JP2017022274A - 太陽電池の製造方法および太陽電池 - Google Patents

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Abstract

【課題】低コストで、線幅の小さいグリッド電極を有する太陽電池を得ること。
【解決手段】太陽電池基板1上に、集電電極を形成する工程を含む太陽電池の製造方法であって、集電電極の内、グリッド電極4Gを形成する工程が、一定の線径をもつワイヤー9に電極材料を塗布する工程と、ワイヤー9に塗布された電極材料を太陽電池基板1に接触させて電極材料を転写する工程を含む。転写後焼成することで、微細なグリッド電極4Gが形成される。
【選択図】図6

Description

本発明は、太陽電池の製造方法および太陽電池に係り、特にグリッド電極の形成に関する。
従来、太陽電池セルの変換効率の向上をはかるため、太陽電池基板の太陽光を受光する表面すなわち受光面側の拡散層の不純物濃度を小さくする、あるいは、受光面積を大きくする等種々の方法が採用されている。表面側の電極抵抗を維持したまま受光面積を大きくするためには、受光面に分布して形成される櫛形などのグリッド電極の電極面積、特にグリッド電極幅を小さくする必要がある。一般的な住宅用太陽電池セルの製造方法の一例が、特許文献1に示されている。また、電極形成には、特許文献2に示すスクリーン印刷法が用いられる。
特許第4075410号公報 特許第5148876号公報
しかしながら、上記従来の技術によれば、スクリーン印刷法では、0.2mm以上の大きな開口部を有するパターンの印刷マスクは、ステンレス材のメッシュ数#200から#325で線径20μmφ以上の安価な仕様で十分である。ところが、受光面側グリッド電極の幅を小さくするため、印刷マスクのパターン開口幅を小さく、メッシュのピッチを小さく、メッシュ線径を細くする方策が採用される。しかしながら、開口幅は40μm幅より小さく、メッシュピッチ#300以上、メッシュを構成する線の線径φ20μm以下となると、急激に印刷マスクが高額になるため、太陽電池セルが高価になるという欠点がある。
スクリーン印刷法で表グリッド電極幅を小さくするために、メッシュピッチ70μm以下、メッシュの線径20μm以下で、パターン開口幅を40μm以下とメッシュ線径を細くすると、メッシュを避けて印刷ペーストが吐出できる透過面積率は50%を大きく割り込む。このため、印刷されたグリッドのペーストパターンはメッシュ線の痕が付いてグリッド尾根部つまりグリッド高さの凹凸が大きくなるおそれがある。あるいは、グリッド電極幅が細くなって途中で断線する。あるいはまた、グリッド電極抵抗が大きくなるなど種々の不良が発生し易い。
メッシュ線径を細くすると、印刷時にスキージゴムで押し付けながらセルに印刷ペーストを塗布するため、メッシュ線が切れて印刷マスクが裂けるトラブルが発生し易くなる。
また、スクリーン印刷によると、太陽電池セル製造に用いられるグリッド電極の細線化に伴い、ワイヤーとワイヤー間の隙間幅が、ワイヤー径を無視し得ない程度の微細幅となり、透過面積率あるいは空間率と呼ばれるワイヤー間の隙間面積割合は、半分以下となり、グリッド電極が途切れたり、グリッド電極の尾根部の厚みの凹凸が顕在化して、グリッド電極抵抗が高くなり易い。また、メッシュのワイヤー交点部では開口幅と寸法が同程度となり、メッシュワイヤー交点部のグリッド電極厚が薄くなり、細いグリッド電極が断線し易い傾向がある。また、電極ペーストは設計幅より横方向に滲んで実幅は太くなる傾向がある。設計幅より実幅が太くなるのはスクリーン印刷法による印圧を掛けて印刷マスクからペーストを掻き出しながら押し出すので、ペーストが横に広がる特徴があるためである。設計幅より印刷パターンが太くなる程度を抑制するのは、スクリーン印刷法の課題である。
また、印刷パターンを形成するマスク乳剤の厚みを無視した場合、一般的に印刷直後のパターン厚を見積もる指標として透過容積があり、単位は[cm3/m2]=[μm]であり印刷直後の厚みに相当する。微細パターン化に従い、透過容積率が小さくなるため、微細パターンの場合特に、グリッド電極厚に相当する初期ペースト厚みは、乾燥焼結で容積収縮が起こる。
印刷マスクの価格は高価な細いメッシュを用いることで生じているが、印刷法では一般的に印刷するワーク面積すなわち太陽電池基板の面積の数倍以上のメッシュ面積が必要となりメッシュ面積を減らすことが難しい。細線ワイヤーは線径を小さくすると高額になる上に、マスク強度を維持するためにはメッシュピッチを小さくする必要がある。このため、メッシュ単位面積当たりに使用する細いワイヤー長さも大幅に増加する傾向となり、印刷マスクのコストは急激に高額になり、本印刷マスクで製造した太陽電池セルの製造費も高くなる傾向がある。
本発明は、上記に鑑みてなされたもので、低コストで、線幅の小さいグリッド電極を有する太陽電池を得ることを目的とする。
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明では、太陽電池基板上に、集電電極を形成する工程を含む太陽電池の製造方法であって、集電電極の内、グリッド電極を形成する工程が、一定の線径をもつワイヤーに電極材料を塗布する工程と、ワイヤーに塗布された電極材料を太陽電池基板に接触させて電極材料を転写する工程を含む。
本発明によれば、低コストで、線幅の小さい電極を有する太陽電池を得るという効果を奏する。
実施の形態1の太陽電池の受光面側を示す平面図 実施の形態1の太陽電池の裏面側を示す平面図 実施の形態1の太陽電池の断面図であり、図1および図2のA−A断面を示す図 実施の形態1の太陽電池の製造方法の原理を示す説明図 実施の形態1の太陽電池の製造方法で用いられるワイヤーの拡大断面図 (a)から(d)は、実施の形態1の太陽電池の製造工程を示す要部拡大断面図 実施の形態1の太陽電池の製造工程を示すフローチャート図 実施の形態2の太陽電池の受光面側を示す平面図 実施の形態2の太陽電池の製造工程を示す説明図 (a)および(b)は、実施の形態3の太陽電池の製造工程を示す説明図 (a)および(b)は、実施の形態3の太陽電池の製造工程を示す説明図 実施の形態4の太陽電池の製造方法で用いられる製造装置を示す説明図 実施の形態4の太陽電池の製造方法で用いられる製造装置のワイヤーへのペースト供給部を示す説明図 実施の形態の太陽電池の製造工程におけるワイヤーと電極ペーストの塗布量との関係を示す表図 実施の形態の太陽電池のグリッド電極を模式的に示す断面図
以下に、本発明の実施の形態にかかる太陽電池の製造方法および太陽電池を図面に基づいて詳細に説明する。なお、この実施の形態によりこの発明が限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において適宜変更可能である。また、以下に示す図面においては、理解の容易のため各層あるいは各部材の縮尺が現実と異なる場合があり、各図面間においても同様である。また、断面図であっても、図面を見易くするためにハッチングを付さない場合がある。
実施の形態1.
以下に、本発明の実施の形態1の太陽電池の製造方法および太陽電池について、図面に基づいて詳細に説明する。図1は、実施の形態1の太陽電池の受光面側を示す平面図、図2は、実施の形態1の太陽電池の裏面側を示す平面図、図3は、実施の形態1の太陽電池の断面図であり、図1および図2のA−A断面を示す図である。図4は、実施の形態1の太陽電池の製造方法の原理を示す説明図、図5は、実施の形態1の太陽電池の製造方法で用いられるワイヤ−の拡大断面図である。図6(a)から図6(d)は、実施の形態1の太陽電池の製造工程を示す要部拡大断面図、図7は、同フローチャート図である。実施の形態1は、太陽電池のグリッド電極を細線化するため、従来のスクリーン印刷法に代わり、グリッド本数と同じ本数の細線ワイヤーに電極ペーストを付着させ、太陽電池セル表面に転写する方法である。ワイヤーにペーストを一様に塗布するには、注射針のような細い管を準備して、ペーストを細い管とペースト溜りとなる注射管に充填し、細いワイヤーを通過させる方法を採る。
太陽電池基板の製造方法に関しては、後述するが、通例の製造フローを用いる。但し、実施の形態1の電極形成工程では、太陽電池基板の裏面に裏面バス電極とアルミニウム電極を印刷乾燥し、引き続いて、受光面側にグリッド電極をワイヤー転写して、受光面バス電極を別途印刷塗布乾燥を施し、最後に焼成する工程を用いている。裏面の裏面バス電極およびアルミニウム電極、受光面側のグリッド電極および受光面バス電極の4種類の電極を印刷、転写して各々乾燥する工程の順序は任意に組み合わせることができる。
実施の形態1の太陽電池は、図1に示すように、グリッド電極4Gが太陽電池基板1の端部つまりセル端まで形成されている。そしてグリッド電極4Gの側面が外側に凸であり、グリッド電極の上面が窪みを有する。図3に断面図を示すように、太陽電池基板1は、通例の構成をもつもので、例えばp型単結晶シリコン基板1Sで構成され、受光面1A側にn型拡散層2および反射防止膜3が形成され、反射防止膜3の上層にワイヤー転写によるグリッド電極4Gとスクリーン印刷による受光面バス電極4Bとが形成されている。太陽電池基板1の裏面1B側には、図2に示すように、銀を主成分とする裏面バス電極5と、裏面バス電極5以外の領域に形成されたアルミニウム電極6とを具備し、アルミニウム電極6からのアルミニウム拡散によって形成されたp+型拡散層からなるBSF層7が形成されている。
太陽電池基板1の受光面1A側にグリッド電極4Gが形成されているが、図4に、太陽電池の製造方法における、グリッド電極形成の原理説明図を示す。図5にグリッド電極形成用のワイヤーの要部拡大断面図を示す。図6(a)から(d)は、実施の形態1の太陽電池の製造方法におけるグリッド電極の形成工程を示す要部拡大説明図である。グリッド電極形成用のワイヤーは、ワイヤー9の周りに電極ペースト10を塗布した構成となっており、太陽電池基板1上でワイヤー9をおろし、太陽電池基板1の受光面1Aに電極ペースト10を転写することで形成される。この例では、直径D2のワイヤー9に、実施の形態4で後述する中空パイプの内径D1に相当する外形をもち、一様な厚みで塗布された電極ペースト10が形成されている。グリッド電極幅をw、グリッド電極厚をt1とする。良好なセル特性を得るには、図6(d)に示すように、グリッド電極4Gの抵抗を小さく、かつ、太陽光を出来るだけ発電する領域であるn型拡散層2およびp型単結晶シリコン基板1Sに取り込めるようにグリッド電極4Gの面積を小さくする必要がある。グリッド電極4Gはグリッド電極幅wを小さく、グリッド電極厚t1を厚くする必要がある。なお、図6(a)から(d)では、p型単結晶シリコン基板1Sに形成されたn型拡散層2、反射防止膜3、BSF層7を含めて太陽電池基板1とする。なお、印刷時のグリッド電極厚をt0、焼成後のグリッド電極厚をt1とする。
グリッド電極の形成工程について簡単に説明する。まず、pn接合の形成されたp型単結晶シリコン基板1Sからなる太陽電池基板1の裏面に裏面バス電極5およびアルミニウム電極6をスクリーン印刷法で形成した後、受光面1A側に、グリッド電極4Gを形成する。ここでは、pn接合を形成するn型拡散層も裏面側の電極も省略し、太陽電池基板1のみを示している。まず、図6(a)に示すように、太陽電池基板1の受光面1Aに対して垂直な方向である、矢印T1方向に、電極ペースト10を塗布した多数本のワイヤー9を動かし、太陽電池基板1上に、当接させる。
この後、図6(b)に示すように、ワイヤー9を下方に押し付け太陽電池基板1に接触させたのち、ワイヤー9を回転させる。ワイヤー径すなわちワイヤーの直径をD2とする。電極ペースト10が太陽電池基板1と接触した幅がグリッド電極幅wに相当し、図6(b)ではD2<w<D1の関係がある。ワイヤー9を太陽電池基板1に対して押圧する力が弱いとw<D2<D1となる場合も有り得るが、グリッド電極幅wを安定化するにはD2<w<D1の条件になる。この後、図6(c)に示すように、太陽電池基板1の受光面1Aに対して垂直な方向である、矢印T2方向に、ワイヤー9を動かし、太陽電池基板1上から、ワイヤー9をはずす。
ワイヤー9を太陽電池基板1に接触させて電極ペースト10を転写した後の拡大図を図6(d)に示すように、グリッド電極幅w、塗布厚t0のグリッド電極4Gのパターンが形成される。そして図示しないが、受光面バス電極4Bをスクリーン印刷で形成した後、焼成し、グリッド電極4Gが形成される。
ワイヤー9から電極ペースト10を転写させるので、図6(d)に示すように、ワイヤー9除去後のグリッド電極4Gの側面は外側に凸の形状となる。一方、グリッド電極4Gの上面は、ワイヤー9が離れる際に、ワイヤー9の形に窪みが残るので、グリッド電極4Gの上面には窪みを有する。このように、上面に窪みがあり上面両端が盛り上がった断面形状とすることにより、スクリーン印刷で形成したグリッド電極4Gと比較して、同一幅で断面積が大きく、電気抵抗の小さいグリッド電極を得ることができる。焼成時にパターンのだれが生じても、スクリーン印刷で形成したパターンに比べ、幅方向の拡がりは少なく、同一幅で断面積の高いグリッド電極4Gを形成することができる。また、焼成後の断面形状を示す図3では、上面の窪みは省略しているが、わずかな窪みの残留が確認されている。図15に焼成後のグリッド電極4Gを模式的に示すように、また、グリッド電極4G上面の小さな窪みRは、入射光に対する散乱面となり、一旦グリッド電極4Gにぶつかって散乱された光が、グリッド電極4Gで覆われていない領域に到達して光電変換に寄与する確率が増大し、光電変換効率が増大する。又、受光面バス電極4Bと交差する領域では、窪みの存在により、上層の受光面バス電極4Bとの接触面積が増大し、接合強度の増大を図ることができる。
以上のようにして、図4に原理を示した、グリッド電極印刷装置で、ワイヤー9を用いて太陽電池基板1に電極ペースト10を転写すると、図1に示したようにグリッド電極4Gは太陽電池基板1の周端部1Eまでグリッド電極4Gが形成される。
実施の形態1の方法で形成された太陽電池は、グリッド電極4Gの端縁が太陽電池基板1の周端部1Eまで形成されているため、集電性が向上し、光電変換効率の向上をはかることができる。
これに対し、スクリーン印刷法を用いた場合は、印刷マスクと太陽電池基板1を位置決めするため重ね合せ余裕が必要で、太陽電池基板1の外寸より小さくグリッド電極4Gを設計するのが通常であり、一般的な太陽電池では、セル端すなわち周端部1Eとグリッド電極4G先端の隙間は0.5mm以上2mm以下である。
グリッド電極4Gの形成方法の原理について説明したが、以下実施の形態1の太陽電池の製造方法について図7のフローチャートを参照しつつ説明する。工程断面図については図示しないが図3の太陽電池の断面図における参照符号を記載している。
第1に、ステップS100で太陽電池基板1を形成する。まず、シリコン基板を用意する。このシリコン基板は、単結晶又は多結晶からなり、p型であればボロンなどの、n型であればリンなどの半導体不純物を含み、比抵抗は0.1Ω・cm以上6.0Ω・cm以下の特性のものが用いられることが多い。以下、p型単結晶シリコン基板1Sを用いた太陽電池の製造方法を例にとって説明する。なお、p型単結晶シリコン基板準備ステップS101で、太陽電池形成用の基板としてp型単結晶シリコン基板1Sを準備する。その大きさは100mmから160mm角、厚みは0.1mm以上0.3mm以下の板状のものがよく用いられる。
p型単結晶シリコン基板1Sは、一定の厚みに切り出す際に受けた機械的ダメージあるいは汚染層を除去するために水酸化ナトリウムあるいは水酸化カリウムのような高濃度のアルカリ、若しくはフッ化水素酸と硝酸の混合液などで2μm以上20μm以下程度エッチングして、乾燥することで、テクスチャー形成ステップS102を実施し、テクスチャーと呼ばれる凹凸構造を形成する。テクスチャーは、太陽電池の受光面において光の多重反射を生じさせ、光が閉じ込められて効率よく半導体内に導かれていき、戻りにくくなるので反射率が低減し、変換効率向上に寄与する。
その後、熱拡散ステップS103で、例えばPOCl3などのn型不純物含有ガスを含む800℃から1000℃の高温ガス中にp型単結晶シリコン基板1Sを設置し、熱拡散を実施する。熱拡散ステップS103では、p型単結晶シリコン基板1Sの全面にリン等のn型不純物元素を拡散させる熱拡散法により、シート抵抗が30Ω/□以上150Ω/□以下程度のn型拡散層2を受光面1A側に形成する。p型単結晶シリコン基板1Sの両面及び端面にもn型拡散層2が形成されることがあるが、この場合には不要な裏面と端面のn型拡散層2をフッ硝酸溶液中に浸漬することによって除去する。その後、熱拡散で形成されたリンガラスを1%以上15%以下のフッ化水素酸水溶液に数分浸漬して除去し、純水で洗浄する。
更に、反射防止膜形成ステップS104で、上記p型単結晶シリコン基板1Sの受光面1A側に反射防止膜3を形成する。この反射防止膜3は、反射防止膜兼パッシベーション膜として機能する。反射防止膜3は、例えばSiH4とNH4とN2の混合ガスをグロー放電分解でプラズマ化して堆積させるプラズマCVD法などでSi34を形成する。反射防止膜3は、約60nmから100nm程度の厚みをもち、p型単結晶シリコン基板1Sとの屈折率差1.9から2.3程度になるように形成される。反射防止膜3は、p型単結晶シリコン基板1Sの表面で光が反射するのを防止して、光を有効に取り込むために設けられる。また、Si34は、n型拡散層2に対してパッシベーション効果を有し、パッシベーション膜としても機能し、反射防止の機能と併せて太陽電池の電気特性を向上させる効果がある。
次に、裏面電極印刷ステップS110で、まずp型単結晶シリコン基板1Sの裏面には例えばスクリーン印刷機で印刷版を使用して裏面バス電極5を形成する。例えば30wt%以上80wt%以下の銀粉末とガラスフリットと樹脂を含み有機溶剤で混合した導電性ペーストを用いて図2のように裏面バス電極5をスクリーン印刷し150℃以上220℃程度で乾燥させる。そして、その後に例えばアルミニウムとガラスフリットと樹脂などを含み有機溶剤で混合した導電性ペーストを用いて、裏面バス電極5以外の領域にスクリーン印刷し、アルミニウム電極6を形成する。そして再度150℃以上220℃程度で乾燥させる。なお、後述する焼成ステップS140でアルミニウム電極6からp型単結晶シリコン基板1Sにアルミニウムが拡散し、p型拡散層からなるBSF層7が形成される。裏面電極は裏面バス電極5とアルミニウム電極6とを合わせたものとする。
続いて、ステップS120で受光面1Aへのグリッド電極4Gのパターン形成を行う。まず、ステップS121で、ワイヤー9に電極ペースト10を塗布する。次いで、ステップS122で、太陽電池基板1上に電極ペースト10付きのワイヤー9を載置する。図6(a)に示したように、太陽電池基板1の受光面1Aに対して垂直な方向である、矢印T1方向に、電極ペースト10を塗布した多数本のワイヤー9を動かし、太陽電池基板1上に、当接させる。
この後、図6(b)に示したように、ワイヤー9を下方に押し付け太陽電池基板1に接触させたのち、ワイヤー9を回転させる。そして、この後、太陽電池基板1上からワイヤー9を剥離するステップS123を実施する。この工程では、図6(c)に示したように、太陽電池基板1の受光面1Aに対して垂直な方向である、矢印T2方向に、ワイヤー9を動かし、太陽電池基板1上から、ワイヤー9をはずす。ワイヤー9を外した後の形状は、図6(d)に示したように幅w、塗布厚t0の矩形状となっている。
この後、受光面バス電極印刷ステップS130を実施し、スクリーン印刷で受光面バス電極4Bを形成する。
そして焼成ステップS140を実施し、図1および図2に示したように、裏面バス電極5およびグリッド電極4Gおよび受光面バス電極4Bとからなる受光面電極4を焼成する。そしてリード線によって太陽電池を直列接続して太陽電池ストリングを形成し、さらに太陽電池ストリングを接続部材で接続し太陽電池アレイを形成する。
そして最後に、ラミネート処理ステップS150で、受光面側に透光性のガラス基板、裏面側に樹脂製のバックシートを配し、それぞれ封止樹脂を介してリード線の接続された太陽電池アレイを挟み、加熱することで、太陽電池アレイが封止され、太陽電池モジュールが得られる。そして、枠体を形成し、太陽電池パネルとなる。
実施の形態1の方法によれば、グリッド電極4Gの本数に対応する本数分だけ細線からなるワイヤー9を用い、ワイヤー9の全面に電極ペースト10をコートして、ワイヤー9を太陽電池1表面に接触させて電極ペースト10をグリッド電極状に転写する方法を用いており、グリッド電極4Gの微細化および高精度化をはかることができる。特にスクリーン印刷の場合に比べて、パターンのとぎれ、あるいは収縮もなく、高精度のパターンを得ることができる。従って実施の形態1の太陽電池によれば、グリッド電極4Gの細線化によるセル出力の向上が容易である。また、グリッド電極4G形成のための電極ペースト10の転写に使用するワイヤー9の長さは、スクリーン印刷メッシュで用いられるワイヤー長の1/20以下に出来て太陽電池セルの製造コストを低減できる。
また、実施の形態1の方法によれば、細いワイヤーをグリッド本数分だけ準備し、ハンドリング部分を入れてもワーク長の2から3倍程度の長さで十分である。細いワイヤーをメッシュ状に編む必要もない。156mm□ワークに100本のグリッド線を形成するには、ワイヤーの総延長距離は50mもあれば十分である。
実施の形態2.
以下に、本発明の実施の形態2の太陽電池の製造方法および太陽電池について、図面に基づいて詳細に説明する。図8は、実施の形態2の太陽電池の受光面側を示す平面図である。
実施の形態2の太陽電池の製造方法では、グリッド電極4Gの端縁が、太陽電池基板1の周端部1Eよりも一定間隔だけ内側に位置するようにしている。
実施の形態2では、グリッド電極4Gの端縁と太陽電池基板1の周端部1Eとの間で距離を設けてグリッド長Lgを決定している。製造に際しては、図9に示すように楔200でワイヤー9を折り曲げ、この折り曲げ位置で、ワイヤ−9が太陽電池基板1表面から離れることで、グリッド長Lgが、規定される。
他の構成については前記実施の形態1と同様であるため、ここでは説明を省略する。
以上のように、実施の形態2では、電極材料を塗布したワイヤー9を、太陽電池基板1に接触させる工程と、ワイヤー9を太陽電池基板1表面から離間させる工程とを含む。そして、接触させる工程に先立ち、ワイヤー9を、太陽電池基板1の端縁から一定距離だけ内側に相当する領域に、押圧部材としての楔200を当て、ワイヤー9の一部を太陽電池基板1表面から離間する方向に一括して折り曲げておく。そしてこの状態でワイヤー9を太陽電池基板1に接触させることで、太陽電池基板の端縁から一定距離以上内側に相当する領域にワイヤー9を接触させる。
実施の形態2の方法で形成された太陽電池は、太陽電池基板1の周端部1Eとグリッド電極4Gの端縁とが離間しているため、裏面電極との距離を確実にとることができ、リークの発生が抑制され、信頼性の向上をはかることができる。
なお、太陽電池基板1上に当接する直前に折り曲げるように、楔200をあてることで、太陽電池基板1の周縁部に電極ペーストが付着することなく、効率よく選択形成が可能となる。
また、曲げる工程は、太陽電池基板の端縁から一定距離だけ内側に相当する領域で、ワイヤーの配列方向に直交する方向に、先端が楔状の尖端部をもつ押圧部材を当て、配列されたワイヤーを一括して太陽電池基板表面から離間する方向に折り曲げることで、一括して端部の揃ったグリッド電極を形成することができる。
また、1本毎に押圧部材をあてるようにしてもよい。さらに、実施の形態2では先端が楔状の押圧部材を用いたが、板状体をあてるようにしてもよい。板状体の場合には、板状体の角をワイヤに当てるようにすることで、端部の形状が揃ったグリッド電極を得ることが可能となる。
実施の形態3.
以下に、本発明の実施の形態3の太陽電池の製造方法および太陽電池について、図面に基づいて詳細に説明する。図10および図11は、実施の形態3の太陽電池のグリッド電極の形成方法を示す図である。図10(a)はV溝を有する金型断面図、図10(b)は側面図である。図11(a)は電極ペースト10の塗布されたワイヤを示す断面図、図11(b)は側面図である。図10および図11において、(a)は(b)のB−B断面図である。
実施の形態3では、ワイヤー9への電極ペースト10の供給方法に特徴を有するもので実施の形態1の方法とは、ワイヤー9への電極ペースト10の供給方法が異なるのみである。図10(a)および(b)に示すように、金型30のV溝31に電極ペースト10を図示しないスクレイパーで均一な厚みで埋め込み塗布する。図11に示すように図8のグリッド長Lgに対応するようにV溝31を有する金型30の長さLを設計しておく。
次に、図10(a)および(b)に示すようにワイヤー9にV溝31の電極ペースト10を接触転写する。ここで、接触させるだけであれば、図11(a)および(b)に示すようにワイヤー9に対して一部分だけ電極ペースト10が付着した形状になる。
あとは実施の形態1と同様に、太陽電池基板1に接触させ、太陽電池基板1に電極ペースト10を転写する。ワイヤー9を剥離してはずし、電極ペースト10の焼成のための熱処理を行う。
実施の形態3の方法では、電極ペースト10とワイヤー9との付着面積が半分以下である点で、印刷後のワイヤー9の剥離が容易である。V溝31の傾斜角によって、形成されるグリッド電極4Gの断面形状を調整することができる。従ってアスペクト比の高い形状を形成し易い。また、ワイヤー9剥離後の電極ペースト10の形状について、空洞が少ないためアスペクト比の高い電極パターンを形成することが可能となる。
なお、図10(a)および(b)に示した、V溝を有する方式であれば、グリッド電極4Gの電極長さに対応した電極ペースト10の塗布領域を形成することができるため、実施の形態2の太陽電池を形成する際、図9の楔200を用いることなく、グリッド長Lgで転写できる。つまり、V溝の長さおよび断面形状で電極ペーストの塗布領域を規定することができるため、製造作業性が良好である。
また、図10(a)および(b)で、V溝31中で電極ペースト10にワイヤー9を接触転写する方法を示したが、ワイヤー9をV溝31中で回転させて転写すると、実施の形態1で図5に示したのと同様に、ワイヤー9に一様に電極ペースト10が塗布された状態を実現できる。さらにまた、V溝31の断面形状については、図10(a)に限定されることなく、U字状の溝、あるいは矩形の溝など適宜変更可能である。
さらにまた、ワイヤー9の周面に、例えば常温よりも若干高い50℃程度の温度で、溶融する低融点材料からなる離型剤を塗布しておき、電極ペースト10がワイヤー9に付着し易く、太陽電池基板1上で消失することで、転写を容易にするなどの方法も、実施の形態3のみならず実施の形態1および2のグリッド電極の形成に有用である。この時、例えばワイヤーに通電することで、発熱させ、ワイヤー周面の温度を50℃程度に上昇させることで、太陽電池基板上への電極ペーストの転写が容易となる。
以上のように、ワイヤー9表面に電極ペースト10を塗布する工程に先立ち、ワイヤー9の表面に、低融点樹脂を塗布しておき、転写工程で、電極材料を塗布したワイヤー9を、低融点樹脂の融点よりも高く加熱することで、転写が容易となる。つまり低融点樹脂が離型剤として作用することで、作業性の良好な転写が可能となる。
また、ワイヤー9の加熱はワイヤー9への通電によって容易に実現することができる。つまり、電極ペースト10の塗布されたワイヤー9を太陽電池基板1に接触させたのち、ワイヤー9に通電し、ワイヤー9を加熱し、この後ワイヤー9を太陽電池基板1表面から離間させることで、容易に太陽電池基板1への電極ペースト10の転写が可能となる。
実施の形態4.
以下に、本発明の実施の形態4の太陽電池の製造方法および太陽電池の製造装置について、図面に基づいて詳細に説明する。図12は、実施の形態4の太陽電池の製造方法で用いられる製造装置を示す説明図、図13は、実施の形態4の太陽電池の製造方法で用いられる製造装置のワイヤーへの電極ペースト供給部を示す説明図である。
実施の形態1の方法におけるワイヤー9への電極ペーストの供給方法は、図13に要部拡大図を示すように、注射器状のペースト供給部108aの一端に設けられた注射針状の中空パイプ118の内径D1が塗布外形に等しい、ペースト供給部108aを用いている。注射器状のペースト供給部108aにペースト10Sを充填し、注射針状の中空パイプ118の穴をより小さな外径D2の細いワイヤー9を通して、図5に示した断面形状となる電極ペースト10の塗布されたワイヤー9を実現する。ペースト供給部108aと、下流側にペースト除去部108bとでペースト部108を構成しており、ペースト10Sをワイヤー9に塗布するとともに太陽電池基板1への転写後ワイヤー9の表面から不要なペースト10Sを剥離する。
図13に示すようなペースト容器つまりペースト供給部108aにペースト10Sを充填し、ペースト供給部108aの先端に内径D1の中空パイプ118を取り付け、外径D2のワイヤー9を通過させて電極ペースト10を一様に塗布する。
内径D1の中空パイプ118で外径D2のワイヤー9で図5に示した、電極ペースト10の付着されたワイヤー9の寸法関係を図14に表1で示す。表1では、中空パイプ118の内径D1、ワイヤー9の外径D2、ペースト付着断面積S、ペーストの塗布幅w、ペーストの塗布厚t0、1枚のセルと接触した塗布面積Sg、1枚のセル当りの塗布量A、グリッド電極厚t1を示す。ここで、使用する銀ペーストかさ密度ρ=5g/cm3、ワイヤー付着ペーストが全てセルに転写されると仮定し、塗布幅w=(D1+D2)/2で計算する。
また、グリッド電極4Gのための塗布面積Sgは幅w、1本のグリッド長Lg、156mm、グリッド100本として、Sg=156×w×100本で求めた。ペースト転写後のグリッド厚はペースト体積が0.7倍に収縮するとして計算した。表1において、注射針状の中空パイプ118の内径D1、ワイヤー外径D2の組み合わせを変えた19通りの場合を示している。
スクリーン印刷マスクの現時点での加工限界例で示した塗布幅w=0.045mm、実厚0.016mmに対応するには、実施の形態1から3のワイヤー転写方式では、図14に示す表1のNo.10で対応可能であり、印刷マスクの細線化限界以下の細線化が表1のNo.11からNo.14で対応できる。No.14は現時点での中空パイプの内径加工限界とワイヤー細線化限界で、印刷マスクの加工限界より実施の形態1から3の細線ワイヤー転写法の方が細線化に優れていることが判る。
更に、実施の形態4のワイヤー転写法では、表1においてワイヤー材質は塑性変形しないSUS製で説明したが、ワイヤー材質が弾性または塑性変形する樹脂製にすればワイヤー加工限界の0.01mmφの線材を寸法監視しながら延伸して弾性または塑性変形させると半分以下の線径まで細くすることが出来る。このような条件として表1のNo.16からNo.19が該当する。グリッド電極幅が0.010mm以上0.02mm以下でグリッド厚0.012mm以上0.018mm以下と、細いだけでなく厚みも十分確保できる。
金属製および樹脂製のワイヤーは繰り返し使用することが出来るので、印刷マスクと寿命は同等レベルあるいはそれ以上であり、十分長寿命である。
図12は、実施の形態4に係る製造装置におけるグリッド電極形成装置の主要部の構成を示す斜視図である。実施の形態4のグリッド電極形成装置は、4本のメインガイドローラ101aから101dと、これらメインガイドローラ101aから101d間に一定のピッチで離間しながら複数回巻回されて一対のメインガイドローラ101c,101d間に並列ワイヤ部PSを形成し、これらメインガイドローラ101aから101dの回転に伴って走行する一本のワイヤー9と、複数の並列ワイヤ部PSにそれぞれ給電する給電子ユニット106aから106dと、並列ワイヤ部PSに接触して、制振する制振ガイドローラ107a,107bと、ともに電極ペースト10を塗布するペースト供給部108aと、転写後のワイヤー9から電極ペースト10を除去するペースト除去部108bと、ワイヤボビン102及びワイヤ巻取りボビン104と、並列ワイヤ部PSに対して太陽電池基板1を、並列ワイヤ部PSを構成するワイヤー9の並列方向、及び、各並列ワイヤ部PSを構成するワイヤー9の並列方向と直角方向に相対的に移動する手段とを備えている。一体成形された複数の給電子が、互いに電気的に接続された2対の給電子ユニット106aから106b,106cから106dを構成しており、各給電子ユニットは、両端に軸端支持部を有する図示しない給電子ホルダを備え、位置制御が可能である。また、加工電源110が複数の給電子ユニット106aから106dとワイヤー9との間に電流を流し、ワイヤー9の温度を一定温度に上昇させ、転写を容易にする。これら複数の給電子ユニット106aから106dは、給電対象とする各並列ワイヤ部PSのワイヤ並列間隔に対応して整列している。そして加工電源110は、並列ワイヤ部PSに対して3本おきに給電するように配置される各給電子ユニット106aから106dに対して給電する。また、同一の給電子ユニット106aから106dにおいて整列する給電子は互いに電気的に接続されている。
メインガイドローラ101aから101dはワイヤ走行系を構成する主要なガイドローラで、このグリッド電極形成装置では、同じ直径の4本のメインガイドローラが互いに平行に間隔をおいて配置されている。ワイヤボビン102から繰り出された一本のワイヤー9は、順次、4本のメインガイドローラ101aから101d間にまたがって、一定のピッチで離間しながら繰り返し巻き掛けられている。ワイヤー9はメインガイドローラ101aから101dの回転に伴って走行し、最後にワイヤ巻取りボビン104に至る。メインガイドローラ101c,101dは被加工物である太陽電池基板1を挟む位置に設置され、ワイヤー9がメインガイドローラ101aから101dの間に一定の張力で展張されることにより、互いにメインガイドローラ101dの軸方向に離間した複数の並列ワイヤ部PSを構成する。なお、本明細書においては、並列ワイヤ部PSはメインガイドローラ101cから送り出されてメインガイドローラ101dに巻き掛かるまでの部分を指すことにする。上記並列ワイヤ部PS内で、太陽電池基板1に対向する部分を含む直線的に展張された領域が塗布領域RTとなる。図12は、転写後、ワイヤー9が太陽電池基板1から離間した状態を示している。
並列ワイヤ部PSに接触して配置される給電子ユニット106aから106dは、ワイヤー9に対して電圧パルスを供給する電極であり、図12では太陽電池基板1の両側に各2列配置されている。また、並列ワイヤ部PS上の、給電子ユニット106aから106dの塗布領域RT寄りの位置に制振ガイドローラ107a,107bが配置され、制振ガイドローラ107a,107bの表面に形成されているワイヤ案内用溝にワイヤー9が常に掛けられた状態が維持されてワイヤー9をガイドする。すなわち、制振ガイドローラ107a,107bは、一対のメインガイドローラ間に設けられ、並列ワイヤ部PSにそれぞれ従動接触する、メインガイドローラに比較して小径のガイドローラである。そして、これら制振ガイドローラ107a,107bは、塗布領域RTのワイヤー9が直線状に展張されるようにワイヤー9を支持し、制振ガイドローラ107a,107b間の並列ワイヤ部PSはワイヤ振動が抑制されて走行位置がほぼ静止状態となっている。さらに、塗布領域RTを挟む位置にペースト供給部108aと、ペースト除去部108bとが配置されており、向かい合わせに配置されたペースト供給部108aの中空パイプ118から、電極ペースト10の塗布されたワイヤー9が繰り出され、太陽電池基板1上に電極ペースト10の塗布されたワイヤー9がくると、ステージ109が上昇し、太陽電池基板1表面に電極ペースト10の塗布されたワイヤー9が接触する。ステージ109は被加工物である太陽電池基板1を載せて上昇、下降を行う台である。
ワイヤー9は図12では、4本のメインガイドローラ101aから101dのそれぞれについて、ローラ外周の一部分(約1/4周)だけ巻き掛かっており、4本のメインガイドローラ101aから101d全体に対して周回している。メインガイドローラ101aから101dは、ワイヤボビン102からワイヤ巻取りボビン104に至る経路を構成し、被加工物である太陽電池基板1が上昇しているとき以外は、並列ワイヤ部PSと太陽電池基板1とが接触しないように、空間が確保されている。メインガイドローラ101c,101dは駆動式ガイドローラであり、その上方に配置されたメインガイドローラ101a,101bは、従動式ガイドローラである場合が多い。駆動式ガイドローラは、回転軸がモータの回転軸と直接ベルトなどで接続されることで回転力が伝達されて駆動する。これに対して、従動式ガイドローラには、モータの回転による駆動力を発生せず、巻き掛けられたワイヤー9の走行に伴って、ワイヤー9の摩擦によって回転するものである。制振ガイドローラ107a,107bは、並列ワイヤ部PSに接触して配置された従動式のガイドローラであり、ワイヤー9の走行に伴い従動することによって回転する。
上記グリッド電極形成装置を用いることにより、1本のワイヤー9で、容易に高精度のグリッド電極を形成することができる。1本のワイヤー9で形成できるため、径の均一化をはかることができ、グリッド電極4Gの幅を均一化することができる。また、電極材料を塗布したワイヤー9を、太陽電池基板1表面に対して垂直方向に降下させ、転写後ワイヤー9を太陽電池基板1表面から垂直方向に上昇させることで、微細かつ高精度のペースト塗布が実現される。
スクリーン印刷マスクのカタログによると、太陽電池セル製造に用いられるグリッド電極の細線化に良く用いられるメッシュ数♯400、ワイヤー線径23μmφの印刷マスクを使用する場合、ワイヤーピッチは64μmとなるので、ワイヤーとワイヤー間の隙間幅は(64−23)=41μmになり、透過面積率あるいは空間率と呼ばれるワイヤー間の隙間面積割合は(41×41)/(64×64)=41%となり、グリッド電極が途切れたり、グリッド電極の尾根部の厚みの凹凸が顕在化して、グリッド電極抵抗が高くなり易い。この場合のグリッド電極の印刷マスク開口幅は35μm以上50μm以下で設計されることが多く、メッシュのワイヤー交点部では開口幅と寸法が同程度となり、メッシュワイヤー交点部のグリッド電極厚が薄くなり、細いグリッド電極が断線し易い傾向がある。電極ペーストは設計幅より横方向に滲んで実幅は45μm以上80μm以下となり、10μm以上30μm以下と太くなる傾向がある。設計幅より実幅が太くなるのはスクリーン印刷法による印圧を掛けて印刷マスクからペーストを掻き出しながら押し出すので、ペーストが横に広がる特徴があるためである。設計幅より印刷パターンが太くなる程度を抑制するのは、スクリーン印刷法の課題であった。
また、印刷パターンを形成するマスク乳剤の厚みを無視した場合、一般的に印刷直後のパターン厚を見積もる指標として透過容積があり、単位は[cm3/m2]=[μm]であり印刷直後の厚みに相当する。メッシュ数♯400、ワイヤー線径23μmφの場合は、透過容積は22μmであり、グリッド電極厚に相当する初期ペースト厚みであり、乾燥焼結で容積収縮が起こる。例えば電極ペーストが、銀Agを主成分とするAgペーストであれば、乾燥焼結で、ペースト厚みの約7割に収縮するため、グリッド電極厚は16μm程度になる。
印刷マスクの価格は高価な細いメッシュを用いることで生じているが、印刷法では一般的に印刷するワーク面積すなわち太陽電池基板の面積の数倍以上のメッシュ面積が必要となりメッシュ面積を減らすことが難しい。1辺156mmの正方形ワークを印刷する印刷マスクは1辺250mmの正方形以上の面積が必要で、メッシュピッチも0.1mm以下と小さいので、1枚の印刷マスクに使用されるメッシュ線の総延長距離は600m以上を超える。更に、メッシュ線はグリッド方向に斜め23度程度に設置されるため、製造過程で不要にカットされるメッシュは1倍以上3倍以下程度の面積が必要となる。製造過程で不要にカットされる分を考慮すると、印刷マスク1枚を作製するのにメッシュ線の総延長距離は1000mを超えることになる。細線ワイヤーは線径を小さくすると高額になる上に、マスク強度を維持するためにはメッシュピッチを小さくする必要がある。このため、メッシュ単位面積当たりに使用する細いワイヤー長さも大幅に増加する傾向となり、印刷マスクのコストは急激に高額になり、本印刷マスクで製造した太陽電池の製造費も高くなる傾向があった。
一方、実施の形態1から4の太陽電池の製造方法によれば、グリッド電極厚に相当する初期ペースト厚みが、乾燥焼結で容積収縮を生じたりすることも少なく、寸法精度の高いグリッド電極を得ることができる。
また、印刷マスクのように、長いワイヤーを必要とすることなく、低コストでのグリッド電極形成が可能となり、太陽電池の製造費の高騰を招くこともない。
なお、実施の形態1から4では、ワイヤー9を銅線などの金属線で構成した。銅線などの金属線でワイヤー9を構成する場合、溶融状態で延伸することで、均一で高精度の細線を形成することができる。なお、金属線に限定されることなく、樹脂などを用いても良い。樹脂の場合も延伸加工によって容易に、高精度の細線を形成することが可能である。
また、実施の形態1から4では、太陽電池基板1は、反射防止膜3がSiN等の絶縁膜である、拡散型太陽電池の場合は、電極ペーストとして、デュポン(Dupont)社製ソーラメットPV18A(登録商標)等の高温燒結ペーストを用い、電極の焼結温度ピークが700℃以上900℃以下程度の焼結が施される。一方、表面にITO膜(Indium Tin Oxide)等の透光性電極を形成した上に集電電極を形成する、ヘテロ接合型太陽電池の場合、異なる低温焼結銀ペーストを用いて焼結温度150℃から250℃で焼結が施される。この場合は、低温燒結でワイヤー9との接合性が高い材料を用いるのが望ましい。
実施の形態1から4の方法によれば、スクリーン印刷法に比べて、微細でかつ均一な幅および高さを持つグリッド電極を、寸法精度よく、低コストで形成することができる。スクリーン印刷の場合に比べ、印刷直後と乾燥後の寸法変動もきわめて小さく、寸法精度の高い電極パターンの形成が可能となる。
また、実施の形態1から4では受光面側に形成されるグリッド電極について説明したが、上記グリッド電極の形成方法および構造は、裏面側にグリッド電極を形成する場合、特に両面にグリッド電極を形成した照射型の太陽電池にも有効である。
また、実施の形態1から4では、グリッド電極4Gは、太陽電池基板1上に一定間隔で相対向する辺に平行に分布されているが、辺に対して平行である必要はなく、辺に対して角度をなす構成であってもよい。
以上の実施の形態に示した構成は、本発明の内容の一例を示すものであり、別の公知の技術と組み合わせることも可能であるし、本発明の要旨を逸脱しない範囲で、構成の一部を省略、変更することも可能である。
1 太陽電池基板、1S p型単結晶シリコン基板、2 n型拡散層、3 反射防止膜、4G グリッド電極、4B 受光面バス電極、5 裏面バス電極、6 アルミニウム電極、7 BSF層、9 ワイヤー、10 電極ペースト、10S ペースト、101a,101b,101c,101d メインガイドローラ、102 ワイヤボビン、PS 並列ワイヤ部、104 ワイヤ巻取りボビン、106a,106b,106c,106d 給電子ユニット、107a,107b 制振ガイドローラ、108 ペースト部、108a ペースト供給部、108b ペースト除去部、109 ステージ、110 加工電源、118 中空パイプ、200 楔、30 金型、31 V溝、w 塗布幅、t0 塗布厚、t1 グリッド電極厚、Sg 塗布面積、RT 塗布領域、D1 内径、D2 直径、Lg グリッド長、L 長さ。

Claims (10)

  1. 太陽電池基板上に、集電電極を形成する工程を含む太陽電池の製造方法であって、
    前記集電電極の内、グリッド電極を形成する工程が、
    一定の線径をもつワイヤーに電極材料を塗布する工程と、
    前記ワイヤーに塗布された前記電極材料を、前記太陽電池基板に接触させて前記電極材料を転写する工程を含むことを特徴とする太陽電池の製造方法。
  2. 前記転写する工程は、
    前記ワイヤーに塗布された前記電極材料を、前記電極材料を塗布した前記ワイヤーを、前記太陽電池基板に接触させる工程と、
    前記ワイヤーを前記太陽電池用基板表面から離間させる工程とを含むことを特徴とする請求項1に記載の太陽電池の製造方法。
  3. 前記接触させる工程は、前記電極材料を塗布した前記ワイヤーを、前記太陽電池基板表面に対して垂直方向に降下させる工程であり、
    前記離間させる工程は、前記ワイヤーを前記太陽電池基板表面から垂直方向に上昇させる工程であることを特徴とする請求項2に記載の太陽電池の製造方法。
  4. 前記塗布する工程は、電極材料を含有した導電性ペーストの充填された中空パイプ内を、前記ワイヤーが通過することで、前記ワイヤーの表面全体に前記導電性ペーストを塗布する工程であることを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の太陽電池の製造方法。
  5. 前記塗布する工程は、電極材料を含有した導電性ペーストの充填された溝を有する導電性ペースト供給部を用いて、前記溝内の前記導電性ペーストに前記ワイヤを接触させ、前記ワイヤーに前記導電性ペーストを転写する工程を含むことを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の太陽電池の製造方法。
  6. 前記転写する工程は、
    前記ワイヤーに塗布された前記電極材料を、前記太陽電池基板に接触させる工程と、
    前記ワイヤーを前記太陽電池基板表面から離間させる工程とを含み、
    前記接触させる工程に先立ち、前記太陽電池基板の端縁から一定距離だけ内側に相当する領域で、前記ワイヤーに押圧部材を当て、前記ワイヤーの一部を前記太陽電池基板表面から離間する方向に曲げる工程を含み、
    前記接触させる工程は、前記太陽電池基板の端縁から一定距離以上内側に相当する領域に前記ワイヤを接触させる工程であることを特徴とする請求項1から5のいずれか1項に記載の太陽電池の製造方法。
  7. 前記曲げる工程は、
    前記太陽電池基板の端縁から一定距離だけ内側に相当する領域で、前記ワイヤーの配列方向に直交する方向に、先端が楔状の尖端部をもつ押圧部材を当て、配列された前記ワイヤーを一括して前記太陽電池基板表面から離間する方向に折り曲げる工程を含むことを特徴とする請求項1から6のいずれか1項に記載の太陽電池の製造方法。
  8. 前記転写する工程は、
    前記電極材料を塗布した前記ワイヤーを、前記太陽電池基板に接触させる工程と、
    前記ワイヤーに通電し、前記ワイヤーを加熱する工程と、
    前記ワイヤーを前記太陽電池基板表面から離間させる工程とを含むことを特徴とする請求項1から7のいずれか1項に記載の太陽電池の製造方法。
  9. 前記塗布する工程に先立ち、前記ワイヤーの表面に、低融点樹脂を塗布する工程を含み、
    前記ワイヤーを加熱する工程は前記低融点樹脂の融点よりも高い温度に前記ワイヤを加熱する工程であることを特徴とする請求項8に記載の太陽電池の製造方法。
  10. グリッド電極が太陽電池基板の1端から他端まで伸長し、
    前記グリッド電極の側面が外側に凸であり、
    前記グリッド電極の上面が窪みを有することを特徴とする太陽電池。
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