JP2017020826A - 走査型プローブ顕微鏡用のプローブ及びその製造方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】
チップと、該チップの先端部から突出した探針を備える走査型プローブ顕微鏡用のプローブであって、
該探針がカーボンナノチューブからなり、該カーボンナノチューブは該チップ先端部から突出した突出部と、該チップに固着された固着部を備え、該固着部ではカーボンナノチューブの側面が該チップの一側面に固着されており、該固着部は該カーボンナノチューブ製造工程で使用された触媒由来の金属を含む、走査型プローブ顕微鏡用のプローブ。
【選択図】図3
Description
また、本発明は、下記工程:
(1)原子間力顕微鏡用のチップを用いて、シリコン基板上に該基板に対して略垂直に配置され、頂部に触媒由来の金属を含む、少なくとも一のカーボンナノチューブのイメージングをする工程、
(2)該チップの先端を一のカーボンナノチューブの自由端上に接触させて配置する工程、
(3)該チップに負のバイアス電位を印加しながら、該チップ及び該カーボンナノチューブに、該カーボンナノチューブが切断されるまで、直流電流を流す工程、
を含むことを特徴とする、走査型プローブ顕微鏡用のプローブの製造方法である。
(1)原子間力顕微鏡用のチップを用いて、シリコン基板上に該基板に対して略垂直に配置され、頂部に触媒由来の金属を含む、少なくとも一のカーボンナノチューブのイメージングをする工程、
(2)該チップの先端を一のカーボンナノチューブの自由端上に接触させて配置する工程、
(3)該チップに負のバイアス電位を印加しながら、該チップ及び該カーボンナノチューブに、該カーボンナノチューブが切断されるまで、直流電流を流す工程。
プラズマエンハンスト化学気相成長法で、Ni触媒を用いて、CrコートされたSi基板上に、該基板に対して略垂直方向にMWCNTのアレイを成長させた。得られたMWCNTは、直径が50〜70nm、長さ2〜3μm、密度が106MWCNT/cm2であり、隣接するMWCNT同士の間は5μm超であった。得られたMWCNTアレイのTEM写真を図1に示す。
三角錐形状のAuコートされたSiチップを有するカンチレバー(バネ定数約3N/m、チップ頂点の曲率約50nm)を備える原子間力顕微鏡(SIIナノテクノロジー社製、SPA400)を使用して、以下の手順でプローブを作成した。
(1)タッピングモードで、上記MWCNTアレイをイメージングして、2μm程度の適切な長さを有するMWCNTの位置を特定した。図2aに、従来のAuコートされたSiチップを用いて測定された、基板に対して垂直状に成長したMWCNTのトポグラフィーを示す。
(2)コンタクトモードで、上記特定されたうちの一のMWCNTの自由端の上に、カンチレバーの変位が5nm(図2d、右側y軸)となる程度の力(約15nN)をかけて、図2bに示すようにして、チップを配置した。
(3)図2bの配置を保った状態で、チップに負バイアス電圧(図2d、左側y軸)を与える条件で、MWCNTを通じて基板に流れ込む電流を次第に増加させていった(図2d、x軸)。これは、設定した電流を流すために必要な電圧を印加する、定電流制御の条件で実施した。電流が90〜100μAに達したとき、カンチレバーの変位が0nmに戻ると共にバイアス電圧が増大し、MWCNTの切断が確認された。この切断によって、もともと基板上にあった2μm程度の長さを持つMWCNTは、数百nm程度を基板上に残してチップ側へと移動した。図2cに、得られたプローブを用いて測定した、基板上に残ったMWCNTのAFM像を示す。該AFM像では、探針を備えないチップで測定した図2aのAFM像と比べて、MWCNTの円形が明確に示されている。
(4)同様にして、他に24個のプローブを作成した。
図2fに、得られたプローブを用いて得られた、CrコートされたSi基板のAFMトポグラフィーと、対応する高さプロフィールを示す。比較のために、本発明の探針を有しない、従来のチップを用いて得られたものを図2eに示す。本発明のプローブでは、細かい構造が鮮明に検出され、図2f下のグラフに示すように、20nm程度の小粒子も検出できた。一方、従来のチップでは、図2e下のグラフに示すように、80nm程度の粒子が何とか検出できる程度であった。ここから、本発明のプローブの増強されたイメージング能が確認された。
得られたプローブを、走査型電子顕微鏡(日立 S4800)及び透過型電子顕微鏡(JEOL1010、100kV)を用いて観察した。後者の観察では、カンチレバーをそのSi基材から取り外し、Cu製のTEMグリッド上に銀ペーストを用いて固定した。
上記実施例において、AuコートSiチップをMWCNTの上に配置した後、該系を導電性にするためには、約3Vまでの電圧を要することが分かった。一般に、環境雰囲気中でAFMを用いるときには、チップと試料の間の汚染物質及び酸化層を除去するために、最初の活性化電圧が必要である。本発明の場合も同様であるが、一旦活性化された後は、チップとMWCNTの良好な電気的接続が形成されることが、AuコートSiチップを用いて、切断される前のMWCNTのコンダクタンスを測定することで確認された。典型的なI/V特性を図5aに示す。各MWCNTの電気的測定をする間に、コンタクト力を連続的に3、7.5、15、及び30nNに制御したが、30nNまではI/V特性に影響を及ぼさないことが分かった。20本以上のMWCNTについて測定した結果、使用したMWCNTの抵抗値が12〜70kΩであることが算定された。この値は、これまでに微細電極を用いて測定されてきた数100kΩ以上という値に比べて明らかに低く、今回使用したMWCNTとAuコートチップは良好な電気的接続を形成していると言える。
該プローブを用いて容易にAu修飾された探針を得ることができることが分かった。図4eはAu修飾した探針のTEM像である。これは、得られたプローブを空気中で350℃で2時間、単に加熱しただけである。金粒子がMWCNTの表面に観察された。該粒子の密度は、加熱温度及び時間を制御することで制御できる。該探針のエネルギー分散X線(EDX)スペクトルを図4fに示す。約7keVにAuが検出されているのが分かる。同スペクトルにおいて、Cu、Al、SiはSEM装置及び基板由来である。挿入図は、Au(左)とC(右)のマッピングである。ここから、Auが全体に亘って均一に付着していることが分かった。該Au修飾探針を用いれば、触媒反応、センシング、チップ増強ラマン分析等への応用が可能である(R. Kumarら, Nanoscale, 5 (2013), pp. 6491-6497; H. Sharmaら, J. Raman Spectroscopy, 44 (2012), pp. 12-20;J.C. Charlier,ら, Nanotechnol., 20 (2009), p. 375501)
比較として、Auコートが無いSiチップを用いて同上の操作を行った。該チップでも、コンタクトモードでMWCNTを固着させることはできたが、あまり綺麗に配向していなかった。MWCNTは基板から引き抜かれ、基板表面上のCr粒子と汚染物でコートされた、丸まった頂部の探針となり、AFMには適切ではなかった。
Claims (7)
- チップと、該チップの先端部から突出した探針を備える走査型プローブ顕微鏡用のプローブであって、
該探針がカーボンナノチューブからなり、該カーボンナノチューブは該チップ先端部から突出した突出部と、該チップに固着された固着部を備え、該固着部ではカーボンナノチューブの側面が該チップの一側面に固着されており、該固着部は該カーボンナノチューブ製造工程で使用された触媒由来の金属を含む、走査型プローブ顕微鏡用のプローブ。 - 該カーボンナノチューブが、プラズマエンハンスト化学気相成長法(PFCVD)で製造された多層カーボンナノチューブである、請求項1記載のプローブ。
- 該チップが、金被覆されたシリコンからなることを特徴とする請求項1又は2記載のプローブ。
- 表面の電気特性計測用のプローブである、請求項1〜3のいずれか1項記載のプローブ。
- (1)原子間力顕微鏡用のチップを用いて、シリコン基板上に該基板に対して略垂直に配置され、頂部に触媒由来の金属を含む、少なくとも一のカーボンナノチューブのイメージングをする工程、
(2)該チップの先端を一のカーボンナノチューブの自由端上に接触させて配置する工程、
(3)該チップに負のバイアス電位を印加しながら、該チップ及び該カーボンナノチューブに、該カーボンナノチューブが切断されるまで、直流電流を流す工程、
を含むことを特徴とする、走査型プローブ顕微鏡用のプローブの製造方法。 - 工程(1)の前に、該カーボンナノチューブを、プラズマエンハンスト化学気相成長法(PECVD)により製造する工程をさらに含む、請求項5記載の方法。
- 該チップが、金被覆されたシリコンからなることを特徴とする請求項5又は6記載の方法。
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