JP2017026375A - 蛍光体集積ナノ粒子を用いたfishまたは免疫染色スライドの封入方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】染色された組織切片上に残留した水系溶媒を油系溶媒(例えばキシレン)に置換する処理(溶媒置換処理)、および溶媒が置換された組織切片を油系封入剤で封入する処理(封入処理)をこの順に行う。好ましくは、前記溶媒置換処理の際に、実質的に水を含有しない、脱水作用を有する親水性の有機溶媒(例えば脱水エタノール)と前記油系溶媒との混合溶媒からなる脱水処理液で組織切片を脱水する処理(脱水処理)を行う。さらに好ましくは、前記脱水処理の前に、前記核染色処理で用いた水系染色試薬が溶出しない溶媒(例えばPBS)と、前記脱水処理で用いられる脱水処理液に配合される有機溶媒との混合溶媒からなる洗浄処理液で洗浄する処理(洗浄処理)を行う。
【選択図】なし
Description
上記のようなFISH法の実施形態は、例えば、特許文献1(特開2013−046620号公報)を参照することができる。
したがって、本発明はもう一つの側面において、DAPIのような水系染色試薬を用いて核染色を行った場合に、作製される組織切片スライドにおいてその水系染色試薬が溶出する問題を解消することを課題とする。
[1]
FISH法または免疫染色法に基づき、蛍光体集積ナノ粒子で目的生体物質を蛍光標識する処理(FISH/免疫染色処理)、水系染色試薬で核を染色する処理(核染色処理)、染色された組織切片上に残留した水系溶媒を油系溶媒に置換する処理(溶媒置換処理)、および溶媒が置換された組織切片を油系封入剤で封入する処理(封入処理)をこの順に行うことを特徴とする、FISH法または免疫染色法による染色スライドの封入方法。
[2]
前記蛍光体集積ナノ粒子が親水性である、項1に記載の染色スライドの封入方法。
[3]
前記蛍光体集積ナノ粒子が低分子有機化合物からなる蛍光色素を集積させたものである、項1または2に記載の染色スライドの封入方法。
[4]
前記蛍光体集積ナノ粒子がメラミン樹脂を母体とするものである、項1〜3のいずれか一項に記載の染色スライドの封入方法。
[5]
前記油系溶媒がキシレンである、項1〜4のいずれか一項に記載の染色スライドの封入方法。
[6]
前記溶媒置換処理の際に、脱水作用を有する水と親和性のある有機溶媒と前記油系溶媒とを含有する混合溶媒からなる脱水処理液で組織切片を脱水する処理(脱水処理)を行う、項1〜5のいずれか一項に記載の染色スライドの封入方法。
[7]
前記脱水処理液が水を実質的に含有しないものである、項6に記載の染色スライドの封入方法。
[8]
前記脱水処理液が、脱水エタノールとキシレンとの混合溶媒である、項7に記載の染色スライドの封入方法。
[9]
前記脱水処理の前に、前記核染色処理で用いた水系染色試薬が溶出しない溶媒と、前記脱水処理で用いられる脱水処理液に配合される有機溶媒とを含有する混合溶媒からなる洗浄処理液で洗浄する処理(洗浄処理)を行う、項6〜8のいずれか一項に記載の染色スライドの封入方法。
[10]
前記核染色工程で用いた水系染色試薬がDAPIであり、前記水系染色試薬が溶出しない溶媒がPBSである、項9に記載の染色スライドの封入方法。
FISH法に関する一実施形態の標本前処理工程には、一般的に、脱パラフィン処理、FISH用前処理、酵素処理などが含まれる。
免疫染色法に関する2実施形態の標本前処理工程には、一般的に、脱パラフィン処理、抗原賦活化処理、洗浄処理などが含まれる。
本発明では、目的とする遺伝子またはタンパク質を蛍光標識するための物質として、蛍光体集積ナノ粒子を使用する。蛍光体集積ナノ粒子は、蛍光色素や半導体ナノ粒子(量子ドット)のような蛍光体を複数個、母体となる物質に内包したり表面に付着させたりすることで集積化した、ナノサイズの(直径が1μm以下の)粒子状の蛍光体である。FISHまたは免疫染色においてこのような蛍光体集積ナノ粒子を用いることは、蛍光体を単独で(蛍光色素を一分子で、または半導体ナノ粒子を一粒子で)用いる場合と比較して、目的とする生体分子を標識した蛍光標識体1つあたりが発する蛍光の強度を増強し、細胞の自家蛍光等のノイズや他の色素との識別性を高めることができること、また励起光の照射による褪色を抑制することができることから好ましい。
本発明の第1実施形態で行われるFISH処理は、染色工程において、FISH法に基づいて目的とする遺伝子を蛍光体集積ナノ粒子で標識する処理である。
蛍光体とプローブを連結した蛍光標識プローブを用意し、その蛍光標識プローブで目的遺伝子を直接的に蛍光標識し染色する方法(直接法);
プローブとビオチンを連結したビオチン修飾プローブ、および蛍光体とアビジンないしストレプトアビジンを連結したアビジン修飾蛍光体を用意し、目的遺伝子にビオチン修飾プローブを反応させた後、さらにアビジン修飾蛍光体を反応させて、アビジン−ビオチン反応を利用して目的遺伝子を間接的に蛍光標識し染色する方法(間接法)。
主に本発明の第1実施形態で行われる核染色処理は、染色工程において、水系染色試薬(水溶液の形態で用いられる核染色能を有する蛍光色素)で核染色を行う処理である。核染色処理をすることにより、細胞数をカウントし、あわせて核内(染色体上)にある目的遺伝子を蛍光標識した蛍光体集積ナノ粒子の輝点数をカウントすることができるようになる。
本発明の第2実施形態で行われる免疫染色処理は、染色工程において、免疫染色法に基づいて目的とするタンパク質を蛍光体集積ナノ粒子で標識する処理である。
蛍光体と1次抗体を連結した蛍光標識1次抗体を用意し、その蛍光標識1次抗体で目的タンパク質を直接的に蛍光標識し染色する方法(1次抗体法);
1次抗体、および蛍光標識体と2次抗体を連結した蛍光標識2次抗体を用意し、目的タンパク質に1次抗体を反応させた後、その1次抗体に蛍光標識2次抗体を反応させることで、目的タンパク質を間接的に蛍光標識し染色する方法(2次抗体法);
1次抗体とビオチンを連結したビオチン修飾1次抗体、および蛍光体とアビジンないしストレプトアビジンを連結したアビジン修飾蛍光体を用意し、目的タンパク質にビオチン修飾1次抗体を反応させた後、さらにアビジン修飾蛍光体を反応させて、アビジン−ビオチン反応を利用して目的タンパク質を間接的に蛍光標識し染色する方法(アビジン−ビオチン併用1次抗体法);
1次抗体、2次抗体とビオチンを連結したビオチン修飾2次抗体、および蛍光体とアビジンないしストレプトアビジンを連結したアビジン修飾蛍光体を用意し、目的タンパク質に1次抗体を反応させ、次いでビオチン修飾2次抗体を反応させた後、さらにアビジン修飾蛍光体を反応させて、アビジン−ビオチン反応を利用して目的タンパク質を間接的に蛍光標識し染色する方法(アビジン−ビオチン併用2次抗体法)。
本発明の第1実施形態、第2実施形態の両方で行われる溶媒置換処理は、標本後処理工程において、染色処理された組織切片上に残留した水系溶媒を油系溶媒に置換する処理である。たとえば、染色後の組織切片をPBSに浸漬して付着している余剰の染色液等を洗い流したとき、引き上げた組織切片はPBSで覆われているが、そのようなPBSの水分を除き、油系溶媒に置き換え、それで組織切片を覆うようにする処理である。
本発明の第1実施形態、第2実施形態の両方で行われる封入処理は、標本後処理工程において、溶媒置換処理により水系溶媒が油系溶媒に置換された組織切片を、油系封入剤を用いて封入する処理である。一般的な封入剤には水系封入剤と油系封入剤(非水溶性封入剤)があるが、本発明では後者の油系封入剤を用いる。油系封入剤は、標本との屈折率差が小さいため標本を透明にできること、形態染色の色味や発色がよいこと、永久標本を作製しやすいこと、より脱水した環境にできるため標本作製時の水の混入を防止しやすいこと、標本作製時の乾燥を均一にできること、などの利点を有する。
油系封入剤は、水と自由混和しない有機溶媒を含有する溶媒(封入溶媒)と、その溶媒に溶解する樹脂との混合物である。油系封入剤は市販されているものでも自家で調製したものでもよい。市販の油系封入剤としては、例えばDPX(シグマアルドリッチ社製。主成分:ポリスチレンポリマー約21.8%、キシレン約69.7%)、エンテランニュー(登録商標、メルク社製。主成分:アクリル樹脂、キシレン約60%)、パラマウン卜N(登録商標、ファルマ社製。主成分:アクリル樹脂、脂肪族炭化水素)を挙げることができる。市販の油系封入剤には、製品をそのままの状態で使用できるものと、製品(原液)を所定の溶媒で希釈してから使用するものがある。また、カナダバルサムなどのような天然樹脂や、ポリスチレンやポリメタクリル酸メチルなどのような合成樹脂を封入溶媒に溶かすことにより、自家で油系封入剤を調製することができる。
本発明の第1実施形態、第2実施形態の両方で行われる脱水処理は、標本後処理工程において、溶媒置換処理の際に必要に応じて行われる、染色された組織切片に含まれる水分を極力除去しておくための処理である。このような脱水処理は、従来は一般的に脱水エタノールと水の混合液を用いて行われていたが、本発明においては以下に述べるような、特定の有機溶媒と油系溶媒とを含有する混合溶媒からなる脱水処理液を用いて行われる。
本発明における脱水処理液は、脱水作用を有する水と親和性の高い有機溶媒と油系溶媒とを含有する混合溶媒である。このような条件を満たす脱水処理液は、以下に述べるような適切な有機溶媒と油系溶媒とを適切な割合で混合することによって調製することができる。
主に本発明の第1実施形態で行われる洗浄処理は、標本後処理工程において、脱水処理の前に必要に応じて行われる処理であって、特定の水系混合溶媒からなる洗浄処理液を用いて、染色された組織切片を洗浄する処理である。DAPIのような水系染色試薬を用いて核染色処理を行った場合は、このような洗浄処理を行うことが好ましく、あらかじめ余剰の水系染色試薬を洗い流すことにより、それが脱水処理で用いられる脱水処理液や溶媒置換処理で用いられる油系溶媒中に溶出させない。
本発明の洗浄処理のために用いられる洗浄処理液は、以下に述べるような2種類の溶媒を適切な割合で混合することによって調製することができる。
したがって、洗浄処理液としては、例えばPBS(第1溶媒)と脱水エタノール(第2溶媒)の混合溶液を用いることができる。
(1)ビオチン修飾BACプローブの作製
CellBiochemBiophys.2006;45(1)59の記載の方法に従って、ニックトランスレーション法により、ビオチン修飾されたBACプローブを調製した。すなわち、GSP社から購入したHER2−DNAクローン(約150kbp)1μg(5μL)に対して、ニックトランスレーション用のキット(製品名「GSP−ニックトランスレーションキット」K−015、GSP社製)をプロトコールに従って用い、当該HER2−DNAクローン(核酸分子)のdTTPをビオチン修飾dUTPで置換した。具体的な作製手順は以下の通りである。
・10×NickBuffer(Tris−HCl[pH7.2]、MgSO4、DTT)・・・2.5μL、
・BSA(Nuclease−free BSA)・・・1.5μL
・dNTP mix(dATP、dCTP、dCTP)・・・5μL
・dTTP・・・1.5μL
・Biotin−16−dUTP(製品番号1093070、Roche社製、50nmol/50μL)・・・0.2μL
・純水(Nuclease free water)・・・3μL
・上記HER2−DNAクローン約150kbp)1μgの水溶液・・・5μL
・DNA PоlymeraseI(Tris−HCl[pH7.5]、EDTA、DTT
、glycerоl)・・・1μL
・DNaseI・・・5μL
"SulfoRhodamine101"(シグマアルドリッチ社製)20.3mgを水22mLに加えて溶解した。その後、この溶液に乳化重合用乳化剤"エマルゲン"(登録商標)430(ポリオキシエチレンオレイルエーテル、花王株式会社製)の5%水溶液を2mL加えた。この溶液をホットスターラー上で撹拌しながら70℃まで昇温させた後、この溶液にメラミン樹脂原料"ニカラックMX−035"(日本カーバイド工業社製)を0.81g加えた。さらに、この溶液に界面活性剤としてドデシルベンゼンスルホン酸(関東化学株式会社製)の10%水溶液を1000μL加え、70℃で50分間加熱撹拌した。その後、90℃に昇温して20分間加熱撹拌した。
上述のようにして作製した、ビオチン標識されたBACプローブ25μL(濃度1μg/250μL)と、ストレプトアビジン標識された蛍光色素集積メラミン樹脂粒子の溶液とを混合して、室温で30分間反応させ、それぞれが有するビオチンとアビジンを結合させることにより、HER−2検出用のDNAプローブを得た。
上述のように得られた蛍光標識DNAプローブをハイブリダイゼーション緩衝液(25%脱イオン化したホルムアミド、2×SSC、200ng/μLサケ精子DNA、5×デンハルト溶液、50mMのリン酸ナトリウム、pH7.0、1mMEDTA)に終濃度1〜5ng/μLとなるように希釈した。S300サイズのスピンカラム(Amersham Biosciences,Piscataway,NJ)により遊離のリガンド(遊離しているストレプトアビジン、ビオチン、およびdATPの基質)を除去した。この蛍光標識DNAプローブを使用時まで−20℃で冷凍保存した。
FISHによりHER2遺伝子のコピー数を測定した。FISHは以下に示すように、脱パラフィン処理、FISH用前処理、酵素処理(ここまで“標本前処理工程”)、プローブの準備、DNA変性処理、ハイブリダイゼーション処理、ポストハイブリダイゼーション洗浄処理(ここまで“染色工程”)、DAPIによる核染色処理、溶媒置換処理および封入処理(ここまで“検体後処理工程”)をこの順で行うことで実施した。溶媒置換処理および封入処理の実施形態により、実施例1〜3および比較例1とした。
(1)標本前処理工程
(1−1)脱パラフィン処理
HER2陽性染色対照標本の検体スライド(Roche社 HER2 Dual ISH 3-in-1 コントロールスライド 商品コード:109530)を、以下の(i)〜(iv)の手順で脱パラフィン処理を行った。(i)脱パラフィン剤「ヘモディー(Hemo−De)」(株式会社ファルマ、主成分:d−リモネン、酸化防止剤)に常温で10分間浸漬する。(ii)検体スライドを新しい「Hemo−De」に常温10分間浸漬する。同じ操作を3回繰り返す。(iii)検体スライドを100%エタノールで、常温で5分間浸漬し、2回洗浄し、脱水処理を行う。(iv)検体スライドを風乾または45〜50℃のスライドウォーマー上で乾燥させる。
DNAプローブの到達性を向上させるために、脱パラフィン処理が行われた検体スライドに対し、以下の(i)〜(vi)の手順で細胞膜および核膜のタンパク質の除去処理を行った。(i)検体スライドを0.2mоl/L HClで室温、20分間処理する。(ii)検体スライドを精製水に3分間浸漬する。(iii)検体スライドを洗浄緩衝液(2xSSC:standard sailine citrate)に3分間浸漬する。(vi)検体スライドを80℃の前処理溶液(1N NaSCN)に30分間浸漬する。(v)検体スライドを精製水に1分間浸漬する。(vi)検体スライドを洗浄緩衝液(2xSSC)に5分間浸漬し、これと同じ操作を2回繰り返す。
タンパク質除去処理が行われた検体スライドに対して、以下の(i)〜(iv)の手順で酵素処理を行った。(i)前処理した検体スライドを取り出し、ペーパータオルにスライドグラスの下端をつけて余分な洗浄緩衝液を取り除く。(ii)検体スライドを37℃に加温したプロテアーゼ溶液に10〜60分間浸漬する。この浸漬処理は、細胞膜及び核膜のタンパク質、特にコラーゲンの分解をするために、25mg プロテアーゼ(2500−3000Units/mg)[ペプシン]/1M NaCl[pH2.0]50mLで37℃、60分間)で処理した。(iii)検体スライドを洗浄緩衝液に5分間浸漬する。この操作を2回繰り返す。(iv)検体スライドを風乾した。
(2−1)プローブの準備
冷凍保存しておいた蛍光標識DNAプローブ溶液を室温に戻し、正確な容量を採液可能なピペッティング操作ができる程度まで溶液の粘度を十分にさげて、ボルテックスミキサーで溶液を混和した。
検体スライド上のDNAを変性させるために、固定処理を行った検体スライドに対し、以下の(i)〜(viii)の手順でDNA変性処理を行った。(i)検体スライドの作成前に水で湿らせたペーパータオルを底に敷いた湿潤箱(気密性の容器であり、その側面をペーパータオルでテーピングしたもの)を37℃インキュベータ内に載置して予備加熱する。(ii)変性溶液(70%ホルムアミド/SSC[150mM NaCl、15mMクエン酸ナトリウム])のpHが常温でpH7.0〜8.0であることを確かめる。変性溶液をコプリンジャーに入れ、変性溶液が72℃±1℃になるまで温浴槽で加温する(72±1℃の温浴槽に少なくとも30分間置く)。(iii)ハイブリダイゼーション領域がどの部分か分かるように、検体スライドの裏側に領域を囲むようにダイアモンドペン等でマークする。(iv)検体スライドを72±1℃の変性溶液の入ったコプリンジャー中に浸漬し、検体スライドのDNAを変性する。(v)ピンセットを使って、検体スライドを変性溶液から取り出し、すぐに常温の70%エタノール中に入れる。ホルムアミドを除くためにスライドを振盪する。検体スライドを1分間浸漬する。(vi)検体スライドを70%エタノールから取り出し、85%エタノール中に入れ、ホルムアミドを除くためにスライドを振盪する。検体を1分間浸漬する。100%エタノールで同じ操作を2回繰り返す。(vii)ペーパータオルに検体スライドグラスの下端をつけてエタノールを取り除き、ペーパータオルでスライドグラスの裏側を拭く。(viii)検体スライドをドライヤーで風乾した。
変性処理が行われた検体スライドに対し、以下の(i)〜(iii)の手順で、蛍光標識DNAプローブのハイブリダイゼーション処理を行った。(i)検体スライドの組織切片上に蛍光標識DNAプローブ溶液を10μL添加し、すぐに22mm×22mmのカバーグラスをその上に被せ、気泡が入らないようにしながら、蛍光標識DNAプローブ溶液を均一に広げる。(ii)ペーパーボンドでカバーグラスをシールする。(iii)前もって加温した湿潤箱に検体スライドを入れて蓋をし、37℃のインキュベータで14〜18時間ハイブリダイゼーションを行う。
ハイブリダイゼーション処理が行われた検体スライドに対し、以下の(i)〜(vi)の手順でポストハイブリダイゼーション洗浄処理を行った。(i)ポストハイブリダイゼーション洗浄緩衝液(2×SSC/0.3%NP−40)をコプリンジャーに入れる。72℃±1℃の温浴槽に少なくとも30分間置き、ポストハイブリダイゼーション洗浄緩衝液が72℃±1℃になるまで温浴槽で予備加熱をする(72℃±1℃の温浴槽に少なくとも30分間置く)。(ii)ポストハイブリダイゼーション洗浄緩衝液を入れたコプリンジャーをもう一つ用意し、常温に維持する。(iii)ピンセットでペーパーボンドのシールを取り除く。(iv)検体スライドをポストハイブリダイゼーション洗浄緩衝液の中に入れる。カバーグラスが自然に溶液中で剥がれるのを待つ。(v)溶液から検体スライドを取り出し、余分な溶液を取り去り、72±1℃に加温したポストハイブリダイゼーション洗浄緩衝液に2分間浸した。(6)コプリンジャーから検体スライドを取り出し、遮光下で風乾する。
ポストハイブリダイゼーション洗浄処理が行われた検体スライドのハイブリダイゼーション領域に、10μLのDAPI染色液(2μg/mLPBS、Molecular Probes社、D1306)を添加し、25℃で10分間保持して、DAPIによる核染色処理を行った。
(3A−1)溶媒置換処理
核染色処理が行われた検体スライドを常温で60分間、風乾した後、常温で2〜10秒、キシレンに浸漬することで、溶媒置換処理を行った。
溶媒置換処理が行われた検体スライドの組織上にエンテランニュー(メルク社)を滴下した。カバーガラスを被せ、常温で10分間、風乾することで、封入処理を行った。その後、シグナルの計測まで、封入処理が行われた検体スライドを遮光して保存した。
標本前処理工程(1)および染色工程(2)を上述した実施例1と同様に行った後、標本後処理工程(3A)に変えて、次のような処理を行った。
核染色処理が行われた検体スライドにそのままカバーガラスを被せ、常温で10分間、風乾した。その後、シグナルの計測まで、この検体スライドを遮光して保存した。
標本前処理工程(1)および染色工程(2)を上述した実施例1と同様に行った後、標本後処理工程(3A)に変えて、次のような標本後処理工程(3B)を行った。
(3B−1)洗浄処理
PBS:脱水エタノール(体積%)が50:50および20:80の、2種類のPBS・脱水エタノール混合溶媒(それぞれ第1PBS・脱水エタノール混合溶媒および第2PBS・脱水エタノール混合溶媒と呼ぶ。)を調製した。核染色処理が行われた検体スライドを常温で、第1PBS・脱水エタノール混合溶媒に2秒間浸漬し、続いて第2PBS・脱水エタノール混合溶媒にも2秒間浸漬した。
脱水エタノール:キシレン(体積%)が50:50および20:80の、2種類の脱水エタノール・キシレン混合溶媒(それぞれ脱水エタノール・キシレン混合溶媒および第2脱水エタノール・キシレン混合溶媒と呼ぶ。)を調製した。洗浄処理が行われた検体スライドを常温で、第1脱水エタノール・キシレン混合溶媒に2秒間浸漬し、続いて第2脱水エタノール・キシレン混合溶媒にも2秒間浸漬した。
脱水処理が行われた検体スライドを、常温で2〜10秒、キシレンに浸漬することで、溶媒置換処理を行った。
溶媒置換処理が行われた検体スライドを常温でエンテランニュー(メルク社)を滴下した後、カバーガラスを被せ、常温で10分間、風乾することで、封入処理を行った。その後、シグナルの計測まで、封入処理が行われた検体スライドを遮光して保存した。
標本前処理工程(1)および染色工程(2)を上述した実施例2(すなわち実施例1)と同様に行った後、洗浄処理(3B−1)を行わなかった以外は標本後処理工程(3B)と同様にして、標本後処理工程(3B)を行った。
蛍光顕微鏡Zeiss imager(Camera:MRmモノクロ・冷却機能付、対物レンズ:×100油浸)を用いて、上述したような実施例1〜3および比較例1のそれぞれで作製された染色スライドの観察および蛍光画像の撮影(1000倍)を行った。蛍光色素(スルホローダミン101)集積メラミン樹脂粒子は、適切なフィルターを用いて、励起波長を575〜600nmとする励起光を照射し、蛍光波長を610〜670nmとする蛍光を観測し、その蛍光画像を取得した。DAPIは、適切なフィルターを用いて、励起波長を340〜380nmとする励起光を照射し、蛍光波長を435〜485nmとする蛍光を観測し、その蛍光画像を取得した。
2:スライドガラス
3:組織切片
4:蛍光体集積ナノ粒子
5a:水系封入剤
5b:油系封入剤
6:カバーガラス
7a:核(染色体)の周辺領域
7b:核(染色体)の染色領域
8a:従来の洗浄処理液
8b:本発明の洗浄処理液
Claims (10)
- FISH法または免疫染色法に基づき、蛍光体集積ナノ粒子で目的生体物質を蛍光標識する処理(FISH/免疫染色処理)、水系染色試薬で核を染色する処理(核染色処理)、染色された組織切片上に残留した水系溶媒を油系溶媒に置換する処理(溶媒置換処理)、および溶媒が置換された組織切片を油系封入剤で封入する処理(封入処理)をこの順に行うことを特徴とする、FISH法または免疫染色法による染色スライドの封入方法。
- 前記蛍光体集積ナノ粒子が親水性である、請求項1に記載の染色スライドの封入方法。
- 前記蛍光体集積ナノ粒子が低分子有機化合物からなる蛍光色素を集積させたものである、請求項1または2に記載の染色スライドの封入方法。
- 前記蛍光体集積ナノ粒子がメラミン樹脂を母体とするものである、請求項1〜3のいずれか一項に記載の染色スライドの封入方法。
- 前記油系溶媒がキシレンである、請求項1〜4のいずれか一項に記載の染色スライドの封入方法。
- 前記溶媒置換処理の際に、脱水作用を有する水と親和性のある有機溶媒と前記油系溶媒とを含有する混合溶媒からなる脱水処理液で組織切片を脱水する処理(脱水処理)を行う、請求項1〜5のいずれか一項に記載の染色スライドの封入方法。
- 前記脱水処理液が水を実質的に含有しないものである、請求項6に記載の染色スライドの封入方法。
- 前記脱水処理液が、脱水エタノールとキシレンとの混合溶媒である、請求項7に記載の染色スライドの封入方法。
- 前記脱水処理の前に、前記核染色処理で用いた水系染色試薬が溶出しない溶媒と、前記脱水処理で用いられる脱水処理液に配合される有機溶媒とを含有する混合溶媒からなる洗浄処理液で洗浄する処理(洗浄処理)を行う、請求項6〜8のいずれか一項に記載の染色スライドの封入方法。
- 前記核染色工程で用いた水系染色試薬がDAPIであり、前記水系染色試薬が溶出しない溶媒がPBSである、請求項9に記載の染色スライドの封入方法。
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