JP2017011242A - 光検出装置 - Google Patents
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Abstract
【課題】 赤外光などの被検出光を高速、高感度、低雑音で検出することが可能な光検出装置を提供する。【解決手段】 負の誘電率を有する材料からなり周期構造22が形成された受光層21を有し、波長λの被検出光の入射に応じて表面プラズモンを生成するように構成された受光部20と、受光層21と一体の負誘電率材料層50を構成するように受光層21から伸長された素子設置層51と、素子設置層51上で受光層21の周期構造22と同じ側であって受光部20における表面プラズモンの伝搬方向の一方側に設けられ、伝導帯サブバンド準位を利用した量子井戸型の活性層35を有してメサ型に形成された量子カスケード検出器30とを備えて、光検出装置1Aを構成する。【選択図】 図2
Description
本発明は、伝導帯サブバンド準位を利用した量子井戸型の半導体光検出素子を備える光検出装置に関するものである。
中〜遠赤外領域(例えば、波長3μm以上の領域)には、多くの分子に強い吸収が見られ、このような領域は分子の指紋領域として知られている。さらに、波長2μm〜5μmには、大気に対して透過率が高い領域が存在し、このような領域は大気の窓と呼ばれている。これらの特徴を活かし、中〜遠赤外領域の光は、物質の検出、同定等に幅広く応用されている。
赤外光の利用に必須となる赤外用(主に中赤外用)の光検出器としては、例えば、HgCdTe(MCT)検出器が知られており、実用化されている。しかしながら、MCT検出器は、駆動速度が通常数100kHz程度であり、MHz以上の高速性を求められる用途には使用することができない。
このような問題を解決する赤外光検出器として、近年、量子カスケード検出器(QCD:Quantum Cascade Detector)の研究開発が進められている。量子カスケード検出器は、半導体における伝導帯サブバンド間の電子の高速(サブピコ秒)な遷移を用いていることから、数GHz〜数10GHzに及ぶ高速な応答が可能であり、また、駆動電圧を必要としないため、大きなノイズは発生しない。このような量子カスケード検出器は、超高速、かつ低ノイズ、高感度な赤外光検出器として有望である。
A. Harrer et al.,"Plasmonic lens enhanced mid-infrared quantum cascade detector",Appl. Phys. Lett. Vol.105 (2014) pp.171112-1-171112-4
Z. Yu et al., "Design ofmidinfrared photodetectors enhanced by surface plasmons on gratingstructures", Appl. Phys. Lett. Vol.89 (2006) pp.151116-1-151116-3
N. C. Lindquist et al.,"Periodic modulation of extraordinary optical transmission throughsubwavelength hole arrays using surrounding Bragg mirrors", Phys. Rev. BVol.76 (2007) pp.155109-1-155109-5
上記した量子カスケード検出器、もしくはより一般的な量子井戸型赤外光検出器(QWIP:Quantum Well Infrared Photodetector)など、伝導帯サブバンド間の遷移を利用する量子井戸型の光検出器は、サブバンド間における光学遷移の選択則によって光の入射条件に大きな制約を有している。具体的には、量子井戸型光検出器は、量子井戸構造を構成する半導体層の積層方向(成長方向)に沿って電場が振動する偏光(TM偏光)にしか光感度を持たず、受光面積を広くとることができないため、検出器への効率的な被検出光の導入が困難となっている。
このため、量子井戸型光検出器では、被検出光の入射構成として、へき開端面に光を集光して直接、活性層に入射させる構成、あるいは、活性層を絶縁基板上に成長するとともに、基板を斜めに研磨して研磨面から光を入射させ、電場振動のTM成分による部分的な光学遷移への寄与を、基板及び活性層内部での多重反射によって補う構成等が用いられている。しかしながら、上記の場合、前者の構成では、受光面の幅が活性層厚とほぼ同程度となってしまい、効率的な光の入射が困難となる。また、後者の構成では、基板に入射させた光のうちで感度に寄与しない成分が多く存在するため、同様に効率的な光の入射構成であるとは言い難い。
したがって、量子井戸型光検出器では、上記した受光効率の限界が、検出器としての感度向上における課題となっている。また、このような受光効率の問題は、検出器のアレイ化、及びそれによる撮像素子への応答展開に向けても高いハードルとなっている。
本発明は、以上の問題点を解決するためになされたものであり、赤外光等の被検出光を高速、高感度、低雑音で検出することが可能な光検出装置を提供することを目的とする。
このような目的を達成するために、本発明による光検出装置は、(1)負の誘電率を有する材料からなり周期構造が形成された受光層を有し、所定の波長λの被検出光の入射に応じて表面プラズモンを生成するように構成された受光部と、(2)負の誘電率を有する材料からなり、受光層と一体の負誘電率材料層を構成するように受光層から伸長された素子設置層と、(3)素子設置層上で受光層の周期構造と同じ側であって、受光部における表面プラズモンの伝搬方向の一方側に設けられ、伝導帯サブバンド準位を利用した量子井戸型の活性層を有する半導体光検出素子とを備えることを特徴とする。
上記した光検出装置では、負の誘電率を有する材料からなる負誘電率材料層を設け、その第1領域(素子領域)内の部分を素子設置層とし、第2領域(受光部領域)内の部分を受光層とするとともに、受光層において被検出光の波長λを考慮して設計された周期構造を形成することで受光部を構成している。また、素子設置層上で受光層の周期構造と同じ側であって受光部における表面プラズモンの伝搬方向の一方側に、メサ型のQCD、QWIPなどの半導体光検出素子を配置している。
そして、このような構成において、上記した光検出装置では、受光部の周期構造において、被検出光の入射に応じて表面プラズモンを生成させ、この表面プラズモンを半導体光検出素子へと伝搬させて、表面プラズモンに伴う電場を光検出素子で検出する構成としている。このように、伝導帯サブバンド準位を利用した量子井戸型の半導体光検出素子に対して、表面プラズモン機構を利用した受光部を設けるとともに、受光部を構成する周期構造が形成された受光層と一体の素子設置層上で周期構造と同じ側に光検出素子を配置する構成によれば、被検出光に対する受光面積を受光部によって拡大するとともに、受光部から光検出素子への電場の伝達、入射効率を受光部から光検出素子へと伸長する負誘電率材料層によって向上して、赤外光などの被検出光を高速、高感度、低雑音で検出することが可能な光検出装置を実現することができる。
ここで、上記の光検出装置は、受光層及び素子設置層を含む負誘電率材料層と、半導体光検出素子とが設置面上に設けられる基板を備え、半導体光検出素子、及び受光部の周期構造は、負誘電率材料層に対して基板とは反対側に設けられている構成とすることができる。このような構成では、受光部に設けられた周期構造に対し、基板とは反対側から被検出光が入射する。
また、この場合、受光層の周期構造上に、誘電体材料からなる誘電体層が形成されている構成としても良い。
これらの構成によれば、受光層、素子設置層、及び半導体光検出素子を含む光検出装置を、支持基板とともに好適に構成することができる。
あるいは、上記の光検出装置は、受光層及び素子設置層を含む負誘電率材料層と、半導体光検出素子とが設置面上に設けられる基板を備え、半導体光検出素子、及び受光部の周期構造は、負誘電率材料層に対して基板側に設けられている構成とすることができる。このような構成では、受光部に設けられた周期構造に対し、基板側から基板を介して被検出光が入射する。
また、この場合、受光層と基板との間に設けられて基板上で受光層を支持する支持層を備え、支持層の基板とは反対側の面上には、受光層の周期構造に対応する支持側周期構造が形成されている構成としても良い。また、受光層と基板との間に設けられる支持層は、半導体材料からなる半導体層である構成としても良い。
また、基板を介して被検出光が入射する上記構成では、基板の設置面とは反対側の裏面上に、被検出光に対する反射防止膜が形成されている構成としても良い。
これらの構成によっても、受光層、素子設置層、及び半導体光検出素子を含む光検出装置を、支持基板とともに好適に構成することができる。また、基板を含む光検出装置の具体的な構成については、上記以外にも様々な構成を用いることが可能である。
また、上記の光検出装置における半導体光検出素子については、吸収井戸層として機能する第1井戸層を含むN個(Nは3以上の整数)の量子井戸層、及びN個の量子障壁層からなる単位積層体が多段に積層されることで、第1井戸層を含みサブバンド間吸収によって光を検出する吸収領域と、サブバンド間吸収によって励起された電子を輸送する輸送領域とが交互に積層されたカスケード構造が形成された活性層を有する量子カスケード検出器(QCD)を用いることができる。あるいは、半導体光検出素子として、量子井戸赤外光検出器(QWIP)などのQCD以外の量子井戸型の光検出素子を用いても良い。
周期構造が形成された受光層、及び半導体光検出素子を載置する素子設置層を含む負誘電率材料層については、具体的には例えば、負誘電率材料層は、金属材料からなる金属層である構成とすることができる。また、受光層は、周期構造として、半導体光検出素子への表面プラズモンの伝搬方向を配列方向として交互に周期的に形成された複数の凸部及び複数の凹部を含む凹凸構造(格子構造)を有する構成とすることができる。
また、受光部を構成する受光層は、その半導体光検出素子側の所定部分が、半導体光検出素子に向けて幅が減少するテーパ形状に形成されている構成とすることができる。このような構成では、半導体光検出素子を小型化することが可能となる。
また、上記の光検出装置は、1次元アレイ状、または2次元アレイ状に配列され、それぞれ受光層、素子設置層、及び半導体光検出素子を有する複数の光検出ユニットを備える構成としても良い。このような光検出装置は、例えば1次元または2次元の撮像素子として利用することが可能である。
本発明の光検出装置によれば、負誘電率材料層の一部分を素子設置層とし、他の部分を受光層とするとともに、受光層において周期構造を形成することで受光部を構成し、素子設置層上で受光層の周期構造と同じ側であって、表面プラズモンの伝搬方向の一方側に半導体光検出素子を配置して、受光部の周期構造において被検出光の入射に応じて表面プラズモンを生成させ、この表面プラズモンを半導体光検出素子へと伝搬させて、表面プラズモンに伴う電場を光検出素子で検出する構成とすることにより、赤外光などの被検出光を高速、高感度、低雑音で検出することが可能となる。
以下、図面とともに、本発明による光検出装置の実施形態について、詳細に説明する。なお、図面の説明においては同一要素には同一符号を付し、重複する説明を省略する。また、図面の寸法比率は、説明のものと必ずしも一致していない。
[第1実施形態]
図1は、本発明による光検出装置の第1実施形態の構成を示す平面図である。また、図2(a)は、図1に示した光検出装置の断面構成を示すII−II線に沿った側面断面図であり、図2(b)は、光検出装置の側面断面図における被検出光の入射、及び表面プラズモンの伝搬等について模式的に示す図である。
本実施形態の光検出装置1Aは、伝導帯サブバンド準位を利用した量子井戸型の半導体光検出素子30を備える半導体光検出装置である。このような半導体光検出素子は、上述したように、サブバンド間における光学遷移の選択則によって光の入射条件に大きな制約を有している。以下、光検出装置1Aの構成について、その具体的な構成例とともに説明する。また、以下においては、上記したサブバンド準位を利用した量子井戸型の半導体光検出素子30について、量子カスケード検出器(QCD)を例として説明する。
図1、図2に示す半導体光検出装置1Aは、基板10と、半導体光検出素子である量子カスケード検出器30と、受光部20とを備えて構成されている。基板10は、例えば矩形状の半導体基板からなり、その一方の面(図2中の上面)が、量子カスケード検出器30及び受光部20が設けられる設置面11となっている。また、基板10の設置面11上には、素子設置領域11a及び受光部設置領域11bが設定されており、素子設置領域11a上に光検出素子である量子カスケード検出器30が設けられ、また、受光部設置領域11b上に受光部20が設けられている。
基板10の設置面11上には、上記した素子設置領域11a及び受光部設置領域11bを合わせた領域上に、負の誘電率を有する材料からなる負誘電率材料層50が形成されている。以下に示す構成例では、この負誘電率材料層50について、例えばAu(金)などの金属材料からなる金属層とする。また、この金属層50において、素子設置領域11aに対応する第1領域(素子領域)内の部分が素子設置層51となっており、受光部設置領域11bに対応する第2領域(受光部領域)内の部分が受光部20を構成する受光層21となっている。
量子カスケード検出器30は、上記したように伝導帯サブバンド準位を利用した量子井戸型の活性層35を有しており、金属層50の素子設置層51上においてメサ型に形成されている。図2に示す構成例では、量子カスケード検出器30は、基板10及び素子設置層51上に、下部コンタクト層31、活性層35、及び上部コンタクト層33を順に形成することで構成されている。また、上部コンタクト層33上には、金属層からなる検出器30の上部電極13が形成されている。また、下部コンタクト層31に接している金属層50は、下部電極としても機能している。
量子カスケード検出器30の活性層35においては、吸収井戸層として機能する第1井戸層を含むN個(Nは3以上の整数)の量子井戸層、及びN個の量子障壁層からなる単位積層体36(図2(a)参照)が多段に積層されることで、第1井戸層を含みサブバンド間吸収によって光を検出する吸収領域と、サブバンド間吸収によって励起された電子を輸送する輸送領域とが交互に積層されたカスケード構造が形成されている。また、このような構成において、基板10は、例えば半絶縁性InP基板からなり、コンタクト層31、33は、例えばn型のInGaAs層からなる。また、活性層35は、例えばInGaAs/InAlAs多重量子井戸構造によって構成される。検出器30における半導体積層構造、及び活性層35での単位積層体36の構成については、具体的には後述する。
受光部20は、基板10上に量子カスケード検出器30とともに設けられ、金属層50に含まれる受光層21を有して構成されている。また、このような構成において、素子設置層51は、受光層21と一体の金属層(負誘電率材料層)50を構成するように受光層21から伸長された層となっている。
受光層21の基板10とは反対側の面には、光検出装置1Aでの検出対象となる被検出光の波長λを考慮して設計された周期構造22が形成されている。このような周期構造22により、受光部20は、波長λの被検出光Aの入射(図2(b)参照)に応じて、表面プラズモンを生成するように構成されている。
図1、図2に示す構成例では、受光層21には、図2(b)に矢印A2によって示す、量子カスケード検出器30へと向かう表面プラズモンの伝搬方向を配列方向として、複数の凸部22a、及び複数の凹部22bが交互に周期的に形成、配列されている。これにより、本構成例での周期構造22は、表面プラズモンの伝搬方向A2と直交する方向を長手方向とする直線状(ストライプ状)の凸部22a及び凹部(溝部)22bが複数、交互に形成された凹凸構造(格子構造)となっている。
また、このような受光部20に対し、量子カスケード検出器30は、素子設置層51上で受光層21の周期構造22と同じ側であって、受光部20における表面プラズモンの伝搬方向(周期構造22での凸部22a、凹部22bの配列方向)の一方側に設けられている。また、本構成例では、素子設置層51の高さは、受光層21の周期構造22における凸部22aの高さと略一致している。このような構成では、受光層21及び素子設置層51を含む金属層50は、受光部20で生成された表面プラズモンに伴う電場を検出器30へと伝搬させる表面プラズモン導波路として機能する。
上記構成の光検出装置1Aについて、被検出光Aを波長λ=4.5μmの赤外光とした場合の各部の形状の一例を示す。受光部20の周期構造22での凹凸構造の周期は4μm〜5μmの範囲内で、例えば4.5μmに設定することができる。また、周期構造22での凸部22aのストライプ幅は2.0μm〜2.5μmの範囲内で、例えば周期の約半分の2.2μmに設定することができる。また、周期構造22でのストライプ高さは0.1μm〜1.0μmの範囲内で、例えば0.5μmに設定することができる。また、周期構造22のベース部分となる金属受光層21の層厚は0.1μm〜1.0μmの範囲内で、例えば0.5μmに設定することができる。
また、量子カスケード検出器30において、多重量子井戸構造を有する活性層35の層厚は0.1μm〜5.0μmの範囲内で、例えば2.0μmに設定することができる。また、下部コンタクト層31の層厚は0.01μm〜1.0μmの範囲内で、例えば0.1μmに設定することができる。また、上部コンタクト層33の層厚は10nm〜100nmの範囲内で、例えば20nmに設定することができる。また、被検出光Aが入射する上方から見た受光部20のサイズは、被検出光の広がり、入射範囲等に応じて任意に設定することが可能であるが、例えば200μm×200μm程度に設定することができる。また、光検出装置1Aの装置サイズについては、例えば500μm程度、あるいは1mm程度等に設定しても良い。
本実施形態による光検出装置1Aの効果について説明する。
図1、図2に示した光検出装置1Aでは、基板10上に、負誘電率材料層である金属層50を設け、その素子領域内の部分を素子設置層51とし、受光部領域内の部分を受光層21とするとともに、受光層21において被検出光Aの波長λを考慮して設計された周期構造22を形成することで受光部20を構成している。また、素子設置層51上で受光層21の周期構造22と同じ側であって受光部20における表面プラズモンの伝搬方向の一方側に、メサ型の半導体光検出素子である量子カスケード検出器30を配置している。
そして、このような構成において、光検出装置1Aでは、受光部20の周期構造22において、被検出光Aの入射に応じて表面プラズモンを生成させ、この表面プラズモンを量子カスケード検出器30へと伝搬させて、表面プラズモンに伴う電場を検出器30で検出する構成としている。
このように、伝導帯サブバンド準位を利用した量子井戸型の半導体光検出素子である量子カスケード検出器30に対して、表面プラズモン機構を利用した受光部20を設けるとともに、受光部20を構成する周期構造22が形成された受光層21と一体の素子設置層51上で周期構造22と同じ側に検出器30を配置する構成によれば、光検出装置1Aへと入射する被検出光Aに対する受光面積を受光部20によって拡大するとともに、受光部20から検出器30への電場の伝達、入射効率を受光部20から検出器30へと伸長する金属層50によって向上して、赤外光などの被検出光Aを高速、高感度、低雑音で検出することが可能な光検出装置1Aを実現することができる。
ここで、表面プラズモン機構を利用した受光部による量子カスケード検出器への光の入射構成については、例えば非特許文献1(A. Harrer et al., Appl. Phys. Lett. Vol.105 (2014)pp.171112-1-171112-4)に記載されている。しかしながら、非特許文献1に記載の構成では、表面プラズモン導波路が検出器の入射面直前で切断されており、この不連続な切断面と検出器の入射面との間での光学インピーダンスの不整合などにより光の損失が発生し、受光部から検出器への光もしくは電場の伝達効率、及び装置全体での光検出感度が低下する。
これに対して、上記実施形態による光検出装置1Aでは、受光部20における金属受光層21を伸長して素子設置層51とし、この素子設置層51上で受光層21での周期構造22と同じ側に量子カスケード検出器30を設置している。これにより、受光部20から検出器30へと伸長する金属層50を、受光部20で生成された表面プラズモンを検出器30へと伝搬させる表面プラズモン導波路として機能させ、受光部20からの表面プラズモンに伴う電場を検出器30の内部へと効率的に伝達、入射させて、赤外光等の被検出光Aに対して高い検出感度を有する光検出装置1Aを好適に実現することが可能となる。
図3は、シミュレーションによって求めた、光検出装置における受光部から量子カスケード検出器への電場の伝達効率の波長依存性を示すグラフである。このグラフにおいて、横軸は対象となる光の波長λ(μm)を示し、縦軸は受光部から量子カスケード検出器への電場の伝達効率を示している。また、図3において、グラフB1は、上記した構成を有する光検出装置における電場の伝達効率を示し、グラフB2は、非特許文献1に記載された従来の構成を有する光検出装置における電場(光)の伝達効率を示している。
図3のグラフより、従来構成の光検出装置では、グラフB2に示すように、表面プラズモン導波路での損失をほぼ無視できる程度に設計した場合であっても、検出器への伝達効率は3%程度にとどまっている。一方、上記構成の光検出装置において構造の最適化を行うことにより、グラフB1に示すように、電場の伝達効率は30%に達するまで向上されている。
光検出装置1Aにおいて用いられる伝導帯サブバンド準位を利用した量子井戸型の半導体光検出素子30については、上記実施形態で例示したように、吸収井戸層として機能する第1井戸層を含むN個の量子井戸層、及びN個の量子障壁層からなる単位積層体36が多段に積層されることで、第1井戸層を含みサブバンド間吸収によって光を検出する吸収領域と、サブバンド間吸収によって励起された電子を輸送する輸送領域とが交互に積層されたカスケード構造が形成された活性層35を有する量子カスケード検出器(QCD)を好適に用いることができる。
あるいは、上記の半導体光検出素子としては、量子カスケード検出器以外の素子、例えば量子井戸赤外光検出器(QWIP)を用いても良い。QWIPにおいても、サブバンド間における光学遷移の選択則による光の入射条件の制約についてはQCDと同様であり、したがって、光検出装置1Aに関して上述したように、QWIPの検出器30に対して、表面プラズモン機構を利用した受光部20を設けるとともに、受光部20を構成する周期構造22が形成された受光層21と一体の素子設置層51上で周期構造22と同じ側に検出器30を配置することにより、被検出光を高速、高感度で検出することが可能な光検出装置を実現することができる。
ただし、QWIPの場合、素子を駆動するために高い駆動電圧が必要となることから、比較的大きいノイズが発生して、光検出におけるSN比が悪化する場合がある。これに対して、上記実施形態のように、半導体光検出素子としてQCDを用いた場合、駆動電圧を必要としないため、大きなノイズは発生せず、したがって、低ノイズの光検出装置とすることができるという利点がある。
また、上記実施形態の光検出装置1Aでは、受光部20及び量子カスケード検出器30等に加えて、受光層21及び素子設置層51を含む金属層50と、検出器30とが設置面11上に設けられる基板10をさらに備える構成としている。また、このように基板10を備える構成において、検出器30、及び受光部20の周期構造22は、金属層50に対して基板10とは反対側(金属層50の上面側)に設けられている。
このような構成によれば、受光部20、素子設置層51、及び量子カスケード検出器30を含む光検出装置1Aを、基板10とともに好適に構成することができる。また、この構成では、図2(b)に示すように、受光部20の受光層21に設けられた周期構造22に対し、基板10とは反対側(図中の上方)から被検出光Aが入射する。なお、図2に示す構成では、金属層50は基板10の直上に設けられているが、必要に応じて、基板10と金属層50との間に他の層を介在させても良い。
周期構造22が形成された受光層21、及び量子カスケード検出器30を載置する素子設置層51を含む負誘電率材料層50としては、具体的には例えば、上記したように、金属材料からなる金属層を用いることができる。また、受光部20における負誘電率材料層である受光層21は、周期構造22として、量子カスケード検出器30への表面プラズモンの伝搬方向を配列方向として交互に周期的に形成された複数の凸部22a及び複数の凹部22bを含む凹凸構造(格子構造)を有する構成とすることができる。この場合、受光層21において、周期構造22として形成された複数の凸部22a、複数の凹部22bの形状は、図1に示したように、直線状であることが好ましく、あるいは同心円状である構成としても良い。
図1、図2に示した光検出装置1Aにおける各部の具体的な構成について、さらに説明する。最初に、被検出光Aの入射に応じて表面プラズモンを生成する受光部20の構成について、具体的に説明する。以下においては、受光部20を構成する受光層21を含む負誘電率材料層50について、金属であるAu(金)を材料とするAu層を用いた場合を例として説明する。ただし、負誘電率材料層50については、Au以外の金属等の材料を用いても良い。
受光部20のAu受光層21においては、図1、図2に直線状の凸部22a、凹部22bによる凹凸構造を例示したように、光検出装置1Aに入射する被検出光Aの波長λに応じた周期を有する周期構造22が形成される。このような周期構造22における周期は、下記の式(1)によって求めることができる。
ここで、Λは表面プラズモンの波長に相当する周期構造22の周期、λは入射する被検出光Aの波長、また、εは媒質の誘電率である。
ここで、Λは表面プラズモンの波長に相当する周期構造22の周期、λは入射する被検出光Aの波長、また、εは媒質の誘電率である。
ε1とε2とは、周期構造22を構成する異なる2つの媒質の誘電率の実部を示している。例えば、図2に示した構成において、周期構造22を構成する媒質として、凸部22aにおける第1媒質であるAu(金)、及び凹部22bにおける第2媒質である溝内の空気を用いた場合、波長4.5μmにおけるAuの誘電率はε1=−843.2、空気の誘電率はε2=1となる。また、θは、受光部20で周期構造22が形成されている面(周期構造面)の垂線からみた被検出光Aの入射角度である。
ここで、受光部20の周期構造22に対して、被検出光Aを垂直に入射させる場合を考える。この場合、入射角度がθ=0°となるため、この条件で上記の式(1)をΛについて解くと、下記の式(2)
が得られる。以上から、例えば、被検出光Aの波長をλ=4.5μmとした場合、周期構造22の最適な周期Λは、4.5μmと求められる。また、周期構造22となる格子構造(凹凸構造)での凹凸のデューティ比は、例えば50%に設定することができる。また、格子構造での溝深さは、例えば0.5μmに設定することができる。
が得られる。以上から、例えば、被検出光Aの波長をλ=4.5μmとした場合、周期構造22の最適な周期Λは、4.5μmと求められる。また、周期構造22となる格子構造(凹凸構造)での凹凸のデューティ比は、例えば50%に設定することができる。また、格子構造での溝深さは、例えば0.5μmに設定することができる。
また、被検出光Aの入射によって受光部20で生成される表面プラズモンの周期構造面上での伝搬長(伝搬損失により電界強度が1/eになる距離)Lxは、下記の式(3)によって求めることができる。
ここで、ε1’、ε2’は、それぞれ第1媒質であるAu、及び第2媒質である空気の複素誘電率であり、Auについては、上記の実部と合わせてε1=−843.2+229.1i、空気については、ε2=1となる。ただし、iは虚数単位である。
ここで、ε1’、ε2’は、それぞれ第1媒質であるAu、及び第2媒質である空気の複素誘電率であり、Auについては、上記の実部と合わせてε1=−843.2+229.1i、空気については、ε2=1となる。ただし、iは虚数単位である。
各パラメータを式(3)に代入して伝搬長Lxを計算すると、約2.4mmと求められる。このことから、本構成例において、周期4.5μmの周期構造22における周期数の最大値は、伝搬損失を考慮して例えば500に設定すれば良い。一方、周期数の最小値については、周期構造22における周期数を5周期以上とすることにより、受光部20での表面プラズモンの生成、増強の効果が充分に得られると考えられることから(非特許文献2(Z. Yu et al., Appl. Phys. Lett. Vol.89 (2006) pp.151116-1-151116-3)参照)、周期数の最小値を5に設定することが好ましい。また、受光部20における周期構造22の幅については、特に制限はなく、適宜に設定することができる。
このような構成の受光部20において、図2(b)に被検出光A、及びその電場の振動方向A1を模式的に示すように、周期構造22に入射する被検出光Aのうち、周期構造22での凹凸構造のストライプと垂直な方向の偏光成分によって、凸部22aのエッジ部分に増強された電場が生じる。この電場は、光(電磁波)の入射によってAu受光層21の内部の自由電子が振動し、電子の疎密波が形成されることに起因するものである。このような電子の疎密波と、入射光の電場とが結合した連成波を表面プラズモンとよぶ。上記したように、式(2)で示した周期Λと、被検出光Aの入射波長λとをほぼ対応、一致させることで、受光部20における受光層21の周期構造面上に増強された電場を生成させることができる。
受光部20において被検出光Aの入射に応じて上記のように生成された表面プラズモンは、図2(b)に矢印A2によって示したように、受光層21の周期構造22の表面(周期構造面)をストライプと垂直な方向に伝搬する。また、これに付随して、周期構造面上を増強された電場が、周期構造面と垂直な方向に振動しながら伝搬する。このようなメカニズムで生成されたTMモードに相当する電場を量子カスケード検出器30へと導き、検出器30の内部へと伝達、入射させることで、光検出装置1Aに入射した被検出光Aを検出するための光感度を得ることができる。
ここで、表面プラズモンに付随して伝搬する負誘電率材料層50上の電場は、負誘電率材料層から離れるにしたがって指数関数的に減衰する。したがって、このように負誘電率材料層50上を伝搬される電場が検出器30の内部へと高効率で伝達されるように、受光部20と検出器30との配置関係、例えば周期構造22が形成された受光層21と、検出器30の活性層35との配置関係を設定することが好ましい。
次に、受光部20から入射する表面プラズモンに起因する光を検出する量子カスケード検出器30の構成の具体例について説明する。図4は、量子カスケード検出器30における半導体積層構造の一例を示す図表である。また、図5は、量子カスケード検出器30における活性層35を構成する単位積層体36の構成の一例を示す図である。
本構成例における活性層35の量子井戸構造では、吸収波長をλ=4.5μm(エネルギー276meV)として設計された例を示している。図5においては、活性層35での吸収領域37及び輸送領域38を含む単位積層体36の多段の繰返し構造のうちの一部について、その量子井戸構造、及び伝導帯サブバンド準位によるサブバンド準位構造を示している。また、量子カスケード検出器30における半導体積層構造による素子構造は、例えば、分子線エピタキシー(MBE:Molecular Beam Epitaxy)法、または有機金属気相成長(MOCVD:MetalOrganic Chemical Vapor Deposition)法などによる結晶成長で形成することができる。
本構成例による量子カスケード検出器30の半導体積層構造では、図1、図2に示した構成において、半導体基板10として、半絶縁性InP基板を用いている。そして、この基板10上に設けられた負誘電率材料層50上(素子設置層51上)に、図2、図4に示すように、厚さ25nmのInGaAs層及び厚さ0.2nmのInAlAs層から構成される下部コンタクト層31、吸収領域37及び輸送領域38を含む単位積層体36が多段に積層された活性層35、厚さ3000nmのInPクラッド層32、及び厚さ25nmのInP上部コンタクト層33が順次積層されることで、量子カスケード検出器30の素子構造が形成されている。
なお、半導体基板10としては、n型InP基板を用いても良い。この場合、InP基板10としては、具体的には例えば、濃度1×1017cm−3〜1×1018cm−3でSiがドープされたInP基板を用いることができる。
活性層35の上方には、光を効率的に閉じ込めるためのクラッド層32が設けられている。クラッド層32としては、具体的には例えば、濃度1×1017cm−3でSiがドープされたInP層を用いることができる。また、クラッド層32の層厚については、対象波長λの1/2以上から波長λと同程度の厚さとすることが好ましい。なお、このようなクラッド層32については、不要であれば設けない構成としても良い。図2においては、検出器30においてクラッド層32が設けられていない構成を例示している。
本構成例における活性層35は、吸収領域37及び輸送領域38を含む単位積層体36が複数周期で繰り返し積層されて構成されている。活性層35における単位積層体36の積層周期数は、例えば、10〜50周期に設定することができる。また、1周期分の単位積層体36は、図4、図5に示すように、7個の量子井戸層361〜367、及び7個の量子障壁層371〜377が交互に積層された量子井戸構造として構成されている。
これらの単位積層体36の各半導体層のうち、量子井戸層361〜367は、それぞれInGaAs層によって構成されている。また、量子障壁層371〜377は、それぞれInAlAs層によって構成されている。これにより、本構成例の活性層35は、InGaAs/InAlAs量子井戸構造によって構成されている。なお、活性層35を構成する各井戸層、障壁層の層厚については、図4に示す通りである。
このような単位積層体36において、第1障壁層371、及び第1井戸層361は、サブバンド間吸収によって光を検出する吸収領域37を構成している。また、第2〜第7障壁層372〜377、及び第2〜第7井戸層362〜367は、サブバンド間吸収によって励起された電子を次周期の吸収領域37bへと輸送する輸送領域38を構成している。また、光吸収に用いられる吸収井戸層として機能する第1井戸層361には、キャリアである電子を供給するために、n型不純物であるSiが濃度1×1018cm−3でドープされている。
このような構成において、単位積層体36は、その図5に示すサブバンド準位構造において、光検出に用いられる伝導帯サブバンド準位として、吸収領域37での光吸収に寄与する検出下準位(detection lower level)L1、検出上準位(detectionupper level)L2、及び輸送領域38での電子輸送に寄与する複数の輸送準位(transportlevels)を有している。
このような単位積層体36を有する活性層35に波長λの光が入射すると、検出下準位L1に存在する電子は、サブバンド間吸収によって検出上準位L2へと励起される。上準位L2に励起された電子は、輸送領域38での複数の輸送準位からなる輸送準位構造を介して、後段の吸収領域37bの検出下準位L1へと輸送、抽出される。このような光吸収による電子励起、励起された電子の緩和、輸送、及び次周期の単位積層体への電子の抽出を、活性層35を構成する複数の単位積層体36で繰り返すことにより、活性層35においてカスケード的な光吸収が起こる。そして、これによって発生する電流を信号として取り出し、その電流量を計測することで、入射光が検出される。
活性層35を含む量子カスケード検出器30の半導体積層構造は、例えば反応性イオンエッチング(ドライエッチング)によって基板10に対して垂直にエッチングされ、これによって、図1、図2に示したメサ構造を有する検出器30が作製される。
次に、上記した構成を有する光検出装置1Aの作製方法について説明する。ここで、図6(a)〜(c)、図7(a)〜(c)は、図1、図2に示した第1実施形態の光検出装置1Aの作製方法を示す図であり、各工程における側面断面図を示している。
図6、図7に示す作製方法では、まず、半絶縁性InPなどからなる基板10の設置面11上に、金属層50の一部となる第1Au層501を真空蒸着等によって形成する(図6(a))。ここでは、基板10と金属層50との間の絶縁性を確実にするために、基板10と第1Au層501との間に別途、SiO2、SiN等の絶縁材料からなる絶縁膜を形成しても良い。
一方、上記の基板10及びAu層501とは別にInP基板101を用意し、MBE、MOCVDなどの方法を用いて、InP基板101上に必要に応じて犠牲層102を結晶成長し、さらに犠牲層102上に、量子カスケード検出器を構成するコンタクト層33、活性層35、コンタクト層31を形成する。また、コンタクト層31上に、金属層50の一部となる第2Au層502を真空蒸着等によって形成する(図6(b))。なお、Au層501、502の成膜工程は、同時に行っても良い。
図6(a)、(b)に示す工程で作成された2枚の半導体ウエハを、Au層501、502同士を接触させて貼り合わせ、適度な荷重をかけて加熱処理することにより、それらを一体化する(図6(c))。このとき、第1Au層501、及び第2Au層502により、金属層50が形成される。
次に、基板101及び犠牲層102を選択的化学エッチングによって除去し、さらに、フォトリソグラフィ、及び化学エッチングまたはドライエッチングを施してコンタクト層31、活性層35、及びコンタクト層33の一部をエッチング除去することにより、メサ型の量子カスケード検出器30を形成する(図7(a))。このとき、金属層50のうちで、検出器30を載置している部分が素子設置層51となり、それ以外の露出したうちの一部分が受光層21となる。さらに、コンタクト層33上に、Au層からなる上部電極13を真空蒸着等によって形成する(図7(b))。
続いて、フォトリソグラフィもしくはナノインプリント及びドライエッチングを施すことにより、受光部20を構成する受光層21に周期構造22を形成する(図7(c))。これにより、基板10、受光部20、素子設置層51、及び量子カスケード検出器30を含む光検出装置が作製される。なお、ストライプ状の周期構造22の形成においては、別の材料、例えばSiN等の絶縁材料からなる凹凸構造を作成し、その上からAuをコーティング成膜することで、周期構造22を形成しても良い。
[第2実施形態]
図8は、光検出装置の第2実施形態の構成を示す平面図である。また、図9は、図8に示した光検出装置の断面構成を示す側面断面図である。本実施形態による光検出装置1Bは、受光部20の構成が、第1実施形態の光検出装置1Aとは異なっている。
本実施形態では、受光部20において、受光層21の周期構造22上に、誘電体材料からなる誘電体層23が形成されている。この場合、誘電体層23の誘電体材料としては、例えばSiO2、SiN等を用いることができる。このような構成の光検出装置1Bによっても、第1実施形態の光検出装置1Aと同様に、赤外光などの被検出光Aを高速、高感度、低雑音で検出することが可能となる。
特に、図8、図9に示す構成では、受光部20から検出器30の内部への表面プラズモンの電場の伝達効率を向上することができる。すなわち、受光部20で生成されて検出器30へと伝搬する表面プラズモン波は、周期構造22を含む受光層21での第1媒質である金属と、受光層21の上方にある第2媒質との界面から遠ざかるにしたがって強度が減衰するが、表面プラズモン波の幅は波長程度の広がりを有している。
ここで、被検出光Aの波長λと、表面プラズモンの波長に相当する周期構造22の周期Λとの関係を示す上記の式(2)において、周期構造22の第2媒質が空気である第1実施形態の構成では、ε2は空気の誘電率であってε2=1であり、したがって、周期構造22の周期Λは波長λとほぼ等しくなる。この場合、光検出装置1Aに入射する被検出光Aの波長をλ=4.5μmとすると、励起される表面プラズモンの波長Λも約4.5μmであり、同程度の空間的な広がりを有していることとなる。
一方、表面プラズモンが伝達、入射される量子カスケード検出器30の厚さは例えば2.0μm程度である。したがって、周期構造22が金属及び空気から構成される第1実施形態の構成では、表面プラズモンが入射する検出器30の厚さが、表面プラズモンの空間的な広がりよりも薄くなってしまう可能性がある。この場合、受光部20から検出器30への電場の伝達効率が制限され、被検出光Aに対する検出感度が低下してしまう。
これに対して、周期構造22の金属ストライプアレイを誘電体層23でコーティングする本実施形態による光検出装置1Bでは、表面プラズモンの波長Λを短くすることができる。例えば、誘電体層23をある条件で成膜されたSiN層とした場合、SiN層の波長λ=4.5μmでの誘電率は2.6程度である。この場合、表面プラズモンの波長Λは、上記式(2)から2.8μm程度となり、誘電体層23が設けられていない場合と比べてかなり短波長化される。これにより、本実施形態による光検出装置1Bによれば、表面プラズモンの空間的な広がりが小さくなることにより、受光部20から検出器30への電場の伝達効率を高めることができる。
なお、図8、図9に示したように、受光部20において金属受光層21に加えて誘電体層23を設ける構成では、光検出装置の作製において、受光層21上に周期構造22を作成した後に、プラズマCVD法による成膜と、フォトリソグラフィ、及び化学エッチングまたはドライエッチングによるパターニングとを行うことにより、誘電体層23を形成することができる。
[第3実施形態]
図10は、光検出装置の第3実施形態の構成を示す側面断面図である。本実施形態による光検出装置1Cは、量子カスケード検出器30を載置する素子設置層51の構成が、第1実施形態の光検出装置1Aとは異なっている。
本実施形態では、素子設置層51の高さは、受光層21の周期構造22における凹部22bの高さと略一致している。このような構成の光検出装置1Cによっても、第1実施形態の光検出装置1Aと同様に、赤外光などの被検出光Aを高速、高感度で検出することが可能となる。なお、本構成では、光検出装置の作製において、検出器30のコンタクト層33上にAu上部電極13を形成する際に、合わせて受光層21の一部となるAu層を形成し、その後に周期構造22の形成を行うと良い。
[第4実施形態]
図11は、光検出装置の第4実施形態の構成を示す側面断面図である。図11に示す光検出装置1Dは、基板10と、量子カスケード検出器30と、受光部25とを備えて構成されている。基板10の設置面11上には、素子設置領域11a及び受光部設置領域11bが設定されており、素子設置領域11a上に量子カスケード検出器30が設けられ、また、受光部設置領域11b上に受光部25が設けられている。
基板10の設置面11の上方には、設置面11から所定の距離をおいて、負誘電率材料層である金属層55が形成されている。この金属層55において、素子設置領域11aに対応する領域内の部分が素子設置層56となっており、受光部設置領域11bに対応する領域内の部分が受光部25を構成する受光層26となっている。
量子カスケード検出器30は、金属層55の素子設置層56と、基板10の設置面11との間においてメサ型に形成されている。図11に示す構成例では、量子カスケード検出器30は、基板10上に、下部コンタクト層31、活性層35、及び上部コンタクト層33を順に形成することで構成されている。また、本構成では、活性層35及び上部コンタクト層33の受光部25とは反対側の一部が除去されており、露出した下部コンタクト層31上に、金属層からなる下部電極14が形成されている。また、上部コンタクト層33に接している金属層55は、上部電極としても機能している。
受光部25は、基板10上に量子カスケード検出器30とともに設けられ、受光層26を有して構成されている。また、このような構成において、素子設置層56は、受光層26と一体の金属層55を構成するように受光層26から伸長された層となっている。受光層26の基板10側の面には、被検出光Aの波長λを考慮して設計された周期構造27が形成されている。このような周期構造27により、受光部25は、波長λの被検出光Aの入射に応じて、表面プラズモンを生成するように構成されている。
図11に示す構成例では、受光層26には、量子カスケード検出器30へと向かう表面プラズモンの伝搬方向を配列方向として、複数の凸部27a、及び複数の凹部27bが交互に周期的に形成されている。これにより、本構成例での周期構造27は、表面プラズモンの伝搬方向と直交する方向を長手方向とする直線状の凸部27a、及び凹部27bが複数、交互に形成された凹凸構造(格子構造)となっている。
また、このような受光部25に対し、量子カスケード検出器30は、素子設置層56上で受光層26の周期構造27と同じ側であって、受光部25における表面プラズモンの伝搬方向の一方側に設けられている。また、本構成例では、素子設置層56の高さは、受光層26の周期構造27における凹部27bの高さと略一致している。このような構成においては、受光層26及び素子設置層56を含む金属層55は、受光部25で生成された表面プラズモンを検出器30へと伝搬させる表面プラズモン導波路として機能する。
また、基板10から所定の距離をおいて金属層55が設けられている本構成では、受光部25と基板10との間に、基板10上で受光層26を支持する支持層28が設けられている。この支持層28としては、例えばInP、InGaAsなどの半導体材料からなる半導体層、あるいはSiO2、SiNなどの絶縁材料からなる絶縁層を用いることができる。また、支持層28の基板10とは反対側の面上には、受光層26の周期構造27に対応する支持側周期構造29が形成されている。
また、本実施形態の光検出装置1Dでは、図11に被検出光A、及びその電場の振動方向A1を示すように、受光層26の下面側に設けられている周期構造27に対し、被検出光Aは基板10側から基板10を介して入射される。このような構成に対応して、基板10の裏面12上には、受光部25に対応する領域に、被検出光に対する反射防止膜15が形成されている。また、このように基板10側から光が入射する構成では、基板10として、半絶縁性の半導体基板を用いることが好ましい。このような構成の光検出装置1Dによっても、第1実施形態の光検出装置1Aと同様に、赤外光などの被検出光Aを高速、高感度、低雑音で検出することが可能となる。
また、上記実施形態の光検出装置1Dでは、受光部25及び量子カスケード検出器30等に加えて、受光層26及び素子設置層56を含む金属層55と、検出器30とが設置面11上に設けられる基板10をさらに備える構成としている。また、このように基板10を備える構成において、検出器30、及び受光部25の周期構造27は、金属層55に対して基板10側(金属層55の下面側)に設けられている。
このような構成によっても、受光部25、素子設置層56、及び量子カスケード検出器30を含む光検出装置1Dを、基板10とともに好適に構成することができる。また、この構成では、図11に示すように、受光部25の受光層26に設けられた周期構造27に対し、基板10側(図中の下方)から基板10を介して被検出光Aが入射する。
また、上記構成では、基板10の設置面11とは反対側の裏面12上に、被検出光Aに対する反射防止膜15が形成されている。このような構成によれば、受光部25に対して基板10側から入射する被検出光Aの基板10の裏面12での反射を抑制して、被検出光Aの検出効率を向上することができる。
また、上記構成では、受光部25と基板10との間に、基板10上で受光層26を支持するとともに支持側周期構造29を有する支持層28が設けられている。また、このように受光部25と基板10との間に設けられる支持層28については、半導体材料からなる半導体層とすることが好ましい。
このような構成では、受光部25及び基板10の間に設けられた支持層28と、検出器30とが、同質の半導体材料によって構成されることとなる。この場合、受光層26の周期構造27において生成されて、受光層26と支持層28との界面に沿って伝搬する表面プラズモンは、支持層28と検出器30との界面において屈折率のギャップがほとんどない、ほぼ連続な媒質中を伝搬する。これにより、受光部25から検出器30への表面プラズモンの電場の伝達効率をさらに向上することができる。
また、受光層26の周期構造27側に支持層28が設けられている本実施形態による光検出装置1Dでは、図9に示した光検出装置1Bと同様に、表面プラズモンの波長Λを短くすることができる。例えば、支持層28をInP半導体層とした場合、InP層の波長λ=4.5μmでの誘電率は9.5程度である。この場合、表面プラズモンの波長Λは、上記式(2)から被検出光の波長λの約1/3の1.5μm程度となる。
次に、上記した構成を有する光検出装置1Dの作製方法について説明する。ここで、図12(a)〜(c)、図13(a)、(b)は、図11に示した第4実施形態の光検出装置1Dの作製方法を示す図であり、各工程における側面断面図を示している。
図12、図13に示す作製方法では、まず、基板10の設置面11上に、MBE、MOCVDなどの方法を用いて、量子カスケード検出器を構成するコンタクト層31、活性層35、コンタクト層33を形成する。さらに、コンタクト層33上に、プラズマCVD法等により、SiN、SiO2などからなるマスク層103を成膜する(図12(a))。
次に、フォトリソグラフィ、及び化学エッチングまたはドライエッチングを施して、マスク層103、及びコンタクト層31、活性層35、コンタクト層33の一部を除去する(図12(b))。そして、マスク層103を残したまま、2回目の結晶成長を行って、InP、InGaAsなどからなる半導体層を成膜する。
このとき、半導体層は、マスク層103上には結晶として成長されず、基板10の設置面11上のみにおいて結晶として成長される。その後、フッ酸などの酸を用いてエッチング処理を行って、マスク層103とともに非結晶層を除去することにより、基板10が露出している領域にのみ半導体支持層28が形成される(図12(c))。このような手法は、選択成長法と呼ばれている。なお、支持層28として、半導体層の代わりに絶縁層を形成する場合には、通常の方法、すなわち、プラズマCVD法による成膜と、フォトリソグラフィ、及び化学エッチングまたはドライエッチングによるパターニングとを行うことにより、絶縁層を形成することができる。
続いて、フォトリソグラフィ及びドライエッチングを施すことにより、支持層28に支持側周期構造29となる凹凸構造を形成する。また、量子カスケード検出器の下部電極を形成するために、コンタクト層33及び活性層35の一部を除去して、コンタクト層31を露出させておく(図13(a))。そして、この状態で金属層を成膜することにより、支持側周期構造29に対応する周期構造27を有する受光層26、及び素子設置層56を含む金属層55と、量子カスケード検出器30の下部電極14とが形成される。
最後に、基板10の裏面12上に反射防止膜15を形成する(図13(b))。これにより、基板10、受光部25、素子設置層56、及び量子カスケード検出器30を含む光検出装置が作製される。このような光検出装置の作製方法では、半導体結晶成長工程を2回行う必要があるが、図6、図7に示した作製方法にあるような、基板同士を貼り合わせる工程が不要となり、装置の作製が容易となる。また、基板の貼り合わせ工程における半導体結晶へのダメージ発生のおそれがなく、製造時の歩留り向上が期待できる。
[第5実施形態]
図14は、光検出装置の第5実施形態の構成を示す平面図である。本実施形態による光検出装置1Eでは、受光部20を構成する受光層21のうちで、その量子カスケード検出器30側の所定部分が、検出器30に向けて幅が減少するテーパ形状に形成されたテーパ部24となっている。
このような構成では、受光部20からの表面プラズモンが検出器30に向かって狭窄され、表面プラズモンの電場をしぼられた状態で検出器30へと入射させることができる。これにより、光検出装置1Eにおける受光面積(受光部20での周期構造22の面積)を大きく保ちつつ、量子カスケード検出器30を小型化することができる。この場合、検出器30における素子抵抗の増大による低ノイズ化、及び高速応答動作の実現に向けた静電容量の低減が可能となる。
[第6実施形態]
図15は、光検出装置の第6実施形態の構成を示す平面図である。本実施形態による光検出装置1Fでは、略正方形状の基板10上において、その1つの角部(図中の右下の角部)側にメサ型の量子カスケード検出器30が設けられている。また、この検出器30の第1入射面(図中の上側の面)30aに対し、第1受光部20aが設けられている。同様に、第2入射面(図中の左側の面)30bに対し、第2受光部20bが設けられている。
このように、量子カスケード検出器30に対して2方向に受光部20a、20bを設ける構成は、光検出装置1Fにおける光感度の偏光依存性(図2(b)参照)を解消する上で有効である。特に、図15に示す構成では、第1受光部20aでの周期構造の配列方向と、第2受光部20bでの周期構造の配列方向とが、基板10上において互いに直交している。これにより、光感度の偏光依存性を好適に解消することができる。
また、図15の構成では、検出器30の第1入射面30aに対し、受光部20aが、検出器30に向けて幅が減少するテーパ形状に形成されている。同様に、検出器30の第2入射面30bに対し、受光部20bが、検出器30に向けて幅が減少するテーパ形状に形成されている。図15の光検出装置1Fでは、このような構成により、光検出装置1Fの省スペース化、小型化が図られている。
この場合、検出器30の小型化により、検出器30における素子抵抗の増大による低ノイズ化、及び高速応答動作の実現に向けた静電容量の低減が可能となる。なお、第1、第2受光部20a、20bにおける周期構造については、図15では一体に接続されて形成されている構成となっているが、これらの周期構造は、互いに分離して形成されている構成としても良い。
[第7実施形態]
図15に示した光検出装置1Fは、上記したように省スペース化等が図られていることから、量子カスケード検出器を含む光検出装置のアレイ化、及びそれによる撮像素子等への応答展開においても有効である。
図16は、光検出装置の第7実施形態の構成を示す平面図である。本実施形態による光検出装置1Gでは、受光部20a、20b、及び量子カスケード検出器30を有し、図15に示した光検出装置1Fと同様に構成された装置部分を光検出ユニット18とし、このような光検出ユニット18を複数、2次元アレイ状に配列する構成としている。このような構成の光検出装置1Gは、例えば2次元の撮像素子として利用することができる。
なお、図16の光検出装置1Gでは、複数の光検出ユニット18が縦横に隙間なく配列されているが、実際には、配線電極等を形成するためにある程度の隙間が必要となる場合がある。また、図16では、光検出ユニット18を基板上に2次元アレイ状に配列した構成を示したが、光検出ユニット18を1次元アレイ状に配列して1次元の撮像素子として利用可能な構成としても良い。
また、図14、図15、図16に示した実施形態では、図1、図2に示した光検出装置1Aに基づいた構成を示しているが、このような構成に限らず、例えば図11に示した光検出装置1Dに対して、図14、図15、図16に示した構成を適用しても良い。
[第8実施形態]
図17は、光検出装置の第8実施形態の構成を示す側面断面図である。本実施形態による光検出装置1Hは、第2素子設置層52、及び第2半導体光検出素子である第2量子カスケード検出器60を備える点で、第1実施形態の光検出装置1Aとは異なっている。
図17に示す光検出装置1Hは、基板10と、量子カスケード検出器30と、受光部20と、第2量子カスケード検出器60とを備えて構成されている。基板10の設置面11上には、素子設置領域11a、受光部設置領域11b、及び第2素子設置領域11cが設定されており、素子設置領域11a上に量子カスケード検出器30が設けられ、受光部設置領域11b上に受光部20が設けられ、また、第2素子設置領域11c上に量子カスケード検出器60が設けられている。
また、2つの素子設置領域11a、11cは、受光部設置領域11bを挟むように両側に設定されている。具体的には、素子設置領域11aは、第1実施形態と同様に、受光部20における表面プラズモンの伝搬方向の一方側(図17中の右側)に設定されている。また、第2素子設置領域11cは、受光部20における表面プラズモンの伝搬方向の他方側(図17中の左側)に設定されている。
基板10の設置面11上には、素子設置領域11a、受光部設置領域11b、及び第2素子設置領域11cを合わせた領域上に、負誘電率材料層である金属層50が形成されている。また、この金属層50において、素子設置領域11aに対応する素子領域内の部分が素子設置層51となっており、受光部設置領域11bに対応する受光部領域内の部分が受光部20を構成する受光層21となっており、また、第2素子設置領域11cに対応する第2素子領域内の部分が第2素子設置層52となっている。
量子カスケード検出器30は、伝導帯サブバンド準位を利用した量子井戸型の活性層35を有しており、素子設置層51上においてメサ型に形成されている。図17に示す構成例では、検出器30は、素子設置層51上に、下部コンタクト層31、活性層35、及び上部コンタクト層33を順に形成することで構成されている。また、上部コンタクト層33上には、金属層からなる検出器30の上部電極13が形成されている。
量子カスケード検出器60は、伝導帯サブバンド準位を利用した量子井戸型の活性層65を有しており、第2素子設置層52上においてメサ型に形成されている。図17に示す構成例では、検出器60は、第2素子設置層52上に、下部コンタクト層61、活性層65、及び上部コンタクト層63を順に形成することで構成されている。また、上部コンタクト層63上には、金属層からなる検出器60の上部電極16が形成されている。この量子カスケード検出器60は、量子カスケード検出器30と同様の構成を有している。
ここで、受光部20において生成される表面プラズモンは、受光部20から両方向に伝搬する。これに対して、本実施形態の光検出装置1Hでは、受光部20における表面プラズモンの伝搬方向の一方側に、素子設置層51及び量子カスケード検出器30を設けるとともに、表面プラズモンの伝搬方向の他方側に、素子設置層52及び量子カスケード検出器60を追加的に設けている。このような構成とすることにより、光検出において約2倍の信号量を得ることができる。
なお、図17に示した実施形態では、図1、図2に示した光検出装置1Aに基づいた構成を示しているが、このような構成に限らず、例えば図11に示した光検出装置1D等、他の実施形態の光検出装置に対して、図17に示した構成を適用しても良い。
また、受光部20における表面プラズモンの伝搬方向の他方側の構成については、上記の追加的な量子カスケード検出器60を設けずに、表面プラズモンを量子カスケード検出器30へと反射する反射構造を設ける構成としても良い。非特許文献3(N. C. Lindquist et al., Phys. Rev. B Vol.76 (2007)pp.155109-1-155109-5)を参照すると、受光部におけるストライプアレイ構造(凹凸構造)の約半分の周期のストライプアレイを数ペア分形成することにより、このような表面プラズモンの反射構造を実現することができる。これにより、反射構造で反射された表面プラズモン信号を、本来の検出器30で検出することが可能となり、それによる信号量の増加が期待できる。
また、例えば、図16に示したアレイ状の構成では、隣接する光検出ユニット18への信号の伝搬を防ぐために、受光部20a、20bに対して検出器30とは反対側に、表面プラズモンを反射する反射構造を設けることが有効である。この場合の反射構造の構成については、非特許文献3を参照して上述した通りである。これにより、隣接する光検出ユニット18への信号漏えいを防止するとともに、反射構造で反射された信号を、本来の検出器30で検出することが可能となり、それによる信号量の増加が期待できる。ただし、図16に関して上述したように、隣接する光検出ユニット18間に配線等のための隙間が設けられている場合、この隙間によって信号漏えいを防止することが可能であれば、反射構造を設けない構成としても良い。
本発明による光検出装置は、上記した実施形態及び構成例に限られるものではなく、様々な変形が可能である。例えば、上記した実施形態では、半導体光検出素子として、量子カスケード検出器(QCD)を例示しているが、上述したように、伝導帯サブバンド準位を利用した量子井戸型の半導体光検出素子であれば、例えば量子井戸赤外光検出器(QWIP)などの、QCD以外の光検出素子を用いても良い。また、半導体光検出素子、受光層、及び負誘電率材料層等の装置各部の具体的な構成については、上記した実施形態で例示したもの以外にも、様々な構成を用いることが可能である。
また、上記した構成例では、半導体基板としてInP基板を用い、量子カスケード検出器の活性層をInAlAs/InGaAsによって構成した例を示したが、基板、及び半導体光検出素子の活性層の構成については、具体的には様々な構成、半導体材料系を用いて良い。そのような半導体材料系としては、上記したInAlAs/InGaAs以外にも、例えばAlGaAs/GaAs、InGaN/GaNなど、様々な材料系を用いることが可能である。また、基板についても、InP以外にGaAs、GaN、あるいはサファイアなど、量子井戸構造を形成する材料系に適したものを適宜用いることができる。
また、負誘電率材料層を構成する金属材料については、上記したAu以外にも、例えばAl、Agなど、様々な材料を用いて良い。また、負誘電率材料層における負の誘電率を有する材料として、金属材料以外にも、例えば高不純物濃度の半導体材料などの他の材料を用いても良い。
また、受光層における周期構造については、直線状の凸部、凹部を1次元的に配列した凹凸構造を例示しているが、このような構成以外にも、光感度の偏光依存性を低減するなどの目的により、例えば円形状、正方形状、長方形状の凸部、凹部を2次元的に配列した構成など、具体的には様々な構成を用いることができる。また、素子設置層上で受光層の周期構造と同じ側に設けられる半導体光検出素子については、表面プラズモンの伝搬方向の一方側に少なくとも設けられていれば良く、例えば図17の実施形態に示したように、表面プラズモンの伝搬方向の両方側に半導体光検出素子を設ける構成としても良い。
本発明は、赤外光などの被検出光を高速、高感度で検出することが可能な光検出装置として利用可能である。
1A〜1H…光検出装置、10…基板、11…設置面、11a…素子設置領域、11b…受光部設置領域、11c…第2素子設置領域、12…裏面、13…上部電極、14…下部電極、15…反射防止膜、16…上部電極、18…光検出ユニット、
20、25…受光部、21、26…受光層、22、27…周期構造、22a、27a…凸部、22b、27b…凹部、23…誘電体層、24…テーパ部、28…支持層、29…支持側周期構造、
30…量子カスケード検出器(半導体光検出素子)、31…下部コンタクト層、32…クラッド層、33…上部コンタクト層、35…活性層、36…単位積層体、37…吸収領域、38…輸送領域、60…第2量子カスケード検出器(第2半導体光検出素子)、
50、55…負誘電率材料層(金属層)、51、56…素子設置層、52…第2素子設置層。
20、25…受光部、21、26…受光層、22、27…周期構造、22a、27a…凸部、22b、27b…凹部、23…誘電体層、24…テーパ部、28…支持層、29…支持側周期構造、
30…量子カスケード検出器(半導体光検出素子)、31…下部コンタクト層、32…クラッド層、33…上部コンタクト層、35…活性層、36…単位積層体、37…吸収領域、38…輸送領域、60…第2量子カスケード検出器(第2半導体光検出素子)、
50、55…負誘電率材料層(金属層)、51、56…素子設置層、52…第2素子設置層。
Claims (12)
- 負の誘電率を有する材料からなり周期構造が形成された受光層を有し、所定の波長の被検出光の入射に応じて表面プラズモンを生成するように構成された受光部と、
前記負の誘電率を有する材料からなり、前記受光層と一体の負誘電率材料層を構成するように前記受光層から伸長された素子設置層と、
前記素子設置層上で前記受光層の前記周期構造と同じ側であって、前記表面プラズモンの伝搬方向の一方側に設けられ、伝導帯サブバンド準位を利用した量子井戸型の活性層を有する半導体光検出素子と
を備えることを特徴とする光検出装置。 - 前記受光層及び前記素子設置層を含む前記負誘電率材料層と、前記半導体光検出素子とが設置面上に設けられる基板を備え、
前記半導体光検出素子及び前記受光部の前記周期構造は、前記負誘電率材料層に対して前記基板とは反対側に設けられていることを特徴とする請求項1記載の光検出装置。 - 前記受光層の前記周期構造上に、誘電体材料からなる誘電体層が形成されていることを特徴とする請求項2記載の光検出装置。
- 前記受光層及び前記素子設置層を含む前記負誘電率材料層と、前記半導体光検出素子とが設置面上に設けられる基板を備え、
前記半導体光検出素子及び前記受光部の前記周期構造は、前記負誘電率材料層に対して前記基板側に設けられていることを特徴とする請求項1記載の光検出装置。 - 前記受光層と前記基板との間に設けられて前記基板上で前記受光層を支持する支持層を備え、
前記支持層の前記基板とは反対側の面上には、前記受光層の前記周期構造に対応する支持側周期構造が形成されていることを特徴とする請求項4記載の光検出装置。 - 前記支持層は、半導体材料からなる半導体層であることを特徴とする請求項5記載の光検出装置。
- 前記基板の前記設置面とは反対側の裏面上に、前記被検出光に対する反射防止膜が形成されていることを特徴とする請求項4〜6のいずれか一項記載の光検出装置。
- 前記半導体光検出素子は、吸収井戸層として機能する第1井戸層を含むN個(Nは3以上の整数)の量子井戸層、及びN個の量子障壁層からなる単位積層体が多段に積層されることで、前記第1井戸層を含みサブバンド間吸収によって光を検出する吸収領域と、前記サブバンド間吸収によって励起された電子を輸送する輸送領域とが交互に積層されたカスケード構造が形成された前記活性層を有する量子カスケード検出器であることを特徴とする請求項1〜7のいずれか一項記載の光検出装置。
- 前記受光層及び前記素子設置層を含む前記負誘電率材料層は、金属材料からなる金属層であることを特徴とする請求項1〜8のいずれか一項記載の光検出装置。
- 前記受光層は、前記周期構造として、前記半導体光検出素子への前記表面プラズモンの伝搬方向を配列方向として交互に周期的に形成された複数の凸部及び複数の凹部を含む凹凸構造を有することを特徴とする請求項1〜9のいずれか一項記載の光検出装置。
- 前記受光部を構成する前記受光層は、その前記半導体光検出素子側の所定部分が、前記半導体光検出素子に向けて幅が減少するテーパ形状に形成されていることを特徴とする請求項1〜10のいずれか一項記載の光検出装置。
- 1次元アレイ状または2次元アレイ状に配列され、それぞれ前記受光層、前記素子設置層、及び前記半導体光検出素子を有する複数の光検出ユニットを備えることを特徴とする請求項1〜11のいずれか一項記載の光検出装置。
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