JP2017018844A - 水処理方法 - Google Patents

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Keisuke Morikawa
圭介 森川
祐貴 立花
Yuki Tachibana
祐貴 立花
孝 涌井
Takashi Wakui
孝 涌井
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Naoki Fujiwara
直樹 藤原
寛 山村
Hiroshi Yamamura
寛 山村
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Yoshikimi Watanabe
義公 渡辺
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Abstract

【課題】海水などの塩を含む原水中から、溶存有機物を除去することができる水処理方法を提供する。
【解決手段】前記水処理方法は、溶存有機物を含有する原水と、高分子吸着材とを接触させ、高分子吸着材により溶存有機物の少なくとも一部の成分を吸着させる吸着工程を少なくとも備える水処理方法であって、
原水が、0.5質量%以上の塩を含む水であり、
高分子吸着材が、親水性高分子を主骨格とし、前記成分との結合形成が可能な基を官能基として有する親水性高分子吸着材であり、25℃水中における膨潤度が20〜500%である。
【選択図】なし

Description

本発明は、海水などの塩を含む原水中から、膜ファウリングを生じる原因物質を除去することができる水処理方法に関する。
逆浸透(RO)膜を用いて海水などのかん水を淡水化する装置について、社会的な需要が増加している。膜ろ過による海水の淡水化において、海水中に存在する無機物や有機物による膜ファウリングは、造水コスト上昇に繋がる重要な問題である。
近年、膜ろ過におけるファウリング物質に関する詳細な解析がなされており、非特許文献1では、物理的に不可逆な膜ファウリングの原因物質は、溶存有機物のうち、フミン酸やフルボ酸などの芳香族環を有する疎水性物質よりも、比較的親水性が高い溶存有機物である糖類やたんぱく質などのバイオポリマーが主因であることが報告されている。また、非特許文献2では、RO膜の透過性能を低下させる現象は、微生物の繁殖によるバイオファウリングなどにより引き起こされ、バイオファウリングは微生物の栄養分になる多糖類などが大きく寄与していることが報告されている。
溶存有機物の吸着除去技術については、例えば、特許文献1では、疎水性吸着材を中心に除去方法が提案されている。特許文献2ではゼオライトや活性炭などが例示されている。また、特許文献3では、水中で膨潤し実質的に水に溶解しないカチオン性ポリマーからなる粒子を吸着材として用いる方法が提案されている。
特開2013−223847号公報 特開2013−56286号公報 特許第5218731号公報
渡辺義公、膜、38(5)、207−214(2013) 竹内和久、日本海水学会誌、63(6)、367−371(2009)
しかし、特許文献1の発明の吸着材は、主に疎水性の主骨格を有する吸着材が中心であるため、親水性が高いと報告されている溶存有機物、特に物理的に不可逆な膜ファウリングの原因物質を効率よく除去することはできない。また、特許文献2の発明では、表面の細孔を利用した物理吸着によりあらゆる溶存有機物を吸着してしまうため、被処理水から、物理的に不可逆な膜ファウリングの原因物質を効率よく除去することができない。したがって、特許文献1および2に例示の方法では、親水性が高いバイオポリマーの吸着性能が不充分であるため、多量の吸着材が必要である。
本発明の目的は、海水のような塩を含む原水中に含まれる溶存有機物、特に物理的に不可逆な膜ファウリングの原因物質と考えられている比較的親水性が高いバイオポリマーを効率よく吸着することができる水処理方法を提供することにある。
本発明者は上記課題を解決するために鋭意検討した結果、以下のようなメカニズムによるためか、塩含有原水中に含まれる溶存有機物、特に物理的に不可逆な膜ファウリングを生じる原因物質を効率よく吸着できることを見出した。
すなわち、原水中に含まれる溶存有機物、特に物理的に不可逆な膜ファウリングを生じる原因物質は、一般に吸着が困難であると認識されていたが、(i)親水性高分子を主骨格とし、吸着される物質と結合(例えば、水素結合、イオン結合、キレート結合など)を形成可能な官能基を有する親水性高分子吸着材を用いるとともに、(ii)25℃水中での膨潤度が特定の範囲に存在するように制御された親水性高分子吸着材を用いると、(iii)親水性高分子に対して接近した溶存有機物などが結合形成性官能基と結合して保持されるだけでなく、(iv)適度な膨潤により、溶存有機物による目詰まりを抑制しつつ、吸着材内部まで原因物質が浸透し、吸着材内部の吸着性官能基も有効に活用できるためか、結果的に被処理水中の溶存有機物、特に物理的に不可逆な膜ファウリングを生じる原因物質の量を低減できることを見出した。
その結果、本願発明では、このような特定の親水性高分子吸着材を用いて、海水などの原水中に含まれる溶存有機物、特に物理的に不可逆な膜ファウリングを生じる原因物質を吸着する工程を備える水処理方法を提案するに至った。
すなわち、本発明は、溶存有機物を含有する原水と、高分子吸着材とを接触させ、高分子吸着材により溶存有機物の少なくとも一部の成分を吸着させる吸着工程を少なくとも備える水処理方法であって、
原水が、0.5質量%以上の塩を含む水であり、
高分子吸着材が、親水性高分子を主骨格とし、前記成分との結合形成が可能な基を官能基として有する親水性高分子吸着材であり、25℃水中における膨潤度が20〜500%である、水処理方法である。
例えば、結合形成基は、水素結合、イオン結合、およびキレート結合からなる群から選択された少なくとも一種の結合の形成能を有していてもよい。また、結合形成基は、前記親水性高分子に含まれる親水性基とは異なる種類であってもよい。
前記吸着工程で吸着される成分は、バイオポリマーを含んでいてもよい。また、吸着される成分は、Stefan A. Huber et al. Water Research 45 (2011) pp879-885に記載された方法により測定した、LC−OCDによる保留時間が、25〜38分の成分を含んでいてもよい。
前記親水性高分子吸着材では、25℃のバイオポリマーモデル水(アルギン酸ナトリウム濃度:4.3mg―C/Lのアルギン酸ナトリウム水溶液)およびフミン質モデル水(フミン酸ナトリウム濃度:4.3mg―C/Lのフミン酸ナトリウム水溶液)のそれぞれに対して、アルギン酸ナトリウムの吸着率(A)と、フミン酸ナトリウムの吸着率(B)との比が、(A)/(B)=1.0〜10であってもよい。
好ましい高分子吸着材は、親水性高分子を主骨格として化学吸着性官能基が導入されていてもよく、前記親水性高分子が、ポリビニルアルコール、エチレン−ビニルアルコール共重合体、ポリビニルアセタール、ポリビニルアルキルアルコール、ポリアルキレングリコール、ポリビニルアルキルエーテル、ポリアルキレンオキシド、ポリ(メタ)アクリルアミド、ポリアクリロニトリル、カチオン性ポリマー、アニオン性ポリマー、フェノール樹脂、ポリアミド、ポリビニルピロリドン、セルロース誘導体、デキストリン、キチン、およびキトサンからなる群から選択される少なくとも1種を含んでいてもよい。
また、高分子吸着材は、結合形成基として、アミノ基、4級アンモニウム基およびそれらの塩からなる群から選択された少なくとも一種の官能基を有しているのが好ましい。
特に、高分子吸着材は、結合形成基含有高分子(A)と、親水性マトリクス高分子(B)とを含むポリマーアロイで構成されていてもよい。
また、高分子吸着材の25℃水中での平均粒子径は、例えば、1μm〜10mm程度であってもよい。
本発明の水処理方法は、さらに、吸着工程により得られた吸着処理水を、膜ろ過処理により膜ろ過する、膜ろ過工程を備えていてもよい。膜ろ過工程は、外ろ過(UF)膜、精密ろ過(MF)膜、ナノろ過(NF)膜、および逆浸透(RO)膜からなる群から選択される少なくとも一種の膜を用いて、一段または多段にて行われてもよい。
また、本発明の水処理方法は、さらに、原因物質を吸着した吸着材を水性媒体と接触させ、前記吸着材を再生する再生工程を備えていてもよい。その場合、再生工程で用いられる水性媒体が、水、または金属イオン含有水溶液であってもよい。また水性媒体の温度は40℃〜110℃程度であってもよい。
本発明の水処理方法では、被処理水が塩類を含む原水であっても、特定の親水性高分子吸着材を用いることにより、従来除去が困難であった溶存有機物、特に物理的に不可逆的な膜ファウリングを生じる原因物質(特に糖類やたんぱく質といった親水性が高いバイオポリマー)を被処理水から効率よく吸着することができる。その結果、吸着処理水(吸着処理が行われた水)中の溶存有機物、特に物理的に不可逆的な膜ファウリングを生じる原因物の量を低減することができる。それにより、膜ろ過工程において、膜ファウリング、特に物理的に不可逆な膜ファウリングが生じるのを抑制し、ろ過膜の透水性を長期にわたり維持することが可能である。
また、前記親水性高分子吸着材は、膨潤度が所定の範囲に制御されているため、カラムへの充填性も良好である。その場合、水処理方法では、カラム使用による前記原因物質除去工程と、膜ろ過工程を組み合わせることにより、簡便な方法によって、長期に渡りろ過膜の透水性を維持することができる。
さらに、吸着工程後の吸着材は、水性媒体との接触により、簡単に吸着材から原因物質を脱離させて再生することも可能であり、再生された吸着材は、再び吸着処理へ有効に用いることができる。
以下、本発明を実施形態に基づいて詳細に説明する。なお、以下に説明する実施形態は、本発明を限定するものではない。
[水処理方法]
本発明の水処理方法は、溶存有機物、特に物理的に不可逆的な膜ファウリングを生じる原因物質を含有する原水と、高分子吸着材とを接触させ、高分子吸着材により溶存有機物の少なくとも一部の成分を吸着させる吸着工程を少なくとも備える水処理方法であって、
原水が、0.5質量%以上の塩を含む水であり、
高分子吸着材が、親水性高分子を主骨格とし、前記成分との結合形成が可能な基を官能基として有する親水性高分子吸着材であり、25℃水中における膨潤度が20〜500%である。
(吸着工程)
被処理水である原水は、溶存有機物、特に物理的に不可逆的な膜ファウリングを生じる原因物質を含有するとともに、0.5質量%以上の塩を含む水であれば、特に限定されず、例えば、海水(塩分2〜4質量%)、汽水(塩分0.5〜2質量%)、油田やガス田の採掘の際に発生する随伴水であってもよく、またはこれらを処理して得られる、より塩濃度の高い水など、自然環境下の原水に由来して得られるさまざまな塩を含む水を被処理水である原水として利用することができる。
本発明で用いられる高分子吸着材は、被処理水が塩を含有している場合であっても、被処理水中の溶存有機物、特に物理的に不可逆的な膜ファウリングを生じる原因物質を吸着することが可能である。そのため、被処理水が、0.5質量%以上(例えば、0.5〜30質量%程度)、1質量%以上、または2質量%以上の塩濃度を有している場合であっても、被処理水から効率よく前記原因物質を吸着することが可能である。
被処理水中の塩としては、例えば、塩化ナトリウム、塩化カリウムなどのアルカリ金属塩;塩化マグネシウム、硫酸マグネシウム、塩化カルシウム、硫酸カルシウムなどのアルカリ土類金属塩などが挙げられ、被処理水中の塩濃度は、これらの塩類の総量の濃度として算出することができる。塩は、その水溶液が中性になる塩であってもよい。
原水中に含まれる溶存有機物とは、通常、上述する原水中に含まれる溶存有機炭素(DOC:Dissolved Organic carbon)を構成する有機化合物を意味している。DOCは、有機炭素、有機着色剤、及び天然の有機物質を包含する用語であるとともに、植物残留物の分解により形成される有機化合物の混合物であるフミン酸及びフルボ酸のようなフミン質をも包含する用語であり、DOCを構成する主要な化合物及び材料は可溶性であるため、水から容易に分離できないとされている。
また、物理的に不可逆的な膜ファウリングを生じる原因物質とは、溶存有機物の一種であり、膜ろ過を行う際に、物理的な逆洗などの手段により取り除くことが困難である物質を意味している。具体的な原因物質については未だ研究中ではあるが、本発明の吸着工程を経た処理水を膜処理工程へ供する場合、吸着工程を経ることなく被処理水を膜処理工程へ供する場合と比較して、膜処理工程における膜の寿命を向上することが可能である。
したがって、原因物質が具体的に特定されていなくとも、吸着工程によって、物理的に不可逆的な膜ファウリングを生じる原因物質の量が低減できていることを確認することが可能である。
原因物質としてはさまざまな化合物が考えられるが、吸着工程において吸着される原因物質は、物理的に吸着した場合に脱離するのが困難であると考えられる粒子径0.45μm以下の有機物に属する物質であってもよい。
粒子径0.45μm以下の有機物としては、フミン酸やフルボ酸などの芳香族含有有機物、界面活性剤等の合成化学物質、バイオポリマーなどが挙げられるが、本発明の吸着工程では、例えば、高分子吸着材により原因物質の少なくとも一部の成分が吸着されればよい。
例えば、吸着される成分は、親水性の10万ダルトン以上を有する化合物であって、高速液体クロマトグラフィーに湿式全有機炭素計測器を接続したLC−OCDにおいて、フミン質の信号ピークが現れる保留時間より短い保留時間において、信号ピークを示す物質であってもよい。
吸着工程では、高分子吸着材により原因物質の少なくとも一部の成分として、バイオポリマーを少なくとも吸着するのが好ましい。
バイオポリマーとは、親水性の高分子量(例えば、10万ダルトン以上)を有する化合物(例えば、多糖類およびタンパク質)とされている。より詳細には、Stefan A. Huber et al. Water Research 45 (2011) pp879-885に記載された方法により測定したAフラクション、例えばLC−OCDによる保留時間が、25分以上38分以下の成分であってもよい。実施例では、上記記載された方法に基づくLC−OCD(Hubers社製、DOC-Labor)の分析にて、25分以上38分以下の保留時間の成分をバイオポリマーとして測定している。また、フミン質は、同じ条件下での測定におけるBフラクション、例えば保留時間38分を超えて50分以下の成分であってよい。
バイオポリマーは、ベンゼン環などの疎水性構造が少なく、主に親水性の高い有機物で構成されており、例えば、SUVA値が1.0 [L/(m・mg)]以下を示す有機物で構成されていてもよい。
一方、フミン質は、ベンゼン環などが含まれているため、UV吸収性を有する構造するだけでなく、疎水性が高く、例えば、SUVA値が2.0 [L/(m・mg)] 以上を示す有機物で構成されていてもよい。
なお、SUVA値は、以下の式で求められる。
SUVA(L/mg−C・m)=UV(m−1)/DOC(mg−C/L)
なお、ここで、SUVA値を算出するための各パラメータはStefan A. Huber et al. Water Research 45 (2011) pp879-885に記載された方法により測定されたものであり「面積値」とは、LC−OCDにより得られる面積値を表し、「UV」とは、波長254nmでの吸光度、「DOC」とは供試サンプル中のDOC濃度(mg−C/L)を示している。
UV値算出方法
(i)バイオポリマーのUV=供試サンプル全体のUV×スペクトル中のバイオポリマー(保留時間t:25分≦t≦38分)の面積値/スペクトル全体の面積値
(ii)フミン質のUV=供試サンプル全体のUV×スペクトル中のフミン質(保留時間t:38分<t≦50分)の面積値/スペクトル全体の面積値
DOC値算出方法
(i)バイオポリマーのDOC=供試サンプル全体のDOC×スペクトル中のバイオポリマー(保留時間t:25分≦t≦38分)の面積値/スペクトル全体の面積値
(ii)フミン質のDOC=供試サンプル全体のDOC×スペクトル中のフミン質(保留時間t:38分<t≦50分)の面積値/スペクトル全体の面積値
現在一般に上市されているスチレン系等の疎水性高分子を主骨格とするイオン交換樹脂やキレート樹脂では、このような原水中に含まれる溶存有機物、特に物理的に不可逆的な膜ファウリングを生じる原因物質を効率よく吸着することができない。しかしながら、本発明では、特定の親水性高分子吸着材を用いることによって、このような親水性溶存有機物であっても、効率よく吸着することが可能となる。
吸着工程では、被処理水と、親水性高分子吸着材とを接触させることができる限り特に限定されず、例えば、バッチ式として、被処理水へ吸着材を添加し、必要に応じて公知の方法で撹拌することにより、吸着処理を行ってもよいし;連続式として、親水性高分子吸着材を充てんしたカラムに対し、被処理水を通液させることにより吸着処理を行ってもよい。また、吸着工程は、一段であってもよいし、多段であってもよい。
吸着工程での被処理水の温度は、原因物質を吸着することが出来る限り、適当な温度を選択することができるが、被処理水の温度は、吸着性の観点から、例えば10〜40℃であってもよく、好ましくは15〜35℃、より好ましくは18〜33℃であってもよい。
被処理水に対して用いられる吸着材の量は、被処理水の種類、吸着材の形態などに応じて適宜選択することができるが、例えば、バッチ式の場合、吸着材の量は、被処理水1Lあたり、0.1〜50g程度、好ましくは0.5〜30g程度であってもよい。
また、吸着材を被処理水に浸漬し撹拌を行う場合、機械的撹拌、気泡撹拌などにより、吸着材を撹拌してもよい。機械的撹拌を行う場合、周速として0.1〜20m/s程度であってもよく、0.3〜15m/s程度であってもよい。
一方で、連続式の場合、カラムに充填された吸着材に対して、被処理水のカラムへの通液速度は、例えば、処理水流速を吸着材容積で割った値である空塔速度として0.5〜200h−1程度であってもよく、好ましくは1〜150h−1程度であってもよい。
吸着工程では、被処理水中の溶存有機物、特に物理的に不可逆的な膜ファウリングを生じる原因物質を効率よく吸着することができ、特に、上述のようにバイオポリマーの吸着を効率よく行うことができる。例えば、吸着工程では、被処理水からのバイオポリマーの除去率(または吸着率)が、例えば15%以上であってもよく、好ましくは20%以上、より好ましくは30%以上であってもよい。なお、除去率は、後述する実施例に記載された方法により測定された値を示す。除去率が低すぎる場合、後段の膜ろ過工程における膜汚染の抑制効果が十分でない場合がある。
(高分子吸着材)
本発明で用いられる高分子吸着材について、説明する。
前記高分子吸着材は、親水性高分子を主骨格とし、特定の結合形成基を官能基として有する親水性高分子吸着材であり、25℃水中における膨潤度が20〜500%である。
本発明で用いられる親水性高分子吸着材が作用するメカニズムは、定かではないが、以下のようなメカニズムが推測される。(i)親水性高分子を主骨格とすることで水に対する濡れ性が高まり、溶存有機物の少なくとも一部の成分、特に物理的に不可逆的な膜ファウリングを生じる原因物質が吸着材内部まで浸透し、(ii)浸透した成分は、この成分との結合形成が可能な基(結合形成基)を有する吸着材と水素結合、配位結合、イオン結合などの相互作用により捕捉され、吸着材は、溶存有機物の少なくとも一部の成分、特に物理的に不可逆的な膜ファウリングを生じる原因物質(特に、親水性が高く膜汚染の懸念物質と考えられ始めているバイオポリマー)を効率的に吸着することができる、と推測される。
(iii)一方、従来のイオン交換樹脂では、ポリスチレンなどの疎水性高分子を主骨格として吸着性官能基を付与したものであるため、原水中に含まれる溶存有機物(特に、物理的に不可逆的な膜ファウリングを生じる原因物質)が疎水性高分子に対して接近することが困難であり、(iv)その場合、接近することができないため、化学吸着性官能基を有する場合であっても、吸着材は原因物質を吸着することができないのではないか、と推測される。
さらに、本発明で用いられる吸着材では、膨潤度が所定の範囲に制御されているため、親水性高分子を主骨格とする場合であっても、過度な膨潤により吸着材の取扱い性が悪化することを抑制しつつ、水中における溶存有機物を効率よく吸着することが可能である。
例えば、親水性高分子吸着材は、膨潤度が制御されているため、特許文献3に記載されている水中で膨潤し実質的に水に溶解しないカチオン性ポリマーと異なって、あらかじめ水への膨潤処理を行うことなく、被処理水と接触させてもよい。また、膨潤性が制御されているため、含水状態であったとしても、流通性に優れている。
親水性高分子吸着材は、主骨格として、親水性高分子を有している。例えば、高分子吸着材は、親水性高分子を主骨格として有し、その親水性高分子に対して、結合形成基が導入されたものであってもよい。または、主骨格として親水性高分子がマトリクス成分を構成するポリマーアロイなどであってもよい。
ここで、親水性高分子とは、一般に、Fedorの推算法により算出した凝集エネルギー密度(Ecoh)とモル分子容(V)を用いて、下記式にて算出された溶解度パラメータ(δ)が、22以上である高分子のことをいう。好ましくは24以上であり、25以上がさらに好ましい。なお、溶解度パラメータの上限は特に限定されないが、例えば、35程度であってもよい。
δ=[ΣEcoh/ΣV]1/2
親水性高分子は、上記溶解パラメータを満たすものであれば特に限定されないが、例えば、繰り返し単位中に水酸基、エーテル基、カチオン性基、アニオン性基、アミド基等の親水性基を有する高分子などが挙げられる。
例えば、親水性高分子としては、ポリビニルアルコール、エチレン−ビニルアルコール共重合体、ポリビニルアセタール(例えば、ポリビニルホルマール、ポリビニルブチラール)、ポリビニルアルキルアルコール、ポリアルキレングリコール、ポリビニルアルキルエーテル、ポリアルキレンオキシド、ポリ(メタ)アクリルアミド、ポリアクリロニトリル、カチオン性ポリマー(例えば、ポリエチレンイミン、ポリアリルアミン、ポリビニルアミン、ポリアミドアミンデンドリマー、ポリピリジン、ポリビニルピリジン、ポリアミノ酸、ポリジアリルジメチルアンモニウムハライド、ポリビニルベンジルトリメチルアンモニウムハライド、ポリジアクリルジメチルアンモニウムハライド、ポリジメチルアミノエチルメタクリレート塩酸塩、ポリヌクレオチドなど)、アニオン性ポリマー(例えば、ポリスチレンスルホン酸、ポリビニル硫酸、ポリ(メタ)アクリル酸、ポリマレイン酸、ポリアミック酸)、フェノール樹脂、ポリアミド、ポリビニルピロリドン、セルロース誘導体、デキストリン、キチン、およびキトサンからなる群より選ばれる少なくとも1種が好適に用いられる。
これらのポリマーは、他のコモノマー単位(例、マレイン酸、イタコン酸、アクリル酸等の不飽和カルボン酸単位、シラノール基、アルデヒド基、又はスルホン酸基を有するモノマー単位など)を有していてもよい。
親水性高分子の重量平均分子量は、高分子の種類に応じて適宜好ましい範囲を設定することが可能であるが、例えば、親水性高分子の重量平均分子量は、少なくとも5000以上(例えば、5000〜100000)であってもよく、好ましくは10000以上であってもよい。なお、重量平均分子量は、例えばGPCを用いて求めることができる。
特に好ましい親水性高分子としては、ポリビニルアルコール、エチレン−ビニルアルコール共重合体、ポリビニルアセタール(ポリビニルホルマール、ポリビニルブチラール)、及びポリアミド(例えば、ポリアミド6、ポリアミド10、ポリアミド6,6、ポリアミド11、ポリアミド12、ポリアミド6,12、ポリアミド6,10、ポリアミド6/6,6共重合体、ポリアミド6,6/6,10共重合体、ポリアミド6,11、ポリアミド6,6/6,10/6共重合体等)などが挙げられ、耐水性を有するだけでなく、成形性および親水性に優れる観点から、エチレン−ビニルアルコール共重合体が特に好ましい。
エチレン−ビニルアルコール共重合体において、エチレン単位の含量は、全モノマー単位中20〜60モル%であることが好ましく、より好ましくは25〜55モル%であってもよい。エチレン含量が少なすぎると、耐久性が悪くなるおそれがある。一方、エチレン含量が多すぎると、親水性が低下するおそれがある。
なお、ポリビニルアルコールに関しては、粘度平均重合度で規定してもよく、30℃水溶液の粘度から求めた粘度平均重合度が、例えば100〜15000程度の幅広い範囲から選択できる。耐久性を向上させる観点から、高重合度のものを用いるのが好ましく、その場合、例えば、粘度平均重合度は好ましくは800〜13000程度、さらに好ましくは1000〜10000程度であってもよい。
また、ポリビニルアルコールのけん化度も、目的に応じて適宜選択でき特に限定されるものではないが、例えば、88モル%以上、好ましくは90モル%以上、さらに好ましくは95モル%以上であってもよい。特に耐久性を向上させる観点からは、けん化度98モル%以上のものが好ましい。
本発明の高分子吸着材は、原水中に含まれる溶存有機物、特に物理的に不可逆的な膜ファウリングを生じる原因物質が、吸着材に対して吸着されるための結合形成基を有している。結合形成基は、吸着成分との各種結合(例えば、水素結合、配位結合、イオン結合など)を形成することが可能である。
例えば、結合形成基としては、水素結合形成基、キレート形成基、カチオン性イオン交換基、アニオン性イオン交換基などが挙げられ、吸着材に対して、原水中に含まれる溶存有機物、特に物理的に不可逆的な膜ファウリングを生じる原因物質への吸着性を付与することができる限り、特に限定されない。
親水性高分子吸着材は、親水性高分子を主骨格として有しており、親水性高分子自体が、その構造中に結合形成基を有していてもよいし、親水性高分子に対して、結合形成基が導入されたものであってもよい。その場合、結合形成基は、上記親水性高分子を作製する際に、結合形成基を含有するモノマー(またはその誘導体)を共重合することにより導入してもよいし、親水性高分子を作製した後、後変性により結合形成基を導入してもよい。官能基を導入する場合、導入される結合形成基は、親水性高分子の親水性基とは、異なる種類の官能基であってもよい。
また、導入される量は、全モノマー単位中2〜100モル%、好ましくは、3〜95モル%、より好ましくは、5〜90モル%であってもよい。
結合形成基は、例えば、N、S、PおよびOからなる群から選択された元素を少なくとも一つ含む化学吸着性官能基であってもよい。
具体的には、そのような官能基としては、アミノ基(1級アミノ基、2級アミノ基、3級アミノ基)、4級アンモニウム基、イミニウム基、イミダゾール基、4級イミダゾリウム基、ピリジル基、4級ピリジニウム基、水酸基、カルボキシル基、スルホネート基、スルホン酸基、スルホニウム基、メルカプト基、チオウレア基、ホスホネート基、ホスホン酸基、ホスホニウム基などが挙げられる。それらは塩の状態で存在していてもよい。これらの官能基は、単独でまたは二種以上組み合わせて存在していてもよい。これらのうち、好ましい官能基としては、アミノ基、4級アンモニウム基、イミニウム基、イミダゾール基、4級イミダゾリウム基、ピリジル基、4級ピリジニウム基であり、さらに好ましくは、アミノ基、4級アンモニウム基およびそれらの塩が挙げられる。
また、本発明の高分子吸着材は、上記親水性高分子をマトリクス成分とし、結合形成性官能基(結合形成基)を有する成分とアロイ化することにより、結合形成基を親水性高分子に導入したものであってもよい。導入の容易さの観点から、高分子吸着材は、結合形成基含有高分子(A)と親水性高分子マトリクス(B)のポリマーアロイであるのが好ましい。
[結合形成性基含有高分子(A)]
例えば、結合形成性基含有高分子(A)は、ポリスチレンスルホン酸(PSS)、ポリビニル硫酸(PVS)、ポリアクリル酸(PAA)、ポリメタクリル酸(PMA)、ポリマレイン酸、ポリアミック酸などのアニオン系ポリマーであってもよいし;ポリエチレンイミン、ポリアリルアミン、ポリピリジン、ポリビニルピリジン、ポリアミノ酸、ポリジアリルジメチルアンモニウムハライド、ポリビニルベンジルトリメチルアンモニウムハライド、ポリジアクリルジメチルアンモニウムハライド、ポリジメチルアミノエチルメタクリレート塩酸塩、ポリヌクレオチドなどのカチオン性ポリマーであってもよい。このような高分子は、単独でまたは二種以上組み合わせて使用してもよい。
これらのうち、親水性マトリクス高分子と組み合わせて、原水中に含まれる溶存有機物、特に物理的に不可逆な膜ファウリングを生じる原因物質をより効率よく吸着する観点から、上述のカチオン性ポリマーが好ましく、特に、強塩基性高分子(4級アンモニウム基含有高分子、4級ピリジニウム基含有高分子など)や、高カチオン密度を有する高分子(例えば、ポリエチレンイミン、ポリアリルアミンなど)が好ましい。
[親水性マトリクス高分子(B)]
親水性マトリクス高分子(B)は、特に限定されないが、例えば、親水性マトリクス高分子(B)は、親水性高分子で例示した高分子であってもよく、例えば、ポリビニルアルコール、エチレン−ビニルアルコール共重合体、ポリビニルアセタール(ポリビニルホルマール、ポリビニルブチラール)、ポリビニルアルキルアルコール、ポリアルキレングリコール、ポリビニルアルキルエーテル、ポリアルキレンオキシド、ポリ(メタ)アクリルアミド、ポリアクリロニトリル、カチオン性ポリマー、アニオン性ポリマー、フェノール樹脂、ポリアミド、ポリビニルピロリドン、セルロース誘導体、デキストリン、キチン、キトサンなどを挙げることができる。これらの高分子は、単独でまたは二種以上組み合わせて使用してもよい。
これらのポリマーは、他のコモノマー単位(例、マレイン酸、イタコン酸、アクリル酸等の不飽和カルボン酸単位、シラノール基、アルデヒド基、又はスルホン酸基を有するモノマー単位など)を有していてもよい。
特に好ましい親水性マトリクス高分子(B)としては、ポリビニルアルコール、エチレン−ビニルアルコール共重合体、ポリビニルアセタール(ポリビニルホルマール、ポリビニルブチラール)、及びポリアミド(例えば、ポリアミド6、ポリアミド10、ポリアミド6,6、ポリアミド11、ポリアミド12、ポリアミド6,12、ポリアミド6,10、ポリアミド6/6,6共重合体、ポリアミド6,6/6,10共重合体、ポリアミド6,11、ポリアミド6,6/6,10/6共重合体等)などが挙げられ、耐水性を有するだけでなく、成形性および親水性に優れる観点から、エチレン−ビニルアルコール共重合体が特に好ましい。
なお、親水性マトリクス高分子(B)に関し、その重量平均分子量、エチレン−ビニルアルコール共重合体におけるエチレン単位の含量、ポリビニルアルコールの粘度平均重合度およびけん化度については、上述の親水性高分子での記載事項と同様である。
[結合形成基含有高分子(A)と親水性マトリクス高分子(B)との質量比]
本発明の親水性高分子吸着材で、結合形成基含有高分子(A)と親水性高分子マトリクス(B)のポリマーアロイにおける、結合形成基含有高分子(A)と親水性マトリクス高分子(B)との割合は、高分子(A)が所定の範囲で分散する限り特に限定されないが、例えば、質量比で高分子(A)/高分子(B)=1/99〜70/30程度であってもよく、好ましくは5/95〜65/45程度、より好ましくは8/92〜60/40程度であってもよい。高分子(A)が多すぎると、耐水性が低下する恐れがあり、高分子(A)が少なすぎると、吸着性能が低下する傾向にある。
[その他の成分]
なお、本発明において、原水中に含まれる溶存有機物、特に物理的に不可逆的な膜ファウリングを生じる原因物質の吸着性を有する親水性高分子吸着材は、本発明の効果を阻害しない範囲内で、樹脂成分または賦形成分として、その他のポリマー高分子を含んでいてもよい。また、親水性高分子吸着材は、必要に応じて、例えば、架橋剤、酸化防止剤、安定剤、滑剤、加工助剤、帯電防止剤、着色剤、消泡剤、分散剤などの各種添加剤を含んでいてもよい。
(膨潤度)
本発明で用いられる高分子吸着材では、溶存有機物、特に物理的に不可逆的な膜ファウリングを生じる原因物質の吸着を可能にするとともに、ハンドリング性を良好にする観点などから、25℃水中における膨潤度が20〜500%の範囲内に保持されている。親水性高分子吸着材の膨潤度は、好ましくは30〜450%程度であってもよく、より好ましくは40〜400%程度であってもよい。なお、親水性高分子吸着材の膨潤度は、後述する実施例に記載された方法により測定された値を示す。
膨潤度が小さすぎると、溶存有機物、特に物理的に不可逆的な膜ファウリングを生じる原因物質を含有する溶液との接触が不十分となるためか、物理的に不可逆的な膜ファウリングを生じる原因物質の吸着性が不良となり、また、膨潤度が大きすぎると、過度の膨潤のため通液性が損なわれ、カラム取り出し性が不十分となる。
例えば、親水性高分子吸着材の膨潤性は、架橋剤により架橋することにより制御してもよいし、結合形成基含有高分子(A)に対して、低膨潤性または非膨潤性である親水性マトリクス高分子(B)(例えば、エチレン−ビニルアルコール共重合体、及びポリアミドなど)を組み合わせたアロイ材として制御してもよい。また、必要に応じて、アロイ材に対しても架橋をしてもよい。
特に、本発明の親水性高分子吸着材は、耐久性や膨潤性を制御する観点から、架橋剤により架橋していることが好ましい。架橋剤は、親水性高分子の架橋反応性基の種類に応じて適宜決定することができるが、例えば、エポキシ基、カルボキシル基、ハロゲン基、酸無水物基、酸ハライド基、ホルミル基、N−クロロホルミル基、クロロホーメイト基、アミジニル基、イソシアネート基、ビニル基、アルデヒド基、アゼチジン基、カルボジイミド基などから選択される少なくとも1種又は2種以上の官能基を少なくとも2個含む化合物が挙げられる。また、ジルコニル系架橋剤(硝酸ジルコニル、炭酸ジルコニウムアンモニウム、塩化ジルコニル、酢酸ジルコニル、硫酸ジルコニル)、チタン系架橋剤(チタン系架橋剤、チタンラクテート、チタンジイソプロポキシビス(トリエタノールアミネート))などを用いてもよい。このような架橋剤は、市販されている各種架橋剤を利用することができ、特に限定されないが、エポキシ基、ハロゲン基、イソシアネート基、ビニル基、アルデヒド基、アゼチジン基、カルボジイミド基などから選択される少なくとも1種又は2種以上の官能基を少なくとも2個含む化合物が好ましい。
例えば、架橋剤による架橋構造の導入は、親水性高分子吸着材を合成時にジビニルモノマーなどの共重合成分を用いることにより、架橋構造を導入してもよい。
また、架橋剤と親水性高分子吸着材の構成成分と合わせて溶融混練することにより架橋構造を導入してもよい。
溶融混練を行う場合、親水性高分子吸着材の構成成分、架橋剤、必要に応じて任意成分を、二軸型の混練機などを用いて溶融混練する方法(溶融混練法)が挙げられる。当該溶融混練法によれば、各成分が均一に分散した吸着材を得ることが容易であるという利点を有する。
溶融成形を行う場合、例えば、架橋剤を少なくとも除く親水性高分子吸着材材料を、二軸型の混練機などを用いて溶融混練し、溶融混練物を押出成形、射出成形などにより各種形状の成形体を得た後、この成形体を架橋剤含有溶液に浸漬させることにより、架橋処理を施してもよい。
また、一旦、親水性高分子吸着材材料を溶融成形、溶液成形などにより成形し、各種形状の成形体を形成した後、架橋剤を含む溶液に成形体を浸漬させて架橋構造を導入してもよい。
一方で、溶液成形を行う場合、例えば、架橋剤を少なくとも除く親水性高分子吸着材材料から、適当な溶媒を用いて混合液を調製し、この混合液を用いて、キャスト製膜または乾式紡糸、湿式紡糸などにより、膜状または繊維状の成形体を得た後、この成形体を架橋剤含有溶液に浸漬させることにより、架橋処理を施してもよい。
このような親水性高分子吸着材は、特にバイオポリマーの吸収性に優れており、25℃のバイオポリマーモデル水(アルギン酸ナトリウム濃度:4.3mg―C/Lのアルギン酸ナトリウム水溶液)およびフミン質モデル水(フミン酸ナトリウム濃度:4.3mg―C/Lのフミン酸ナトリウム水溶液)のそれぞれにおいて、アルギン酸ナトリウムの吸着率(A)と、フミン酸ナトリウムの吸着率(B)との比が、例えば、(A)/(B)=1.0〜10程度、好ましくは1.1〜9程度、より好ましくは1.5〜8程度であってもよい。なお、ここでそれぞれのモデル水において、バイオポリマーモデルとしてはアルギン酸ナトリウムを用い、フミン質モデルとしてはフミン酸ナトリウムを用いている。またそれぞれの吸着率は、後述する実施例に記載された方法により測定された値を示す。
また、本発明で用いられる親水性高分子吸着材は、25℃のバイオポリマーモデル水(アルギン酸ナトリウム濃度:4.3mg―C/Lのアルギン酸ナトリウム水溶液)において、アルギン酸ナトリウムの吸着率(A)が、例えば、30%以上であってもよく、好ましくは35%以上であってもよく、さらに好ましくは45%以上であってもよい。吸着率については、後述する実施例に記載された方法により測定された値を示す。
(親水性高分子吸着材の形状)
親水性高分子吸着材は、被処理水からの原水中に含まれる溶存有機物、特に物理的に不可逆的な膜ファウリングを生じる原因物質の吸着処理に用いることができる限り、各種形状を有することができ、例えば、粒子状、繊維状、各種立体形状などであってもよい。吸着効率を向上させる観点から、親水性高分子吸着材は、粒子状または繊維状であるのが好ましい。
高分子吸着材が粒子状である場合、その粒子径は特に制限はなく、例えば、0.5μm〜20mmの幅広い範囲から選択可能であるが、ろ別により固液分離を行う観点から、例えば粒子径は1μm以上であってもよく、10μm以上であってもよく、100μm以上であってもよい。一方で、粒子径は10mm以下であってもよく、5mm以下であってもよく、4mm以下、または3mm以下であってもよい。粒子径が小さすぎる場合、微粉が舞い易いなど取り扱いが難しい。粒子径が大きすぎる場合、吸着性能が充分に得られないことがある。なお粒子径は、篩分けにより分級された値を示す。
また、高分子吸着材の25℃水中での平均粒子径は、例えば、目的に応じて、1μm以上であってもよく、5μm以上、50μm以上、100μm超(例えば、110μm以上)であってもよく、または200μm以上であってもよい。また、高分子吸着材の25℃水中での膨潤状態での平均粒子径は、10mm以下であってもよく、4.5mm以下であってもよく、3.5mm以下であってもよく、3mm以下であってもよい。。なお平均粒子径は、後述する実施例に記載された方法により測定された値を示す。
親水性高分子吸着材が繊維状である場合、その平均繊維径は特に制限はないが、0.1〜1000μmの幅広い範囲から選択することができ、例えば1〜500μmであってもよく、好ましくは2〜200μmであってもよい。なお、平均繊維径は、JIS L 0105で規定される標準状態の繊維の10箇所をマイクロメーターにより繊維径を測定し、その平均値を平均繊維径として算出できる。
また、繊維としては、連続繊維であってもよいし、短繊維であってもよい。短繊維の場合、繊維長は、例えば、1〜100mm程度であってもよく、好ましくは5〜80mm程度、より好ましくは10〜50mm程度であってもよい。
(膜ろ過工程)
吸着工程の後、吸着処理された吸着処理水(または供給水)は、必要に応じて、膜ろ過工程において膜ろ過される。膜ろ過工程は、一段であってもよいし、多段であってもよい。膜ろ過工程の膜の種類については、同一の膜を用いても良いし、異なる種類の膜を組み合わせてもよい。
膜ろ過工程は、水処理の目的に応じて、精密ろ過膜(MF膜)、限外ろ過膜(UF膜)、ナノろ過膜(NF膜) 、逆浸透(RO)膜などを用いて適宜行うことができる。膜ろ過工程では、これらの膜を単独で一段以上用いて膜ろ過を行ってもよいし、複数の種類の膜を組み合わせ、それぞれ一段以上用いて膜ろ過を行ってもよい。
また、複数の種類の膜を組み合わせる場合、MF膜またはUF膜で供給処理された処理水を膜ろ過処理した後、NF膜または逆浸透(RO)膜でさらに膜ろ過処理を行ってもよい。
膜ろ過工程におけるろ過膜の膜素材としては、特に限定されず、公知のものはいずれも適用可能である。例えば、UF膜やMF膜の膜素材としては、酢酸セルロース、ポリアクリロニトリル、ポリエチレン、ポリエーテルスルホン、ポリスルホン、ポリプロピレン、ポリフッ化ビニリデン、セラミックなどが挙げられる。NF膜の膜素材としては、ポリアミド系、ポリピペラジンアミド系、ポリエステルアミド系、あるいは水溶性のビニルポリマーを架橋したものなどが挙げられる。また、RO膜の膜素材としては、酢酸セルロース系、ポリアミド系などが挙げられる。
膜形態については、特に限定されず、平膜、管状膜、中空糸膜等、いずれの形状のものでもよい。たとえば膜厚は、10μm〜1mmの範囲、中空糸膜の場合、内径が0.2〜2mm程度、外径が0.4〜5mm程度であってもよい。また、ろ過膜は、網目状構造、ハニカム状構造、微細間隙構造などの微細多孔質構造を有していてもよい。
これらのろ過膜は、モジュール化されていてもよい。例えば、平膜状の場合はスパイラル型、プリーツ型、プレート・アンド・フレーム型、円盤状のディスクを積み重ねたディスクタイプであってもよく、中空糸膜の場合は、中空糸をU字状やI字状に束ねて容器に収納した中空糸膜型であってもよい。
ろ過流量は、膜への供給水の種類、ろ過膜の種類などに応じて適宜設定することが可能であるが、例えば、クロスフロー方式でろ過を行う場合、ろ過流量は、Flux0.5〜5.0(m/m/日)でろ過膜に対して通液してもよく、好ましくはFlux1.0〜4.0(m/m/日)であってもよい。
特に、本発明の水処理方法では、被処理水が、塩類を含有しているため、吸着工程後の吸着処理水を、RO膜などによる膜処理に供給し、水分中の塩類を除去してもよい。
本発明の水処理方法では、特定の吸着工程を行うことで、ろ過膜への供給水から膜ファウリングの原因物質である溶存有機物、特に物理的に不可逆的な膜ファウリングを生じる原因物質を低減させることができる。その結果、ろ過膜に膜ファウリング(特に物理的に不可逆な膜ファウリング)が発生するのを抑制し、ろ過膜の目詰まりにより、ろ過膜の透水性が低下するのを抑制することが出来る。
さらに、供給水中の原因物質の量を低減することができるため、膜ファウリングによりろ過膜が劣化するのを抑制することができ、それにより、膜の使用寿命を延命化することができる。
本発明の水処理方法では、発明の効果を損なわない範囲で、必要に応じて、既存の水処理方法と組み合わせてもよい。既存の水処理方法としては、例えば、砂ろ過処理、粗ろ過処理、凝集沈殿処理、オゾン処理、既存の吸着材や活性炭などを用いた吸着処理、生物処理などが挙げられる。これらの処理は、単独でまたは二種以上組み合わせて行ってもよい。また、これらの水処理は、適宜、吸着処理前および/または吸着処理後に行われればよい。
また、吸着前処理により、例えば、粒子径が5μm以上の粒子、好ましくは1μm以上の粒子、より好ましくは0.45μm以上の粒子が排除された水を、吸着工程において被処理水として用いるのが好ましい。
(再生工程)
本発明で用いられる高分子吸着材は、必要に応じて、吸着工程の後、再生工程を経て再利用してもよい。再生工程では、溶存有機物の少なくとも一部の成分を吸着した吸着材を水性媒体と接触させることにより、前記吸着材を再生することができる。
水性媒体は、水を主成分(例えば、60質量%以上)とする液体からなる媒体であり、例えば、水、または金属イオン含有水溶液であってもよい。また、再生工程での水性媒体との接触は、一段であっても多段であってもよく、多段である場合、複数の種類の水性媒体を別々に用いてもよい。
金属イオン含有水溶液に用いられる金属イオンとしては、原因物質の脱離をすることが可能である限り特に限定されないが、典型的にはアルカリ金属イオンが挙げられ、具体的には、塩化ナトリウム水溶液、塩化カリウム水溶液、塩化リチウム水溶液、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸リチウムなどが挙げられる。水性媒体は、被処理水に存在する塩類と同種の金属イオンを含む金属イオン含有水溶液であってもよい。金属イオン含有水溶液の濃度は、水に対する溶質の割合として、例えば0.1〜10質量%程度であってもよく、好ましくは0.3〜8質量%程度、より好ましくは0.5〜6質量%程度であってもよい。
水性媒体のpHは、例えば、5〜14程度であってもよく、好ましくは5.5〜12程度、より好ましくは6〜11程度であってもよい。pHが中性領域(pH6〜8)であると、再生処理後の水性媒体の廃棄処理上好ましく、pHが弱塩基性(pH8〜11)であると、再生性能が良好である。
再生工程で用いられる水性媒体の温度は、吸着工程での被処理液の温度以上であってもよく、好ましくは、吸着工程での被処理液の温度よりも高温であるように設定されてもよい。吸着材が接触する液体の温度条件を、吸着工程と再生工程との間で変化させることにより、吸着工程で吸着材に対して吸着した原因物質であっても、再生工程においてより効率よく吸着材から脱離することが可能である。
再生工程では、水性媒体と、親水性高分子再生材とを接触させることができる限り特に限定されず、例えば、バッチ式として、水性媒体へ吸着材を添加し、必要に応じて公知の方法で撹拌することにより、再生処理を行ってもよいし;連続式として、親水性高分子吸着材を充てんしたカラムに対し、水性媒体を通液させることにより再生処理を行ってもよい。また、再生工程は、一段であってもよいし、多段であってもよい。
再生工程での水性媒体の温度は、原因物質を脱離することが出来る限り、適当な温度を選択することができるが、水性媒体の温度は、脱離性の観点から、例えば40〜110℃であってもよく、好ましくは45〜100℃、より好ましくは50〜90℃であってもよい。
吸着材に対して用いられる水性媒体の量は、水性媒体の種類、吸着材の形態、再生工程の形式(バッチ式または連続式)などに応じて適宜選択することができる。また、吸着材を水性媒体に浸漬し撹拌を行う場合、機械的撹拌、気泡撹拌などなどにより、吸着材を撹拌してもよい。また、機械的撹拌を行う場合、周速として0.1〜20m/s程度であってもよく、0.3〜18m/s程度であってもよい。
再生工程により、再生された吸着材は、必要に応じて、公知のろ別手段により分離され、再度、吸着工程へと供されてもよい。
再生工程では、水性媒体との接触により吸着材を効率よく再生することができる。例えば、再生工程では、再生処理前後での吸着材の吸着率を、再生効率として評価することができ、例えば、再生効率は、30%以上であってもよく、好ましくは50%以上、より好ましくは80%以上、特に好ましくは90%以上であってもよい。なお、再生効率は、後述する実施例に記載された方法により測定された値を示す。
以下、実施例により本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例により何ら限定されるものではない。なお、実施例、比較例中の「%」および「部」は特に断りのない限り、それぞれ「質量%」および「質量部」を表す。
(バイオポリマーの吸着率)
バイオポリマーのモデル物質としてアルギン酸ナトリウム(和光純薬工業(株)、型番:199−09961)の吸着評価を実施した。各実施例と比較例で得られた吸着材1.0g(12時間真空乾燥機にて乾燥させた状態での質量であり、以下の記載において同じ)を200mLのバイオポリマー含有のモデル水1(アルギン酸ナトリウム濃度:4.3mg―C/L、NaCl:3.5%)もしくはモデル水2(アルギン酸ナトリウム濃度:4.3mg―C/L、NaCl:2.0%)に添加し、マグネチックホットスターラーにより攪拌した(180rpm、25℃)。18時間攪拌の前後の上澄み液40mlを全有機炭素計によって評価し、該吸着材によるバイオポリマーの吸着率を以下のように評価した。
バイオポリマーの吸着率=(吸着評価前のアルギン酸ナトリウム濃度―吸着評価後のアルギン酸ナトリウム濃度)/吸着評価前のアルギン酸ナトリウム濃度×100(%)
(フミン質の吸着率)
フミン質のモデル物質としてフミン酸ナトリウム(Aldrich社製、型番:H16752−100G)の吸着評価を実施した。各実施例と比較例で得られた吸着材1.0gを200mLのフミン質含有のモデル水3(フミン酸ナトリウム濃度:4.3mg―C/L、NaCl:3.5%)もしくはモデル水4(フミン酸ナトリウム濃度:4.3mg―C/L、NaCl:2.0%)に添加し、マグネチックホットスターラーにより攪拌した(180rpm、25℃)。18時間攪拌の前後の上澄み液40mlを全有機炭素計によって評価し、該樹脂によるフミン酸ナトリウムの吸着率を以下のように評価した。
フミン質の吸着率=(吸着評価前のフミン酸ナトリウム濃度―吸着評価後のフミン酸ナトリウム濃度)/吸着評価前のフミン酸ナトリウム濃度×100(%)
(バイオポリマーとフミン質の吸着率の比)
上記のバイオポリマーの吸着率とフミン質の吸着率の比から、以下の算式によりバイオポリマーとフミン質の吸着率の比を算出した。
バイオポリマーとフミン質の吸着率の比=バイオポリマーの吸着率/フミン質の吸着率
(平均粒子径)
実施例および比較例で用いられた吸着材の平均粒子径は、25℃の水に12時間浸漬後、レーザー回折/散乱式粒子径分布測定装置((株)堀場製作所製)にて測定した。
(平均繊維径)
実施例に記載の平均繊維径は、得られた繊維の10箇所をマイクロメーターにより繊維径を測定し、その平均値を平均繊維径とした。
(膨潤度の評価)
吸着材1gを25℃の水に12時間浸漬させた後、吸着材を遠心脱水して秤量(A)した後、105℃で4時間乾燥して秤量(B)する。以下の式より、膨潤度を求めた。
膨潤度=[(A−B)/(B)]×100 (%)
(吸着材の再生)
アルギン酸ナトリウムを吸着後、ろ別し、所定の温度に設定した純水もしくはNaCl水溶液に浸漬、所定時間攪拌することでアルギン酸ナトリウムを脱離させ再生処理した。下記式により、再生効率を評価した。
吸着材の吸着率=再生処理後の吸着率/再生処理前の吸着率×100(%)
[実施例1]
主骨格である親水性高分子としてエチレン−ビニルアルコール共重合体((株)クラレ製、「F−104」、δ=28)80重量部とポリエチレンイミン((株)日本触媒製、「エポミンSP−200」)20質量部をラボプラストミルにて、210℃において3分間溶融混練し、得られた混練物を冷却後、粉砕処理を施した。得られた粉砕物に対し、篩を用いて分級することで粒子径0.4〜0.7mmの粒子を得た。さらに、この粒子をエポキシ化合物(ナガセケムテックス(株)製、「デナコールEX−810」)2%の25℃の溶液で1時間架橋処理を行い、ろ別後、多量の80℃のNaCl3.5%の水溶液に浸漬、攪拌洗浄することで、表1に示すとおり目的の吸着材1を得た。得られた吸着材の25℃水中の膨潤度は97%、平均粒子径0.7mmであった。
得られた吸着材1をモデル水1およびモデル水3のそれぞれに浸漬、攪拌させ、アルギン酸ナトリウムおよびフミン酸ナトリウムの吸着率を求めた。評価結果を表2に示す。
[実施例2]
アコジェルC(MTアクアポリマー(株)製)の鉱物油エマルジョンをアセトンにて再沈洗浄後、乾燥させ4級アンモニウム基を有する粒子を得た。該粒子15質量部と主骨格である親水性高分子としてエチレン−ビニルアルコール共重合体((株)クラレ製、「G−156」、δ=25)85部をラボプラストミルにて180℃において3分間溶融混練し、得られた混練物を冷却後、粉砕処理を施した。得られた粉砕物に対し、篩にて分級することで粒子径0.1〜0.5mmの粒子状の複合体を得た。さらに、この粒子をエポキシ化合物(ナガセケムテックス(株)製、「デナコールEX−810」)2%の25℃の溶液で1時間架橋処理を行い、ろ別後、多量の80℃のNaCl3.5%の水溶液に浸漬、攪拌洗浄することで、表1に示すとおり目的の吸着材2を得た。得られた吸着材の25℃水中の膨潤度は60%、平均粒子径0.4mmであった。
得られた吸着材2をモデル水1およびモデル水3のそれぞれに浸漬、攪拌させ、アルギン酸ナトリウムおよびフミン酸ナトリウムの吸着率を求めた。評価結果を表2に示す。
[実施例3]
主骨格である親水性高分子としてエチレン−ビニルアルコール共重合体((株)クラレ製、「E−105」、δ=26)75重量部とポリエチレンイミン((株)日本触媒製、「エポミンSP−200」)25質量部をラボプラストミルにて210℃において3分間溶融混練し、得られた混練物を冷却後、粉砕処理を施した。得られた粉砕物に対し、篩を用いて分級することで粒子径0.4〜0.7mmの粒子を得た。さらに、この粒子をエポキシ化合物(ナガセケムテックス(株)製、「デナコールEX−810」)2%の25℃の溶液で1時間架橋処理を行い、ろ別後、多量の80℃のNaCl3.5%の水溶液に浸漬、攪拌洗浄することで、表1に示すとおり目的の吸着材3を得た。得られた吸着材の25℃水中の膨潤度は88%、平均粒子径0.6mmであった。
得られた吸着材3をモデル水1およびモデル水3のそれぞれに浸漬、攪拌させ、アルギン酸ナトリウムおよびフミン酸ナトリウムの吸着率を求めた。評価結果を表2に示す。
[実施例4]
主骨格である親水性高分子としてエチレン−ビニルアルコール共重合体((株)クラレ製、「G−156」、δ=25)65重量部とポリエチレンイミン((株)日本触媒製、「エポミンSP−200」)35質量部をラボプラストミルにて210℃において3分間溶融混練し、得られた混練物を冷却後、粉砕処理を施した。得られた粉砕物に対し、篩を用いて分級することで粒子径0.4〜0.7mmの粒子を得た。さらに、この粒子をエポキシ化合物(ナガセケムテックス(株)製、「デナコールEX−810」)2%の25℃の溶液で1時間架橋処理を行い、ろ別後、多量の80℃のNaCl3.5%の水溶液に浸漬、攪拌洗浄することで、表1に示すとおり目的の吸着材4を得た。得られた吸着材の25℃水中の膨潤度は110%、平均粒子径0.8mmであった。
得られた吸着材4をモデル水2およびモデル水4のそれぞれに浸漬、攪拌させ、アルギン酸ナトリウムおよびフミン酸ナトリウムの吸着率を求めた。評価結果を表2に示す。
[実施例5]
主骨格である親水性高分子としてポリビニルアルコール((株)クラレ製「PVA―117」、δ=33)88質量部、ポリアリルアミン(ニットーボーメディカル(株)製「PAA−15C」)12質量部となるような樹脂組成とし、それら樹脂を水に溶解させた。当該溶液を直径0.08mm、孔数1000のノズルから40℃の飽和硫酸ナトリウム浴に湿式紡糸し、15m/分の速度で引き取った。形成した糸はさらに2倍に湿延伸した後、130℃で乾燥させ、230℃で5倍の乾熱延伸を施した。この繊維をさらにグルタルアルデヒド1%、マレイン酸2%の40℃の溶液に浸漬し架橋処理を行い、その後、水にて洗浄後、NaOH水溶液にて洗浄、さらにNaCl3.5%の水溶液に浸漬、攪拌洗浄することで目的の吸着材5(平均繊維径10μm、繊維長3cm)を得た。得られた吸着材の25℃水中の膨潤度は65%であった。
得られた吸着材5をモデル水1およびモデル水3のそれぞれに浸漬、攪拌させ、アルギン酸ナトリウムおよびフミン酸ナトリウムの吸着率を求めた。評価結果を表2に示す。
[実施例6]
特開昭59−187005号公報に記載の方法で、末端にメルカプト基を有するビニルアルコール系重合体を合成した。H−NMR測定により求めたビニルアルコール単位の含有量(けん化度)は98.5モル%、JIS K6726に準拠して測定した粘度平均重合度は1500であった。
次に、水563g、上記の末端メルカプト基含有ポリビニルアルコール110gを仕込み、窒素雰囲気下で攪拌しつつ、95℃まで加熱して該ポリビニルアルコールを溶解した後、室温まで冷却した。該水溶液に、ビニルベンジルトリメチルアンモニウムクロライド57.1gを攪拌しつつ添加した後、70℃まで加温し、過硫酸カリウムの2.5%水溶液88.8mLを1.5時間かけて添加、さらに、75℃で1時間維持して重合を進行させ、固形分濃度20%のポリビニルアルコール−ポリビニルベンジルトリメチルアンモニウムクロライドの共重合体である水溶性重合体の水溶液を得た。
得られた水溶液の一部を乾燥させた後、重水に溶解し、H−NMR測定を行ったところ、該共重合体中の重合性不飽和単量体含有量、すなわち、該重合体中の単量体単位の総数に対するビニルベンジルトリメチルアンモニウムクロライド単量体単位の数の割合は10モル%であった。
該重合体の水溶液を50g入れ、イオン交換水を加えて固形分濃度15%に調製した。この水溶液をポリエチレンテレフタレート膜上にアプリケーターを用いてキャスト製膜し、80℃で30分間乾燥した。こうして得られた膜を、170℃で30分間熱処理し、物理的な架橋を生じさせた。ついで、該膜を350gの硫酸ナトリウムが溶解した1Lの水溶液に浸漬させ、該水溶液にそのpHが1になるように濃硫酸を加え、さらにグルタルアルデヒドの3%水溶液として該膜を浸漬し、50℃で3時間架橋処理を行なった。架橋処理の後、該膜をイオン交換水、NaClの3.5%水溶液で洗浄、乾燥させたところ、厚み70μmの膜を得た。この膜を2mm角にカットし、表1に示すとおり目的の吸着材6を得た。得られた吸着材の25℃水中の膨潤度は30%であった。
得られた吸着材6をモデル水1およびモデル水3のそれぞれに浸漬、攪拌させ、アルギン酸ナトリウムおよびフミン酸ナトリウムの吸着率を求めた。評価結果を表2に示す。
[比較例1]
25℃水中の膨潤度が82%であるスチレン系ポリアミン型である市販イオン交換樹脂(三菱化学(株)製、「ダイヤイオンWA−20」、平均粒子径:0.5mm)、主体高分子はポリスチレンでありδ=20)を多量の80℃熱水にて浸漬、攪拌洗浄することで吸着材7を得た。得られた吸着材7をモデル水1およびモデル水3のそれぞれに浸漬、攪拌させ、アルギン酸ナトリウムおよびフミン酸ナトリウムの吸着率を求めた。評価結果を表2に示すが、吸着材7は、アルギン酸ナトリウムの吸着性能はほとんど有していなかった。
[比較例2]
25℃水中の膨潤度が58%である市販の粒状活性炭(和光純薬工業(株)製、「Charcol activated」、平均粒子径:0.7mm)を多量の80℃熱水にて浸漬、攪拌洗浄後、吸着材8を得た。
得られた吸着材8をモデル水1およびモデル水3のそれぞれに浸漬、攪拌させ、アルギン酸ナトリウムおよびフミン酸ナトリウムの吸着率を求めた。評価結果を表2に示すが、吸着材8は、アルギン酸ナトリウムの吸着性能はほとんど有していなかった。
[比較例3]
25℃水中の膨潤度が150%である市販の陰イオン吸着材(ダウケミカル日本(株)製、「MARATHON MSA」、平均粒子径:0.6mm)、主体高分子はポリスチレンでありδ=20)を多量の80℃熱水にて浸漬、攪拌洗浄後、吸着材9を得た。吸着材9を用いて、モデル水1およびモデル水3のそれぞれに浸漬、攪拌させ、アルギン酸ナトリウムおよびフミン酸ナトリウムの吸着率を求めた。結果を表2に示すが、この場合、アルギン酸ナトリウムの吸着率が実施例と比べて低いだけでなく、アルギン酸ナトリウムの吸着性能に比べフミン質の吸着性能が高いことがわかった。
Figure 2017018844
Figure 2017018844
表2に示すように、実施例1〜6では、塩化ナトリウムを含むモデル水から、アルギン酸ナトリウムおよびフミン酸ナトリウムの双方とも吸着することが可能であり、特にアルギン酸ナトリウムの吸着性に優れている。これらの実施例では、アルギン酸ナトリウムの吸着率(A)と、フミン酸ナトリウムの吸着率(B)との比(A)/(B)が1.5倍以上を示している。そのため、本発明の吸着材は、例えば、フミン質がバイオポリマーよりも多く存在しているような場合であっても、効率的にバイオポリマーを吸着できることを示唆している。
特に、実施例1〜4では、親水性高分子として、エチレン−ビニルアルコール共重合体を母体として用いているためか、アルギン酸ナトリウムを高い吸着率で吸着することが可能である。
[実施例7]
実施例1に従い、モデル水1を用いて吸着材1にアルギン酸ナトリウムを吸着させた後、吸着材をろ別した。次いで、ろ別した吸着材を80℃に調整した純水に浸漬し、1時間攪拌させることで再生処理を行った。その後、再生処理された吸着材をろ別回収した後、再度、実施例1と同様にしてモデル水1を用いてアルギン酸ナトリウムの吸着率を求めた。評価結果を表3に示す。
[実施例8]
実施例3に従い、モデル水1を用いて吸着材3にアルギン酸ナトリウムを吸着させた後、吸着材をろ別した。次いで、ろ別した吸着材を90℃に調整した純水に浸漬し、1時間攪拌させることで再生処理を行った。その後、再生処理された吸着材をろ別回収した後、再度、実施例1と同様にしてモデル水1を用いてアルギン酸ナトリウムの吸着率を求めた。評価結果を表3に示す。
[実施例9]
実施例4に従い、モデル水2を用いて吸着材4にアルギン酸ナトリウムを吸着させた後、吸着材をろ別した。次いで、ろ別した吸着材を60℃に調整した0.25%NaCl水溶液に浸漬し、24時間攪拌させることで再生処理を行った。その後、再生処理された吸着材をろ別回収した後、再度、実施例1と同様にしてモデル水2を用いてアルギン酸ナトリウムの吸着率を求めた。評価結果を表3に示す。
Figure 2017018844
表3に示すように、アルギン酸ナトリウムを吸着した吸着材に対して、再生処理を行った実施例7〜9において、再生処理後の吸着材は、アルギン酸ナトリウムを再び高い吸着率で吸着することが可能である。その再生効率は、実施例7〜9のいずれも95%以上である。

Claims (15)

  1. 溶存有機物を含有する原水と、高分子吸着材とを接触させ、高分子吸着材により溶存有機物の少なくとも一部の成分を吸着させる吸着工程を少なくとも備える水処理方法であって、
    原水が、0.5質量%以上の塩を含む水であり、
    高分子吸着材が、親水性高分子を主骨格とし、前記成分との結合形成が可能な基(以下、結合形成基と称する)を官能基として有する親水性高分子吸着材であり、25℃水中における膨潤度が20〜500%である、水処理方法。
  2. 請求項1の水処理方法において、結合形成基が、水素結合、イオン結合、およびキレート結合からなる群から選択された少なくとも一種の結合の形成能を有する、水処理方法。
  3. 請求項1または2の水処理方法において、結合形成基が、前記親水性高分子に含まれる親水性基とは異なる種類である、水処理方法。
  4. 請求項1〜3のいずれか一項の水処理方法において、吸着工程で吸着された成分が、バイオポリマーを含む、水処理方法。
  5. 請求項1〜4のいずれか一項の水処理方法において、吸着工程において、吸着工程で吸着された成分が、Stefan A. Huber et al. Water Research 45 (2011) pp879-885に記載された方法により測定した、LC−OCDによる保留時間が、25〜38分の成分を含む、水処理方法。
  6. 請求項1〜5のいずれか一項の水処理方法において、親水性高分子吸着材は、25℃のバイオポリマーモデル水(アルギン酸ナトリウム濃度:4.3mg―C/Lのアルギン酸ナトリウム水溶液)およびフミン質モデル水(フミン酸ナトリウム濃度:4.3mg―C/Lのフミン酸ナトリウム水溶液)のそれぞれに対して、アルギン酸ナトリウムの吸着率(A)と、フミン酸ナトリウムの吸着率(B)との比が、(A)/(B)=1.0〜10である、水処理方法。
  7. 請求項1〜6のいずれか一項の水処理方法において、高分子吸着材が、親水性高分子を母体として化学吸着性官能基が導入されており、前記親水性高分子が、ポリビニルアルコール、エチレン−ビニルアルコール共重合体、ポリビニルアセタール、ポリビニルアルキルアルコール、ポリアルキレングリコール、ポリビニルアルキルエーテル、ポリアルキレンオキシド、ポリ(メタ)アクリルアミド、ポリアクリロニトリル、カチオン性ポリマー、アニオン性ポリマー、フェノール樹脂、ポリアミド、ポリビニルピロリドン、セルロース誘導体、デキストリン、キチン、およびキトサンからなる群から選択される少なくとも1種を含む、水処理方法。
  8. 請求項1〜7のいずれか一項の水処理方法において、高分子吸着材は、結合形成基として、アミノ基、4級アンモニウム基およびそれらの塩からなる群から選択された少なくとも一種の官能基を有する、水処理方法。
  9. 請求項1〜8のいずれか一項の水処理方法において、吸着材が、結合形成基含有高分子(A)と、親水性マトリクス高分子(B)とを含むポリマーアロイで構成される、水処理方法。
  10. 請求項1〜9のいずれか一項の水処理方法において、高分子吸着材の25℃水中での平均粒子径が、1μm〜10mmである、水処理方法。
  11. 請求項1〜10のいずれか一項の水処理方法において、さらに、吸着工程により得られた吸着処理水を、膜ろ過処理により膜ろ過する、膜ろ過工程を含む、水処理方法。
  12. 請求項11の水処理方法において、膜ろ過工程が、限外ろ過(UF)膜、精密ろ過(MF)膜、ナノろ過(NF)膜、および逆浸透(RO)膜からなる群から選択される少なくとも一種の膜を用いて、一段または多段にて行われる、水処理方法。
  13. 請求項1〜12のいずれか一項の水処理方法において、さらに、原因物質を吸着した吸着材を水性媒体と接触させ、前記吸着材を再生する再生工程を備える、水処理方法。
  14. 請求項13の水処理方法において、再生工程で用いられる水性媒体が、水、または金属イオン含有水溶液である、水処理方法。
  15. 請求項13または14の水処理方法において、再生工程で用いられる水性媒体の温度が40℃〜110℃である、水処理方法。
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