発明は、転舵アクチュエータに要求される出力を低減でき、適切な補助転舵トルクを転舵機構に付与できる車両用操舵装置を提供することを目的とする。
請求項1に記載の発明は、車輪(3;3FL,3FR)と、前記車輪に回転駆動力を付与するための車輪駆動モータ(6;6FL,6FR)と、前記車輪を転舵するための転舵機構(9;9FL,9FR)と、前記車輪を転舵するための転舵力を前記転舵機構に付与する転舵アクチュエータ(10;10FL,10FR)とを含む車両用操舵装置(1,101)であって、前記車輪駆動モータに連結されたサンギア(51)と、前記サンギアの周囲に配置されたリングギア(52)と、前記サンギアと前記リングギアとの間に配置された遊星ギア(53)と、前記遊星ギアを支持し、前記車輪に連結されたキャリア(54)とを含む遊星歯車機構(50)と、前記リングギアの回転に連動して駆動され、作動油を介して前記リングギアのトルク(Tr)を補助転舵トルク(Tasist)として前記転舵機構に伝達するための油圧回路(60)と、前記リングギアの目標リングギアトルク(Tr *)を設定する目標リングギアトルク設定手段(16;90)と、前記目標リングギアトルクに基づいて、前記車輪駆動モータの目標モータトルク(Ts *)を演算する目標モータトルク演算手段(16;91)とを含む、車両用操舵装置(1,101)である。なお、括弧内の英数字は、後述の実施形態における対応構成要素等を表すが、特許請求の範囲を実施形態に限定する趣旨ではない。以下、この項において同じ。
この構成によれば、リングギアのトルクが、油圧回路の作動油を介して補助転舵トルクとして転舵機構に伝達される。これにより、転舵アクチュエータの転舵トルクに加えて、リングギアのトルクを補助転舵トルクとして転舵機構に付与できるから、転舵アクチュエータに要求される出力を低減できる。その結果、転舵アクチュエータの小型化を図ることができる。
また、目標リングギアトルク設定手段によって、目標リングギアトルクが設定される。そして、目標リングギアトルクに基づいて、車輪駆動モータの目標モータトルクが演算される。目標モータトルクに基づいて車輪駆動モータが駆動されると、車輪駆動モータに連結されたサンギアが、目標モータトルクに対応するトルク(実モータトルク)で駆動される。そして、実モータトルクの一部がリングギアに分配される。これにより、リングギアが目標リングギアトルクに対応するトルク(実リングギアトルク)で駆動される。この実リングギアトルクが油圧回路に伝達される。これにより、リングギアから油圧回路に、過不足のない適切な実リングギアトルクを付与できる。その結果、適切な補助転舵トルクを転舵機構に付与できる。
請求項2に記載の発明は、前記車輪に制動トルクを付与するための制動手段(13;13FL,13FR)と、前記車輪の目標車輪トルク(Tw *)を設定する目標車輪トルク設定手段(16;92)と、前記目標リングギアトルクおよび前記目標車輪トルクに基づいて、前記制動手段の目標制動トルク(Tb *)を演算する目標制動トルク演算手段(16;93)と、をさらに含む、請求項1に記載の車両用操舵装置である。
この構成によれば、リングギアから油圧回路に、過不足のない適切な実リングギアトルクを付与しつつ、目標車輪トルクに対応するトルク(実車輪トルク)で車輪を駆動できる。
以下では、本発明の実施形態を、添付図面を参照して詳細に説明する。
図1は、本発明の第1実施形態に係る車両用操舵装置1が搭載された車両2の駆動系を図解的に示す平面図である。本実施形態では、車両用操舵装置1は、四輪駆動式車両の車両用操舵装置である。
車両2は、右前輪3FR、左前輪3FL、右後輪3RRおよび左後輪3RLの4つの駆動輪(これらを総称するときには「車輪3」という。)を有する四輪駆動式車両である。各車輪3は、ホイール4とタイヤ5とを含む。右前輪3FR、左前輪3FL、右後輪3RRおよび左後輪3RLは、右前輪駆動モータ6FR、左前輪駆動モータ6FL、右後輪駆動モータ6RRおよび左後輪駆動モータ6RL(これらを総称するときには「車輪駆動モータ6」という。)によってそれぞれ独立に駆動される。
図1は、本発明の第1実施形態に係る車両用操舵装置1が搭載された車両2の駆動系を図解的に示す平面図である。本実施形態では、車両用操舵装置1は、四輪駆動式車両の車両用操舵装置である。
車両2は、右前輪3FR、左前輪3FL、右後輪3RRおよび左後輪3RLの4つの駆動輪(これらを総称するときには「車輪3」という。)を有する四輪駆動式車両である。各車輪3は、ホイール4とタイヤ5とを含む。右前輪3FR、左前輪3FL、右後輪3RRおよび左後輪3RLは、右前輪駆動モータ6FR、左前輪駆動モータ6FL、右後輪駆動モータ6RRおよび左後輪駆動モータ6RL(これらを総称するときには「車輪駆動モータ6」という。)によってそれぞれ独立に駆動される。
各車輪駆動モータ6は、たとえば車輪3のホイール4内に組み込まれたインホイール型の三相交流電動機(電動モータ)である。各車輪駆動モータ6は、車両2に搭載された右前輪駆動インバータ7FR、左前輪駆動インバータ7FL、右後輪駆動インバータ7RRおよび左後輪駆動インバータ7RL(これらを総称するときには「車輪駆動インバータ7」という。)によってそれぞれ駆動される。
各車輪駆動インバータ7は、三相インバータ回路から構成されている。各車輪駆動インバータ7は、右前輪駆動ECU(Electronic Control Unit:電子制御ユニット)8FR、左前輪駆動ECU8FL、右後輪駆動ECU8RR、左後輪駆動ECU8RL(これらを総称するときには「車輪駆動ECU8」という。)によってそれぞれ制御されている。各車輪駆動ECU8は、たとえばCPUおよびメモリ(ROM,RAM,不揮発性メモリ等)を備えたマイクロコンピュータから構成されている。
車両2は、右前輪3FRおよび左前輪3FLを転舵するための右前輪転舵機構9FRおよび左前輪転舵機構9FL(これらを総称するときには「転舵機構9」という。)を含む。右前輪転舵機構9FRおよび左前輪転舵機構9FLは、右前輪3FRおよび左前輪3FLを独立転舵する左右独立転舵機構の一部を構成している。右前輪転舵機構9FRおよび左前輪転舵機構9FLには、右前輪転舵アクチュエータ10FRおよび左前輪転舵アクチュエータ10FL(これらを総称するときには「車輪転舵アクチュエータ10」という。)がそれぞれ連結されている。
本実施形態では、右前輪転舵アクチュエータ10FRおよび左前輪転舵アクチュエータ10FLは、三相交流電動機(電動モータ)である。右前輪転舵アクチュエータ10FRおよび左前輪転舵アクチュエータ10FLは、右前輪3FRおよび左前輪3FLを転舵するための転舵力を右前輪転舵機構9FRおよび左前輪転舵機構9FLにそれぞれ独立に付与する。各車輪転舵アクチュエータ10は、右前輪転舵インバータ11FRおよび左前輪転舵インバータ11FL(これらを総称するときには「車輪転舵インバータ11」という。)によってそれぞれ駆動される。
各車輪転舵インバータ11は、三相インバータ回路から構成されている。右前輪転舵インバータ11FRおよび左前輪転舵インバータ11FLは、右前輪転舵ECU12FRおよび左前輪転舵ECU12FL(これらを総称するときには「車輪転舵ECU12」という。)によってそれぞれ制御されている。各車輪転舵ECU12は、たとえばCPUおよびメモリ(ROM,RAM,不揮発性メモリ等)を備えたマイクロコンピュータから構成されている。
また、車両2は、右前輪3FRおよび左前輪3FLを制動するための右前輪制動手段13FRおよび左前輪制動手段13FL(これらを総称するときには「制動手段13」という。)を含む。各制動手段13は、たとえば右前輪3FRおよび左前輪3FLの各ホイール4内にそれぞれ組み込まれている。各制動手段13は、ディスクブレーキであってもよい。ディスクブレーキは、ブレーキディスクと、ブレーキディスクに当接するブレーキパッドを有するキャリパーとを含んでいてもよい。
右前輪制動手段13FRおよび左前輪制動手段13FLは、電動式または油圧式等の右前輪制動アクチュエータ14FRおよび左前輪制動アクチュエータ14FL(これらを総称するときには「制動アクチュエータ14」という。)によってそれぞれ駆動される。各制動アクチュエータ14は、ブレーキパッドを押圧して、当該ブレーキパッドをブレーキディスクに当接させる。右前輪制動アクチュエータ14FRおよび左前輪制動アクチュエータ14FLは、右前輪制動手段ECU15FRおよび左前輪制動手段ECU15FL(これらを総称するときには「制動手段ECU15」という。)によってそれぞれ制御されている。各制動手段ECU15は、たとえばCPUおよびメモリ(ROM,RAM,不揮発性メモリ等)を備えたマイクロコンピュータから構成されている。
車両2には、各車輪駆動ECU8、各車輪転舵ECU12および各制動手段ECU15等を制御するための上位ECU16と、各部に電力を供給するためのバッテリ17とが搭載されている。上位ECU16は、たとえばCPUおよびメモリ(ROM,RAM,不揮発性メモリ等)を備えたマイクロコンピュータから構成されている。
各車輪駆動ECU8は、上位ECU16の信号に基づいて、各車輪駆動インバータ7を制御する。各車輪駆動インバータ7は、バッテリ17から供給される直流電力を交流電力に変換して車輪駆動モータ6に供給する。これにより、車輪駆動モータ6が駆動されて、車輪3が回転する。各車輪転舵ECU12は、上位ECU16の信号に基づいて、各車輪転舵インバータ11を制御する。各車輪転舵インバータ11は、バッテリ17から供給される直流電力を交流電力に変換して対応する車輪転舵アクチュエータ10に供給する。これにより、車輪転舵アクチュエータ10が駆動されて、車輪3が転舵される。各制動手段ECU15は、上位ECU16の信号に基づいて、各制動アクチュエータ14を制御する。これにより、右前輪3FRおよび左前輪3FLに所定の制動トルクが付与されて、車輪3が制動される。
各車輪駆動ECU8は、上位ECU16の信号に基づいて、各車輪駆動インバータ7を制御する。各車輪駆動インバータ7は、バッテリ17から供給される直流電力を交流電力に変換して車輪駆動モータ6に供給する。これにより、車輪駆動モータ6が駆動されて、車輪3が回転する。各車輪転舵ECU12は、上位ECU16の信号に基づいて、各車輪転舵インバータ11を制御する。各車輪転舵インバータ11は、バッテリ17から供給される直流電力を交流電力に変換して対応する車輪転舵アクチュエータ10に供給する。これにより、車輪転舵アクチュエータ10が駆動されて、車輪3が転舵される。各制動手段ECU15は、上位ECU16の信号に基づいて、各制動アクチュエータ14を制御する。これにより、右前輪3FRおよび左前輪3FLに所定の制動トルクが付与されて、車輪3が制動される。
また、車両2には、ステアリングホイール18の操舵角を検出する操舵角センサ19と、アクセルペダル(図示せず)の踏み込み量を検出するアクセルセンサ20と、ブレーキペダル(図示せず)の踏み込み量を検出するブレーキセンサ21と、車両2の車速を検出する車速センサ22と、車輪3の転舵角を検出する転舵角センサ23とが搭載されている。各センサ19,20,21,22によって検出された信号は、上位ECU16に入力される。各車輪駆動モータ6、各車輪転舵アクチュエータ10、各制動アクチュエータ14等は、各センサ19,20,21,22によって検出された信号等に基づいて制御される。
以下、図2を参照して車両用操舵装置1の具体的な構成について説明する。車両2において、右前輪3FR側および左前輪3FL側の各構成は略同様であるので、以下では、右前輪3FR側の構成を例に取って説明する。また、右後輪3RR側および左後輪3RL側の各構成は、転舵機構9等が接続されていない点で右前輪3FR側および左前輪3FL側の各構成と異なるが、その他の構成は、右前輪3FR側および左前輪3FL側の各構成と略同様であるので、説明を省略する。
図2は、図1に示す右前輪3FRの車両用操舵装置1を図解的に示す断面図である。以下では、車両2の内側の方向を「車内側」といい、車両2の外側の方向を「車外側」という。
車両用操舵装置1は、前述の右前輪3FRと、右前輪3FRを支持するためのアッパアーム30およびロアアーム31とを含む。右前輪3FRは、前述のホイール4とタイヤ5とを含む。右前輪3FRのホイール4は、より具体的には、タイヤ5が取り付けられたリム32と、リム32に取り付けられ、その径方向中央部に車軸33が一体的に設けられたディスク34とを含む。アッパアーム30の車内側の端部(図示略)およびロアアーム31の車内側の端部(図示略)は、たとえば車体(図示略)に対して相対的に動くことができるように支持されている。アッパアーム30の車外側の端部30aには、前述の右前輪転舵アクチュエータ10FRが連結されている。
車両用操舵装置1は、前述の右前輪3FRと、右前輪3FRを支持するためのアッパアーム30およびロアアーム31とを含む。右前輪3FRは、前述のホイール4とタイヤ5とを含む。右前輪3FRのホイール4は、より具体的には、タイヤ5が取り付けられたリム32と、リム32に取り付けられ、その径方向中央部に車軸33が一体的に設けられたディスク34とを含む。アッパアーム30の車内側の端部(図示略)およびロアアーム31の車内側の端部(図示略)は、たとえば車体(図示略)に対して相対的に動くことができるように支持されている。アッパアーム30の車外側の端部30aには、前述の右前輪転舵アクチュエータ10FRが連結されている。
右前輪転舵アクチュエータ10FRには、前述の右前輪転舵機構9FRが連結されている。右前輪転舵機構9FRは、右前輪転舵アクチュエータ10FRの出力軸と一体を成す転舵軸35と、転舵軸35に取り付けられ、右前輪3FRを支持するための車輪支持体36とを含む。転舵軸35は、アッパアーム30からロアアーム31に向かって延びるように設けられている。なお、転舵軸35は、右前輪転舵アクチュエータ10FRの出力軸とは別体として当該出力軸に連結されていてもよい。
車輪支持体36は、モータハウジング37と、モータハウジング37を転舵軸35に連結する連結部38と、モータハウジング37をボールジョイント39を介してロアアーム31に連結する連結部40とを含む。車輪支持体36の連結部38は、転舵軸35の下端部35a(右前輪転舵アクチュエータ10FRとは反対側の端部)に連結されている。車輪支持体36の連結部38は、転舵軸35の下端部35aと一体を成していてもよい。
モータハウジング37は、ディスク34に対向する円板状の円板部41と、円板部41よりも車外側に配置され、円板部41に対向する平板円環状の環状部42と、円板部41および環状部42の外周縁同士を連結する円筒状の円筒部43とを含む。環状部42の内周縁には、車外側に向かって突出した円筒状の突出部44が設けられている。この突出部44の内周面と車軸33との間に軸受45が配置されている。つまり、右前輪3FRは、軸受45を介して回転自在に車輪支持体36に支持されている。そして、車輪支持体36は、転舵軸35を回動中心とする回動軸線L回りにアッパアーム30に支持されている。したがって、車輪支持体36が回動されることにより、右前輪3FRが転舵される。
前述の右前輪駆動モータ6FRは、車輪支持体36のモータハウジング37内に収容されている。右前輪駆動モータ6FRは、モータハウジング37の円筒部43の内周面43aに固定されたステータ46と、ステータ46の径方向内側に配置されたロータ47と、ロータ47に固定されたモータシャフト48とを含む。ステータ46は、右前輪駆動モータ6FRのU相、V相およびW相に対応するU相巻線、V相巻線およびW相巻線を含むステータ巻線を有している。
車両用操舵装置1は、モータシャフト48のトルクを増加させて、車軸33(右前輪3FR)に伝達する遊星歯車機構50を含む。遊星歯車機構50は、サンギア51と、リングギア52と、遊星ギア53と、キャリア54とを含む。
サンギア51は、モータシャフト48に一体回転可能に連結されており、右前輪駆動モータ6FRにより回転駆動される。リングギア52は、サンギア51を取り囲むリング状の部材であり、サンギア51に対して回転自在に設けられている。リングギア52は、後述するように、固定されて回転不可となる固定状態と、固定状態から解放されて回転自在となる解放状態との間で切り換え可能に設けられている。遊星ギア53は、サンギア51とリングギア52との間において、サンギア51およびリングギア52に係合するように配置されている。キャリア54は、複数の遊星ギア53を支持しており、車軸33に連結されている。
サンギア51は、モータシャフト48に一体回転可能に連結されており、右前輪駆動モータ6FRにより回転駆動される。リングギア52は、サンギア51を取り囲むリング状の部材であり、サンギア51に対して回転自在に設けられている。リングギア52は、後述するように、固定されて回転不可となる固定状態と、固定状態から解放されて回転自在となる解放状態との間で切り換え可能に設けられている。遊星ギア53は、サンギア51とリングギア52との間において、サンギア51およびリングギア52に係合するように配置されている。キャリア54は、複数の遊星ギア53を支持しており、車軸33に連結されている。
前述の右前輪制動手段13FRは、本実施形態では、ホイール4の車軸33に連結されている。右前輪制動手段13FRは、右前輪3FRに所定の制動トルクを付与できる箇所、たとえばキャリア54に連結されていてもよい。
車両用操舵装置1は、さらに、リングギア52の回転に連動して駆動され、作動油を介してリングギア52のトルクを補助転舵トルクとして右前輪転舵機構9FRに伝達する油圧回路60を含む。以下、図3を参照して、油圧回路60の具体的な構成について説明する。図3は、図2に示す油圧回路60の模式図である。
車両用操舵装置1は、さらに、リングギア52の回転に連動して駆動され、作動油を介してリングギア52のトルクを補助転舵トルクとして右前輪転舵機構9FRに伝達する油圧回路60を含む。以下、図3を参照して、油圧回路60の具体的な構成について説明する。図3は、図2に示す油圧回路60の模式図である。
油圧回路60は、油圧ポンプ61と、油圧アクチュエータ62と、作動油の流れる方向を制御する方向切換弁63と、作動油の流路を開閉する開閉バルブ64とを含む。さらに、油圧回路60は、作動油の流量を制御する流量制御弁65と、作動油の圧力を制御する圧力制御弁66と、複数の逆止弁67と、第1〜第4油路68,69,70,71と、油圧ポンプ61、方向切換弁63および圧力制御弁66にそれぞれ接続されたタンクTとを含む。なお、前述の図2では、明瞭化のため、油圧回路60の一構成要素として油圧ポンプ61の配置も示している。また、方向切換弁63、開閉バルブ64、流量制御弁65、圧力制御弁66などは、前述の上位ECU16に制御対象として接続されている。
油圧ポンプ61は、本実施形態では、モータハウジング37内に配置されており、リングギア52の回転に連動して駆動される。油圧ポンプ61は、第1ポート72と、第2ポート73と、回転軸74とを含む。第1ポート72および第2ポート73は、それぞれ逆止弁67を介して第1油路68に接続されている。また、第1ポート72および第2ポート73は、それぞれ逆止弁84を介してタンクTから作動油を吸い上げることができるように接続されている。逆止弁67および逆止弁84は、第1ポート72および第2ポート73から見て逆止方向が互いに逆方向になるように、第1ポート72および第2ポート73に接続されている。回転軸74は、動力伝達機構75を介してリングギア52に接続されている。
動力伝達機構75は、リングギア52の外周面に設けられた外歯76と、外歯76に噛合うように油圧ポンプ61の回転軸74に一体回転可能に取り付けられた歯車77とを含む。リングギア52のトルクは、外歯76および歯車77を介して油圧ポンプ61の回転軸74に伝達される。これにより、油圧ポンプ61が駆動されて、リングギア52の回転方向に対応するタンクTから第1油路68に作動油が供給される。
油圧アクチュエータ62は、右前輪転舵機構9FRに連結されており、油圧ポンプ61から供給された作動油により右前輪転舵機構9FRを回転駆動させる。より具体的には、油圧アクチュエータ62は、第1ポート78と、第2ポート79と、回転軸80とを含む。第1ポート78には、第2油路69が接続されている。第2ポート79には、第3油路70が接続されている。回転軸80は、出力伝達機構81を介して右前輪転舵機構9FRに接続されている。出力伝達機構81は、油圧アクチュエータ62の回転軸80に取り付けられた第1歯車82と、第1歯車82に噛合うように転舵軸35に取り付けられた第2歯車83とを含む。
たとえば、第1ポート78から第2ポート79に向かって作動油が流れる場合、油圧アクチュエータ62に正回転方向のトルクが発生する。これにより、油圧アクチュエータ62の回転軸80が正回転する。それとは逆に、第2ポート79から第1ポート78に向かって作動油が流れる場合、油圧アクチュエータ62に正回転とは反対方向のトルクが発生する。これにより、油圧アクチュエータ62の回転軸80が逆回転する。これら回転軸80の正・逆回転方向のトルクが、出力伝達機構81を介して右前輪転舵機構9FRに伝達される。一方、第1ポート78および第2ポート79のいずれにも作動油が流れない場合、油圧アクチュエータ62にトルクは発生しない。したがって、右前輪転舵機構9FRにトルクは伝達されない。
方向切換弁63は、油圧ポンプ61と油圧アクチュエータ62との間に介装されている。方向切換弁63は、本実施形態では、第1ポート、第2ポート、第3ポートおよび第4ポート(図3では各ポートに対応した数字のみを記載している。)を有し、正位置A、中立位置Bおよび逆位置Cで切り換え可能な4ポート3位置切換弁である。方向切換弁63は、たとえば常時閉(常時中立位置B)の電磁弁であってもよい。
方向切換弁63の第1ポートには、第1油路68を介して油圧ポンプ61が接続されている。方向切換弁63の第2ポートには、第3油路70を介して油圧アクチュエータ62の第2ポート79が接続されている。方向切換弁63の第3ポートには、第4油路71を介してタンクTが接続されている。方向切換弁63の第4ポートには、第2油路69を介して油圧アクチュエータ62の第1ポート78が接続されている。
開閉バルブ64は、第4油路71に介装されており、第4油路71を開閉することによって、右前輪転舵機構9FRへのリングギア52のトルクの伝達・遮断を行う。より具体的には、開閉バルブ64は、第4油路71を開く開弁状態と、第4油路71を閉じる閉弁状態との間で制御される。開閉バルブ64は、たとえば常時閉の電磁弁であってもよい。開閉バルブ64の開弁状態では、作動油の流路が解放されて、油圧ポンプ61が駆動可能となる。これにより、リングギア52が解放状態(回転自在)になるので、油圧ポンプ61へのリングギア52のトルクの伝達が可能となる。一方、開閉バルブ64の閉弁状態では、作動油の流路が遮断されて、油圧ポンプ61が駆動不能となる。これにより、リングギア52が固定状態(回転不能)になるので、油圧ポンプ61へのリングギア52のトルクの伝達が遮断される。
流量制御弁65は、第2油路69に介装されており、当該第2油路69の流路を絞ることにより作動油の流量を制御する。圧力制御弁66は、第1油路68に並列に接続され、第1油路68を流れる作動油の余剰分をタンクTに流し込むことによって、油圧アクチュエータ62に流れ込む作動油の圧力を制御する。これら流量制御弁65および圧力制御弁66は、作動油の流量および圧力を調整することにより、油圧アクチュエータ62から右前輪転舵機構9FRに伝達されるトルクの大きさを制御する。
車両用操舵装置1において、開閉バルブ64の閉弁状態(つまり、リングギア52の固定状態)で右前輪駆動モータ6FRが回転駆動されると、サンギア51が駆動されると共に、キャリア54が所定ギア比のトルクで駆動される。キャリア54のトルクは、車軸33に伝達される。これにより、右前輪3FRが回転駆動される。一方、開閉バルブ64の開弁状態(つまり、リングギア52の解放状態)で右前輪駆動モータ6FRが回転駆動されると、サンギア51が駆動されると共に、当該サンギア51のトルクが分配されて、リングギア52およびキャリア54が所定ギア比のトルクで駆動される。キャリア54のトルクは、右前輪3FRに伝達される。一方、リングギア52のトルクは、油圧ポンプ61に伝達される。これにより、油圧回路60が駆動される。
方向切換弁63が正位置Aに位置する場合、油圧ポンプ61から方向切換弁63に供給された作動油は、第2油路69を介して油圧アクチュエータ62の第1ポート78に流れ込む。油圧アクチュエータ62の第2ポート79から第3油路70に吐出された作動油は、方向切換弁63を介して第4油路71に吐出されてタンクTに供給される。これにより、油圧アクチュエータ62に正回転方向のトルクが発生する。
一方、方向切換弁63が中立位置Bに位置する場合、油圧ポンプ61から方向切換弁63に供給された作動油は、方向切換弁63を介してタンクTに流れ込む。したがって、作動油は、油圧アクチュエータ62の第1ポート78および第2ポート79のいずれにも流れ込まない。つまり、油圧アクチュエータ62は駆動しないので、右前輪転舵機構9FRにトルクは伝達されない。
他方、方向切換弁63が逆位置Cに位置する場合、油圧ポンプ61から方向切換弁63に供給された作動油は、第3油路70を介して油圧アクチュエータ62の第2ポート79に流れ込む。油圧アクチュエータ62の第1ポート78から第2油路69に吐出された作動油は、方向切換弁63を介してタンクTに供給される。これにより、油圧アクチュエータ62に逆回転方向のトルクが発生する。
上記油圧アクチュエータ62の正・逆回転方向のトルクが、補助転舵トルクとして右前輪転舵機構9FRに与えられる。なお、油圧アクチュエータ62により右前輪転舵機構9FRが駆動されない場合、つまり、方向切換弁63が中立位置Bに位置する場合には、開閉バルブ64が閉弁状態にされることが好ましい。これにより、油圧回路60の駆動を停止できるので、右前輪駆動モータ6FRの回転駆動力(エネルギー)が油圧回路60で消費されるのを抑制できる。
次に、図4、図5Aおよび図5Bを参照して、車両用操舵装置1で実行される転舵アシスト制御の一例について具体的に説明する。図4は、上位ECU16で実行される処理例を説明するためのフローチャートである。図5Aは、図4のステップS1において「NO」である場合の車両用操舵装置1で実行される制御を説明するためのブロック図である。図5Bは、図4のステップS1において「YES」である場合の車両用操舵装置1で実行される制御を説明するためのブロック図である。
図5Aおよび図5Bを参照して、上位ECU16は、目標リングギアトルク設定部(目標リングギアトルク設定手段)90と、目標サンギアトルク演算部(目標モータトルク演算手段)91と、目標車輪トルク設定部(目標車輪トルク設定手段)92と、目標制動トルク演算部(目標制動トルク設定手段)93と、目標転舵トルク設定部94とを含む。
目標リングギアトルク設定部90は、適切な補助転舵トルクTasist(図5B参照)を右前輪転舵機構9FRに与えるためのリングギア52の目標リングギアトルクTr *を設定する。補助転舵トルクTasistは、リングギア52のトルクに応じた値となる。したがって、目標リングギアトルクTr *は、必要となる補助転舵トルクTasistの大きさに応じて設定される。
目標リングギアトルク設定部90は、適切な補助転舵トルクTasist(図5B参照)を右前輪転舵機構9FRに与えるためのリングギア52の目標リングギアトルクTr *を設定する。補助転舵トルクTasistは、リングギア52のトルクに応じた値となる。したがって、目標リングギアトルクTr *は、必要となる補助転舵トルクTasistの大きさに応じて設定される。
目標サンギアトルク演算部91は、遊星歯車機構50のギア比から、目標リングギアトルクTr *に基づいて、サンギア51の目標サンギアトルクTs *を演算する。本実施形態では、モータシャフト48およびサンギア51が、右前輪駆動モータ6FRによって一体的に回転されるので、目標サンギアトルク演算部91は、実質的には、右前輪駆動モータ6FRの目標モータトルクを演算する目標モータトルク演算部でもある。
目標車輪トルク設定部92は、右前輪3FRの目標車輪トルクTw *を設定する。目標制動トルク演算部93は、目標リングギアトルクTr *および目標車輪トルクTw *に基づいて、右前輪制動手段13FRの目標制動トルクTb *を演算する。目標転舵トルク設定部94は、右前輪転舵機構9FRの目標転舵トルクTA *を設定する。
上位ECU16には、操舵角センサ19からの操舵角信号αs、転舵角センサ23からの転舵角信号θSTG、アクセルセンサ20からのアクセルペダル信号Acc、ブレーキセンサ21からのブレーキペダル信号Brk、車速センサ22からの車速信号Vv等が入力される。図4を参照して、上位ECU16は、これらの入力信号等に基づいて、転舵アシストが必要であるか否かを判定する(ステップS1)。
上位ECU16には、操舵角センサ19からの操舵角信号αs、転舵角センサ23からの転舵角信号θSTG、アクセルセンサ20からのアクセルペダル信号Acc、ブレーキセンサ21からのブレーキペダル信号Brk、車速センサ22からの車速信号Vv等が入力される。図4を参照して、上位ECU16は、これらの入力信号等に基づいて、転舵アシストが必要であるか否かを判定する(ステップS1)。
転舵アシストが必要か否かは、たとえば、右前輪転舵アクチュエータ10FRにおいて大出力が要求される場面であるか否かで判定されてもよい。大出力が要求される場面とは、たとえば右前輪3FRの据え切り操舵時や、右前輪3FRのトルクステア補償時等を挙げることができる。「右前輪3FRの据え切り操舵」とは、車両2の停車状態において右前輪3FRが操舵(転舵)されることをいう。「右前輪3FRのトルクステア」とは、右前輪3FRにおいて発生する操舵力により右前輪3FR側からステアリングホイール18が転舵される現象のことをいう。据え切り操舵実行時か否か、または、トルクステアが発生しているか否かは、たとえば、操舵角信号αs、ブレーキペダル信号Brk、車速信号Vv等に基づいて判定されてもよい。
転舵アシストが必要でない場合(ステップS1:NO)、上位ECU16は、油圧回路60の開閉バルブ64を閉弁状態にする(ステップS2)。これにより、油圧回路60が閉鎖されて駆動不能となると共に、リングギア52が固定される。また、上位ECU16は、右前輪3FRの目標車輪トルクTw1 *を設定する(ステップS3)。目標車輪トルクTw1 *は、アクセルペダル信号Acc等に基づいて設定されてもよい。
次いで、上位ECU16は、設定された目標車輪トルクTw1 *に基づいて、サンギア51の目標サンギアトルクTs1 *を演算する(ステップS4)。目標サンギアトルクTs1 *は、次式(1)〜(3)から算出される。
Ts1 *=Tc1 */(i+1)…(1)
i=Zr/Zs…(2)
Tc1 *=Tw1 *…(3)
上記(1)式において、Tc1 *は、キャリア54の目標キャリアトルクである。iは、サンギア51とリングギア52とのギア比である。上記(2)式において、Zsは、サンギア51の歯数であり、Zrは、リングギア52の歯数である。上記(1)〜(3)の式より、目標サンギアトルクTs1 *(=Tw1 */(i+1))が得られる。上位ECU16は、この目標サンギアトルクTs1 *に基づいて、右前輪駆動ECU8FR等を制御する。
Ts1 *=Tc1 */(i+1)…(1)
i=Zr/Zs…(2)
Tc1 *=Tw1 *…(3)
上記(1)式において、Tc1 *は、キャリア54の目標キャリアトルクである。iは、サンギア51とリングギア52とのギア比である。上記(2)式において、Zsは、サンギア51の歯数であり、Zrは、リングギア52の歯数である。上記(1)〜(3)の式より、目標サンギアトルクTs1 *(=Tw1 */(i+1))が得られる。上位ECU16は、この目標サンギアトルクTs1 *に基づいて、右前輪駆動ECU8FR等を制御する。
より具体的には、図5Aを参照して、上位ECU16は、目標サンギアトルクTs1 *に応じた信号を右前輪駆動ECU8FRに出力する。右前輪駆動ECU8FRは、右前輪駆動モータ6FRのモータトルクが目標サンギアトルクTs1 *と等しくなるように、当該右前輪駆動モータ6FRを駆動制御する。これにより、サンギア51が、目標サンギアトルクTs1 *に対応するトルク(実サンギアトルクTs1)で駆動される。そして、キャリア54は、目標キャリアトルクTc1 *(=Tw1 *)に対応するトルク(実キャリアトルクTc1(=Tw1))で駆動される。この実キャリアトルクTc1が右前輪3FRに伝達される。これにより、右前輪3FRが目標車輪トルクTw1 *に対応するトルク(実車輪トルクTw1)で駆動される。ステップS4を終了すると、上位ECU16は、ステップS1に戻る。
なお、ステップS1〜ステップS4に並行して操舵角信号αsが入力された場合、上位ECU16は、当該操舵角信号αsに基づいて、右前輪転舵機構9FRの目標転舵トルクTA *を設定してもよい。この場合、上位ECU16は、目標転舵トルクTA1 *に応じた信号を右前輪転舵ECU12FRに出力する。右前輪転舵ECU12FRは、右前輪転舵アクチュエータ10FRの転舵トルクが目標転舵トルクTA1 *と等しくなるように、当該右前輪転舵アクチュエータ10FRを駆動制御する。これにより、右前輪転舵機構9FRが、目標転舵トルクTA1 *に対応するトルク(実転舵トルクTA1)で駆動される。
また、ステップS1〜ステップS4に並行してブレーキペダル信号Brkが入力された場合、上位ECU16は、当該ブレーキペダル信号Brkに基づいて、右前輪制動手段13FRの目標制動トルクTb1 *を設定してもよい。この場合、上位ECU16は、目標制動トルクTb1 *に応じた信号を右前輪制動手段ECU15FRに出力する。右前輪制動手段ECU15FRは、右前輪制動手段13FRの制動トルクが目標制動トルクTb1 *と等しくなるように、当該右前輪制動手段13FRを駆動制御する。これにより、キャリア54の実キャリアトルクTc1に、目標制動トルクTb1 *に対応するトルク(実制動トルクTb1(Tb1<0))が加算される。これにより、右前輪3FRが、Tc1−Tb1のトルクで駆動される。
図4を再度参照して、ステップS1において、転舵アシストが必要である場合(ステップS1:YES)、上位ECU16は、油圧回路60の開閉バルブ64を開弁状態にする(ステップS5)。これにより、油圧回路60が駆動可能になると共に、リングギア52が解放される。また、上位ECU16は、右前輪3FRの目標車輪トルクTw2 *を設定する(ステップS6)。目標車輪トルクTw2 *は、アクセルペダル信号Acc等に基づいて設定されてもよい。
また、上位ECU16は、リングギア52の目標リングギアトルクTr *を設定する(ステップS7)。目標リングギアトルクTr *は、操舵角信号αs、転舵角信号θSTG、ブレーキペダル信号Brk、車速信号Vv等に基づいて設定されてもよい。目標リングギアトルクTr *は、メモリ等に予め格納された所定値であってもよい。
次いで、上位ECU16は、目標車輪トルクTw2 *および目標リングギアトルクTr *に基づいて、右前輪制動手段13FRの目標制動トルクTb2 *を演算する(ステップS8)。目標制動トルクTb2 *は、次式(4)および(5)から算出される。
次いで、上位ECU16は、目標車輪トルクTw2 *および目標リングギアトルクTr *に基づいて、右前輪制動手段13FRの目標制動トルクTb2 *を演算する(ステップS8)。目標制動トルクTb2 *は、次式(4)および(5)から算出される。
Tb2 *=Tc2 *−Tw2 *・・・(4)
Tc2 *=Tr *(i+1)/i・・・(5)
上記(4)式および(5)式において、Tc2 *は、キャリア54の目標キャリアトルクである。上記(4)式および(5)式より、目標制動トルクTb2 *(={Tr *(i+1)/i}−Tw2 *)が得られる。また、上位ECU16は、目標リングギアトルクTr *に基づいて、サンギア51の目標サンギアトルクTs2 *を演算する(ステップS9)。目標サンギアトルクTs2 *は、次式(6)から算出される。
Tc2 *=Tr *(i+1)/i・・・(5)
上記(4)式および(5)式において、Tc2 *は、キャリア54の目標キャリアトルクである。上記(4)式および(5)式より、目標制動トルクTb2 *(={Tr *(i+1)/i}−Tw2 *)が得られる。また、上位ECU16は、目標リングギアトルクTr *に基づいて、サンギア51の目標サンギアトルクTs2 *を演算する(ステップS9)。目標サンギアトルクTs2 *は、次式(6)から算出される。
Ts2 *=Tr */i・・・(6)
上位ECU16は、目標サンギアトルクTs2 *および目標制動トルクTb2 *に基づいて、右前輪駆動ECU8FR、右前輪制動手段ECU15FR等を制御する。より具体的には、図5Bを参照して、上位ECU16は、目標サンギアトルクTs2 *に応じた信号を右前輪駆動ECU8FRに出力する。右前輪駆動ECU8FRは、右前輪駆動モータ6FRのモータトルクが目標サンギアトルクTs2 *と等しくなるように、当該右前輪駆動モータ6FRを駆動制御する。これにより、サンギア51が目標サンギアトルクTs2 *に対応するトルク(実サンギアトルクTs2)で駆動される。
上位ECU16は、目標サンギアトルクTs2 *および目標制動トルクTb2 *に基づいて、右前輪駆動ECU8FR、右前輪制動手段ECU15FR等を制御する。より具体的には、図5Bを参照して、上位ECU16は、目標サンギアトルクTs2 *に応じた信号を右前輪駆動ECU8FRに出力する。右前輪駆動ECU8FRは、右前輪駆動モータ6FRのモータトルクが目標サンギアトルクTs2 *と等しくなるように、当該右前輪駆動モータ6FRを駆動制御する。これにより、サンギア51が目標サンギアトルクTs2 *に対応するトルク(実サンギアトルクTs2)で駆動される。
実サンギアトルクTs2(=Tr/i)の一部は、リングギア52に分配される。リングギア52は、目標リングギアトルクTr *に対応するトルク(実リングギアトルクTr)で駆動される。これにより、油圧回路60(油圧ポンプ61)が駆動されて、リングギア52の実リングギアトルクTrが油圧回路60を介して補助転舵トルクTasistとして右前輪転舵機構9FRに伝達される。また、実サンギアトルクTs2(=Tr/i)の一部は、キャリア54にも分配される。キャリア54は、目標キャリアトルクTc2 *に対応するトルク(実キャリアトルクTc2(=Tr(i+1)/i))で駆動される。キャリア54の実キャリアトルクTc2は、右前輪3FRに伝達される。
また、上位ECU16は、上記の処理に並行して、目標制動トルクTb2 *に応じた信号を右前輪制動手段ECU15FRに出力する。右前輪制動手段ECU15FRは、右前輪制動手段13FRの制動トルクが目標制動トルクTb2 *と等しくなるように、当該右前輪制動手段13FRを駆動制御する。これにより、キャリア54の実キャリアトルクTc2に、目標制動トルクTb2 *に対応するトルク(実制動トルクTb2(Tb2<0))が加算される。右前輪3FRは、目標車輪トルクTw2 *(=Tc2 *−Tb2 *)に対応するトルク(実車輪トルクTw2(=Tc2−Tb2))で駆動される。
さらに、上位ECU16は、上記の処理に並行して、右前輪転舵機構9FRの目標転舵トルクTA2 *を設定する。右前輪転舵機構9FRの目標転舵トルクTA2 *は、操舵角信号αsおよび転舵角信号θSTGに基づいて設定されてもよい。上位ECU16は、目標転舵トルクTA2 *に応じた信号を右前輪転舵ECU12FRに出力する。車輪転舵ECU12は、右前輪転舵アクチュエータ10FRの転舵トルクが目標転舵トルクTA2 *と等しくなるように、当該右前輪転舵アクチュエータ10FRを駆動制御する。これにより、右前輪転舵機構9FRに、目標転舵トルクTA2 *に対応したトルク(実転舵トルクTA2)が与えられる。右前輪転舵機構9FRは、実転舵トルクTA2に補助転舵トルクTasistが加算された転舵トルクTSTG(=TA2+Tasist)で駆動される。このようにして、車両用操舵装置1による転舵アシストが実行される。
以上、本実施形態では、リングギア52の実リングギアトルクTrが、油圧回路60の作動油を介して補助転舵トルクTasistとして右前輪転舵機構9FRに伝達される。これにより、右前輪転舵アクチュエータ10FRの実転舵トルクTA2に加えて、リングギア52の実リングギアトルクTrを補助転舵トルクTasistとして右前輪転舵機構9FRに与えることができる。つまり、右前輪転舵機構9FRを、転舵トルクTSTG(=TA2+Tasist)で駆動できるから、右前輪転舵アクチュエータ10FRに要求される出力を低減できる。その結果、右前輪転舵アクチュエータ10FRの小型化を図ることができる。なお、右前輪駆動モータ6FRのみによっても右前輪3FRを転舵することも可能となる。
また、目標リングギアトルク設定部90によって、目標リングギアトルクTr *が設定される。そして、目標サンギアトルク演算部91によって、目標リングギアトルクTr *に基づいて、右前輪駆動モータ6FRの目標モータトルク、すなわち、サンギア51の目標サンギアトルクTs2 *が演算される。右前輪駆動モータ6FRが駆動されると、サンギア51は、目標サンギアトルクTs2 *に対応するトルク(実サンギアトルクTs2)で駆動される。実サンギアトルクTs2の一部は、リングギア52に分配されて、リングギア52が目標リングギアトルクTr *に対応するトルク(実リングギアトルクTr)で駆動される。これにより、リングギア52から油圧回路60に過不足のない適切な実リングギアトルクTrを付与できる。その結果、適切な補助転舵トルクTasistを右前輪転舵機構9FRに付与できる。
また、本実施形態では、車両用操舵装置1は、右前輪制動手段13FRと、目標車輪トルク設定部92と、目標制動トルク演算部93とを含む。これにより、リングギア52から油圧回路60に過不足のない適切な実リングギアトルクTrを付与しつつ、右前輪3FRを、目標車輪トルクTw2 *(=Tc2 *−Tb2 *)に対応するトルク(実車輪トルクTw2(=Tc2−Tb2))で駆動させることができる。
図6は、本発明の第2実施形態に係る車両用操舵装置101を図解的に示す断面図である。図6において、前述の図1〜図5に示された部分に対応する部分については同一の参照符号を付して、説明を省略する。
本実施形態では、右前輪転舵アクチュエータ10FRの回転軸と油圧アクチュエータ62の回転軸とを同軸に連結することにより、右前輪転舵アクチュエータ10FRおよび油圧アクチュエータ62の各トルクが右前輪転舵機構9FRに伝達するようにしている。より具体的には、油圧アクチュエータ62は、ハウジング62Aと出力軸102とを含み、車輪支持体36上に上向きに配置されている。油圧アクチュエータ62のハウジング62Aは、車輪支持体36の連結部38に固定されている。このハウジング62A内には、前述の転舵角センサ23が収容されていてもよい。右前輪転舵アクチュエータ10FRは、ハウジング10Aと出力軸103とを含み、油圧アクチュエータ62上に上向きに配置されている。右前輪転舵アクチュエータ10FRのハウジング10Aは、油圧アクチュエータ62のハウジング62Aに固定されている。
本実施形態では、右前輪転舵アクチュエータ10FRの回転軸と油圧アクチュエータ62の回転軸とを同軸に連結することにより、右前輪転舵アクチュエータ10FRおよび油圧アクチュエータ62の各トルクが右前輪転舵機構9FRに伝達するようにしている。より具体的には、油圧アクチュエータ62は、ハウジング62Aと出力軸102とを含み、車輪支持体36上に上向きに配置されている。油圧アクチュエータ62のハウジング62Aは、車輪支持体36の連結部38に固定されている。このハウジング62A内には、前述の転舵角センサ23が収容されていてもよい。右前輪転舵アクチュエータ10FRは、ハウジング10Aと出力軸103とを含み、油圧アクチュエータ62上に上向きに配置されている。右前輪転舵アクチュエータ10FRのハウジング10Aは、油圧アクチュエータ62のハウジング62Aに固定されている。
油圧アクチュエータ62の出力軸102は、右前輪転舵アクチュエータ10FRの出力軸103と一体を成している。これにより、右前輪転舵アクチュエータ10FRおよび油圧アクチュエータ62は、出力軸102と出力軸103とが一体となった共通の出力軸104を有している。この出力軸104は、ユニバーサルジョイント105を介してアッパアーム30の車外側の端部30aに回転不能に連結されている。
一方、右前輪転舵機構9FRは、前述の実施形態と異なり転舵軸35を含まない。右前輪転舵機構9FRの連結部40は、本実施形態では、ボールジョイントを兼ねるユニバーサルジョイント106を介してロアアーム31に連結されている。つまり、ユニバーサルジョイント105,106は、車輪支持体36を出力軸104の軸方向に沿って上下移動可能に支持している。
右前輪転舵アクチュエータ10FRおよび/または油圧アクチュエータ62が駆動されると、右前輪転舵機構9FRは、出力軸104を回動中心とする回動軸線L回りに、右前輪転舵アクチュエータ10FRのハウジング10Aおよび油圧アクチュエータ62のハウジング62Aと一体的に回動する。これにより、右前輪3FRが転舵される。このような構成によっても、前述の実施形態において述べた効果と同様の効果を奏することができる。なお、右前輪転舵アクチュエータ10FRと油圧アクチュエータ62との配置は、逆であってもよい。
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明はさらに他の形態で実施することもできる。
たとえば、前述の各実施形態では、右前輪3FR側および左前輪3FL側において補助転舵トルクが得られる構成が採用された例について説明した。しかし、右後輪3RR側および左後輪3RL側においても、右前輪3FR側および左前輪3FL側の各構成と同様の構成が採用されて、補助転舵トルクが得られる構成としてもよい。
たとえば、前述の各実施形態では、右前輪3FR側および左前輪3FL側において補助転舵トルクが得られる構成が採用された例について説明した。しかし、右後輪3RR側および左後輪3RL側においても、右前輪3FR側および左前輪3FL側の各構成と同様の構成が採用されて、補助転舵トルクが得られる構成としてもよい。
また、前述の各実施形態では、右前輪3FRおよび左前輪3FLの各ホイール4内に制動手段13が組み込まれた例について説明した。しかし、右後輪3RRおよび左後輪3RLにも同様の制動手段13が設けられていてもよい。右後輪3RRおよび左後輪3RLに制動手段13が設けられている場合、右前輪3FRおよび左前輪3FLに制動手段13が設けられていなくてもよい。
また、前述の各実施形態では、右前輪3FRおよび左前輪3FLに組み込まれた制動手段13により所定の制動トルクTb1,Tb2を右前輪3FRおよび左前輪3FL(キャリア54)に付与する例について説明した。しかし、回生ブレーキを利用することにより、右前輪3FRおよび左前輪3FL(キャリア54)に所定の制動トルクTb1,Tb2を付与するようにしてもよい。たとえば、右後輪3RR側および左後輪3RLに設けられた右後輪駆動モータ6RRおよび左後輪駆動モータ6RLの回生ブレーキを利用することにより、所定の制動トルクTb1,Tb2を右前輪3FRおよび左前輪3FL(キャリア54)に付与するようにしてもよい。この場合、右後輪駆動モータ6RRおよび左後輪駆動モータ6RLが制動手段13を兼ねている。回生ブレーキの利用によれば、車両用操舵装置1,101のエネルギーの消費を抑制できる。
また、前述の各実施形態では、各車輪駆動ECU8、各車輪転舵ECU12および各制動手段ECU15が、上位ECU16とは別体として設けられた例について説明した。しかし、各車輪駆動ECU8、各車輪転舵ECU12および各制動手段ECU15は、上位ECU16に組み込まれていてもよい。
また、前述の各実施形態では、油圧回路60が開閉バルブ64を含む例について説明した。しかし、油圧回路60は、開閉バルブ64に代えて、第4油路71の流路を絞ることにより、当該第4油路71を流れる作動油の流量を制御する流量制御弁を含んでいてもよい。
また、前述の各実施形態では、油圧回路60が開閉バルブ64を含む例について説明した。しかし、油圧回路60は、開閉バルブ64に代えて、第4油路71の流路を絞ることにより、当該第4油路71を流れる作動油の流量を制御する流量制御弁を含んでいてもよい。
また、前述の各実施形態では、開閉バルブ64によりリングギア52を固定または解放する例について説明した。しかし、リングギア52の固定または解放は、リングギア52の回転を制動する制動手段等により実行されてもよい。リングギア52用の制動手段は、前述の制動手段13と同様の構成を有していてもよい。
その他、特許請求の範囲に記載された事項の範囲で種々の設計変更を施すことが可能である。
その他、特許請求の範囲に記載された事項の範囲で種々の設計変更を施すことが可能である。
1…車両用操舵装置、3FL,3FR…車輪、6FL,6FR…車輪駆動モータ、9FL,9FR…転舵機構、10FL,10FR…車輪転舵アクチュエータ、13FL,13FR…制動手段、50…遊星歯車機構、51…サンギア、52…リングギア、53…遊星ギア、54…キャリア、60…油圧回路、90…目標リングギアトルク設定部(目標リングギアトルク設定手段)、91…目標サンギアトルク演算部(目標サンギアトルク演算手段)、92…目標車輪トルク設定部(目標車輪トルク設定手段)、93…目標制動トルク演算部(目標制動トルク演算手段)、101…車両用操舵装置
Claims (2)
- 車輪と、前記車輪に回転駆動力を付与するための車輪駆動モータと、前記車輪を転舵するための転舵機構と、前記車輪を転舵するための転舵力を前記転舵機構に付与する転舵アクチュエータとを含む車両用操舵装置であって、
前記車輪駆動モータに連結されたサンギアと、前記サンギアの周囲に配置されたリングギアと、前記サンギアと前記リングギアとの間に配置された遊星ギアと、前記遊星ギアを支持し、前記車輪に連結されたキャリアとを含む遊星歯車機構と、
前記リングギアの回転に連動して駆動され、作動油を介して前記リングギアのトルクを補助転舵トルクとして前記転舵機構に伝達するための油圧回路と、
前記リングギアの目標リングギアトルクを設定する目標リングギアトルク設定手段と、
前記目標リングギアトルクに基づいて、前記車輪駆動モータの目標モータトルクを演算する目標モータトルク演算手段と、を含む、車両用操舵装置。 - 前記車輪に制動トルクを付与するための制動手段と、
前記車輪の目標車輪トルクを設定する目標車輪トルク設定手段と、
前記目標リングギアトルクおよび前記目標車輪トルクに基づいて、前記制動手段の目標制動トルクを演算する目標制動トルク演算手段と、をさらに含む、請求項1に記載の車両用操舵装置。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2015162226A JP2017039382A (ja) | 2015-08-19 | 2015-08-19 | 車両用操舵装置 |
Applications Claiming Priority (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2015162226A JP2017039382A (ja) | 2015-08-19 | 2015-08-19 | 車両用操舵装置 |
Publications (1)
Publication Number | Publication Date |
---|---|
JP2017039382A true JP2017039382A (ja) | 2017-02-23 |
Family
ID=58206081
Family Applications (1)
Application Number | Title | Priority Date | Filing Date |
---|---|---|---|
JP2015162226A Pending JP2017039382A (ja) | 2015-08-19 | 2015-08-19 | 車両用操舵装置 |
Country Status (1)
Country | Link |
---|---|
JP (1) | JP2017039382A (ja) |
-
2015
- 2015-08-19 JP JP2015162226A patent/JP2017039382A/ja active Pending
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