JP2017026405A - 光ポンピング磁力計および磁気センシング方法 - Google Patents

光ポンピング磁力計および磁気センシング方法 Download PDF

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Tetsuo Kobayashi
哲生 小林
陽介 伊藤
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陽介 伊藤
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Sunao Ichihara
直 市原
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Natsuhiko Mizutani
夏彦 水谷
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Abstract

【課題】1つのプローブ光で空間的に異なる場所の磁気情報を分離して同時に取得しうる光ポンピング磁力計および磁気センシング方法を提供する。【解決手段】アルカリ金属原子を内包する少なくとも1つのセルと、ポンプ光を該セルに入射させるポンプ光光学系と、プローブ光を、該セル内において該ポンプ光と交差するように入射させるプローブ光光学系と、該アルカリ金属原子のスピン偏極を緩和させる複数の緩和光を、該ポンプ光と該プローブ光とが交差する領域内の互いに異なる位置に入射させる緩和光光学系と、該ポンプ光および該複数の緩和光と交差した該プローブ光を検出して検出信号を出力する手段と、該検出信号から、該互いに異なる位置の各々の磁場強度に関する情報を取得する手段と、を有し、該複数の緩和光の強度または波長の時間変化の周期と、該複数の位相の少なくとも一方が互いに異なる磁気センシング方法のための光ポンピング磁力計。【選択図】図1

Description

本発明は、磁場強度を計測するセンシング方法および磁力計に係り、特に、原子の電子スピン或いは核スピンを利用した光ポンピング磁力計および磁気センシング方法に関する。
非特許文献1および特許文献1には、光ポンピング磁力計が記載されている。非特許文献1に記載された光ポンピング磁力計は、アルカリ金属ガスが内包されたセルと、ポンプ光用光源と、プローブ光用光源とを有する。この光ポンピング磁力計は、被測定対象磁場を受けて回転した、ポンプ光によって偏極させた原子群のスピンを、プローブ光の偏光面の回転として測定するものである。また、非特許文献1には、プローブ光とポンプ光との交差領域を測定ごとに変えることで、プローブ光の光路上の異なる位置の磁気信号を分離して測定する方法が示されている。また、特許文献1には、複数のセルおよびセルごとにプローブ光およびポンプ光をそれぞれ照射する磁気センサアレイの例が示されている。
特開2011−203133号公報
伊藤陽介、他、「K−Rbハイブリッドセルを用いた光ポンピング原子磁気センサによる生体磁気計測に向けた磁場分布計測」、電子情報通信学会技術研究報告、vol.112、no.479、MBE2012−93、p.31、2013年3月
非特許文献1の光ポンピング磁力計は、プローブ光とポンプ光との交差領域を変える必要があるため、プローブ光の光路上の異なる位置の磁場強度の測定は同時に行えない。
特許文献1の光ポンピング磁力計は、プローブ光の光路上の異なる位置の磁場強度の測定は行えず、また、セルごとに信号の検出器を必要とする構成であるため装置が大きくなるという課題がある。
すなわち非特許文献1および特許文献1の光ポンピング磁力計は、1つのプローブ光で、プローブ光の光路上の空間的に異なる場所の磁気情報を分離して同時に測定することはできなかった。
本発明の目的は、1つのプローブ光で空間的に異なる場所の磁気情報を分離して同時に測定しうる光ポンピング磁力計および磁気センシング方法を提供することにある。
本発明の一観点によれば、アルカリ金属原子を内包する少なくとも1つのセルと、円偏光成分を有するポンプ光を前記セルに入射させるポンプ光光学系と、直線偏光成分を有するプローブ光を、前記セル内において前記ポンプ光と交差するように前記セルに入射させるプローブ光光学系と、前記アルカリ金属原子のスピン偏極を緩和させる複数の緩和光を、前記ポンプ光と前記プローブ光とが交差する領域内の互いに異なる位置に入射させる緩和光光学系と、前記ポンプ光および前記複数の緩和光と交差した前記プローブ光を検出して検出信号を出力する検出手段と、前記検出信号から、前記互いに異なる位置の各々の磁場強度に関する情報を取得する情報取得手段と、を有し、前記複数の緩和光は、それぞれの緩和光の強度または波長の時間変化の周期と、前記複数の緩和光の位相の少なくとも一方が互いに異なる光ポンピング磁力計が提供される。
本発明によれば、1つのプローブ光で空間的に異なる場所の磁気情報を分離して同時に測定することができる。
本発明の第1実施形態による光ポンピング磁力計の構成を示す概略図である。 本発明の第2実施形態による光ポンピング磁力計の構成を示す斜視図である。 本発明の第2実施形態による光ポンピング磁力計における偏光測定の例を示す概略図である。 本発明の第2実施形態による光ポンピング磁力計における緩和光の変調方法の例を示す概略図である。 本発明の第3実施形態による光ポンピング磁力計における偏光測定の例を示す概略図である。 本発明の第3実施形態による光ポンピング磁力計における緩和光変調の一例を示す図である。 本発明の第4実施形態による光ポンピング磁力計の構成を示す斜視図である。 本発明の第4実施形態による光ポンピング磁力計の構成を示す側面図である。 本発明の第5実施形態による光ポンピング磁力計の構成を示す斜視図である。 本発明の第5実施形態による光ポンピング磁力計における偏光測定の例を示す概略図である。 本発明の第6実施形態による光ポンピング磁力計の構成を示す概略図である。 本発明の第6実施形態による光ポンピング磁力計における光重畳部の構成を示す概略図である。
[第1実施形態]
本発明の第1実施形態による光ポンピング磁力計および磁気センシング方法について、図1を用いて説明する。
図1は、本実施形態による光ポンピング磁力計の構成を示す概略図である。
はじめに、本実施形態による光ポンピング磁力計の概略構成について、図1を用いて説明する。
本実施形態による光ポンピング磁力計100は、図1に示すように、セル101と、ポンプ光光学系102と、遅相子104と、緩和光光学系105と、光変調器107および108と、プローブ光光学系109と、偏光分離素子111と、フォトディテクタ112および113と、差分回路114と、復調器115および116とを有している。なお、本明細書では、光変調器107および108をも含めて緩和光光学系と呼ぶこともある。
ポンプ光光学系102は、アルカリ金属原子、例えばカリウム(K)原子が内包されたセル101の測定領域117aおよび117bを含む領域に、遅相子104を介してポンプ光103を入射するようになっている。
緩和光光学系105は、セル101の測定領域117aに、光変調器107を介して緩和光106aを入射するようになっている。また、緩和光光学系105は、セル101の測定領域117bに、光変調器108を介して緩和光106bを入射するようになっている。光変調器107および108は、それぞれ緩和光106aおよび106bを変調する変調手段である。
プローブ光光学系109は、セル101にプローブ光110を入射するようになっている。セル101の測定領域117aおよび117bはプローブ光110の光路上に位置しており、プローブ光110は測定領域117aおよび117bにおいてポンプ光103並びに緩和光106aおよび106bと交差する。
セル101の測定領域117aおよび117bを通過したプローブ光110は、偏光分離素子111を介してフォトディテクタ112および113に入射するようになっている。フォトディテクタ112および113には、差分回路114を介して、それぞれ復調器115および116が接続される。偏光分離素子111並びにフォトディテクタ112および113は、セル101を通過したプローブ光110の回転角を検出するための検出器或いは検出手段である。また、差分回路114並びに復調器115および116は、検出手段により検出した回転角から測定領域117aおよび117bにおける磁場強度に関する情報を算出する算出手段或いは当該情報を取得する情報取得手段である。また、復調器115および116は、変調手段において用いた変調周波数と同じ周波数で復調する復調手段でもある。
次に、本実施形態による光ポンピング磁力計の基本動作について、図1を用いて説明する。
ポンプ光光学系102から出射されるポンプ光103は、光ポンピングによりセル101内のアルカリ金属原子のスピンの方向を揃えてスピン偏極するためのものである。この目的のもと、ポンプ光103の波長は、アルカリ金属原子のD1遷移に共鳴する波長(以下、「D1遷移共鳴波長」という)に合わせ、その偏光は遅相子104によって円偏光に変換する。D1遷移共鳴波長の光の偏光が円偏光の場合、アルカリ金属原子による前記円偏光の吸収率はスピン偏極の向きに依存し、そのことにより光ポンピングが生じる。ポンプ光103は、単一の光源からの光を測定領域117aおよび117bを含む領域内の原子集団をスピン偏極するようにレンズ等によって拡大してもよい。また、ポンプ光103は、測定領域117aおよび117bの原子集団それぞれをスピン偏極するように、独立の光源から発せられた光をポンプ光として用いてもよい。
緩和光光学系105から出射される緩和光106aおよび106bは、D1遷移共鳴波長又はアルカリ金属原子のD2遷移に共鳴する波長(以下、「D2遷移共鳴波長」という)を持ち、実際にはこれらの遷移共鳴波長から1nmから10nm程度の範囲を含むことができる。そのため、緩和光106aおよび106bは、セル101内のスピン偏極したアルカリ金属原子を光吸収により励起することでスピン偏極を緩和(T緩和)させる作用、または位相緩和(T緩和)させる作用を有する。緩和光として機能しない光には2種類ある。1つはポンプ光と同じ向きに伝搬する同じ回転方向の円偏光の光、もう1つはポンプ光と逆向きに伝搬する逆回転の円偏光の光である。
これ以外の光は、緩和光としての機能を有する。具体的には、A)非偏光の光、B)直線偏光の光(偏光面は問わない)、C)ポンプ光と同じ向きに伝搬する逆回転の円偏光の光、D)ポンプ光と逆向きに伝搬する同じ回転方向の円偏光、E)ポンプ光と異なる向きに伝搬する任意の向きの円偏光の光である。これらの光はいずれも両方のスピン状態の電子を励起するので、ポンプ光によって作られたスピン偏極を緩和する働きを有する。上記A)からD)の光は新たなスピン偏極を生成せずスピン偏極を緩和させるため、本発明で緩和光として用いる場合に適する。一方、E)の光は新たなスピン偏極を生成してしまい、直接あるいは磁場下でのスピン偏極の回転の結果として、プローブ光の偏光面の回転が生じるので、緩和光として用いるには適していない。
このうち、緩和光106aおよび106bの偏光としては、B)の直線偏光を用いる場合が最も効率的にスピン偏極を緩和させることが出来るため望ましい。直線偏光の場合、スピン偏極の向きによらず光の吸収率は一定であり、そして励起したアルカリ金属原子は、自発脱励起、あるいはクエンチャガスとの衝突脱励起等によって2つの基底準位へほぼ均等に遷移するため、スピン偏極は緩和される。同様にスピン偏極を緩和するためには、A)の非偏光な光を用いる場合、出来る限り電場の振動方向が時間的にランダムで平均的に円偏光度が0である光を用意する必要がある。また、C)のポンプ光と同じ向きに伝搬する逆回転の円偏光の光、あるいはD)のポンプ光と逆向きに伝搬する同じ回転方向の円偏光を用いる場合、新たなスピン偏極を生成しないように、緩和光の強度を適切に調整する必要がある。前記いずれの場合においても、緩和光106aおよび106bは、それぞれ独立の光源から発せられた光を用いてもよいし、単一の光源からの光を分離して用いてもよい。また、十分な光強度を得られるなら、ポンプ光光学系102の光の一部を分離して用いても良い。
緩和光106aおよび106bは、光変調器107および108において、互いに異なる変調周波数で変調される。ここで、緩和光106aおよび106bの変調周波数は、互いに倍波関係のない周波数であることが好ましい。また、光変調器107および108により緩和光106aおよび106bに与える変調としては、例えば、緩和光106aおよび106bの光強度の変調、波長の変調が挙げられる。また、緩和光の106aと106bとの位相が異なるように変調をかけてもよい。すなわち、本実施形態において、複数の緩和光の強度の時間変化の周期または波長の時間変化の周期と、複数の緩和光の位相の少なくとも一方が互いに異なれば良い。
なお、緩和光光学系105は、緩和光106aおよび106bの波長をアルカリ金属原子のD1遷移共鳴波長あるいはD2遷移共鳴波長に固定するための光周波数安定化手段を有していてもよい。
本実施形態の一例としては、緩和光光学系105は、緩和光106aおよび106bの波長をカリウム原子のD1遷移共鳴波長(770.1nm±10nmの範囲)あるいは、カリウム原子のD2遷移共鳴波長(766.7nm±10nmの範囲)に固定するための光周波数安定化手段を有している。あるいは、セル内のアルカリ金属原子がルビジウムである場合は、緩和光106aおよび106bの波長はルビジウム原子のD1遷移共鳴波長(795.0nm±10nmの範囲)、あるいは、ルビジウム原子のD2遷移共鳴波長(780.2nm±10nmの範囲)に固定され、セル内のアルカリ金属原子がセシウムである場合は、緩和光106aおよび106bの波長はセシウム原子のD1遷移共鳴波長あるいは、セシウム原子のD2遷移共鳴波長に固定される。さらに、緩和光強度が十分にある場合は、遷移共鳴波長から多少離調をとっても良い。
セル101に入射したポンプ光103によって、セル101内のアルカリ金属原子はスピン偏極する。スピン偏極した原子のスピンは、被測定磁場に応じたトルクを受けて歳差運動を行う。そのスピンの運動は、次のブロッホ方程式(式(1))で記述される。式(1)において、ベクトルS(=(S,S,S)は、アルカリ金属原子のスピンを表している。γは、電子の磁気回転比を表している。qは、スローダウンファクターを表している。ベクトルBは、外部磁場を表している。Ropは、ポンプ光による光ポンピングレートを表している。sは、ポンプ光の円偏光度を表している。Rrel(t)は、緩和光による緩和レートを表している。Tは、縦緩和時間を表している。Tは、横緩和時間を表している。ベクトル
Figure 2017026405
は、単位方向ベクトルを表している。なお、ここでは、z方向からポンプ光を入射する状況を考えている。
Figure 2017026405
また、緩和レートは、次式(式(2))で表される。式(2)において、rは、古典電子半径を表している。cは、光速度を表している。fは、遷移強度を表している。Irelは、緩和光強度を表している。ΔΓは、吸収線線幅を表している。hは、プランク定数を表している。νは、緩和光の光周波数を表している。νは、アルカリ金属原子の共鳴周波数を表している。
Figure 2017026405
式(2)において、緩和光強度Irelまたは緩和光周波数νが時間tに対して変化することで、緩和レートRrel(t)を変動させることができる。その具体例として、光変調器107を通過した緩和光106aの緩和レートRrel(t)が、次式(式(3))で表される周波数ωの正弦波状で時間的に変化する場合を考える。
Figure 2017026405
式(3)で表される時間的に変動する緩和レートのもと、静磁場がz方向の磁場Bしか存在しない状況において式(1)の解として、緩和光106aと平行方向のスピンS を求める。緩和光の変調周波数ωが緩和レートRrelに比べて十分に大きいとき、展開した式の中で、Rrel/2qωについての2次以上の項を無視することができる。それにより、次の近似式(式(4))を得ることができる。なお、実際の測定では時間tが十分に大きいため、式(4)では測定に寄与しない減衰項は省き、定常項のみを記載した。
Figure 2017026405
この状況でy方向の角周波数ω磁束密度Bの微小磁場を計測する。ここで、Ω=γ×B/qという量を定義する。スピン偏極した原子のスピンは、被測定磁場に応じたトルクを受けて歳差運動を行う。このため、x方向のスピン成分S (t)を測定することで、磁場を測定することができる。S (t)は、Ωに関して摂動を用いて1次まで求め、そのうち減衰項を除くと、その定常項は、次式(式(5))で表される。
Figure 2017026405
ここで、Ω(=γ×B/q)は、ラーモア周波数を表している。式(5)の第2項は、スピンの応答が変調周波数ωにより変調されることを示している。
同様に、緩和光106bに変調周波数ωを印加した場合のスピンS (t)の応答は、式(5)のωをωに置き換えた形となる。
プローブ光光学系109から出射されるプローブ光110の偏光は、直線偏光である。測定領域117aを通過したプローブ光110の偏光面は、測定領域117aでのスピン偏極S に比例した常磁性ファラデー回転を受ける。次いで、測定領域117bを通過したプローブ光110の偏光面は、スピン偏極S (t)に比例した常磁性ファラデー回転を更に受ける。結果として、セル101を通過したプローブ光110は、測定領域117aおよび117bの2ヶ所からのファラデー回転を足し合わせた大きさの偏光面の回転を受けることになる。
その後にプローブ光110は、偏光分離素子111に入射し、その偏光面の角度に応じた強度によって反射光と透過光とに分割される。偏光分離素子111を透過した光はフォトディテクタ112で、偏光分離素子111により反射された光はフォトディテクタ113で、それぞれ検出され、検出信号として差分回路114に出力される。前記検出信号は差分回路114によってそれらの光強度の差分が測定され、測定領域117aおよび117bにおける磁場強度を反映した磁気信号を出力する。前記出力は、復調器115および116によってそれぞれ光変調器107および108の変調周波数に応じた周波数で復調される。
復調器115で角周波数ωによって復調した場合の復調器115からの出力V(t)は、次式(式(6))で表される。ここで、Vは、プローブ光の強度や吸収係数などをまとめたスピン偏極の大きさから回路の出力への比例定数を纏めたものである。
Figure 2017026405
2つの変調周波数ω、ωの差が測定磁場の周波数に対して十分に大きいとき、測定領域117aからの磁気信号と測定領域117bからの磁気信号とは、周波数領域では十分に分離される。このため、復調器115において光変調器107の変調周波数と同じ周波数で復調することで、測定領域117aからの磁気信号を測定することができる。また、復調器116において光変調器108の変調周波数と同じ周波数で復調することで、測定領域117bからの磁気信号を測定することができる。これによって、プローブ光110の光路上の空間的に異なる場所からの磁気信号を分離して測定することができる。
このように、本実施形態によれば、セルの異なる位置に入射する緩和光に対して異なる変調を行うので、これら異なる位置におけるそれぞれの磁気情報をプローブ光で伝達することができる。これにより、1つのプローブ光の光路上で空間的に異なる場所の磁気情報を分離して同時に測定することができる。
なお、セルは1つだけでなく複数であってもよい。セルが1つの場合、そのセルに複数の緩和光を入射する構成となる。また、セルが複数の場合、複数のセルのそれぞれにポンプ光および緩和光が入射する構成となる。また、本実施形態は、複数の緩和光は各々異なる変調周波数で変調される場合だけでなく、各々異なる位相で変調される場合も含む。複数の緩和光が各々異なる位相で変調される場合、変調周波数は同一であることが好ましいが、異なる位置における磁場情報を弁別できるのであれば、異なっていても良い。
以下、第2実施形態から第6実施形態、および変形実施形態については、第1実施形態と異なる事項について述べるが、共通する事項は記載を省略する。
[第2実施形態]
本発明の第2実施形態による光ポンピング磁力計および磁気センシング方法について、図2および図3を用いて説明する。図1に示す第1実施形態による光ポンピング磁力計と同様の構成要素については同一の名称で表し、説明を省略し或いは簡潔にする。同一の構成要素についての各実施形態における説明は、各実施形態に特有の構成に反しない範囲で、相互に適用可能である。
図2は、本実施形態による光ポンピング磁力計の構成を示す概略構成を示す斜視図である。
はじめに、本実施形態による光ポンピング磁力計の概略構成について、図2を用いて説明する。
本実施形態による光ポンピング磁力計200は、図2に示すように、恒温断熱槽201と、プローブ光光源202と、直線偏光素子203と2分の1波長板204と、ポンプ光光源205と、直線偏光素子206と、4分の1波長板207と、緩和光光源208および209と、直線偏光素子210および211と、光変調器212および213と、偏光測定系300とを有している。
恒温断熱槽201内には、アルカリ金属原子、例えばカリウム(K)原子が内包されたセルが配置される。恒温断熱槽201の壁面には、恒温断熱槽201内にプローブ光220、ポンプ光230および緩和光240および241を導入するための光学窓214、215、216、および217が設けられる。恒温断熱槽201の周囲には、バイアス磁場調整用コイル218が配置される。
プローブ光光源202は、直線偏光素子203、2分の1波長板204および光学窓214を介して、恒温断熱槽201中のセルに直線偏光成分を有するプローブ光220を入射するようになっている。セルを通過したプローブ光220は、光学窓215を介して偏光測定系300に入射するようになっている。これらプローブ光光学系は、プローブ光220が、図2に示す座標系においてx方向に沿って恒温断熱槽201中のセル内を伝搬するように、配置される。
ポンプ光光源205は、直線偏光素子206、4分の1波長板207および光学窓216を介して、恒温断熱槽201中のセルにポンプ光230を入射するようになっている。セルに入射した円偏光成分を有するポンプ光230は、プローブ光220並びに緩和光240および241と交差する。これらポンプ光光学系は、ポンプ光230が、図2に示す座標系において、−y方向に沿って恒温断熱槽201中のセル内を伝搬するように、配置される。セルを透過したポンプ光230は、恒温断熱槽201内で終端処理される。あるいは、光学窓を介して恒温断熱槽から出射させた後、光ターミネータ等で終端処理しても良い。
緩和光光源208は、直線偏光素子210、光変調器212および光学窓217を介して、恒温断熱槽201中のセルに緩和光240を入射するようになっている。緩和光光源209は、直線偏光素子211、光変調器213および光学窓217を介して、恒温断熱槽201中のセルに緩和光241を入射するようになっている。
これにより、恒温断熱槽201中のセルの互いに異なる位置に、直線偏光成分を有する緩和光240および241が入射する。恒温断熱槽201中のセルに入射した緩和光240および241は、セル内の互いに異なる位置においてプローブ光220およびポンプ光230と交差する。これら緩和光光学系は、緩和光240および241が、図2に示す座標系において、−z方向に沿ってセル内を伝搬するように、配置される。
セルを通過した緩和光240および241は、恒温断熱槽201内で終端処理される。あるいは、光学窓を介して恒温断熱槽から出射させた後、光ターミネータ等で終端処理しても良い。
偏光測定系300に入射したプローブ光220は、その偏光が測定される。図3は偏光測定系300の詳細図である。偏光分離素子301により、その偏光面の角度に応じた強度によって反射光と透過光とに分割される。そして、偏光分離素子301の透過光はフォトディテクタ302に入射し、偏光分離素子301の反射光はフォトディテクタ303に入射するようになっている。フォトディテクタ302および303には、差分回路304を介して、復調器305および306が接続される。
次に、本実施形態による光ポンピング磁力計200の各構成部分のそれぞれについて、より具体的に説明する。
〔1〕恒温断熱槽
恒温断熱槽201内には、ガラスセルが設置される。このセルは、ガラスなど、プローブ光やポンプ光を透過する透明な材料により構成された気密構造体である。セル内には、アルカリ金属原子が封入される。本明細書においてセルに利用可能なアルカリ金属原子としては、カリウム(K)原子、ルビジウム(Rb)原子やセシウム(Cs)原子が挙げられる。セル内に封入するアルカリ金属原子は、必ずしも1種類である必要はなく、カリウム原子、ルビジウム原子およびセシウム原子を含む群から選択される少なくとも1種類の原子を含むことができる。
また、セル内には、バッファガスと、クエンチャガスとが更に封入される。バッファガスとしては、ヘリウム(He)ガスが挙げられる。ヘリウムガスは、偏極アルカリ金属原子の拡散を抑える効果を有しており、セル壁との衝突によるスピン緩和を抑制して偏極率を高めるために有効である。また、クエンチャガスとしては、窒素(N)ガスが挙げられる。窒素ガスは、励起状態にあるカリウム原子からエネルギーを奪い蛍光を抑えるために働き、光ポンピングの効率を上げるために有効である。
カリウム原子は、自原子同士およびヘリウム原子との衝突によるスピン偏極破壊に対する散乱断面積が、アルカリ金属原子の中で最も小さい。なお、スピン偏極破壊に対する散乱断面積は、カリウム原子に次いでルビジウム原子が小さい。そのため、緩和時間が長く磁場信号応答の大きい磁気センサを構築するためのアルカリ金属原子としては、カリウム原子が好ましい。
一方、ルビジウム原子やセシウム原子はカリウム原子に比べて同一温度下での蒸気圧が高いため、カリウム原子に比べてより低い温度で同じ原子数密度を得ることができるという利点がある。このため、より低温で動作するセンサを構築する等の観点からは、ルビジウム原子やセシウム原子を用いることも有効である。
またセル中の緩和光240および241とプローブ光220がセル中で交差する測定領域間に、スピン偏極された原子が拡散およびスピン交換衝突を通じてそのスピン偏極が混合しないように、互いを物理的に分離することができる構造、例えば板等を設けてもよい。この構造はプローブ光が透過できる透明な構造、例えばガラス板等が好ましく、プローブ光が通る箇所以外はバッファガスが通るための穴が空いていてもよい。
測定時には、セル内のガス状態のアルカリ金属原子の密度を高めるために、セルを最大200℃程度の温度まで加熱する。この熱を外に逃がさないための役割を、恒温断熱槽201は担っている。恒温断熱槽201の、プローブ光220の光路上には光学窓214および215が設置され、ポンプ光230の光路上には光学窓216が設置され、緩和光240および241の光路上には光学窓217が設置され、それら光が恒温断熱槽201内を通過できる構造になっている。
恒温断熱槽201中のセルの加熱方式としては、例えば、加熱された不活性な気体を外部から恒温断熱槽201内に流し込みセルを加熱する方式が挙げられる。或いは、恒温断熱槽201内に配置したヒータに電流を流して加熱する方式でもよい。この場合には、ヒータ電流に起因する磁場が計測信号に影響することを回避するために、ポンプ光の変調周波数よりも倍以上高い周波数の電流でヒータを駆動することが有効である。また、恒温断熱槽201の外部から導入した光をセル或いはセルの周囲に配置した吸光部材で吸収させることにより加熱する光加熱方式であってもよい。
〔2〕バイアス磁場調整用コイル
バイアス磁場調整用コイル218は、図2に示すように、恒温断熱槽201の周囲に配置される。バイアス磁場調整用コイル218は、不図示の外部環境から侵入する磁場を低減するための磁気シールド内に設置される。
バイアス磁場調整用コイル218は、恒温断熱槽201中のセル周囲の磁場環境を操作するために用いられる。バイアス磁場調整用コイル218の具体的例としては、例えば、3軸ヘルムホルツコイルが挙げられる。具体的には、バイアス磁場調整用コイル218により、測定周波数とラーモア周波数とが一致し共鳴するようにポンプ光230と平行方向(図中y方向)にバイアス磁場を印加する。そして、プローブ光220およびポンプ光230に対して直交する方向(図中z方向)の磁場を測定する。
また、その他の方向に磁場を印加するためのバイアス磁場調整用コイル218(図中x方向およびz方向)は、残留磁場を打ち消し磁場が印加されていない環境にするために使用される。更に、不均一な磁場を補正するために、勾配補正コイル(シムコイル)を追加して設置してもよい。
〔3〕プローブ光光学系
プローブ光光学系は、プローブ光光源202と、直線偏光素子203と、2分の1波長板204とを含んで構成される。
プローブ光光源202から出射されるプローブ光220の波長は、信号応答が最大になるようアルカリ金属原子のD1遷移共鳴波長から数GHzないし数十GHz程度の離調をとる。信号応答を最大にする離調の値は、恒温断熱槽201中のセルのバッファガス圧および温度に依存する。この波長を安定的に保つために、プローブ光光源202は外部共振器等の安定化手段を有していてもよい。プローブ光220は、直線偏光素子203により直線偏光とされる。また、波長の選定基準として、シグナル−ノイズ比(SN比)を最大化する条件で離調を選定してもよい。いずれの基準を用いた場合も、最適な離調量はセル内のポンプ光強度に依存するため、計測中に定期的にキャリブレーションを行って、離調量の補正を行うことも効果的である。
〔4〕ポンプ光光学系
ポンプ光光学系は、図2に示すように、ポンプ光光源205と、直線偏光素子206と、4分の1波長板207とを含んで構成される。
ポンプ光光源205から出射されるポンプ光230の波長は、アルカリ金属原子のD1遷移共鳴波長に合わせる。ポンプ光光源205は、ポンプ光230の波長をアルカリ金属原子のD1遷移共鳴波長に固定するための光周波数安定化手段を有している。このポンプ光230は、直線偏光素子206により直線偏光に成形され、4分の1波長板207によって円偏光に変換される。この際、ポンプ光230は、右回り円偏光と左回り円偏光のどちらに変換してもよい。
円偏光となったポンプ光230は、恒温断熱槽201中のセルに入射し、セル中のポンプ光230の光路上のアルカリ金属原子群を偏極する。
またポンプ光光学系として、プローブ光220と緩和光240の交差領域およびプローブ光220と緩和光241の交差領域をそれぞれ別のポンプ光光源からのポンプ光で照射してスピン偏極する構成も利用可能である。
〔5〕緩和光光学系
緩和光光学系は、図2に示すように、緩和光光源208および209と、直線偏光素子210および211と、光変調器212および213とを含んで構成される。
緩和光光源208から出射される緩和光240および緩和光光源209から出射される緩和光241の波長は、アルカリ金属原子のD1遷移共鳴波長に合わせる必要がある。そのため、緩和光光源208および209は、緩和光240および241の波長をアルカリ金属原子のD1遷移共鳴波長、例えばカリウム原子のD1遷移共鳴波長であれば、770.1nmに固定するための光周波数安定化手段を有している。緩和光としては、1つの光源からの光をビームスプリッタ等で分割して用いても良い。また、緩和光240および241の波長はアルカリ金属原子のD2遷移共鳴波長、例えばカリウム原子のD2遷移共鳴波長766.7nmに固定してもよい。さらに、緩和光強度が十分にある場合は、遷移共鳴波長から多少離調をとっても良い。
緩和光240および241は、それぞれ直線偏光素子210および211において直線偏光へ成形された後、光変調器212および213において変調を受ける。この緩和光240および241の偏光は一定強度の緩和光で効率よくスピン緩和を促進するために直線偏光が好ましい。
緩和光240および241は、光学窓217を透過して恒温断熱槽201中のセルに入射し、恒温断熱槽201中のセル中の緩和光240および241の光路上のアルカリ金属原子群のスピン偏極を緩和させる。緩和光240および241は、セルの異なる箇所に同時に入射することができる。緩和光240および241とポンプ光230の位置関係は必ずしも直交している必要はなく、緩和光240および241がプローブ光220とポンプ光230の交差領域を透過すればよく、ポンプ光230に対して任意の角度で交差領域へ入射させることができる。また、4分の1波長板207を透過し円偏光となったポンプ光230をハーフミラー等によって重ね合わせて、緩和光240および241と同じz方向から入射させても良い。
恒温断熱槽201中のセルを透過した緩和光240および241は、恒温断熱槽201内で終端処理される。あるいは、光学窓を介して恒温断熱槽から出射させた後、終端処理しても良い。
なお、緩和光光源を3つ以上用いて3本以上の緩和光をセルの複数箇所に同時に入射しても良い。この場合、3か所以上の異なる場所の磁気情報を同時に測定することができる。
緩和光240および緩和光241は、光変調器212および213によってそのスピン緩和レートに変調を受ける。緩和光存在下のスピン偏極の縦緩和時間T ´はおおよそT ´〜1msである。緩和光存在下のスピン偏極の縦緩和時間T ´より長い時間、緩和光を照射しても、スピン偏極の変化は小さくなり非効率である。このため、変調周波数としては、100Hz以上の周波数が好ましく、1kHz以上の周波数が更に好ましい。
また、式(5)の第2項の係数、
Figure 2017026405
が示す通り、変調後の磁気信号に対する応答は、変調周波数ωに反比例する。このことは、あまりに高い周波数で変調するとスピン偏極が追随せず、信号応答が弱くなってしまうことを示している。
原子磁気センサの原理的なノイズとして、スピンプロジェクションノイズとフォトンショットノイズとが存在し、これらのノイズレベルは変調を掛けても変わらない。典型的な実験条件下(温度180℃、プローブ光波長770.1nm、プローブ光パワー0.1mW、プローブ光路長5cm、ポンプ光強度0.2mW/cm)では、フォトンショットノイズが支配的なノイズになる。プローブ光パワーよりフォトンショットノイズを計算すると、磁場ノイズに換算して10fTrms/Hz1/2となる変調周波数は、およそ5kHzとなる。このため、変調周波数は、5kHz以下であることが好ましい。
光変調器212および213における変調方式としては、例えば、緩和光強度変調、緩和光波長変調、位相変調、パルス幅(デューティー比)の変調が挙げられる。光変調器212および213の具体的な構成について、図4を用いて以下に説明する。
〔5.1〕緩和光強度変調
緩和光強度変調の一例としては、光チョッパーを用いた方法が挙げられる。光チョッパーは、周期的に光を遮蔽するものであり、光チョッパーを通過した光の光強度は、矩形波で変調されることになる。すなわち、図4(a)に示すように、緩和光401aを光チョッパー402に入射することで、光強度に矩形波状の変調のかかった緩和光401bを得ることができる。光チョッパー402の変調周波数は、光チョッパー402を制御するための信号発生器403により制御することができる。
緩和光強度変調の他の例としては、電気光学素子を用いた方法が挙げられる。電気光学素子は、電気光学効果によって結晶の複屈折率が変化することを用いて、光の位相・偏光状態を変化させるものである。図4(b)に示すように、緩和光404aを2分の1波長板405に入射し、緩和光404aの偏光を電気光学素子406の電場の印加方向に対して45°傾けておく。そして、2分の1波長板405を通した緩和光404aを電気光学素子406に通し、その偏光の位相差に変調を掛ける。これは、光の円偏光度を周期的に変化させることと同じである。円偏光度に変調がかかった光を直線偏光素子408に通すと、直線偏光素子408の透過軸方向と異なる方向の偏光成分は透過しないため、その円偏光度の変調を強度変調に変換することができる。すなわち、光強度に変調のかかった緩和光404bを得ることができる。電気光学素子406による変調周波数は、電気光学素子406に印加する電界を制御するための信号発生器407により制御することができる。
緩和光強度変調は、これらの方法の他、DFBレーザ、DBRレーザなどのレーザ光源の駆動電流そのものに変調を加える直接強度変調でもよい。また、電界吸収型光変調器などの電気的光変調器を用いることもできる。
〔5.2〕緩和光波長変調
緩和光の波長を変化させる手段の一例としては、音響光学素子を用いた方法が挙げられる。図4(c)に示すように、音響光学素子411に緩和光409aを入射させる際には、最適な偏光角が存在するため、2分の1波長板410によってその偏光角を調整しておくことが望ましい。RF発生器412により音響光学素子411に電気信号を印加すると、緩和光409aはいくつかのオーダーに回折され、その光周波数が変化する。音響光学素子411の入射前の緩和光409aの光周波数をωとし、RF発生器412が印加する電気信号の周波数をωRFとすると、音響光学素子411は緩和光409aをω+NωRFの光周波数を持つN次の回折光に空間的に分離する。ここでNは任意の整数を表している。これにより、波長変調した緩和光409bを得ることができる。一次回折光の光周波数変化量は、一般的に数十MHzから数百MHz程度である。変調信号の強度を大きくするためには、光周波数変化量が、その吸収線幅の半値半幅程度には大きい方がよく、ヘリウムバッファガスを1[amg]程度入れたガラスセルの場合は、光周波数変化量が数GHz程度であるのが好ましい。このために高次の回折光を選ぶ必要がある。ここでいう[amg]とは、0℃で測った気圧の大きさを表している。
緩和光波長変調は、この方法の他、DFBレーザ、DBRレーザなどのレーザ光源の電気的波長チューニングによって行うこともできる。
〔6〕偏光測定系
偏光測定系は、図3に示すように、偏光分離素子301と、フォトディテクタ302および303と、差分回路304と、復調器305および306とを含んで構成される。
偏光分離素子301に入射するプローブ光220は、偏光角θに応じて、透過光と反射光とに分割される。光パワーで比を取れば、透過光と反射光との強度比は、cosθ:sinθとなる。ここでは、偏光分離素子301への入射光がすべて透過してフォトディテクタ302に入射する偏光状態、すなわちθ=0°の場合、を基準にしている。このとき、θ=90°の光は全て反射され、フォトディテクタ303に入射する。
2つに分割された光のパワー強度をフォトディテクタ302および303によりそれぞれ測定し、その差を差分回路304から出力する。被測定磁場が存在しないときのプローブ光220の偏光をθ=45°に合わせておくと、被測定磁場が存在しないときにはフォトディテクタ302および303に同じ光パワーの光が入射することになり、差分回路304からの出力は0になる。
一方、被測定磁場が存在するときには、その大きさに応じた偏光面の回転が生じ、フォトディテクタ302および303には異なる光パワーの光が入射することになり、差分回路304からは0ではないこれらの差分が出力される。すなわち、このときの差分回路304からの出力は、プローブ光の偏光面の回転角に比例した信号であり、それぞれの測定における磁場強度を反映したものである。
差分回路304の出力信号は、復調器305および306に入力され復調される。復調器としては、例えば、ロックインアンプが挙げられる。このとき、復調器305において、光変調器212の変調周波数と同じ周波数で復調することにより、プローブ光220と緩和光240との交差領域の磁気信号を取り出すことができる。また、復調器306においては、光変調器213の変調周波数と同じ周波数で復調することにより、プローブ光220と緩和光241との交差領域の磁気信号を取り出すことができる。
なお、ここでは2つの復調器305および306を用いて異なる領域の磁気信号を取得する例を示したが、異なる領域の磁気信号を取得する方法は、これに限定されるものではない。例えば、復調器を複数台用意する代わりに、差分回路304の出力をA/Dコンバータにデジタル信号として取り込み、その後、デジタル信号処理を行うようにしてもよい。取り込んだデジタル信号について、周波数領域でそれぞれの変調周波数に合わせた所定の周波数幅のデータをフィルタリングすることで、それぞれの交差領域における磁気信号を分離することができる。
また、交差領域間の磁気信号の分離精度を高めるために、センサと信号源の間にアルミニウム等導電体の薄板を配置することが可能である。例えば、緩和光240および241それぞれの変調周波数がf[Hz],f[Hz](f<f)とすると、各測定領域で測定可能な周波数帯域を変調周波数差の半分(fc−fb)/2[Hz]以下に制限しておく必要がある。例えば、緩和光240で測定したい信号の周波数、被測定信号周波数がf[Hz]、緩和光241で測定したい信号の周波数、被測定信号周波数がf[Hz]とする。その場合、差分回路304からの出力の周波数スペクトルはf―f[Hz],f+f[Hz],fc―f[Hz],fc+f[Hz]の4つのピークをもつスペクトルとなる。この差分回路304からの出力を(f+f)/2[Hz]の周波数で分離して復調することで、被測定周波数f[Hz]、f[Hz]の信号を分離して取り出すことができる。しかし、ここで被測定信号周波数fが変調周波数差の半分、(f―f)/2[Hz]より大きいとすると、(f+f)/2>fc―fとなる。そのため、この差分回路304からの出力を復調器305および306で復調した場合、周波数f[Hz]の信号に加えて、fc―f―f[Hz]という周波数の信号が出力されてしまう。これは緩和光241との交差領域からの信号がノイズとして復調器305および306からの出力に入ってしまい、緩和光240との交差領域からの被測定信号と混同されてしまうことを意味している。この混入を防ぐために、アルミニウム等導電体の薄板を恒温断熱槽201の周囲に配置し周波数が(f―f)/2[Hz]以上の磁気信号を遮蔽することで、高周波の磁気信号が遮蔽され、交差領域間の磁気信号の分離精度が高まる。時間変化する磁場に対する導電体による遮蔽効果は、高周波ほど高く、ローパスフィルター特性である。導電体板の厚さの目安としては、カットオフ周波数での交流磁場に対する表皮深さ程度とすることができる。変調周波数の周波数差が1kHzの場合、500Hz以上の磁気信号を1/e(〜0.37)に低減するためにはRF遮蔽効果を考えると、3mm厚のアルミニウム板を配置することで、500Hz以上の信号を減衰させることができる。この場合、100Hz以下の生体磁気信号に対してはほとんど減衰を及ぼさない構成とできる。
このように、本実施形態によれば、セルの異なる位置に入射する緩和光の変調周波数を変えることができるので、異なる位置におけるそれぞれの磁気情報をプローブ光で伝達することができる。これにより、1つのプローブ光で空間的に異なる場所の磁気情報を分離して同時に測定することができる。
[第3実施形態]
本発明の第3実施形態による光ポンピング磁力計および磁気センシング方法について説明する。本実施形態による光ポンピング磁力計の構成と作用は、恒温断熱層、バイアス磁場コイル、プローブ光学系およびポンプ光学系において、図2に示す第2実施形態による光ポンピング磁力計と同様である。また、緩和光光学系の構成は、第2実施形態と同様であるが、光変調器212、213で与える変調の与え方が異なっている。偏光測定系500の詳細な構成は、図5のように、偏光分離素子501、フォトディテクタ502および503、並びに差分回路504から成り立っている。
本実施形態による光ポンピング磁力計では、それぞれの緩和光240および241に加える変調周波数は同じであり、変調の位相が互いに異なっている。第2実施形態と同様の実施箇所についての説明は省略或いは簡潔にし、この実施形態に固有の部分を中心に以下に説明する。
本実施形態では、光変調器212および213によって緩和光240および241に与える変調の周波数fmodは同じであり、変調の位相が異なっている。変調周波数fmodは、変調周波数fmodとアルカリ金属原子のスピン偏極の緩和時間Tとの関係が、T≦1/(2πfmod)=Tmodとなるように選択される。一例としては、変調周波数fmodが160Hzのとき、緩和時間Tが1msとなるアルカリ金属原子が内包されたセルが挙げられる。第2実施形態に記載したように、典型的には緩和光存在下のスピン偏極の縦緩和時間T ´は、1ms程度であり、この縦緩和が支配的である。この縦緩和時間T ´は緩和光強度を変化させることによって有る程度調整可能である。
位相の異なる強度変調の様子を、図6(a)に示す。測定時間t=0のとき、位相φ=0と定義する。緩和光240は、位相φが0からπの間の光強度が大きく、位相φがπから2πの間は、光強度が0となっている。また、緩和光241は、位相φが0からπの間の光強度が0であり、位相φがπから2πの間は、光強度が大きくなっている。
このように、同じ変調周波数で異なる位相で変調された緩和光240および241が、プローブ光220の光路上の異なる領域に照射される。この結果、それぞれの緩和光240および241とプローブ光220との交差する領域でのポンプ光方向のスピンの成分Sは、図6(b)に示される時間波形で表される。すなわち、緩和光240が照射される領域と緩和光241が照射される領域とでは、互いに相補的な周期的な変調を受ける。ただし、緩和時間の影響で、それぞれのスピンSの大きさの時間波形は、緩和光240および241の矩形波に対して有限の立ち上がり、立下り時間で制限されたなまった波形となる。
このスピンSが、さらに測定対象としての磁場に応じて回転し、プローブ光方向のスピンの成分Sを生じるので、プローブ光220で読み出される信号も、変調を受けた信号を重ね合わせたものとなっている。プローブ光220から、偏光分離素子501、フォトディテクタ502および503並びに差分回路504を経て得られる出力がプローブ光220の偏光面の回転角に比例した信号であることは、第2実施形態の場合と同じである。
差分回路504からの出力に対しては、以下のような信号処理を行うことにより、各測定領域での磁場信号を分離することができる。
まず、差分回路504からの出力は、時系列の信号として不図示のA/Dコンバータでデジタル化する。基準とする変調周波数における位相を参照して、このデジタルデータを2つの時系列データに振り分ける。それぞれの時系列データについて、データの欠落点は、前後のデータから補間を行う。サンプリング定理を考慮すると、信号帯域が変調周波数の1/2よりも低周波域に制限されていれば、前記補間により、この信号を再現できることが保証される。実際には、位相条件を考慮した、連続した複数点のサンプリングデータを用いることができるため、よりスムーズな補間による正確な信号の再現が可能である。
第2実施形態では、1つのプローブ光220の光路上の異なる場所からの信号という空間情報を信号の変調周波数に保持させていたが、本実施形態では、信号が変調される位相に保持させている。このような変調の方法としては、第2実施形態の説明に記載した、緩和光波長の変調も有効である。
なお、本実施形態では、1つのプローブ光に対して、2つの緩和光を用いる例を説明したが、緩和光の数を3つ、4つと増やすことも可能である。緩和光を3つ用いて3か所の測定の多重化を行う場合には、位相について、0から2π/3、2π/3から4π/3、4π/3から2πの3つの範囲に分割することで測定の多重化を行うことができる。また、緩和光を4つ用いて4か所の測定の多重化を行う場合には、位相をπ/2ごとに分割することで測定の多重化を行うことができる。
このように、本実施形態によれば、セルの異なる位置に入射する緩和光を、同じ変調周波数、異なる位相で変調するので、これら異なる位置におけるそれぞれの磁気情報をプローブ光で伝達することができる。これにより、1つのプローブ光で空間的に異なる場所の磁気信号を分離して同時に測定することができる。
[第4実施形態]
本発明の第4実施形態による光ポンピング磁力計および磁気センシング方法について、図7および図8を用いて説明する。
図7は、本実施形態による光ポンピング磁力計の概略構成を示す斜視図である。図8は、図7の座標系におけるx−z平面に平行な面に沿った概略射影図である。
はじめに、本実施形態による光ポンピング磁力計の概略構成について、図7および図8を用いて説明する。
本実施形態による光ポンピング磁力計700は、図7に示すように、セルを内包した恒温断熱槽701および702と、ポンプ光光源703および704と、ミラー707および708と、緩和光光源711および712と、光変調器715および716と、ミラー709および710とを有している。また、光ポンピング磁力計700は、図7および図8に示すように、プローブ光光学系801と、ミラー803と、および偏光測定系804とを有している。図中、恒温断熱槽701および702に隣接して描かれた球体は、測定対象物720を想定したものである。
本実施形態による光ポンピング磁力計700の光学系は、プローブ光学系801の光源から発せられたプローブ光802およびポンプ光光源703および704から発せられたポンプ光705および706および緩和光光源711および712からから発せられた緩和光713、714が、それぞれ以下に示す光路を伝搬するように、配置される。
図8に示すように、プローブ光学系801の光源から発せられたプローブ光802は、恒温断熱槽701内に入射し、恒温断熱槽701内に配置された不図示の第1のアルカリ金属原子が封入された第1のセルをx方向に沿って伝搬した後、恒温断熱槽701から出射される。恒温断熱槽701から出射したプローブ光802は、ミラー803によって90度屈曲され、恒温断熱槽702内に入射し恒温断熱槽702内に配置された不図示の第2のアルカリ金属原子が封入された第2のセルを−z方向に沿って伝搬した後、恒温断熱槽702から出射する。恒温断熱槽702から出射したプローブ光802は、偏光測定系804に入射する。
図7に示すように、ポンプ光光源703から発せられたポンプ光705は、ミラー707を介して、恒温断熱槽701内に入射し、前記第1のセルをy方向に沿って伝搬する。ポンプ光光源704から発せられたポンプ光706は、ミラー708を介して、恒温断熱槽702内に入射し、前記第2のセルをy方向に沿って伝搬する。ポンプ光705、706はその円偏光成分によってセルのアルカリ金属原子群を偏極する。また、緩和光光源711から発せられた緩和光713は、光変調器715およびミラー709を介して、恒温断熱槽701内に入射し、前記第1のセル内を−y方向に沿って伝搬する。そして、前記第1のセル内において、プローブ光802、ポンプ光705と緩和光713とが交差する。緩和光光源712から発せられた緩和光714は、光変調器716およびミラー710を介して、恒温断熱槽702内に入射し、前記第2のセル内を−y方向に沿って伝搬する。そして、前記第2のセル内において、プローブ光802、ポンプ光706と緩和光714とが交差する。
次に、本実施形態による光ポンピング磁力計の構成部分について、これまでに説明した実施形態とは異なる点を中心に、より具体的に説明する。以下において特に説明しない部分については、これまでに説明した実施形態の場合と同様である。
〔1〕恒温断熱槽
恒温断熱槽701および702には、アルカリ金属原子が封入されたセル(図示せず)がそれぞれ内包される。恒温断熱槽701および702は、加熱手段を有しており、180℃程度の温度でセルを加熱できるようになっている。また、恒温断熱槽701および702は光学窓等の、光を内部のセルへ伝搬し、また光をセルから取り出せる手段を有している。さらに、恒温断熱槽701および702の周りには、それぞれ、第2実施形態において説明したような、不図示のバイアス磁場調整用コイルおよび勾配補正コイルが配置される。
恒温断熱槽701および702は、これらが内包するセルの信号応答特性を揃えるために、2つのセル内のバッファガス圧をできるだけ同じ圧力、好ましくはこれらの圧力差を0.1[amg]以内とする。また、恒温断熱槽701および702内の温度も、できるだけ同じ温度、好ましくはこれらの温度差を0.1℃以内とする。
図7および図8には、セルを内包した2つの恒温断熱槽701および702を有する場合を示しているが、セルを内包した恒温断熱槽の数は2つに限定されるものではなく、必要に応じて更に増やすこともできる。また、個々のセルは、必ずしも別々の恒温断熱槽内に配置する必要はなく、複数のセルを共通の大きな恒温断熱槽内に配置するようにしてもよい。
また、複数の恒温断熱槽701および702の配置は、測定対象物720の形状等に応じて適宜変更することができる。例えば、図7および図8の例では、恒温断熱槽701内を通過するプローブ光802の光路と、恒温断熱槽702内を通過するプローブ光802の光路とが直交するように恒温断熱槽701および702を配置しているが、これら光路は必ずしも直交する必要はない。
〔2〕ポンプ光光学系
ポンプ光光学系は、ポンプ光光源703および704と、ミラー707および708とを含んで構成される。
ポンプ光光源703および704は、その出射光の波長をアルカリ金属原子のD1遷移共鳴波長に固定するための光周波数安定化手段およびその出射光の偏光を円偏光にするための円偏光子を含む。ポンプ光705および706は、その円偏光成分によってセルのアルカリ金属原子群を偏極する。
〔3〕緩和光光学系
緩和光光学系は、緩和光光源711および712のほか、光学変調器715および716と、ミラー709および710とを含んで構成される。
緩和光光源711および712は、その出射光の波長をアルカリ金属原子のD1遷移共鳴波長あるいはD2遷移共鳴波長に固定するための光周波数安定化手段およびその出射光の偏光を直線偏光にするための直線偏光素子を含む。
緩和光光源711から出射される緩和光713および緩和光光源712から出射される緩和光714は、光変調器715および光変調器716において、それぞれ互いに異なる変調周波数において変調される。変調方法には、例えば第2実施形態において説明した方法を適用することができる。或いは、緩和光713および714は、光変調器715および光変調器716において、第3実施形態において説明した方法により、同じ変調周波数、異なる位相で変調される。
また、ポンプ光705と緩和光713およびポンプ光706と緩和光714はそれぞれ互いに平行にセル中へ入射する必要はない。緩和光713はプローブ光802およびポンプ光705の交差領域へ照射されれば良く、緩和光714はプローブ光802およびポンプ光706の交差領域へ照射されれば良い。
〔4〕プローブ光光学系
プローブ光光学系は、プローブ光光学系801と、ミラー803とを含んで構成される。
プローブ光光学系801から出射されるプローブ光802の偏光は、直線偏光である。プローブ光802は、恒温断熱槽701内に入り、その内部のセルに入射する。セルに入射したプローブ光802は、セル中のアルカリ金属原子群により、被測定磁場に比例したファラデー回転を受ける。
恒温断熱槽701から出射したプローブ光802は、ミラー803により、光学窓を透過して恒温断熱槽702内へ入り、その内部のセルに入射するように誘導される。セルに入射したプローブ光802は、セル中のアルカリ金属原子群より、被測定磁場に比例したファラデー回転を更に受ける。
なお、恒温断熱槽701と恒温断熱槽702との間の光導波手段は、プローブ光802の偏光を保ちつつ光学窓から恒温断熱槽702内へプローブ光802を入射するように誘導できるものであればよく、必ずしもミラー803である必要はない。例えば、ミラー803を用いる代わりに、プリズム等による屈折を用いて誘導し、或いは、偏波面保存光ファイバーなどの光導波路を用いて誘導するようにしてもよい。
〔5〕偏光測定系
恒温断熱槽702内のセルを透過したプローブ光802は、偏光測定系804に入射する。偏光測定系804は、例えば、第2又は第3実施形態で説明した偏光測定系と同様の構成とすることができる。これにより、プローブ光802とポンプ光705と緩和光713との交差領域の磁気信号と、プローブ光802とポンプ光706と緩和光714との交差領域の磁気信号とを取り出すことができる。
このように、本実施形態によれば、セルの異なる位置に入射するポンプ光に対して異なる変調を行うので、これら異なる位置におけるそれぞれの磁気情報をプローブ光で伝達することができる。これにより、1つのプローブ光で空間的に異なる場所の磁気情報を分離して同時に測定することができる。また、複数のセルを用いて異なる位置の磁気情報を測定するので、測定位置の設定の自由度を向上することができる。
[第5実施形態]
本発明の第5実施形態による光ポンピング磁力計および磁気センシング方法について、図9および図10を用いて説明する。本実施形態では、複数種のアルカリ金属原子の組み合わせを用いる実施形態が示されるが、例示的にカリウム原子およびルビジウム原子を用いる実施形態を示す。また、前記複数種のアルカリ金属原子の組み合わせは、カリウム原子とセシウム原子との組みあわせ、ルビジウム原子とセシウム原子との組み合わせであっても良い。
図9は、本実施形態による光ポンピング磁力計の概略構成を示す図である。
本実施形態による光ポンピング磁力計900は、図9に示すように、恒温断熱槽901と、ポンプ光光源902と、プローブ光光源911および912と、偏光測定系917および918と、緩和光光学系921および922と、光変調器925および926と、緩和光拡大系927および928とを有している。
恒温断熱槽901内には、カリウム原子およびルビジウム原子が内包されたセルが配置さる。また、恒温断熱槽901の周囲には、不図示のバイアス磁場調整用コイルが配置される。
プローブ光光源911は、恒温断熱槽901中のセルに直線偏光成分を有するプローブ光913を入射するようになっている。セルを通過したプローブ光913は偏光測定系918に入射し、その変更が測定されるようになっている。
プローブ光光源912は、恒温断熱槽901中のセルに直線偏光成分を有するプローブ光914を入射するようになっている。セルを通過したプローブ光914は、偏光測定系917に入射し、その変更が測定される。
これらプローブ光光学系は、プローブ光913および914が、図9に示す座標系においてx方向に沿って恒温断熱槽901中のセル内を伝搬するように、配置される。
ポンプ光光源902は、恒温断熱槽901中のセルに円偏光成分を有するポンプ光903を図9に示す座標系において、y方向に沿って恒温断熱槽901中のセル内を伝搬するように配置される。
緩和光光源921は、光変調器925および緩和光拡大系927を介して、恒温断熱槽901中のセルに直線偏光成分を持つ緩和光923を入射するようになっている。セルに入射した緩和光923は、プローブ光913および914並びにポンプ光903と交差する。
緩和光光源922は、光変調器926および緩和光拡大系928を介して、恒温断熱槽901中のセルに緩和光924を入射するようになっている。セルに入射した緩和光924は、プローブ光913および914並びにポンプ光903と交差する。
これら緩和光光学系は、緩和光923および924が、図9に示す座標系において、−z方向に沿ってセル内を伝搬するように、配置される。
次に、本実施形態による光ポンピング磁力計の構成部分について、これまでに説明した実施形態とは異なる点を中心に、より具体的に説明する。以下において特に説明しない部分については、これまでに説明した実施形態の場合と同様である。
〔1〕恒温断熱槽901
恒温断熱槽901内には、ガラスセルが設置される。このガラスセル内には、ポンプ光の進行方向のアルカリ金属原子のスピン偏極を空間的に均一にするために、カリウム原子とルビジウム原子とが封入される。その他の利用可能なアルカリ金属原子の組み合わせとしては、カリウム原子とセシウム原子との組みあわせ、ルビジウム原子とセシウム原子との組み合わせが挙げられる。ただし、磁気回転比の大きさが同じになる、すなわち核スピンIが同じ同位体の組み合わせは、I=3/2である39Kと87Rbの組み合わせだけである。また、自原子同士およびヘリウム原子との衝突によるスピン偏極破壊に対する散乱断面積は、アルカリ金属原子の中でカリウム原子が最も小さく、ルビジウム原子がその次に小さい。このため、アルカリ金属原子の組み合わせとしては、カリウム原子とルビジウム原子との組み合わせが最も好ましい。
また、ルビジウム原子はカリウム原子と比べて、同じ温度での蒸気圧が高いため、セルのルビジウム原子の封入量をカリウム原子よりも少なくすることが好ましい。また、セル内には、カリウム原子とルビジウム原子の他に、バッファガスおよびクエンチャガスとして、それぞれヘリウムガスおよび窒素ガスが封入される。
〔2〕ポンプ光光学系
ポンプ光光源902は、ポンプ光903の波長をルビジウム原子のD1遷移共鳴波長(795.0nm)に固定するための光周波数安定化手段を有している。このポンプ光903は、円偏光成分を含むように1/4波長板等で変換しておく。円偏光のポンプ光903は、光学窓を通して恒温断熱槽901中のセルに入射され、セル中のルビジウム原子をスピン偏極する。
スピン偏極したルビジウム原子がカリウム原子に衝突すると、スピン交換相互作用が働き、カリウム原子にそのスピン偏極が受け渡される。このため、ルビジウム原子を偏極することによってカリウム原子も偏極することができる。ルビジウム原子のD1遷移共鳴波長と、カリウム原子のD1遷移共鳴波長(770.1nm)およびD2遷移共鳴波長(766.7nm)との波長差は、バッファガス存在下の吸収線幅(〜10GHz)に比べても十分に大きい。したがって、ポンプ光902は、カリウム原子によってほとんど吸収されない。
また、ルビジウム原子は偏極すると円偏光であるポンプ光903を吸収しないため、ルビジウム原子群の偏極率が高くなるとポンプ光903の吸収率が小さくなる。この結果、ポンプ光903の強度が十分に大きければ、プローブ光913との交差領域のルビジウム原子をスピン偏極しても減衰はせず、プローブ光914との交差領域のルビジウム原子を十分にスピン偏極することができる。
そして、ルビジウム原子の原子数密度をカリウム原子の原子数密度より小さくすることで、カリウム原子群のスピン偏極率をルビジウム原子群のスピン偏極率よりも小さくできる。すなわち、ルビジウム原子から受けるスピン交換衝突によるカリウム原子のスピン偏極率は、仮にルビジウム原子群が完全にスピン偏極していたとしても、ルビジウム原子群のスピン偏極率よりも小さくなる。このため、カリウム原子のスピン偏極率を、磁場感度が最大になる偏極率付近(〜0.5)に下げることができる。
セルを透過したポンプ光903は、恒温断熱槽901内で終端処理される。あるいは、光学窓を介して恒温断熱槽から出射させた後、終端処理されても良い。
〔3〕緩和光光学系
緩和光光源921は、緩和光923の波長をカリウム原子のD1遷移共鳴波長(770.1nm)あるいはD2遷移共鳴波長(766.7nm)に固定するための光周波数安定化手段を有している。緩和光光源922は、緩和光924の波長をカリウム原子のD1遷移共鳴波長(770.1nm)あるいはD2遷移共鳴波長(766.7nm)に固定するための光周波数安定化手段を有している。これら緩和光923および924は、同じ光源からの光を2つに分割して用いてもよい。さらに、緩和光強度が十分にある場合は、遷移共鳴波長から多少離調をとっても良い。
これら緩和光923および924は、光変調器925および926において変調を受けた後、緩和光拡大系927および928によってプローブ光913および914に同時に当たるようにビーム成形される。この緩和光拡大系927は、プローブ光913および914とポンプ光903の交差領域に緩和光923を照射できればよく、ビームスプリッタ等で2つに分割してプローブ光913および914に照射する構成であってもよい。また、緩和光拡大系928も、ビームスプリッタ等で2つに分割してプローブ光913および914に照射する構成であってもよい。
この緩和光923および924の偏光は円偏光でも楕円偏光でも無偏光でも構わないが、一定の光強度の緩和光で効率よくカリウム原子のスピン緩和を促進するためには直線偏光が好ましい。また、緩和光922および923の波長はルビジウム原子のD1遷移共鳴波長(795.0nm)あるいはD2遷移共鳴波長(780.2nm)に固定してもよい。しかしこの場合、緩和光922および923によるルビジウム原子のスピン偏極の緩和は、スピン交換相互作用を介してカリウム原子のスピン偏極を緩和させるため効率が良くない。そのため、一定の光強度の緩和光で効率よくカリウム原子のスピン緩和を促進するためにはカリウム原子のD1遷移共鳴波長あるいはD2遷移共鳴波長に合わせるのが好ましい。
恒温断熱槽901中のセルを透過した緩和光923および924は、恒温断熱槽901内で終端処理される。あるいは、光学窓を介して恒温断熱槽901から出射させた後、終端処理しても良い。なお、緩和光光学系は、2つに限定されるものではなく3つ以上用いても良い。
〔4〕プローブ光光学系
プローブ光光源911から出射されるプローブ光913の波長およびプローブ光光源912から出射されるプローブ光914の波長は、信号応答が最大になるようカリウム原子のD1遷移共鳴から数GHz程度の離調をとる。信号応答を最大にする離調の値は、恒温断熱槽901中のセルのバッファガス圧および温度に依存する。この波長を安定的に保つために、プローブ光光源911および912は、外部共振器等の安定化手段を有していてもよい。プローブ光913および914は、直線偏光素子等によってそれぞれ直線偏光に変換しておく。カリウム原子のD1遷移共鳴波長から数GHz程度の離調をとったプローブ光913および914の波長は、ルビジウム原子のD1遷移共鳴波長およびD2遷移共鳴波長とも十分離れている。そのため、プローブ光913および914は、ルビジウム原子による吸収やファラデー相互作用を受けたりせずに、被測定磁場によって回転したカリウム原子のスピン偏極のうちx成分の大きさに比例して、その偏光面がファラデー回転する。
なお、ポンプ光903の波長とプローブ光913および914との波長の組み合わせは、上述のものに限定されるものではない。例えば、ポンプ光903の波長をカリウム原子のD1遷移共鳴波長に合わせ、プローブ光913および914の波長をルビジウム原子のD1遷移共鳴波長から信号応答が最大になるよう数GHz程度の離調をとった波長とする組み合わせでもよい。この場合、緩和光923および924の波長はルビジウム原子のD1遷移共鳴波長あるいはルビジウム原子のD2遷移共鳴波長に合わせ、スピン交換相互作用を介さず直接ルビジウム原子のスピン偏極を緩和するのが効率的で好ましい。
〔5〕偏光測定系
プローブ光913の偏光を測定する偏光測定系918は、図10に示すように、偏光分離素子1001と、フォトディテクタ1003および1004と、差分回路1007と、復調器1009および1010とにより構成される。また、プローブ光914の偏光を測定する偏光測定系917は、偏光分離素子1002と、フォトディテクタ1005および1006と、差分回路1008と、復調器1011および1012とにより構成される。
復調器1009により、光変調器925における変調周波数と同じ周波数で復調することで、プローブ光913と緩和光923との交差領域の磁気信号を取り出すことができる。また、復調器1010により、光変調器926における変調周波数と同じ周波数で復調することで、プローブ光913と緩和光924との交差領域の磁気信号を取り出すことができる。また、復調器1011により、光変調器925における変調周波数と同じ周波数で復調することで、プローブ光914と緩和光923との交差領域の磁気信号を取り出すことができる。また、復調器1012により、光変調器926における変調周波数と同じ周波数で復調することで、プローブ光914と緩和光924との交差領域の磁気信号を取り出すことができる。したがって、本実施形態による光ポンピング磁力計900では、図9に示す座標系において、z方向成分の被測定磁場Bのx−y平面おける4点の磁場分布を測定することができる。
本実施形態では、ポンプ光の波長としてルビジウム原子のD1遷移共鳴波長用い、プローブ光の波長としてカリウム原子のD1線機共鳴波長を用いるハイブリッドセルの例を説明した。このようなハイブリッドセルでは、ポンプ光の波長としてカリウム原子のD1遷移共鳴波長を用い、プローブ光の波長としてルビジウム原子のD1遷移共鳴波長を用いることも可能である。セルに関する説明の中で記載したように、この場合には、使用温度でカリウム原子の密度がルビジウム原子の密度よりも高くなるような封入量のセルを用いると、高い感度のセンサを構成する上で効果的である。
このように、本実施形態によれば、セルの異なる位置に入射する緩和光に対して異なる変調を行うので、これら異なる位置におけるそれぞれの磁気情報をプローブ光で伝達することができる。これにより、1つのプローブ光で空間的に異なる場所の磁気情報を分離して同時に測定することができる。さらに、複数のプローブ光と複数の緩和光とを用いることで、これらプローブ光とポンプ光との各交差部において、磁気情報を分離して同時に測定することができる。
[第6実施形態]
本発明の第6実施形態による光ポンピング磁力計および磁気センシング方法について、図11および図12を用いて説明する。本実施形態でも、前記第5実施形態と同様に、複数種のアルカリ金属原子の組み合わせを用いる実施形態が示され、例示的にカリウム原子およびルビジウム原子を用いる実施形態を示す。
図11は、本実施形態による光ポンピング磁力計の概略構成を示す図である。図12は光重畳部の概略構成を示す図である。
本実施形態による光ポンピング磁力計1100は、図11に示すように、恒温断熱槽1101と、ポンプ光光学系1102と、プローブ光光学系1104と、緩和光光学系1106と、光変調器1108および1109と、偏光測定系1111と、バイアス磁場調整用コイル1112と、光重畳部1200と光分離部1201を有している。恒温断熱槽1101内には、カリウム原子およびルビジウム原子が内包されたセルが配置される。また、恒温断熱槽1101の周囲には、バイアス磁場調整用コイル1112が配置される。
ポンプ光光学系1102は、ポンプ光1103の波長をルビジウム原子のD1遷移共鳴波長(795.0nm)に固定するための光周波数安定化手段を有している。ポンプ光光学系1102から射出されたポンプ光1103は、円偏光成分を有しており、光重畳部1200において、ポンプ光1103がプローブ光1105と重畳するように配置される。プローブ光1105と重なり合ったポンプ光1103は、図11に示す座標系において、x方向に沿って恒温断熱槽1101中のセル内を伝搬する。
プローブ光光学系1104から出射されるプローブ光1105の波長は、信号応答が最大になるようカリウム原子のD1遷移共鳴(770.1nm)から数GHz程度の離調をとる。光重畳部1200においてプローブ光1105は直線偏光成分を有しており、ポンプ光1103と重畳するように配置される。ポンプ光1103と重なり合ったプローブ光1105は、図11に示す座標系において、x方向に沿って恒温断熱槽1101中のセル内を伝搬する。
緩和光光学系1106から射出された直線偏光成分を持つ緩和光1107aは光変調器1108を介して、また緩和光光学系1106から射出された直線偏光成分を持つ緩和光1107bは光変調器1109を介して、それぞれ恒温断熱槽1101中のセルに入射する。セルに入射した緩和光1107aは測定領域1110aにおいてプローブ光1105およびポンプ光1103と交差し、緩和光1107bは測定領域1110bにおいてプローブ光1105およびポンプ光1103と交差する。緩和光光学系1106は、緩和光1107aおよび1107bが、図9に示す座標系において、z方向に沿ってセル内を伝搬するように、配置される。
次に、本実施形態による光ポンピング磁力計の構成部分について、これまでに説明した実施形態とは異なる点を中心に、より具体的に説明する。以下において特に説明しない部分については、これまでに説明した実施形態の場合と同様である。
〔1〕光重畳部および光分離部
光重畳部1200は、図12(a)に示すように、4分の1波長板1202と、ダイクロイックミラー(波長弁別手段)1203とを含んで構成することができる。
ダイクロイックミラー1203はポンプ光1103の波長の光を反射し、プローブ光1105の波長を透過するよう設計されたものを用いることができる。ダイクロイックミラー等の波長弁別手段は、2つの光の波長差が大きいほど精度よくそれらの光を弁別できる。ポンプ光とプローブ光の波長差25nmは2つの光を弁別するのに十分な波長差である。
光重畳部1200に入射するポンプ光1103の偏光は直線偏光である。ポンプ光1103は4分の1波長板1202により円偏光成分を持つように変換されダイクロイックミラー1203において反射される。
光重畳部1200に入射するプローブ光1105の偏光は直線偏光である。プローブ光1105はダイクロイックミラー1203を透過し、ポンプ光1103と重なり合って光重畳部1200から出射されるように調整される。
また光重畳部1200として、図12(b)に示すように偏光ビームスプリッタ1206と位相子1207を用いた構成とすることもできる。ここで、位相子1207はポンプ光1103の波長では4分の1波長板として機能し、プローブ光1105の波長では2分の1波長板として機能するように設計されたものを用いることができる。
ポンプ光1103は偏光ビームスプリッタ1206で反射されるように、2分の1波長板1204によってその偏光が調整される。また、プローブ光1105は偏光ビームスプリッタ1206を透過するように、2分の1波長板1205によってその偏光が調整される。偏光ビームスプリッタ1206によって反射されたポンプ光1103は円偏光成分を有するように、また、偏光ビームスプリッタ1206を透過したプローブ光1105は直線偏光のままであるように、それぞれ位相子1207によってその偏光が調整される。
光分離部1201においても、ポンプ光1103の波長の光を反射しプローブ光1105の波長の光を透過するように設計されたダイクロイックミラーを用いることができる。円偏光のポンプ光1103が偏光測定系1111に入射すると、磁場に対する応答信号は増加しないが光のショットノイズは増加し、そのSN比は低下する。SN比の低下を避けるために、光分離部1201によりポンプ光1103とプローブ光1105とを分離する。
光分離部1201としてダイクロイックミラーを用いる場合、ポンプ光1103を反射し、プローブ光1105のみ透過して偏光測定系1111へ導くように、ダイクロイックミラーを配置する。反射されたポンプ光1103は光ターミネータ1113により吸収される。あるいは、ダイクロイックミラーにおいてポンプ光1103を180度反射し再度セルに入射することで偏極率を稼ぐ構成であってもよい。ポンプ光1103を180度反射する配置では、ポンプ光1103の強度が強い場合は、ポンプ光学系1102へポンプ光1103が戻らないようにアイソレータなどを用いる必要がある。また、特定の波長帯の光のみ透過させるシャープカットフィルターを用いることもできる。その場合、シャープカットフィルターは、ポンプ光1103を吸収し、プローブ光1105のみ透過するような波長特性を保つ範囲で任意の角度で配置することができ、ポンプ光1103の終端処理は必要ない。
アルカリ金属原子としてカリウム原子のみあるいはルビジウム原子のみを封入したセルを用いる場合、ポンプ光の波長はD1遷移共鳴、プローブ光の波長はD1遷移共鳴から数GHz離調をとった程度の波長という波長差の小さい組み合わせになる。そのため、ダイクロイックミラー等波長弁別手段において2つの光を分離することは難しい。また、プローブ光の波長として,D2遷移共鳴から数GHz離調をとった程度の波長をとる構成も考えられるが、D2遷移共鳴はD1遷移共鳴に比べて光吸収が強いため、磁場に対する応答が弱くなる欠点がある。また、カリウム原子のD1遷移共鳴とD2遷移共鳴の波長差は約3nm、ルビジウム原子のD1遷移共鳴とD2遷移共鳴の波長差は約15nmと本実施形態に比べて波長差が小さく,ダイクロイックミラー等波長弁別手段において2つの光を分離することが比較的難しくなる。また光重畳部としては,ハーフミラーを用いた構成でも代替できるが、ポンプ光1103とプローブ光1105を重畳させる際にそれぞれの光の光強度が半減してしまう。
このため、プローブ光とポンプ光を重畳して用いる本実施形態においては、カリウム原子およびルビジウム原子が内包されたセルを用い、光重畳部にダイクロイックミラー等の特定の波長の光を弁別することのできる手段を用いる構成が望ましい。
〔2〕バイアス磁場調整用コイル
バイアス磁場調整用コイル1112は、不図示の外部環境から侵入する磁場を低減するための磁気シールド内に設置される。
バイアス磁場調整用コイル1112は、恒温断熱槽1101中のセル周囲の磁場環境を操作するために用いられる。バイアス磁場調整用コイル1112の具体的例としては、例えば、3軸ヘルムホルツコイルが挙げられる。バイアス磁場調整用コイル1112を用いて、測定周波数とラーモア周波数とが一致し共鳴するようにポンプ光1103と平行方向(図中x方向)にバイアス磁場を印加する。そして、プローブ光1105およびポンプ光1103に対して直交する方向(図中y方向およびz方向)の磁場を測定することができる。
本実施形態では、ポンプ光の波長として、ルビジウム原子のD1遷移共鳴波長用い、プローブ光の波長として、カリウム原子のD1線機共鳴波長を用いる例で説明してきた。このようなハイブリッドセルでは、ポンプ光の波長をカリウム原子のD1遷移共鳴波長を用い、プローブ光の波長をルビジウム原子のD1遷移共鳴波長を用いることも可能である。
このように、本実施形態によれば、セルの異なる位置に入射する緩和光に対して異なる変調を行うので、これら異なる位置におけるそれぞれの磁気情報をプローブ光で伝達することができる。これにより、1つのプローブ光で空間的に異なる場所の磁気情報を分離して同時に測定することができる。また、複数のプローブ光と複数の緩和光とを用いることで、これらプローブ光とポンプ光との各交差部において、磁気情報を分離して同時に測定することができる。
[変形実施形態]
本発明は、上記実施形態に限らず種々の変形が可能である。
上記実施形態は、本発明を適用しうる幾つかの態様を例示したものに過ぎず、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜修正や変形を行うことを妨げるものではない。
100 光ポンピング磁力計
101 セル
102 ポンプ光光学系
103 ポンプ光
104 遅相子
105 緩和光光学系
106a,106b 緩和光
107,108 光変調器
109 プローブ光光学系
110 プローブ光
111 偏光分離素子
112,113 フォトディテクタ
114 差分回路
115,116 復調器
117a,117b 測定領域

Claims (20)

  1. アルカリ金属原子を内包する少なくとも1つのセルと、
    円偏光成分を有するポンプ光を前記セルに入射させるポンプ光光学系と、
    直線偏光成分を有するプローブ光を、前記セル内において前記ポンプ光と交差するように前記セルに入射させるプローブ光光学系と、
    前記アルカリ金属原子の電子のスピン偏極を緩和させる複数の緩和光を、前記ポンプ光と前記プローブ光とが交差する領域内の互いに異なる位置に入射させる緩和光光学系と、
    前記ポンプ光および前記複数の緩和光と交差した前記プローブ光を検出して検出信号を出力する検出手段と、
    前記検出信号から、前記互いに異なる位置の各々の磁場強度に関する情報を取得する情報取得手段と、を有し、
    前記複数の緩和光の強度または波長の時間変化の周期と、前記複数の緩和光の位相の少なくとも一方が互いに異なる、光ポンピング磁力計。
  2. 前記光ポンピング磁力計は、前記複数の緩和光の強度または波長の時間変化の周期と、前記複数の緩和光の位相の少なくともいずれか一方が互いに異なるように変調する変調手段を有することを特徴とする請求項1に記載の光ポンピング磁力計。
  3. 前記変調手段は、前記複数の緩和光の、それぞれの緩和光の強度または波長のいずれか1つを変調することを特徴とする請求項2に記載の光ポンピング磁力計。
  4. 前記互いに異なる位置に入射する前記複数の緩和光それぞれが、異なる変調周波数を印加することで変調されることを特徴とする請求項2または3に光ポンピング磁力計。
  5. 前記変調手段の変調周波数は、100Hz以上であることを特徴とする請求項4に記載の光ポンピング磁力計。
  6. 前記変調手段の変調周波数は、1kHz以上であることを特徴とする請求項5に記載の光ポンピング磁力計。
  7. 前記情報取得手段は、前記検出信号を、前記変調手段において印加した変調周波数と同じ周波数で復調する復調手段を有することを特徴とする請求項2乃至6のいずれか1項に記載の光ポンピング磁力計。
  8. 前記互いに異なる位置に入射する前記複数の緩和光それぞれが、異なる位相で変調されることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の光ポンピング磁力計。
  9. 前記互いに異なる位置に入射する前記複数の緩和光それぞれが、異なるパルス幅で変調されることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の光ポンピング磁力計。
  10. 前記ポンプ光と前記プローブ光とが交差する領域内に入射する前記複数の緩和光それぞれが、前記アルカリ金属原子のD1遷移に共鳴する波長または前記アルカリ金属原子のD2遷移に共鳴する波長をもつことを特徴とする請求項1乃至9のいずれか1項に記載の光ポンピング磁力計。
  11. 前記ポンプ光と前記プローブ光とが交差する領域内に入射する前記複数の緩和光それぞれが、前記アルカリ金属原子のD1遷移に共鳴する波長をもつことを特徴とする請求項10に記載の光ポンピング磁力計。
  12. 前記アルカリ金属原子は、カリウム原子、ルビジウム原子、およびセシウム原子を含む群から選択される少なくとも1種類であることを特徴とする請求項1乃至11のいずれか1項に記載の光ポンピング磁力計。
  13. 前記アルカリ金属原子は、カリウム原子およびルビジウム原子であることを特徴とする請求項12に記載の光ポンピング磁力計。
  14. 前記セルに内包されるルビジウム原子の原子数密度が、該セルに内包されるカリウム原子の原子数密度よりも小さいことを特徴とする請求項13に記載の光ポンピング磁力計。
  15. 前記プローブ光光学系は、前記複数の緩和光とそれぞれ異なる位置で交差するように、前記セルに複数の前記プローブ光を入射することを特徴とする請求項1乃至14のいずれか1項に記載の光ポンピング磁力計。
  16. 前記ポンプ光光学系は、前記セルに前記プローブ光と同一の方向から前記ポンプ光を入射することを特徴とする請求項1乃至14のいずれか1項に記載の光ポンピング磁力計。
  17. 前記緩和光光学系は、前記セルに前記ポンプ光と同一の方向から前記複数の緩和光を入射することを特徴とする請求項1乃至14のいずれか1項に記載の光ポンピング磁力計。
  18. 複数の前記セルを有し、前記緩和光光学系は、複数の前記セルのそれぞれに、前記複数の緩和光の少なくとも1つの前記緩和光を入射し、前記プローブ光は、複数の前記セルのそれぞれにおいて、前記少なくとも1つの緩和光と交差することを特徴とする請求項1乃至17のいずれか1項に記載の光ポンピング磁力計。
  19. 円偏光成分を有するポンプ光を、アルカリ金属原子を内包する少なくとも1つのセルに入射し、直線偏光成分を有するプローブ光を前記セル内において前記ポンプ光と交差するように入射し、前記ポンプ光と前記プローブ光とが交差する領域内の互いに異なる位置に、強度または波長の時間変化の周期と、位相の少なくとも一方が互いに異なる複数の緩和光をそれぞれ入射し、
    前記セルを通過した前記プローブ光を検出して検出信号を出力し、
    前記検出信号から、前記異なる位置の各々における磁場強度に関する情報を算出することを特徴とする磁気センシング方法。
  20. 前記プローブ光と交差する前記複数の緩和光それぞれが、前記アルカリ金属原子のD1遷移に共鳴する波長または前記アルカリ金属原子のD2遷移に共鳴する波長をもつことを特徴とする請求項19に記載の磁気センシング方法。
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