JP2017035809A - 液体吐出ヘッド及びその製造方法 - Google Patents
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Abstract
Description
特許文献1に開示される製造方法では、まず、吐出口、流路、吐出エネルギー発生素子等を有する記録素子基板をアルミナ等の支持プレートに張り付け、記録素子基板と電気配線部材としてのフレキシブル配線基板とが電気的に接合される。次に、記録素子基板の側面をインクやゴミ等から保護するための周囲封止材が塗布される。その周囲封止材が硬化した後、その上から電気接続部を封止するILB(inner lead bonding)封止材(電気接続部封止材)が塗布される。
ここで使用される、記録素子基板の周囲を封止する周囲封止材と電気接続部封止材のそれぞれに求められる機能は次のとおりである。
周囲封止材としては、支持プレート上の部位と記録素子基板との間に形成される1mm
弱の幅の隙間を短時間に流れ、すみやかに充填されることが要求される。加えて、インクやその他の要因から記録素子基板を保護することも求められる。
電気接続部封止材としては、電気接続部の封止を行うことはもちろんのこと、インク吐
出口配設面を清掃するブレードやワイパー等によるこすりや紙ジャムによる紙等との接触
によっても封止材が剥がれないことが求められる。
この方法により、周囲封止材と電気接続部封止材が同時に硬化しても、それぞれの封止材の硬化スピードの相違による両封止材間での硬化剤の奪い合い(硬化阻害)はなくなる。
引用文献3では、記録素子基板と周囲封止材との良好な密着性、並びに周囲封止材と電気接続部封止材の良好な密着性を得るために、共にブタジエン骨格を有するエポキシ樹脂と硬化剤を含み、硬化状態で低弾性率となる封止材を周囲封止材として用いている。
液体吐出ヘッドにおいて、高精細な画像を記録する為には、吐出エネルギー発生素子の集積密度を上げて高密度化することが有効である。また、高い発色性をもつインクを用いるのも有効な手段である。そして、高速な印字を行うには、エネルギー発生素子の数を増やして液体吐出ヘッドを長尺化することも有効である。
記録媒体の記録面の幅方向[紙送り方向(記録媒体の縦方向)と直交する横方向]に伸びる長尺型の液体吐出ヘッド、例えばフルラインタイプの液体吐出ヘッドでは、記録媒体の幅方向に液体吐出ヘッドを走査する動作を必要としない。そのため、記録装置の構造を簡易化して記録装置の価格を低減することが可能である。
長尺型の液体吐出ヘッドでは、記録素子基板が大型化しており、記録素子基板の周囲封止材や記録素子基板と電気配線部材との電気接続部の封止材の使用容量も多くなる。そのため、封止材による封止部における耐久性が液体吐出ヘッドの信頼性を向上させる上で重要な要件の一つとなる。例えば、熱硬化型の封止材の場合には、液状で塗布した封止材を熱硬化する際に発生する応力が封止材の使用容量の増加に伴って大きくなると、記録素子基板側での割れや封止部における剥がれや割れが発生する場合がある。
一方、水性インクによる着色での発色性を高めるには、顔料や染料等の色材の水性インク中での分散性や溶解性を高めることが有効であり、そのために水以外の溶媒量の増加や新たな溶媒の添加が必要となる場合がある。これらの水以外の溶媒、例えば水溶性有機溶媒は、封止部に影響を与え、封止部の膨潤や接着性の低下等を引き起こす原因となる可能性がある。封止部の膨潤や接着性の低下は、液体吐出ヘッドの電気特性の低下等の信頼性の低下につながる場合がある。さらに、一つの液体吐出ヘッドからの液体の吐出量が多くなると、ワイピングを用いるクリーニング操作時に封止部に接触する液体量が多くなり、液体中に含まれる水以外の溶媒による封止部への影響も大きくなる。長尺型の液体吐出ヘッドでは、ワイピングを用いるクリーニング時におけるワイピング適用面積がさらに大きくなり、封止部に接触する液体量もより多くなり、液体中に含まれる水以外の溶媒による封止部への影響もさらに大きくなる。従って、液体吐出ヘッドに用いる封止材には、水性インク等の液体に含まれる水分のみならず水以外の溶媒に対する耐性を有する封止部を形成可能であることが求められている。
しかしながら、特許文献1〜4には、上述した封止材に関する技術課題についての開示はない。
本発明の目的は、高密度で長尺化された記録素子基板を有する場合や水性の液体を吐出する場合においても、封止材による封止部に長期耐久性を得ることができ、信頼性が向上した液体吐出ヘッド及びその製造方法を提供することにある。
液体を吐出する吐出口と該吐出口に液体を供給する流路を有する流路部材と、前記吐出口から液体を吐出するエネルギーを発生する吐出エネルギー発生素子を備える基板と、を有する記録素子基板と、
前記吐出エネルギー発生素子を駆動するための信号を送信するための電気配線部材と、
前記記録素子基板と前記電気配線部材とを電気的に接続する電気接続部と、
を有し、
前記電気接続部が封止材により封止されている液体吐出ヘッドであって、
前記封止材が、
(a)1分子中に少なくとも2個のアルケニル基を有するポリイソブチレン化合物、
(b)1分子中に少なくとも2個のヒドロシリル基を有する化合物、及び
(c)ヒドロシリル化触媒
を含む硬化性の封止材である
ことを特徴とする。
液体を吐出する吐出口と該吐出口に液体を供給する流路を有する流路部材と、前記吐出口から液体を吐出するエネルギーを発生する吐出エネルギー発生素子を備える基板と、を有する記録素子基板と、
前記吐出エネルギー発生素子を駆動するための信号を送信するための電気配線部材と、
前記記録素子基板と前記電気配線部材とを電気的に接続する電気接続部と、
を有する液体吐出ヘッドの製造方法であって、
前記電気接続部の封止位置に封止材を付与する工程と、
前記電気接続部の封止位置に付与された封止材を硬化させる工程と、
を有し、
前記封止材が、
(a)1分子中に少なくとも2個のアルケニル基を有するポリイソブチレン化合物、
(b)分子中に少なくとも2個のヒドロシリル基を有する化合物、及び
(c)ヒドロシリル化触媒
を含む硬化性の封止材である
ことを特徴とする。
さらに、ポリイソブチレン鎖を含む封止部は、水性インク等の水性液体に含まれる水や水以外の溶媒に対する耐性を有し、これらの成分の影響による封止材の膨潤や剥がれ等を防ぐことができる。
記録素子基板は、液体を吐出する吐出口と吐出口に液体を供給する流路を有する流路部材と、吐出口から液体を吐出するエネルギーを発生する吐出エネルギー発生素子を備える。
吐出エネルギー発生素子の駆動は、電気配線部材からの電気信号を入力することにより行われる。記録素子基板内に配置された吐出エネルギー発生素子と、記録素子基板の外部の電気配線部材との電気接続部の形成は各種の接続方法を用いることができる。例えば、電気配線部材の有するリードと、記録素子基板内の吐出エネルギー発生素子に接続された配線の端子、例えば電極パッドやバンプとを電気的に接合することによって電気接続部を形成することができる。
(a)1分子中に少なくとも2つのアルケニル基を有するポリイソブチレン化合物、
(b)1分子中に少なくとも2個のヒドロシリル基を有する化合物、及び
(c)ヒドロシリル化触媒
を含む硬化性の組成物からなる封止材(以下、「ポリイソブチレン系封止材」という)が用いられる。
(a)成分としてのポリイソブチレン化合物は、ポリイソブチレン鎖と少なくとも2つのアルケニル基を1つの分子中に有する化合物であり、主剤として封止材に配合される。好ましくは、両末端にアルケニル基を有する化合物で、数平均分子量が3000〜50000程度のものが、好適に用いられる。これらは、反応性及び取り扱い上の粘度の観点で好ましい。ポリイソブチレン化合物としては、接着剤やコーティング剤などとして用いられている硬化性樹脂の主剤として利用されている、あるいは利用可能な公知あるいは市販のポリイソブチレン系液状樹脂を選択して用いることができる。市販品では、エピオン200A、エピオン400A、エピオン600A(カネカ製)などが挙げられる。
(b)成分としての分子中に少なくとも2個のヒドロシリル基(SiH)を有する化合物は、(a)成分と、(c)成分としてのヒドロシリル化触媒の存在下で反応して封止材としての特性を満たす硬化物を形成するための硬化剤として機能できるものであればよく、特に限定されない。
この(b)成分としての1分子中に少なくとも2個のヒドロシリル基(SiH)を有する化合物としては、1つの分子中に少なくとも2個のヒドロシリル基を有するポリオルガノハイドロジェンシロキサンを挙げることができる。ヒドロシリル基は、硬化反応に寄与するため、1分子中における個数が多いと組成物自体が不安定になり、又硬化物中に残ると物性低下になるので、一分子中のヒドロシリル基の数数は35以下とすることが好ましい。(b)成分としては、(a)成分としてのポリイソブチレン化合物の硬化剤として利用し得る、あるいは利用されている公知または市販の化合物を用いることができる。市販品としては、「HMS301」(商品名、メチルヒドロシロキサン−ジメチルシロキサンコポリマー、アズマックス製)等を挙げることができる。
(a)成分と(b)成分の配合割合は、目的とする封止材としての物性、好ましくは後述する実施例1〜4における引張伸び、硬度ショアA、熱膨張係数、体積抵抗率、質量変化率が得られるように選択することができる。例えば、(b)成分として封止材に添加される硬化剤中のヒドロシリル基の量は、(a)成分の有するアルケニル基1モルに対し、ヒドロシリル基が0.5〜5モルとする量が好ましい。また、硬化剤の分子量は100〜30000の範囲が好ましい。
(c)成分としてのヒドロシリル化触媒は、(a)成分と(b)成分をヒドロキシリル化反応により重合させることができるものであればよく、特に限定されず、ヒドロシリル化反応の触媒活性がある材料から選択することができる。(c)成分の具体例としては、例えば、白金単体、塩化白金酸、白金オレフィン錯体、白金アルコラート錯体などの白金の有機金属錯体を挙げることができる。(c)成分は目的とする硬化反応を得るための触媒量で封止材に配合すればよい。
さらに、必要に応じシランカップリング剤などの接着向上剤、粘度低下を目的としたプロセスオイルやオレフィンオリゴマー、酸化防止剤、やフィラー等の添加剤をポリイソブチレン系封止材に添加することができる。
ポリイソブチレン系封止材は硬化性を有し、特に、熱硬化によって封止部としての良好な特定を有する硬化物を提供することができる。
(実施形態)
図1(a)は、液体吐出ヘッドの一形態であるインクジェッド記録ヘッド(以下「記録ヘッド」という)をインクが吐出する方向よりみた模式図である。図1(b)は図1(a)におけるA−A部分断面図である。図1(c)は、封止された電気接続部の構造を模式的に示すリードの配列方向に沿った部分断面図である。
図示した記録ヘッドは、一つの基板1に、二つインク供給口9を設け、流路部材4によって吐出口3が並んだ吐出口列を四列配置した構成を有する。ふたつのインク供給口9に充填された同一種のインクは、吐出エネルギー発生素子2からのエネルギー付与によって吐出口3から吐出される。
電気接続部は、フレキシブル配線基板などの電気配線部材5側のリード6と、記録素子基板14側の吐出エネルギー発生素子への接続配線の端子10(例えば、パッドやバンプ等)とが電気的に接合されることにより形成されている。
記録素子基板14は、支持部材7上に固定された横周囲封止部8により形成された開口部内の所定の位置に設置して固定されている。
周囲封止材12の少なくともリード6の下領域の形成にポリイソブチレン系封止材が用いられている。図示した液体吐出ヘッドの構造のように、周囲封止材12によってリード6の下領域も封止する構造は、封止プロセスを効率化する上で好ましく、周囲封止材12としてもポリイソブチレン系封止材を用いることが好ましい。
周囲封止材12は、リード6の下領域及び記録素子基板14の周囲に流れて行かなければならないので、低粘度、低チクソ性が要求される。従って、周囲封止材としてのポリイソブチレン系封止材の粘度やチクソ性は、周囲封止材において用いられている低粘度の範囲や低チクソ性の範囲から選択することができる。
電気接続部封止材13は、リード6を保護する機能を有する為に、高い弾性率(高い硬度)を必要とする。そのため、シリカなどのフィラーを高充填することが好ましい。リード6上に電気接続部封止材13を残すために、電気接続部封止材13にはチクソ性を付与する必要がある。その上、ある程度の流動性をもたしたうえでチクソ性を付与することが好ましい。従って、電気接続部封止材13の粘度やチクソ性は、電気接続部封止材において用いられている高粘度の範囲や高チクソ性の範囲から選択することができる。
ポリイソブチレン系封止材を、電気接続部封止材13として用いる際に、フィラーを添加する場合は、チクソ剤として、チクソ性を付与できるフィラーを用いるが好ましい。このようなフィラーとしては、エアロジル(商品名 日本アエロジル)などに代表される乾式方法で製造されるヒュームドシリカを挙げることができ、このようなフィラーを用いることにより電気接続部封止材13のチクソ性だけでなく、その機械的特性も向上する。このように、電気接続部封止材13は(d)成分としてチクソ剤を含むことが好ましい。
その他の封止材の主剤の具体例としては、ビスフェノール型エポキシ樹脂、含ブロムエポキシ樹脂、フェノールまたはクレゾール型エポキシ樹脂、環状脂肪族エポキシ樹脂、グルシジルエステル系樹脂、グリシジルアミン系樹脂、複素環式エポキシ樹脂、これらのシリコーン変性物、ポリブタジエン変性物、ウレタン変性物、並びに、これらを、ペンタエリスリトール、トリメチロールプロパン、グリセリン等を使って多官能化したもの等を挙げることができる。
重合性基として少なくともエポキシ基を有する主剤を含むエポキシ樹脂封止材は、耐薬品性に優れるため、特に好ましい。
アミン系硬化剤としては、エチレンジアミン(EDA)等の脂肪族アミン、m−キシレンジアミン等の脂肪族芳香族アミン、メタフェニレンジアミン(MPDA)等の芳香族アミン、ポリアミノアミド等を挙げることができる。
酸および酸無水物系硬化剤としては、ドデセニル無水コハク酸(DDSA)等の脂肪族酸無水物、メチルテトラヒドロ無水フタル酸(Me−THPA)等の脂環式酸無水物、無水フタル酸(PA)等の芳香族酸無水物、無水ヘット酸(HET)等のハロゲン系酸無水物等を挙げることができる。
硬化剤の配合量は特に限定されず、目的とする主剤による硬化状態を得ることができる範囲から選択することができる。
その他の封止材におけるフィラーの充填量、すなわち、封止材全体に対するフィラーの含有量は、目的とする封止材の物性に応じて選択することができる。フィラーの種類、粒子形状、粒径等により異なるが、封止材全体に対して50〜80質量%の範囲から、目的とする封止材の特性に応じて選択することができる。
その他の封止材には、諸性能を向上させるために添加剤等を加えてもよい。添加剤の一例としては、シリコンウェハー等の無機物質への接着性を良好にするためにシランカップリング剤を、脱泡性を改良するために消泡材、粘度や反応性の促進あるいは制御などの調整を行うための、アミン、反応性モノマー、触媒等を挙げることができる。
記録素子基板14を、支持部材7上に固定された横周囲封止部8により形成された開口部内の所定の位置に設置して固定する。次に、記録素子基板14の吐出エネルギー発生素子2に信号を送るための配線の端子10と電気配線部材5のリード6とを接合し、電気接続部を形成する。これらの接合には公知の方法を用いることができる。
この段階の状態を図2(a)の模式的平面図に示す。記録素子基板14の側面と電気配線部材5の下部に位置する横周囲封止部8の内側面との間には、これらの側面と支持部材7の表面とによって封止位置としての凹部11が形成されている。
この凹部11に周囲封止材12を充填する。リード6の下部領域には周囲封止材をディスペンサー等により直接充填できないので、リード6の横からリード6の下部領域に周囲封止材を回り込ませて充填する。周囲封止材を凹部11に充填した状態を図2(b)の模式的平面図に示す。
周囲封止材12を熱硬化させてから、図1(c)に示すように、封止位置としての端子10とリード6の接続部上、すなわち電気接続部上部領域を、電気接続部封止材13で被覆し、これを硬化させる。この段階で第1の封止材の硬化物の層と第2の封止材の硬化物の層が積層された部分が生じる。
なお、図2(b)に示す段階で、周囲封止材12の熱硬化は行わずに、電気接続部封止材13によるリード6の上領域の被覆を行ってから、これらを同時に熱硬化させてもよい。周囲封止材12と電気接続部封止材13として共通の熱硬化条件を有するものを用いることにより、この同時の熱硬化処理が可能となり、封止プロセスを効率化することができる。この場合、周囲封止材12と電気接続部封止材13とにおいて、主剤及び硬化剤は同一であっても異なっていてもよい。
一方、ポリイソブチレン系封止材を電気接続部封止材として用いることによって、電気接続部上での熱硬化時における記録素子基板側での割れや、封止部における割れや剥がれを防止することができ、さらに、電気接続部を被覆する封止部に付着する水性液体に含まれる水分や溶媒成分による封止部への影響を無くすことができる。
従って、ポリイソブチレン系封止材を用いることによって、液体吐出ヘッドの封止部に長期耐久性を得ることができ、液体吐出ヘッドの信頼性をさらに向上させることができる。
ポリイソブチレン系封止材は、長尺型の液体吐出ヘッドにおける封止部の形成において特に好ましく用いられる。
(実施例1〜4、比較例1〜2)
表1に示す各成分を混合してポリイソブチレン系封止材としての封止材1〜4を得た。
(b)成分としての「HMS301」(商品名、アズマックス製)はメチルヒドロシロキサン−ジメチルシロキサンコポリマーであり、1分子中に少なくとも2個のヒドロシリル基を有する化合物に相当する。
(c)成分としての塩化白金酸六水和物は、ヒドロシリル化触媒である。
「ダイアナプロセスオイル PW32」(商品名、出光興産製)は可塑剤としてのパラフィン系プロセス油である。「アエロジルR972」(商品名日本アエロジル製)はチクソ剤としてのヒュームドシリカである。
各組成物の調製において、一般に行われているように、特に触媒は分散性が低いのでエタノールに溶解後、他の成分と混合し、減圧脱法などを行い触媒毒になる水分等を除去した。
封止材1は、(a)成分、(b)成分及び(c)成分からなるポリイソブチレン系封止材である。
封止材2は、封止材1の各成分に加えて一般的に行われている特性向上の為にプロセスオイルを若干の粘度低下が生じる量で添加することにより調製した。粘度低下用の材料としては、低粘度であるシラン剤も有効で、反応性も有し、接着性向上を図ることができる。
封止材3は、封止材1の各成分に加えて、一般的に行われているように機械的特性向上の為チクソ剤であるヒュームドシリカを添加することにより調製した。添加量を上げれば機械的特性は向上するが粘度が上昇し流れなくなるので少量の添加としている。
封止材4は、リード上に塗布しても流れないように封止材1の各成分に加えて、チクソ剤であるヒュームドシリカを多量に添加することにより調製した。
前述したように、封止材に、チオフェン化合物、イミノ化合物、脂肪族不飽和結合を有する化合物、有機リン化合物、有機硫黄化合物などの安定化剤を添加してもよい。さらに、その他の添加剤を加えてもよい。
表2に、実施例1〜4で用いた封止材1〜4と比較例1〜3で用いた封止材5〜7の封止部位及び基礎特性を示す。なお、表2に示す各物性値は常法により測定した。
なお、封止材7は、封止材4にリード上に塗布しても流れないようにチクソ剤としてのヒュームドシリカを添加して調製した。
図1(c)及び図2(a)に示す様に、リードが接続された電気接続部に対して、封止材1〜7のそれぞれを表2に示す組合せで用いて封止を行った。まず、封止材1〜4のそれぞれを用いて、図2(b)で示す様に塗布を行った。この時、スペースの関係上、リード6の下部にはディスペンサーにより直接塗布することができないため、リード部の横の領域に塗布し、リードの下部に封止材を流し込ませた。
次に、図1(a)及び(c)に示すように、封止材4〜6のそれぞれを用いてリード上領域に封止材を塗布し、110℃2時間の加熱硬化処理を封止材全体に対して行い、封止材の硬化物からなる封止部を形成した。
上記のようにして作製した記録ヘッド15に対して封止部をインクに浸漬し、0℃1時間及び100℃1時間の熱処理を繰り返すヒートショック(H/S)試験を200サイクルおこなった。
表3に示す様に、実施例1〜4(周囲封止材として封止材1〜4を使用)及び比較例2(周囲封止材として封止材5を、電気接続部封止材として封止材7を使用)では、外観状変化はみられなかった。比較例1(周囲封止材として封止材5を、電気接続部封止材として封止材6を使用)では、周囲封止材、電気接続部封止材及び記録素子基板の全ての境界の封止材側に微小クラックが発生した。
評価1により得られた結果を表3に示す。
実施例1〜4の封止材1〜4は、インクに曝されても殆ど物性変化せず伸び率も高いので変化しなかった。
比較例1の封止材では、電気接続部の封止部においてクラックが生じた。これは、リード上領域の封止材6の硬化物とリード下領域の封止材5の硬化物の硬度(ショア硬度A)及びCTE(熱膨張係数)が大きく異なり、さらに、封止材6の硬化物がインクに曝され特性が低下して伸びが少なくなったためと考えられる。電気接続検査をおこなったところ、比較例1ではでは僅かにリーク電流が発生していた。
比較例2では、周囲封止材と電気接続部封止材料がともに低弾性であり、CTEも同じである為、クラックが生じなかったと考えられる。
上記のようにして作製した記録ヘッド15にインク供給部材を取り付けインクジェットプリント装置に搭載して紙ジャムテストを行った。
紙ジャム試験とは、インクジェットプリント装置に記録ヘッドを搭載し、普通紙( キヤノン製 A4版)1枚にベタパターンのインクジェット記録を行う。その際に、プリンターの排紙面をブロックし強制的に紙ジャムを起こさせる。そして、排紙ローラーより一部排紙された紙を手で左右に振りながら強制的に抜き取る。この作業を10回繰り返す。
評価2により得られた結果を表3に示す。
表3に示す様に、実施例1〜4及び比較例1に関しては、外観変化は観られなかった。
しかし、比較例2では、電気接続部の封止部が欠けていた。これは、比較例2で使用した電気接続部封止材の硬化物は柔らかいが、伸びが少ない為に紙によりこすられた封止部がちぎれたと考えられる。
このように本実施例にかかる封止部は、過酷な評価1及び評価2の両方の試験にも耐えることができ、記録ヘッドの長期信頼性は著しく向上する。
記録ヘッドの電気接続部に適した本発明の熱硬化組成物は、封止だけではなく、液体吐出ヘッドの様々部位に好適に用いることができる。例えば、液体吐出装置の電気配線部材の接着等に好適に用いることができる。
2 吐出エネルギー発生素子
3 吐出口
4 流路部材
5 電気配線部材
6 リード
7 支持部材
8 横周囲封止部
9 供給口
10 端子
11 凹部
12 第1の封止材(周囲封止材、リード下領域封止材)
13 第2の封止材(電気接続部封止材、リード上領域封止材)
14 記録素子基板
15 記録ヘッド
Claims (8)
- 液体を吐出する吐出口と該吐出口に液体を供給する流路を有する流路部材と、前記吐出口から液体を吐出するエネルギーを発生する吐出エネルギー発生素子を備える基板と、を有する記録素子基板と、
前記吐出エネルギー発生素子を駆動するための信号を送信するための電気配線部材と、
前記記録素子基板と前記電気配線部材とを電気的に接続する電気接続部と、
を有し、
前記電気接続部が封止材により封止されている液体吐出ヘッドであって、
前記封止材が、
(a)1分子中に少なくとも2個のアルケニル基を有するポリイソブチレン化合物、
(b)1分子中に少なくとも2個のヒドロシリル基を有する化合物、及び
(c)ヒドロシリル化触媒
を含む硬化性の封止材である
ことを特徴とする液体吐出ヘッド。 - 前記電気接続部の下部領域を封止する第1の封止材と、前記電気接続部の上部領域を封止する第2の封止材と、を有し、第1の封止材が前記硬化性の封止材である請求項1に記載の液体吐出ヘッド。
- 前記第1の封止材が、前記記録素子基板の周囲を封止する周囲封止材である請求項2に記載の液体吐出ヘッド。
- 前記第2の封止材が、
(a)1分子中に少なくとも2個のアルケニル基を有するポリイソブチレン化合物、
(b)1分子中に少なくとも2個のヒドロシリル基を有する化合物、
(c)ヒドロシリル化触媒、及び
(d)チクソ剤
を含む硬化性の硬化剤である請求項3に記載の液体吐出ヘッド。 - 液体を吐出する吐出口と該吐出口に液体を供給する流路を有する流路部材と、前記吐出口から液体を吐出するエネルギーを発生する吐出エネルギー発生素子を備える基板と、を有する記録素子基板と、
前記吐出エネルギー発生素子を駆動するための信号を送信するための電気配線部材と、
前記記録素子基板と前記電気配線部材とを電気的に接続する電気接続部と、
を有する液体吐出ヘッドの製造方法であって、
前記電気接続部の封止位置に封止材を付与する工程と、
前記電気接続部の封止位置に付与された封止材を硬化させる工程と、
を有し、
前記封止材が、
(a)1分子中に少なくとも2個のアルケニル基を有するポリイソブチレン化合物、
(b)分子中に少なくとも2個のヒドロシリル基を有する化合物、及び
(c)ヒドロシリル化触媒
を含む硬化性の封止材であることを特徴とする液体吐出ヘッドの製造方法。 - 前記電気接続部の封止位置が、該電気接続部の下部領域と上部領域であり、
前記電気接続部の下部領域に第1の封止材を充填する工程と、
前記電気接続部の下部領域に充填された第1の封止材上に、前記電気接続部の上部領域を封止する第2の封止材を、該電気接続部を被覆して積層する工程と、
前記第1の封止材の硬化を行う工程と、
前記第2の封止材の硬化を行う工程と、
を有し、第1の封止材が前記硬化性の封止材である請求項5に記載の液体吐出ヘッドの製造方法。 - 前記電気接続部の下部領域への前記第1の封止材の充填が、前記第1の封止材が前記記録素子基板の周囲を封止する周囲封止材であり、前記記録素子基板の周囲への前記第1の封止材の充填により行われる請求項6に記載の液体吐出ヘッドの製造方法。
- 前記第2の封止材が、
(a)1分子中に少なくとも2個のアルケニル基を有するポリイソブチレン化合物、
(b)1分子中に少なくとも2個のヒドロシリル基を有する化合物
(c)ヒドロシリル化触媒、及び
(d)チクソ剤
を含む硬化性の硬化剤である請求項7に記載の液体吐出ヘッド。
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