特許文献1に開示のような空気調和機では、蒸発器で空気を冷却した後、ヒータで空気を再加熱することで、空気の温度調節の精度を向上させている。しかしながら、このような空気調和機では、空調負荷に追従するために、過大なヒータ容量が必要となる。つまり、従来例の空気調和機では、広範囲の空調負荷に対し高い精度で空気の温度を調節するため、ヒータ容量が大きくなるという問題があった。
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、その目的は、広範囲の空調負荷を処理でき、且つ高い精度で空気の温度を調節することができる空気調和機を提供することである。
第1の発明は、空気調和機を対象とし、圧縮機(12,22)と熱源熱交換器(13,23)と膨張機構(14,17,24,27)と利用熱交換器(18,28)とをそれぞれ有し、上記熱源熱交換器(13,23)が凝縮器となり上記利用熱交換器(18,28)が蒸発器となる冷凍サイクルと、上記利用熱交換器(18,28)が凝縮器となり上記利用熱交換器(18,28)が蒸発器となる冷凍サイクルとをそれぞれ切り換えて行う少なくとも2つ以上の複数の冷媒回路(11,21)と、上記各冷媒回路(11,21)の各利用熱交換器(18,28)がそれぞれ配置される空気通路(44)が形成され、各利用熱交換器(18,28)を通過した空気を対象空間(S)に供給する空調部(40)と、上記複数の冷媒回路(11,21)のうちの一部の冷媒回路(11)の利用熱交換器(18)が蒸発器となり且つ他の冷媒回路(21)の利用熱交換器(28)が凝縮器となる第1運転と、上記複数の冷媒回路(11,21)のうちの全ての冷媒回路(11,21)の利用熱交換器(18,28)が蒸発器となる第2運転と、上記複数の冷媒回路(11,21)のうちの全ての冷媒回路(11,21)の熱源熱交換器(13,23)が凝縮器となる第3運転とを切り換えるように上記複数の冷媒回路(11,21)を制御する制御部(50)とを備えていることを特徴とする。
第1の発明の空気調和機(A)には、2つ以上の複数の冷媒回路(11,21)が設けられる。これらの冷媒回路(11,21)では、圧縮機(12,22)で圧縮した冷媒が熱源熱交換器(13,23)で凝縮し、膨張機構(14,17,24,27)で減圧された後、利用熱交換器(18,28)で蒸発する冷凍サイクル(以下、第1冷凍サイクルともいう)と、圧縮機(12,22)で圧縮した冷媒が利用熱交換器(18,28)で凝縮し、膨張機構(14,17,24,27)で減圧された後、熱源熱交換器(13,23)で蒸発する冷凍サイクル(以下、第2冷凍サイクルともいいう)とが切り換えて行われる。
空調部(40)の空気通路(44)には、これらの複数の冷媒回路(11,21)の利用熱交換器(18,28)が配置される。空気通路(44)の空気は、これらの複数の利用熱交換器(18,28)を通過した後、所定の対象空間(S)に供給される。これにより、対象空間(S)の空調が行われる。
本発明の制御部(50)は、次の第1〜第3運転を切り換えるように複数の冷媒回路(11,21)を制御する。
第1運転では、複数の利用熱交換器(18,28)の一部の利用熱交換器(18)が蒸発器となり、他の利用熱交換器(28)が凝縮器となる。このため、空気通路(44)を流れる空気は、一部の利用熱交換器(18)で冷却され、他の利用熱交換器(28)で加熱される。これにより、第1運転では、1つの利用熱交換器で空気を冷却あるいは加熱する構成と比較して、空気の温度を精度よく調節できる。
第2運転では、全ての利用熱交換器(18,28)が蒸発器となる。このため、空気通路(44)を流れる空気は、全ての利用熱交換器(18,28)で冷却されるため、冷却負荷が大きい条件下であっても、この冷却負荷を処理できる。また、各利用熱交換器(18,28)で空気を冷却するため、1つの利用熱交換器で空気を冷却する構成と比較して、空気の温度を精度よく調節できる。
第3運転では、全ての利用熱交換器(18,28)が凝縮器となる。このため、空気通路(44)を流れる空気は、全ての利用熱交換器(18,28)で加熱されるため、加熱負荷が大きい条件下であっても、この加熱負荷を処理できる。また、各利用熱交換器(18,28)で空気を加熱するため、1つの利用熱交換器で空気を加熱する構成と比較して、空気の温度を精度よく調節できる。
以上のように、第1〜第3運転を適宜切り換えることで、広範囲の冷却負荷や加熱負荷を処理しつつ、対象空間(S)の空気の温度を精度よく調節できる。
第2の発明は、第1の発明において、上記対象空間(S)の空気の温度Tinを検知する第1温度検知部(37)と、上記空調部(40)から対象空間(S)へ供給する空気の温度Toutを検知する第2温度検知部(38)とを備え、上記複数の冷媒回路(11,21)の各圧縮機(12,22)は、該各圧縮機(12,22)の運転周波数が調節される可変容量式の圧縮機で構成され、上記制御部(50)は、上記第1運転、上記第2運転、及び上記第3運転において、上記第1温度検知部(37)で検知した空気の温度Tinが設定温度Tsに近づくように上記複数の冷媒回路(11,21)の各圧縮機(12,22)の運転周波数を制御するように構成され、且つ上記第1温度検知部(37)で検知した空気の温度Tinと上記第2温度検知部(38)で検知した空気の温度Toutとを比較した結果に基づいて、上記第1運転、上記第2運転、及び上記第3運転のいずれかを実行させるように構成されることを特徴とする。
第2の発明の空気調和機(A)では、第1〜第3運転において、対象空間(S)の空気の温度Tinが、所定の設定温度Tsに近づくように、各圧縮機(12,22)の運転周波数が調節される。これにより、各運転では、対象空間(S)の空気の温度Tinが目標の設定温度Tsに収束していく。
このような各運転では、制御部(50)により、第1温度検知部(37)で検知した対象空間(S)の空気の温度Tinと、第2温度検知部(38)で検知した、空調部(40)から対象空間(S)へ供給される空気の温度Toutとを比較した結果に基づいて、第1運転、第2運転、及び第3運転の切換の判定が行われる。
第3の発明は、第2の発明において、上記制御部(50)は、上記第1運転中において、上記第1温度検知部(37)で検知した空気の温度Tinが上記第2温度検知部(38)で検知した空気の温度Toutより高く、且つ蒸発器となる利用熱交換器(18)に対応する圧縮機(12)の運転周波数が最大になり、且つ凝縮器となる利用熱交換器(28)に対応する圧縮機(22)の運転周波数が最小になると、上記第1運転から上記第2運転へ切り換えることを特徴とする。
第3の発明では、一部の利用熱交換器(18)が蒸発器となり他の利用熱交換器(28)が凝縮器となる第1運転において、対象空間(S)の空気の温度Tinが、空調部(40)の供給空気の温度Toutより高く、且つ蒸発器側の利用熱交換器(18)に対応する圧縮機(12)の運転周波数が最大になり、且つ凝縮器となる利用熱交換器(28)に対応する圧縮機(22)の運転周波数が最小であると、第1運転から第2運転へ移行する。つまり、この条件が成立する場合、対象空間(S)の冷却負荷に対して空調部(40)の冷却能力が不足しているといえる。そこで、このような条件が成立すると、制御部(50)は、第1運転から第2運転に切り換わるように各冷媒回路(11,21)を制御する。
第2運転に移行すると、全ての利用熱交換器(18,28)が蒸発器となり、全ての利用熱交換器(18,28)で空気が冷却される。この結果、空調部(40)の冷却能力が増大し、対象空間(S)の冷却負荷を十分に処理できる。
第4の発明は、第2又は第3の発明において、上記制御部(50)は、上記第1運転中において、上記第1温度検知部(37)で検知した空気の温度Tinが上記第2温度検知部(38)で検知した空気の温度Toutより低く、且つ蒸発器となる利用熱交換器(18,28)に対応する圧縮機(12,22)の運転周波数が最小となり、且つ凝縮器となる利用熱交換器(18,28)に対応する圧縮機(12,22)の運転周波数が最大となると、上記第1運転から上記第3運転へ切り換えることを特徴とする。
第4の発明では、一部の利用熱交換器(18)が蒸発器となり他の利用熱交換器(28)が凝縮器となる第1運転において、対象空間(S)の空気の温度Tinが、空調部(40)の供給空気の温度Toutより小さく、且つ蒸発器側の利用熱交換器(18)に対応する圧縮機(12)の運転周波数が最小であり、凝縮器側の利用熱交換器(28)に対応する圧縮機(22)の運転周波数が最大であると、第1運転から第3運転へ移行する。つまり、この条件が成立する場合、対象空間(S)の加熱負荷に対して空調部(40)の加熱能力が不足しているといえる。そこで、このような条件が成立すると、制御部(50)は、第1運転から第3運転に切り換わるように各冷媒回路(11,21)を制御する。
第3運転に移行すると、全ての利用熱交換器(18,28)が凝縮器となり、全ての利用熱交換器(18,28)で空気が加熱される。この結果、空調部(40)の加熱能力が増大し、対象空間(S)の加熱負荷を十分に処理できる。
第5の発明は、第1乃至第4のいずれか1つの発明において、上記複数の冷媒回路(11,21)の各利用熱交換器(18,28)は、上記空気通路(44)において、空気流れに対して並列に配列されることを特徴とする。
第5の発明では、空調部(40)の空気通路(44)に複数の利用熱交換器(18,28)が並列に配列される。つまり、空気通路(44)を流れる空気は、複数の利用熱交換器(18,28)を並行に流れ、加熱又は冷却されて対象空間(S)へ供給される。
第6の発明は、第5の発明において、上記制御部(50)は、上記第2運転において、上記複数の利用熱交換器(18,28)の冷媒の蒸発温度が同じとなるように対応する冷媒回路(11,21)を制御することを特徴とする。
第6の発明では、第2運転において、並列に配列される複数の利用熱交換器(18,28)が全て蒸発器となる。ここで、制御部(50)は、これらの利用熱交換器(18,28)の蒸発温度が互いに同じとなるように、対応する冷媒回路(11,21)を制御する。この結果、空気が利用熱交換器(18,28)を並行に流れる際、この空気を全域に亘って均一な温度まで冷却でき、対象空間(S)へ供給される空気の温度ムラを抑制できる。
第7の発明は、第5又は第6の発明において、上記制御部(50)は、上記第3運転において、上記複数の利用熱交換器(18,28)の冷媒の凝縮温度が同じとなるように対応する冷媒回路(11,21)を制御することを特徴とする。
第7の発明では、第3運転において、並列に配列される複数の利用熱交換器(18,28)が全て凝縮器となる。ここで、制御部(50)は、これらの利用熱交換器(18,28)の凝縮温度が互いに同じとなるように、対応する冷媒回路(11,21)を制御する。この結果、空気が利用熱交換器(18,28)に並行に流れる際、この空気を全域に亘って均一な温度まで加熱でき、対象空間(S)へ供給される空気の温度ムラを抑制できる。
第8の発明は、第1乃至第4のいずれか1つの発明において、上記複数の冷媒回路(11,21)の各利用熱交換器(18,28)は、上記空気通路(44)において、空気流れに対して直列に配列され、上記制御部(50)は、上記第1運転において、複数の利用熱交換器(18,28)のうち空気流れの上流側に配置される利用熱交換器(18)を蒸発器とし、且つ該上流側の利用熱交換器(18)よりも空気流れの下流側に配置される利用熱交換器(28)を凝縮器とすることを特徴とする。
第8の発明では、空調部(40)の空気通路(44)に複数の利用熱交換器(18,28)が直列に配列される。第1運転において、空気通路(44)を流れる空気は、まず、蒸発器となる利用熱交換器(18,28)を通過して冷却される。ここで、空気を水分の露点温度以下まで冷却することで、空気中の水分を凝縮させ、空気を除湿することもできる。第1運転において、蒸発器となる利用熱交換器(18)を通過した空気は、凝縮器となる利用熱交換器(28)を通過して加熱される。これにより、空気の温度を空気通路(44)の下流側において微調節できる。
第9の発明は、第8の発明において、上記制御部(50)は、上記第2運転において、複数の利用熱交換器(18,28)のうち空気流れの下流側に配置される利用熱交換器(28)の冷媒の蒸発温度が、該下流側の利用熱交換器(28)よりも空気流れの上流側に配置される利用熱交換器(18)の冷媒の蒸発温度よりも低くなるように、上記各利用熱交換器(18,28)に対応する各圧縮機(12,22)を制御することを特徴とする。
第9の発明では、第2運転において、空気通路(44)を流れる空気は、蒸発器となる全ての利用熱交換器(18,28)を順に通過して冷却される。本発明の制御部(50)は、ある下流側の利用熱交換器(28)の冷媒の蒸発温度が、この利用熱交換器(28)よりも上流側の利用熱交換器(18)の冷媒の蒸発温度よりも低くなるように、各利用熱交換器(18,28)に対応する各圧縮機(12,22)を制御する。これにより、空気通路(44)を流れる空気は、上流側の利用熱交換器(18)である温度まで冷却された後、その下流側の利用熱交換器(28)において更に低い温度まで冷却される。従って、第2運転において、対象空間(S)に対してより低温の空気を供給することができる。
第10の発明は、第8の発明において、上記制御部(50)は、上記第2運転において、上記各利用熱交換器(18,28)に対応する各圧縮機(12,22)の電流値が同じとなる、又は上記各利用熱交換器(18,28)に対応する各冷媒回路(11,21)の高圧圧力が同じとなるように該各圧縮機(12,22)を制御することを特徴とする。
第10の発明では、第2運転において、空気通路(44)を流れる空気は、蒸発器となる全ての利用熱交換器(18,28)を順に通過して冷却される。このような運転時には、上流側の利用熱交換器(18)に流入する空気の温度の方が、下流側の利用熱交換器(28)に流入する空気の温度よりも高くなる。このため、このような条件下では、下流側の利用熱交換器(28)の冷媒の蒸発温度が低下してしまい、この利用熱交換器(28)に対応する圧縮機(22)の負荷が増大してしまう。そこで、本発明の制御部(50)は、このような第2運転において、各利用熱交換器(18,28)に対応する各圧縮機(12,22)の電流値が同じとなる、又は各利用熱交換器(18,28)に対応する冷媒回路(11,21)の高圧圧力が同じとなるように、各圧縮機(12,22)を制御する。この結果、下流側の利用熱交換器(28)に対応する圧縮機(22)の負荷を低減でき、空気調和機(A)全体としての動力を削減できる。
第11の発明は、第8乃至第10のいずれか1つの発明において、上記制御部(50)は、上記第3運転において、複数の利用熱交換器(18,28)のうち空気流れの下流側に配置される利用熱交換器(28)の冷媒の凝縮温度が、該下流側の利用熱交換器(28)よりも空気流れの上流側に配置される利用熱交換器(18)の冷媒の凝縮温度よりも高くなるように、上記各利用熱交換器(18,28)に対応する各圧縮機(12,22)を制御することを特徴とする。
第11の発明では、第3運転において、空気通路(44)を流れる空気は、凝縮器となる全ての利用熱交換器(18,28)を順に通過して加熱される。本発明の制御部(50)は、ある下流側の利用熱交換器(28)の冷媒の凝縮温度が、この利用熱交換器(28)よりも上流側の利用熱交換器(18)の冷媒の凝縮温度よりも高くなるように、各利用熱交換器(18,28)に対応する各圧縮機(12,22)を制御する。これにより、空気通路(44)を流れる空気は、上流側の利用熱交換器(18)である温度まで加熱された後、その下流側の利用熱交換器(28)において更に高い温度まで加熱される。従って、第2運転において、対象空間(S)に対してより低温の空気を供給することができる。
第12の発明は、 第8乃至第10のいずれか1つの発明において、上記制御部(50)は、上記第3運転において、上記各利用熱交換器(18,28)に対応する各圧縮機(12,22)の電流値が同じとなるように該各利用熱交換器(18,28)に対応する各圧縮機(12,22)を制御することを特徴とする。
第12の発明では、第3運転において、空気通路(44)を流れる空気は、凝縮器となる全ての利用熱交換器(18,28)を順に通過して加熱される。このような運転時には、下流側の利用熱交換器(28)に流入する空気の温度の方が、上流側の利用熱交換器(18)に流入する空気の温度よりも高くなる。このため、このような条件下では、下流側の利用熱交換器(28)の冷媒の凝縮温度が上昇してしまい、この利用熱交換器(28)に対応する圧縮機(12,22)の負荷が増大してしまう。そこで、本発明の制御部(50)は、このような第2運転において、各利用熱交換器(18,28)に対応する各圧縮機(12,22)の電流値が同じとなるように、各圧縮機(12,22)を制御する。この結果、下流側の利用熱交換器(28)に対応する圧縮機(12,22)の負荷を低減でき、空気調和機(A)全体としての動力を削減できる。
本発明では、複数の冷媒回路(11,21)の利用熱交換器(18,28)を1つの空気通路(44)に配置し、一部の利用熱交換器(18)が蒸発器となり他の利用熱交換器(28)が凝縮器となる第1運転と、全ての利用熱交換器(18,28)が蒸発器となる第2運転と、全ての利用熱交換器(18,28)が凝縮器となる第3運転とを切り換えるようにした。これにより、空気調和機(A)では、広範囲の空調負荷を確実に処理できるとともに、空気の温度を精度よく調整できる。また、従来例のように加熱専用のヒータ(例えば大容量のヒータ)を設けない構成とすることもできる。
第2の発明では、第1〜第3運転において、対象空間(S)の空気の温度Tinを所定の設定温度Tsに収束させることができる。この際、これらの運転を、対象空間(S)の空気の温度Tinと、対象空間(S)へ供給される空気の温度Toutとを比較することで、自動的に切り換えることができる。
第3の発明では、第1運転において、対象空間(S)の冷却負荷に対し空調部(40)の冷却能力が不足していることを速やかに判定し、第2運転へ移行できる。これにより、対象空間(S)の冷却負荷を迅速且つ確実に処理でき、空気調和機(A)の信頼性を向上できる。
第4の発明では、第2運転において、対象空間(S)の加熱負荷に対し空調部(40)の加熱能力が不足していることを速やかに判定し、第3運転へ移行できる。これにより、対象空間(S)の加熱負荷を迅速且つ確実に処理でき、空気調和機(A)の信頼性を向上できる。
第5の発明では、複数の利用熱交換器(18,28)を空気が並列に流れるため、空気通路(44)の圧力損失を低減でき、空気を搬送するためのファン等の動力を低減できる。特に第6の発明では、第2運転中の各利用熱交換器(18,28)の冷媒の蒸発温度が等しいため、対象空間(S)へ供給される空気の温度ムラを確実に抑制できる。また、第7の発明では、第3運転中の各利用熱交換器(18,28)の冷媒の凝縮温度が等しいため、対象空間(S)へ供給される空気の温度ムラを確実に抑制できる。
第8の発明では、第1運転において、上流側の利用熱交換器(18)で空気を冷却し、その後、下流側の利用熱交換器(28)で空気を加熱できる。従って、従来例のように、加熱専用のヒータを設けずとも、空気の再熱除湿を行うことが可能となる。
第9の発明では、第2運転において、上流側の利用熱交換器(18)の冷媒の蒸発温度より下流側の利用熱交換器(28)の冷媒の蒸発温度を低くしたので、対象空間(S)に対し、より低温の空気を供給でき、冷却される空気の温度調節の範囲を拡大できる。
第10の発明では、第2運転において、上流側の利用熱交換器(18)に対応する圧縮機(12,22)の電流値と、下流側の利用熱交換器(28)に対応する圧縮機(12,22)の電流値とが等しくなるように、各圧縮機(12,22)を制御するため、下流側の圧縮機(12,22)の負荷が過剰となってしまうことを確実に防止できる。あるいは、上流側の利用熱交換器(18)に対応する冷媒回路(11)の高圧圧力と、下流側の利用熱交換器(28)に対応する冷媒回路(21)の高圧圧力とが等しくなるように、各圧縮機(12,22)を制御するため、下流側の圧縮機(22)の負荷が過剰となってしまうことを確実に防止できる。従って、本発明では、各圧縮機(12,22)の全体としての動力を低減でき、空気調和機(A)の省エネ性を向上できる。
第11の発明は、第3運転において、上流側の利用熱交換器(18)の冷媒の凝縮温度より下流側の利用熱交換器(28)の冷媒の凝縮温度を高くしたので、対象空間(S)に対し、より高温の空気を供給でき、加熱される空気の温度調節の範囲を拡大できる。
第12の発明では、第3運転において、上流側の利用熱交換器(18)に対応する圧縮機(12,22)の電流値と、下流側の利用熱交換器(28)に対応する圧縮機(12,22)の電流値とが等しくなるように、各圧縮機(12,22)を制御するため、下流側の圧縮機(12,22)の負荷が過剰となってしまうことを確実に防止できる。従って、本発明では、各圧縮機(12,22)の全体としての動力を低減でき、空気調和機(A)の省エネ性を向上できる。
本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、以下で説明する各形態は、本質的に好ましい例示であって、本発明、その適用物、あるいはその用途の範囲を制限することを意図するものではない。
《実施形態1》
実施形態1に係る空気調和機(A)は、空調の対象空間である恒温室(S)の空気の温度を調節する。空調の対象空間は、恒温室(S)に限られず、冷却庫や室内等の空間であってもよい。また、空調の対象空間は、特に空気の温度調節に高い精度が要求される空間であることが好ましい。図1に示すように、空気調和機(A)は、複数の冷媒回路ユニット(10,20)と、空調ユニット(40)と、コントローラ(50)とを備えている。
〈冷媒回路ユニット〉
本実施形態の空気調和機(A)は、第1冷媒回路ユニット(10)と第2冷媒回路ユニット(20)とを有している。複数の冷媒回路ユニット(10,20)の数量はこれに限らず、3つ以上であってもよい。
〔第1冷媒回路ユニット〕
第1冷媒回路ユニット(10)は、第1冷媒回路(11)を有している。第1冷媒回路(11)は、第1熱源回路(11a)と第1利用回路(11b)とが第1液管(L1)及び第1ガス管(G1)を介して互いに接続されて構成される。第1冷媒回路(11)では、充填された冷媒が循環することで、蒸気圧縮式の冷凍サイクルが行われる。
第1熱源回路(11a)は、第1室外ユニット(U1)に収容されている。第1熱源回路(11a)には、第1圧縮機(12)、第1室外熱交換器(熱源熱交換器)(13)、第1室外膨張弁(膨張機構)(14)、及び第1四方切換弁(流路切換機構)(15)が接続されている。
第1液管(L1)には、第1利用膨張弁(17)が接続されている。
第1利用回路(11b)は、空調ユニット(40)の内部に配置されている。第1利用回路(11b)には、第1室内熱交換器(利用熱交換器)(18)が接続されている。
第1圧縮機(12)は、吸入した低圧冷媒を圧縮し、圧縮後の高圧冷媒を第1冷媒回路(11)へ吐出する。第1圧縮機(12)は、回転式圧縮機(例えばスクロール圧縮機やロータリ圧縮機等)で構成される。第1圧縮機(12)は、そのモータにインバータ装置を介して電力が供給される。つまり、第1圧縮機(12)は、運転周波数が調節可能な可変容量式の圧縮機で構成される。第1圧縮機(12)には、モータに供給される電流値を計測する第1電流計(電流検知部(31))が取り付けられる。第1圧縮機(12)の吐出部には、高圧冷媒の圧力を検知する第1高圧圧力センサ(高圧検知部)(32)が接続される。第1圧縮機(12)の吸入部には、第1低圧圧力センサ(低圧検知部)(33)が接続される。
第1室外熱交換器(13)は例えばフィン・アンド・チューブ式の熱交換器で構成される。第1室外熱交換器(13)の近傍には、第1室外ファン(16)が設置される。第1室外熱交換器(13)では、第1室外ファン(16)が搬送する室外空気と冷媒とが熱交換する。
第1室外膨張弁(14)は、第1熱源回路(11a)のうち第1室外熱交換器(13)の液側端部の近傍に接続される。第1室外膨張弁(14)は、開度が可変な電子膨張弁で構成される。
第1四方切換弁(15)は、第1冷媒回路(11)の冷媒の流路を切り換える。第1四方切換弁(15)は、第1〜第4のポートを有している。第1のポートは、第1圧縮機(12)の吐出部と接続し、第2のポートは、第1圧縮機(12)の吸入部と接続し、第3のポートは第1ガス管(G1)と接続し、第4のポートは第1室外熱交換器(13)のガス端部と接続する。
第1四方切換弁(15)は、第1のポートと第4のポートが接続し且つ第2のポートと第3のポートが接続する第1状態(図1の実線で示す状態)と、第1のポートと第3のポートとが接続し且つ第2のポートと第4のポートが接続する第2状態(図1の破線で示す状態)とに切換可能に構成される。第1四方切換弁(15)が第1状態になると、第1室外熱交換器(13)が凝縮器(放熱器)となり且つ第1室内熱交換器(18)が蒸発器となる冷媒流路が形成される。第1四方切換弁(15)が第2状態になると、第1室内熱交換器(18)が凝縮器(放熱器)となり且つ第1室外熱交換器(13)が蒸発器となる冷媒流路が形成される。
第1室内熱交換器(18)は、例えばフィン・アンド・チューブ式の熱交換器で構成される。
〔第2冷媒回路ユニット〕
第2冷媒回路ユニット(20)の構成は、第1冷媒回路ユニット(10)の構成と概ね同じである。即ち、第2冷媒回路ユニット(20)は、第2熱源回路(21a)と第2利用回路(21b)とが第2液管(L2)及び第2ガス管(G2)を介して互いに接続され第2冷媒回路(21)が構成される。
第2冷媒回路(21)には、第2圧縮機(22)、第2室外熱交換器(熱源熱交換器)(23)、第2室外膨張弁(膨張機構)(24)、第2四方切換弁(流路切換機構)(25)、第2高圧圧力センサ(高圧検知部)(35)、第2低圧圧力センサ(低圧検知部)(36)、第2利用膨張弁(膨張機構)(27)、及び第2室内熱交換器(熱源熱交換器)(28)が接続される。
第2冷媒回路ユニット(20)は、第2室外ユニット(U2)を有している。第2圧縮機(22)には、第2電流計(電流検知部(34))が取り付けられる。第2室外ユニット(U2)の内部には、第2室外熱交換器(23)の近傍に第2室外ファン(26)が設けられる。
〈空調ユニット〉
空気調和機(A)は、1つの空調ユニット(40)(空調部)を有している。空調ユニット(40)は、ケーシング(41)を有している。ケーシング(41)には、空気が吸い込まれる吸込口(42)と、空気が吹き出される吹出口(43)とが形成される。吸込口(42)は、吸込ダクト(D1)を介して恒温室(S)と連通している。吹出口(43)は、吹出ダクト(D2)を介して恒温室(S)と連通している。
空気調和機(A)は、吸込空気温度センサ(第1温度検知部)(37)と、吹出空気温度センサ(第2温度検知部)(38)とがそれぞれ配置される。例えば吸込空気温度センサ(37)は吸込口(42)に配置され、吹出空気温度センサ(38)は吹出口(43)に配置される。
吸込空気温度センサ(37)は、恒温室(S)から吸込ダクト(D1)を介して空気通路(44)に流入する空気の温度Tinを検知する。つまり、吸込空気温度センサ(37)は、実質的には恒温室(S)の空気温度Tinを検知する。従って、吸込空気温度センサ(37)に代えて、吸込ダクト(D1)や恒温室(S)に第1温度検知部を配置し、空気温度Tinを検知してもよい。
吹出空気温度センサ(38)は、空調ユニット(40)で温度の調節がされた空気の温度Toutを検知する。つまり、吹出空気温度センサ(38)は、恒温室(S)に供給される空気温度Toutを検知する。従って、吹出空気温度センサ(38)に代えて、吹出ダクトに第2温度検知部を配置し、空気温度Toutを検知してもよい。
ケーシング(41)の内部には、吸込口(42)から吹出口(43)に亘って空気通路(44)が形成される。空気通路(44)の下側には、凝縮水等を回収するドレンパン(45)が設置されている。空気通路(44)には、空気の上流側(吸込口(42)側)から下流側(吹出口(43)側)に向かって順に、第1及び第2の室内熱交換器(18,28)及びファン(空気搬送部)(46)が配置されている。
ファン(46)は、空気通路(44)の空気を吹出ダクト(D2)を介して恒温室(S)へ供給すると同時に恒温室(S)の空気を吸込ダクト(D1)を介して空気通路(44)へ吸い込む。つまり、ファン(46)は、空気通路(44)と恒温室(S)との間で空気を循環させる。
本実施形態では、複数の室内熱交換器(18,28)が空気の流れに対して並列に配置されている。例えば、第1室内熱交換器(18)は、空気通路(44)の上流部のうち下側寄りに配置され、第2室内熱交換器(28)は、空気通路(44)の上流部のうち上側寄りに配置される。これにより、吸込口(42)から吸い込まれた空気は、第1室内熱交換器(18)と第2室内熱交換器(28)との双方を並行に通過する。
〈コントローラ〉
コントローラ(50)は、空気調和機(A)を制御するものである。図1に示すように、コントローラ(50)は、第1冷媒回路ユニット(10)及び第2冷媒回路ユニット(20)の各種の要素機器を制御する制御部を構成する。コントローラ(50)は、入力部(51)と、温度設定部(52)と、判定部(53)と、圧縮機制御部(54)と、切換制御部(55)と、膨張弁制御部(56)とを有している。
入力部(51)には、各種のセンサで検知された信号が入力される。具体的に、入力部(51)には、例えば各電流計(31,34)で検出したモータの電流値、各高圧圧力センサ(32,35)で検出した冷媒の高圧圧力、各低圧圧力センサ(33,36)で検出した低圧圧力、吸込空気温度センサ(37)で検出した空気温度Tin、吹出空気温度センサ(38)で検出した空気温度Tout等が入力される。ここで、各高圧圧力センサ(32,35)で検出した高圧圧力により冷媒の凝縮温度を、各低圧圧力センサ(33,36)で検出した低圧圧力により冷媒の蒸発温度をそれぞれ求めることができる。つまり、各高圧圧力センサ(32,35)は、冷媒の凝縮温度を検知する凝縮温度検知部ということもできる。また、低圧圧力センサ(33,36)は、冷媒の蒸発温度を検知する蒸発温度検知部ということもできる。
温度設定部(52)には、恒温室(S)の空気温度(即ち、Tin)の目標値(即ち、設定温度Ts)が適宜設定される。
判定部(53)は、入力部(51)に入力された指標や、温度設定部(52)に設定された設定温度に基づき、各種の制御や各運転の切換を行うための判定を行う(詳細は後述する)。
圧縮機制御部(54)は、判定部(53)の判定結果に基づいて各圧縮機(12,22)の運転周波数を制御する。切換制御部(55)は、判定部(53)の判定結果に基づいて四方切換弁(15,25)を第1状態と第2状態のいずれかに切り換える。膨張弁制御部(56)は、判定部(53)の判定結果に基づいて各膨張弁(14,17,24,27)の開度を調節する。
−運転動作−
空気調和機(A)の運転動作について説明する。
〈基本的な運転動作〉
空気調和機(A)は、冷却加熱運転(第1運転)と、全冷却運転(第2運転)と、全加熱運転(第3運転)とを切り換えて実行する。まず、各運転の基本的な運転動作について説明する。
〔冷却加熱運転〕
図2に示す冷却加熱運転では、複数(本実施例では2つ)の冷媒回路ユニット(10,20)のうちの一部の冷媒回路ユニット(本実施例では第1冷媒回路ユニット(10))の冷媒回路(11,21)において、第1室外熱交換器(13)が凝縮器となり第1室内熱交換器(18)が蒸発器となる第1冷凍サイクルが行われる。同時に、冷却加熱運転では、複数の冷媒回路ユニット(10,20)のうちの他の冷媒回路ユニット(本実施例では第2冷媒回路ユニット(20))の冷媒回路(21)において、第2室内熱交換器(28)が凝縮器となり第2室外熱交換器(23)が蒸発器となる第2冷凍サイクルが行われる。つまり、冷却加熱運転では、第1室内熱交換器(18)が蒸発器となる動作(以下、冷却動作ともいう)と同時に第2室内熱交換器(28)が凝縮器となる動作(以下、加熱動作ともいう)が行われる。
冷却加熱運転について具体的に説明する。
第1冷媒回路ユニット(10)では、第1四方切換弁(15)が第1状態となり、第1室外膨張弁(14)が全開となり、第1利用膨張弁(17)の開度が調節される。第1利用膨張弁(17)の開度は、スーパーヒート制御(吸入過熱度制御)により調節される。第1室外ファン(16)及び第1圧縮機(12)が運転される。第1圧縮機(12)の運転周波数は、原則として、吸込空気温度センサ(37)で検知される吸込空気の温度Tinと、設定温度Tsとの差(Tin−Ts)に応じて調節される。
第1圧縮機(12)で圧縮された冷媒は、第1室外熱交換器(13)を流れ、室外空気に放熱して凝縮する。凝縮した冷媒は、第1利用膨張弁(17)で減圧され、第1室内熱交換器(18)を流れる。第1室内熱交換器(18)では、冷媒が空気から吸熱して蒸発する。蒸発した冷媒は、第1圧縮機(12)に吸入されて再び圧縮される。
第2冷媒回路ユニット(20)では、第2四方切換弁(25)が第2状態となり、第2利用膨張弁(27)が全開となり、第2利用膨張弁(27)の開度が調節される。第2利用膨張弁(27)の開度は、スーパーヒート制御により調節される。第2室外ファン(26)及び第2圧縮機(22)が運転される。第2圧縮機(22)の運転周波数は、原則として、吸込空気温度センサ(37)で検知される吸込空気の温度Tinと、設定温度Tsとの差(Tin−Ts)に応じて調節される。
第2圧縮機(22)で圧縮された冷媒は、第2室内熱交換器(28)を流れ、室内空気に放熱して凝縮する。凝縮した冷媒は、第2室外膨張弁(24)で減圧され、第2室外熱交換器(23)を流れる。第2室外熱交換器(23)では、冷媒が室外空気から吸熱して蒸発する。蒸発した冷媒は、第2圧縮機(22)に吸入されて再び圧縮される。
空調ユニット(40)では、ファン(46)が運転される。これにより、恒温室(S)の空気が吸込ダクト(D1)及び吸込口(42)を通じてケーシング(41)内の空気通路(44)に流入する。空気通路(44)を流れる空気は、第1室内熱交換器(18)と第2室内熱交換器(28)とを並行に流れる。冷却加熱運転では、第1室内熱交換器(18)が蒸発器となり、第2室内熱交換器(28)が凝縮器となっている。このため、一部の空気が第1室内熱交換器(18)で冷却され、同時に残りの空気が第2室内熱交換器(28)で加熱される。このようにして複数の室内熱交換器(18,28)で温度が調節された空気は、吹出口(43)及び吹出ダクト(D2)を通じて恒温室(S)に供給される。
この冷却加熱運転では、第1室内熱交換器(18)で冷却動作が行われ、第2室内熱交換器(28)で加熱動作が行われる。このため、恒温室(S)の温度(即ち、吸込空気の温度Tin)を設定温度Tsに精度よく近づけることができる。
〔全冷却運転〕
図3に示す全冷却運転では、全て(本実施例では2つ)の冷媒回路ユニット(10,20)の各冷媒回路(11,21)において、各室外熱交換器(13,23)が凝縮器となり各室内熱交換器(18,28)が蒸発器となる第1冷凍サイクルが行われる。つまり、全冷却運転では、第1室内熱交換器(18)と第2室内熱交換器(28)との双方で冷却動作が行われる。
全冷却運転について具体的に説明する。
第1冷媒回路ユニット(10)の動作は、上述した冷却加熱運転と同様である。
第2冷媒回路ユニット(20)では、第2四方切換弁(25)が第1状態となり、第2室外膨張弁(24)が全開となり、第2利用膨張弁(27)の開度が調節される。第2利用膨張弁(27)の開度は、スーパーヒート制御(吸入過熱度制御)により調節される。第2室外ファン(26)及び第2圧縮機(22)が運転される。第2圧縮機(22)の運転周波数は、原則として、吸込空気温度センサ(37)で検知される吸込空気の温度Tinと、設定温度Tsetとの差(Tin−Ts)に応じて調節される。
第2圧縮機(22)で圧縮された冷媒は、第2室外熱交換器(23)を流れ、室外空気に放熱して凝縮する。凝縮した冷媒は、第2利用膨張弁(27)で減圧され、第2室内熱交換器(28)を流れる。第2室内熱交換器(28)では、冷媒が空気から吸熱して蒸発する。蒸発した冷媒は、第2圧縮機(22)に吸入されて再び圧縮される。
空調ユニット(40)では、ファン(46)が運転される。これにより、恒温室(S)の空気が吸込ダクト(D1)及び吸込口(42)を通じてケーシング(41)内の空気通路(44)に流入する。空気通路(44)を流れる空気は、第1室内熱交換器(18)と第2室内熱交換器(28)とを並行に流れる。全冷却運転では、第1室内熱交換器(18)及び第2室内熱交換器(28)が蒸発器となる。このため、空気通路(44)を流れる空気は、これらの室内熱交換器(18,28)で冷却される。このようにして複数の室内熱交換器(18,28)で温度が調節された空気は、吹出口(43)及び吹出ダクト(D2)を通じて恒温室(S)に供給される。
この全冷却運転では、第1室内熱交換器(18)及び第2室内熱交換器で冷却動作が行われる。このため、空調ユニット(40)の冷却能力は、冷却加熱運転よりも大きくなる。従って、恒温室(S)の冷却負荷が比較的大きい条件下であっても、恒温室(S)の温度(即ち、吸込空気の温度Tin)を速やかに設定温度Tsに近づけることができる。
〔全加熱運転〕
図4に示す全加熱運転では、全て(本実施例では2つ)の冷媒回路ユニット(10,20)の各冷媒回路(11,21)において、各室内熱交換器(18,28)が凝縮器となり各室外熱交換器(13,23)が蒸発器となる第2冷凍サイクルが行われる。つまり、全加熱運転では、第1室内熱交換器(18)と第2室内熱交換器(28)との双方で加熱動作が行われる。
全加熱運転について具体的に説明する。
第1冷媒回路ユニット(10)では、第1四方切換弁(15)が第2状態となり、第1利用膨張弁(17)が全開となり、第1利用膨張弁(17)の開度が調節される。第1利用膨張弁(17)の開度は、スーパーヒート制御により調節される。第1室外ファン(16)及び第1圧縮機(12)が運転される。第1圧縮機(12)の運転周波数は、原則として、吸込空気温度センサ(37)で検知される吸込空気の温度Tinと、設定温度Tsとの差(Tin−Ts)に応じて調節される。
第1圧縮機(12)で圧縮された冷媒は、第1室内熱交換器(18)を流れ、室内空気に放熱して凝縮する。凝縮した冷媒は、第1室外膨張弁(14)で減圧され、第1室外熱交換器(13)を流れる。第1室外熱交換器(13)では、冷媒が室外空気から吸熱して蒸発する。蒸発した冷媒は、第1圧縮機(12)に吸入されて再び圧縮される。
第2冷媒回路ユニット(20)の動作は、上述した冷却加熱運転と同様である。
空調ユニット(40)では、ファン(46)が運転される。これにより、恒温室(S)の空気が吸込ダクト(D1)及び吸込口(42)を通じてケーシング(41)内の空気通路(44)に流入する。空気通路(44)を流れる空気は、第1室内熱交換器(18)と第2室内熱交換器(28)とを並行に流れる。全加熱運転では、第1室内熱交換器(18)及び第2室内熱交換器(28)が凝縮器となる。このため、空気通路(44)を流れる空気は、これらの室内熱交換器(18,28)で加熱される。このようにして複数の室内熱交換器(18,28)で温度が調節された空気は、吹出口(43)及び吹出ダクト(D2)を通じて恒温室(S)に供給される。
この全加熱運転では、第1室内熱交換器(18)及び第2室内熱交換器で加熱動作が行われる。このため、空調ユニット(40)の加熱能力は、冷却加熱運転よりも大きくなる。従って、恒温室(S)の加熱負荷が比較的大きい条件下であっても、恒温室(S)の温度(即ち、吸込空気の温度Tin)を速やかに設定温度Tsに近づけることができる。
〈各運転の切換の判定動作〉
次いで、上述した冷却加熱運転、全冷却運転、及び全加熱運転を切り換えるための判定動作について図5を参照しながら説明する。
空気調和機(A)の運転の開始時には、例えば冷却加熱動作が実行される(ステップSt1)。冷却加熱運転が開始された後、ステップSt2へ移行すると、判定部(53)による運転の切換の判定が行われる。
具体的に、ステップSt2では、以下の1)〜3)の条件が全て成立するか否かの判定が行われる。1)吸込空気の温度Tinが吹出空気の温度Toutより大きい。2)第1圧縮機(12)の運転周波数(即ち、第1室内熱交換器(18)の冷却能力)が最大に達している。3)第2圧縮機(22)の運転周波数(即ち、第2室内熱交換器(28)の加熱能力)が最小に達している。ステップSt2において、これらの全ての条件が成立する場合、現状の冷却加熱運転では、恒温室(S)の冷却負荷に対し、空気調和機(A)の冷却能力が不足していると判断できる。従って、この場合、ステップSt3へ移行し、全冷却運転へ移行する。これにより、空気調和機(A)では、全ての室内熱交換器(18,28)で冷却動作が行われるため、冷却能力の不足を解消できる。
全冷却運転が開始されると、ステップSt4へ移行し、判定部(53)による運転の切換の判定が行われる。ステップSt4では、以下の1)、2)、3)の条件が全て成立するか否かの判定が行われる。1)吸込空気の温度Tinが吹出空気の温度Toutより大きい。2)第1圧縮機(12)の運転周波数(即ち、第1室内熱交換器(18)の冷却能力)が最大に達している。3)第2圧縮機(22)の運転周波数(即ち、第2室内熱交換器(28)の冷却能力)が最大に達している。ステップSt4において、これらの全ての条件が成立する場合、未だ恒温室(S)の冷却負荷が処理されていないと判断できる。従って、この場合、ステップSt3へ戻り、全冷却運転が継続して行われる。ステップSt4において、この判定条件が成立しない場合、ステップSt5へ移行する。
ステップSt5では、判定部(53)による運転の切換の判定が行われる。ステップSt5では、以下の条件が全て成立するか否かの判定が行われる。1)吸込空気の温度Tinが吹出空気の温度Toutより小さい。2)第1圧縮機(12)の運転周波数(即ち、第1室内熱交換器(18)の冷却能力)が最小に達している。3)第2圧縮機(22)の運転周波数(即ち、第2室内熱交換器(28)の冷却能力)が最小に達している。ステップSt5において、これらの全ての条件が成立する場合、全冷却運転では、恒温室(S)が過剰に冷却されていると判断できる。従って、この場合、ステップSt1へ移行し、全冷却運転から冷却加熱運転へ移行する。これにより、空気調和機(A)では、一部の室内熱交換器(18)で冷却動作が行われ、他の室内熱交換器(28)で加熱動作が行われるため、恒温室(S)が過剰に冷却されることを抑制しつつ、恒温室(S)の温度を精度よく調節できる。ステップSt5において、この判定条件が成立しない場合、ステップSt3へ移行し、全冷却運転が継続して行われる。
上述したステップSt2において、該ステップSt2の判定条件が成立しない場合、ステップSt6へ移行する。ステップSt6では、判定部(53)による運転の切換の判定が行われる。ステップSt6では、以下の1)、2)、3)の条件が全て成立するか否かの判定が行われる。1)吸込空気の温度Tinが吹出空気の温度Toutより小さい。2)第1圧縮機(12)の運転周波数(即ち、第1室内熱交換器(18)の冷却能力)が最小に達している。3)第2圧縮機(22)の運転周波数(即ち、第2室内熱交換器(28)の加熱能力)が最大に達している。ステップst6において、これらの全ての条件が成立する場合、現状の冷却加熱運転では、恒温室(S)の加熱負荷に対し、空気調和機(A)の加熱能力が不足していると判断できる。従って、この場合ステップSt7へ移行し、全加熱運転へ移行する。これにより、空気調和機(A)では、全ての室内熱交換器(18,28)で加熱動作が行われるため、加熱能力の不足を解消できる。ステップSt7の判定条件が成立しない場合、ステップSt1へ移行し、冷却加熱運転が継続して行われる。
全加熱運転が開始されると、ステップSt8へ移行し、判定部(53)による運転の切換の判定が行われる。ステップSt8では、以下の1)、2)、3)の条件が全て成立するか否かの判定が行われる。1)吸込空気の温度Tinが吹出空気の温度Toutより小さい。2)第1圧縮機(12)の運転周波数(即ち、第1室内熱交換器(18)の加熱能力)が最大に達している。3)第2圧縮機(22)の運転周波数(即ち、第2室内熱交換器(28)の加熱能力)が最大に達している。ステップSt8において、これらの全ての条件が成立する場合、未だ恒温室(S)の加熱負荷が処理されていないと判断できる。従って、この場合、ステップSt7へ戻り、全加熱運転が継続して行われる。ステップSt8において、この判定条件が成立しない場合、ステップSt9へ移行する。
ステップSt9では、判定部(53)による運転の切換の判定が行われる。ステップSt5では、以下の条件が全て成立するか否かの判定が行われる。1)吸込空気の温度Tinが吹出空気の温度Toutより大きい。2)第1圧縮機(12)の運転周波数(即ち、第1室内熱交換器(18)の加熱能力)が最小に達している。3)第2圧縮機(22)の運転周波数(即ち、第2室内熱交換器(28)の加熱能力)が最小に達している。ステップSt9において、これらの全ての条件が成立する場合、全加熱運転では、恒温室(S)が過剰に加熱されていると判断できる。従って、この場合、ステップSt1へ移行し、全加熱運転から冷却加熱運転へ移行する。これにより、空気調和機(A)では、一部の室内熱交換器(18)で冷却動作が行われ、他の室内熱交換器(28)で加熱動作が行われるため、恒温室(S)が過剰に加熱されることを抑制しつつ、恒温室(S)の温度を精度よく調節できる。ステップSt9において、この判定条件が成立しない場合、ステップSt7へ移行し、全加熱運転が継続して行われる。
〈各運転の詳細な制御動作〉
次いで、上述した冷却加熱運転、全冷却運転、及び全加熱運転の詳細な制御動作についてそれぞれ説明する。
〔全冷却運転の制御動作〕
図6に示す全冷却運転では、上述したように、蒸発器となる第1室内熱交換器(18)で冷却動作が行われ(ステップSt31)、同時に蒸発器となる第2室内熱交換器(28)で冷却動作が行われる(ステップSt38)。本実施例の全冷却運転では、第1冷媒回路ユニット(10)と第2冷媒回路ユニット(20)とが基本的に同じ動作を行う。つまり、本実施例の全冷却運転では、各室内熱交換器(18,28)の蒸発温度が同じとなるように、各圧縮機(12,22)が制御される。
具体的に、第1冷媒回路ユニット(10)では、全冷却運転の開始の後、ステップSt32において、第1圧縮機(12)の運転周波数が変化してからt1秒(例えばt1=30秒)が経過すると、ステップSt33へ移行する。ステップSt33では、判定部(53)により、吸込温度Tin(即ち、恒温室(S)の室内温度)と空気調和機(A)の設定温度Tsとの差(Tin−Ts)が算出され、この差(Tin−Ts)が所定値α(例えばα=1.0℃)より大きいか否かの判定が行われる。ステップSt33において、Tin−Ts>αである場合、ステップSt34へ移行し、第1圧縮機(12)の運転周波数が所定周波数だけ増大し、第1室内熱交換器(18)の冷却能力が増大する。その後、ステップSt35において、第1圧縮機(12)の運転周波数が変化してからt2秒(例えばt2=30秒)が経過する、又はステップSt33の判定条件が成立しない場合、ステップSt36へ移行する。
ステップSt36では、判定部(53)により、Tin−Tsが算出され、この差が所定値β(例えばβ=1.0℃)より小さいか否かの判定が行われる。ステップSt36において、Tin−Ts<βである場合、ステップSt37へ移行し、第1圧縮機(12)の運転周波数が所定周波数だけ減少し、第1室内熱交換器(18)の冷却能力が低下する。
第2冷媒回路ユニット(20)では、第1冷媒回路ユニット(10)と同様にして、ステップSt38〜ステップSt44の制御が行われる(詳細の説明は省略する)。
〔全加熱運転の制御動作〕
図7に示す全加熱運転では、上述したように、凝縮器となる第1室内熱交換器(18)で加熱動作が行われ(ステップSt71)、同時に凝縮器となる第2室内熱交換器(28)で加熱動作が行われる(ステップSt78)。本実施例の全加熱運転では、第1冷媒回路ユニット(10)と第2冷媒回路ユニット(20)とが基本的に同じ動作を行う。つまり、本実施例の全加熱運転では、各室内熱交換器(18,28)の凝縮温度が同じとなるように、各圧縮機(12,22)が制御される。
具体的に、第1冷媒回路ユニット(10)では、全加熱運転の開始の後、ステップSt72において、第1圧縮機(12)の運転周波数が変化してからt3秒(例えばt3=30秒)が経過すると、ステップSt73へ移行する。ステップSt73では、判定部(53)により、空気調和機(A)の設定温度Tsと吸込温度Tin(即ち、恒温室(S)の室内温度)との差(Ts−Tin)が算出され、この差(Ts−Tin)が所定値α(例えばα=1.0℃)より大きいか否かの判定が行われる。ステップSt73において、Ts−Tin>αである場合、ステップSt74へ移行し、第1圧縮機(12)の運転周波数が所定周波数だけ増大し、第1室内熱交換器(18)の加熱能力が増大する。その後、ステップSt75において、第1圧縮機(12)の運転周波数が変化してからt4秒(例えばt4=30秒)が経過する、又はステップSt73の判定条件が成立しない場合、ステップSt76へ移行する。
ステップSt76では、判定部(53)により、Ts−Tinが算出され、この差が所定値β(例えばβ=1.0℃)より小さいか否かの判定が行われる。ステップSt76において、Ts−Tin<βである場合、ステップSt77へ移行し、第1圧縮機(12)の運転周波数が所定周波数だけ減少し、第1室内熱交換器(18)の加熱能力が低下する。
第2冷媒回路ユニット(20)では、第1冷媒回路ユニット(10)と同様にして、ステップSt78〜ステップSt84の制御が行われる(詳細の説明は省略する)。
〔冷却加熱運転の制御動作〕
図8及び図9に示す冷却加熱運転では、上述したように、蒸発器となる第1室内熱交換器(18)で冷却動作が行われ(ステップSt11)、同時に凝縮器となる第2室内熱交換器(28)で加熱動作が行われる(ステップSt21)。
[第1冷媒回路ユニット]
図8に示すように、第1冷媒回路ユニット(10)では、ステップSt12〜ステップSt14において、第1圧縮機(12)の運転周波数を増大させるか否かの判定がそれぞれ行われる。
ステップSt12では、1)第1圧縮機(12)の運転周波数の変化後t5(例えばt5=30秒)が経過し、且つ2)Tin−Ts>T1(例えばT1=2.0℃)の条件が成立すると、ステップSt15へ移行し、第1圧縮機(12)の運転周波数が増大する。
ステップSt13では、1)第1圧縮機(12)の運転数周波数の変化後t5(例えばt5=30秒)が経過し、且つ2)第2圧縮機(22)の運転周波数の変化後t6(例えばt6=15秒)が経過し、且つ3)Tin−Ts>T2(例えばT2=1.5℃)の条件が成立すると、ステップSt15へ移行し、第1圧縮機(12)の運転周波数が増大する。
ステップSt14では、1)第1圧縮機(12)の運転周波数の変化後t7(例えばt7=60秒)が経過し、且つ2)第2圧縮機(22)の運転周波数の変化後t6(例えばt6=15秒)が経過し、且つ3)Tin−Ts>T3(例えばT3=1.0℃)の条件が成立すると、ステップSt15へ移行し、第1圧縮機(12)の運転周波数が増大する。ステップSt12〜14の各条件が成立しない場合、第1圧縮機(12)の運転周波数が増大することなく、ステップSt16へ移行する。
図9に示すように、第1冷媒回路ユニット(10)では、ステップSt16〜ステップSt19において、第1圧縮機(12)の運転周波数を減少させるか否かの判定がそれぞれ行われる。
ステップSt16では、1)第1圧縮機(12)の運転周波数の変化後t5(例えばt5=30秒)が経過し、且つ2)Tin−Ts<T1(例えばT1=2.0℃)の条件が成立すると、ステップSt20へ移行し、第1圧縮機(12)の運転周波数が減少する。
ステップSt17では、1)第1圧縮機(12)の運転周波数の変化後t5(例えばt5=30秒)が経過し、2)第2圧縮機(22)の運転周波数の変化後t6(例えばt6=15秒)が経過し、且つ3)Tin−Ts<T2(例えばT2=1.5℃)の条件が成立すると、ステップSt20へ移行し、第1圧縮機(12)の運転周波数が減少する。
ステップSt18では、1)第1圧縮機(12)の運転周波数の変化後t7(例えばt7=60秒)が経過し、且つ2)第2圧縮機(22)の運転周波数の変化後t6(例えばt6=15秒)が経過し、且つ3)Tin−Ts<T3(例えばT3=1.0℃)の条件が成立すると、ステップSt20へ移行し、第1圧縮機(12)の運転周波数が減少する。
ステップSt19では、以下の1)〜4)の条件が全て成立すると、ステップSt20へ移行する。1)第1圧縮機(12)の運転周波数の変化後t5(例えばt5=30秒)が経過する。2)第2圧縮機(22)の運転周波数の変化後t6(例えばt6=15秒)が経過する。3)−T4≦Tin−Ts≦+T4(例えばT4=0.5℃)する。4):4−1)第1圧縮機(12)の運転周波数f1が、第2圧縮機(22)の運転周波数f2以下である、又は4−2)第1圧縮機(12)の電流値A1が、第2圧縮機(22)の電流値A2以下である。このように、ステップSt19では、1)〜4)の全ての条件が成立すると、第1圧縮機(12)の運転周波数が減少する。ステップSt16〜20の各条件が成立しない場合、第1圧縮機(12)の運転周波数が減少することはない。
[第2冷媒回路ユニット]
図8に示すように、第2冷媒回路ユニット(20)では、ステップSt22〜ステップSt24において、第2圧縮機(22)の運転周波数を増大させるか否かの判定がそれぞれ行われる。
ステップSt22では、1)第2圧縮機(22)の運転周波数の変化後t8(例えばt8=25秒)が経過し、且つ2)Ts−Tin>T1(例えばT1=2.0℃)の条件が成立すると、ステップSt25へ移行し、第2圧縮機(22)の運転周波数が増大する。
ステップSt23では、1)第2圧縮機(22)の運転数周波数の変化後t8(例えばt8=25秒)が経過し、且つ2)第1圧縮機(12)の運転周波数の変化後t6(例えばt6=15秒)が経過し、且つ3)Ts−Tin>T2(例えばT2=1.5℃)の条件が成立すると、ステップSt25へ移行し、第2圧縮機(22)の運転周波数が増大する。
ステップSt24では、1)第2圧縮機(22)の運転周波数の変化後t9(例えばt9=55秒)が経過し、且つ2)第1圧縮機(12)の運転周波数の変化後t6(例えばt6=15秒)が経過し、且つ3)Ts−Tin>T3(例えばT3=1.0℃)の条件が成立すると、ステップSt25へ移行し、第2圧縮機(22)の運転周波数が増大する。ステップSt22〜24の各条件が成立しない場合、第2圧縮機(22)の運転周波数が増大することなく、ステップSt26へ移行する。
図9に示すように、第2冷媒回路ユニット(20)では、ステップSt26〜ステップSt30において、第2圧縮機(22)の運転周波数を減少させるか否かの判定がそれぞれ行われる。
ステップSt26では、1)第2圧縮機(22)の運転周波数の変化後t8(例えばt8=25秒)が経過し、且つ2)Ts−Tin<T1(例えばT1=2.0℃)の条件が成立すると、ステップSt30へ移行し、第1圧縮機(12)の運転周波数が減少する。
ステップSt27では、1)第2圧縮機(22)の運転周波数の変化後t8(例えばt8=25秒)が経過し、2)第1圧縮機(12)の運転周波数の変化後t6(例えばt6=15秒)が経過し、且つ3)Ts−Tin<T2(例えばT2=1.5℃)の条件が成立すると、ステップSt30へ移行し、第2圧縮機(22)の運転周波数が減少する。
ステップSt28では、1)第2圧縮機(22)の運転周波数の変化後t9(例えばt9=55秒)が経過し、且つ2)第1圧縮機(12)の運転周波数の変化後t6(例えばt6=15秒)が経過し、且つ3)Ts−Tin<T3(例えばT3=1.0℃)の条件が成立すると、ステップSt30へ移行し、第2圧縮機(22)の運転周波数が減少する。
ステップSt29では、以下の1)〜4)の条件が全て成立すると、ステップSt30へ移行する。1)第2圧縮機(22)の運転周波数の変化後t8(例えばt5=25秒)が経過する。2)第1圧縮機(12)の運転周波数の変化後t6(例えばt6=15秒)が経過する。3)−T4≦Ts−Tin≦+T4(例えばT4=0.5℃)する。4):4−1)第1圧縮機(12)の運転周波数f1が、第2圧縮機(22)の運転周波数f2より大きい、又は4−2)第1圧縮機(12)の電流値A1が、第2圧縮機(22)の電流値A2より大きい。このように、ステップSt29では、1)〜4)の全ての条件が成立すると、第2圧縮機(22)の運転周波数が減少する。ステップSt26〜30の各条件が成立しない場合、第2圧縮機(22)の運転周波数が減少することはない。
なお、以上で述べた冷却加熱運転の制御動作では、各温度T1〜T3及び運転周波数の変化後の経過時間t5〜t8は単なる一例である。しかしながら、各温度T1〜T3は、T1>T2>T3>T4であることが好ましい。また、運転周波数の変化後の経過時間t5〜t8については、t7>t8>t5>t6であることが好ましい。
−実施形態1の効果−
上記実施形態では、2つの冷媒回路ユニット(10,20)の各室内熱交換器(18,28)を1つの空気通路(44)に配置し、第1室内熱交換器(18)が蒸発器となり第2室内熱交換器(28)が凝縮器となる冷却加熱運転(第1運転)と、第1室内熱交換器(18)と第2室内熱交換器(28)とが蒸発器となる全冷却運転(第2運転)と、第1室内熱交換器(18)と第2室内熱交換器(28)とが凝縮器となる全加熱運転(第3運転)とが切換可能に構成される(図5を参照)。これにより、実施形態では、対象空間(S)の空調負荷に応じて、最適な運転を実行させることができる。
具体的に、例えば冷却加熱運転において、吸込空気の温度Tin(即ち、恒温室(S)の空気の温度Tin)が吹出空気の温度Tout(即ち、恒温室(S)への供給空気の温度Tout)より高く、且つ第1圧縮機(12)の運転周波数が最大で且つ第2圧縮機(22)の運転周波数が最小のとき、冷却負荷に対し冷却能力が不足していると判断し、全冷却運転へ移行する。これにより、空気調和機(A)の冷却能力を向上させ、冷却負荷を迅速且つ確実に処理できる。
また、例えば冷却加熱運転において、吸込空気の温度Tinが吹出空気の温度Toutより低く、第1圧縮機(12)の運転周波数が最小で且つ第2圧縮機(22)の運転周波数が最大のとき、加熱負荷に対し加熱能力が不足していると判断し、全加熱運転へ移行する。これにより、空気調和機(A)の加熱能力を向上させ、加熱負荷を迅速且つ確実に処理できる。
上記実施形態では、2つの室内熱交換器(18,28)が空気通路(44)に並列に配置され、各室内熱交換器(18,28)を空気が並行に流れるので、空気通路(44)の流路抵抗(圧力損失)を低減でき、ファン(46)の動力を削減できる。
全冷却運転(図6を参照)では、全ての冷媒回路ユニット(10,20)の各室内熱交換器(18,28)の冷媒の蒸発温度が同じとなるように、対応する圧縮機(12,22)が制御される。これにより、各室内熱交換器(18,28)を並行に流れる空気は、該空気の全体に亘って温度のムラなく均一な温度に冷却される。従って、恒温室(S)に均一な温度の空気を供給できる。
同様に、全加熱運転(図7を参照)では、全ての冷媒回路ユニット(10,20)の各室内熱交換器(18,28)の冷媒の蒸発温度が同じとなるように、対応する圧縮機(12,22)が制御される。これにより、各室内熱交換器(18,28)を並行に流れる空気は、該空気の全体に亘って温度のムラなく均一な温度に加熱される。従って、恒温室(S)に均一な温度の空気を供給できる。
上記実施形態の冷却加熱運転では、各圧縮機(12,22)の運転周波数が変化してから所定時間が経過した後に、恒温室(S)の空気の温度Tinと設定温度Tsとの差が大きいと、対応する圧縮機(12,22)の運転周波数を増大させる、あるいは減少させるようにしている。これにより、恒温室(S)の空気の温度Tinが設定温度Tsの前後でハンチングしてしまうことを未然に回避できる。
また、冷却加熱運転において、第1圧縮機(12)の運転周波数f1が、第2圧縮機(22)の運転周波数f2以下になる、あるいは第1圧縮機(12)の電流値A1が、第2圧縮機(22)の電流値A2以下になると、第1圧縮機(12)の運転周波数を減少させるようにしている(図8のステップSt20)。冷却加熱運転では、例えば一方の圧縮機(12)の運転周波数が増大すると、他方の圧縮機(22)の運転周波数も追従して増大し、一方の圧縮機(12)の運転周波数が減少すると、他方の圧縮機(22)の運転周波数も追従して減少する。ここで、ステップSt20の条件が成立することで、第1圧縮機(12)の運転周波数を減少させると、第1圧縮機(12)の運転周波数を最終的に最低運転周波数まで至らせることができ、これに追従させて第2圧縮機(22)の運転周波数も低減できる。この結果、両者の圧縮機(12,22)の運転周波数を速やかに低減し、省エネ性の向上を図りつつ、恒温室(S)の温度Tinを設定温度Tsに収束させることができる。しかも、第1圧縮機(12)の運転周波数が最低運転周波数に至ると、ステップSt20の条件が成立しても、これ以上第1圧縮機(12)の運転周波数が減少することはない。このため、第1圧縮機(12)の運転周波数が最低運転周波数に至った後には、第1圧縮機(12)及び第2圧縮機(22)の運転周波数が減少変化してしまうことを防止でき、ひいては恒温室(S)の温度Tinが設定温度Tsに対してハンチングしてしまうことを確実に防止できる。
同様に、冷却加熱運転において、第1圧縮機(12)の運転周波数f1が第2圧縮機(22)の運転周波数f2より大きい、あるいは第1圧縮機(12)の電流値A1が第2圧縮機(22)の電流値A2より大きいと、第2圧縮機(22)の運転周波数を低減するようにしている(図9のステップSt30)。これにより、第2圧縮機(22)の運転周波数を速やかに最低回転数に至らせることができ、これに追随させて第1圧縮機(12)の運転周波数も低減できる。この結果、ステップSt20と同様、恒温室(S)の温度Tinのハンチングを防止しつつ、両者の圧縮機(12,22)の運転周波数を低減でき、省エネ性の向上、及び温度調節の精度の向上を図ることができる。
《実施形態2》
実施形態2に係る空気調和機(A)は、実施形態1と各室内熱交換器(18,28)の配置が異なるものである。図10に示すように、実施形態2の空調ユニット(40)の空気通路(44)には、複数(本実施例では2つ)の冷媒回路ユニット(10,20)の各室内熱交換器(18,28)が直列に配置されている。空気通路(44)では、空気流れの上流側寄りに第1室内熱交換器(18)が配置され、空気流れの下流側寄りに第2室内熱交換器(28)が配置される。各冷媒回路ユニット(10,20)の構成は実施形態1と基本的に同じである。
実施形態2に係る空気調和機(A)においても、実施形態1と同様にして、冷却加熱運転、全冷却運転、及び全加熱運転が切り換えて実行される。これらの運転の切換の判定は、実施形態1と同様である(図5を参照)。
実施形態2の冷却加熱運転では、第1冷媒回路(11)で第1冷凍サイクルが行われ、第1室内熱交換器(18)が蒸発器となり、第2冷媒回路(21)で第2冷凍サイクルが行われ、第2室内熱交換器(28)が凝縮器となる。従って、空気通路(44)に吸い込まれた空気は、第1室内熱交換器(18)で冷却された後、第2室内熱交換器(28)で加熱され、恒温室(S)へ供給される。
実施形態2の全冷却運転では、第1室内熱交換器(18)と第2室内熱交換器(28)との双方が蒸発器となり、両者で冷却動作が行われる。ここで、実施形態2では、実施形態1と異なり、下流側の第2室内熱交換器(28)の蒸発温度が、上流側の第1室内熱交換器(18)の蒸発温度よりも低くなるように、各圧縮機(12,22)の運転周波数がコントローラ(50)によって制御される(図11を参照)。これにより、全冷却加熱運転では、第1室内熱交換器(18)で所定温度まで冷却した空気を、更に第2室内熱交換器(28)で低い温度まで冷却できる。従って、全冷却運転では、恒温室(S)をより低温域に維持することができる。
実施形態2の全加熱運転では、第1室内熱交換器(18)と第2室内熱交換器(28)との双方が凝縮器となり、両者で加熱動作が行われる。ここで、実施形態2では、実施形態1と異なり、下流側の第2室内熱交換器(28)の凝縮温度が、上流側の第1室内熱交換器(18)の凝縮温度よりも高くなるように、各圧縮機(12,22)の運転周波数がコントローラ(50)によって制御される(図12を参照)。これにより、全加熱運転では、第1室内熱交換器(18)で所定温度まで加熱した空気を、更に第2室内熱交換器(28)で高い温度まで加熱できる。従って、全加熱運転では、恒温室(S)をより高温域に維持することができる。
《実施形態2の変形例》
〈実施形態2の変形例1〉
実施形態2の全冷却運転において、蒸発器となる各室内熱交換器(18,28)に対応する各圧縮機(12,22)の電流値が同じとなるように、各圧縮機(12,22)の運転周波数を制御するようにしてもよい。つまり、全冷却運転において、各室内熱交換器(18,28)を直列に配置すると、上流側の室内熱交換器(18)に流入する空気の温度よりも、下流側の室内熱交換器(28)に流入する空気の温度が低くなる。このため、下流側の室内熱交換器(28)では、低温の空気が流入することに起因して蒸発温度がかなり低い温度になってしまう。そうすると、この下流側の室内熱交換器(28)に対応する圧縮機(12,22)の負荷が極端に増大してしまい、空気調和機(A)全体としての電力消費量も増大してしまう。
これに対し、変形例1では、各圧縮機(12,22)の電流値を各電流計(31,34)で検知し、各圧縮機(12,22)の電流値が同じとなるようにこれらの圧縮機(12,22)が制御されるため、下流側の室内熱交換器(28)に対応する圧縮機(12,22)の負荷が極端に大きくなってしまうことがない。従って、空気調和機(A)全体としての電力消費量を低減できる。
〈実施形態2の変形例2〉
実施形態2の全冷却運転において、蒸発器となる各室内熱交換器(18,28)に対応する冷媒回路(11,21)の高圧圧力が同じとなるように、各圧縮機(12,22)の運転周波数を制御するようにしてもよい。ここで、各冷媒回路(11,21)の高圧圧力は、概ね圧縮機(12,22)の負荷(動力)に相当する指標となる。従って、これらの高圧圧力が同じとなるように圧縮機(12,22)の運転周波数を制御することで、下流側の室内熱交換器(28)に対応する圧縮機(12,22)の負荷が極端に増大してしまうことを回避できる。
〈実施形態2の変形例3〉
実施形態2の全加熱運転において、凝縮器となる各室内熱交換器(18,28)に対応する各圧縮機(12,22)の電流値が同じとなるように、各圧縮機(12,22)の運転周波数を制御するようにしてもよい。つまり、全加熱運転において、各室内熱交換器(18,28)を直列に配置すると、上流側の室内熱交換器(18)に流入する空気の温度よりも、下流側の室内熱交換器(28)に流入する空気の温度が高くなる。このため、下流側の室内熱交換器(28)では、高温の空気が流入することに起因して凝縮温度がかなり高い温度になってしまう。そうすると、この下流側の室内熱交換器(28)に対応する圧縮機(12,22)の負荷が極端に増大してしまい、空気調和機(A)全体としての電力消費量も増大してしまう。
これに対し、変形例3では、各圧縮機(12,22)の電流値を各電流計(31,34)で検知し、各圧縮機(12,22)の電流値が同じとなるようにこれらの圧縮機(12,22)が制御されるため、下流側の室内熱交換器(28)に対応する圧縮機(12,22)の負荷が極端に大きくなってしまうことがない。従って、空気調和機(A)全体としての電力消費量を低減できる。
《その他の実施形態》
本開示の各種の形態では、以下のような構成としてもよい。
上記各形態において、空気通路(44)に空気を加熱する補助的なヒータや、空気の除湿や加湿を行う調湿部を配置してもよい。