JP2017038929A - 保護カバー - Google Patents

Abstract

【課題】傷の処置の有効性を損なうことなく、汚染に対する確実な保護を簡単にもたらす保護カバーを提供する。
【解決手段】本発明は、傷又は潰瘍の処置中に体液及び／又は洗浄液による汚染から保護する保護カバー(1) に関する。保護カバー(1) は、患者の身体部分に置かれる第１の開口部(2) と、傷又は潰瘍の処置のためにハンドピースを挿入するための第２の開口部(3) と、液密で可撓性の中空体(4) とを備え、中空体(4) は、ハンドピースの動作に適した形状の処置チャンバ(5) を内部に画定し、第１の開口部(2) を処置中に開いた状態で維持する補強要素(6) を有する。更に本発明は、傷又は潰瘍を洗浄するデバイスに関する。デバイスは、ノズルを端部に有する手動のランスを備え、ランスは、ノズルが処置チャンバ(5) 内にあるように第２の開口部(3) を通って挿入される。
【選択図】図２

Description

本発明は、傷又は潰瘍の処置中に体液及び／又は洗浄液による汚染から保護するための保護カバーに関する。本発明は、傷又は潰瘍を洗浄するための、このような保護カバーを備えたデバイスに更に関する。

洗浄は、開放創、汚染創及び慢性的な傷の汚れを落とすために一般に用いられる方法である。傷の周辺及び深部における死んだ組織、細菌性接種原、血栓、固定していない汚れ及び異物を除去するために、洗浄中、無菌洗浄液が傷に作用する。傷のあらゆる洗浄法の重要なパラメータは、適切な量の無菌洗浄液の傷への塗布、及び混入物を効果的に除去するために正確な分布パターンで印加する必要がある十分な圧力の使用である。

欧州特許出願公開第2251142 号明細書

このような状況では、欧州特許出願公開第2251142 号明細書から、ハンドピースに挿入するための使い捨て式ノズルが知られており、このノズルは、傷を処置するために非常に集束した高圧マイクロウォータージェットを生成する。このような高圧マイクロウォータージェットは、特に壊死性の傷、湿潤状態の傷、又は（例えば、潰瘍、壊疽、床擦れ、膿瘍又は瘻などの疾患によって生じる）治りにくい傷の汚れを落として洗浄し、創傷清拭するために特に使用され得る。そこで、傷の汚れを落として傷を創傷清拭するために、圧力下の流体の運動衝撃力が利用されている。特に創傷清拭、つまり壊死性の層及び線維素性の層を除去することによる創傷床の修復は、高圧で作動する洗浄液の噴射の使用を必要とする。

しかしながら、流体噴射の高圧は、傷から層又は粒子を除去するだけでなく、空気中に浮遊する体液及び洗浄液の飛沫から構成されるエアロゾル（流体のミスト）を傷の周りに必然的にもたらす。しかしながら、エアロゾルは、他の方法、例えばプラズマ又は超音波による傷の処置中にも生じ得る。保護手段がとられない場合、このようなエアロゾルは自由に環境に流出して、患者及び／又はその医療関係者に著しい危険をもたらし得る。

このようなエアロゾルの高い潜在的危険性は、傷が（細菌、ウイルス又は菌類のような）病原体によってほとんど常にコロニー形成されることにより、エアロゾルが病原体を多く含むので、傷の処置中に生じるエアロゾルもまた潜在的な感染媒体に相当するためである。従って、更なる保護手段がとられない場合、危険な交差感染が、患者と、処置室にいる個人、処置室に後で入る個人又は処置器具を後で使う個人との間で生じ得る。加えて、傷の処置中のエアロゾルの自由な分散は、処置室、特に処置台及び周囲の床面の汚染につながる。これにより、滑る危険性が高まり、ひいては処置室で個人が負傷する危険性が高まる。更なる問題として、自由に拡散するエアロゾルが、例えば処置する人の保護眼鏡に集まる場合、処置領域への視界が妨げられる。

前述の欠点を考慮して、傷の洗浄中に生じるエアロゾルによる周囲環境の汚染を軽減する、又は完全に防ぐために、多くの方法及びデバイスが先行技術から知られている。

最も一般的で最も容易な方法は、スタンドデバイスを用いて吊るされてテントのように架けられ得る透明な使い捨て式保護箔の下に、処置される患者の身体部分を置くことである。夫々の医療関係者は、保護箔の下、又は傷を処置するために保護箔に設けられたハンド開口部に達する前に、保護コート、保護手袋、保護マスク及び保護眼鏡を着用する。処置中に流出する処置流体は、湿布及び／又は優れた吸収性の傷パッドによって収集され得る。

しかしながら、このような保護箔では、細菌、ウイルス、菌類、寄生体及び／又は他の病原体を多く含む体液及び洗浄液の噴霧から、医療関係者及び患者を十分には保護することができない。まず、このような病原体は、２つのハンド開口部を通して環境に自然に入り込むことができる。次に、保護箔の下に設けられてエアロゾルで汚染された処置チャンバ内に、手袋をはめた手が依然として達する必要性があることが不利である。従って、病原体は、処置の終了後に手袋及び保護服を介して、例えば処置デバイスの制御ボタンで環境に入り込むことができる。更に、可視性及び飛沫保護効果が互いに反比例するという不利点がある。傷が保護箔によって密閉して覆われるほど、傷の領域に対する処置する人の視界がより妨げられ、逆も同様である。

処置する人が着用するための手袋として設計されている延長部を有する保護箔が知られているが、この手袋延長部に手を押し込んでその後抜き出すことは非常に困難であることが分かっているので、このような一体化された解決策は不利である。加えて、処置する人がエアロゾルで汚染された処置チャンバに達しなければならないという欠点が残っている。更に、（例えば細菌のような）病原体が手袋延長部を通って環境に入り込み続ける場合もある。

更に、洗浄液が後方にはねることを防ぐために、前端部（末端部）に一般的な漏斗状の飛沫シールドを有する吸収／洗浄チップが先行技術から知られている（例えば米国特許第5460604 号明細書参照）。このようなデバイスの欠点は、吸収／洗浄チップによって傷の処置中に行われる動作が、患者の皮膚にぴったりと載置される飛沫シールドによっても行われなければならないということである。この動作によって、患者は痛みを感じることがある。しかしながら、この痛みを除くために飛沫シールドを皮膚から引き上げると、飛沫シールドの下に形成された処置チャンバの密閉性が低下する。そのため、危険で伝染性が高い流体の飛沫が、飛沫シールドが設けられているにも関わらず環境に流出し得る。

加えて、分離若しくは溶解した組織細胞及び／又は洗浄液を抽出するための吸収デバイスと流体噴射デバイスが組み合わされたシステムが知られている。しかしながら、このようなシステムは、流体の供給部だけでなく、（場合によっては洗浄液の再循環部を有する）追加の抽出部が設けられなければならないので、非常に複雑な設計になる。

従って、本発明は、傷の処置の有効性を損なうことなく、汚染に対する確実な保護を簡単にもたらす保護カバーを提供することを目的とする。

この目的は、請求項１の特徴を有する保護カバーによって満たされる。

傷又は潰瘍の処置の際に体液及び／又は洗浄液による汚染から保護するための本発明に係る保護カバーは、患者の身体部分に置かれる第１の開口部と、傷又は潰瘍の処置のためにハンドピースが挿入されるように構成された第２の開口部とを備えている。更に、本発明の保護カバーは液密で可撓性の中空体を更に備えており、該中空体は、前記ハンドピースの動作に適合した形状の処置チャンバを内部に画定しており、前記中空体は、前記第１の開口部を処置中に開いた状態で維持するための少なくとも１つの補強要素を有している。

中空体が可撓性を有する構成により、中空体は、任意に曲げることができ、長さを調節可能である。従って、中空体の内部に形成された処置チャンバ、つまり処置される傷の真上で連結して、傷の処置中に生じるエアロゾルを受けるチャンバの形状は、洗浄液の流体ジェットを放出するハンドピースのあらゆる動作に適合され得る。特に医者又は傷に関する従事者によって、ハンドピースは、保護カバーの液密性がそのために損なわれることなく、処置される傷に対してあらゆる距離及びあらゆる角度で位置付けられ得る。しかしながら、中空体に補強要素が更に設けられているため、患者の身体部分に置かれる保護カバーの第１の開口部が、ハンドピースの全ての動作中に常に折り畳まれていない、つまり広げられたままである。従って、第１の開口部の縁部が、処置される傷を密閉して囲むために患者の皮膚に同一平面に置かれ得る。

第１の開口部が保護カバーの下側に直接形成されているわけではなく、保護カバーから上方に偏移して形成されているように、補強要素は、特に保護カバーの長さの一部のみに延びていることが可能である。従って、追加の硬くない材料部分（例えば不織布）が第１の開口部の下方に設けられ、第１の開口部を密閉して閉じるために患者の身体部分（例えば手足）の下に押し込められ得る。

傷の汚れを落とすデバイスのハンドピースのみが、傷を処置するために保護カバーの第２の開口部を通って更に挿入される必要があることが有利であるが、ハンドピースを導く医者又は他の傷に関する従事者の手は処置チャンバの外側に依然としてある。そのため、エアロゾルとの潜在的な感染接触が回避される。

本発明の有利な一実施形態では、前記処置チャンバに対向する前記中空体の少なくとも１つの内層が、前記処置チャンバでの処置中に生じるエアロゾルから流体を受けるために吸収材料、特に多孔性の吸収材料から形成されている。

エアロゾルに含まれる流体は吸収性の内層によって受けて内層に保持されるので、比較的僅かな流体しか外層及び保護カバーの他の面を浸透できないか又は流体が全く浸透できず、場合によってはこの流体に含まれる（細菌、ウイルス及び菌類のような）病原体が流出することを確実に防止するという有利な結果が得られる。吸収層の構造的な完全性が失われることなく、通常の傷の処置中に放出されるエアロゾル中の流体の総量が吸収層によって確実に吸収されるように、吸収層の厚さ及び吸収性が設定されている。

更なる有利な実施形態では、環境に対向する前記中空体の少なくとも１つの外層が、汚染した流体が環境に流出することを防ぐために、液密な材料、特に液密なプラスチックから形成されている。

そのため、場合によっては吸収性の内層を通って流出する流体が、（例えばポリエチレン箔から形成されている）液密な外層によって確実に保持され、環境に制御されずに流出することが防止され得る。単一の層を有する中空体が上記の両方の要件（すなわち吸収性及び液密性）を組み合わせた材料から形成されることができ、そのため、特に織物バリア材料、例えばマイクロファイバ織物を挙げる必要があることを理解されたい。

本発明の特に有利な実施形態によれば、前記中空体は漏斗状であり、前記中空体の大きい方の開口部が前記第１の開口部を形成しており、前記中空体の小さい方の開口部が、処置領域を視覚的にモニタするために透明板で覆われている。

漏斗状の中空体の直径が患者に向かって増加し、中空体は、処置領域全体を確実にシールするために傷又は潰瘍を囲む第１の開口部で最大直径に達する。患者から離れる方向に向く中空体の反対側の開口部に、窓として機能する透明板が挿入され、処置する人は窓を通して処置領域がはっきりと見える。

本発明の更なる実施形態によれば、前記補強要素は、前記漏斗状の中空体の長手軸芯の周りで螺旋状又は円形状に前記中空体のシェルの長さの少なくとも一部に亘って延びている。

補強要素の螺旋状又は円形状の形状によって特に、漏斗状の中空体の２つの開口部を、中空体の折り畳まれていない、つまり広げられた状態である開いた状態で安定して維持すべく径方向の補強がもたらされるため、直径がより大きい下側の開口部が処置領域を囲むために機能し、直径がより小さい上側の開口部が処置領域を見るために機能することが可能である。補強性がない中空体の材料の突出長さが、患者の皮膚に緩く置かれて、必要に応じて処置領域を液密にシールするために接着され得る、患者に対向する中空体の下方領域内に依然としてあるように、螺旋状の補強要素の長さが設定されていることが好ましい。

更に本発明の有利な実施形態では、前記補強要素は、伸縮自在な弾性材料、特に伸縮自在な弾性プラスチックから形成されており、前記補強要素の弾性によって、処置中、前記漏斗状の中空体を該中空体の長手軸芯の方向に伸縮させる。

硬い噴霧シールドとは異なり、本発明に係る保護カバーによって、流体ジェットを放出するハンドピースの、処置領域までの距離を、与えられた傷の状況に応じて変えることが可能になる。補強要素は、全ての方向に可撓性を有して、補強要素の長さに沿って圧縮可能又は伸張可能な、硬性が低い圧縮ばねのように作用する。

本発明の特に有利な展開によれば、前記漏斗状の中空体は、一又は複数の層から構成された材料の織物から形成されており、前記織物の端部は縫目によって互いに連結されており、前記縫目は、特に前記漏斗状の中空体の表面ラインに沿って延びている。

材料の単一の漏斗状の丸められた織物から中空体を製造することは、材料の織物の２つの接するか又は重なる端部を共に連結するために長手方向の縫目の適用が必要なだけである。これは、製造技術の観点から簡単な方法で、ひいては特に低いコストで実現され得る。

この有利な展開の更なる実施形態では、前記補強要素は、前記漏斗状の中空体の前記材料の織物に一体化されており、特に前記材料の織物に接着及び／又は結合及び／又は縫製されている。

異なる材料が互いに常時連結され得るので、ミシンを用いて補強要素を縫い合わせることは、この場合特に有利である。補強要素は、夫々の用途に適した材料、例えばプラスチック、特にプラスチックファイバから形成されることができ、並びに／又は織物材料及び／若しくは箔材料から形成されることができ、これらの材料は夫々、中空体の材料の織物に容易に縫い合わせられ得る。

前記補強要素は、前記漏斗状の中空体の前記材料の織物の内層及び外層間に配置されることができ、そのため、外部の影響から保護された補強要素の確実且つ安定した位置決めが実現される。

本発明の実施形態を、図面に示して以下に更に詳細に記載する。

本発明に係る保護カバーの好ましい実施形態を示す全体斜視図である。 図１の保護カバーを示す側面図である。 図１の保護カバーを示す平面図である。 図３の領域「Ｘ」における保護カバーを示す拡大平面図である。 図４の領域「Ｙ」における保護カバーを示す拡大平面図である。

図１〜３夫々の全体図に非変形初期状態で示されている本発明に係る保護カバー1 は、クラゲのような形状を有する。保護カバー1 の中心部品は軸方向に対称な漏斗状の中空体4 によって形成されており、中空体4 は、中空体4 の長手軸芯Ａに沿って２つの開口部2, 7を有しており、２つの開口部2, 7は、軸方向及び直径方向に互いに対向して配置されており、異なる大きさを有する。

図１及び２で夫々下方を向いている大きい方の第１の開口部2 は、後で使用する際に患者の身体部分、一般に手足に置かれ、第１の開口部2 の縁部は、患者の、洗浄液の流体ジェットで処置される傷又は他の皮膚障害（例えば潰瘍）が存在する処置領域を画定する。

中空体4 は、後で使用する際に処置チャンバ5 として機能する円錐台形状の内部を囲んでおり、処置チャンバ5 にハンドピースのヘッドエンド（不図示）が導入され、ハンドピースのヘッドエンドから、傷の処置（傷の洗浄及び任意には傷の創傷清拭）のために洗浄液の流体ジェットが放出される。このために、ハンドピースは、処置チャンバ5 の外側で、加圧された洗浄液（例えば無菌水又は生理食塩水）を供給するための洗浄液貯蔵槽にホースを介して連結されている。

しかしながら、ハンドピースは、局所的な傷の処置のために手動で移動可能な傷処置デバイスのあらゆる部分になることができる。洗浄液の流体ジェットの代わりに、例えばプラズマ又は超音波が、傷の処置のためにハンドピースから更に放出され得る。健康に有害なエアロゾルが、ハンドピースを用いた傷の処置中に生じるため、遮蔽を必要とすることが非常に重要なだけである。

まず処置チャンバ5 を最上部に関して液密にシールして、次に処置する人が、対向して配置された下側の第１の開口部2 によって画定される処置領域をクリアな視野で見えることができるようにするために、図１及び２で夫々上方を向いている漏斗状の中空体4 の小さい方の開口部7 が、透明な材料、例えばポリメチルメタクリレート（PMMA）のような透明なプラスチックから形成された円形の硬い板8 で覆われている。図４の拡大平面図で明瞭に示されているように、板8 は、例えばミシンによって機械的に形成され得る円形で周方向の縫目10によって、中空体4 の上側の開口部の縁部に連結されている。しかしながら代わりに、板8 を小さい方の開口部7 に単に緩く置くことが更に想定され得る。このような場合、傷の処置後毎に使い捨て可能な製品として、板8 が中空体4 から離して捨てられ得る。

図２から明らかなように、板8 は、外側に凸状であるボウル状の湾曲した形状を有し、板の湾曲は、処置される傷を更に近くに見ることができるために拡大鏡効果をもたらし得る。加えて、このような板の湾曲により、視界を遮る流体の飛沫が蓄積し得ることが防止され得る。

特に図４及び５の拡大図から明らかなように、透明な板8 は、偏心して、つまり中空体4 の長手軸芯Ａと一列に並んでいる板8 の中心Ｍから横方向に偏移して配置された十字状凹部3 の形態の第２の開口部を有している。この十字状凹部3 は、傷を処置するためのハンドピース（例えば洗浄液の流体ジェット、プラズマ又は超音波を放出するハンドピース）を挿入するために使用され、図４の平面図では板8 の中心Ｍの垂直方向の下方に位置するように示されている。しかしながら、後で使用する際に、処置する人がハンドピースを挿入して扱うときに十字状凹部3 が有用な位置にあるように保護カバー1 は回転可能である。従って、右利きの人は一般に、十字状凹部3 がその人の視点から長手軸芯Ａ及び板8 の中心Ｍの右側に位置するように保護カバー1 を長手軸芯Ａ回りに回転させる。

十字状凹部3 の凹部幅はおよそ0.5 mmであることが好ましい。ハンドピースのヘッドエンドが２つの凹部の交差点に挿入されることによって、十字状凹部3 は初めに弾性的に広がる。ヘッドエンドが処置チャンバ5 に導入されると、十字状凹部3 とハンドピースとの間に汚染した流体が流出し得ないように、十字状凹部3 はハンドピースの外周部に液密に再度位置する。

処置する人は、ハンドピースのヘッドエンドに配置されたノズルが（板8 の下方の）処置チャンバ5 内に位置する程度にのみハンドピースを板8 の十字状凹部3 を通って前進させる必要がある。しかしながら、ハンドピースの残りの部分は、例えば傷の処置を行うべく処置する人の手で使用されるハンドルによって移動させるために（板8 の上方の）処置チャンバ5 の外側に依然としてある。従って、板8 の上方に配置されたハンドピースの一部によって洗浄液の流体ジェットが方向付けられ、板8 の下方で生成される流体ジェット及び傷に対する妨げられない視界が同時に与えられるので、処置する人は、エアロゾルで汚染された処置チャンバ5 に自身の手を入れる必要がなくなる。そのため、このような感染の危険性が著しく低下する。ハンドピースを挿入するために、第２の開口部（十字状凹部3 ）が図３に示されているように板8 に形成されるのではなく、代わりに中空体4 に形成されているときにも、この有利な効果が得られる。このような場合、板8 は純粋な視界窓として機能する。

しかしながら、示された実施形態に加えて、中空体4 にハンド開口部を横方向に設けて、例えば湿布又はスワブを用いた傷の処置中に流出する処置流体を収集するために、必要な場合には手袋をはめた手がハンド開口部を通して処置チャンバ5 内に達し得ることが更に想定され得る。更にこのようなハンド開口部はフィットする一体化されたグローブであり得る。従って、洗浄液が処置チャンバ5 からハンド開口部の領域でも、場合によってはハンド開口部と一体化された手袋の領域でも流出し得ないことが重要である。加えて、ストラップが、保護カバー1 全体を持ち上げるために中空体4 の側部に形成され得るか、又は場合によっては使用していない状態で保護カバー1 を吊るすことが可能である。

洗浄液の流体ジェットの大きな衝撃圧により傷の処置中に生じるエアロゾルには、大きな潜在的危険性が伴う。ほとんどの傷の細菌、ウイルス、菌類又は寄生体の内容物により、実際にはこのようなエアロゾルは伝染性が通常非常に高い。加えて、生じるエアロゾルは、処置領域の明瞭な視界に影響を及ぼすので、処置する人が傷の処置進捗を正確に認識することが困難になる。

そのため、まず、中空体4 の材料が、処置チャンバ5 内での傷の処置中に生じる流体の飛沫を吸収して保持するのに十分な吸収性を有することが必要である。そこで、処置チャンバ5 に対向する中空体4 の内層に吸収材料を単に設けるだけで十分である。紙、織物又は不織布が吸収材料として使用され得る。これらの材料は、長時間に亘る処置の後であっても吸収能力の飽和に達することがなく、ひいてはぬれ表面による吸収が処置期間全体を通して機能し得るという有利な特性を有する。この吸収作用は、流体に結合した（細菌のような）病原体を紙、織物又は不織布の繊維に結合する推進力として機能する。病原体を多く含む小飛沫は、紙、織物又は不織布によって迅速且つ適切に吸収され保持される。紙、織物又は不織布に結合した流体の量が増加するにつれて、流体に浸った表面が広がり、吸収効果が更に促進され得る。

次に、傷の処置中に処置チャンバ5 内に放出されて伝染性が高い膿漿と混ざった体液及び洗浄液の飛沫が環境中に流出することを確実に防いで、それによって周囲環境の汚染を避けるために、中空体4 の材料には吸収性に加えて液密性が必要である。このために、少なくとも１つの外層、つまり中空体4 の、処置チャンバ5 から離れる方向に向いた層が液密な材料、例えば液密なプラスチック箔から形成されているだけで十分である。

吸収性及び液密性に関する上記の特性を満たす中空体4 のための好ましい多層材料は、外層としてポリエチレン箔を有し、内層としてセルロースの一層又は二層を有する。

しかしながら、前述の材料を使用する場合、根本的な問題として、このような材料は固有の安定性を有していないか、又は低い固有の安定性のみ有する。患者を覆うために一般に使用される使い捨て式保護箔のように、追加の補強手段がとられなければ、このような材料はそれ自体で崩壊する。特に、傷を囲むために患者の身体上に置かれる下側の第１の開口部2 が常に折り畳まれていない状態、つまり広げられた状態で確実に維持される必要がある。この方法でのみ、中空体の材料が患者の傷又は処置する人の視野に入り込め得ないことが確保され得る。

図１及び２に示されているように、下側の第１の開口部2 が常時折り畳まれていない位置、つまり開いた位置に保持されている保護カバー1 を安定して設置するために、中空体4 の径方向及び軸方向の変形を妨げる補強要素6 が設けられており、図１及び２に示されている全体図によれば、長手軸芯回りに2.5 回転螺旋状に延びている（例えば直径が２mmの）プラスチックワイヤとして形成されている。

螺旋状の補強要素6 は中空体4 の材料に一体化されており、この一体化は、例えば補強要素6 を縫い合わせることにより行われ得る。この一体化は、固定して又は着脱可能に行われ得る。着脱可能な場合、補強要素6 は、例えば中空体4 の材料に単に挿入され得るか、又は嵌められ得る。異なる材料が縫い合わせにより容易に共に連結され得るため、補強要素6 がプラスチックの代わりに、補強作用を有するあらゆる他の所望の材料、例えば金属から更に形成され得る。補強要素6 は、必ずしもワイヤの形態を有する必要はなく、中空体4 に一体化されるあらゆる他の形態、例えば箔の形態であってもよい。多層の中空体4 と共に、補強要素6 は層の間に配置されていることが好ましい。このような埋め込まれた構成は、補強要素6 が、傷の処置中に生じるエアロゾルのような外部の影響から保護され、更に補強要素6 が中空体4 内に特に安定して配置されるという利点を有する。

図３の平面図では、補強要素6 は、長手軸芯Ａの延長線に設けられている板8 の中心Ｍの周りに螺旋状に延びている。補強要素6 の、長手方向に見て上側の終点6o及び補強要素6 の、長手方向に見て下側の終点6uは、板8 の中心点Ｍに関して互いに直径方向に対向して設けられており、流体ジェットを放出するハンドピースを挿入するための十字状凹部3 は、これら２つの終点6o, 6uを連結する線上に配置されている。

補強要素6 が設けられているにもかかわらず、中空体4 の可撓性は維持されており、中空体4 の内部に画定されている処置チャンバ5 の形状をハンドピースのあらゆる任意の動作に適合させ得る。補強要素6 は、ピッチが大きい低圧縮バネと同様の変形特性を有する。従って、補強要素6 が一体化されている中空体4 は依然として、全ての側部に自由に曲がって、更に長手方向に伸縮する。このような変形特性によって、ハンドピースを、傷の処置中に処置される傷に対してあらゆる角度及び／又はあらゆる距離に位置決めすることが可能になる。

このため、処置する人は、中空体4 の形状及び中空体4 の形状によって画定される処置チャンバ5 をハンドピースの新たな位置に適合させるために、傷の処置中、空いている方の手により及び／又は十字状凹部3 に挿入されたハンドピースを介して直接、中空体4 に変形力を与える。しかしながら、このような動作に関係なく、処置チャンバ5 の液密性は常に維持されている。処置チャンバ5 はすなわち、採用された形状に関係なく、最上部に関して板8 によって、全ての側部に関して中空体4 のシェルによって液密に常に閉じられている。

しかしながら、一体化された補強要素6 によって達成される中空体4 の径方向及び軸方向への補強効果によって、ハンドピースの動作に適合された現在の形状に関係なく、安定して開いた下側の第１の開口部2 を中空体4 が常に有することが有利である。従って、補強要素6 は開いており、つまり処置チャンバ5 を伸張させる。使用中、保護カバー1 を空いている方の手を用いて、例えば板8 の縁部で保持するだけで十分である。しかしながら、保護カバー1 が十字状凹部3 に押し込まれたハンドピースによって既に固定されているので、保護カバー1 を手動で保持することを完全に不要にすることができる。従って、医者又は他の傷に関する従事者の両手は、傷の処置に利用可能であることが有利である。

中空体4 の圧縮性が長手軸芯Ａの方向に与えられているため、手の僅かな圧力を用いて、保護カバー1 を患者のあらゆる身体部分に同一平面にあるように置くことが可能である。そのため、保護カバー1 の下側の形状は、夫々の身体部分の形状に任意に適合され、それによって患者の身体と保護カバー1 との間から漏れる危険性を最小限に低下させる。加えて保護カバー1 は、中空体4 の圧縮性により、輸送及び格納のために場合によっては夫々の包装体に挿入されるべく略平坦に共に詰め込まれ得る。

中空体4 は、材料の単一の織物のみから構成されているので、製造技術の観点から特に簡素に、ひいてはコスト効率良く構成されている。中空体4 を形成するために、材料の織物の２つの対向する端部が相互に重なって相互に載置され、その後糸で縫い合わせられるように、材料の弓状の織物は丸められる。このような重複縫目9 は、縁部と縁部との構成より基本的に耐久性があり、更により製造し易い傾向がある。重複縫目9 は、中空体4 の密閉性及び全体的な視覚的印象に影響を及ぼさないために、最終的な保護カバー1 内において処置チャンバ5 に面する内側に位置する。図１に示されている保護カバー1 の非変形初期状態では、重複縫目9 は漏斗状の中空体4 の表面ラインに沿って延びている。

長手軸芯Ａの方向に見て螺旋状の補強要素6 は、中空体4 の全長に亘って延びていない。補強要素6 は板8 によって覆われた中空体4 の上側の縁部で略同一平面で始まるが、中空体4 の下側の縁部から相当な距離隔てた位置で終わる。長手軸芯Ａの方向に測定された補強要素6 の長さは、中空体4 の全長に対して約1/2 〜3/4 、好ましくは約2/3 の値を有する。従って、（一体化された補強要素6 なしで）材料の非補強織物のみから形成されている中空体4 の下方の長手部分が存在する。この下方の長手部分は、後で使用する際に患者の身体に緩く取り付けられ、任意には患者の身体と保護カバー1 との間を下向きに密閉して閉じるために更に接着され得る。

本発明に係る保護カバー1 は、傷又は潰瘍を洗浄するためのあらゆるデバイスに採用され得ることが有利である。特に保護カバー1 は、壊死した身体組織をマイクロウォータージェットにより創傷清拭するためのデバイスの一部になり得る。このようなデバイスでは、ハンドデバイスとして手動のランスが使用され、マイクロウォータージェットを生成するためにランスの自由端部に配置されたノズルが処置チャンバ5 内に位置するように、このランスは保護カバー1 の十字状凹部3 に挿入される。本発明に係る保護カバー1 の使用によって、ハンドピースの動作の自由度、創傷清拭される傷に対する処置する人の視界、及びマイクロウォータージェットが妨げられることなく、傷の創傷清拭中の体液及び／又は洗浄液での周囲環境の汚染に対して高い安全性が達成される。

１ 保護カバー
２ 下側の第１の開口部
３ 第２の開口部／十字状凹部
４ 中空体
５ 処置チャンバ
６ 補強要素
6o 補強要素の上側の終点
6u 補強要素の下側の終点
７ 小さい方の開口部
８ 板
９ 中空体の（重複）縫目
10 板及び中空体間の縫目
Ａ 中空体の長手軸芯
Ｍ 板の中心

Claims (16)

1. 傷又は潰瘍の処置中に体液及び／又は洗浄液による汚染から保護するための保護カバーであって、
   患者の身体部分に置かれる第１の開口部と、傷又は潰瘍の処置のためにハンドピースが挿入されるように構成された第２の開口部とを備えており、
   前記保護カバーは液密で可撓性の中空体を更に備えており、該中空体は、前記ハンドピースの動作に適合した形状の処置チャンバを内部に画定しており、
   前記中空体は、前記第１の開口部を処置中に開いた状態で維持するための少なくとも１つの補強要素を有しており、
   該補強要素は、前記中空体の長手軸芯の周りで螺旋状に前記中空体のシェルの長さの少なくとも一部に延びていることを特徴とする保護カバー。
2. 前記処置チャンバに対向する前記中空体の少なくとも１つの内層が、前記処置チャンバでの処置中に生じるエアロゾルから流体を受けるために吸収材料、特に多孔性の吸収材料から形成されていることを特徴とする請求項１に記載の保護カバー。
3. 環境に対向する前記中空体の少なくとも１つの外層が、汚染した流体が環境に流出することを防ぐために液密な材料、特に液密なプラスチックから形成されていることを特徴とする請求項１又は２に記載の保護カバー。
4. 前記中空体は漏斗状であり、前記中空体の大きい方の開口部が前記第１の開口部を形成しており、前記中空体の小さい方の開口部が、処置領域を視覚的にモニタするために透明板で覆われていることを特徴とする請求項１乃至３のいずれかに記載の保護カバー。
5. 前記補強要素は、前記漏斗状の中空体の長手軸芯の周りに前記中空体のシェルの全長に亘って延びていることを特徴とする請求項４に記載の保護カバー。
6. 前記補強要素は、伸縮自在な弾性材料、特に伸縮自在な弾性プラスチックから形成されており、前記補強要素の弾性によって、処置中、前記漏斗状の中空体を該中空体の長手軸芯の方向に伸縮させることを特徴とする請求項４又は５に記載の保護カバー。
7. 前記漏斗状の中空体は、一又は複数の層から構成された材料の織物から形成されており、前記織物の端部は縫目によって互いに連結されており、前記縫目は、特に前記漏斗状の中空体の表面ラインに沿って延びていることを特徴とする請求項４乃至６のいずれかに記載の保護カバー。
8. 前記補強要素は、前記漏斗状の中空体の前記材料の織物に一体化されており、特に前記材料の織物に接着及び／又は結合及び／又は縫製されていることを特徴とする請求項７に記載の保護カバー。
9. 前記補強要素は、前記漏斗状の中空体の前記材料の織物の内層及び外層間に配置されていることを特徴とする請求項７又は８に記載の保護カバー。
10. 前記透明板は、傷の処置が終了した後に使い捨て可能な製品として捨てられるために、緩く取り付けられていることを特徴とする請求項４乃至９のいずれかに記載の保護カバー。
11. 前記透明板は、円形で周方向の縫目によって前記漏斗状の中空体に連結されていることを特徴とする請求項４乃至９のいずれかに記載の保護カバー。
12. 前記透明板は、凸状の湾曲した板として構成されており、該板の湾曲が前記処置チャンバから離れる方向に外側に向いていることを特徴とする請求項４乃至１１のいずれかに記載の保護カバー。
13. 前記透明板は、硬質材料、特に硬質プラスチック又は硬質ガラスから形成されており、前記第２の開口部は前記透明板に設けられていることを特徴とする請求項４乃至１２のいずれかに記載の保護カバー。
14. 前記第２の開口部は、前記ハンドピースの挿入の際に径方向に広がって、挿入の終了後に前記ハンドピースの外周部に対して実質的に液密に位置するように構成されていることを特徴とする請求項４乃至１３のいずれかに記載の保護カバー。
15. 前記第２の開口部は十字状凹部として形成されていることを特徴とする請求項１４に記載の保護カバー。
16. 傷又は潰瘍を洗浄するためのデバイス、特に死んだ身体組織をマイクロウォータージェットによって創傷清拭するためのデバイスであって、
    手動のランスを備えており、該ランスの端部に、洗浄液の流体ジェット、特にマイクロウォータージェットを生成するためのノズルが設けられており、
    前記ランスは、前記ノズルが前記保護カバーの前記処置チャンバ内にあるように、請求項１乃至１５のいずれかに記載の保護カバーの前記第２の開口部を通って挿入されることを特徴とするデバイス。

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