JP2017014599A - スパッタリングターゲット及びその製造方法 - Google Patents
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Abstract
Description
また、カルコパイライト構造半導体へのN、P、Sb、Bi元素の高濃度ドープを分子線やイオン線を用いて行う場合、結晶欠陥等が生じるなどの問題点があり、困難であることが記載されている。さらに、カルコパイライト構造半導体へのVb族元素のドープに、リン酸ナトリウムを用いている技術が提案されている(例えば、特許文献2を参照)。
すなわち、上記非特許文献1に記載の方法では、イオンドーピング工程を用いるために、製造コストが高いと共に、特許文献2でも記載されているように、半導体膜に結晶欠陥が発生する等の問題点がある。また、P、Asのドープを行う場合、毒性の高いPH3、AsH3を使用することから工程の安全性を考慮すると好ましくない。
即ち、本発明に係るスパッタリングターゲットは、Ga:0.1〜50質量%、N及びPから選択される1種以上の元素を0.01〜2質量%を含有し、残部がCu及び不可避不純物からなる成分組成を有し、前記N及びPのいずれかの元素と少なくともGa又はCuとによる化合物の状態で含有され、前記化合物の平均粒径が10μm以下であることを特徴とする。
また、本発明に係るスパッタリングターゲットは、Ga:0.1〜50質量%、N及びPから選択される1種以上の元素を0.01〜2質量%、酸素:0.01〜6質量%を含有し、残部がCu及び不可避不純物からなる成分組成を有し、前記N及びPのいずれかの元素と少なくともGa又はCuとによる化合物の状態で含有され、前記化合物の平均粒径が10μm以下であることを特徴とする。
また、上記Gaの含有量を0.1〜50質量%とした理由は、50質量%を超えると、低融点相が析出してしまうためであり、0.1質量%未満であると、CIGS太陽電池の前駆体として使用する際、Ga量が少ないため、所望特性の膜を得るには、スパッタリング成膜の前に、或いは、その後に、Ga添加が必要となり、製造ステップが増えるためである。
また、N及びPから選択される1種以上の元素の含有量を2質量%以下とした理由は、2質量%を超えると異常放電が多発するためである。0.01質量%以上とした理由は、膜中へのN及びPから選択される1種類以上の元素の添加効果が現れないためである。
また、本発明に係るスパッタリングターゲットは、上記のスパッタリングターゲットにおいて、前記化合物が、Ga(NO3)3、GaPO4、Cu3(PO4)2、Cu(NO3)2の少なくとも一種以上であることを特徴とする。
即ち、このスパッタリングターゲット中には、これらの化合物の添加によって、N、Pを含有することになり、スパッタリングで成膜されたCuGa膜における結晶欠陥等の発生を抑制し、カルコパイライト構造半導体膜へのダメージを少なくしており、しかも、高純度の原料を使用することができ、不可避不純物の含有量をできる限り低減することが可能である。
すなわち、本発明に係るスパッタリングターゲットによれば、N及びPのいずれかの元素が少なくともGa又はCuによる化合物の状態で含有され、前記化合物の平均粒径が10μm以下であるので、スパッタリング法により、カルコパイライト構造半導体の前駆体(CuGa膜)形成時に、N、Pを、高濃度に、安価、安全、かつ、均一にドーピングすることが可能である。
従って、本発明のスパッタリングターゲットを用いたスパッタリング法によれば、CIGS薄膜型太陽電池の光吸収層を成膜することで、N、Pが、高濃度に添加され、発電効率の高い太陽電池を製造することが可能となる。
第1の実施形態のスパッタリングターゲットは、Ga:0.1〜50質量%、N及びPから選択される1種以上の元素:0.01〜2質量%を含有し、残部がCu及び不可避不純物からなる成分組成を有し、N、Pの元素がGaとの化合物の状態で含有され、前記化合物としては、GaN、GaPが挙げられる。
(2)混合粉末を真空又は不活性ガス雰囲気中で10〜60MPaの圧力範囲内でホットプレスする。
(3)混合粉末をHIP法で圧力:15〜150MPaにて焼結する。
先ず、用意するGaN化合物粉末又はGaP化合物粉末としては、純度3N以上で、酸素含有量の上昇を抑えると共にCu−Ga合金粉末とCu粉末との混合性を考慮して、一次粒子径が0.3μm以下のものが好ましい。特に、化合物として、GaN及びGaPを用いると、これらは、酸素を含有していないと共に、高純度の原料を使用することができ、ターゲット中の酸素や不可避不純物の含有量を低減することができるため、好適である。
なお、ターゲット中の酸素含有量を低減するために、GaN及びGaP化合物粉末中の吸着水分や水和物を混合する前に予め取り除く必要がある。例えば、真空乾燥機中で真空環境にて120℃、10時間の乾燥が有効である。
さらに、この乾燥させた解砕粉とターゲット組成のCu−Ga合金粉末及びCu粉末の少なくとも一方を、乾式混合装置を用いて相対湿度RH40%以下の乾燥した環境にて混合し、焼結用原料粉を用意する。なお、混合は還元性雰囲気中で行うことがさらに好ましい。
また、混合後の混合粉中の吸着水分を取り除く必要がある場合、例えば、真空乾燥機中で真空環境にて80℃、3時間以上の乾燥が有効である。
また、Cu−Ga合金又はCuの焼結中の酸化防止のため、常圧焼結、ホットプレス又はHIPは、還元性雰囲気中、真空中又は不活性ガス雰囲気中で行う。
ホットプレスにおいては、ホットプレスの圧力がターゲット焼結体の密度に大きな影響を及ぼすので、好ましい圧力は10〜60MPaとする。また、加圧は、昇温開始前からでもよいし、一定のホットプレス温度に到達してから行ってもよい。
HIP法においては、好ましい圧力は15〜150MPaとする。
焼結体の焼結時間は組成により変わるが、1〜10時間が好ましい。1時間より短くなると、焼結が不十分であり、スパッタ中に割れや欠けが発生し、さらには、スパッタリング時に異常放電が発生する可能性が高くなる。一方、10時間より長くしても密度を向上させる効果はほとんどない。
次に、加工後のスパッタリングターゲットを、Inを半田として、Cu又はSUS(ステンレス)、或いは、その他金属(例えば、Mo)からなるバッキングプレートにボンディングし、スパッタリングに供する。
なお、加工済みのスパッタリングターゲットを保管する際には、酸化、吸湿を防止するため、ターゲット全体を真空パック又は不活性ガス置換したパッキングを施すことが好ましい。
また、前記化合物としてGaN及びGaPの少なくとも一種を採用することで、化合物が酸素を含有していないと共に、高純度の原料を使用することができるので、不可避不純物の含有量を低減可能である。
さらに、本実施形態のスパッタリングターゲットの製造方法では、上記混合粉末を、粉末焼結の方法を使用することで、Vb族元素とGaとの化合物を溶解法によって添加して製造するターゲットに比べ、N、Pの元素とGaとの化合物を均一に分散分布させることができる。
次に、第1の実施形態に係るスパッタリングターゲット及びその製造方法に関し、上述の製造方法に基づいて作製した実施例により、評価した結果を説明する。
なお、焼結済みの焼結体に、乾式切削加工を施し、直径125(mm)×厚さ5(mm)のスパッタリングターゲット(実施例1〜30のスパッタリングターゲット)を作製した。
本実施例1〜30のスパッタリングターゲットについて、焼結体中のGaN粒子又はGaP粒子を、日本電子株式会社製電子線プローブマイクロアナライザ(EPMA)(JXA−8500F)で観察し、上述した計測方法で粒子の最大粒径、平均粒径をそれぞれ求めた。
また、作製したターゲット中のGaとCuとPとの各含有量を、ICP法(高周波誘導結合プラズマ法)を用いて定量分析を行った。また、Nについては、不活性ガス融解熱伝導度法を用いて定量分析を行った。
この成膜された各膜に対してEPMA定性分析を行い、N又はPに係るピークが検出された場合は、膜中にN又はPの元素が有る(添加されている)と判断し、ピークが検出されない場合は、膜中にN又はPの元素が無い(添加されていない)と判断した。
先ず、表1及び表3に示される成分組成及び粒径を有するCu−Ga合金粉末と、Cu粉(純度4N)と、純度3NのGaN粉末又はGaP粉末とを、表1及び表3に示される量になるように配合し、比較例1〜6の原料粉末とした。得られた混合粉末を、表2及び表4に示された条件にて焼結し、比較例1〜6のスパッタリングターゲットを作製した。これら比較例のスパッタリングターゲットについても、実施例と同様に評価した。その結果も併せて表2及び表4に示す。
上述した第1の実施形態は、Ga:0.1〜50質量%、N及びPから選択される1種以上の元素:0.01〜2質量%を含有し、残部がCu及び不可避不純物からなる成分組成を有し、N、Pの元素が、Gaとの化合物、即ち、GaN、GaPの状態で含有されスパッタリングターゲットの場合であった。これに対して、第2の実施形態は、Ga:0.1〜50質量%、N及びPから選択される1種以上の元素:0.01〜2質量%を含有し、選択的に酸素:0.01〜6質量%を含有し、残部がCu及び不可避不純物からなる成分組成を有したスパッタリングターゲットであって、N、Pの元素が、少なくともCu又はGaによる化合物の状態、即ち、Cu3N、Cu3P、Ga(NO3)3、GaPO4、Cu3(PO4)2、Cu(NO3)2で添加される場合である。
次に、第2の実施形態に係るスパッタリングターゲット及びその製造方法に関し、上述の製造方法に基づいて作製した実施例により、評価した結果を説明する。
本実施例31〜37のスパッタリングターゲットについて、焼結体中におけるCu3P粒子、Ga(NO3)3粒子、GaPO4粒子、Cu3(PO4)2粒子、Cu(NO3)2粒子を、日本電子株式会社製電子線プローブマイクロアナライザ(EPMA)(JXA−8500F)で観察し、上述した計測方法で粒子の最大粒径、平均粒径をそれぞれ求めた。
また、作製したターゲット中のGaとCuとPとの各含有量を、ICP法(高周波誘導結合プラズマ法)を用いて定量分析を行った。また、Nについては、不活性ガス融解熱伝導度法を用いて定量分析を行った。酸素については、 JIS Z 2613「金属材料の酸素定量方法通則」に記載された赤外線吸収法に準拠し、LECO社製TC600を用いて測定した。
先ず、表5に示される成分組成及び粒径を有するCu−Ga合金粉末と、Cu粉(純度4N)と、純度3NのCu3P化合物粉末又はCu(NO3)2化合物粉末とを、表5に示される量になるように配合し、比較例7、8の原料粉末とした。得られた混合粉末を、表6に示された条件にて焼結し、比較例7、8のスパッタリングターゲットを作製した。これら比較例のスパッタリングターゲットについても、実施例と同様に評価した。その結果も併せて表6に示す。
これに対して、比較例7の場合では、Cu3P化合物の最大粒径が15μmを超え、さらに、平均粒径も10μmを超えており、異常放電回数が増大して安定したスパッタ成膜ができなかった共にスパッタリング中のターゲット割れが発生した。また、比較例8の場合では、Cu(NO3)2化合物の最大粒径が15μmを超え、さらに、平均粒径も10μmを超えており、異常放電回数が増大して安定したスパッタ成膜ができなかったと共にスパッタリング中のターゲット割れが発生した。
0MPa以上であることが好ましい。上記第1及び第2の実施形態における各実施例は、いずれもこれらの条件を満たしたものである。
また、本発明の技術範囲は上記実施形態及び上記実施例に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更を加えることが可能である。
Claims (7)
- Ga:0.1〜50質量%、N及びPから選択される1種以上の元素を0.01〜2質量%を含有し、残部がCu及び不可避不純物からなる成分組成を有し、
前記N及びPのいずれかの元素が少なくともGa又はCuによる化合物の状態で含有され、前記化合物の平均粒径が10μm以下であることを特徴とするスパッタリングターゲット。 - Ga:0.1〜50質量%、N及びPから選択される1種以上の元素を0.01〜2質量%、酸素:0.01〜6質量%を含有し、残部がCu及び不可避不純物からなる成分組成を有し、前記N及びPのいずれかの元素と少なくともGa又はCuとによる化合物の状態で含有され、前記化合物の平均粒径が10μm以下であることを特徴とするスパッタリングターゲット。
- 請求項1に記載のスパッタリングターゲットにおいて、
前記化合物が、GaN、GaP、Cu3N、Cu3Pの少なくとも一種以上であることを特徴とするスパッタリングターゲット。 - 請求項2に記載のスパッタリングターゲットにおいて、
前記化合物が、Ga(NO3)3、GaPO4、Cu3(PO4)2、Cu(NO3)2の少なくとも一種以上であることを特徴とするスパッタリングターゲット。 - 請求項1〜4のいずれか一項に記載のスパッタリングターゲットを製造する方法であって、
N及びPのいずれかの元素と少なくともCuとによる化合物粉末とCu−Ga合金粉との混合粉末、N及びPのいずれかの元素と少なくともGaとによる化合物粉末とCu−Ga合金粉又はCu粉末との混合粉末、或いは、N及びPのいずれかの元素と少なくともGa又はCuとによる化合物粉末とCu−Ga合金粉末とCu粉末との混合粉末からなる成形体を、真空中、不活性ガス中又は還元性雰囲気中で焼結する工程を有していることを特徴とするスパッタリングターゲットの製造方法。 - 請求項1〜4のいずれか一項に記載のスパッタリングターゲットを製造する方法であって、
N及びPのいずれかの元素と少なくともCuとによる化合物粉末とCu−Ga合金粉との混合粉末、N及びPのいずれかの元素と少なくともGaとによる化合物粉末とCu−Ga合金粉又はCu粉末との混合粉末、或いは、N及びPのいずれかの元素と少なくともGa又はCuとによる化合物粉末とCu−Ga合金粉末とCu粉末との混合粉末を、真空中又は不活性ガス雰囲気中でホットプレスする工程を有していることを特徴とするスパッタリングターゲットの製造方法。 - 請求項1〜4のいずれか一項に記載のスパッタリングターゲットを製造する方法であって、
N及びPのいずれかの元素と少なくともCuとによる化合物粉末とCu−Ga合金粉との混合粉末、N及びPのいずれかの元素と少なくともGaとによる化合物粉末とCu−Ga合金粉又はCu粉末との混合粉末、或いは、N及びPのいずれかの元素と少なくともGa又はCuとによる化合物粉末とCu−Ga合金粉末とCu粉末との混合粉末末を、熱間静水圧プレス法を用いて焼結する工程を有していることを特徴とするスパッタリングターゲットの製造方法。
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