JP6691361B2 - 共生促進方法及び共生促進剤 - Google Patents

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Description

本発明は、共生促進方法及び共生促進剤に関し、詳しくは、植物と菌根菌との共生促進を図る技術に関する。
陸上植物の多くは、根において菌根菌と共生関係を構築することで、土壌中に含まれる栄養分や水分を効果的に集め、生育促進を図っていることが知られている。このような共生は、植物の生長促進や農薬の低減を図る観点からも重要であり、近年、植物と菌根菌との共生能を調整するための技術が種々提案されている(例えば、特許文献1参照)。特許文献1には、植物と共生菌との共生に関わる新規な遺伝子として、イオンの流れを調整するゲートとして機能すると思われるカルシウム結合領域を有する新規なイオンチャネルをコードする2つの遺伝子(CASTOR遺伝子、POLLUX遺伝子)を同定したことが開示されている。
また、本発明者らは、菌根菌の一種であるRhizophagus irregularisと、マメ科植物ミヤコグサ(Lotus japonicus)を用いて、菌根菌の宿主への感染過程におけるジベレリンの機能について研究し、報告している(非特許文献1参照)。非特許文献1には、ジベレリンの添加によって菌根菌の感染率が低下したこと、及びこの阻害が、菌根菌の表皮から根内部への侵入過程で見られたことが報告されている。また、この文献では、ジベレリン合成阻害剤であるウニコナゾールPを所定濃度(1×10−6モル/L)で添加すると、根内部での菌糸の分岐が抑制され、樹枝状体形成率などの低下が見られたことが報告されている。
特開2005−245296号公報
Plant Physiology (2015) vol.167 pp545-557
共生は、植物と微生物との相互作用による効果であることから、生物の持つ揺らぎから、小さな環境変化によってもその効果の発現が不安定になることがある。また、例えば高リン濃度環境など、感染に向かない環境下では菌根菌が感染しにくく、共生栄養供給による植物の生育促進効果を十分に得ることができないことがある。しかも、農業資材や緑化資材である菌根菌は比較的高価な肥料であり、共生を利用した植物生育技術は、使用効果に対してコスト面で見合わないことが多いのが実情である。
また、上記特許文献1に記載のもののように、遺伝子組換え技術を用いた研究も種々進められているが、日本では、遺伝子組換え生物を実質的に用いることができないといった点や、天候などの環境変化に対して調整を行うことができない等といった問題がある。
本発明は上記課題に鑑みなされたものであり、より少ない量の共生資材で、共生による植物の生育促進効果を十分に得ることができる共生促進方法を提供することを一つの目的とする。
本発明によれば、以下の手段が提供される。
[1]ジベレリン合成阻害剤を、生長抑制剤として使用する量又はそれよりも少ない量で施用することにより植物と菌根菌との共生を促進させる、共生促進方法。
[2]前記ジベレリン合成阻害剤を、前記生長抑制剤として使用する量よりも少ない量で施用する、上記[1]に記載の共生促進方法。
[3]前記ジベレリン合成阻害剤を、前記生長抑制剤として使用する量の2分の1以下で施用する、上記[1]又は[2]に記載の共生促進方法。
[4]ジベレリン合成阻害剤を含有する、植物と菌根菌との共生促進剤。
[5]前記共生促進剤中の前記ジベレリン合成阻害剤が、生長抑制剤として使用する量又はそれよりも少ない量に相当する量を前記共生促進剤の施用量とする、上記[4]に記載の共生促進剤。
本発明によれば、より少ない量の共生資材で、共生による植物の生育促進効果を十分に得ることができる。また、遺伝子組換えや品種改良なしに植物種に適用することができる点や、環境要因による共生能の変化に応じて供給時期や量を容易に調整することができる点で優れている。しかも、ジベレリン合成阻害剤は、生長抑制剤として既に農業分野で広く利用されていることから、土壌や作物への影響に関する知見も十分に蓄積されており、よって安全面についても確保されている。
ジベレリン合成阻害剤による菌根菌感染率の測定結果を示す図。 ジベレリン合成阻害剤による菌根菌感染率(図中「A」)と生育促進効果の結果(図中「B」)を示す図。 ジベレリン合成阻害剤による接種胞子数の変化を示す図。図中、「A」は、ジベレリン合成阻害剤を非添加とした場合、「B」は、ジベレリン合成阻害剤を添加した場合を示す。 他のジベレリン合成阻害剤による感染促進効果の確認結果を示す図。図中、「A」は、宿主植物としてネギを使用した場合、「B」は、ミヤコグサを使用した場合を示す。
本開示は、植物と菌根菌との共生を促進するためのジベレリン合成阻害剤の使用、及びジベレリン合成阻害剤を含有する共生促進剤に関する。以下、本開示について詳しく説明する。
(植物)
本開示の適用対象となる植物は、菌根菌と共生関係を結ぶことができる植物であれば特に限定されない。当該植物は、単子葉植物でも双子葉植物でもよく、食用でも非食用でもよい。これらの具体例としては、単子葉植物として、例えば、ネギ、タマネギ、ニンニク、ニラ、アサツキ、ラッキョウ、リーキなどのヒガンバナ科;イネ、コムギ、オオムギ、トウモロコシ、モロコシなどのイネ科等を、双子葉植物として、例えば、ダイズ、インゲンマメ、アズキ、エンドウ、ソラマメ、ミヤコグサ、ラッカセイ、クローバー、ササゲ、ミヤコグサなどのマメ科;イチゴなどのバラ科;ニンジンなどのセリ科;キュウリ、カボチャ、スイカ、メロンなどのウリ科;ナス、トマト、ピーマン、ジャガイモ、トウガラシ、シシトウ、パプリカなどのナス科;オクラ、ワタなどのアオイ科;サツマイモなどのヒルガオ科等を、それぞれ挙げることができる。
これらの中でも、ヒガンバナ科ネギ属、マメ科、イネ科又はバラ科に属する植物が好ましく、ネギ、タマネギ、イチゴ、イネ、コムギ、オオムギ、ミヤコグサ、ダイズ及びトウモロコシがより好ましい。
(菌根菌)
菌根菌は、植物の根に侵入して菌根を形成する菌類であり、リンやその他の無機栄養分(窒素、カリウム、鉄など)、水分を植物に供給する微生物である。菌根の形態としては、アーバスキュラー菌根、外生菌根、内外生菌根、アルブトイド菌根、モノトロポイド菌根、エリコイド菌根、ラン菌根、ハルシメジ型菌根などが挙げられる。本開示の対象となる菌根菌は、特に制限されないが、中でもアーバスキュラー菌根菌が好ましい。アーバスキュラー菌根菌は、陸上植物の8割以上と共生関係を築くことができると推定されている共生菌である。こうしたアーバスキュラー菌根菌で、本開示による共生促進効果を十分に得ることができるということは、幅広い植物において菌根菌を利用した生育促進効果を得ることが可能であることを意味する。
菌根菌の感染について、例えばアーバスキュラー菌根菌では次のようにして行われるとされている。菌根菌が土壌中で宿主植物の根に付着すると、細胞間隙を通りながら内生菌糸を伸ばして根の内部へ侵入し、植物の細胞内に、樹枝状体とよばれる共生器官を形成する。菌根菌は、根の内部に菌糸を張り巡らせることで、土壌から集めたリンや水分などを、樹枝状体を介して植物に供給する一方、植物の光合成産物を受け取り、これを自身のエネルギー源として利用する。
(ジベレリン合成阻害剤)
本開示で使用するジベレリン合成阻害剤は、ジベレリン生合成経路のいずれの段階の生合成を阻害するものであってもよく、その種類は特に制限されない。具体的には、例えば、ウニコナゾールP、イナベンフィド、トリネキサパックエチル、パクロブトラゾール、プロヘキサジオンカルシウム、フルルプリミドール、アンシミドール、クロルメコート、ダミノジット、メピコート塩酸塩、AMO1618、CCC、LAB198999、phosphonD、SADH等が挙げられる。ジベレリン合成阻害剤は、農学上許容される塩の形態で使用してもよい。ジベレリン合成阻害剤としては、これらの中でも、ウニコナゾールP、イナベンフィド、トリネキサパックエチル、パクロブトラゾール、プロヘキサジオンカルシウム、フルルプリミドール、及びAMO1618よりなる群から選ばれる少なくとも一種を好ましく使用することができ、ウニコナゾールP、プロヘキサジオンカルシウム、及びAMO1618の少なくともいずれかを特に好ましく使用することができる。なお、ジベレリン合成阻害剤は、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
(施用方法)
ジベレリン合成阻害剤を施用する方法としては、本開示の効果を十分に得る観点から、植物を栽培する土に供給する方法を適用することが好ましい。土への供給は、例えば、土への散布、混ぜ込み、埋め込み、薬液注入、薬液潅水などの方法により行うことができる。土に供給する際には、植物を栽培する土の一部に行ってもよく、全面に行ってもよい。ジベレリン合成阻害剤を施用する場所の具体例としては、例えば、植穴又はその付近、作条又はその付近、株間、培土全面、土壌全面、育苗箱、育苗トレイ、育苗ポット、苗床などが挙げられる。ジベレリン合成阻害剤は、固体状で施用してもよく、液体状で施用してもよいが、宿主植物の根に対してジベレリン合成阻害剤を均一な濃度で供給する観点から、液体状で施用することが好ましい。
ジベレリン合成阻害剤は、播種又は植物の植え付け前に予め土に施用しておいてもよく、播種又は植物の植え付け後の土に施用してもよい。施用時期は、例えば、播種前、播種時、播種後から出芽前までの期間、出芽期、育種期、苗の移植時、挿し木又は挿し芽時、定植後の生育期間(開花前、開花中、開花後、出穂直前又は出穂期など)、果実の着色開始期などが挙げられる。その際、植物に対して1回のみ施用してもよく、複数回施用してもよい。菌根菌の施用量をできるだけ少なくしつつ、植物の生育促進効果を十分に得る観点から、植物の初期の生育段階(具体的には、出芽から開花又は出穂の前までの期間)又はそれよりも以前にジベレリン合成阻害剤を施用することが好ましく、育苗段階又はそれよりも以前にジベレリン合成阻害剤を施用することがより好ましい。
菌根菌は、ジベレリン合成阻害剤を土に供給する前、供給時、及び供給後のいずれのタイミングで培土又は土壌中に存在させてもよい。一例としては、培土中に、種子又は苗と菌根菌胞子とを加え、更に、それと同時に又は数日後(例えば、1〜10日後)に、ジベレリン合成阻害剤を含む組成物を添加する。その後、苗を栽培地に移植する。こうした方法によれば、植物の生育初期の段階で菌根菌の感染が促進されることにより、植物の初期生育の向上を図ることができ、更には、その後の植物生育を十分なものとすることができる。また、できるだけ少ない量の菌根菌の使用によって、植物の生育促進効果を十分に得ることができる。なお、菌根菌の培土又は土壌中の含有割合は、植物及び菌根菌の種類に応じて適宜選択される。
ジベレリン合成阻害剤を用いて植物と菌根菌との共生を促進させるためには、ジベレリン合成阻害剤を、生長抑制剤として使用する量D又はそれよりも少ない量で施用する。ジベレリン合成阻害剤の施用量を、生長抑制剤として使用する量D又はそれよりも少ない量とすることにより、菌根菌の感染率の向上効果を十分に得つつ、ジベレリン合成阻害剤による生長阻害を受けにくくすることができ好適である。
ここで、本明細書において「生長抑制剤」とは、植物の草丈の伸長を抑制して植物の生長を人為的に調整する目的で使用される場合をいい、植物生長調整剤、矮化剤などとよばれることもある。具体的には、例えば、観賞用植物の草丈を適度に抑制して商品価値を高めたり、野菜や果樹、樹木などの徒長を防止して収穫や栽培管理にかかる労力や経費の節減を図ったり、あるいは、イネやムギなどの作物の草丈を調整して耐倒伏性を強化したりする目的で利用される場合などが挙げられる。
ジベレリン合成阻害剤を共生促進のために使用する場合、共生促進効果をより高める観点から、ジベレリン合成阻害剤を、生長抑制剤として使用する量Dよりも少ない量で施用することが好ましい。より好ましくは、生長抑制剤として使用する量Dの2分の1以下であり、さらに好ましくは、生長抑制剤として使用する量Dの5分の1以下であり、特に好ましくは、生長抑制剤として使用する量Dの10分の1以下である。また、ジベレリン合成阻害剤の施用量の下限値は、菌根菌の感染率向上の効果を十分に得る観点から、生長抑制剤として使用する量Dの1,000分の1以上とすることが好ましく、生長抑制剤として使用する量Dの100分の1以上とすることがより好ましい。
なお、本明細書において「生長抑制剤として使用する量」とは、「生長抑制剤として使用する濃度」、「生長抑制剤として使用する重量」及び「生長抑制剤として使用する液量」を含む意味である。したがって、ジベレリン合成阻害剤を含む液剤を用いる場合であれば、ジベレリン合成阻害剤を、生長抑制剤として使用する濃度又はそれよりも薄い濃度で施用する態様;ジベレリン合成阻害剤を、生長抑制剤として使用する液量又はそれよりも少ない液量で施用する態様、を含む。好ましくは、ジベレリン合成阻害剤を、生長抑制剤として使用する濃度又はそれよりも薄い濃度で施用することにより、植物と菌根菌との共生を促進させる態様である。ジベレリン合成阻害剤を含む固形剤(例えば粒剤など)を用いる場合であれば、ジベレリン合成阻害剤を、生長抑制剤として使用する重量又はそれよりも少ない重量で施用する態様を含む。
また、「ジベレリン合成阻害剤を生長抑制剤として使用する量D」とは、ジベレリン合成阻害剤を植物に施用した場合に、目視にて視認可能な生長抑制(例えば、茎部の伸長抑制)の効果が現れる量を意味する。例えば、ジベレリン合成阻害剤の施用/非施用の条件以外は同一条件で植物を所定期間(例えば、数日間〜数か月間)栽培し、処理区と対照区との間に生長抑制において有意な差異がみられた場合に、その施用量を「ジベレリン合成阻害剤を生長抑制剤として使用する量D」とすることができる。一方、上記と同様にして植物を栽培したときに、ジベレリン合成阻害剤の処理区と対照区とで生長抑制に有意な差異が見られない場合は、「ジベレリン合成阻害剤を生長抑制剤として使用する量Dよりも少ない量」での使用に相当する。評価は、例えば「Japan.Jour.Crop.Sci. 60(1):20-24 (1991)」等に従って行うことができる。
ジベレリン合成阻害剤を生長抑制剤として使用する量Dの具体的な数値は、各植物のジベレリン合成阻害剤に対する感受性や、ジベレリン合成阻害剤の種類等に応じて異なる。例えば、ウニコナゾールPを液体状で施用する場合であれば、通常、ネギ属植物では約1×10−7モル/L以上、マメ科植物ミヤコグサでは約1×10−8モル/L以上の濃度で植物の生育抑制の効果が現れる。
ジベレリン合成阻害剤としては、市販の生長抑制剤を使用することもできる。この場合、ジベレリン合成阻害剤を生長抑制剤として使用する量Dは、各市販品の製品情報などを参照することにより特定することができる。例えば、施用対象の植物について、製品情報に記載の希釈倍率がα倍である場合であれば、植物と菌根菌との共生促進のための施用では、該市販品をα倍以上に希釈して使用し、α倍よりも希釈して使用することが好ましく、2×α倍以上に希釈して使用することがより好ましく、5×α倍以上に希釈して使用することがさらに好ましく、10×α倍以上に希釈して使用することが特に好ましい。
なお、ジベレリン合成阻害剤を生長抑制剤として使用する量Dが数値範囲で定められている場合、「ジベレリン合成阻害剤を生長抑制剤として使用する量Dで施用する」とは、ジベレリン合成阻害剤をその数値範囲内で施用することを意味する。また、「ジベレリン合成阻害剤を生長抑制剤として使用する量Dよりも少ない量で施用する」とは、ジベレリン合成阻害剤をその数値範囲の下限よりも少ない量で施用することを意味する。本明細書において「生長抑制剤として使用する量Dのβ分の1以下で施用する」及び「生長抑制剤として使用する量Dのβ分の1以上で施用する」とは、生長抑制剤として使用する量Dの数値範囲の下限を基準とした値とし、該数値範囲の下限のβ分の1以下、β分の1以上で施用することをそれぞれ意味する。
(共生促進剤)
本開示の共生促進剤は、ジベレリン合成阻害剤を含有する。当該共生促進剤は、固体状及び液体状のいずれであってもよいが、好ましくは、ジベレリン合成阻害剤が適当な溶剤中に溶解又は分散してなる液状の組成物である。
上記共生促進剤は、ジベレリン合成阻害剤のみを含有していてもよいが、ジベレリン合成阻害剤と共にその他の成分を含んでいてもよい。その他の成分としては、特に限定されないが、例えば、アスコルビン酸、トコフェロール、ニコチン酸アミド、ビタミンB、ビタミンB12、ビタミンB、ビタミンC、ビタミンK、ビタミンAなどのビタミン類;ジブチルヒドロキシトルエン(BHT)、ジブチルヒドロキシアニソール(BHA)、エリソルビン酸ナトリウムなどの酸化防止剤;
ギ酸、酢酸、プロピオン酸、酪酸、吉草酸、シュウ酸、フタル酸、安息香酸等の有機酸;ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ペクチン、グアーガム、スメクタイトなどの粘度調整剤;メタノール、エタノール、プロパノール等のアルコール類;グリコールエーテル、ケロシンなどの揮散抑制剤;チッソ、リン、カリウム、カルシウム、ホウ素、マンガン、亜鉛、マグネシウム等のミネラル;色素、等が挙げられる。その他の成分の含有割合は、本開示の効果を妨げない範囲で適宜設定することができる。
共生促進剤の施用量は、共生促進剤中のジベレリン合成阻害剤が、生長抑制剤として使用する量又はそれよりも少ない量に相当する量で施用される量とすることが好ましい。したがって、共生促進剤中におけるジベレリン合成阻害剤の濃度が、生長抑制剤として使用する濃度よりも濃い場合には、例えば水や液体培地等を用いて希釈して施用することが好ましい。
以上の通り、本開示の共生促進方法及び共生促進剤は、組換え植物を用いていないことから、例えば日本の屋外でも植物の栽培にも利用することができる。また、ジベレリン合成阻害剤は、既に農薬等として広く利用されている薬剤であり、安全性の評価基準や実際の安全性評価に関する多くの知見が得られていることから、安全面も十分に確保されている。しかも、ジベレリン合成阻害剤は、既に大量生産が可能な市販農薬となっており、安価に十分量の薬剤を入手することができる。したがって、ジベレリン合成阻害剤を利用して、植物と菌根菌との共生促進を図る手法によれば、安価にかつ安全に植物の生育促進効果を得ることができる点で有意である。この技術は、農業的な利用を中心とした様々な植物における共生効果の向上に利用することができる。
以下、本発明を実施例により更に具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に制限されるものではない。
1.植物、菌根菌材料及び評価方法
単子葉植物のヒガンバナ科ネギ属Allium schoenoprasumと、双子葉植物のマメ科ミヤコグサ属Lotus japonicusを宿主植物として用い、ジベレリン合成阻害剤(Uniconazole-P, AMO1618, プロヘキサジオンカルシウム)添加によるアーバスキュラー菌根菌(Rhizophagus irregularis)感染への影響を評価した。なお、以下の例では、植物へのジベレリンの添加を外部からは行っていない。
植物への菌根菌の接種は、約300mlの土が入ったポットに100mlの液体培地(1/10濃度のHoagland培地に0.1mM 硝酸カリウムを加えたもの、あるいは1/4濃度のHoagland培地)を加え、菌根菌胞子を接種した土に植物を植えることにより行った。
ジベレリン合成阻害剤の添加は、ジベレリン合成阻害剤を所望の濃度となるように上記液体培地中に加え、この培地を上記ポットに加えることにより行った。なお、植物への添加量を一定とするため、ポットから流れ出た液体培地はポットの下に溜め、ポットの底面から再び吸収できるようにした。ジベレリン合成阻害剤の添加は、生育期間中に上記の1回のみ行った。
宿主植物の根への菌根菌の感染の確認は、感染した根を10% KOHで90℃、1時間処理し、5%酢酸と3%黒インクで90℃、20分間染色後、水でよく洗うことで、根の中の菌根菌を可視化することにより行った。この染色した根を顕微鏡下で観察し、格子交点法により菌根菌感染率を測定した。
2.ジベレリン合成阻害剤による菌根菌感染率の向上
菌根菌4000胞子及び8000胞子をネギ(A. schoenoprasum)に接種する際に、液体培地中に10−8Mとなるようにジベレリン合成阻害剤 Uniconazole-Pを加え、この溶液を土壌に添加した。ジベレリン合成阻害剤の施用濃度(10−8M)は、生育抑制剤としての効果が現れる濃度の10分の1に相当する。
ジベレリン合成阻害剤を添加したポットでは、非添加のポットと比べ、宿主根への菌根菌感染率が、平均で30% 以上向上していた(図1)。なお、図1中、「*」は統計的な有意差を示す(t-test, p < 0.05)。「Uni」は Uniconazole-Pを意味する(以下同じ)。
3.ジベレリン合成阻害剤による菌根菌感染率と生育促進効果の向上
ネギ属植物への菌根菌感染2カ月後の感染率(図2のA)と、地上部(可食部)重量(図2のB)とを測定した。ジベレリン合成阻害剤 Uniconazole-P(10−8M) を土壌中に添加したポットでは、非添加のポットと比べ、宿主根への菌根菌感染率が 30% 以上向上し、大きな生育促進効果が見られた。「*」は統計的な有意差を示す(t-test, p < 0.05)。
4.ジベレリン合成阻害剤による接種胞子数の低減
ネギ属植物に菌根菌を、それぞれ100、500、2000、4000胞子ずつ接種し、ジベレリン合成阻害剤Uniconazole-P(10−8M)を添加、又は非添加で、照明点灯下16時間、消灯下8時間、温度24℃の栽培室で2か月間栽培した。
2か月栽培した後の写真を図3に示す。なお、図3中、A(上段)は、ジベレリン合成阻害剤を非添加とした場合であり、B(下段)は、ジベレリン合成阻害剤を添加した場合を示している。
図3から明らかなように、コントロールの非添加区では、低胞子数では共生による生育促進効果が得られずに枯れてしまった。これに対し、ジベレリン合成阻害剤の処理区では、ジベレリン合成阻害剤による感染促進効果によって、より少ない数の菌根菌胞子の接種でも生育促進効果を得ることができ、共生による栄養供給能の向上により生育が促進されていることが分かった。
5.他のジベレリン合成阻害剤による感染促進効果の検証
ジベレリン合成阻害剤は、農業的に有用な農薬として、さまざまな物質が用いられている。ジベレリン合成経路への阻害機構が異なるジベレリン合成阻害剤AMO1618及びプロヘキサジオンカルシウム(PHC)の添加による菌根菌の感染率への影響を調べた。図4は、ネギ(A)、マメ科植物ミヤコグサ(B)を宿主植物としたときの菌根菌感染後1カ月での感染率(%)を示す。なお、図4では、AMO1618、プロヘキサジオンカルシウムを、各ジベレリン合成阻害剤による明確な生育抑制効果が見られない10−5Mから10−7Mで添加した。
図4から明らかな通り、植物種により有効濃度の具体的な数値は異なるが、Uniconazole-P以外の他のジベレリン合成阻害剤によっても、菌根菌感染率が非添加の植物と比べて有意に向上し(t-test, p < 0.05)、感染促進効果が見られた。
以上の結果から、ジベレリン合成阻害剤を施用することで、植物への菌根菌の感染が促進され、よって宿主植物の生育向上を図ることができることが判明した。

Claims (3)

  1. ジベレリン合成阻害剤を、生長抑制剤として使用する量よりも少ない量で施用することにより植物と菌根菌との共生を促進させる、共生促進方法。
  2. 前記ジベレリン合成阻害剤を、前記生長抑制剤として使用する量の2分の1以下で施用する、請求項に記載の共生促進方法。
  3. 植物と菌根菌との共生促進剤であって、
    ジベレリン合成阻害剤を含有し、
    前記共生促進剤中の前記ジベレリン合成阻害剤が、生長抑制剤として使用する量よりも少ない量に相当する量を前記共生促進剤の施用量とする、植物と菌根菌との共生促進剤。
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