JP2017039375A - 鉄道車両のセンタリング装置 - Google Patents

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Akito Kazeto
昭人 風戸
航太郎 石栗
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航太郎 石栗
正剛 新山
Masataka Niiyama
正剛 新山
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Abstract

【課題】簡便且つ効果的にセンタリングを行うことができるとともに、消費エネルギーを低減することができる鉄道車両のセンタリング装置を提供する。【解決手段】鉄道車両のセンタリング装置は、車体3と台車2との間に設けられ、台車に対する車体3の左右位置を変更可能なセンタリングシリンダーと、センタリングシリンダーに対して作動空気を供給可能な空気源と、センタリングシリンダーと空気源との間に設けられ、空気源からセンタリングシリンダーへ供給される作動空気の圧力を調整可能な圧力調整部18と、車体3に作用する超過遠心加速度の値と、超過遠心加速度と相関のある相関値とのうち、少なくとも一方を演算する演算部と、演算部の演算結果に基づいて、圧力調整部18を制御するセンタリング制御部22と、を備える。【選択図】図2

Description

この発明は、鉄道車両のセンタリング装置に関するものである。
鉄道車両にあっては、利用者の移動時間短縮等のために、特に在来線の高速化が望まれている。しかし、在来線の直線区間においては、踏切等が設置されていることによるブレーキ停止距離の制約等もあって、更なる最高速度の向上は困難な状況にある。そのため、曲線区間でできるだけ速度を落とさずに走行することが望まれる。曲線区間で速度を落とさずに走行した場合、利用者の移動時間短縮だけでなく、曲線区間の出入口での加減速を減少させることができる。そのため、乗客に対する前後方向の加速度変動が小さくなり、乗り心地を向上することができる。さらに、この加減速の減少は、省エネルギー化にもつながる。
曲線区間における乗り心地を悪化させずに鉄道車両をより高速に走行させる技術としては、車体傾斜がある。この車体傾斜の方式としては、振り子式や、空気ばね式等がある。空気ばね式は、振り子式と比較して最大傾斜角の点で不利となるが、振り子式のような特別な台車を必要とせず低コストで実現できるため、振り子式から空気ばね式への置き換えが進んでいる。
しかし、振り子式から空気ばね式の車体傾斜車両に置き換えた場合であっても、振り子式の場合と同等の走行速度が曲線区間で求められる。そのため、曲線区間を走行する際に、軌道に設定されたカントで相殺できない超過遠心加速度が車体に作用してしまうことが想定される。
空気ばね式の車体傾斜車両は、振り子ばりを有さず、車体が空気ばねを介して台車枠に支持されている。そのため、上述した超過遠心加速度が車体に作用すると、台車に対する車体の横移動が大きくなってしまう。
一般に、鉄道車両には、台車に対する車体の横移動が大きくなることで車両限界や建築限界を超えないように左右動ストッパが設けられている。この左右動ストッパは、例えば十分に速度を落として曲線区間に進入する場合には、車体との間に隙間が確保されて接触することはない。しかし、台車に対する車体の横方向の移動幅が大きくなり、所定の移動幅を超えると、車体と左右動ストッパとが接触するいわゆるストッパ当たりが発生する。このストッパ当たりが発生した場合、大きな振動が車体に加わり乗り心地が悪化してしまう場合がある。例えば、高速で曲線区間を走行して超過遠心加速度が車体に作用する場合などには、ストッパ当たりが頻発して乗り心地が悪化してしまう可能性があった。
特許文献1には、車両に大きな超過遠心加速度が作用しても効果的な振動制御が行えるように、左右変位を制御入力として用いるアクチュエータを弾性手段と組み合わせて変位制御に用いる技術が開示されている。この特許文献1の技術によれば、台車枠に対して車体を常に左右方向の中心に存在させて、ストッパ当たりが発生することを抑制することができる。
しかし特許文献1に記載の技術は、センサや演算装置を用いているため、制御や構造が複雑化して、コストが増大してしまうという課題があった。
そこで、特許文献2には、各要素をコンパクトにまとめることが可能なセンタリングシリンダーが提案されている。この特許文献2に記載のセンタリングシリンダーによれば、構成が複雑化することなしに、車両の横方向変位が制御切換距離の範囲以内の場合には、引き戻す推力を殆んど発生させず、制御切換距離の範囲を超える横方向変位の場合に、横方向変位を引き戻す推力を発生することが可能となっている。
特開平6−278606号公報 特開2008−049907号公報
特許文献2に記載のセンタリングシリンダーは、電気的なサーボ弁やセンサ類を必要とせず、簡便でコンパクトな構成となっている。しかしながら、車両の振動状態、走行状態に応じた適切なセンタリングができない。そのため、推力が不足したり、過大になったりする可能性がある。さらに、特許文献2に記載のセンタリングシリンダーは、車体が中立位置付近にあり推力を発生しない場合であっても、常時、作動流体である空気を排出するため、エネルギー消費量が増大してしまう。
この発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、簡便且つ効果的にセンタリングを行うことができるとともに、消費エネルギーを低減することができる鉄道車両のセンタリング装置を提供するものである。
この発明の第一態様によれば、鉄道車両のセンタリング装置は、車体が空気ばねを介して台車に支持される鉄道車両のセンタリング装置であって、前記車体と前記台車との間に設けられ、前記台車に対する前記車体の左右位置を変更可能なセンタリングシリンダーと、前記センタリングシリンダーに対して作動空気を供給可能な空気源と、前記センタリングシリンダーと前記空気源との間に設けられ、前記空気源から前記センタリングシリンダーへ供給される作動空気の圧力を調整可能な圧力調整部と、前記車体に作用する超過遠心加速度の値と、前記超過遠心加速度と相関のある相関値とのうち、少なくとも一方を演算する演算部と、前記演算部の演算結果に基づいて、前記圧力調整部を制御するセンタリング制御部と、を備える。
このようにすることで、車体に作用する超過遠心加速度に応じてセンタリングシリンダーに供給される作動空気の圧力が調整可能となる。例えば、直線を走行している場合や曲線を低速走行している場合など、センタリングシリンダーにより車体をセンタリングする必要が無い場合には、空気源からセンタリングシリンダーへの作動空気の供給を停止できる。その一方で、曲線を高速で走行して超過遠心加速度が発生するような場合には、超過遠心加速度の大きさに応じた圧力で作動空気をセンタリングシリンダーに供給することができる。その結果、簡便且つ効果的に車体のセンタリングを行うことができるとともに、消費エネルギーを低減することができる。
この発明の第二態様によれば、鉄道車両のセンタリング装置は、第一態様における演算部が、前記相関値として前記車体の傾斜角度の目標値を用いてもよい。
このようにすることで、例えば、空気ばねにより車体傾斜制御を行う場合、車体傾斜用の制御装置から車体の傾斜角度の目標値を得て、この傾斜角度の目標値に応じて簡単にセンタリングシリンダーへ供給する作動空気の圧力を調整できる。その結果、より簡便に車体のセンタリングを行うことができる。
この発明の第三態様によれば、鉄道車両のセンタリング装置は、第一態様における演算部が、走行地点に基づいて軌道の曲率半径およびカント量を求め、これら曲率半径およびカント量と、車両の走行速度とに基づき超過遠心加速度を算出し、前記センタリング制御部が、前記演算部で求めた前記超過遠心加速度の大きさに応じた圧力で、前記作動空気が前記センタリングシリンダーへ供給されるように前記圧力調整部を制御するようにしてもよい。
例えば、車輪に設けられている速度発電機から走行速度を取得でき、またATS地上子等から走行地点を取得できる。さらに、空気ばね式の車体傾斜を行う場合、車体傾斜を制御する装置が、走行地点に応じた軌道の曲率半径や、カント量などの曲線情報を予め記憶している場合がある。そのため、車体傾斜用の制御装置から得られる曲線情報と、走行速度とから簡単に超過遠心加速度を求めることができる。その結果、構成が複雑化することなしに、車体のセンタリングを効果的に行うことができる。
この発明の第四態様によれば、鉄道車両のセンタリング装置は、第一態様における演算部が、前記車体のヨー角速度と、車両の走行速度とから現在地点の軌道の曲率半径を求め、前記軌道の曲率半径から軌道のカント量を推定し、前記曲率半径と、前記カント量と、前記走行速度とに基づき超過遠心加速度を算出し、前記センタリング制御部が、前記演算部で求めた前記超過遠心加速度の大きさに応じた圧力で、前記作動空気が前記センタリングシリンダーへ供給されるように前記圧力調整部を制御するようにしてもよい。
例えば、ヨーレートジャイロを設けてヨー角速度を取得するとともに、車輪に設けられている速度発電機から走行速度を取得することで、曲率半径を求めることができる。さらに、曲率半径とカント量とは相関があるため、曲率半径に基づきカント量を算出できる。これにより、曲率半径と、カント量と、走行速度とに基づき超過遠心加速度を算出することができる。つまり、ヨーレートジャイロ等のヨー角速度を取得するための機器を追加設置するだけで超過遠心加速度を算出できるようになる。その結果、部品点数の増加を抑制しつつ効果的な車体のセンタリングを行うことができる。
上記鉄道車両のセンタリング装置によれば、簡便且つ効果的にセンタリングを行うことができるとともに、消費エネルギーを低減することが可能となる。
この発明の第一実施形態における鉄道車両の全体構成を示す図である。 この発明の第一実施形態における鉄道車両の概略構成を側方から見た図である。 この発明の第一実施形態におけるセンタリング制御部の処理フローを示す図である。 この発明の第二実施形態における図2に相当する図である。 この発明の第二実施形態におけるセンタリング制御部の処理フローを示す図である。 この発明の第三実施形態における図2に相当する図である。 この発明の第三実施形態におけるセンタリング制御部の処理フローを示す図である。
次に、この発明の第一実施形態における鉄道車両のセンタリング装置を図面に基づき説明する。
図1は、この発明の第一実施形態における鉄道車両の全体構成を示す図である。
図1に示すように、この実施形態の鉄道車両である車両1は、台車2と車体3とセンタリングシリンダー4とを備えている。
台車2は、輪軸5と、軸ばね6と、台車枠7と、空気ばね8と、を備えている。
輪軸5は、軌道を構成するレールの幅方向(以下、単に左右方向と称する)に延びる車軸5aに略円盤状の2枚の車輪5bが圧入されてなる。一つの台車2には、一対の輪軸5(図1中、一方のみを示す)が設けられ、これら輪軸5の互いの車軸5aが前後平行となるように配置されている。ここで、車軸5aは、その左右端部が図示しない軸受けにより回動自在に支持されている。これら軸受けを備える支持部5cに、台車枠7が軸ばね6を介して支持されている。
台車枠7は、前後方向に延びる左右一対の側ばり7aと、左右方向に延びて左右の側ばり7a同士を前後中央で接続する横ばり7bと、を有している。
側ばり7aは、その左右両側部の上面に、左右一対のダイヤフラム式の空気ばね8を支持する空気ばね支持部10を有している。
横ばり7bは、その中央に上下に貫通する孔部11を有している。この孔部11には、左右動ストッパ9が設けられている。左右動ストッパ9は、孔部11の左右内側面から台車枠7の中央に向かってそれぞれ対向するように延びている。これら左右動ストッパ9は、台座部9aを有している。この台座部9aの先端部には、緩衝用の弾性部材12が取り付けられている。左右方向における弾性部材12同士の間隙は、後述する車体3の横移動の上限値に応じた大きさとなっている。
空気ばね8は、上述した車体3を左右下方からそれぞれ支持している。この空気ばね8は、ゴム等の弾性体により形成され、その内部空間に空気源13から圧縮空気が供給可能となっている。この空気ばね8を介して、車体3が弾性的に台車枠7に支持されている。この実施形態における車両1は、左右の空気ばね8に対してそれぞれ異なる空気圧で圧縮空気を供給できるようになっている。つまり、左右の空気ばね8の空気圧の差により、それぞれ左右の空気ばね8の高さ寸法を異ならせて、車体3を台車2に対して左右に傾斜させることができる。ここで、一両分の車体3には、その長手方向の一側および他側にそれぞれ台車2が取り付けられる。すなわち一両分の車体3と2つの台車2との間には、少なくとも4つの空気ばね8が設けられている。
上述した車体3の傾斜は、車体傾斜制御装置(演算部)14によって行われる。この車体傾斜制御装置14は、例えば、曲線区間などにおいて、車体3に超過遠心加速度が作用すると判断した場合に、この超過遠心加速度を打ち消すように、車体3を内軌側に傾斜させる制御を行う。より具体的には、車体傾斜制御装置14は、空気源13と左右の空気ばね8との間に配される給排気電磁弁等を制御することで、左右の空気ばね8の高さ寸法を異ならせて車体3を傾斜させる。
車体傾斜制御装置14は、GNSS(Global Navigation Satellite System)信号やATS信号(Automatic Train Stop)などの外部からの信号に基づいて自車の位置情報を検出する。車体傾斜制御装置14は、自車の位置情報と、ROM(Read Only Memory)などの記憶媒体に予め記憶された軌道の曲線情報とに基づき、例えば、自車が走行する曲線区間の曲率半径、カント等の曲線情報を記憶情報の中から検索する。さらに、車体傾斜制御装置14は、速度発電機15の出力などに基づき自車の走行速度を検出する。
車体傾斜制御装置14は、自車が直後に走行する曲線区間の曲率半径、カント量、および、自車の走行速度に基づいて、台車2に対する車体3の傾斜角度の目標値である傾斜角度目標値を演算により求める。ここで、軌道のカントによって車体3が地面に対して内軌側へ傾斜されることで、当該傾斜角度に応じて遠心加速度が緩和される。しかし、カントによる車体3の傾斜では相殺できない遠心加速度である超過遠心加速度が生じる。要するに、傾斜角度目標値は、この超過遠心加速度を打ち消すために、台車2に対して車体3を内軌側へ傾斜させる角度の目標値である。
車体3は、矩形の箱状に形成されている。この車体3は、底面から下方に向かって延びる突起部24を有している。突起部24は、例えば、平地で車両1が停止している際に、上述した左右動ストッパ9の間隙の中央に配されるように形成されている。例えば、台車2に対して車体3が左右方向に相対変位して、予め設定された変位量の上限値を超えると、突起部24が左右動ストッパ9の弾性部材12に接触して、それ以上左右方向に車体3が相対変位しないようになっている。つまり、上述した左右動ストッパ9同士の間隙は、台車2に対する車体3の左右方向への変位量の上限値に応じて設定されている。
センタリングシリンダー4は、車体3と台車2との間に設けられている。より具体的には、センタリングシリンダー4は、車体3の突起部24と台車2の台車枠7との間に渡るように取り付けられている。このセンタリングシリンダー4は、左右方向の長さが可変とされ、車体3に対して左右方向に力を加えることが可能となっている。センタリングシリンダー4は、インナーロッド16と、アウターチューブ17とを備えている。アウターチューブ17の内部には、インナーロッド16の端部に形成されたピストンヘッド(図示せず)によって内部空間が仕切られることでシリンダー室(図示せず)が形成されている。アウターチューブ17内に形成されるシリンダー室には、空気源13から圧縮空気が供給可能となっている。すなわち、センタリングシリンダー4は、この圧縮空気を作動流体として推力を発生させる。
空気源13は、例えば、車体3の底面等に取り付けられている。この空気源13は、いわゆる元空気溜めと称されるものであって、図示しないコンプレッサによって圧縮された空気が、所定の圧力を下回らないように充填されている。空気源13は、センタリングシリンダー4に圧縮空気を供給する空気配管を介して接続されている。空気源13とセンタリングシリンダー4との間の空気配管の途中には、圧力調整部18が設けられている。
圧力調整部18は、空気源13からセンタリングシリンダー4へ供給される作動空気の圧力を調整することが可能となっている。この実施形態の圧力調整部18は、電気信号に応じて作動空気の圧力を調整する。圧力調整部18としては、例えば、電空レギュレータ、電空比例弁、2ポート電磁弁、および、3ポート電磁弁などを用いることができる。ここで、3ポート電磁弁の場合、1ポートを大気開放ポートとし、電源断時にセンタリングシリンダー4の空気供給口と大気開放ポートが接続されるように設定することで、軌道不整や空気力による台車2、車体3の動揺に対してセンタリングシリンダー4を応答しないようにすることができる。
図2は、この発明の第一実施形態における車両の概略構成を側方から見た図である。
図1、図2に示すように、車両1は、車体3に、車体傾斜制御装置14と、センタリング制御部22と、を備えている。
センタリング制御部22は、車体傾斜制御装置14の演算結果に基づいて、圧力調整部18を制御する。この実施形態におけるセンタリング制御部22は、車体傾斜制御装置14で車体傾斜制御用に演算した演算結果である車体傾斜目標角度(傾斜角度の目標値)の情報を取得する。この車体傾斜目標角度は、超過遠心加速度と相関のある相関値である。センタリング制御部22は、この車体傾斜目標角度と、予め設定された車体傾斜目標角度の閾値とを比較する。センタリング制御部22は、車体傾斜目標角度が閾値以上と判定した場合に、センタリングシリンダー4に推力を発生させるべく、圧力調整部18の制御を行う。
一方で、センタリング制御部22は、車体傾斜目標角度が閾値以上ではないと判定した場合には、センタリングシリンダー4に推力を発生させないように、すなわち、センタリングシリンダー4に圧縮空気を供給しないように圧力調整部18の制御を行う。この実施形態における圧力調整部18は、それぞれ前後の台車2に設けられたセンタリングシリンダー4を同時に制御する。
この実施形態における車両1は、上述した構成を備えている。次に、この車両1におけるセンタリング制御について図面を参照しながら説明する。
図3は、この発明の第一実施形態におけるセンタリング制御部の処理フローを示す図である。
図3に示すように、センタリング制御部22は、まず、車体傾斜制御装置14によって演算された車体傾斜目標角度が閾以上か否かを判定する(ステップS01)。ここで、車体傾斜目標角度は、車体3が台車2に対して左右の何れにも傾斜していない状態を基準(0度)とした角度である。なお、車体3の傾斜角度は、左右の何れが正となっても良い。
上記判定の結果、車体傾斜目標角度が閾値以上ではない(ステップS01でNo)と判定された場合には、この処理を繰り返す。一方で、車体傾斜目標角度が閾値以上である(ステップS01でYes)と判定された場合には、センタリングシリンダー4へ供給する空気の圧力であるシリンダー供給圧力を計算する(ステップS02)。
例えば、シリンダー供給圧力は、車体傾斜目標角度の絶対値と係数を積算して求めることができる。この係数は、車体傾斜角度が0度のときにシリンダー供給圧が0kPaとなり、車体傾斜角度が最大(例えば、5度)のときにシリンダー供給圧が最大供給圧(例えば、車両1の保有する元空気溜めの圧力(800kPa程度))となるように定める。
さらに、センタリング制御部22は、求めたシリンダー供給圧力となるように圧力調整部18に向けて制御信号を出力する(ステップS03)。これにより、圧力調整部18では、車体傾斜目標角度が閾値以上の場合に、この車体傾斜目標角度に応じたシリンダー供給圧力で、センタリングシリンダー4に作動空気が供給されることとなる。
したがって、上述した第一実施形態によれば、車体3に作用する超過遠心加速度に応じてセンタリングシリンダー4に供給される作動空気の圧力が調整可能となる。例えば、直線を走行している場合や曲線を低速走行している場合など、センタリングシリンダー4により車体3をセンタリングする必要が無い場合には、空気源13からセンタリングシリンダー4への作動空気の供給を停止できる。その一方で、曲線を高速で走行して超過遠心加速度が発生するような場合には、超過遠心加速度の大きさに応じた圧力で作動空気をセンタリングシリンダー4に供給することができる。その結果、簡便且つ効果的に車体3のセンタリングを行い、ストッパ当たりによる振動を抑制できる。さらに、センタリングを行わない場合には、センタリングシリンダー4に作動空気が供給されないため、消費エネルギーを低減することができる。
さらに、空気ばね8により車体傾斜制御を行う場合に、車体傾斜用の車体傾斜制御装置14から車体傾斜目標角度を得て、この車体傾斜目標角度に応じて簡単にセンタリングシリンダー4へ供給する作動空気の圧力を調整できる。その結果、より簡便に車体3のセンタリングを行い、ストッパ当たりによる振動を抑制できる。
次に、この発明の第二実施形態における車両1のセンタリング装置を図面に基づき説明する。この第二実施形態は、上述した第一実施形態と、シリンダー供給圧力を算出する際に用いる情報が異なるだけである。そのため、第一実施形態と同一部分に同一符号を付して説明するとともに、重複する説明を省略する。
図4は、この発明の第二実施形態における図2に相当する図である。
図4に示すように、この実施形態のセンタリング装置は、位置、曲線情報データベース19を有している。この位置、曲線情報データベース19は、車両1の走行地点と、その走行地点に対応する位置情報、および、曲線情報とが関連付けて予め記憶されたデータベースである。ここで、位置情報としては、BTC(Beginning of Transition Curve、緩和曲線の始点)、BCC(Beginning of Circular Curve、円曲線の始点)、ECC(End of Circular Curve、円曲線の終点)、および、ETC(End of Transition Curve、緩和曲線の終点)が例示できる。さらに、曲線情報としては、曲率半径、および、カント量等が挙げられる。この曲線情報データベースは、センタリング制御部22からの要求に従って、これらの情報をセンタリング制御部22に向けて出力する。
さらに、センタリング制御部22には、速度発電機15と、ATS(Automatic Train Stop)車上子とが接続されている。
速度発電機15は、車輪の回転速度に応じた周期のパルス信号を出力する。
ATS車上子20は、ATS地上子21からパルス信号を受信する。このATS車上子20によって取得されたパルス信号は、センタリング制御部22に出力可能となっている。
センタリング制御部22は、速度発電機15から出力されるパルス信号を積算して累積距離を算出するとともに、このパルス信号に基づいて走行速度を算出する。さらに、センタリング制御部22は、ATS地上子21から受信したパルス信号と、上記累積距離とに基づいて車両1が走行している走行地点を算出する。さらに、センタリング制御部22は、算出した走行地点に基づいて、位置、曲線情報データベース19から、走行地点に対応する位置情報、および、曲線情報を取得する。その後、センタリング制御部22は、位置、曲線情報データベース19から取得した位置情報、および、曲線情報に基づいて、超過遠心加速度を算出する。つまり、この実施形態におけるセンタリング制御部22は、この発明の演算部とセンタリング制御部とを兼ねている。
次に、この第二実施形態における鉄道車両のセンタリング制御について、図面を参照しながら説明する。
図5は、この発明の第二実施形態におけるセンタリング制御部の処理フローを示す図である。
図5に示すように、センタリング制御部22は、まず、車両1の走行地点を検出する(ステップS11)。次いで、センタリング制御部22は、車両1の走行速度が制限速度以上か否かを判定する(ステップS12)。ここで、制限速度とは、予め設定された走行速度の閾値である。
この判定の結果、制限速度以上と判定しなかった場合(ステップS12でNo)、センタリング制御部22は、上述した処理を繰り返し行う。ここで、制限速度以上ではない走行速度が低速の場合には、車体3のセンタリングを行う必要が生じるほど超過遠心加速度が大きくならない。一方で、制限速度以上と判定した場合(ステップS12でYes)は、車両1が走行している現在地点、および、その直後が、曲線区間か否かを判定する(ステップS13)。
この判定の結果、曲線区間であると判定しなかった場合(ステップS12でNo)、センタリング制御部22は、上述した一連の処理を繰り返す。一方で、曲線区間であると判定した場合(ステップS12でYes)、センタリング制御部22は、超過遠心加速度を算出する(ステップS14)。
ここで、超過遠心加速度は、位置、曲線情報データベース19に予め記憶された曲率半径、および、カント量と、速度発電機15により検出される走行速度とに基づいて算出できる。より具体的には、以下の式により求めることができる。
超過遠心加速度=走行速度/曲率半径−カント量/軌間×重力加速度
次いで、センタリング制御部22は、算出した超過遠心加速度に基づいてシリンダー供給圧力を算出する(ステップS15)。このシリンダー供給圧力は、超過遠心加速度に係数を積算することが求めることができる。この係数は、上述した第一実施形態の係数と同様に、車体傾斜角度が0度のときにシリンダー供給圧が0kPaとなり、車体傾斜角度が最大(例えば、5度)のときにシリンダー供給圧が最大供給圧(例えば、車両1の保有する元空気溜めの圧力(800kPa程度))となるように定める。
その後、センタリング制御部22は、求めたシリンダー供給圧力となるように圧力調整部18に向けて制御信号を出力する(ステップS16)。これにより、圧力調整部18は、車体傾斜目標角度が閾値以上の場合に、この車体傾斜目標角度に応じたシリンダー供給圧力で、センタリングシリンダー4に作動空気を供給する。
したがって、上述した第二実施形態によれば、第一実施形態と同様に、車体3に作用する超過遠心加速度に応じてセンタリングシリンダー4に供給される作動空気の圧力が調整可能となる。例えば、直線を走行している場合や曲線を低速走行している場合など、センタリングシリンダー4により車体3をセンタリングする必要が無い場合には、空気源13からセンタリングシリンダー4への作動空気の供給を停止できる。その一方で、曲線を高速で走行して超過遠心加速度が発生するような場合には、超過遠心加速度の大きさに応じた圧力で作動空気をセンタリングシリンダー4に供給することができる。その結果、簡便且つ効果的に車体3のセンタリングを行い、ストッパ当たりによる振動を抑制できる。さらに、センタリングを行わない場合には、センタリングシリンダー4に作動空気が供給されないため、消費エネルギーを低減することができる。
さらに、第二実施形態によれば、輪軸5に設けられている速度発電機15から走行速度を取得でき、またATS地上子21等から走行地点を取得できる。さらに、空気ばね式の車体傾斜を行う場合、車体傾斜制御装置14が、曲線の位置情報や、走行地点に応じた軌道の曲率半径、カント量などの曲線情報をデータベースとして予め記憶している場合がある。そのため、車体傾斜制御装置14から得られる曲線情報と、走行速度とから簡単に超過遠心加速度を求めることができる。その結果、構成が複雑化することなしに、車体3のセンタリングを効果的に行うことができる。
次に、この発明の第三実施形態における車両1のセンタリング装置を図面に基づき説明する。この第三実施形態は、上述した第一実施形態、および、第二実施形態と、シリンダー供給圧力を算出する際に用いる情報が異なるだけである。そのため、第一実施形態、および、第二実施形態と同一部分に同一符号を付して説明するとともに、重複する説明を省略する。
図6は、この発明の第三実施形態における図2に相当する図である。
図6に示すように、センタリング制御部22には、ヨーレートジャイロ23と、速度発電機15とがそれぞれ接続されている。
ヨーレートジャイロ23は、車体3のヨー角速度を検出してセンタリング制御部22に出力する。
センタリング制御部22は、ヨーレートジャイロ23により検出されるヨー加速度と、速度発電機15のパルス信号に基づいて、現在地点の軌道の曲率半径を算出する。さらに、センタリング制御部22は、算出した曲率半径と、予め設定されている曲率半径の閾値とを比較して、算出した曲率半径が閾値以上の場合に、曲線区間を走行していると判定する。
加えて、センタリング制御部22は、算出した曲率半径と、走行速度とに基づいて超過遠心加速度を算出する。つまり、この実施形態におけるセンタリング制御部22は、この発明の演算部とセンタリング制御部とを兼ねている。
その後、センタリング制御部22は、算出した超過遠心加速度に応じて圧力調整部18を制御する。
次に、この第三実施形態における車両1のセンタリング制御について、図面を参照しながら説明する。
図7は、この発明の第三実施形態におけるセンタリング制御部の処理フローを示す図である。
図7に示すように、センタリング制御部22は、まず、車両1の走行速度が制限速度以上か否かを判定する(ステップS21)。
この判定の結果、制限速度以上と判定しなかった場合(ステップS21でNo)、センタリング制御部22は、上述した処理を繰り返し行う。上述した第二実施形態と同様に、走行速度が低速の場合、超過遠心加速度が大きくないので、そもそも車体3のセンタリングを行う必要が無い。
一方で、制限速度以上と判定した場合(ステップS21でYes)、センタリング制御部22は、車両1が走行している地点、および、その直後が、曲線区間か否かを判定する(ステップS22)。
この判定の結果、曲線区間であると判定しなかった場合(ステップS22でNo)、センタリング制御部22は、上述した一連の処理を繰り返す。一方で、曲線区間であると判定した場合(ステップS22でYes)、センタリング制御部22は、超過遠心加速度を算出する(ステップS23)。超過遠心加速度は、第二実施形態と同様に、曲線の曲率半径、および、カント量と、速度発電機15により検出される走行速度とに基づいて算出できる。より具体的には、以下の式により求めることができる。
超過遠心加速度=走行速度/曲率半径−カント量/軌間×重力加速度
ここで、カント量は、曲率半径から推定することができる。これは、カント量が曲率半径と相関があるからである。例えば、カント量は、曲率半径に予め設定された係数を積算することで推定できる。
次いで、センタリング制御部22は、上述した第二実施形態と同様に、算出した超過遠心加速度に基づいてシリンダー供給圧力を算出する(ステップS24)。このシリンダー供給圧力は、第二実施形態と同様に、超過遠心加速度に係数を積算することが求めることができる。
その後、センタリング制御部22は、シリンダー供給圧力に対応する指令電圧を、圧力調整部18に向けて出力する(ステップS25)。これにより、圧力調整部18は、車体傾斜目標角度が閾値以上の場合に、この車体傾斜目標角度に応じたシリンダー供給圧力で、センタリングシリンダー4に作動空気を供給する。
したがって、上述した第三実施形態によれば、上述した各実施形態と同様に、車体3に作用する超過遠心加速度に応じてセンタリングシリンダー4に供給される作動空気の圧力が調整可能となる。例えば、直線を走行している場合や曲線を低速走行している場合など、センタリングシリンダー4により車体3をセンタリングする必要が無い場合には、空気源13からセンタリングシリンダー4への作動空気の供給を停止できる。その一方で、曲線を高速で走行して超過遠心加速度が発生するような場合には、超過遠心加速度の大きさに応じた圧力で作動空気をセンタリングシリンダー4に供給することができる。その結果、簡便且つ効果的に車体3のセンタリングを行い、ストッパ当たりによる振動を抑制できる。さらに、センタリングを行わない場合には、センタリングシリンダー4に作動空気が供給されないため、消費エネルギーを低減することができる。
さらに、第三実施形態によれば、ヨーレートジャイロ23を設けてヨー角速度を取得するとともに、輪軸5に設けられている速度発電機15から走行速度を取得することで、曲率半径を求めることができる。さらに、曲率半径とカント量とは相関があるため、曲率半径に基づきカント量を算出できる。そのため、曲率半径と、カント量と、走行速度とに基づき超過遠心加速度を算出することができる。つまり、ヨーレートジャイロ23等のヨー角速度を取得するための機器を追加設置するだけで超過遠心加速度を算出できるようになる。その結果、部品点数の増加を抑制しつつ効果的に車体3のセンタリングを行うことが可能となる。
この発明は、上述した各実施形態に限定されるものではなく、この発明の趣旨を逸脱しない範囲において、上述した各実施形態に種々の変更を加えたものを含む。すなわち、各実施形態で挙げた具体的な形状や構成等は一例にすぎず、適宜変更が可能である。
例えば、上述した第二実施形態においては、曲線区間の情報を予め位置、曲線情報データベース19に記憶させて曲線区間で車体3のセンタリングを行う場合について説明した。しかし、分岐器を曲線として位置、曲線情報データベース19に記憶させても良い。このようにすることで、ストッパ当たりが生じる可能性のある、車両1が分岐器を通過する際にもセンタリングを行うことができる。
さらに、第二実施形態では、現在地点を検出するために、速度発電機15とATS信号とを用いる場合を例示した。しかし、現在地点の検出方法は、この方法に限られるものではない。例えば、GNSS(Global Navigation Satellite System)や、データデポシステムなどを用いて現在地点を検出するようにしても良い。
さらに、上述した第三実施形態において、超過遠心加速度を算出する際に、台車2や車体3に設置された加速度センサによる検出結果をローパスフィルタに通した加速度値を用いて算出しても良い。さらに、曲線区間の検知方法としては上述したヨーレートジャイロ23によるものに限られない。
1 車両(鉄道車両)
2 台車
3 車体
4 センタリングシリンダー
5 輪軸
5a 車軸
5b 車輪
5c 支持部
6 軸ばね
7 台車枠
7a 側ばり
7b 横ばり
8 空気ばね
9 左右動ストッパ
9a 台座部
10 空気ばね支持部
11 孔部
12 弾性部材
13 空気源
14 車体傾斜制御装置(演算部)
15 速度発電機
16 インナーロッド
17 アウターチューブ
18 圧力調整部
19 位置、曲線情報データベース
20 ATS車上子
21 ATS地上子
22 センタリング制御部(制御部、演算部)
23 ヨーレートジャイロ
24 突起部

Claims (4)

  1. 車体が空気ばねを介して台車に支持される鉄道車両のセンタリング装置であって、
    前記車体と前記台車との間に設けられ、前記台車に対する前記車体の左右位置を変更可能なセンタリングシリンダーと、
    前記センタリングシリンダーに対して作動空気を供給可能な空気源と、
    前記センタリングシリンダーと前記空気源との間に設けられ、前記空気源から前記センタリングシリンダーへ供給される作動空気の圧力を調整可能な圧力調整部と、
    前記車体に作用する超過遠心加速度の値と、前記超過遠心加速度と相関のある相関値とのうち、少なくとも一方を演算する演算部と、
    前記演算部の演算結果に基づいて、前記圧力調整部を制御するセンタリング制御部と、を備える鉄道車両のセンタリング装置。
  2. 前記演算部は、
    前記相関値として前記車体の傾斜角度の目標値を用いる請求項1に記載の鉄道車両のセンタリング装置。
  3. 前記演算部は、走行地点に基づいて軌道の曲率半径およびカント量を求め、これら曲率半径およびカント量と、車両の走行速度とに基づき超過遠心加速度を算出し、
    前記センタリング制御部は、前記演算部で求めた前記超過遠心加速度の大きさに応じた圧力で、前記作動空気が前記センタリングシリンダーへ供給されるように前記圧力調整部を制御する請求項1に記載の鉄道車両のセンタリング装置。
  4. 前記演算部は、前記車体のヨー角速度と、車両の走行速度とから現在地点の軌道の曲率半径を求め、前記軌道の曲率半径から軌道のカント量を推定し、前記曲率半径と、前記カント量と、前記走行速度とに基づき超過遠心加速度を算出し、
    前記センタリング制御部は、前記演算部で求めた前記超過遠心加速度の大きさに応じた圧力で、前記作動空気が前記センタリングシリンダーへ供給されるように前記圧力調整部を制御する請求項1に記載の鉄道車両のセンタリング装置。
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