JP2017038562A - 共生促進方法及び共生促進剤 - Google Patents
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Abstract
Description
[1]ジベレリン合成阻害剤を、生長抑制剤として使用する量又はそれよりも少ない量で施用することにより植物と菌根菌との共生を促進させる、共生促進方法。
[2]前記ジベレリン合成阻害剤を、前記生長抑制剤として使用する量よりも少ない量で施用する、上記[1]に記載の共生促進方法。
[3]前記ジベレリン合成阻害剤を、前記生長抑制剤として使用する量の2分の1以下で施用する、上記[1]又は[2]に記載の共生促進方法。
[4]ジベレリン合成阻害剤を含有する、植物と菌根菌との共生促進剤。
[5]前記共生促進剤中の前記ジベレリン合成阻害剤が、生長抑制剤として使用する量又はそれよりも少ない量に相当する量を前記共生促進剤の施用量とする、上記[4]に記載の共生促進剤。
本開示の適用対象となる植物は、菌根菌と共生関係を結ぶことができる植物であれば特に限定されない。当該植物は、単子葉植物でも双子葉植物でもよく、食用でも非食用でもよい。これらの具体例としては、単子葉植物として、例えば、ネギ、タマネギ、ニンニク、ニラ、アサツキ、ラッキョウ、リーキなどのヒガンバナ科;イネ、コムギ、オオムギ、トウモロコシ、モロコシなどのイネ科等を、双子葉植物として、例えば、ダイズ、インゲンマメ、アズキ、エンドウ、ソラマメ、ミヤコグサ、ラッカセイ、クローバー、ササゲ、ミヤコグサなどのマメ科;イチゴなどのバラ科;ニンジンなどのセリ科;キュウリ、カボチャ、スイカ、メロンなどのウリ科;ナス、トマト、ピーマン、ジャガイモ、トウガラシ、シシトウ、パプリカなどのナス科;オクラ、ワタなどのアオイ科;サツマイモなどのヒルガオ科等を、それぞれ挙げることができる。
これらの中でも、ヒガンバナ科ネギ属、マメ科、イネ科又はバラ科に属する植物が好ましく、ネギ、タマネギ、イチゴ、イネ、コムギ、オオムギ、ミヤコグサ、ダイズ及びトウモロコシがより好ましい。
菌根菌は、植物の根に侵入して菌根を形成する菌類であり、リンやその他の無機栄養分(窒素、カリウム、鉄など)、水分を植物に供給する微生物である。菌根の形態としては、アーバスキュラー菌根、外生菌根、内外生菌根、アルブトイド菌根、モノトロポイド菌根、エリコイド菌根、ラン菌根、ハルシメジ型菌根などが挙げられる。本開示の対象となる菌根菌は、特に制限されないが、中でもアーバスキュラー菌根菌が好ましい。アーバスキュラー菌根菌は、陸上植物の8割以上と共生関係を築くことができると推定されている共生菌である。こうしたアーバスキュラー菌根菌で、本開示による共生促進効果を十分に得ることができるということは、幅広い植物において菌根菌を利用した生育促進効果を得ることが可能であることを意味する。
本開示で使用するジベレリン合成阻害剤は、ジベレリン生合成経路のいずれの段階の生合成を阻害するものであってもよく、その種類は特に制限されない。具体的には、例えば、ウニコナゾールP、イナベンフィド、トリネキサパックエチル、パクロブトラゾール、プロヘキサジオンカルシウム、フルルプリミドール、アンシミドール、クロルメコート、ダミノジット、メピコート塩酸塩、AMO1618、CCC、LAB198999、phosphonD、SADH等が挙げられる。ジベレリン合成阻害剤は、農学上許容される塩の形態で使用してもよい。ジベレリン合成阻害剤としては、これらの中でも、ウニコナゾールP、イナベンフィド、トリネキサパックエチル、パクロブトラゾール、プロヘキサジオンカルシウム、フルルプリミドール、及びAMO1618よりなる群から選ばれる少なくとも一種を好ましく使用することができ、ウニコナゾールP、プロヘキサジオンカルシウム、及びAMO1618の少なくともいずれかを特に好ましく使用することができる。なお、ジベレリン合成阻害剤は、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
ジベレリン合成阻害剤を施用する方法としては、本開示の効果を十分に得る観点から、植物を栽培する土に供給する方法を適用することが好ましい。土への供給は、例えば、土への散布、混ぜ込み、埋め込み、薬液注入、薬液潅水などの方法により行うことができる。土に供給する際には、植物を栽培する土の一部に行ってもよく、全面に行ってもよい。ジベレリン合成阻害剤を施用する場所の具体例としては、例えば、植穴又はその付近、作条又はその付近、株間、培土全面、土壌全面、育苗箱、育苗トレイ、育苗ポット、苗床などが挙げられる。ジベレリン合成阻害剤は、固体状で施用してもよく、液体状で施用してもよいが、宿主植物の根に対してジベレリン合成阻害剤を均一な濃度で供給する観点から、液体状で施用することが好ましい。
本開示の共生促進剤は、ジベレリン合成阻害剤を含有する。当該共生促進剤は、固体状及び液体状のいずれであってもよいが、好ましくは、ジベレリン合成阻害剤が適当な溶剤中に溶解又は分散してなる液状の組成物である。
ギ酸、酢酸、プロピオン酸、酪酸、吉草酸、シュウ酸、フタル酸、安息香酸等の有機酸;ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ペクチン、グアーガム、スメクタイトなどの粘度調整剤;メタノール、エタノール、プロパノール等のアルコール類;グリコールエーテル、ケロシンなどの揮散抑制剤;チッソ、リン、カリウム、カルシウム、ホウ素、マンガン、亜鉛、マグネシウム等のミネラル;色素、等が挙げられる。その他の成分の含有割合は、本開示の効果を妨げない範囲で適宜設定することができる。
単子葉植物のヒガンバナ科ネギ属Allium schoenoprasumと、双子葉植物のマメ科ミヤコグサ属Lotus japonicusを宿主植物として用い、ジベレリン合成阻害剤(Uniconazole-P, AMO1618, プロヘキサジオンカルシウム)添加によるアーバスキュラー菌根菌(Rhizophagus irregularis)感染への影響を評価した。なお、以下の例では、植物へのジベレリンの添加を外部からは行っていない。
植物への菌根菌の接種は、約300mlの土が入ったポットに100mlの液体培地(1/10濃度のHoagland培地に0.1mM 硝酸カリウムを加えたもの、あるいは1/4濃度のHoagland培地)を加え、菌根菌胞子を接種した土に植物を植えることにより行った。
ジベレリン合成阻害剤の添加は、ジベレリン合成阻害剤を所望の濃度となるように上記液体培地中に加え、この培地を上記ポットに加えることにより行った。なお、植物への添加量を一定とするため、ポットから流れ出た液体培地はポットの下に溜め、ポットの底面から再び吸収できるようにした。ジベレリン合成阻害剤の添加は、生育期間中に上記の1回のみ行った。
宿主植物の根への菌根菌の感染の確認は、感染した根を10% KOHで90℃、1時間処理し、5%酢酸と3%黒インクで90℃、20分間染色後、水でよく洗うことで、根の中の菌根菌を可視化することにより行った。この染色した根を顕微鏡下で観察し、格子交点法により菌根菌感染率を測定した。
菌根菌4000胞子及び8000胞子をネギ(A. schoenoprasum)に接種する際に、液体培地中に10−8Mとなるようにジベレリン合成阻害剤 Uniconazole-Pを加え、この溶液を土壌に添加した。ジベレリン合成阻害剤の施用濃度(10−8M)は、生育抑制剤としての効果が現れる濃度の10分の1に相当する。
ジベレリン合成阻害剤を添加したポットでは、非添加のポットと比べ、宿主根への菌根菌感染率が、平均で30% 以上向上していた(図1)。なお、図1中、「*」は統計的な有意差を示す(t-test, p < 0.05)。「Uni」は Uniconazole-Pを意味する(以下同じ)。
ネギ属植物への菌根菌感染2カ月後の感染率(図2のA)と、地上部(可食部)重量(図2のB)とを測定した。ジベレリン合成阻害剤 Uniconazole-P(10−8M) を土壌中に添加したポットでは、非添加のポットと比べ、宿主根への菌根菌感染率が 30% 以上向上し、大きな生育促進効果が見られた。「*」は統計的な有意差を示す(t-test, p < 0.05)。
ネギ属植物に菌根菌を、それぞれ100、500、2000、4000胞子ずつ接種し、ジベレリン合成阻害剤Uniconazole-P(10−8M)を添加、又は非添加で、照明点灯下16時間、消灯下8時間、温度24℃の栽培室で2か月間栽培した。
2か月栽培した後の写真を図3に示す。なお、図3中、A(上段)は、ジベレリン合成阻害剤を非添加とした場合であり、B(下段)は、ジベレリン合成阻害剤を添加した場合を示している。
図3から明らかなように、コントロールの非添加区では、低胞子数では共生による生育促進効果が得られずに枯れてしまった。これに対し、ジベレリン合成阻害剤の処理区では、ジベレリン合成阻害剤による感染促進効果によって、より少ない数の菌根菌胞子の接種でも生育促進効果を得ることができ、共生による栄養供給能の向上により生育が促進されていることが分かった。
ジベレリン合成阻害剤は、農業的に有用な農薬として、さまざまな物質が用いられている。ジベレリン合成経路への阻害機構が異なるジベレリン合成阻害剤AMO1618及びプロヘキサジオンカルシウム(PHC)の添加による菌根菌の感染率への影響を調べた。図4は、ネギ(A)、マメ科植物ミヤコグサ(B)を宿主植物としたときの菌根菌感染後1カ月での感染率(%)を示す。なお、図4では、AMO1618、プロヘキサジオンカルシウムを、各ジベレリン合成阻害剤による明確な生育抑制効果が見られない10−5Mから10−7Mで添加した。
図4から明らかな通り、植物種により有効濃度の具体的な数値は異なるが、Uniconazole-P以外の他のジベレリン合成阻害剤によっても、菌根菌感染率が非添加の植物と比べて有意に向上し(t-test, p < 0.05)、感染促進効果が見られた。
Claims (5)
- ジベレリン合成阻害剤を、生長抑制剤として使用する量又はそれよりも少ない量で施用することにより植物と菌根菌との共生を促進させる、共生促進方法。
- 前記ジベレリン合成阻害剤を、前記生長抑制剤として使用する量よりも少ない量で施用する、請求項1に記載の共生促進方法。
- 前記ジベレリン合成阻害剤を、前記生長抑制剤として使用する量の2分の1以下で施用する、請求項1又は2に記載の共生促進方法。
- ジベレリン合成阻害剤を含有する、植物と菌根菌との共生促進剤。
- 前記共生促進剤中の前記ジベレリン合成阻害剤が、生長抑制剤として使用する量又はそれよりも少ない量に相当する量を前記共生促進剤の施用量とする、請求項4に記載の共生促進剤。
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