JP2017016883A - 電極形成用ペーストおよび非水電解質二次電池 - Google Patents

電極形成用ペーストおよび非水電解質二次電池 Download PDF

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Abstract

【課題】良好な塗工性を有する電極形成用ペーストを提供すること。【解決手段】ここで提供される電極形成用ペーストは、活物質とバインダと増粘剤と下記一般式(A)で表される分散剤と溶媒とを含む。【化1】(式(A)中、XおよびZは、コレステリル基、ラノステリル基、アグノステリル基およびラノリン基からなる群から選択される基であり、Yはジイソシアネ−ト化合物から導かれる2価の有機残基であり、OR、OR’およびOR”は炭素原子数2〜4のオキシアルキレン基であり、a、dは1〜15の整数であり、bは30〜300の整数であり、cは1以上の整数である。)【選択図】図3

Description

本発明は、電極形成用ペーストおよび非水電解質二次電池に関する。
近年、リチウムイオン二次電池やニッケル水素電池等の非水電解質二次電池は、電気を駆動源とする車両搭載用電源、あるいはパソコン及び携帯端末その他の電気製品等に搭載される電源として重要性が高まっている。特に、軽量で高エネルギー密度が得られるリチウムイオン二次電池は、車両搭載用高出力電源として好ましく用いられている。
この種の典型的な二次電池は、電荷担体となる化学種を可逆的に吸蔵および放出し得る活物質を主成分とする活物質層が集電体の上に形成された構成の電極を備えている。かかる活物質層は、活物質をバインダや増粘剤とともに適当な溶媒を添加して調製したペーストまたはスラリー状組成物(以下、「電極形成用ペースト」と略称する場合がある。)を集電体に付与(典型的には塗工乾燥)することによって形成されている。上記電極の製造方法に関する従来技術として特許文献1が挙げられる。
国際公開第2012/046305号
ところで、上記電極を効率よく製造するためには、電極形成用ペーストが乾きやすくなるように、該ペーストを高固形分化して溶媒を減らすことが望ましい。しかしながら、電極形成用ペーストを高固形分化すると、それに合わせてペーストの粘度、特に高せん断速度におけるペーストの粘度が大幅に増大する。そのため、該ペーストを集電体に塗工する際の塗工性が損なわれ、塗工面にスジや厚みムラが生じる場合があり得る。
本発明はかかる点に鑑みてなされたものであり、その主な目的は、塗工性に優れた電極形成用ペーストを提供することである。また、該電極形成用ペーストの採用により表面が平滑な電極を備えた非水電解質二次電池を提供することを他の目的とする。
上記目的を実現するべく、本発明により、非水電解質二次電池の電極を形成するためのペーストが提供される。この電極形成用ペーストは、活物質とバインダと増粘剤と分散剤と溶媒とを含む。前記分散剤は、下記一般式で表されるウレタン化合物である。
ここで式(A)中、XおよびZは、それぞれ独立に、コレステリル基、ラノステリル基、アグノステリル基およびラノリン基からなる群から選択される基である。Yはジイソシアネ−ト化合物から導かれる2価の有機残基である。OR、OR’およびOR”は、それぞれ独立に、炭素原子数2〜4のオキシアルキレン基である。a、dはそれぞれ1〜15の整数であり、bは30〜300の整数であり、cは1以上の整数である。
このように上記式(A)で表されるウレタン化合物を分散剤として含ませることにより、塗工性に優れた電極形成用ペーストが実現され得る。かかる電極形成用ペーストは塗工性に優れるため、例えば一定の厚さで表面が平滑な電極を容易に形成し得る。
ここで開示される電極形成用ペーストの好ましい一態様では、前記分散剤の含有量は、前記活物質100質量部に対して0.1質量部以上(例えば0.1質量部〜0.5質量部)である。このような分散剤の含有量の範囲内であると、ペーストの塗工性をより良く向上させることができる。一方、分散剤の含有量が多すぎると、該ペーストを用いて形成された電極の抵抗(特に低温域における抵抗)が増大傾向になる場合があり得る。
ここで開示される電極形成用ペーストの好ましい一態様では、前記増粘剤の含有量は、前記活物質100質量部に対して少なくとも0.7質量部である。このように増粘剤を所定割合で含ませることにより、ペーストの経時安定性(ペースト中の固形分の沈降し難さ)をより良く向上させることができ、ペースト中の固形分が沈降することによる種々の不具合(例えば、塗工装置の配管の詰まり、活物質やバインダの偏在、それに伴う内部抵抗の増加や活物質層と集電体との密着性の低下等)を有効に防止し得る。
ここで開示される電極形成用ペーストの好ましい一態様では、せん断速度:1000s−1のときの前記ペーストの粘度が998mPa・s以下である。このような高せん断速度における粘度が低いペーストは、流動性が高く(塗工装置の細く狭い流路を通りやすく)、塗工性が良好である。そのため、該ペーストを集電体に塗工した際、塗工面にスジや厚みムラが生じることを防止することができる。ここで上記粘度は、市販のせん断粘度計により測定され得る粘度である。例えば、当該分野で標準的なレオメータ等のコーンプレート式粘度計を使用することにより、上記のようなせん断速度域の条件で容易に粘度を測定することができる。
ここで開示される電極形成用ペーストの好ましい一態様では、前記式(A)中のcは、1以上4以下の整数である。このような[OCO−NH−Y−CO−(OR’)b]の繰り返し単位を有する分散剤は、高せん断速度におけるペーストの粘度を有効に低減し得る。
また、本発明は、他の側面として、集電体上に活物質層が形成された電極を備える非水電解質二次電池を提供する。前記活物質層は、活物質とバインダと増粘剤と分散剤とを含む。前記分散剤は、下記一般式(A)で表されるウレタン化合物である。そして、前記活物質層中に含まれる前記分散剤の含有量は、前記活物質100質量部に対して0.1質量部〜0.5質量部である。かかる非水電解質二次電池は、電極の平滑性に優れ、かつ内部抵抗の低い高性能な二次電池であり得る。
ここで、式(A)中、XおよびZは、それぞれ独立に、コレステリル基、ラノステリル基、アグノステリル基およびラノリン基からなる群から選択される基である。Yはジイソシアネ−ト化合物から導かれる2価の有機残基である。OR、OR’およびOR”は、それぞれ独立に、炭素原子数2〜4のオキシアルキレン基である。a、dはそれぞれ1〜15の整数であり、bは30〜300の整数であり、cは1以上(例えば1以上4以下)の整数である。
ここで開示される非水電解質二次電池の好ましい一態様では、前記活物質層中に含まれる前記増粘剤の含有量は、前記活物質100質量部に対して少なくとも0.7質量部である。かかる非水電解質二次電池は、例えば活物質層が集電体から剥がれ難く、内部抵抗のより低い高性能な二次電池であり得る。
せん断速度とペースト粘度との関係を示すグラフである。 せん断速度とペースト粘度との関係を示すグラフである。 せん断速度とペースト粘度との関係を示すグラフである。 本発明の一実施形態に係る電池構成を模式的に示す図である。 本発明の一実施形態に係る捲回電極体を説明するための図である。
以下、本発明の好適な実施形態を説明する。なお、本明細書において特に言及している事項以外の事柄であって本発明の実施に必要な事柄は、当該分野における従来技術に基づく当業者の設計事項として把握され得る。本発明は、本明細書に開示されている内容と当該分野における技術常識とに基づいて実施することができる。
なお、本明細書において「二次電池」とは、繰り返し充電可能な電池一般をいい、リチウムイオン二次電池、ニッケル水素電池、ニッケルカドミウム電池等の化学反応を伴ういわゆる化学電池と、電気二重層キャパシタ等のいわゆる物理電池とを包含する用語である。また、本明細書において「活物質」とは、二次電池において電荷担体となる化学種を可逆的に吸蔵および放出(典型的には挿入および脱離)可能な活物質をいう。また、本明細書中において言及するペーストの粘度は、常温において測定された粘度の値を示している。ここで「常温」とは15〜35℃の温度範囲をいい、典型的には20〜30℃の温度範囲(例えば25℃)をいう。例えばペーストの粘度は、コーンプレート式粘度計のコーンプレートを25℃に設定し、ペーストを滴下してから1分間温度調整を行った後、測定した値が採用される。
本発明に係る電極形成用ペーストは、非水電解質二次電池の電極を形成するためのペーストである。以下、リチウムイオン二次電池の負極を形成するための負極形成用ペーストを例にして本発明を詳細に説明するが、本発明の適用対象をかかる電池および電極に限定する意図ではない。
<負極形成用ペースト>
ここに開示される負極形成用ペーストは、負極活物質、バインダ、増粘剤および分散剤が溶媒とともに混合された組成物であり、上記負極活物質とバインダと増粘剤と分散剤とが高固形分で含有されたペーストまたはスラリー状組成物を包含する。すなわち、ここに開示される負極形成用ペーストは、負極活物質とバインダと増粘剤と分散剤と溶媒とを含んでいる。
<負極活物質>
上記負極形成用ペーストに用いられる負極活物質としては、従来からリチウムイオン二次電池に用いられる物質の一種または二種以上を特に限定することなく使用することができる。好適例として、天然黒鉛、人造黒鉛、グラファイト、アモルファスカーボン等の炭素系材料が挙げられる。このような材料(典型的には粒子状)としては、例えば、従来公知の方法で調製される材料粉末をそのまま使用することができる。例えば、レーザ回折・散乱法に基づく平均粒径(D50径)が凡そ5μm〜25μm(好ましくは8μm〜15μm)の範囲にある粒子によって実質的に構成された材料粉末を負極活物質として好ましく用いることができる。また、負極活物質のタップ密度としては、概ね0.9g/cm〜1.2g/cmが適当であり、好ましくは0.95g/cm〜1.15g/cmである。ここでタップ密度とは、タッピング式の粉体減少度測定装置によって、タッピングさせ、その衝撃で固めた後、測定される密度である。このようなタップ密度を有する負極活物質を用いることによって、電池性能に悪影響を与えることなく、ペーストの塗工性をより良く向上し得る。
<バインダ>
上記負極形成用ペーストに用いられるバインダとしては、活物質同士あるいは活物質と集電体間を結合する機能があり、かつ使用する溶媒に分散可溶な材料を用いることができる。例えば、水性溶媒を用いた負極形成用ペーストにおいては、スチレンブタジエンブロック共重合体(SBR)、アクリル酸変性SBR樹脂(SBR系ラテックス)、アラビアゴム等のゴム類;などの水分散性ポリマーを好ましく採用することができる。なかでもスチレンブタジエンブロック共重合体(SBR)を好ましく使用し得る。また、非水溶媒を用いた負極形成用ペーストにおいては、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリ塩化ビニリデン(PVDC)、ポリエチレンオキサイド(PEO)、テトラフルオロエチレン−パーフルオロアルキルビニルエーテル共重含体(PFA)、テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体(FEP)、エチレン−テトラフルオロエチレン共重合体(ETFE)等のフッ素系樹脂;などのポリマーを好ましく採用することができる。このような材料は、一種を単独で用いてもよく、二種以上を組み合わせて用いてもよい。バインダの含有量としては特に限定されないが、負極活物質100質量部に対して概ね0.1質量部〜10質量部が適当であり、好ましくは0.5質量部〜5質量部、より好ましくは0.8質量部〜2質量部である。
<増粘剤>
上記負極形成用ペーストに用いられる増粘剤としては、該ペーストを増粘させる機能がある材料を用いることができる。例えば、カルボキシメチルセルロース(CMC;典型的にはナトリウム塩)、ヒドロキシエチルセルロース(HEC)、ヒドロキシプロピルセルロース(HPC)、メチルセルロース(MC)、酢酸フタル酸セルロース(CAP)、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)、ヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレート(HPMCP)等のセルロース誘導体、または、ポリビニルアルコール(PVA)等が挙げられる。これらのうち、セルロース誘導体(例えばCMC)を特に好ましく使用し得る。このような材料は、一種を単独で用いてもよく、二種以上を組み合わせて用いてもよい。増粘剤の含有量としては特に限定されないが、負極活物質100質量部に対して概ね0.5質量部〜5質量部が適当であり、好ましくは0.7質量部〜2質量部、より好ましくは0.7質量部〜1質量部である。このように増粘剤を所定割合で含ませることにより、電池性能に悪影響を与えることなく、ペーストの経時安定性をより良く向上し得る。
<分散剤>
ここに開示される負極形成用ペーストは、分散剤として下記一般式(A)により表されるウレタン化合物をさらに含有する。このように下記式(A)で表される化合物を分散剤として含ませることにより、塗工性に優れた電極形成用ペーストが実現され得る。
ここで式(A)中、XおよびZは、それぞれ独立に、コレステリル基、ラノステリル基、アグノステリル基およびラノリン基からなる群から選択される基である。Yはジイソシアネ−ト化合物から導かれる2価の有機残基である。OR、OR’およびOR”は、それぞれ独立に、炭素原子数2〜4のオキシアルキレン基である。a、dはそれぞれ1〜15の整数であり、bは30〜300の整数であり、cは1以上の整数である。
前記式(A)で表されるウレタン化合物において、XおよびZは、それぞれ独立に、コレステリル基、ラノステリル基、アグノステリル基およびラノリン基から選ばれる基である。XとZとは、同種でもよく、異種の組み合わせでもよい。上記化合物の一好適例として、Xがコレステリル基、ラノステリル基およびアグノステリル基から選ばれる基であり、Zがコレステリル基、ラノステリル基、アグノステリル基およびラノリン基から選ばれる基であるウレタン化合物が例示される。なかでも、Xがコレステリル基またはラノステリル基であり、かつZがラノステリル基、アグノステリル基およびラノリン基から選ばれる基であるウレタン化合物が好ましい。なお、ラノリン基とは、ラノリンアルコール由来の骨格をもつ基ということもできる。
前記式(A)で表されるウレタン化合物において、Yはジイソシアネ−ト化合物から導かれる2価の有機残基である。ジイソシアネ−ト化合物としては特に限定されない。ジイソシアネ−ト化合物としては、例えば、脂肪族系ジイソシアネ−ト化合物、芳香族系ジイソシアネ−ト化合物および脂環族系ジイソシアネ−ト化合物;等が挙げられる。
脂肪族系ジイソシアネ−ト化合物としては、例えば、メチレンジイソシアネ−ト、ジメチレンジイソシアネ−ト、トリメチレンジイソシアネ−ト、テトラメチレンジイソシアネ−ト、ペンタメチレンジイソシアネ−ト、ヘキサメチレンジイソシアネ−ト、ヘプタメチレンジイソシアネ−ト、オクタメチレンジイソシアネ−ト、ノナメチレンジイソシアネ−ト、デカメチレンジイソシアネ−ト、ジプロピルエ−テルジイソシアネ−ト、2,2−ジメチルペンタンジイソシアネ−ト、3−メトキシヘキサンジイソシアネ−ト、2,2,4−トリメチルペンタンジイソシアネ−ト、3−ブトキシヘキサンジイソシアネ−ト、1,4−ブチレングリコ−ルジプロピルエ−テルジイソシアネ−ト、メタキシリレンジイソシアネ−ト、パラキシリレンジイソシアネ−トおよびテトラメチルキシリレンジイソシアネ−ト;等が例示される。なかでも、ペンタメチレンジイソシアネ−ト、ヘキサメチレンジイソシアネ−ト、ヘプタメチレンジイソシアネ−トが好ましい。
芳香族系ジイソシアネ−ト化合物としては、例えば、メタフェニレンジイソシアネ−ト、パラフェニレンジイソシアネ−ト、2,4−トリレンジイソシアネ−ト、2,6−トリレンジイソシアネ−ト、ジメチルベンゼンジイソシアネ−ト、エチルベンゼンジイソシアネ−ト、イソプロピルベンゼンジイソシアネ−ト、ビフェニルジイソシアネ−ト、トリジンジイソシアネ−ト、3,3’−ジメトキシビフェニルジイソシアネ−ト、ナフタレンジイソシアネ−ト、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネ−ト、2,2’−ジメチルジフェニルメタン−4,4’−ジイソシアネ−ト、3,3’−ジメトキシジフェニルメタン−4,4’−ジイソシアネ−ト、4,4’−ジメトキシジフェニルメタン−3,3’−ジイソシアネ−ト、4,4’−ジエトキシジフェニルメタン−3,3’−ジイソシアネ−トおよび2,2’−ジメチル−5,5’−ジメトキシジフェニルメタン−4,4’−ジイソシアネ−ト;等が例示される。
脂環族系ジイソシアネ−ト化合物としては、例えば、シクロヘキシルジイソシアネ−ト、水添キシリレンジイソシアネ−ト、イソホロンジイソシアネ−トおよびジシクロヘキシルメタン−4,4’−ジイソシアネ−ト;等が例示される。
前記式(A)で表されるウレタン化合物において、OR、OR’およびOR”は炭素数2〜4のオキシアルキレン基である。炭素数が2未満もしくは4を越えると塗工性が低下する場合があり得る。炭素数2〜4のオキシアルキレン基としては、オキシエチレン基、オキシプロピレン基およびオキシブチレン基;等が例示される。(OR)a、(OR’)bおよび(OR”)dは、2種以上のオキシアルキレン基のランダム重合鎖であってもよくブロック重合鎖であってもよく、その組み合わせであってもよい。また、オキシアルキレン基は同種でもよく、異種の組み合わせでもよい。
前記式(A)で表されるウレタン化合物において、a、dは各々、OR、OR”の繰り返し単位を表す。a、dはそれぞれ、1〜15の整数であり、好ましくは1〜10であり、さらに好ましくは1〜8である。a、dが1未満では反応がうまく進行しない場合があり、一方、15を越えると塗工性が低下する場合があり得る。
前記式(A)で表されるウレタン化合物において、bはOR’の繰り返し単位を表す。bは、30〜300の整数であり、好ましくは40〜250であり、さらに好ましくは50〜200である。bが30未満もしくは300を越えると塗工性が低下する場合があり得る。
前記式(A)で表されるウレタン化合物において、cは[OCO−NH−Y−CO−(OR’)b]内の繰り返し単位を表わし、1以上(好ましくは1以上4以下)の整数である。cが1未満になると、塗工性が低下する場合があり得る。
上記分散剤を合成する方法としては、公知のウレタン化反応を用いて合成することができる。例えばポリエ−テルモノオ−ル、ポリエ−テルジオ−ルおよびジイソシアネ−トを2〜10時間反応して合成できる。例えば、ポリエ−テルモノオ−ル、ポリエ−テルジオ−ルおよびジイソシアネ−トから合成する場合、一括仕込みによる合成方法でもよく、またポリエ−テルジオ−ルとジイソシアネ−トとを反応させた後、ポリエ−テルモノオ−ルと反応させ合成する方法、あるいはポリエ−テルモノオ−ルとジイソシアネ−トとを反応させた後、ポリエ−テルジオ−ルと反応させて合成する方法でもよい。反応により副生成物ができる場合があり得るが、副生成物との混合物で好適に使用できる。
反応温度としては、概ね40〜130℃が適当であり、好ましくは70〜100℃である。40℃未満では反応が遅く反応完結までに時間がかかりすぎる場合があり、また、130℃より高い温度では異常な副反応が起こる場合があり好ましくない。
これらの反応において、必要に応じて溶剤を使用してもよい。溶剤は、活性水素を含有しないことが好ましい。例えば芳香族系溶剤としてトルエンおよびキシレン等、脂肪族系溶剤として石油エ−テルおよびn−ヘキサン等、脂環式系溶剤としてシクロヘキサン、シクロヘキサノンおよびデカリン等、ハロゲン含有溶剤としてクロロホルム、四塩化炭素、エチレンジクロライドおよびクロルベンゼン等、エステル系溶剤として酢酸エチル、酢酸ブチルおよび酢酸ペンチル等、ケトン系溶剤としてメチルエチルケトン、ジエチルケトンおよびメチルイソブチルケトン等が例示される。
また、必要に応じてウレタン化反応に触媒を使用してもよい。ウレタン化反応に使用される触媒としては、例えばアミン系化合物としてトリエチルアミン、トリエチレンジアミン、ヘプタメチルジエチレントリアミン、N−メチルモルホリンおよびベンジルトリエチルアンモニウムハイドロオキサイド等、金属含有化合物として塩化第1スズ、塩化第2スズ、オクチル酸スズ、オクチル酸鉛、ジブチルチンジラウレ−ト、ナフテン酸コバルト、ナフテン酸鉛、ナフテン酸カリウムおよび三塩化アンチモン等が挙げられる。触媒添加量は仕込み全質量に対し、概ね0.001質量%〜1質量%が適当である。また、添加方法としては、通常反応初期に加えるが、反応中に分割して添加してもよい。
分散剤の含有量としては特に限定されないが、負極活物質100質量部に対して概ね0.1質量部以上が適当であり、好ましくは0.2質量部以上であり、より好ましくは0.3質量部以上である。このような分散剤の含有量の範囲内であると、ペーストの塗工性をより良く向上させることができる。一方、分散剤の含有量が多すぎると、該ペーストを用いて形成された電極の抵抗(特に低温域における抵抗)が増大傾向になる場合があり得る。
抵抗低減の観点から、例えば、分散剤の含有量は、負極活物質100質量部に対して0.5質量部以下が適当であり、好ましくは0.4質量部以下である。
<溶媒>
上述した負極活物質、バインダ、増粘剤および分散剤を分散させる溶媒としては、従来のこの種のペースト材料に用いられているものを特に制限なく使用することができ、水系溶媒および非水系溶媒(例えばN‐メチルピロリドン(NMP))の何れも使用可能である。典型的には、水または水を主体とする混合溶媒が好ましく用いられる。かかる混合溶媒を構成する水以外の溶媒成分としては、水と均一に混合し得る有機溶媒(低級アルコール、低級ケトン等)の一種または二種以上を適宜選択して用いることができる。例えば、該水系溶媒の80質量%以上(より好ましくは90質量%以上、さらに好ましくは95質量%以上)が水である水系溶媒の使用が好ましい。特に好ましい例として、実質的に水からなる水系溶媒が挙げられる。
<固形分率>
ここで開示される負極形成用ペーストは、目的に応じて適宜固形分率を選択することができるが、通常は乾きやすくなる55質量%以上とすることが好ましく、例えば59質量%〜75質量%の範囲が適当であり、より好ましくは60〜70質量%であり、特に好ましくは60質量%〜65質量%である。
<粘度>
また、ここで開示される負極形成用ペーストは、高固形分であるにも拘わらず塗工性の良好なものであり得る。例えば、せん断速度:1000s−1のときの粘度αがα≦1000mPa・s(例えば500mPa・s≦α≦1000mPa・s)、好ましくはα≦998mPa・s、より好ましくはα≦980mPa・s、特に好ましくはα≦950mPa・sであり得る。せん断速度:1000s−1における粘度αをα≦1000mPa・sとした負極形成用ペーストは、流動性が高く(ダイコーター等の細く狭い流路を通りやすく)、塗工性が良好である。そのため、該ペーストを集電体に塗工した際、塗工面にスジや厚みムラが生じることを防止することができる。
ここで開示される負極形成用ペーストの好適例として、せん断速度:1000s−1のときの粘度αが1000mPa・s以下であり、かつ固形分率が55〜70質量%の範囲であるもの、上記粘度αが998mPa・s以下であり、かつ固形分率が59〜70質量%の範囲であるもの、上記粘度αが980mPa・s以下であり、かつ固形分率が60〜70質量%の範囲であるもの、等が挙げられる。このような所定範囲内の粘度αおよび固形分率を両立して有することにより、従来得ることができなかった良好な塗工性と高い乾燥効率の双方を満足する負極形成用ペーストとすることができる。
また、ここで開示される負極形成用ペーストは、せん断速度:1s−1のときの粘度βが1000mPa・s≦β(例えば1000mPa・s≦β≦30000mPa・s)、好ましくは2000mPa・s≦β≦25000mPa・s、より好ましくは3000mPa・s≦β≦15000mPa・sであり得る。ここで開示される負極形成用ペーストは、1000mPa・s≦βであるような粘度を有することにより、該ペーストを集電体に付与する際に好適な経時安定性を示す。すなわち、せん断速度:1s−1における粘度βを1000mPa・s≦βとした負極形成用ペーストは、静置時(攪拌等の操作を行わずに常温で静置した際)の経時安定性に優れるため、該ペーストを集電体に付与した際、ペースト中の固形分が沈降することなく良好な分散状態を維持し得る。そのため、ペースト中の固形分が沈降することによる種々の不具合(例えば、ダイコーター等の配管の詰まり、負極活物質やバインダの偏在、それに伴う内部抵抗の増加や負極活物質層と負極集電体との密着性の低下等)を防止することができる。
すなわち、α≦1000mPa・sかつ1000mPa・s≦βであるような粘度α、βを両立して有することにより、ペーストの経時安定性および塗工性がいずれも良好であるので、塗工不良の発生を回避しつつ、表面が平滑で、負極活物質層が負極集電体から剥がれ難く、内部抵抗のより低い高性能な負極を形成することができる。
ここで、本発明者は、前述したウレタン化合物を分散剤として含まない従来の負極形成用ペーストにおいて、種々異なった固形分率に調整したペーストを複数用意し、せん断速度を変えてペーストの粘度を測定した。このうち、52質量%、56質量%、60質量%の固形分率に調整したペーストについて、粘度測定を行った結果を、図1に示す。ここでは活物質100質量部に対して増粘剤としてCMC1質量部を使用した。
図1に示すように、52質量%、56質量%、60質量%とペーストの固形分率が増大するに従い、ペーストの粘度は増大傾向を示した。特にせん断速度:1000s−1におけるペースト粘度は、著しく増大した。このように高せん断速度域におけるペースト粘度が上昇すると、上述したように塗工性が悪化する要因になり得る。かかる粘度上昇を抑えるために、増粘剤(CMC)の添加量を減らすことが考えられるが、増粘剤の添加量を単純に減らすと、ペースト粘度は全体的に低下する。例えば、図2は固形分率を60質量%で一定とし、CMCの添加量を0.4質量部、0.7質量部、1質量部に調整したときのペースト粘度の変化を示している。図2に示すように、CMCの添加量が減るに従い、高せん断速度域における粘度は低下傾向になるが、それに合わせて低せん断速度域の粘度も低下傾向になる。そのため、増粘剤の添加量を減らすだけでは、せん断速度:1s−1のときの粘度が1000mPa・sを下回り、ペーストの経時安定性が損なわれてしまう。
これに対し、ここで開示される負極形成用ペーストは、前記式(A)で表されるウレタン化合物を分散剤として含むことにより、例えば60質量%以上のような高固形分であっても、せん断速度:1000s−1付近におけるペーストの粘度上昇を有効に抑えることができる。また、増粘剤を所定割合で含むことにより、せん断速度:1s−1付近におけるペースト粘度を高粘度に保つことができる。つまり、前記式(A)で表される分散剤と所定割合の増粘剤とを敢えて併用することにより、高固形分であるにも拘わらず、せん断速度:1000s−1のときの粘度αがα≦1000mPa・sであり、かつ、せん断速度:1s−1における粘度βが1000mPa・s≦βであるような粘度を有するペーストを容易に実現でき、従来得ることができなかった良好な塗工性と良好な経時安定性の双方を満足する最適な負極形成用ペーストとすることができる。
ここで開示される負極形成用ペーストは、典型的には上記負極活物質、バインダ、増粘剤、分散剤(ウレタン化合物)および溶媒を混練することによって調製することができる。好ましくは、まず、負極活物質と増粘剤と溶媒とを混合してペースト状にした後、さらにバインダを投入して混練するとよい。溶媒は複数回に分けて少量ずつ投入してもよい。分散剤は、負極活物質および増粘剤とともに最初から投入してもよく、バインダとともに投入してもよく、バインダを投入した後、最後に投入してもよい。また、分散剤は、適当な粘度となるように溶媒で希釈してから投入してもよい。該混練に用いる装置は特に限定するものではないが、例えば、プラネタリーミキサー、ディスパー、ボールミル、ニーダ等の押出式混練機、ミキサー等が挙げられる。このような手順で各種ペースト材料を混合し、相互に練り合わせることにより、前述した粘度を有する負極形成用ペーストを好適に調製することができる。
負極を形成するに際しては、上記負極形成用ペーストを負極集電体に付与して該負極集電体上に負極活物質層を形成する。負極集電体には、例えば、負極に適する金属箔が好適に使用され得る。例えば負極集電体として銅箔が用いられている。負極形成用ペーストを集電体に付与する操作は、従来の一般的なリチウムイオン二次電池用負極を作製する場合と同様にして行うことができる。例えば、適当な塗工装置(ダイコーター、スリットコーター、コンマコーター等)を使用して、上記負極集電体に所定量の上記負極形成用ペーストを均一な厚さに塗工する。その後、乾燥炉で負極形成用ペースト中の溶媒を揮発させることによって、負極形成用ペースト中の溶媒を除去する。負極形成用ペーストから溶媒を除去することによって、負極活物質層が形成される。このようにして、負極集電体上に負極活物質層が形成された負極を得ることができる。なお、乾燥後、必要に応じて適当なプレス処理(例えばロールプレス処理)を施すことによって、負極活物質層の厚みや密度を適宜調整することができる。
このようにして、負極集電体上に負極活物質とバインダと増粘剤と分散剤(前記式(A)で表されるウレタン化合物)とを含む負極活物質層が保持された構成を有する負極を得ることができる。好ましい一態様では、負極活物質層中に含まれる分散剤の含有量は、負極活物質100質量部に対して0.1質量部〜0.5質量部である。また、負極活物質層中に含まれる増粘剤の含有量は、負極活物質100質量部に対して0.5質量部以上(好ましくは0.7質量部以上)である。かかる負極は、前述した塗工性および経時安定性の双方を満足する負極形成用ペーストを用いて形成されていることから、平滑性に優れ、かつ、電極抵抗のより低い高性能な負極であり得る。かかる負極は、より高性能であることから、種々の形態の電池の構成要素または該電池に内蔵される電極体の構成要素として好ましく利用され得る。
例えば、ここに開示されるいずれかの負極形成用ペーストを用いて形成された負極と、正極と、該正負極間に配置される電解質と、典型的には正負極間を離隔するセパレータ(固体状またはゲル状の電解質を用いた電池では省略され得る。)と、を備えるリチウムイオン二次電池の構成要素として好ましく使用され得る。かかる電池を構成する外容器の構造(例えば金属製の筐体やラミネートフィルム構造物)やサイズ、あるいは正負極集電体を主構成要素とする電極体の構造(例えば捲回構造や積層構造)等について特に制限はない。
ここに開示される負極形成用ペーストを用いて形成された負極を備えるリチウムイオン二次電池を構成するその他の材料および部材自体は、従来同種の電池に備えられるものと同様でよく、特に制限はない。以下、図4および図5に示す模式図を参照しつつ、その他の構成要素について説明する。図4は本発明の一実施形態に係るリチウムイオン二次電池100の断面図である。図5は、当該リチウムイオン二次電池100に内装される電極体40を示す図である。このリチウムイオン二次電池100は、負極(負極シート)60として、上述した負極形成用ペーストを採用して製造された負極(負極シート)60が用いられている。
本発明の一実施形態に係るリチウムイオン二次電池100は、図4に示すような扁平な角形の電池ケース(即ち外装容器)20に構成されている。リチウムイオン二次電池100は、図4および図5に示すように、扁平形状の捲回電極体40が、液状電解質(電解液)80とともに、電池ケース20に収容されている。
電池ケース20は、一端(電池100の通常の使用状態における上端部に相当する。)に開口部を有する箱形(すなわち有底直方体状)のケース本体21と、その開口部に取り付けられて該開口部を塞ぐ矩形状プレート部材からなる蓋体(封口板)22とから構成される。電池ケース20の材質は、従来のリチウムイオン二次電池で使用されるものと同じであればよく、特に制限はない。軽量で熱伝導性の良い金属材料を主体に構成された電池ケース20が好ましく、このような金属製材料としてアルミニウム等が例示される。
図4に示すように、蓋体22には外部接続用の正極端子23および負極端子24が形成されている。蓋体22の両端子23、24の間には、電池ケース20の内圧が所定レベル以上に上昇した場合に該内圧を開放するように構成された薄肉の安全弁30と、注液口32が形成されている。なお、図4では、当該注液口32が注液後に封止材33によって封止されている。
捲回電極体40は、図5に示すように、長尺なシート状正極(正極シート50)と、該正極シート50と同様の長尺シート状負極(負極シート60)とを計二枚の長尺シート状セパレータ(セパレータ72、74)とを備えている。
正極シート50は、帯状の正極集電体52と正極活物質層53とを備えている。正極集電体52には、例えば、正極に適する金属箔が好適に使用され得る。この実施形態では、正極集電体52として、アルミニウム箔が用いられている。正極集電体52の幅方向片側の縁部に沿って未塗工部51が設定されている。図示例では、正極活物質層53は、正極集電体52に設定された未塗工部51を除いて、正極集電体52の両面に保持されている。正極活物質層53には、正極活物質粒子と導電材とバインダが含まれている。
正極活物質としては、リチウムイオンを吸蔵および放出可能な材料が用いられ、従来からリチウムイオン二次電池に用いられる物質(例えば層状構造の酸化物やスピネル構造の酸化物)の一種または二種以上を特に限定することなく使用される。例えば、リチウムニッケル系複合酸化物、リチウムコバルト系複合酸化物、リチウムマンガン系複合酸化物等のリチウム含有遷移金属酸化物が挙げられる。
正極活物質層53は、例えば、上述した正極活物質粒子と導電材とバインダを溶媒に混ぜ合わせた正極形成用ペーストを作製し、正極集電体52に塗工(塗布および乾燥)させ、圧延することによって形成されている。なお、正極形成用ペーストも負極形成用ペーストと同様、前記式(A)で表されるウレタン化合物を分散剤として含ませてもよい。ペーストの溶媒としては、水系溶媒および非水系溶媒(例えばN‐メチルピロリドン(NMP))の何れも使用可能である。導電材としては、例えば、カーボン粉末、カーボンファイバーなどのカーボン材料が例示される。導電材としては、このような導電材から選択される一種を単独で用いてもよく二種以上を併用してもよい。カーボン粉末としては、種々のカーボンブラック(例えば、アセチレンブラック(AB)、オイルファーネスブラック、黒鉛化カーボンブラック、カーボンブラック、黒鉛、ケッチェンブラック)、グラファイト粉末などのカーボン粉末を用いることができる。バインダとしては、ポリフッ化ビニリデン(PVdF)、ポリ塩化ビニリデン(PVdC)、ポリアクリルニトリル(PAN)などを好ましく採用することができる。
負極シート60は、図5に示すように、帯状の負極集電体62と負極活物質層63とを備えている。負極集電体62には、例えば、負極に適する金属箔が好適に使用され得る。この実施形態では、負極集電体62には、前述のように帯状の銅箔が用いられている。負極集電体62の幅方向片側には、縁部に沿って未塗工部61が設定されている。負極活物質層63は、負極集電体62に設定された未塗工部61を除いて、負極集電体62の両面に保持されている。負極活物質層63には、前述のように、負極活物質とバインダと増粘剤と前記式(A)で表されるウレタン化合物(分散剤)とが含まれている。負極シートの製造方法については、前述したとおりであるので、その説明は省略する。
セパレータ72、74は、図5に示すように、正極シート50と負極シート60とを隔てる部材である。この例では、セパレータ72、74は、微小な孔を複数有する所定幅の帯状のシート材で構成されている。セパレータ72、74には、例えば、多孔質ポリオレフィン系樹脂で構成された単層構造のセパレータ或いは積層構造のセパレータを用いることができる。また、かかる樹脂で構成されたシート材の表面に、絶縁性を有する粒子の層をさらに形成してもよい。ここで、絶縁性を有する粒子としては、絶縁性を有する無機フィラー(例えば、金属酸化物、金属水酸化物などのフィラー)、或いは、絶縁性を有する樹脂粒子(例えば、ポリエチレン、ポリプロピレンなどの粒子)で構成してもよい。この例では、図3に示すように、負極活物質層63の幅b1は、正極活物質層53の幅a1よりも少し広い。さらにセパレータ72、74の幅c1、c2は、負極活物質層63の幅b1よりも少し広い(c1、c2>b1>a1)。
この実施形態では、捲回電極体40は、図5に示すように、捲回軸WLに直交する一の方向において扁平に押し曲げられている。図5に示す例では、正極集電体52の未塗工部51と負極集電体62の未塗工部61は、それぞれセパレータ72、74の両側においてらせん状に露出している。この実施形態では、図4に示すように、未塗工部51の中間部分は、寄せ集められ、電池ケース20の内部に配置された電極端子(内部端子)の集電タブ25、26に溶接される。図4中の25a、26aは当該溶接個所を示している。
そして、ケース本体21の上端開口部から該本体21内に捲回電極体40が収容され、上記開口部を蓋体22との溶接等により封止する。また、電解液80が注液口32からケース本体21内に配置(注液)される。
電解液(非水電解液)80としては、従来からリチウムイオン二次電池に用いられる非水電解液と同様のものを特に限定なく使用することができる。かかる非水電解液は、典型的には、適当な非水溶媒に支持塩を含有させた組成を有する。上記非水溶媒としては、例えば、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、エチルメチルカーボネート、1,2−ジメトキシエタン、1,2−ジエトキシエタン、テトラヒドロフラン、1,3−ジオキソラン等からなる群から選択された一種または二種以上を用いることができる。また、上記支持塩としては、例えば、LiPF,LiBF,LiAsF,LiCFSO,LiCSO,LiN(CFSO,LiC(CFSO等のリチウム塩を用いることができる。
その後、注液口32を封止材33によって封止し、本実施形態に係るリチウムイオン二次電池100の組み立てが完成する。ケース20の封止プロセスや電解液の配置(注液)プロセスは、従来のリチウムイオン二次電池の製造で行われている手法と同様でよく、本発明を特徴付けるものではない。このようにして本実施形態に係るリチウムイオン二次電池100の構築が完成する。
このようにして構築されたリチウムイオン二次電池100は、前述のように負極が前記式(A)で表されるウレタン化合物(分散剤)を含む好適な粘度の負極形成用ペーストを用いて形成されていることから、優れた電池性能を示すものである。例えば、上記負極を用いて電池を構築することにより、入出力特性に優れる、サイクル耐久性が高い、生産安定性がよい、生産効率がよい、のうちの少なくとも一つ(好ましくは全部)を満たすチウムイオン二次電池を提供することができる。
以下、本発明に関する試験例につき説明するが、本発明をかかる具体例に示すものに限定することを意図したものではない。なお、文中に部または%とあるのは質量部または質量%の意味である。
≪ウレタン化合物の合成≫
実施例および比較例で用いたウレタン化合物(分散剤)は以下のようにして合成した。
<製造例1>
温度計、窒素導入管および高粘度用攪拌機を付した容量2000mlの4つ口フラスコに、コレステロールのエチレンオキサイド付加物(平均付加モル数:1)を431部、ポリエチレングリコ−ル(数平均分子量1350)を675部入れ、低圧下(5〜10mmHg)にて80〜90℃で3時間脱水し、系の水分含量を0.03%とした。次いで、70℃に冷却しヘキサメチレンジイソシアネ−トを168部加え、窒素気流下85〜90℃でイソシアネ−ト含量が0%になるまで反応させ(3時間)、淡黄色粘稠液状の反応生成物(分散剤1)を得た。
<製造例2>
温度計、窒素導入管および高粘度用攪拌機を付した容量2000mlの4つ口フラスコに、コレステロールのエチレンオキサイド付加物(平均付加モル数:1)を43.0部、ラノステロールのエチレンオキサイド付加物(平均付加モル数:1)を47.0部、ポリエチレングリコ−ル(数平均分子量13200)を1320部入れ、低圧下(5〜10mmHg)にて80〜90℃で3時間脱水し、系の水分含量を0.03%とした。次いで、70℃に冷却しヘキサメチレンジイソシアネ−トを33.6部加え、窒素気流下85〜90℃でイソシアネ−ト含量が0%になるまで反応させ(3時間)、淡黄色粘稠液状の反応生成物(分散剤2)を得た。
<製造例3>
温度計、窒素導入管および高粘度用攪拌機を付した容量2000mlの4つ口フラスコに、コレステロールのエチレンオキサイド付加物(平均付加モル数:15)を524部、アグノステロールのエチレンオキサイド付加物(平均付加モル数:15)を543部、ポリエチレングリコ−ル(数平均分子量1350)を675部入れ、低圧下(5〜10mmHg)にて80〜90℃で3時間脱水し、系の水分含量を0.03%とした。次いで、70℃に冷却しヘキサメチレンジイソシアネ−トを168部加え、窒素気流下85〜90℃でイソシアネ−ト含量が0%になるまで反応させ(3時間)、淡黄色粘稠液状の反応生成物(分散剤3)を得た。
<製造例4>
温度計、窒素導入管および高粘度用攪拌機を付した容量2000mlの4つ口フラスコに、コレステロールのエチレンオキサイド付加物(平均付加モル数:15)を105部、ラノリンアルコールエチレンオキサイド付加物(平均付加モル数:15)を105部、ポリエチレングリコ−ル(数平均分子量13200)を1320部入れ、低圧下(5〜10mmHg)にて80〜90℃で3時間脱水し、系の水分含量を0.03%とした。次いで、70℃に冷却しヘキサメチレンジイソシアネ−トを33.6部加え、窒素気流下85〜90℃でイソシアネ−ト含量が0%になるまで反応させ(3時間)、淡黄色粘稠液状の反応生成物(分散剤4)を得た。
<製造例5>
温度計、窒素導入管および高粘度用攪拌機を付した容量2000mlの4つ口フラスコに、ラノステロールのエチレンオキサイド付加物(平均付加モル数:5)を129部、ポリエチレングリコ−ル(数平均分子量6600)を1320部入れ、低圧下(5〜10mmHg)にて80〜90℃で3時間脱水し、系の水分含量を0.03%とした。次いで、70℃に冷却しヘキサメチレンジイソシアネ−トを50.4部加え、窒素気流下85〜90℃でイソシアネ−ト含量が0%になるまで反応させ(3時間)、淡黄色粘稠液状の反応生成物(分散剤5)を得た。
<製造例6>
温度計、窒素導入管および高粘度用攪拌機を付した容量2000mlの4つ口フラスコに、ラノステロールのエチレンオキサイド付加物(平均付加モル数:5)を32.4部、アグノステロールのエチレンオキサイド付加物(平均付加モル数:5)を32.4部、ポリエチレングリコ−ル(数平均分子量6600)を1320部入れ、低圧下(5〜10mmHg)にて80〜90℃で3時間脱水し、系の水分含量を0.03%とした。次いで、70℃に冷却しヘキサメチレンジイソシアネ−トを42部加え、窒素気流下85〜90℃でイソシアネ−ト含量が0%になるまで反応させ(3時間)、淡黄色粘稠液状の反応生成物(分散剤6)を得た。
<製造例7>
温度計、窒素導入管および高粘度用攪拌機を付した容量2000mlの4つ口フラスコに、ラノステロールのエチレンオキサイド付加物(平均付加モル数:5)を129部、ラノリンアルコールエチレンオキサイド付加物(平均付加モル数:5)を121部、ポリエチレングリコ−ル(数平均分子量6600)を1320部入れ、低圧下(5〜10mmHg)にて80〜90℃で3時間脱水し、系の水分含量を0.03%とした。次いで、70℃に冷却しヘキサメチレンジイソシアネ−トを67.2部加え、窒素気流下85〜90℃でイソシアネ−ト含量が0%になるまで反応させ(3時間)、淡黄色粘稠液状の反応生成物(分散剤7)を得た。
<製造例8>
温度計、窒素導入管および高粘度用攪拌機を付した容量2000mlの4つ口フラスコに、アグノステロールのエチレンオキサイド付加物(平均付加モル数:5)を129部、ラノリンアルコールエチレンオキサイド付加物(平均付加モル数:5)を121部、ポリエチレングリコ−ル(数平均分子量6600)を1320部入れ、低圧下(5〜10mmHg)にて80〜90℃で3時間脱水し、系の水分含量を0.03%とした。次いで、70℃に冷却しヘキサメチレンジイソシアネ−トを67.3部加え、窒素気流下85〜90℃でイソシアネ−ト含量が0%になるまで反応させ(3時間)、淡黄色粘稠液状の反応生成物(分散剤8)を得た。
<製造例9>
温度計、窒素導入管および高粘度用攪拌機を付した容量2000mlの4つ口フラスコに、コレステロールのエチレンオキサイド付加物(平均付加モル数:5)を121部、ポリエチレングリコ−ル(数平均分子量6600)を1320部入れ、低圧下(5〜10mmHg)にて80〜90℃で3時間脱水し、系の水分含量を0.03%とした。次いで、70℃に冷却しヘキサメチレンジイソシアネ−トを50.5部加え、窒素気流下85〜90℃でイソシアネ−ト含量が0%になるまで反応させ(3時間)、淡黄色粘稠液状の反応生成物(分散剤9)を得た。
<比較製造例1>
温度計、窒素導入管および高粘度用攪拌機を付した容量2000mlの4つ口フラスコに、コレステロールのエチレンオキサイド付加物(平均付加モル数:15)を105部、ポリエチレングリコ−ル(数平均分子量17600)を880部入れ、低圧下(5〜10mmHg)にて80〜90℃で3時間脱水し、系の水分含量を0.03%とした。次いで、70℃に冷却しヘキサメチレンジイソシアネ−トを16.8部加え、窒素気流下85〜90℃でイソシアネ−ト含量が0%になるまで反応させ(3時間)、淡黄色粘稠液状の反応生成物(比較用化合物1)を得た。
<比較製造例2>
温度計、窒素導入管および高粘度用攪拌機を付した容量2000mlの4つ口フラスコに、コレステロールのエチレンオキサイド付加物(平均付加モル数:15)を1047部入れ、低圧下(5〜10mmHg)にて80〜90℃で3時間脱水し、系の水分含量を0.03%とした。次いで、70℃に冷却しヘキサメチレンジイソシアネ−トを84.1部加え、窒素気流下85〜90℃でイソシアネ−ト含量が0%になるまで反応させ(3時間)、淡黄色粘稠液状の反応生成物(比較用化合物2)を得た。
<比較製造例3>
温度計、窒素導入管および高粘度用攪拌機を付した容量2000mlの4つ口フラスコに、コレステロールのエチレンオキサイド付加物(平均付加モル数:30)を342部、ポリエチレングリコ−ル(数平均分子量6600)を1320部入れ、低圧下(5〜10mmHg)にて80〜90℃で3時間脱水し、系の水分含量を0.03%とした。次いで、70℃に冷却しヘキサメチレンジイソシアネ−トを50.5部加え、窒素気流下85〜90℃でイソシアネ−ト含量が0%になるまで反応させ(3時間)、淡黄色粘稠液状の反応生成物(比較用化合物3)を得た。
<比較製造例4>
温度計、窒素導入管および高粘度用攪拌機を付した容量2000mlの4つ口フラスコに、ラウリルアルコールのエチレンオキサイド付加物(平均付加モル数:15)を169部、ポリエチレングリコ−ル(数平均分子量13200)を1320部入れ、低圧下(5〜10mmHg)にて80〜90℃で3時間脱水し、系の水分含量を0.03%とした。次いで、70℃に冷却しヘキサメチレンジイソシアネ−トを33.6部加え、窒素気流下85〜90℃でイソシアネ−ト含量が0%になるまで反応させ(3時間)、淡黄色粘稠液状の反応生成物(比較用化合物4)を得た。
<比較製造例5>
温度計、窒素導入管および高粘度用攪拌機を付した容量2000mlの4つ口フラスコに、コレステロールのエチレンオキサイド付加物(平均付加モル数:80)を1564部、ポリエチレングリコ−ル(数平均分子量220)を22.0部入れ、低圧下(5〜10mmHg)にて80〜90℃で3時間脱水し、系の水分含量を0.03%とした。次いで、70℃に冷却しヘキサメチレンジイソシアネ−トを50.5部加え、窒素気流下85〜90℃でイソシアネ−ト含量が0%になるまで反応させ(3時間)、淡黄色粘稠液状の反応生成物(比較用化合物5)を得た。
<比較製造例6>
温度計、窒素導入管および高粘度用攪拌機を付した容量2000mlの4つ口フラスコに、コレステロールのエチレンオキサイド付加物(平均付加モル数:80)を391部、ポリエチレングリコ−ル(数平均分子量31000)を775部入れ、低圧下(5〜10mmHg)にて80〜90℃で3時間脱水し、系の水分含量を0.03%とした。次いで、70℃に冷却しヘキサメチレンジイソシアネ−トを12.6部加え、窒素気流下85〜90℃でイソシアネ−ト含量が0%になるまで反応させ(3時間)、淡黄色粘稠液状の反応生成物(比較用化合物6)を得た。
≪負極形成用ペーストの調製≫
負極形成用ペーストは、以下のようにして調製した。
<実施例1>
負極活物質としての天然黒鉛粉末(平均粒径:12.2μm、タップ密度:1.13g/cm)100部と増粘剤としてのCMC0.7部と水とを順次プラネタリーミキサーに投入してペースト状に混練した後、バインダとしてのSBR1部を投入し、さらに上記製造例1で得られた分散剤1を0.3部投入し、負極形成用ペーストを調製した。負極形成用ペーストの最終固形分率は60%となるように調節した。
<実施例2〜6>
実施例2〜6では、分散剤1に代えて、上記製造例2〜6で得られた分散剤2〜6をそれぞれ使用したこと以外は実施例1と同様の手順で負極形成用ペーストを調製した。
<実施例7>
実施例7では、分散剤1に代えて、上記製造例7で得られた分散剤7を用い、かつ、分散剤7の使用量を0.1部に変更したこと以外は実施例1と同様の手順で負極形成用ペーストを調製した。
<実施例8>
実施例8では、分散剤1に代えて、上記製造例8で得られた分散剤8を用い、かつ、分散剤8の使用量を0.5部に変更したこと以外は実施例1と同様の手順で負極形成用ペーストを調製した。
<実施例9>
実施例9では、分散剤1に代えて、上記製造例9で得られた分散剤9を用い、かつ、分散剤9の使用量を0.7部に変更したこと以外は実施例1と同様の手順で負極形成用ペーストを調製した。
<比較例1>
比較例1では、分散剤1を用いなかったこと以外は実施例1と同様の手順で負極形成用ペーストを調製した。
<比較例2〜7>
比較例2〜7では、分散剤1に代えて、上記比較製造例1〜6で得られた比較用化合物1〜6をそれぞれ使用したこと以外は実施例1と同様の手順で負極形成用ペーストを調製した。
<比較例8>
比較例8では、分散剤1に代えて、ラウリルアルコールのエチレンオキサイド付加物(平均付加モル数:2.2、商品名:BLAUNON EL−1502.2:青木油脂工業株式会社製)からなる非イオン界面活性剤を使用したこと以外は実施例1と同様の手順で負極形成用ペーストを調製した。
<比較例9>
比較例9では、分散剤1に代えて、ラウリルアルコールのエチレンオキサイド付加物(平均付加モル数:7、商品名:BLAUNON EL−1507:青木油脂工業株式会社製)からなる非イオン界面活性剤を使用したこと以外は実施例1と同様の手順で負極形成用ペーストを調製した。
<比較例10>
比較例10では、分散剤1に代えて、ラウリルアルコールのエチレンオキサイド付加物(平均付加モル数:21、商品名:BLAUNON EL−1521:青木油脂工業株式会社製)からなる非イオン界面活性剤を使用したこと以外は実施例1と同様の手順で負極形成用ペーストを調製した。
<比較例11>
比較例11では、分散剤1に代えて、アルキルベンゼンスルホン酸ナトリウム(商品名:ネオペレックス G−65:花王株式会社製)からなるアニオン界面活性剤を使用したこと以外は実施例1と同様の手順で負極形成用ペーストを調製した。
<比較例12>
比較例12では、分散剤1に代えて、β‐ナフタリンスルホン酸ホルマリン縮合物のナトリウム塩(商品名:デモール RN:花王株式会社製)からなるアニオン界面活性剤を使用したこと以外は実施例1と同様の手順で負極形成用ペーストを調製した。
<比較例13>
比較例13では、分散剤1に代えて、ポリアクリル酸ナトリウム塩(商品名:Sokalan PA 25 CL:BASF社製)からなるアニオン界面活性剤を使用したこと以外は実施例1と同様の手順で負極形成用ペーストを調製した。
各例の負極形成用ペーストの粘度を、市販されるレオメータ(東機産業株式会社製:RE115H)を用い、レオメータのコーンプレートを25℃に設定して1分間温度調整を行ってからせん断速度1000s−1にて測定した。結果を表1の該当欄に示す。また、実施例8の負極形成用ペーストについて、せん断速度1〜5000s−1の範囲で変えつつペースト粘度を測定した。結果を図3に示す。
さらに、実施例1〜9の負極形成用ペーストを用いて評価用セル(設計容量14.2mAh)を構築し、電池のIV抵抗を評価した。なお、比較例1〜13については、せん断速度1000s−1におけるペーストの粘度αが高く、塗工性が悪化していたため、負極活物質層の塗工面にスジが発生し、適切な負極シートが作製できなかった。そのため、電池のIV抵抗は測定していない。
≪負極シートの作製≫
負極シートは次のようにして作製した。実施例1〜9の負極形成用ペーストを、銅箔(負極集電体)上に塗布し、乾燥させて負極活物質層を形成した。次いで、負極活物質層を圧延して負極シートを作製した。何れの負極シートにおいても、塗工面にスジや厚みムラはなく、表面が平滑な負極シートが得られた。
≪正極シートの作製≫
正極シートは次のようにして作製した。正極活物質としてのLiNi1/3Co1/3Mn1/3粉末と、導電材としてのABと、バインダとしてのPVdFとを、これら材料の質量比率が93:4:3となるようにNMPで混練し、正極形成用ペーストを調製した。このペーストを、アルミニウム箔(正極集電体)上に塗布し、乾燥させて正極活物質層を形成した。次いで、該正極活物質層を圧延して正極シートを作製した。
≪リチウムイオン二次電池の構築≫
上記負極シートと2枚の正極シートとを正極活物質層と負極活物質層とが対向するように交互に積層し、両シートの間にセパレータ(PP(ポリプロピレン)/PE(ポリエチレン)/PP(ポリプロピレン)を積層した多孔質シートを使用した。)を挿入して電極体を作製した。この電極体を非水電解液とともにラミネート袋に挿入して試験用リチウムイオン二次電池(ラミネートセル)を構築した。なお、非水電解液としては、エチレンカーボネート(EC)とジメチルカーボネート(DMC)とエチルメチルカーボネート(EMC)とを3:3:4の体積比で含む混合溶媒に、支持塩としてのLiPFを約1mol/リットルの濃度で含有させたものを用いた。
各評価用セルについて、初期容量の凡そ30%の充電状態(SOC30%)に調整した後、−30℃の環境雰囲気下において、3Cの電流値で2秒間の放電を行い、放電開始から2秒後の電圧値を測定し、IV抵抗を算出した。結果を表1の該当欄に示す。なお、表1の「a、d」、「b」、「c」、「X」、「Z」の各欄は、前記式(A)のa、d、b、c、X、Zにそれぞれ対応している。
表1に示すように、比較例2〜13に係る負極形成用ペーストは、分散剤を添加していない比較例1のペーストに比べて、せん断速度:1000s−1のときの粘度αが反って上昇傾向となった。これに対し、実施例1〜9に係る負極形成用ペーストは、前記式(A)中のXおよびZがコレステリル基、ラノステリル基、アグノステリル基およびラノリン基から選ばれる基であり、OR、OR’およびOR”は炭素原子数2〜4のオキシアルキレン基であり、a、dは1〜15の整数であり、bは30〜300の整数であり、cは1以上の整数であるウレタン化合物を分散剤として含んでいる。かかる実施例1〜9では、比較例1に比べて、せん断速度:1000s−1のときの粘度αがいずれも低下していた。また、かかる実施例1〜9のペーストを用いることで、塗工面にスジや厚みムラがない、表面が平滑な負極シートが得られた。この結果から、実施例1〜9に係る分散剤を用いることにより、高せん断速度における粘度低減効果(ひいては塗工性向上効果)が得られ、平滑な電極が作製できることが確認できた。なお、図3に示すように、実施例8に係る負極形成用ペーストは、せん断速度:1s−1のときの粘度βが1000mPa・s以上であり、ペーストの経時安定性についても良好な結果が得られることが確認された。
ここで供試した負極形成用ペーストの場合、分散剤の含有量を0.1部以上とすることによって、せん断速度:1000s−1のときの粘度αが1000mPa・s以下という低い粘度を実現できた。塗工性をより良く向上させる観点からは、分散剤の含有量は、概ね0.1部以上が好ましい。ただし、分散剤の含有量が0.1部を下回る場合でも、該分散剤を含まない比較例1の態様に比べて、塗工性の向上を図ることができる。また、分散剤の含有量を0.7部とした実施例9に係る負極形成用ペーストを用いて構築された電池は、実施例1〜8のペーストを用いて構築された電池に比べて、IV抵抗が増大傾向となった。抵抗低減の観点からは、分散剤の含有量は0.5部以下にすることが好ましい。
以上、本発明の一実施形態に係る電極形成用ペーストおよび非水電解質二次電池を説明したが、本発明に係るペーストおよび非水電解質二次電池は、上述した何れの実施形態にも限定されず、種々の変更が可能である。例えば、電池の種類は上述したリチウムイオン二次電池に限られず、電極体構成材料や電解質が異なる種々の内容の電池であってもよい。また、該電池の大きさおよびその他の構成についても、用途(典型的には車載用)によって適切に変更することができる。
また、上述した実施形態では、前記式(A)で表される分散剤を含む負極形成用ペーストを用いて負極を形成する場合を例示したが、電極の種類はこれに限定されない。例えば、前記式(A)で表される分散剤を含む正極形成用ペーストを用いて正極を形成してもよい。
上述したように、本発明は非水電解質二次電池(例えば、リチウムイオン二次電池)の性能向上に寄与し得る。本発明は、ハイブリッド車や、電気自動車の駆動用電池など車両駆動電源用の非水電解質二次電池に好適である。すなわち、非水電解質二次電池は、例えば、自動車などの車両のモータ(電動機)を駆動させる車両駆動用電源として好適に利用され得る。車両駆動用電源は、複数の非水電解質二次電池を組み合わせた組電池としてもよい。
20 電池ケース
40 捲回電極体
50 正極シート
52 正極集電体
53 正極活物質層
60 負極シート
62 負極集電体
63 負極活物質層
72、74 セパレータ
80 電解液
100 リチウムイオン二次電池

Claims (8)

  1. 非水電解質二次電池の電極を形成するためのペーストであって、
    活物質とバインダと増粘剤と分散剤と溶媒とを含み、
    前記分散剤は、下記一般式(A):
    (式(A)中、XおよびZは、それぞれ独立に、コレステリル基、ラノステリル基、アグノステリル基およびラノリン基からなる群から選択される基である。Yはジイソシアネ−ト化合物から導かれる2価の有機残基である。OR、OR’およびOR”は、それぞれ独立に、炭素原子数2〜4のオキシアルキレン基である。a、dはそれぞれ1〜15の整数であり、bは30〜300の整数であり、cは1以上の整数である。);
    で表されるウレタン化合物である、電極形成用ペースト。
  2. 前記分散剤の含有量は、前記活物質100質量部に対して0.1質量部〜0.5質量部である、請求項1に記載の電極形成用ペースト。
  3. 前記増粘剤の含有量は、前記活物質100質量部に対して少なくとも0.7質量部である、請求項1または2に記載の電極形成用ペースト。
  4. せん断速度:1000s−1のときの前記ペーストの粘度が998mPa・s以下である、請求項1〜3の何れか一つに記載の電極形成用ペースト。
  5. 前記式(A)中のcは、1以上4以下の整数である、請求項1〜4の何れか一つに記載の電極形成用ペースト。
  6. 集電体上に活物質層が形成された電極を備える非水電解質二次電池であって、
    前記活物質層は、活物質とバインダと増粘剤と分散剤とを含み、
    前記分散剤は、下記一般式(A):
    (式(A)中、XおよびZは、それぞれ独立に、コレステリル基、ラノステリル基、アグノステリル基およびラノリン基からなる群から選択される基である。Yはジイソシアネ−ト化合物から導かれる2価の有機残基である。OR、OR’およびOR”は、それぞれ独立に、炭素原子数2〜4のオキシアルキレン基である。a、dはそれぞれ1〜15の整数であり、bは30〜300の整数であり、cは1以上の整数である。);
    で表されるウレタン化合物であり、
    前記活物質層中に含まれる前記分散剤の含有量は、前記活物質100質量部に対して0.1質量部〜0.5質量部である、非水電解質二次電池。
  7. 前記活物質層中に含まれる前記増粘剤の含有量は、前記活物質100質量部に対して少なくとも0.7質量部である、請求項6に記載の非水電解質二次電池。
  8. 前記式(A)中のcは、1以上4以下の整数である、請求項6または7に記載の電極形成用ペースト。
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