JP2017018147A - 硫酸化化合物を含む幹細胞増殖用培地 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】本発明は、線維芽細胞成長因子(FGF)を含む幹細胞増殖用培地であって、FGF存在下で幹細胞の増殖促進に働く濃度で硫酸化化合物又はその薬学的に許容可能な塩を含むことを特徴とする、培地、FGFを含む幹細胞増殖用培地を用いた幹細胞の培養方法であって、FGF存在下で幹細胞の増殖促進に働く濃度で硫酸化化合物又はその薬学的に許容可能な塩を培地に添加することを特徴とする、方法等を提供する。
【選択図】なし
Description
特許文献1には、カラギーナンがbFGFを安定化することが開示されている。当該文献の実施例には、ヘパリン、デキストラン硫酸、カラギーナン等の硫酸化多糖類を含む保護剤が、5倍量(w/w)のbFGF(180μg/200μl)を、トリプシンによる加水分解(実施例1)及び熱による変性(実施例3)から保護することが記載されている。トリプシンによる加水分解からの保護には、当該保護剤に対するbFGFの重量比が5〜7以下である必要があることも開示されている(実施例2)。
特許文献2には、FGFもしくはそのムテインと硫酸化グルカンとを水性媒体中で接触させることを特徴とするFGFもしくはそのムテインの安定化方法等が開示されている。当該文献の実施例には、硫酸化グルカンの添加により水性媒体中でFGFの活性が安定に保持されることが開示されている。
また非特許文献1には、ヘパリン又はヘキシウロニルヘキソサミノグリカン硫酸(HHS−4)がbFGFを不活性化から保護しその生理活性を増強することが記載されているが、当該効果は高濃度のヘパリン(20μg/ml)又はHHS−4(200μg/ml)を細胞と接触させた場合にのみ見られる一方で、ヘパリンについては高濃度(bFGFの濃度にもよるが例えば10μg/ml以上)では毒性によるとみられる細胞増殖抑制が見られることが記載されている。
また特許文献4には、グルコースのポリマー等の糖質からなる高分子がヒト間葉系幹細胞の増殖促進に働くことが記載されているが、糖質からなる高分子の有効濃度は2.5 mg/ml〜100 mg/mlの範囲であることが開示されている。
[1]線維芽細胞成長因子(FGF)を含む幹細胞増殖用培地であって、FGF存在下で幹細胞の増殖促進に働く濃度で硫酸化化合物又はその薬学的に許容可能な塩を含むことを特徴とする、培地(但し、硫酸化化合物が硫酸化多糖である場合における硫酸化化合物の含有量は250ng/ml以下)。
[2]硫酸化化合物が、硫酸化糖類である、[1]に記載の培地(但し、硫酸化糖類が硫酸化多糖である場合における硫酸化糖類の含有量は250ng/ml以下)。
[3]前記硫酸化糖類が、
(I)1又は2以上の下記一般式(a)
naは1、2又は3であり、
R1a及びR3aは、同一又は異なってそれぞれ、置換基を有していてもよい官能基であり、
na個のR2aは、独立してそれぞれ、置換基を有していてもよい官能基である)
で表される化合物から誘導される構成単位を含み、1又は2以上の硫酸基を含む化合物、
(II)下記一般式(b)
nbは3〜100の整数であり、
nb個のR1bは、独立してそれぞれ、置換基を有していてもよい官能基であり、
1又は2以上の硫酸基を含む)
で表される化合物、及び
(III)下記一般式(c)
ncは1、2又は3であり、
R1c〜R4cは、同一又は異なってそれぞれ、置換基を有していてもよい官能基であり、
nc個のR5cは、独立してそれぞれ、置換基を有していてもよい官能基であり、
1又は2以上の硫酸基を含む)
で表される化合物からなる群から選択される少なくとも1つである、[2]に記載の培地。
[4]硫酸化糖類が、硫酸化単糖、硫酸化二糖、硫酸化多糖、硫酸化糖アルコール及び硫酸化シクリトールからなる群から選択される少なくとも1つである、[2]又は[3]に記載の培地。
[5]硫酸化糖類における硫黄の含有度が、5重量%以上である、[2]〜[4]のいずれかに記載の培地。
[6]前記硫酸化糖類又はその薬学的に許容可能な塩が、デキストラン硫酸Na、セルロースSO3Na、キサンタンガムSO3Na、ペクチンSO3Na、フコイダン、アルギン酸SO3Na、イヌリンSO3Na、マルトヘプタオースSO3Na、スタキオースSO3Na、マルトトリオースSO3Na、マルチトールSO3Na、スクロース8SO3K、グルコースSO3Na、myo−6イノシトールSO3K、α−シクロデキストリンSO3Na、マンニトールSO3Na、キシリトールSO3Na及びエリスリトールSO3Naからなる群から選択される少なくとも1つである、[2]〜[5]のいずれかに記載の培地。
[7]前記硫酸化糖類又はその薬学的に許容可能な塩が、デキストラン硫酸Na、フコイダン、キサンタンガムSO3Na、ペクチンSO3Na、マルトヘプタオースSO3Na、マルトトリオースSO3Na、マルチトールSO3Na及びスクロース8SO3Kからなる群から選択される少なくとも1つである、[6]に記載の培地。
[8]前記硫酸化糖類又はその薬学的に許容可能な塩が、平均分子量2,500〜7,500のデキストラン硫酸Naである、[2]〜[7]のいずれかに記載の培地。
[9]前記硫酸化糖類又はその薬学的に許容可能な塩が、スクロース8SO3Kである、[2]〜[7]のいずれかに記載の培地。
[10]前記スクロース8SO3Kの含有量が、25pg/ml〜10μg/mlである、[9]に記載の培地。
[11]硫酸化化合物が、硫酸化ポリマー(但し、硫酸化糖類は除く)である、[1]に記載の培地。
[12]前記硫酸化ポリマーが、下記一般式(I)
Aは、ポリマー構成単位であり、
nは1〜1500の整数であり、
R1は、置換基を有していてもよい官能基である)
で表され、且つ1又は2以上のスルホ基を含む化合物である、[11]に記載の培地。
[13]硫酸化ポリマーにおける硫黄の含有度が、5重量%以上である、[11]又は[12]に記載の培地。
[14]硫酸化ポリマーが、スルホ基含有ポリビニルアルコール、スルホ基含有ポリビニルアミン、スルホ基含有ポリアリルアミン、スルホ基含有ポリエチレンイミン、スルホ基含有α−ポリリジン、スルホ基含有α−ポリグルタミン酸メチル/α−5−ヒドロキシノルバリン(2/8)共重合体、α−ポリグルタミン酸−γ−タウリン、スルホ基含有トリセリン、スルホ基含有セリン、スルホ基含有分岐型ポリグリセリン及びその誘導体、並びにポリエチレンスルホン酸からなる群から選択される少なくとも1つである、[11]〜[13]のいずれかに記載の培地。
[15]スルホ基含有分岐型ポリグリセリンの誘導体又はその薬学的に許容可能な塩が、分岐型ポリグリセリン−モノメチルテトラエチレングリコール−SO3Na、分岐型ポリグリセリン−2−フルフリル−SO3Na又は分岐型ポリグリセリン−イソプロピルオキシ−SO3Naである、上記[14]記載の培地。
[16]硫酸化化合物が、ジイソシアネート化合物による糖類の架橋重合体の硫酸化物である、[1]に記載の培地。
[17]ジイソシアネート化合物による糖類の架橋重合体の硫酸化物又はその薬学的に許容可能な塩が、マルトトリオース−ヘキサメチレンジイソシアナート−SO3Na又はデキストラン−ヘキサメチレンジイソシアナート−SO3Naである、[16]に記載の培地。
[18]硫酸化化合物が、糖ラクトンの硫酸化物である、[1]に記載の培地。
[19]糖ラクトンの硫酸化物又はその薬学的に許容可能な塩が、グルコノラクトン−SO3Naである、[18]に記載の培地。
[20]硫酸化化合物が、有機酸の硫酸化物である、[1]に記載の培地。
[21]有機酸の硫酸化物又はその薬学的に許容可能な塩が、酒石酸−SO3Naである、[20]に記載の培地。
[22]線維芽細胞成長因子が塩基性線維芽細胞成長因子である、[1]〜[21]のいずれかに記載の培地。
[23]前記幹細胞が、間葉系幹細胞、胚性幹細胞又は人工多能性幹細胞である、[1]〜[22]のいずれかに記載の培地。
[24]FGFを含む幹細胞増殖用培地を用いた幹細胞の培養方法であって、FGF存在下で幹細胞の増殖促進に働く濃度で硫酸化化合物又はその薬学的に許容可能な塩を培地に添加することを特徴とする、方法(但し、硫酸化化合物が硫酸化多糖である場合における硫酸化化合物の含有量は250ng/ml以下)。
[25]硫酸化化合物が、硫酸化糖類である、[24]に記載の方法(但し、硫酸化糖類が硫酸化多糖である場合における硫酸化糖類の含有量は250ng/ml以下)。
[26]前記硫酸化糖類が、
(I)1又は2以上の下記一般式(a)
naは1、2又は3であり、
R1a及びR3aは、同一又は異なってそれぞれ、置換基を有していてもよい官能基であり、
na個のR2aは、独立してそれぞれ、置換基を有していてもよい官能基である)
で表される化合物から誘導される構成単位を含み、1又は2以上の硫酸基を含む化合物、
(II)下記一般式(b)
nbは3〜100の整数であり、
nb個のR1bは、独立してそれぞれ、置換基を有していてもよい官能基であり、
1又は2以上の硫酸基を含む)
で表される化合物、及び
(III)下記一般式(c)
ncは1、2又は3であり、
R1c〜R4cは、同一又は異なってそれぞれ、置換基を有していてもよい官能基であり、
nc個のR5cは、独立してそれぞれ、置換基を有していてもよい官能基であり、
1又は2以上の硫酸基を含む)
で表される化合物からなる群から選択される少なくとも1つである、[25]に記載の方法。
[27]硫酸化糖類が、硫酸化単糖、硫酸化二糖、硫酸化多糖、硫酸化糖アルコール及び硫酸化シクリトールからなる群から選択される少なくとも1つである、[25]又は[26]に記載の方法。
[28]硫酸化糖類における硫黄の含有度が、5重量%以上である、[25]〜[27]のいずれかに記載の方法。
[29]前記硫酸化糖類又はその薬学的に許容可能な塩が、デキストラン硫酸Na、セルロースSO3Na、キサンタンガムSO3Na、ペクチンSO3Na、フコイダン、アルギン酸SO3Na、イヌリンSO3Na、マルトヘプタオースSO3Na、スタキオースSO3Na、マルトトリオースSO3Na、マルチトールSO3Na、スクロース8SO3K、グルコースSO3Na、myo−6イノシトールSO3K、α−シクロデキストリンSO3Na、マンニトールSO3Na、キシリトールSO3Na及びエリスリトールSO3Naからなる群から選択される少なくとも1つである、[25]〜[28]のいずれかに記載の方法。
[30]前記硫酸化糖類又はその薬学的に許容可能な塩が、デキストラン硫酸Na、フコイダン、キサンタンガムSO3Na、ペクチンSO3Na、マルトヘプタオースSO3Na、マルトトリオースSO3Na、マルチトールSO3Na及びスクロース8SO3Kからなる群から選択される少なくとも1つである、[29]に記載の方法。
[31]前記硫酸化糖類又はその薬学的に許容可能な塩が、平均分子量2,500〜7,500のデキストラン硫酸Naである、[25]〜[30]のいずれかに記載の方法。
[32]前記硫酸化糖類又はその薬学的に許容可能な塩が、スクロース8SO3Kである、[25]〜[30]のいずれかに記載の方法。
[33]前記スクロース8SO3Kの含有量が、25pg/ml〜10μg/mlである、[32]に記載の方法。
[34]硫酸化化合物が、硫酸化ポリマー(但し、硫酸化糖類は除く)である、[24]に記載の方法。
[35]前記硫酸化ポリマーが、下記一般式(I)
Aは、ポリマー構成単位であり、
nは1〜1500の整数であり、
R1は、置換基を有していてもよい官能基である)
で表され、且つ1又は2以上のスルホ基を含む化合物である、[34]に記載の方法。
[36]硫酸化ポリマーにおける硫黄の含有度が、5重量%以上である、[34]又は[35]に記載の方法。
[37]硫酸化ポリマーが、スルホ基含有ポリビニルアルコール、スルホ基含有ポリビニルアミン、スルホ基含有ポリアリルアミン、スルホ基含有ポリエチレンイミン、スルホ基含有α−ポリリジン、スルホ基含有α−ポリグルタミン酸メチル/α−5−ヒドロキシノルバリン(2/8)共重合体、α−ポリグルタミン酸−γ−タウリン、スルホ基含有トリセリン、スルホ基含有セリン、スルホ基含有分岐型ポリグリセリン及びその誘導体、並びにポリエチレンスルホン酸からなる群から選択される少なくとも1つである、[34]〜[36]のいずれかに記載の方法。
[38]スルホ基含有分岐型ポリグリセリンの誘導体又はその薬学的に許容可能な塩が、分岐型ポリグリセリン−モノメチルテトラエチレングリコール−SO3Na、分岐型ポリグリセリン−2−フルフリル−SO3Na又は分岐型ポリグリセリン−イソプロピルオキシ−SO3Naである、上記[37]記載の方法。
[39]硫酸化化合物が、ジイソシアネート化合物による糖類の架橋重合体の硫酸化物である、[24]に記載の方法。
[40]ジイソシアネート化合物による糖類の架橋重合体の硫酸化物又はその薬学的に許容可能な塩が、マルトトリオース−ヘキサメチレンジイソシアナート−SO3Na又はデキストラン−ヘキサメチレンジイソシアナート−SO3Naである、[39]に記載の方法。
[41]硫酸化化合物が、糖ラクトンの硫酸化物である、[24]に記載の方法。
[42]糖ラクトンの硫酸化物又はその薬学的に許容可能な塩が、グルコノラクトン−SO3Naである、[41]に記載の方法。
[43]硫酸化化合物が、有機酸の硫酸化物である、[24]に記載の方法。
[44]有機酸の硫酸化物又はその薬学的に許容可能な塩が、酒石酸−SO3Naである、[43]に記載の方法。
[45]線維芽細胞成長因子が塩基性線維芽細胞成長因子である、[24]〜[44]のいずれかに記載の方法。
[46]前記幹細胞が、間葉系幹細胞、胚性幹細胞又は人工多能性幹細胞である、[24]〜[45]のいずれかに記載の方法。
[47]キシリトールSO3Na、マルトトリオース−ヘキサメチレンジイソシアナート−SO3Na及びグルコノラクトン−SO3Naからなる群より選択される硫酸化化合物又はその薬学的に許容可能な塩。
[48]α−ポリグルタミン酸メチル/α−5−ヒドロキシノルバリン(5−SO3Na)(2/8)共重合体、トリセリン−SO3Na及び分岐型ポリグリセリン−イソプロピルオキシ−SO3Naからなる群より選択される硫酸化化合物又はその薬学的に許容可能な塩。
(I)1又は2以上の下記一般式(a)
naは1、2又は3であり、
R1a及びR3aは、同一又は異なってそれぞれ、置換基を有していてもよい官能基であり、
na個のR2aは、独立してそれぞれ、置換基を有していてもよい官能基である)
で表される化合物から誘導される構成単位を含み、1又は2以上の硫酸基を含む化合物(以下、硫酸化糖類I)である。
官能基としては、例えば、水酸基、アルコキシ基、アミノ基、アシルアミノ基、カルボキシル基、エステル基、アミド基、ホルミル基、カルボニル基、ヒドロキシアルキル基、アルキル基(例えば、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、イソブチル、sec−ブチル、tert−ブチル、n−ペンチル、イソペンチル、tert−ペンチル、ネオペンチル、2−ペンチル、3−ペンチル、n−ヘキシル、2−ヘキシル等の直鎖または分岐状のアルキル基、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチル等の環状のアルキル基、ピロリジン、テトラヒドロフラン、テトラヒドロチオフェン等の複素環式脂肪族等)、アリール基(例えば、フェニル、ナフチル、ピリジル、ピリミジル、ピラジニル、トリアジニル、インドリジル、イミダゾリル、チアゾリル、オキサゾリル、プリニル、キノリニル等の基)等が挙げられる。
「置換基を有していてもよい官能基」における「置換基」としては、通常、糖類を構成する際に利用されるものであれば特に限定されないが、水酸基、アミノ基、カルボキシル基、ホルミル基、カルボニル基等が例示される。さらにこれらの官能基は、硫酸基、リン酸基、アセチル基、アミド基等で置換されていてもよい。置換基が2以上存在する場合は、それらは同一でも異なっていてもよい。
(II)下記一般式(b)
nbは3〜100の整数であり、
nb個のR1bは、独立してそれぞれ、置換基を有していてもよい官能基であり、
1又は2以上の硫酸基を含む)
で表される化合物(以下、硫酸化糖類II)である。
(III)下記一般式(c)
ncは1、2又は3であり、
R1c〜R4cは、同一又は異なってそれぞれ、置換基を有していてもよい官能基であり、
nc個のR5cは、独立してそれぞれ、置換基を有していてもよい官能基であり、
1又は2以上の硫酸基を含む)
で表される化合物である(以下、硫酸化糖類III)。
さらに、安定同位体や放射性同位体も含まれる。
例えば、デキストラン硫酸Naの平均分子量としては、通常1,000〜70万、好ましくは1,000〜30万、より好ましくは1,000〜10万、最も好ましくは2,500〜7,500である。
官能基としては、水素、炭素、窒素、酸素等で構成される官能基が挙げられ、例えば、水酸基、アルコキシ基、アミノ基、アシルアミノ基、カルボキシル基、エステル基、アミド基、ホルミル基、カルボニル基、ヒドロキシルアルキル基、アルキル基(例えば、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、イソブチル、sec−ブチル、tert−ブチル、n−ペンチル、イソペンチル、tert−ペンチル、ネオペンチル、2−ペンチル、3−ペンチル、n−ヘキシル、2−ヘキシル等の直鎖または分岐状のアルキル基、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチル等の環状のアルキル基等)、ピロリジン、テトラヒドロフラン、テトラヒドロチオフェン等の複素環式脂肪族等、アリール又はヘテロアリール基(例えば、フェニル、ナフチル、ピリジニル、ピリミジル、ピラジニル、トリアジニル、インドリジル、イミダゾリル、チアゾリル、オキサゾリル、プリニル、キノリニル等の基)等が挙げられる。硫酸基の導入しやすさから、官能基としては水酸基、アミノ基及びアルキル基が好ましい。官能基が2以上存在する場合は、それらは同一でも異なってもよい。
「置換基を有していてもよい官能基」における「置換基」としては、通常、ポリマーを構成する際に利用されるものであれば特に限定されないが、スルホ基、リン酸基、アシル基、アミド基等が例示される。置換基が2以上存在する場合は、それらは同一でも異なっていてもよい。
ポリマーにスルホ基を導入する方法は、特に限定されない。スルホ基があらかじめ導入されたモノマーを重合化して硫酸化ポリマーを得ることも、モノマーを重合化してポリマーとした後、得られたポリマーを硫酸化することによって硫酸化ポリマーを得ることもできる。硫酸化は当分野で公知の手法に準じて行うことができる。
Aは、ポリマー構成単位であり、
nは1〜1500の整数であり、
R1は、置換基を有していてもよい官能基である)
で表され、且つ1又は2以上のスルホ基を含む化合物である。
nは、硫酸化ポリマー中の構成単位Aの数、すなわち重合度を意味するが、本発明においてはnは1〜1500、好ましくは3〜1000、より好ましくは3〜700である。
ポリマー構成単位としては、具体的には、ポリエステル、ポリビニル、ポリアミド、ポリアミン、ポリエーテル、ポリカーボネート、ポリアリール、ポリイミド、ポリウレタン、エポキシ樹脂等の構成単位が挙げられる。
さらに、安定同位体や放射性同位体も含まれる。
ジイソシアネート化合物による糖類の架橋重合体の硫酸化物又はその薬学的に許容可能な塩は、当該分野において公知の方法により製造することができる。例えば、マルトトリオース−ヘキサメチレンジイソシアナート−SO3Na、デキストラン−ヘキサメチレンジイソシアナート−SO3Naは、後述の実施例に記載の方法により合成することができる。
糖ラクトンの硫酸化物又はその薬学的に許容可能な塩は、当該分野において公知の方法により製造することができる。例えば、グルコノラクトン−SO3Naは、後述の実施例に記載の方法により合成することができる。
有機酸の硫酸化物又はその薬学的に許容可能な塩は、当該分野において公知の方法により製造することができる。例えば、酒石酸−SO3Naは、後述の実施例に記載の方法により合成することができる。
また、硫酸化化合物の種類によっては、細胞毒性等の細胞に与える影響を低減させるために、本発明の培地中の硫酸化化合物又はその薬学的に許容可能な塩の濃度範囲を、通常FGFのタンパク質量低下を抑制しないような低濃度に設定してもよい。
また例えば、ポリビニルアミンの硫酸化物又はその塩(例えば、ポリビニルアミンSO3Na)は、25ng/ml以下の濃度ではFGFのタンパク質量低下を抑制しないが、10ng/ml〜25ng/ml(好ましくは12.5ng/ml〜25ng/ml)の濃度範囲であってもFGF存在下で幹細胞の増殖を促進し得る。
本発明の方法においては、培養中に培地交換を適宜行なってもよく、その場合、新しい培地にもFGF存在下で幹細胞の増殖促進に働き得る濃度で硫酸化化合物又はその薬学的に許容可能な塩が添加される。
フィーダー細胞を使用しない場合には、細胞外基質若しくはその活性断片、又はそれらの機能をミミックする人工物を使用して、培養を行うことが好ましい。
細胞外基質は、培養器の表面と細胞との接着を改善する目的で細胞の培養に通常使用されるものであれば特に限定されず、例えば、ラミニン(ラミニン511、ラミニン332等)、フィブロネクチン、ビトロネクチン、コラーゲン、エラスチン、アドへサミン等の公知のものを使用することができる。また細胞外基質の活性断片は、該細胞外基質と同等の細胞接着活性を有するその断片であればよく、これらも公知のものを使用することができる。例えば、特開2011-78370号公報に開示されている、ラミニン511のE8フラグメント、ラミニン332のE8フラグメント等が挙げられる。細胞外基質及びその活性断片は、市販品であってもよく、例えば、ライフテクノロジーズ、BDファルコン、バイオラミナ等から入手可能である。これらの細胞外基質及びその活性断片は、2種類以上を組み合わせて使用してもよい。また基底膜を過剰産生するマウスEHS肉腫から抽出、精製した、タンパク質や多糖類を含む複雑な基底膜成分の混合物であるマトリゲル(商品名)を使用してもよい。細胞外基質及びその活性断片は、適当な溶液中に懸濁し、細胞を培養するのに適した容器に塗布すればよい。
細胞外基質の機能をミミックする人工物も、細胞の培養に通常使用されるものであれば特に限定されず、例えば、コーニング社のシンセマックス(登録商標)やウルトラウェブ(登録商標)、シグマアルドリッチ社のHy-STEMシリーズ、ポリリジン、ポリオルニチン等の公知のものを使用することができる。
本発明において使用される細胞外基質若しくはその活性断片、又はそれらの機能をミミックする人工物は、好ましくはマトリゲル、又はラミニン511若しくはラミニン511の活性断片であり、より好ましくはラミニン511の活性断片(即ち、ラミニン511のE8フラグメント)である。
シングルセル播種を行う場合、多能性幹細胞のコロニーを単一の細胞にまで解離した後、培地中に播種する。シングルセル播種は、自体公知の方法により行えばよい。例えば、細胞剥離液(トリプシン溶液等)で細胞間接着、細胞−基質間接着を弱くしたあと、スクレーパー(IWAKI社、9000-220等)等で細胞を基質から剥がし(この状態で細胞は細胞塊を形成した状態で溶液中に浮遊しており、完全なシングルセルではない)、その後ピペッティングにより細胞をシングルセルにまで解離させた後、培地に播種すればよい。播種時には、多能性幹細胞の生存のために、Y-27632(ナカライテスク社:08945-84)などのROCK阻害剤を培地に添加しておくことが好ましい。ROCK阻害剤は、播種の翌日以降は、多能性幹細胞の増殖に必要ないため、培地から除去することが好ましい。
合成例1 セルロースSO 3 Na(セルロース硫酸Na)の合成
セルロース(200 mg、メルク社製)を脱水ジメチルホルムアミド(6 ml)中に溶解したのち、三酸化硫黄トリメチルアミン錯体(600 mg、アルドリッチ社製)を加え、70℃で一晩攪拌した。溶媒をデカンテーションにて除き、アセトンを加えて攪拌したのちろ過した。得られた固体を純水(2 ml)に溶解し、30%酢酸ナトリウム水溶液(1.5 ml)を加えて2時間室温で攪拌した。反応液にエタノール(12 ml)を加えたのち、析出物をろ過した。得られた固体を純水(5 ml)に溶解してSpectra/Por MWCO6,000-8,000を用いて一晩透析し、凍結乾燥して白色固体(425 mg)を得た。
以下の化合物もセルロースSO3Naと同様の条件で硫酸化ナトリウム化を行った。
α-シクロデキストリン(α-CD)(200 mg、純正化学社製)を脱水ジメチルホルムアミド(6 ml)中に溶解したのち、三酸化硫黄トリメチルアミン錯体(600 mg)を加え、70℃で一晩攪拌した。溶媒をデカンテーションにて除き、アセトンを加えて攪拌したのちろ過した。得られた固体を純水(2 ml)に溶解し、30%酢酸ナトリウム水溶液(1.5 ml)を加えて2時間室温で攪拌した。反応液にエタノール(12 ml)を加えたのち、析出物をろ過した。得られた固体を純水(5 ml)に溶解してSpectra/Por MWCO1,000を用いて一晩透析し、凍結乾燥して白色固体(598 mg)を得た。
以下の化合物もα-シクロデキストリンSO3Naと同様の条件で硫酸化ナトリウム化を行った。合成例6〜8については、透析の際Spectra/Por MWCO100-500を用いた。
マルチトール(300 mg、東京化成社製)を脱水ジメチルホルムアミド(6 ml)中に溶解したのち、三酸化硫黄トリメチルアミン錯体(1.6g)を加え、70℃で一晩攪拌した。反応液を濃縮し、エタノールを加えて攪拌し濾過した。得られた固体を水に溶解し、炭酸水素ナトリウムを加えてpHを7にして攪拌後した。濃縮を3回行った後凍結乾燥して白色固体(1.17g)を得た。
マンニトール(200 mg、関東化学社製)を脱水ジメチルホルムアミド(6 ml)中に溶解したのち、三酸化硫黄トリメチルアミン錯体(600 mg)を加え、70℃で一晩攪拌した。反応液に2規定水酸化ナトリウム水溶液を加え、pHを9にしたのち濃縮した。ゲルろ過カラム(バイオゲルp-2、バイオラッド社製)に担持させ、0.1 M炭酸水素アンモニウム水溶液を用いて溶出した。溶出液を凍結乾燥して白色固体(43 mg)を得た。
以下の化合物もマンニトールSO3Naと同様の条件で硫酸化ナトリウム化を行った。
マルトトリオース(200 mg、東京化成社製)とトリエチルアミン(28μl、純正化学社製)を脱水ジメチルホルムアミド(6 ml)に加え70℃で攪拌したのち、ヘキサメチレンジイソシアネート(96μl、東京化成社製)を加え、一晩攪拌した。反応液を濃縮し、水を加えて濃縮、凍結乾燥して白色固体(102 mg)を得た。
得られた白色固体(102 mg)を脱水ジメチルホルムアミド(3 ml)と三酸化硫黄トリメチルアミン錯体(460 mg)を用いて合成例1と同じ条件で、硫酸ナトリウム化を行い、白色固体(332 mg)を得た。
デキストラン(200 mg、和光純薬社製)とトリエチルアミン(8.4μl、純正化学社製)を脱水ジメチルホルムアミド(200 ml)に加え70℃で攪拌したのち、ヘキサメチレンジイソシアネート(9.6μl、東京化成社製)を加え、一晩攪拌した。反応液を濃縮し、水を加えて濃縮、凍結乾燥して白色固体(193 mg)を得た。
得られた白色固体(100 mg)を脱水ジメチルホルムアミド(20 ml)と三酸化硫黄トリメチルアミン錯体(1 g)を用いて合成例1と同じ条件で、硫酸ナトリウム化を行い、白色固体(194 mg)を得た。
δ-グルコノラクトン(300 mg、純正化学社製)を脱水ジメチルホルムアミド(6 ml)に溶解したのち、三酸化硫黄トリメチルアミン錯体(1.14 g)を加え、70℃で一晩攪拌した。溶媒を濃縮後アセトンとエタノールでスラリー洗浄したのち、残渣に炭酸水素ナトリウム水溶液を加えて攪拌した。反応液を濃縮し、イオン交換樹脂IRA96SBAGに担持させ0.2規定の水酸化ナトリウム(100 ml)で溶出したのちFPC3500に担持させ水(100 ml)で溶出し、濃縮、乾燥し黄褐色固体(140 mg)を得た。
酒石酸(300 mg、和光純薬社製)を脱水ジメチルホルムアミドに溶解したのち、三酸化硫黄トリメチルアミン錯体(835 mg)を加え、70℃で一晩攪拌した。溶媒を濃縮し、イオン交換樹脂IRA96SBに担持させ、1%トリエチルアミン水溶液(200 ml)で溶出した。イオン交換樹脂FPC3500に担持させ水(100 ml)で溶出し、濃縮、乾燥して白色固体(430 mg)を得た。
1.Lonza無血清培地中のbFGF安定化評価
(1)bFGF安定化評価サンプルの調製
Lonza専用完全合成培地キット(00190632、タカラバイオ社)を使用してプロトコールに従い調製した培地(Lonza無血清培地)中のbFGFの安定化について、表4に記載の被験化合物の添加による影響を評価した。被験化合物をリン酸緩衝生理食塩水に溶解し、これを無血清培地で10倍希釈して表4に記載の濃度に調整した(被験サンプル)。被験サンプルを密閉したファルコンチューブ中で37℃に7日間(表5〜8−2)または3日間(表8−3)静置したのち、ELISA測定にてbFGF濃度を定量した。尚、被験化合物を含まないリン酸緩衝生理食塩水を無血清培地で10倍希釈し、37℃又は4℃に7日間または3日間静置したものをコントロールとした。
培地中のbFGFの定量には、市販の測定キット(ヒトbFGF ELISAキット、ELH-bFGF-001、Ray Biotech)を用いた。測定手順は、キットに添付されたプロトコールに従った。検量線用標品液の吸光度から作成した検量線(換算式)より、無血清培地中のbFGF濃度を算出した。尚、表5〜8中の評価基準は以下の通りである。
+++:bFGF濃度が4℃コントロールのそれに対して70%以上
++:bFGF濃度が4℃コントロールのそれに対して50%以上70%未満
+:bFGF濃度が4℃コントロールのそれに対して30%以上50%未満
−:bFGF濃度が4℃コントロールのそれに対して10%以上30%未満
×:bFGF濃度が4℃コントロールのそれに対して10%未満
また表8−2に示すように、マルトトリオース−ヘキサメチレンジイソシアナート−SO3Na、デキストラン−ヘキサメチレンジイソシアナート−SO3Na、グルコノラクトン−SO3Na又は酒石酸−SO3Naを含む評価サンプルでは、培地中のbFGF濃度の低下を抑制する効果が認められた。各化合物について当該効果が認められた濃度は以下の通りである:
マルトトリオース−ヘキサメチレンジイソシアナート−SO3Na、2.5 ng/ml、250 ng/ml〜2.5 mg/ml;
デキストラン−ヘキサメチレンジイソシアナート−SO3Na、25 ng/ml〜2.5 mg/ml;
グルコノラクトン−SO3Na、25μg/ml、2.5 mg/ml;
酒石酸−SO3Na、250 ng/ml、2.5 mg/ml。
meso-エリスリトールSO3Na、25μg/ml以上;
スクロース8SO3K、250 ng/ml以上;
マルトヘプタオースSO3Na、25 ng/ml以上。
Essential 8専用培地キット(A14666SA、インビトロジェン社)を使用してプロトコールに従い調製した培地(Essential 8培地)または同様に調製したリプロセル社のReproFF2培地中のbFGFの安定化について、各種被験化合物を250 pg/ml〜2.5 mg/mlの濃度で添加した影響を評価した。被験化合物をリン酸緩衝生理食塩水に溶解し、これを無血清培地で10倍希釈して表4に記載の濃度に調整した(被験サンプル)。被験サンプルを密閉したファルコンチューブ中で37℃に7日間静置したのち、ELISA測定にてbFGF濃度を定量した。尚、被験化合物を含まないリン酸緩衝生理食塩水をEssential 8培地またはReproFF2培地で10倍希釈し、37℃または4℃に7日間静置したものをコントロールとした。
デキストラン硫酸Na(5000)、25 ng/ml以上;
デキストラン硫酸Na(25000)、2.5 ng/ml、250 ng/ml以上;
デキストラン硫酸Na(50万)、250 pg/ml、25 ng/ml以上;
デキストラン−ヘキサメチレンジイソシアナート−SO3Na、250 ng/ml以上;
カラギーナン、250 ng/ml以上;
セルロースSO3Na、25 ng/ml以上;
キサンタンガムSO3Na、250 ng/ml〜250μg/ml;
フコイダン、25 ng/ml以上;
アルギン酸SO3Na、250 ng/ml以上;
コンドロイチン硫酸Na、250μg/ml以上;
ペクチンSO3Na、250 ng/ml以上;
キトサンSO3Na、250μg/ml以上;
マルトヘプタオースSO3Na、250 ng/ml以上;
α-CD・SO3Na、2.5μg/ml以上;
スタキオースSO3Na、250μg/ml以上;
マルトトリオースSO3Na、250 ng/ml以上;
マルトトリオース−ヘキサメチレンジイソシアナート−SO3Na、250 ng/ml以上;
マルチトールSO3Na、2.5μg/ml以上;
スクロース8SO3K、2.5μg/ml以上;
グルコースSO3Na、2.5μg/ml以上;
マンニトールSO3Na、2.5μg/ml以上;
エリスリトールSO3Na、25μg/ml以上;
myo−イノシトール6SO3K、25μg/ml以上;
グルコノラクトンSO3Na、25μg/ml以上;
酒石酸SO3Na、250μg/ml以上。
デキストラン硫酸Na(5000)、250 pg/ml以上;
デキストラン硫酸Na(25000)、250 pg/ml以上;
デキストラン硫酸Na(50万)、2.5 ng/ml以上;
カラギーナン、2.5 ng/ml以上;
コンドロイチン硫酸Na、250 pg/ml〜2.5 ng/ml、250 ng/ml、25μg/ml以上;
スクロースSO3K、250 pg/ml以上;
ポリエチレンスルホン酸Na、2.5 ng/ml、250 ng/ml以上。
1.間葉系幹細胞増殖系での評価
(1)細胞増殖
間葉系幹細胞専用培地(Lonza社、MSCGM)、又は、非働化したウシ胎児血清(Invitrogen社、GIBCO FBS)及びペニシリン−ストレプトマイシン(Sigma-Aldrich社)を含んだダルベッコ変法イーグル培地(Invitrogen社、GIBCO D-MEM)中で培養したヒト骨髄由来間葉系幹細胞(Lonza社、Human Mesenchymal Stem Cell)を、Lonza無血清培地に切り替えて培養した。このようにして無血清培養に馴化させた間葉系幹細胞を、Lonza無血清培地に懸濁させて、24ウェル培養プレート(日本ベクトンディッキンソン社、Falcon培養プレート)に20,000 cells/ウェルずつ、もしくは、6ウェル培養プレート(日本ベクトンディッキンソン社、Falcon培養プレート)に50,000 cells/ウェルずつ播種し、次にフィルター滅菌し所定の濃度に調整した被験化合物溶液を添加して、5%CO2/37℃の条件でインキュベーター(Thermo Scientific社、フォーマインキュベーター)内で7〜8日間培養した。培地交換を行う場合は、播種した2〜3日後に行った。この際、被験化合物溶液も播種の時と同様に再度添加した。この際、各種化合物溶液も播種の時と同様に再度添加した。7〜8日間培養後、培地を取り除き、DNA定量を行った。尚、コントロールとして、被験化合物を含まないリン酸緩衝生理食塩水を添加した培地で同様に培養を行なった。
塩化ナトリウム(18.0g)ならびにクエン酸三ナトリウム水和物(8.83g)を純水(100ml)に溶かし、これをさらに純水で20倍に希釈した(塩化ナトリウム−クエン酸ナトリウム緩衝液)。ラウリル硫酸ナトリウム(50.4mg)を塩化ナトリウム−クエン酸ナトリウム緩衝液(252ml)に溶かしてラウリル硫酸ナトリウム溶液とした。
24ウェル培養プレート中の培地を除き、リン酸緩衝生理食塩水で洗浄した後、ラウリル硫酸ナトリウム溶液(500μl/ウェル)を添加し、37℃に4時間置いた。細胞数既知の細胞ペレットにもラウリル硫酸ナトリウム溶液(1.0ml)を添加し、37℃に4時間置いた。24ウェル培養プレート中の細胞について、この溶解液の一部(50μl)を96ウェル黒色マイクロプレートに移した。細胞ペレットを処理した溶液は、ラウリル硫酸ナトリウム溶液で順次希釈して検量線作成用溶液とした。これら検量線作成用溶液の一部(50μl)も、それぞれ96ウェル黒色マイクロプレートに移した。これら試料に、ビスベンズイミドH33258(04907-91、ナカライテスク)を塩化ナトリウム−クエン酸ナトリウム緩衝液で1,000倍希釈したDNA発色溶液を100μl/ウェルずつ添加した。添加して5分以内にマイクロプレートリーダーを用いて蛍光測定を行った(励起波長:355nm、測定波長:460nm)。作成した検量線(換算式)より24ウェルセルカルチャープレート中の細胞数を算出した。評価基準は以下の通りである。
◎:細胞数がコントロールのそれに対して120%以上
○:細胞数がコントロールのそれに対して100%以上120%未満
−:細胞数がコントロールのそれに対して50%以上100%未満
×:細胞数がコントロールのそれに対して50%未満
マルトトリオースSO3Na、25 pg/ml〜2.5μg/ml;マルチトールSO3Na、25 ng/ml、2.5μg/ml。
またマルトトリオース−ヘキサメチレンジイソシアナート−SO3Na、デキストラン−ヘキサメチレンジイソシアナート−SO3Na、グルコノラクトン−SO3Na又は酒石酸−SO3Naを添加した培地でも、コントロールに比べて細胞増殖が促進された。各化合物について当該効果が認められた濃度は以下の通りである:
デキストラン−ヘキサメチレンジイソシアナート−SO3Na、25 pg/ml〜250 pg/ml、25 ng/ml;
マルトトリオース−ヘキサメチレンジイソシアナート−SO3Na、25 pg/ml〜250 pg/ml、250 ng/ml;
グルコノラクトン−SO3Na、25 pg/ml〜250 pg/ml;
酒石酸−SO3Na、2.5 ng/ml。
各種被験化合物による細胞増殖効果を人工多能性幹細胞(iPS細胞)を用いて評価した。iPSアカデミアジャパン社より購入した201B7株を、基底膜マトリックス(日本ベクトンディッキンソン社製のマトリゲル、又は大阪大学より購入したラミニン511の活性ドメインを含む断片)をコートした培養容器(日本ベクトンディッキンソン社、Falcon培養シャーレ又はFalcon培養プレート)内にて、ヒトES/iPS細胞用フィーダレス培地(リプロセル社、ReproFF2)中で増殖させた。
この培地にコロニー状態のiPS細胞を懸濁させて、元の培養の2.5〜3.5倍希釈となる量を、基底膜マトリックスをコートした6ウェル培養プレート(日本ベクトンディッキンソン社、Falcon培養プレート)に播種し、次に、フィルター滅菌し所定の濃度に調整した被験化合物溶液を添加して、5%CO2/37℃の条件でインキュベーター(Thermo Scientific社、フォーマインキュベーター)内で6〜12日間培養した。培地交換を行う場合は、2〜3日毎に行った。この際、被験化合物溶液も播種の時と同様に再度添加した。6〜12日間培養後、培地を取り除き、トリプシン-EDTA(シグマアルドリッチ社)又はTrypLE Select(インビトロジェン社)処理により培養プレートから細胞を剥離し、細胞数を測定した。細胞数の測定は、「改訂細胞培養入門ノート, 77〜83頁, 2010年, 羊土社」に記載の方法により行った。尚、コントロールとして、被験化合物を含まないリン酸緩衝生理食塩水を添加した培地で同様に培養を行った。
また、細胞同士が解離した状態(シングルセル状態)で播種する場合には、フィルター滅菌した被験化合物溶液を、Y-27632(ナカライテスク社)を含んだ培地に所定の濃度となるように添加し、6ウェル培養プレートに分注した。これにY-27632を含んだ培地に懸濁させたiPS細胞を、100,000 cells/ウェルずつ播種し、6〜8日間培養した。播種した翌日に、被験化合物のみ添加した培地(Y-27632不含)に切り替えた。培地交換を行う場合は、2〜3日毎に行った。この際、被験化合物溶液も播種の時と同様に再度添加した。6〜8日間培養後、前記と同様の方法で細胞数を測定した。
また、別のiPS細胞用フィーダレス培地であるEssential 8培地(インビトロジェン社)中で評価を行う場合は、Essential 8培地にヒト血清アルブミン(シグマアルドリッチ社)を加えた培地で培養したiPS細胞を用いた。
◎:細胞数がコントロールのそれに対して120%以上
○:細胞数がコントロールのそれに対して100%以上120%未満
−:細胞数がコントロールのそれに対して50%以上100%未満
×:細胞数がコントロールのそれに対して50%未満
(空欄:未評価)
従って、硫酸化糖類を培地に添加することにより、使用する培地及び基底膜マトリックスの種類によらず、iPS細胞の増殖を促進することができることが示された。
被験化合物中の硫黄の含有度(硫黄含量)と細胞増殖促進効果との関連を調べた。硫黄含量は、島津製作所社製のICPS-8100を用いて測定し、ICPS-8000 series Ver1.03を用いて解析した。硫黄の標品は、Accu Standard社製のICP-MS用スタンダードを用いた。0、1、10、30、50 ppmの硫黄標品溶液を作製し、検量線法により、0.01重量%で被験化合物を含む評価サンプルの硫黄含量を測定した。
合成例1 ポリビニルアルコールSO 3 Naの合成
ポリビニルアルコール(200 mg、アクロス社製)を脱水ジメチルホルムアミド(6 ml、関東化学社製)中に溶解したのち、三酸化硫黄トリメチルアミン錯体(600 mg、アルドリッチ社製)を加え、70℃で一晩攪拌した。溶媒をデカンテーションにて除き、アセトンを加えて攪拌したのちろ過した。得られた固体を純水(2 ml)に溶解し、30%酢酸ナトリウム水溶液(1.5 ml)を加えて2時間室温で攪拌した。反応液にエタノール(12 ml)を加えたのち、析出物をろ過した。得られた固体を純水(5 ml)に溶解してSpectra/Por MWCO6,000-8,000を用いて一晩透析し、凍結乾燥して白色固体(425 mg)を得た。
ポリビニルアミン塩酸塩(300 mg、ポリサイエンス社製)を純水(25 ml)に溶解し、2規定水酸化ナトリウムを加えながらpHを9.13に調整したのち、三酸化硫黄トリメチルアミン錯体(2.1 g)を加えて一晩攪拌した。得られた反応液の溶媒をデカンテーションで除いたのち、30%酢酸ナトリウム(20 ml)中で30分攪拌した。反応液を純水(20 ml)に溶かしてSpectra/Por MWCO6,000-8,000を用いて一晩透析し、凍結乾燥して白色固体(450 mg)を得た。
ポリアリルアミンL(1.5 g、20%水溶液、ナカライ社製)を純水(25 ml)に溶解し、2規定水酸化ナトリウム(5.26ml)を加えたのち、三酸化硫黄トリメチルアミン錯体(2.9 g)を加えて一晩攪拌した。得られた反応液を濃縮したのち、30%酢酸ナトリウム(10 ml)中で2時間攪拌した。反応液を純水(20 ml)に溶かしてSpectra/Por MWCO1,000を用いて一晩透析し、凍結乾燥して白色固体(670 mg)を得た。
ポリエチレンイミン(1.07 g, 和光純薬社製)を脱水ジメチルホルムアミド(18 ml)に溶解し、三酸化硫黄トリメチルアミン錯体(4.2 g)を加えて一晩攪拌した。得られた反応液の溶媒をデカンテーションで除いたのち、アセトンでスラリー洗浄し、濾過したのち30%酢酸ナトリウム(20 ml)中で30分攪拌した。反応液を純水(20 ml)に溶かしてSpectra/Por MWCO1,000を用いて一晩透析し、凍結乾燥して白色固体(400 mg)を得た。
アルゴン気流下でトリメチロイルプロパン(127mg、東京化成社製)にカリウムメトキシド(23.8mg、関東化学社製)の脱水メタノール(0.095ml、関東化学社製)溶液を加え、15分攪拌した。過剰な溶媒を減圧下で除去し、グリシドール(5.5ml、関東化学社製)を95℃にて6時間かけて滴下した。反応液を一晩攪拌したのち、メタノール(40ml)に溶かして30分攪拌した。ダウエックスモノスフィア650Cを通したのち、Spectra/Por MWCO1,000を用いて3晩透析し、濃縮乾燥して油状物(1.54 g)を得た。得られた油状物(300 mg) を脱水ジメチルホルムアミド(6 ml)に溶解し、三酸化硫黄トリメチルアミン錯体(1.0 g)を加えて一晩攪拌した。得られた反応液の溶媒をデカンテーションで除いたのち、アセトンでスラリー洗浄したのち30%酢酸ナトリウム(20 ml)中で30分攪拌した。反応液を純水(20 ml)に溶かしてSpectra/Por MWCO1,000を用いて一晩透析し、凍結乾燥して白色固体(284 mg)を得た。
L-Lys(Z)-NCA(1g、中国・蘇州天馬社に製造委託)を脱水クロロホルム(20ml、関東化学社製)中で攪拌し、0℃でトリエチルアミン(0.047ml、関東化学社製)の脱水クロロホルム(1ml)溶液を加え、3日間攪拌した。反応液をトリフルオロ酢酸(10 ml、純正化学社製)に溶解し、臭化水素酸/酢酸溶液(2 ml、30%、東京化成社製)を加えて一晩攪拌した。脱水エーテル(40 ml、関東化学社製)を加えて析出する固体を濾過し、濃縮乾燥して白色固体(269 mg)を得た。得られた固体を純水(25 ml)に溶解し、1規定水酸化ナトリウム(1.29ml)を加えたのち、三酸化硫黄トリメチルアミン錯体(360 mg)を加えて一晩攪拌した。得られた反応液を濃縮したのち、酢酸ナトリウム(212 mg)を加えて2時間攪拌した。反応液を純水(20 ml)に溶かしてSpectra/Por MWCO100-500を用いて一晩透析し、凍結乾燥して白色固体(82 mg)を得た。
γ-L-メチル-Glu-NCA(10g、中央化成社製)をアルゴン気流下で脱水ジクロロエタン(50 ml、関東化学社製)に溶解し、0℃でN,N-ジメチル-1,3-プロパンジアミン(0.007ml、関東化学社製)のジクロロエタン(0.07 ml)溶液を加え、3日間攪拌し、γ-L-メチル-ポリグルタミン酸のジクロロエタン溶液を得た。得られた反応液の一部(3 g)に脱水ジクロロエタン(9 ml)を加えアルゴン雰囲気下で水素化ホウ素リチウムテトラヒドロフラン溶液(0.7 ml、3 mol/L、関東化学社製)を滴下し一晩攪拌した。反応液に飽和塩化アンモニウム水溶液を加えしばらく攪拌した後、1規定塩酸により反応液のpHを1にした。反応液を濃縮し、メタノール/エーテル(25 ml/25 ml)中でスラリー洗浄した後濾過し、純水、メタノールで洗浄して白色固体(232 mg)を得た。得られた固体(200 mg)を脱水ジメチルホルムアミド(10 ml)に溶解し、三酸化硫黄トリメチルアミン錯体(700 mg)を加えて70℃で一晩攪拌した。得られた反応液に30%酢酸ナトリウム(5 ml)加えて30分攪拌した。反応液を純水(20 ml)に溶かしてSpectra/Por MWCO1,000を用いて一晩透析し、凍結乾燥して白色固体(130 mg)を得た。
合成例7で合成したγ-メチル-ポリグルタミン酸(250 mg)を脱水ジメチルホルムアミド(10 ml)中に溶解したのち、O-(7-アザ-1H-ベンゾトリアゾール-1-イル)-N',N',N',N'-テトラメチルウロニウムヘキサフルオロリン酸塩(690 mg、渡辺化学社製)、1-ヒドロキシ-7-アザベンゾトリアゾール(247mg、渡辺化学社製)、ジイソプロピルエチルアミン(317μl、東京化成社製)、タウリン(227mg、和光純薬社製)を加え、室温で一晩攪拌した。反応終了後、純水(4.5ml)に溶解して、Spectra/Por MWCO1,000を用いて透析した。得られた溶液をさらに酸性樹脂(オルガノ社製)を用いて中和し、凍結乾燥して白色固体(90mg)を得た。
L-H-Ser-Ser-Ser-OH(300 mg、バッケム社製)を脱水ジメチルホルムアミド(10 ml)に溶解し、三酸化硫黄トリメチルアミン錯体(897 mg)を加えて70℃で一晩攪拌した。反応液を濃縮したのち、2規定水酸化ナトリウム溶液でpHを9に調整し、濃縮した。得られた固体をゲルろ過カラム(バイオゲルp-2、バイオラッド社製)に担持させ、0.1 M炭酸水素アンモニウム水溶液を用いて溶出した。溶出液を凍結乾燥して白色固体(400mg)を得た。
アルゴン気流下でテトラエチレングリコールモノメチルエーテル(15g、東京化成社製)を脱水テトラヒドロフラン(45ml、関東化学社製)に溶解し、水素化ナトリウム(1.88g、関東化学社製)を少量ずつ加え、3時間攪拌した。エピクロロヒドリン(31g、東京化成社製)をゆっくり滴下し、二晩攪拌した。反応液をセライトろ過、塩化メチレン(200ml)で洗浄し、濾液を水(200ml)で2回洗浄し、硫酸マグネシウムで乾燥し、ろ過、濃縮した。酢酸エチルでシリカゲルカラム精製を行い、濃縮、乾燥して無色油状物(4.5g)を得た。
アルゴン気流下でトリメチロイルプロパン(127mg)にカリウムメトキシド(23.8mg)の脱水メタノール(0.095ml)溶液を加え、15分攪拌した。過剰な溶媒を減圧下で除去し、グリシドール(5.5ml)を95℃にて6時間かけて滴下した。反応液を一晩攪拌した後、合成したグリシジルモノメチルテトラエチレングリコール(4.5ml)を95℃にて6時間かけて滴下し、反応液をさらに一晩攪拌した。メタノール(40ml)に溶かして30分攪拌し、ダウエックスモノスフィア650Cに通したのち、Spectra/Por MWCO 1,000を用いて一晩透析し、濃縮乾燥して無色透明な油状物(4.68g)を得た。得られた油状物(300mg)を脱水ジメチルホルムアミド(6ml)に溶解し、三酸化硫黄トリメチルアミン錯体(1g)を加えて70℃で一晩攪拌した。得られた反応液の溶媒をデカンテーションで除いたのち、アセトンでスラリー洗浄し、30%酢酸ナトリウム(6ml)と水(50ml)を加えて30分攪拌した。反応液を濃縮し、エタノールで洗い、Spectra/Por MWCO 1,000を用いて一晩透析し、凍結乾燥して白色固体(280mg)を得た。
アルゴン気流下でトリメチロイルプロパン(127mg)にカリウムメトキシド(23.8mg)の脱水メタノール(0.095ml)溶液を加え、15分攪拌した。過剰な溶媒を減圧下で除去し、グリシドール(5.5ml)を95℃にて6時間かけて滴下した。反応液を一晩攪拌した後、グリシジルイソプロピルエーテル(4.55ml、東京化成社製)を95℃にて6時間かけて滴下し、反応液をさらに一晩攪拌した。メタノール(40ml)に溶かして30分攪拌し、ダウエックスモノスフィア650Cに通したのち、Spectra/Por MWCO 1,000を用いて一晩透析し、濃縮乾燥して黄色透明な油状物(4.58g)を得た。得られた油状物(300mg)を脱水ジメチルホルムアミド(6ml)に溶解し、三酸化硫黄トリメチルアミン錯体(1g)を加えて70℃で一晩攪拌した。得られた反応液の溶媒をデカンテーションで除いたのち、アセトンでスラリー洗浄し、30%酢酸ナトリウム(6ml)と水(50ml)を加えて30分攪拌した。反応液を濃縮し、エタノールで洗い、Spectra/Por MWCO1,000を用いて一晩透析し、凍結乾燥して白色固体(266mg)を得た。
アルゴン気流下でトリメチロイルプロパン(127mg)にカリウムメトキシド(23.8mg)の脱水メタノール(0.095ml)溶液を加え、15分攪拌した。過剰な溶媒を減圧下で除去し、グリシドール(5.5ml)を95℃にて6時間かけて滴下した。反応液を一晩攪拌した後、グリシジルフルフリルエーテル(5.46ml、アルドリッチ製)を95℃にて6時間かけて滴下し、反応液をさらに一晩攪拌した。メタノール(40ml)に溶かして30分攪拌し、ダウエックスモノスフィア650Cに通したのち、Spectra/Por MWCO 1,000を用いて一晩透析し、濃縮乾燥して黄色透明な油状物(931mg)を得た。得られた油状物(300mg)を脱水ジメチルホルムアミド(6ml)に溶解し、三酸化硫黄トリメチルアミン錯体(1g)を加えて70℃で一晩攪拌した。得られた反応液の溶媒をデカンテーションで除いたのち、アセトンでスラリー洗浄し、30%酢酸ナトリウム(6ml)と水(50ml)を加えて30分攪拌した。反応液を濃縮し、エタノールで洗い、Spectra/Por MWCO 1,000を用いて一晩透析し、凍結乾燥して黒褐色固体(272mg)を得た。
(1)bFGF安定化評価サンプルの調製
Lonza専用完全合成培地キット(00190632、タカラバイオ社)を使用してプロトコールに従い調製した培地(Lonza無血清培地)中のbFGFの安定化について、表12に記載の被験化合物の添加による影響を評価した。被験化合物をリン酸緩衝生理食塩水に溶解し、これを無血清培地で10倍希釈して表13に記載の濃度に調整した(被験サンプル)。被験サンプルを密閉したファルコンチューブ中で37℃に7日間静置したのち、ELISA測定にてbFGF濃度を定量した。尚、被験化合物を含まないリン酸緩衝生理食塩水を無血清培地で10倍希釈し、37℃又は4℃に7日間静置したものをコントロールとした。
培地中のbFGFの定量には、市販の測定キット(ヒトbFGF ELISAキット、ELH-bFGF-001、Ray Biotech)を用いた。測定手順は、キットに添付されたプロトコールに従った。検量線用標品液の吸光度から作成した検量線(換算式)より、無血清培地中のbFGF濃度を算出した。尚、表13中の評価基準は以下の通りである。
+++:bFGF濃度が4℃コントロールのそれに対して70%以上
++:bFGF濃度が4℃コントロールのそれに対して50%以上70%未満
+:bFGF濃度が4℃コントロールのそれに対して30%以上50%未満
-:bFGF濃度が4℃コントロールのそれに対して10%以上30%未満
×:bFGF濃度が4℃コントロールのそれに対して10%未満
Essential 8専用培地キット(A14666SA、インビトロジェン社)を使用してプロトコールに従い調製した培地(Essential 8培地)または同様に調製したリプロセル社のReproFF2培地中のbFGFの安定化について、各種被験化合物を250 pg/ml〜2.5 mg/mlの濃度で添加した影響を評価した。被験化合物をリン酸緩衝生理食塩水に溶解し、これを無血清培地で10倍希釈して表12に記載の濃度に調整した(被験サンプル)。被験サンプルを密閉したファルコンチューブ中で37℃に7日間静置したのち、ELISA測定にてbFGF濃度を定量した。尚、被験化合物を含まないリン酸緩衝生理食塩水をEssential 8培地またはReproFF2培地で10倍希釈し、37℃または4℃に7日間静置したものをコントロールとした。
ポリビニルアルコールSO3Na、25 ng/ml以上;
ポリビニルアミンSO3Na、250 ng/ml以上;
ポリアリルアミンSO3Na、250 ng/ml以上;
ポリエチレンイミンSO3Na、2.5 mg/ml以上;
ポリエチレンスルホン酸Na、250 ng/ml以上;
分岐型ポリグリセリンSO3Na、250 ng/ml以上;
分岐型ポリグリセリン−2−フルフリル−SO3Na、25 ng/ml以上;
分岐型ポリグリセリン−メトキシテトラエチレングリコール−SO3Na、250 ng/ml以上;
ポリリジンSO3Na、25 μg/ml以上;
α−ポリグルタミン酸メチル/α−5−ヒドロキシノルバリン(5−SO3Na、)(2/8)共重合体、25 μg/ml以上;
トリセリンSO3Na、25 μg/ml以上。
ポリエチレンスルホン酸Naは、2.5 μg/ml以上の添加により培地中のbFGF濃度の低下を抑制する効果が認められた。
1.間葉系幹細胞増殖系での評価
上記実施例I−1の1.と同様にして行なった。結果を表15に示す。
上記I−2の2.と同様にして行なった。結果を表16に示す。
上記I−3と同様にして行なった。結果を表17に示す。
Claims (16)
- 線維芽細胞成長因子(FGF)を含む幹細胞増殖用培地であって、FGF存在下で幹細胞の増殖促進に働く濃度で硫酸化化合物又はその薬学的に許容可能な塩を含むことを特徴とする、培地であって、ここで、硫酸化化合物が、デキストラン硫酸Na、セルロースSO3Na、キサンタンガムSO3Na、ペクチンSO3Na、フコイダン、アルギン酸SO3Na、イヌリンSO3Na、マルトヘプタオースSO3Na、スタキオースSO3Na、マルトトリオースSO3Na、マルチトールSO3Na、スクロース8SO3K、グルコースSO3Na、myo−6イノシトールSO3K、α−シクロデキストリンSO3Na、マンニトールSO3Na、キシリトールSO3Na及びエリスリトールSO3Naからなる群から選択される少なくとも1つの硫酸化糖類であり、かつ、
硫酸化糖類の含有量が、250ng/ml以下である、培地。 - 硫酸化糖類における硫黄の含有度が、5重量%以上である、請求項1に記載の培地。
- 前記硫酸化糖類又はその薬学的に許容可能な塩が、平均分子量2,500〜7,500のデキストラン硫酸Naである、請求項1又は2に記載の培地。
- 前記硫酸化糖類又はその薬学的に許容可能な塩が、スクロース8SO3Kである、請求項1〜3のいずれか一項に記載の培地。
- 前記スクロース8SO3Kの含有量が、25pg/ml〜10μg/mlである、請求項4に記載の培地。
- 線維芽細胞成長因子(FGF)を含む幹細胞増殖用培地であって、FGF存在下で幹細胞の増殖促進に働く濃度で硫酸化化合物又はその薬学的に許容可能な塩を含むことを特徴とする、培地であり、ここで、硫酸化化合物が、酒石酸−SO3Naである、培地。
- 線維芽細胞成長因子が塩基性線維芽細胞成長因子である、請求項1〜6のいずれか一項に記載の培地。
- 前記幹細胞が、間葉系幹細胞、胚性幹細胞又は人工多能性幹細胞である、請求項1〜7のいずれか一項に記載の培地。
- FGFを含む幹細胞増殖用培地を用いた幹細胞の培養方法であって、FGF存在下で幹細胞の増殖促進に働く濃度で硫酸化化合物又はその薬学的に許容可能な塩を培地に添加することを特徴とする、方法であって、ここで、硫酸化化合物又はその薬学的に許容可能な塩が、デキストラン硫酸Na、セルロースSO3Na、キサンタンガムSO3Na、ペクチンSO3Na、フコイダン、アルギン酸SO3Na、イヌリンSO3Na、マルトヘプタオースSO3Na、スタキオースSO3Na、マルトトリオースSO3Na、マルチトールSO3Na、スクロース8SO3K、グルコースSO3Na、myo−6イノシトールSO3K、α−シクロデキストリンSO3Na、マンニトールSO3Na、キシリトールSO3Na及びエリスリトールSO3Naからなる群から選択される少なくとも1つの硫酸化糖類であり、かつ、
硫酸化糖類の含有量が250ng/ml以下である、方法。 - 硫酸化糖類における硫黄の含有度が、5重量%以上である、請求項9に記載の方法。
- 前記硫酸化糖類又はその薬学的に許容可能な塩が、平均分子量2,500〜7,500のデキストラン硫酸Naである、請求項9又は10に記載の方法。
- 前記硫酸化糖類又はその薬学的に許容可能な塩が、スクロース8SO3Kである、請求項9又は10に記載の方法。
- 前記スクロース8SO3Kの含有量が、25pg/ml〜10μg/mlである、請求項12に記載の方法。
- FGFを含む幹細胞増殖用培地を用いた幹細胞の培養方法であって、FGF存在下で幹細胞の増殖促進に働く濃度で硫酸化化合物又はその薬学的に許容可能な塩を培地に添加することを特徴とする、方法であり、ここで、硫酸化化合物又はその薬学的に許容可能な塩が、酒石酸−SO3Naである、方法。
- 線維芽細胞成長因子が塩基性線維芽細胞成長因子である、請求項9〜14のいずれか一項に記載の方法。
- 前記幹細胞が、間葉系幹細胞、胚性幹細胞又は人工多能性幹細胞である、請求項9〜15のいずれか一項に記載の方法。
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